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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B
管理番号 1311407
審判番号 不服2015-10806  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-08 
確定日 2016-02-18 
事件の表示 特願2011- 42912「トリガー式液体噴出器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日出願公開、特開2012-179519〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年2月28日の出願であって、平成26年5月26日付けで拒絶理由が通知され、同年8月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年3月5日付けで拒絶査定がされ、同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年6月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年6月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成27年6月8日付けの手続補正の内容
平成27年6月8日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年8月1日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
容器の口部に装着される本体を有し当該本体の内側に形成された通路に通じるシリンダが設けられたボディと、当該ボディに設けられたシリンダに配置されるピストンと、当該ピストンに係合してボディに対して牽曳及び復帰が可能なレバーとを有し、当該レバーの牽曳及び復帰の繰り返しによってピストンを動作させることで、噴出口から内容物を噴出させるトリガー式液体噴出器であって、
ボディ本体に、その内側に形成された通路に通じる内部通路を有して前方向に延在する延長流路部を設け、
レバーに、幅方向に間隔を空けて配置される2つの側壁と、該側壁の上方において該側壁の相互間に掛け渡されるフレームと、該フレームの下方において該側壁の相互間に掛け渡されるパネルとによって形作られるとともに延長流路部を通す開口部を形成し、当該開口部に配置された延長流路部の軸部に前記レバーの前記側壁に設けた凹部を回転可能に軸支させ、該凹部に該軸部を案内する溝部を設けたことを特徴とするトリガー式液体噴出器。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
容器の口部に装着される本体を有し当該本体の内側に形成された通路に通じるシリンダが設けられたボディと、当該ボディに設けられたシリンダに配置されるピストンと、当該ピストンに係合してボディに対して牽曳及び復帰が可能なレバーとを有し、当該レバーの牽曳及び復帰の繰り返しによってピストンを動作させることで、噴出口から内容物を噴出させるトリガー式液体噴出器であって、
ボディ本体に、その内側に形成された通路に通じる内部通路を有して前方向に延在する延長流路部を設け、
レバーに、幅方向に間隔を空けて配置される2つの側壁と、該側壁の上方において該側壁の相互間に掛け渡されるフレームと、該フレームの下方において該側壁の相互間に掛け渡されるパネルとによって形作られるとともに延長流路部を通す開口部を形成するとともに、当該パネルに連なるレバー本体上端フレームを設け、当該開口部に配置された延長流路部の軸部に前記レバーの前記側壁の前記フレームと前記レバー本体上端フレームとの間の部分に設けた凹部を回転可能に軸支させ、該凹部に該軸部を案内する溝部を設けたことを特徴とするトリガー式液体噴出器。」
(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の適否
2-1 本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「レバーに、幅方向に間隔を空けて配置される2つの側壁と、該側壁の上方において該側壁の相互間に掛け渡されるフレームと、該フレームの下方において該側壁の相互間に掛け渡されるパネルとによって形作られるとともに延長流路部を通す開口部を形成し、当該開口部に配置された延長流路部の軸部に前記レバーの前記側壁に設けた凹部を回転可能に軸支させ、該凹部に該軸部を案内する溝部を設けた」という記載を「レバーに、幅方向に間隔を空けて配置される2つの側壁と、該側壁の上方において該側壁の相互間に掛け渡されるフレームと、該フレームの下方において該側壁の相互間に掛け渡されるパネルとによって形作られるとともに延長流路部を通す開口部を形成するとともに、当該パネルに連なるレバー本体上端フレームを設け、当該開口部に配置された延長流路部の軸部に前記レバーの前記側壁の前記フレームと前記レバー本体上端フレームとの間の部分に設けた凹部を回転可能に軸支させ、該凹部に該軸部を案内する溝部を設けた」という記載にするものであり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の発明特定事項である「レバー」について、その構造をさらに限定するものであるから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものといえ、しかも、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2-2 独立特許要件
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。

(1)引用文献の記載等
ア 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開平10-28909号公報(以下、「引用文献」という。)には、「トリガー式噴霧器」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、順に「記載1a」及び「記載1b」という。)がある。

1a 「【0002】
【従来の技術】例えば実開平6-34758 号が示すトリガー式噴霧器の従来例は、図4のような構成を有する。図4において1は口頸部を起立する容器体であり、2はトリガー式液体噴霧器で、上記口頸部外面へ螺合させた装着筒3から主柱筒4を起立し、該主柱筒4の中間部前面からはシリンダ5を、かつ上部前面からは射出筒6を、それぞれ前方へ突出している。
【0003】主柱筒4は吸上げ筒7を嵌合させ内外二重筒状に形成し、吸上げ筒7には吸込み弁8、吐出弁9がそれぞれ設けてあり、吸上げ筒7の下部からは吸上げパイプ10を容器体内へ垂設している。
【0004】射出筒6前端にはノズルキャップ11を回動可能に嵌合させており、その回動によりノズル孔12が開閉可能とする。又射出筒前部の左右両側へ、二股に形成した上端部を枢着させてトリガー13を垂設し、該トリガーの上部後面から突出する突部14へ、既述シリンダ5内へスプリング15により前方付勢して嵌合させたプランジャ16の前端を係合させている。」(段落【0002】ないし【0004】)

1b 「【0008】
【課題を解決するための手段】第1の手段として、容器体口頸部に嵌合させる装着筒3から主柱筒4を起立し、該主柱筒の中間部前面からシリンダ5を、かつ主柱筒の上部前面から射出筒6を、それぞれ前方突出すると共に、射出筒前部に上端部を枢着させて垂下するトリガー13の上部後面へ、上記シリンダ内へ前方付勢して嵌合させた閉塞筒状のプランジャ16前面を係合させ、上記トリガー操作で容器体内液体を吸込み弁8を介してシリンダ内へ吸込み、かつ吐出弁9を介して射出筒前端のノズル12から噴霧するよう設けたトリガー式噴霧器において、上記プランジャ16前部をトリガー13上部に対して枢着させると共に、トリガー13の射出筒6に対する枢着部分から上方へ揺動部24を突設し、該揺動部と上記主柱筒4とを伸縮自在の弾性リング28で掛け止めしてトリガー下部を前方付勢させた。
【0009】第2の手段として、上記第1の手段を有すると共に、弾性リングを複数の環30を互いに周の一部を共有するように連結させた構造の弾性帯29とした。
【0010】
【発明の実施の形態】図1の状態で、弾性リング28の張力に抗してトリガー13を引き寄せるとプランジャ16が後方移動することでシリンダ内が高圧化し、吐出弁9を開くことで射出筒前端のノズル12から液体を噴霧する。トリガーの引寄を解除すると、弾性リング28の張力が作用してプランジャ16が前進してシリンダ5内を負圧化し、液体がパイプ10、吸込み弁8を通して吸上げ筒7内に供給される。
【0011】図1は図4と基本構造および作動原理が共通する本発明のトリガー式噴霧器の透視側面図であり、図2はその透視平面図である。尚本発明のトリガー式噴霧器は通常の噴霧のほかノズルの構造を変えて発泡噴霧や液体、クリーム等の注出などに適用することもできる。
【0012】図4と同一の要素を同一符号で表すと、図1に示した例では図4の例のトリガー突部14の代りにプランジャ16とトリガー13との枢着手段である軸23、そして上記金属製スプリングに代えて合成樹脂製ないしゴム製の弾性リング28がそれぞれ組み込まれている。
【0013】射出筒6前部両側より突設されたピン21に、両袖フランジ部22の孔を嵌め合わせて枢着された断面コ字形のトリガ-13が垂下している。該トリガーのピン21より下側には、プランジャ16先端部の左右両側に付設した軸23をトリガー両袖フランジ部22の穴に嵌め合わせることで、プランジャ16がトリガー13に枢着されている。
【0014】図示のように、トリガー13は射出筒への枢着部より上方へ揺動部24を突設し、該揺動部上端には掛止溝25を穿設し、また主柱筒4の上部後面には掛止溝26を有する掛止部材27が固着され、これら掛止溝25と掛止溝26との間に弾性リング28を張架させている。
【0015】弾性リングは図3に示すように複数の環30を互いに周の一部を共有するように連結した弾性帯29でもよく、この場合は両端の環部分をそれぞれ掛止溝25および掛止溝26に掛け止めすればよい。なお、弾性リング28および弾性帯29としてはゴムあるいはゴム様の弾性を有する樹脂を用いることができる。」(段落【0008】ないし【0015】)

イ 引用文献の記載事項
記載1a及び1b並びに図面の記載から、引用文献には、次の事項(以下、順に「記載事項2a」ないし「記載事項2c」という。)が記載されていると認める。

2a 記載1a、記載1bの「第1の手段として、容器体口頸部に嵌合させる装着筒3から主柱筒4を起立し、該主柱筒の中間部前面からシリンダ5を、かつ主柱筒の上部前面から射出筒6を、それぞれ前方突出すると共に、射出筒前部に上端部を枢着させて垂下するトリガー13の上部後面へ、上記シリンダ内へ前方付勢して嵌合させた閉塞筒状のプランジャ16前面を係合させ、上記トリガー操作で容器体内液体を吸込み弁8を介してシリンダ内へ吸込み、かつ吐出弁9を介して射出筒前端のノズル12から噴霧するよう設けたトリガー式噴霧器において、上記プランジャ16前部をトリガー13上部に対して枢着させると共に、トリガー13の射出筒6に対する枢着部分から上方へ揺動部24を突設し、該揺動部と上記主柱筒4とを伸縮自在の弾性リング28で掛け止めしてトリガー下部を前方付勢させた。」(段落【0008】)及び「図1の状態で、弾性リング28の張力に抗してトリガー13を引き寄せるとプランジャ16が後方移動することでシリンダ内が高圧化し、吐出弁9を開くことで射出筒前端のノズル12から液体を噴霧する。トリガーの引寄を解除すると、弾性リング28の張力が作用してプランジャ16が前進してシリンダ5内を負圧化し、液体がパイプ10、吸込み弁8を通して吸上げ筒7内に供給される。」(段落【0010】)並びに図面によると、引用文献には、容器体1の口顎部に装着される装着筒3及び主柱筒4を有し当該装着筒3及び主柱筒4の内側に形成された通路に通じるシリンダ5が設けられた装着筒3、主柱筒4及び射出筒6を有する部品(便宜上、このように表現する。)と、当該部品に設けられたシリンダ5に配置されるプランジャ16と、当該プランジャ16に係合して装着筒3、主柱筒4及び射出筒6を有する部品に対して引寄及び引寄の解除が可能なトリガー13とを有し、当該トリガー13の引寄及び引寄の解除の繰り返しによってプランジャ16を動作させることで、ノズル孔12から容器体内液体を噴霧させるトリガー式噴霧器が記載されている。

2b 記載1bの「第1の手段として、容器体口頸部に嵌合させる装着筒3から主柱筒4を起立し、該主柱筒の中間部前面からシリンダ5を、かつ主柱筒の上部前面から射出筒6を、それぞれ前方突出すると共に、射出筒前部に上端部を枢着させて垂下するトリガー13の上部後面へ、上記シリンダ内へ前方付勢して嵌合させた閉塞筒状のプランジャ16前面を係合させ、上記トリガー操作で容器体内液体を吸込み弁8を介してシリンダ内へ吸込み、かつ吐出弁9を介して射出筒前端のノズル12から噴霧するよう設けたトリガー式噴霧器において、上記プランジャ16前部をトリガー13上部に対して枢着させると共に、トリガー13の射出筒6に対する枢着部分から上方へ揺動部24を突設し、該揺動部と上記主柱筒4とを伸縮自在の弾性リング28で掛け止めしてトリガー下部を前方付勢させた。」(段落【0008】)及び図面を記載事項2aとあわせてみると、引用文献には、装着筒3及び主柱筒4に、その内側に形成された通路に通じる内部通路を有して前方突出する射出筒6を設けることが記載されている。

2c 記載1bの「射出筒6前部両側より突設されたピン21に、両袖フランジ部22の孔を嵌め合わせて枢着された断面コ字形のトリガ-13が垂下している。」(段落【0013】)及び「図示のように、トリガー13は射出筒への枢着部より上方へ揺動部24を突設し、該揺動部上端には掛止溝25を穿設し、また主柱筒4の上部後面には掛止溝26を有する掛止部材27が固着され、これら掛止溝25と掛止溝26との間に弾性リング28を張架させている。」(段落【0014】)並びに図面(特に図1)を記載事項2a及び2bとあわせてみると、引用文献には、トリガー13に、幅方向に間隔を空けて配置される両袖フランジ部22と、該両袖フランジ部22の上方において該両袖フランジ部22の相互間に掛け渡される揺動部24と、該揺動部24の下方において該両袖フランジ部22の相互間に掛け渡されるトリガー13の前壁部分(便宜上、このように表現する。)とによって形作られるとともに射出筒6を通す部分(便宜上、このように表現する。)を形成するとともに、当該射出筒6を通す部分に配置された射出筒6の前部両側より突設されたピン21に前記トリガー13の両袖フランジ部22に設けた孔を嵌め合わせて枢着させたことが記載されている。

ウ 引用発明
記載1a及び1b、記載事項2aないし2c並びに図面を整理すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「容器体1の口顎部に装着される装着筒3及び主柱筒4を有し当該装着筒3及び主柱筒4の内側に形成された通路に通じるシリンダ5が設けられた装着筒3、主柱筒4及び射出筒6を有する部品と、当該部品に設けられたシリンダ5に配置されるプランジャ16と、当該プランジャ16に係合して装着筒3、主柱筒4及び射出筒6を有する部品に対して引寄及び引寄の解除が可能なトリガー13とを有し、当該トリガー13の引寄及び引寄の解除の繰り返しによってプランジャ16を動作させることで、ノズル孔12から容器体内液体を噴霧させるトリガー式噴霧器であって、
装着筒3及び主柱筒4に、その内側に形成された通路に通じる内部通路を有して前方突出する射出筒6を設け、
トリガー13に、幅方向に間隔を空けて配置される両袖フランジ部22と、該両袖フランジ部22の上方において該両袖フランジ部22の相互間に掛け渡される揺動部24と、該揺動部24の下方において該両袖フランジ部22の相互間に掛け渡されるトリガー13の前壁部分とによって形作られるとともに射出筒6を通す部分を形成するとともに、当該射出筒6を通す部分に配置された射出筒6の前部両側より突設されたピン21に前記トリガー13の両袖フランジ部22に設けた孔を嵌め合わせて枢着させたトリガー式噴霧器。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明における「容器体1」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本願補正発明における「容器」に相当し、以下、同様に、「口顎部」は「口部」に、「装着筒3及び主柱筒4」は「本体」及び「ボディ本体」に、「シリンダ5」は「シリンダ」に、「装着筒3、主柱筒4及び射出筒6を有する部品」は「ボディ」に、「プランジャ16」は「ピストン」に、「引寄及び引寄の解除」は「牽曳及び復帰」に、「トリガー13」は「レバー」に、「ノズル孔12」は「噴出口」に、「容器体内液体」は「内容物」に、「噴霧」は「噴出」に、「トリガー式噴霧器」は「トリガー式液体噴出器」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「前方突出する」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本願補正発明における「前方向に延在する」に相当し、以下、同様に、「射出筒6」は「延長流路部」に、相当する。
さらに、引用発明における「両袖フランジ部22」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本願補正発明における「2つの側壁」に相当し、以下、同様に、「揺動部24」は「フレーム」に、「トリガー13の前壁部分」は「パネル」に、「射出筒6を通す部分」は「延長流路部を通す開口部」に、「射出筒6の前部両側より突設されたピン21」は「延長流路部の軸部」に、それぞれ相当する。
さらにまた、上記相当関係を踏まえると、引用発明における「前記トリガー13の両袖フランジ部22に設けた孔を嵌め合わせて枢着させた」と本願補正発明における「前記レバーの前記側壁の前記フレームと前記レバー本体上端フレームとの間の部分に設けた凹部を回転可能に軸支させ、該凹部に該軸部を案内する溝部を設けた」は、「前記レバーの前記側壁に設けた軸支部分を回転可能に軸支させた」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「容器の口部に装着される本体を有し当該本体の内側に形成された通路に通じるシリンダが設けられたボディと、当該ボディに設けられたシリンダに配置されるピストンと、当該ピストンに係合してボディに対して牽曳及び復帰が可能なレバーとを有し、当該レバーの牽曳及び復帰の繰り返しによってピストンを動作させることで、噴出口から内容物を噴出させるトリガー式液体噴出器であって、
ボディ本体に、その内側に形成された通路に通じる内部通路を有して前方向に延在する延長流路部を設け、
レバーに、幅方向に間隔を空けて配置される2つの側壁と、該側壁の上方において該側壁の相互間に掛け渡されるフレームと、該フレームの下方において該側壁の相互間に掛け渡されるパネルとによって形作られるとともに延長流路部を通す開口部を形成するとともに、当該開口部に配置された延長流路部の軸部に前記レバーの前記側壁に設けた軸支部分を回転可能に軸支させたトリガー式液体噴出器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願補正発明においては、「当該パネルに連なるレバー本体上端フレーム」を設けているのに対し、引用発明においては、「当該パネル」に相当する「前壁部分」を有するものの「当該パネルに連なるレバー本体上端フレーム」に相当する部分を設けているか不明な点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
「前記レバーの前記側壁に設けた軸支部分を回転可能に軸支させた」に関して、本願補正発明においては、「前記レバーの前記側壁の前記フレームと前記レバー本体上端フレームとの間の部分に設けた凹部を回転可能に軸支させ、該凹部に該軸部を案内する溝部を設けた」であるのに対し、引用発明においては、「前記トリガー13の両袖フランジ部22に設けた孔を嵌め合わせて枢着させた」である点(以下、「相違点2」という。)。

(3)相違点についての判断
そこで、相違点1及び2について、以下に検討する。

ア 相違点1について
記載1bの「図1は図4と基本構造および作動原理が共通する本発明のトリガー式噴霧器の透視側面図であり、図2はその透視平面図である。」(段落【0011】)との記載によると、図1に記載されたトリガー式噴霧器と図4に記載されたトリガー式噴霧器は基本構造が同じである。
そして、図4に記載されたトリガー式噴霧器のトリガー13の前壁部分には、図4中の符合「15」の左上の部分にトリガー13の前壁部分に連なるリブ状部分があることが看取される。
したがって、図1に記載されたトリガー式噴霧器におけるトリガー13にも、図4に記載されたトリガー式噴霧器のトリガー13と同様のリブ状部分があるといえる。
よって、引用発明においても、「当該パネルに連なるレバー本体上端フレーム」に相当する部分が設けられているといえ、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点1が実質的な相違点であるとしても、トリガー式液体噴出器の操作レバーにおいて、本願補正発明における「当該パネルに連なるレバー本体上端フレーム」に相当する部分を設けることは、本願出願前に周知(必要であれば、引用文献において、従来のトリガー式噴霧器の縦断面図として説明されている図4及び下記ア-1ないしアー3を参照。以下、「周知技術1」という。)である。
したがって、引用発明において、周知技術1を適用し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

ア-1 特開2003-126739号公報の記載
本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2003-126739号公報には、「トリガー式流体吐出器」に関して、図面とともにおおむね次の記載(なお、下線は当審で付したものである。他の文献も同様。)がある。

・「【0025】トリガー11は、図8に示す如く、使用者が指を引っ掛けるグリップ11gと、ボディ10に対して回動するためのピン部11pとを有する。またピン部11pおよびグリップ11g間に、組み付け時にピストン12が貫通するピストン導入部11hと、後述のピストン12に設けたピン12pが係合するピン穴11nが形成されている。さらに、ピストン導入部11hには、後述のピストン12に一体成形されたガイド板12gを案内するレール部11rが一体成形されており、ピン穴11h(当審注:「h」は「n」の誤記である。)の周辺には、ピストン12のピン12pを組み付けやすくするための切り欠き部11cが形成されている。」(段落【0025】)

また、図8(b)から、次の事項が記載されていると認める。
・図8(b)中のハッチングが施された部分の内、下方の部分の水平部分が、本願補正発明における「当該パネルに連なるレバー本体上端フレーム」に相当する。

・図8(b)中のハッチングが施された部分の内、下方の部分の水平部分の上方にピン穴11nが設けられていることが看取される。

ア-2 特開平9-308843号公報の記載
本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開平9-308843号公報には、「スプレー容器」に関する記載があり、該記載を踏まえると、図面から次の事項が記載されていると認める。

・図1中の符合「13a」の真下のハッチングが施された部分が、本願補正発明における「当該パネルに連なるレバー本体上端フレーム」に相当する。

・図1中の符合「13a」の真下のハッチングが施された部分の上方にトリガ-8を軸支する部分があることが看取される。

ア-3 特開2005-296807号公報の記載
本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2005-296807号公報には、「トリガー式液体噴出器」に関する記載があり、該記載を踏まえると、図面から次の事項が記載されていると認める。

・ 図1中の符合「3f」の右上で、符合「3e」の左上の破線で描かれた部分が、本願補正発明における「当該パネルに連なるレバー本体上端フレーム」に相当する。

・図1中の符合「3f」の右上で、符合「3e」の左上の破線で描かれた部分の上方に操作レバー2を軸支する部分があることが看取される。

イ 相違点2について
トリガー式液体噴出器において、操作レバーの軸支部分にピンを軸支する際に、軸支部分にピンを案内する溝部を設けることは、本願出願前に周知(必要であれば、上記ア-1及び下記イ-1を参照。以下、「周知技術2」という。)である。
また、トリガー式液体噴出器において、操作レバーの軸支部分にピンを軸支する際に、軸支部分を、孔とすること(以下、「前者」という。)も、凹部とすること(以下、「後者」という。)も、いずれも本願出願前に周知(必要であれば、前者については引用文献の記載1bの段落【0013】を、後者については下記イ-2ないしイ-4を参照。以下、「周知技術3」という。)であり、前者と後者のうち、いずれを選択するかは、当業者における設計的事項にすぎない。
さらに、操作レバーの側壁にレバー本体上端フレームを有するトリガー式液体噴出器において、操作レバーの軸支部分が操作レバーの側壁のレバー本体上端フレームの上方の部分に設けられることも、本願出願前に周知(必要であれば、引用文献の図4及び上記ア-1ないしア-3を参照。以下、「周知技術4」という。)である。

したがって、引用発明において、周知技術2ないし4を適用して、「両端フランジ部22に設けた孔」に「ピン21」を案内する溝部を設ける際に、該「孔」を「凹部」とし、該「凹部」を「揺動部24」と「トリガー13の前壁部分」に設けられた「当該パネルに連なるレバー本体上端フレーム」に相当する部分の間の部分に設けるように設計変更して、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

イ-1 特開2011-25139号公報の記載
本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2011-25139号公報には、「内容物放出機構,内容物放出機構用ストッパーならびに内容物放出機構または内容物放出機構用ストッパーを備えたポンプ式製品およびエアゾール式製品」に関する記載があり、該記載を踏まえると、図面から次の事項が記載されていると認める。

・図3(a)の右下部の一対の孔部1gに連なる段差状の部分が、ピンを案内する溝に相当する。

イ-2 特開平10-263446号公報の記載
本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開平10-263446号公報には、「トリガー式液体噴出器」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0009】上記構成において、本発明では図1から図4が示す第1実施形態において、上記ノズル取付筒部材8を、射出筒7の前部外面へ嵌合させた該取付筒部材の後方筒部分21a の上面に、該後方筒部分の上方を覆う水平頂板22を付設して該水平頂板の左右両側から後方筒部分21a の左右両側面外方へ側板23,23を垂下し、これ等両側板の下部に図2が示すように軸受け24,24を付設すると共に、これ等軸受けの前方側部から板バネ25,25を垂下した。
・・・(略)・・・
【0011】軸受け24,24は図示例において、側板23,23の下面から後方開口状態に弾性C字形状板24a ,24a を垂下して形成している。又板バネ25,25は前方へ張出す円弧状として、C字形状板の前側方から垂下し、板バネ下端から係止棒部25a ,25a を下方へ垂下している。但し軸受け24,24は軸受け板内面にピン嵌合用の凹部を設けたものでもよく、又板バネ25,25も円弧状以外の適宜形状に変更することが出来る。尚側板23,23は必しも必要ではなく、水平頂板両側から直接軸受け、板バネを垂下することも出来る。
【0012】上記軸受けを利用してトリガー10を枢支し、又板バネを利用してトリガー10を前方付勢させる。該トリガーは、図1、図4から理解できるように、上部を斜上後方へ屈折した前板31の左右両側から側壁板32,32を後方へ突出すると共に、それ等側壁板32,32は上方へ延長してアーム板33,33となし、これ等両アーム板上端の外面にピン34,34を付設し、又側壁板32,32の上部下方寄り部分に後面および上面開口の凹部を形成するポケット35,35を付設する。そして図3が示すように上記ピン34,34を軸受け24,24内へ嵌合させ、又ポケット35,35内へ係止棒部を嵌合させる。又該トリガーは、図4が示すように、ポケット35,35やや上方の側壁板32,32内面部分にプランジヤ枢支ピン36,36を付設する。」(段落【0009】ないし【0012】)

イ-3 特開2002-361127号公報の記載
本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2002-361127号公報には、「バネ体及びそれを有するトリガースプレー及びそれを備えたスプレー容器」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0030】図4はトリガーを示す図であり、(A)はバネ体の先端部を嵌合しない状態、(B)はバネ体の先端部を嵌合した状態、(C)は受け部を拡大した図である。トリガー体2は、安定して指を引っ掛けることができるようにアーチ状をした翼片状の構造を有する。そして、トリガー体2は、トリガースプレーの支軸部18に枢着される上端部の凹部21Aと、指を引っ掛ける指掛け部22と、凹部21Aと指掛け部との間に設けられピストンの頭41に嵌め込まれる嵌合部22Aと、バネ体3のブリッジ部31,31の先端部31Aが嵌合されるための受け部21Bとを備える。
【0031】この受け部21Bは、嵌入部21B1を有しトリガー体の側面21,21に一対設けられ、それぞれバネ体3の一対のブリッジ部31,31が嵌合する。トリガー体2は、その上端部の凹部21Aにてベース体1に形成された支軸部18に枢着され、その一定距離下方の嵌合部22Aにてピストンの頭部41が嵌め込まれて取り付けられる。そのため、トリガー体2に指等を掛けて図でいう右に引くことにより、ピストン4の頭部41が押圧されてピストン4はシリンダ内を同様に右方に摺動する。トリガー体2は、バネ体3の弾発力により、トリガー体2が引かれた後、指等を離して力が開放されると着実に元の状態に復帰することができる。この際、バネ体3の一対のブリッジ部31,31がトリガー体2の側面21にて受け部21Bに嵌合されているために、両者間の動き及び力の伝達が的確に行える。」(段落【0030】及び【0031】)

イ-4 特開平9-38541号公報の記載
本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開平9-38541号公報には、「トリガー付き噴出器」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0013】トリガー4は、側面形状をヘ字状に形成し、その前部42を前方へ突出させて後部41を外装カバー3の両側壁31内上部に位置させ、かつ、その後部41を上記押下げ噴出ヘッド22に被せ、後端の両側を押下げ噴出ヘッド22の押し下げ回動可能に枢着5しており、前部42の先端部分45を引くことで回動操作させることができるようにしている。また、トリガー4は、前部42の上位点に、上記押下げ噴出ヘッド22に対応させて噴出窓43を穿設し、かつ、該噴出窓の下縁に下口唇部46を突設し、後部41の内面適所に、その押下げ噴出ヘッド22の頂面へ当接させる左右一対の三角状の押下げ突片44を垂設し、これら両押下げ突片を上記押下げ噴出ヘッド22におけるドーム状上面の中央にある幅広凹溝24に挿入して溝底へと当接させている。
【0014】枢着5は、外装カバー3の両側壁31内の後部上位点に、左右一対の軸受凹部51を設け、トリガー4の後端の両側に左右一対の片持ち軸52を突設し、これら両片持ち軸を上記両軸受凹部51へ回動自在に嵌合させて成る。」(段落【0013】及び【0014】)

ウ 効果について
そして、本願補正発明を全体としてみても、本願補正発明は、引用発明及び周知技術2ないし4からみて、または、引用発明及び周知技術1ないし4からみて格別顕著な効果を奏するともいえない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術2ないし4に基づいて、または、引用発明及び周知技術1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-3 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年8月1日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願発明は、上記第2[理由]1(1)のとおりである。

2 引用文献の記載等
引用文献の記載、引用文献の記載事項及び引用発明は、それぞれ、上記第2[理由]2 2-2(1)ア、イ及びウのとおりである。

3 対比・判断
上記第2[理由]2 2-1で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が上記第2[理由]2 2-2(2)ないし(4)のとおり、引用発明及び周知技術2ないし4に基づいて、または、引用発明及び周知技術1ないし4に基づいて(周知技術1ないし4については、上記第2[理由]2 2-2(3)ア及びイを参照。)、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明及び周知技術2ないし4に基づいて、または、引用発明及び周知技術1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術2ないし4に基づいて、または、引用発明及び周知技術1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-17 
結審通知日 2015-12-22 
審決日 2016-01-05 
出願番号 特願2011-42912(P2011-42912)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大野 明良土井 伸次大谷 光司  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
加藤 友也
発明の名称 トリガー式液体噴出器  
代理人 杉村 憲司  
代理人 片岡 憲一郎  

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