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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1311408
審判番号 不服2015-12743  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-03 
確定日 2016-02-18 
事件の表示 特願2011- 60488「電子部品及びその製造方法と、配線基板」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開、特開2012-199269〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年3月18日の出願であって、平成26年6月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成26年8月29日付けで意見書及び補正書が提出され、平成26年9月30日付けで拒絶理由(最後の拒絶理由通知)が通知され、これに対し平成26年12月5日付けで意見書及び補正書が提出され、平成27年4月8日付けで、平成26年12月5日付け手続補正書でした補正に対して補正の却下の決定がされるとともに、該補正の却下の決定と同日付けで拒絶査定(発送日:同年4月14日)がされ、これに対し平成27年7月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

2 平成27年7月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成27年7月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「基板と、
前記基板の第1の面に位置する第1のランドと、
前記第1の面に位置し、第1の方向において前記第1のランドと離れた状態で隣り合う第2のランドと、
第1の電極と第2の電極とを有し、前記第1の電極が前記第1のランドに接続されると共に、前記第2の電極が前記第2のランドに接続される素子と、を備え、
前記第1のランドは前記第2のランドと向かい合う第1の辺を有し、
前記第2のランドは前記第1のランドと向かい合う第2の辺を有し、
前記第1の辺は第1の中央部と第1の端とを含み、
前記第2の辺は第2の中央部と第2の端とを含み、
前記第1の方向において、前記第1の中央部と前記第2の中央部とが向かい合うと共に、前記第1の端と前記第2の端とが向かい合い、
前記第1の端と前記第2の端との間の第1の距離は、前記第1の中央部と前記第2の中央部との間の第2の距離よりも長く、
前記第1の電極は、前記第1の中央部と前記第1の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第1の辺と重なり、
前記第2の電極は、前記第2の中央部と前記第2の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第2の辺と重なり、
前記第1の電極の前記第1の方向と平面視で直交する方向における幅は、前記第2の距離よりも大きく、
前記第2の電極の前記第1の方向と平面視で直交する方向における幅は、前記第2の距離よりも大きいことを特徴とする電子部品。」
と補正された。

本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の電極」及び「第2の電極」について、「第1の電極の前記第1の方向と平面視で直交する方向における幅は、前記第2の距離よりも大きく、第2の電極の前記第1の方向と平面視で直交する方向における幅は、前記第2の距離よりも大きい」との限定を付すものであり、かつ、補正後の請求項1に記載される発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献及びその記載事項
原審において補正の却下の決定に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-271593号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「特許請求の範囲
表面実装型2電極チップ部品の電極に接続される部分の幅が前記電極の幅より狭いことを特徴とする表面実装型2電極チップ部品実装用のプリント基板のパッド。
発明の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
本発明は、表面実装型2電極チップ部品を実装するためにプリント基板に設けられるパッドに関する。」(1ページ左下欄5行?14行)

イ 「〔実施例〕
次に、本発明について図面を参照して説明する。
第1図は本発明の一実施例の平面図である(チップ部品3の右半分は透視して示す)。プリント基板上のパッド1の表面にクリームはんだ2をメタルマスク等で印刷し、チップ部品3を加圧実装する。パッド1はチップ部品3の電極6と接する側が円弧である半円形で、電極6と接続される部分は幅が電極6より狭く、パッド1の外周はチップ部品3の本体とは接していない。その時パッド1上のクリームはんだ2が若干食み出る部分4が発生する。はんだリフロー時その食み出たクリームはんだ4の移動する方向5は、チップ部品3の電極6で吸収される為、チップ部品3の周辺のボール状はんだの発生を防止する。
第2図および第3図はそれぞれ本発明の他の実施例の平面図およびさらに他の実施例の平面図である。第2図に示す実施例のパッド1aは、電極6と接する側が狭い台形で、電極6と接続される部分は、幅が電極6より狭い、第3図に示す実施例のパッド1bは、電極6と接する側に1頂点が位置する3角形で、電極6と接続される部分は幅が電極6よりも狭い。」(2ページ左上欄7行?右上欄10行)

ウ 第3図を参照すると、下記(ア)?(オ)の事項がみてとれる。
なお、「左」、「右」、「上」及び「下」」は、いずれも第3図での紙面に対するものをいう。

(ア)左側のパッド1bと、該左側パッド1bに対して左右方向に離れて設けられる右側のパッド1bとを有していること。

(イ)チップ部品3は、左側のパッド1bと接する左側の電極6と、右側のパッド1bと接する右側の電極6とを有していること。

(ウ)左側のパッド1bは、電極と接する側の頂点、左上の頂点及び左下の頂点を有し、左上の頂点から電極と接する側の頂点を経由して左下の頂点までつながる、逆くの字形状の辺を有する3角形状であり、また、右側のパッド1bは、電極と接する側の頂点、右上の頂点及び右下の頂点を有し、右上の頂点から電極と接する側の頂点を経由して右下の頂点までつながる、くの字形状の辺を有する3角形状であること。
また、左側のパッド1bの電極と接する側の頂点と、右側のパッド1bの電極と接する側の頂点とは、中心線(第3図の縦方向の一点鎖線)に対して、左右方向において、所定距離だけ離れた状態で対称に位置するとともに、左側のパッド1bの逆くの字形状の辺と、右側パッドの逆くの字形状の辺とは、上記中心線に対して対称になるように配置されていること。
更に、左側のパッド1bの左上の頂点と右側のパッド1bの右上の頂点との間の距離は、前記所定距離よりも長くなるとともに、左側のパッド1bの左下の頂点と右側のパッド1bの右下の頂点との間の距離は、前記所定距離よりも長くなっていること。

(エ)左側の電極6は、左上の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記逆くの字形状の辺と重なるとともに、左下の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記逆くの字形状の辺と重なっていること。
また、右側の電極6は、右上の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記くの字形状の辺と重なるとともに、辺の右下の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記くの字形状の辺と重なっていること。

(オ)左側の電極6の中心線方向の長さ及び右側の電極6の中心線方向の長さは、前記所定距離よりも長くなっていること。(特開平7-212024号公報の段落【0006】?【0008】及び図6についても参照。)

上記の記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、表面実装型2電極チップ部品実装用のプリント基板のパッドに関して、第3図の実施例として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が実質的に記載されている。
「プリント基板上のパッドの表面にクリームはんだをメタルマスクで印刷し、チップ部品を加圧実装したものであって、
左側のパッド1bと、該左側パッド1bに対して左右方向に離れて設けられる右側のパッド1bとを有し、
チップ部品3は、左側のパッド1bと接する左側の電極6と、右側のパッド1bと接する右側の電極6とを有し、
左側のパッド1bは、電極と接する側の頂点、左上の頂点及び左下の頂点を有し、左上の頂点から電極と接する側の頂点を経由して左下の頂点までつながる、逆くの字形状の辺を有する3角形状であり、右側のパッド1bは、電極と接する側の頂点、右上の頂点及び右下の頂点を有し、右上の頂点から電極と接する側の頂点を経由して右下の頂点までつながる、くの字形状の辺を有する3角形状であり、
左側のパッド1bの電極と接する側の頂点と、右側のパッド1bの電極と接する側の頂点とは、中心線に対して、左右方向において、所定距離だけ離れた状態で対称に位置するとともに、左側のパッド1bの逆くの字形状の辺と、右側パッドの逆くの字形状の辺とは、上記中心線に対して対称になるように配置されており、
左側のパッド1bの左上の頂点と右側のパッド1bの右上の頂点との間の距離は、前記所定距離よりも長くなるとともに、左側のパッド1bの左下の頂点と右側のパッド1bの右下の頂点との間の距離は、前記所定距離よりも長くなっており、
左側の電極6は、左上の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記逆くの字形状の辺と重なるとともに、左下の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記逆くの字形状の辺と重なっており、
右側の電極6は、右上の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記くの字形状の辺と重なるとともに、辺の右下の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記くの字形状の辺と重なっており、
左側の電極6の中心線方向の長さ及び右側の電極6の中心線方向の長さは、前記所定距離よりも長くなっている、
プリント基板に設けられたパッドに実装された2電極チップ部品。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「プリント基板」は、本願補正発明の「基板」に相当する。
以下同様に「左側のパッド1b」は「第1のランド」に、
「右側のパッド1b」は「第2のランド」に、
「左右方向」は「第1の方向」に、
「左側の電極6」は「第1の電極」に、
「右側の電極6」は「第2の電極」に、
「チップ部品3」は「素子」に、
「左上の頂点から電極と接する側の頂点を経由して左下の頂点までつながる、逆くの字形状の辺」は「第1の辺」に、
「右上の頂点から電極と接する側の頂点を経由して右下の頂点までつながる、くの字形状の辺」は「第2の辺」に、
左側のパッド1bの「電極と接する側の頂点」は「第1の中央部」に、
左側のパッド1bの「左上の頂点」(または「左下の頂点」)は「第1の端」に、
右側のパッド1bの「電極と接する側の頂点」は「第2の中央部」に、
右側のパッド1bの「右上の頂点」(または「右下の頂点」)は「第2の端」に、
「左側のパッド1bの左上の頂点と右側のパッド1bの右上の頂点との間の距離」(または「左側のパッド1bの左下の頂点と右側のパッド1bの右下の頂点との間の距離」)は「第1の距離」に、
「所定距離」は「第2の距離」に、
「中心線方向」は「第1の方向と平面視で直交する方向」に、
「プリント基板に設けられたパッドに実装された2電極チップ部品」は「電子部品」に、それぞれ相当する。

引用発明1は、「プリント基板上のパッドの表面にクリームはんだをメタルマスクで印刷し、チップ部品を加圧実装したものであって、左側のパッド1bと、該左側パッド1bに対して左右方向に離れて設けられる右側のパッド1bとを有し」ているから、引用発明1は本願補正発明の「基板と、前記基板の第1の面に位置する第1のランドと、前記第1の面に位置し、第1の方向において前記第1のランドと離れた状態で隣り合う第2のランド」に相当する構成を備えている。

引用発明1では、「チップ部品3は、左側のパッド1bと接する左側の電極6と、右側のパッド1bと接する右側の電極6とを有し」ているから、引用発明1は本願補正発明の「第1の電極と第2の電極とを有し、前記第1の電極が前記第1のランドに接続されると共に、前記第2の電極が前記第2のランドに接続される素子」に相当する構成を備えている。

引用発明1では、「左側のパッド1bは、電極と接する側の頂点、左上の頂点及び左下の頂点を有し、左上の頂点から電極と接する側の頂点を経由して左下の頂点までつながる、逆くの字形状の辺を有する3角形状であり、右側のパッド1bは、電極と接する側の頂点、右上の頂点及び右下の頂点を有し、右上の頂点から電極と接する側の頂点を経由して右下の頂点までつながる、くの字形状の辺を有する3角形状であり、左側のパッド1bの電極と接する側の頂点と、右側のパッド1bの電極と接する側の頂点とは、中心線に対して、左右方向において、所定距離だけ離れた状態で対称に位置するとともに、左側のパッド1bの逆くの字形状の辺と、右側パッドの逆くの字形状の辺とは、上記中心線に対して対称に配置されて」おり、ここで、中心線に対して対称であることは、本願補正発明でいうところの、第1の方向において「向かい合う」ことに相当する。
すると、引用発明1は本願補正発明の「前記第1のランドは前記第2のランドと向かい合う第1の辺を有し、前記第2のランドは前記第1のランドと向かい合う第2の辺を有し、前記第1の辺は第1の中央部と第1の端とを含み、前記第2の辺は第2の中央部と第2の端とを含み、前記第1の方向において、前記第1の中央部と前記第2の中央部とが向かい合うと共に、前記第1の端と前記第2の端とが向かい合い」に相当する構成を備えている。

引用発明1では、「左側のパッド1bの左上の頂点と右側のパッド1bの右上の頂点との間の距離は、前記所定距離よりも長くなるとともに、左側のパッド1bの左下の頂点と右側のパッド1bの右下の頂点との間の距離は、前記所定距離よりも長くなって」いるから、引用発明1は本願補正発明の「第1の端と前記第2の端との間の第1の距離は、前記第1の中央部と前記第2の中央部との間の第2の距離よりも長く」に相当する構成を備えている。

引用発明1では、「左側の電極6は、左上の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記逆くの字形状の辺と重なるとともに、左下の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記逆くの字形状の辺と重なっており、右側の電極6は、右上の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記くの字形状の辺と重なるとともに、辺の右下の頂点と電極と接する側の頂点との間において、上記くの字形状の辺と重なって」いる。
ここで、上記「左上の頂点と電極と接する側の頂点との間」、「左下の頂点と電極と接する側の頂点との間」、「右上の頂点と電極と接する側の頂点との間」及び「右下の頂点と電極と接する側の頂点との間」は、逆くの字形状の辺と、くの字形状の辺との間の離間距離が、前記所定距離よりも長くなっている位置である。
すると、引用発明1は本願補正発明の「第1の電極は、前記第1の中央部と前記第1の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第1の辺と重なり、前記第2の電極は、前記第2の中央部と前記第2の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第2の辺と重なり」に相当する構成を備えている。

引用発明1では、「左側の電極6の中心線方向の長さ及び右側の電極6の中心線方向の長さは、前記所定距離よりも長くなっている」から、引用発明1は本願補正発明の「第1の電極の前記第1の方向と平面視で直交する方向における幅は、前記第2の距離よりも大きく、前記第2の電極の前記第1の方向と平面視で直交する方向における幅は、前記第2の距離よりも大きい」との構成を備えている。

以上のことから、本願補正発明と引用発明1とは次の点で一致する。
「基板と、
前記基板の第1の面に位置する第1のランドと、
前記第1の面に位置し、第1の方向において前記第1のランドと離れた状態で隣り合う第2のランドと、
第1の電極と第2の電極とを有し、前記第1の電極が前記第1のランドに接続されると共に、前記第2の電極が前記第2のランドに接続される素子と、を備え、
前記第1のランドは前記第2のランドと向かい合う第1の辺を有し、
前記第2のランドは前記第1のランドと向かい合う第2の辺を有し、
前記第1の辺は第1の中央部と第1の端とを含み、
前記第2の辺は第2の中央部と第2の端とを含み、
前記第1の方向において、前記第1の中央部と前記第2の中央部とが向かい合うと共に、前記第1の端と前記第2の端とが向かい合い、
前記第1の端と前記第2の端との間の第1の距離は、前記第1の中央部と前記第2の中央部との間の第2の距離よりも長く、
前記第1の電極は、前記第1の中央部と前記第1の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第1の辺と重なり、
前記第2の電極は、前記第2の中央部と前記第2の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第2の辺と重なり、
前記第1の電極の前記第1の方向と平面視で直交する方向における幅は、前記第2の距離よりも大きく、
前記第2の電極の前記第1の方向と平面視で直交する方向における幅は、前記第2の距離よりも大きい電子部品。」

そうすると、引用発明1は、本願補正発明の発明特定事項を全て備えている。
したがって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明である。

(4)小括
本願補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
平成27年7月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成26年8月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
基板と、
前記基板の第1の面に位置する第1のランドと、
前記第1の面に位置し、第1の方向において前記第1のランドと離れた状態で隣り合う第2のランドと、
第1の電極と第2の電極とを有し、前記第1の電極が前記第1のランドに接続されると共に、前記第2の電極が前記第2のランドに接続される素子と、を備え、
前記第1のランドは前記第2のランドと向かい合う第1の辺を有し、
前記第2のランドは前記第1のランドと向かい合う第2の辺を有し、
前記第1の辺は第1の中央部と第1の端とを含み、
前記第2の辺は第2の中央部と第2の端とを含み、
前記第1の方向において、前記第1の中央部と前記第2の中央部とが向かい合うと共に、前記第1の端と前記第2の端とが向かい合い、
前記第1の端と前記第2の端との間の第1の距離は、前記第1の中央部と前記第2の中央部との間の第2の距離よりも長く、
前記第1の電極は、前記第1の中央部と前記第1の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第1の辺と重なり、
前記第2の電極は、前記第2の中央部と前記第2の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第2の辺と重なることを特徴とする電子部品。」

(2)原査定
原査定における拒絶理由の概要は、「この出願については、平成26年9月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、平成26年9月30日付け拒絶理由通知書によると、次の理由を含むものである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
1.実願昭61-27729号(実開昭62-140772号)のマイクロフィルム」

(3)引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭61-27729号(実開昭62-140772号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「2.実用新案登録請求の範囲
(1)先端にゆくにしたがつて徐々に幅を狭くしてあることを特徴とするチツプ部品取付用ランド部。
(2)接触部の幅がチツプ部品の電極の幅よりも狭いことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載のチツプ部品取付用ランド部。
(3)後端部の幅がチツプ部品の電極の幅よりも狭いことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載のチツプ部品取付用ランド部。」(明細書1ページ4行?13行)

イ 「(実施例)
次に、本考案について図面を参照して説明する。
第1図は本考案の一実施例のチップ部品取付用ランド部にチツプ部品を載せた状態を示す斜視図、第2図は第1図のチツプ部品をはんだ付けした状態を示す断面図である。
図中、1はプリント基板、2は導体パターン、3はチツプ部品取付用ランド部、4はランド部の後端部、5はチツプ部品取付用ランド部の先端、6は接触部、7はチツプ部品、8はチツプ部品の電極部、9は固着剤、10ははんだである。
チツプ部品取付用ランド部3は、チツプ部品7側の接触部6と導体パターン2側の後端部4とからなり、先端5にゆくにしたがつて徐々に幅が狭くなるように形成されている。接触部6には、チツプ部品7の電極部8が載る。また、後端部4は、導体パターン2につながつている。なお、第1図のチツプ部品取付用ランド部3は、第3図に示すように、接触部6の幅aがチツプ部品7の電極部8の幅cよりも狭く、後端部4の幅bがチツプ部品7の電極部8の幅cよりも広い。
・・・(中略)・・・
本実施例のチツプ部品取付用ランド部3によれば、先端5にゆくにしたがつて徐々に幅が狭くなつているので、はんだデイツプ法によりはんだ付けしても、第6図に示すようなはんだ過多が発生せず、また他のチツプ部品(図示せず)のはんだとの間で、はんだブリッジを誘発することもない。」(明細書3ページ4行?4ページ16行)

ウ 第1?3図を参照すると、下記(ア)?(エ)の事項がみてとれる。
なお、「左」、「右」、「上」及び「下」」は、いずれも第3図での紙面に対するものをいう。

(ア)プリント基板1の上面に設けられた左側のチップ取付用ランド部3と、該左側のチップ取付用ランド部3に対して左右方向に離れて設けられる右側のチップ取付用ランド部3とを有していること。

(イ)チップ部品7は、左側のチップ取付用ランド部3の接触部6に載る左側の電極部8と、右側のチップ取付用ランド部3の接触部6に載る右側の電極部8とを有していること。
また、左側及び右側のチップ取付用ランド部3は、それぞれ、後端部4から、先端5にゆくにしたがって徐々に幅が狭くなる部分(以下「狭まり部分」という。)を有している。
ここで、左側及び右側のチップ取付用ランド部3において、後端部4の上側と狭まり部分の上側との交点を、以下「狭まり部分の上側の始点」といい、また、後端部4の下側と狭まり部分の下側との交点を、以下「狭まり部分の下側の始点」という。

(ウ)左側のチップ取付用ランド部3は、狭まり部分の上側の始点から、先端5を経由して、狭まり部分の下側の始点までつながる、略逆くの字形状の辺を有しており、右側のチップ取付用ランド部3は、狭まり部分の上側の始点から、先端5を経由して、狭まり部分の下側の始点までつながる、略くの字形状の辺を有していること。
また、左側のチップ取付用ランド部3の先端5と、右側のチップ取付用ランド部3の先端5とは、左右方向において、所定距離だけ離れた状態で、互いに対称に位置するとともに、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点とは、左右方向において、互いに対称に位置するとともに、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点とは、左右方向において、互いに対称に位置していること。
更に、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点との間の距離は、前記所定距離よりも長く、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点との間の距離は、前記所定距離よりも長くなっていること。

(エ)左側の電極6は、狭まり部分の上側の始点と先端5との間において、上記略逆くの字形状の辺と重なるとともに、狭まり部分の下側の始点と先端5との間において、上記略逆くの字形状の辺と重なっていること。
また、右側の電極6は、狭まり部分の上側の始点と先端5との間において、上記略くの字形状の辺と重なるとともに、狭まり部分の下側の始点と先端5との間において、上記略くの字形状の辺と重なっていること。

上記の記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献2には、チップ部品取付用ランド部に関して、第1?3図に記載の実施例として、次の発明(以下「引用発明2」という。)が実質的に記載されている。
「プリント基板1と、プリント基板1の上面に設けられた左側のチップ取付用ランド部3と、該左側のチップ取付用ランド部3に対して左右方向に離れて設けられる右側のチップ取付用ランド部3とを有し、
チップ部品7は、左側のチップ取付用ランド部3の接触部6に載る左側の電極部8と、右側のチップ取付用ランド部3の接触部6に載る右側の電極部8とを有し、
左側のチップ取付用ランド部3は、狭まり部分の上側の始点から、先端5を経由して、狭まり部分の下側の始点までつながる、略逆くの字形状の辺を有しており、右側のチップ取付用ランド部3は、狭まり部分の上側の始点から、先端5を経由して、狭まり部分の下側の始点までつながる、略くの字形状の辺を有しており、
左側のチップ取付用ランド部3の先端5と、右側のチップ取付用ランド部3の先端5とは、左右方向において、所定距離だけ離れた状態で、互いに対称に位置するとともに、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点とは、左右方向において、互いに対称に位置するとともに、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点とは、左右方向において、互いに対称に位置しており、
左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点との間の距離は、前記所定距離よりも長く、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点との間の距離は、前記所定距離よりも長くなっており、
左側の電極6は、狭まり部分の上側の始点と先端5との間において、上記略逆くの字形状の辺と重なるとともに、狭まり部分の下側の始点と先端5との間において、上記略逆くの字形状の辺と重なっており、
右側の電極6は、狭まり部分の上側の始点と先端5との間において、上記略くの字形状の辺と重なるとともに、狭まり部分の下側の始点と先端5との間において、上記略くの字形状の辺と重なっている、
チップ部品取付用ランド部に取付られたチップ部品。」

(4)対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「プリント基板1」は、本願発明の「基板」に相当する。
以下同様に「左側のチップ取付用ランド部3」は「第1のランド」に、
「右側のチップ取付用ランド部3」は「第2のランド」に、
「左右方向」は「第1の方向」に、
「左側の電極部8」は「第1の電極」に、
「右側の電極部8」は「第2の電極」に、
「チップ部品7」は「素子」に、
「略逆くの字形状の辺」は「第1の辺」に、
「略くの字形状の辺」は「第2の辺」に、
左側のチップ取付用ランド部3の「先端5」は「第1の中央部」に、
左側のチップ取付用ランド部3の「狭まり部分の上側の始点」(または「狭まり部分の下側の始点」)は「第1の端」に、
右側のチップ取付用ランド部3の「先端5」は「第2の中央部」に、
右側のチップ取付用ランド部3の「狭まり部分の上側の始点」(または「狭まり部分の下側の始点」)は「第2の端」に、
「左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点との間の距離」(または「左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点との間の距離」)は「第1の距離」に、
「所定距離」は「第2の距離」に、
「チップ部品取付用ランド部に取付られたチップ部品」は「電子部品」に、それぞれ相当する。

引用発明2は、「プリント基板1と、プリント基板1の上面に設けられた左側のチップ取付用ランド部3と、該左側のチップ取付用ランド部3に対して左右方向に離れて設けられる右側のチップ取付用ランド部3とを有し」ているから、引用発明2は本願発明の「基板と、前記基板の第1の面に位置する第1のランドと、前記第1の面に位置し、第1の方向において前記第1のランドと離れた状態で隣り合う第2のランド」に相当する構成を備えている。

引用発明2では、「チップ部品7は、左側のチップ取付用ランド部3の接触部6に載る左側の電極部8と、右側のチップ取付用ランド部3の接触部6に載る右側の電極部8とを有し」ているから、引用発明2は本願発明の「第1の電極と第2の電極とを有し、前記第1の電極が前記第1のランドに接続されると共に、前記第2の電極が前記第2のランドに接続される素子」に相当する構成を備えている。

引用発明2では、「左側のチップ取付用ランド部3は、狭まり部分の上側の始点から、先端5を経由して、狭まり部分の下側の始点までつながる、略逆くの字形状の辺を有しており、右側のチップ取付用ランド部3は、狭まり部分の上側の始点から、先端5を経由して、狭まり部分の下側の始点までつながる、略くの字形状の辺を有しており、左側のチップ取付用ランド部3の先端5と、右側のチップ取付用ランド部3の先端5とは、左右方向において、所定距離だけ離れた状態で、互いに対称に位置するとともに、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点とは、左右方向において、互いに対称に位置するとともに、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点とは、左右方向において、互いに対称に位置して」おり、ここで、左右方向において「互いに対称」であることは、本願発明でいうところの、第1の方向において「向かい合う」ことに相当する。
すると、引用発明2は本願発明の「前記第1のランドは前記第2のランドと向かい合う第1の辺を有し、前記第2のランドは前記第1のランドと向かい合う第2の辺を有し、前記第1の辺は第1の中央部と第1の端とを含み、前記第2の辺は第2の中央部と第2の端とを含み、前記第1の方向において、前記第1の中央部と前記第2の中央部とが向かい合うと共に、前記第1の端と前記第2の端とが向かい合い」に相当する構成を備えている。

引用発明2では、「左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の上側の始点との間の距離は、前記所定距離よりも長く、左側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点と、右側のチップ取付用ランド部3の狭まり部分の下側の始点との間の距離は、前記所定距離よりも長くなって」いるから、引用発明2は本願発明の「第1の端と前記第2の端との間の第1の距離は、前記第1の中央部と前記第2の中央部との間の第2の距離よりも長く」に相当する構成を備えている。

引用発明2では、「左側の電極6は、狭まり部分の上側の始点と先端5との間において、上記略逆くの字形状の辺と重なるとともに、狭まり部分の下側の始点と先端5との間において、上記略逆くの字形状の辺と重なっており、右側の電極6は、狭まり部分の上側の始点と先端5との間において、上記略くの字形状の辺と重なるとともに、狭まり部分の下側の始点と先端5との間において、上記略くの字形状の辺と重なって」いる。
ここで、上記「狭まり部分の上側の始点と先端5との間」、「狭まり部分の下側の始点と先端5との間」、「狭まり部分の上側の始点と先端5との間」及び「狭まり部分の下側の始点と先端5との間」は、略逆くの字形状の辺と、略くの字形状の辺との間の離間距離が、前記所定距離よりも長くなっている位置である。
すると、引用発明2は本願発明の「第1の電極は、前記第1の中央部と前記第1の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第1の辺と重なり、前記第2の電極は、前記第2の中央部と前記第2の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第2の辺と重なり」に相当する構成を備えている。

以上のことから、本願発明と引用発明2とは次の点で一致する。
「基板と、
前記基板の第1の面に位置する第1のランドと、
前記第1の面に位置し、第1の方向において前記第1のランドと離れた状態で隣り合う第2のランドと、
第1の電極と第2の電極とを有し、前記第1の電極が前記第1のランドに接続されると共に、前記第2の電極が前記第2のランドに接続される素子と、を備え、
前記第1のランドは前記第2のランドと向かい合う第1の辺を有し、
前記第2のランドは前記第1のランドと向かい合う第2の辺を有し、
前記第1の辺は第1の中央部と第1の端とを含み、
前記第2の辺は第2の中央部と第2の端とを含み、
前記第1の方向において、前記第1の中央部と前記第2の中央部とが向かい合うと共に、前記第1の端と前記第2の端とが向かい合い、
前記第1の端と前記第2の端との間の第1の距離は、前記第1の中央部と前記第2の中央部との間の第2の距離よりも長く、
前記第1の電極は、前記第1の中央部と前記第1の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第1の辺と重なり、
前記第2の電極は、前記第2の中央部と前記第2の端との間に位置し、且つ前記第1の方向における前記第1の辺と前記第2の辺との間の距離が前記第2の距離より長く位置する前記第2の辺と重なる電子部品。」

そうすると、引用発明2は、本願発明の発明特定事項を全て備えている。
したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明である。

(5)小括
本願発明は、引用文献2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-18 
結審通知日 2015-12-22 
審決日 2016-01-05 
出願番号 特願2011-60488(P2011-60488)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 113- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯星 潤耶  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
発明の名称 電子部品及びその製造方法と、配線基板  
代理人 柳瀬 睦肇  

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