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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1311464
審判番号 不服2015-13311  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-13 
確定日 2016-03-22 
事件の表示 特願2013-121501「データ保全処理装置及びデータ保全処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月18日出願公開、特開2014-238746、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月10日の出願であって、平成27年4月9日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年7月13日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成27年7月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「複数のハードディスクを組み合わせたディスクアレイをRAIDとして機能させるRAIDコントローラに接続された上位装置に設けられ、このRAIDコントローラを監視すると共に、このRAIDコントローラが有するメモリに外部入力され一時記憶されたデータの保全処理を実行するデータ保全処理装置であって、
前記メモリにて発生するビットエラーを検知すると共にその発生頻度を監視し、この発生頻度が予め設定された閾値を超えた場合に前記メモリが異常状態にあることを検出するメモリ監視検出手段と、
このメモリ監視検出手段が前記異常状態を検出した場合、前記ディスクアレイへの書込み方式がライトバックであるか否かを識別し、前記書込み方式がライトバックである場合、前記メモリに一時記憶されたデータを前記ディスクアレイに退避させ、その後前記書込み方式をライトスルーに変更するデータ保護手段と、を有することを特徴としたデータ保全処理装置。」
とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「データ保全処理装置」について、「上位装置に設けられ」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-61739号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の(a)ないし(c)のとおりの記載がある。

(a)「第1図において、まず本発明は、上位制御部10にディスクキャッシュ制御部12を共通バス14を介して接続した装置を対象とする。」(第2頁左下欄14?16行)

(b)「一方、ライトバックデータのサーチ中又はライトバックデータの転送中にメモリチェック部がパリティエラーを検出した場合には、以後のライトバック制御は行なわず、ディスクキャッシュ制御部はライトバック制御モードを切離してライトスルー制御モードとなり、システムダウンに至ることなくリード時の高速化を維持することができる。
更に、キャッシュデータのサーチ中又はキャッシュデータのDMA転送中にメモリエラーが発生した場合には、ライトバック制御機能を切離してライトスルー制御モードに変更すると同時に、エラー通知を受けた上位制御部からの指令によりライトバックデータメモリ及びライトバック管理テーブルのそれぞれをキャッシュメモリ及びキャッシュ管理テーブルに変更するモード変更を指示することができ、これによってディスクキャッシュ制御機能を継続して維持することができる。」(第3頁右上欄第5?左下欄第1行)

(c)「ステップS5で正常終了が判別されると上位制御部10に対する通知は行なわれないが、ライトバック制御においてライトバック管理テーブル28をサーチした際、又はライトバックデータメモリ26からディスク装置48-1にデータ転送を行なう際にメモリパリティエラーやECCエラー等の異常を検出した際には、上位制御部10に対し異常終了通知を行なう。
この異常終了通知を受けた上位制御部10は、ステップS6でディスクキャッシュ制御部12に対し、ライトバック制御機能の切り離しを指示し、この結果、ディスクキュツシュ制御部12はライトスルー制御モードに切換わる。」(第4頁右下欄第6?18行)

そうすると、引用例1には、
「上位制御部に接続された、キャッシュメモリとライトバックデータメモリとを有するディスクキャッシュ制御部であって、
前記キャッシュメモリ又は前記ライトバックデータメモリのパリティチェックエラーを検出するメモリチェック部と、
前記メモリチェック部でパリティチェックエラーを検出した場合、上位制御部に異常を通知し、上位制御部からの指示により、キャッシュの動作をライトバックからライトスルーにモード変更を行うディスクキャッシュ制御部。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明はキャッシュメモリのエラーを監視するものであるから、「監視装置」といい得るものである。
また、引用発明の「キャッシュメモリとライトバックデータメモリ」は、補正発明の「メモリ」に相当することは明らかである。
また、引用発明の「ディスクキャッシュ制御部」はハードディスクを制御するものであるから、引用発明の「ディスクキャッシュ制御部」と補正発明の「RAIDコントローラ」とは、いずれも「ハードディスクを制御するディスク制御部」である点で共通する。
よって、補正発明の「複数のハードディスクを組み合わせたディスクアレイをRAIDとして機能させるRAIDコントローラに接続された上位装置に設けられ、このRAIDコントローラを監視すると共に、このRAIDコントローラが有するメモリに外部入力され一時記憶されたデータの保全処理を実行するデータ保全処理装置であって」と引用発明の「上位制御部に接続された、キャッシュメモリとライトバックデータメモリとを有するディスクキャッシュ制御部」とは、いずれも、「ハードディスクを制御するディスク制御部であって、データが外部入力され一時記憶されるメモリを有するディスク制御部」である点で共通する。
また、補正発明の「前記メモリにて発生するビットエラーを検知すると共にその発生頻度を監視し、この発生頻度が予め設定された閾値を超えた場合に前記メモリが異常状態にあることを検出するメモリ監視検出手段」と引用発明の「前記キャッシュメモリ又は前記ライトバックデータメモリのパリティチェックエラーを検出するメモリチェック部」とは、いずれも「前記メモリにて発生するエラーを検出するメモリ監視手段」である点で共通する。
また、補正発明の「このメモリ監視検出手段が前記異常状態を検出した場合、前記ディスクアレイへの書込み方式がライトバックであるか否かを識別し、前記書込み方式がライトバックである場合、前記メモリに一時記憶されたデータを前記ディスクアレイに退避させ、その後前記書込み方式をライトスルーに変更するデータ保護手段」と引用発明の「前記メモリチェック部でパリティチェックエラーを検出した場合、上位制御部に異常を通知し、上位制御部からの指示により、キャッシュの動作をライトバックからライトスルーにモード変更を行う」ものとは、いずれも、「メモリ監視手段がエラーを検出した場合、ハードディスクへの書込み方式をライトバックからライトスルーに変更する」ものである点で共通する。

したがって、補正発明と引用発明とは、
「ハードディスクを制御するディスク制御部であって、データが外部入力され一時記憶されるメモリを有するディスク制御部と、
前記メモリにて発生するエラーを検出するメモリ監視手段と、
前記メモリ監視手段がエラーを検出した場合、ハードディスクへの書込み方式をライトバックからライススルーに変更する
監視装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
制御対象のハードディスクが、補正発明では複数のハードディスクを組合わせたRAIDとして機能するものであるのに対し、引用発明ではそうではない点。
[相違点2]
監視装置におけるメモリ監視手段と書込み方式の変更を行うものが、補正発明では上位装置に設けられるのに対し、引用発明ではそうではない点。
[相違点3]
メモリ監視手段が、補正発明ではビットエラーを検知すると共にその発生頻度を監視し、この発生頻度が予め設定された閾値を超えた場合にメモリが異常状態であることを検知するのに対し、引用発明ではパリティチェックエラーを検出する点。
[相違点4]
本願発明ではメモリの異常状態を検出した場合に書込み方式がライトバックであるか否かを識別しているのに対し、引用発明ではそうではない点。
[相違点5]
補正発明では、メモリに一時記憶されたデータを退避させる保全処理を行うのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。

(3)判断
上記相違点3,4について検討する。
[相違点3]について
引用発明では、キャッシュメモリとライトバックメモリとの二重のメモリを有しているので、一方のメモリがパリティエラーにより使用不能になった場合には、他方のメモリのみでデータを失うことなく使用が可能であるから、ビットエラーを検出することもその発生頻度を監視する必要性もない。よって、引用発明に原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-83757号公報に記載された現用デバイスのビットエラーを検出し、その発生頻度を監視する技術を適用することが容易であるとすることはできない。

[相違点4]について
引用発明では、通常状態の書込み方式はライトバックであるから、ライトバックであるか否かを識別する必要はない。よって、メモリの異常状態を検出した場合に書込み方式がライトバックであるか否かを識別することが引用発明から容易であるとすることはできない。

したがって、上記相違点1,2,5について検討するまでもなく、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-2に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-03-07 
出願番号 特願2013-121501(P2013-121501)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山澤 宏
高瀬 勤
発明の名称 データ保全処理装置及びデータ保全処理プログラム  
代理人 高橋 勇  

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