• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1311532
審判番号 不服2015-11690  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-22 
確定日 2016-03-22 
事件の表示 特願2012-501805「メールアドレス自動添付機能を有する端末装置、メールアドレス自動添付方法及びそのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 1日国際公開、WO2011/105398、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年(2011年)2月23日(優先権主張2010年2月23日、日本)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月5日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年1月29日付けで手続補正がなされ、同年3月17日付けで拒絶査定がなされ、同年6月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
平成27年6月22日付けの手続補正のうち、特許請求の範囲についてする補正は、実質的に請求項の削除を目的とするものと認めることができ、同手続補正は適法なものと認められる。
したがって、本願の請求項1-3係る発明は、上記平成27年6月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 ショートメッセージサービスに準拠したテキストの送受信及び電子メールの送受信をすることが可能なメールアドレス自動添付端末装置において、
当該メールアドレス自動添付端末装置の電子メールアドレスを記憶しておく記憶手段と、
利用者からの操作を受け付ける入力手段と、
前記入力手段が受け付けた操作内容から前記ショートメッセージサービスに準拠したテキストを生成することを検知した場合に、前記記憶手段から前記電子メールアドレスを取得し、当該取得した電子メールアドレスを当該生成したテキストに挿入するメールアドレス添付手段と、
前記挿入が終了後に前記生成したテキストを相手方端末に送信する通信手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記電子メールアドレスを前記生成したテキストへの挿入を行うか否かについての情報である設定情報を更に記憶し、
前記メールアドレス添付手段は、前記設定情報の内容がテキストの挿入を行うという内容だった場合のみ前記挿入を行い、
前記電子メールアドレスが変更された場合は、前記設定情報の内容をテキストの挿入を行うという内容に切り替えることを特徴とするメールアドレス自動添付端末装置。」

第3 原査定の理由の概要
(A)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(B)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物:特開2007-200197号公報

刊行物の【0017】?【0025】段落には、携帯電話機(本願の「メールアドレス自動添付端末装置」)の最新の電子メールアドレスをアドレス帳に保存し、電子メールの送信時に、電子メールアドレス変更通知を前記電子メールの本文に添付することが記載されている。
また、【0026】段落には、電子メールアドレス変更通知をショートメッセージサービスに利用することも記載されている。さらに、図4を参照すると、電子メールアドレス変更通知の中に最新の電子メールアドレスが含まれていることは明らかである。
刊行物の【0021】,【0022】段落には、送付フラグ(本願の「設定情報」)が付与されているか否かに応じて、メールアドレス変更通知を行うか否かを判断することが記載されている。
刊行物の【0019】段落には、電子メールアドレスが更新された場合には、送付フラグを自動的にリセットすることも記載されている。
してみると、本願発明は、刊行物に記載された発明であり、また刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

出願人は平成27年1月29日付け意見書において「本願は、メールアドレス変更通知を行うか否かを判断するものではなく、電子メールアドレスをテキストに挿入するか否かを設定情報を基に判断するものですので、本願と刊行物とは全く異なります」とし、本願の進歩性を主張している。
上記主張について検討するに、刊行物には、携帯電話機の記憶部に、メールアドレス変更通知を行うか否かを判断するために利用される送付フラグを記憶することが記載されている(特に段落[0019]-[0022]を参照されたい。)。
また、刊行物には、メールアドレス変更通知の中に最新のメールアドレスが含まれることや(特に[図4]を参照されたい。)、当該メールアドレス変更通知をショートメッセージサービスで利用することも記載されている(特に段落[0026]を参照されたい。)。
そうすると、メールアドレス変更通知をショートメッセージサービスで利用する場合であって、携帯電話機の記憶部に送付フラグが記憶されている場合、ショートメッセージテキストの中にメールアドレスを挿入することになるから、送付フラグが、メールアドレスをテキストに挿入するか否かを判断するためにも利用されていることは明らかである。
してみると、刊行物の「送付フラグ」は、請求項1の「設定情報」に相当するから、出願の上記主張を採用することはできない。

第4 当審の判断
1.引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2007-200197号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の記載がある(下線は本審決での着目箇所を表している。)。

【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。先ず、本発明に係る第1の実施の形態について説明する。本実施形態では、通信機器として携帯電話機を用いるものである。以下、図を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施形態に係る携帯電話機1の構成図の一例である。本実施形態に係る携帯電話機1は一般的な携帯電話機と同様の機能を有するものであり、制御部110、記憶部120、キー操作部130、LCD部140、無線部150、アンテナ160、マイク170、レシーバ180、電話番号識別部190等を有している。記憶部120はアドレス帳として個人データ(氏名、電話番号、電子メールアドレス等)等を保存する。本実施形態に係る携帯電話機1の記憶部120には、更に電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報を該電子メールアドレスに関連づけて保存する機能、この携帯電話機1のユーザ情報(氏名、電話番号、電子メールアドレス等)及び電子メールアドレス変更を通知するメールの文章を保存する機能を有している。LCD部140は受信したメールの本文を表示したり、アドレス帳のデータを表示する機能を有している。キー操作部130は、携帯電話機1のユーザが電話番号を入力したり電子メールの本文を入力したりするものである。無線部150は無線基地局との通信を行う部分であり、アンテナ160を介して電波の送受信を行っている。電話番号識別部190は着信を受けた時に相手の電話番号を認識するいわゆるナンバーディスプレイサービスを利用して電話番号を識別するものであると共に、通信機器のユーザから通信相手への発呼を行う場合にユーザがキー操作部130を用いる等して入力した電話番号を識別するものである。制御部110は、記憶部120、キー操作部130、LCD部140、無線部150、マイク160、レシーバ180を制御し、記憶部120に保存された通話相手のデータを基に電子メールアドレスの変更を通知するメールを作成し、そのメールを無線部150、アンテナ160を経由して送付する機能を有する。尚、マイク170及びレシーバ180は、携帯電話機1のユーザが通信相手との電話通信を行うための音声入出力部品として使用される。
【0019】
図2は本実施形態で使用する携帯電話機1の記憶部120に保存されているアドレス帳のデータの一例である。図2において、アドレス帳には友人や知人の氏名、電話番号、電子メールアドレス、送付フラグが登録されている。ここで、送付フラグは対応する電子メールアドレスへ電子メールを送付した時に付与される。尚、携帯電話機1の電子メールアドレスが更新された場合は制御部110は全ての送付フラグを自動的にリセットする。更に、アドレス帳のNo.00の欄には携帯電話機1のユーザのデータを登録することができ、ユーザの氏名、携帯電話機1の電話番号、電子メールアドレス等が登録される。ここで、本実施形態ではアドレス帳に登録されている携帯電話機1の電子メールアドレスは、ユーザの電子メールアドレスの変更処理に連動して自動的に更新される。自動的に更新するのではなく、ユーザが手動で更新することも可能である。
【0020】
次に、アドレス帳のNo.2の佐藤電夫が携帯電話機1のユーザである田中太郎に発呼した場合について説明する。図3は、電話通信開始から電子メールアドレス変更を通知するメールを送付するまでの携帯電話機1の動作例を示したものである。図3において、携帯電話機1のユーザ田中太郎が着呼を受けて電話通信を開始する(ステップ101)。携帯電話機1の制御部110が電話番号識別部190を制御することで電話番号識別部190がナンバーディスプレイサービスを利用して通話相手の電話番号が「080××××7654」であることを識別する(ステップ102)。尚、携帯電話機1のユーザから発呼を行う場合には、ユーザは相手の電話番号をアドレス帳や電話の発着信履歴からキー操作部130を用いて選択するか、キー操作部130により電話番号を入力して電話をかける。この場合も電話番号識別部190は通信相手の電話番号を認識することができる。
【0021】
次に、携帯電話機1の制御部110がアドレス帳のデータを参照して、識別した電話番号「080××××7654」がアドレス帳に登録されているか否か検索する(ステップ103)。本実施形態では携帯電話機1の制御部110は、アドレス帳を参照することで電話番号「080××××7654」が佐藤電夫の電話番号であることを認識する。そして、電話番号「080××××7654」に対応する電子メールアドレスが登録されているか否かを確認する(ステップ104)。制御部110は、アドレス帳を参照して電話番号「080××××7654」に対応する電子メールアドレス「zzz@zz.ne.jp」が登録されているのを認識し、送付フラグが付与されているか否かについて確認する(ステップ105)。本実施形態においては、電話番号「080××××7654」に対応する送付フラグが付与されていない。従って、制御部110は佐藤電夫には電子メールを送付していないことを認識する。尚、ステップ103、ステップ104及びステップ105において、携帯電話機1の制御部110はアドレス帳に通話相手の電話番号、電子メールアドレスが登録されていない場合、及び送付フラグが付与されている場合にはいずれも通常の電話通信に対する処理を行う。
【0022】
佐藤電夫には電子メールを送付していないので、制御部110は佐藤電夫との電話通信が終了したか否かを検知し(ステップ106)、電話通信終了後にLCD部140に佐藤電夫に電子メールアドレス変更を通知するメールを送付するかしないかを選択する画面を表示する(ステップ107)。制御部110はユーザが「送付する」を選択したことを検知し(ステップ108)、電子メールアドレス変更を通知するメールをLCD部140に表示する(ステップ109)。更に、制御部110はユーザが電子メールアドレス変更を通知するメールの表示画面において「送信する」を選択したことを検知し(ステップ110)、電子メールアドレス変更を通知するメールを送付する(ステップ111)。そして、制御部110はマイク170からアラーム音を発生させて電子メールアドレス変更通知メールを送付したことをユーザに報知し(ステップ112)、アドレス帳の佐藤電夫のデータに送付フラグを付与し(ステップ113)、処理を終了する(ステップ114)。尚、ステップ108及びステップ110において、ユーザが「送付しない」を選択した場合には、いずれの場合も携帯電話機1の制御部110は処理を終了して、例えばLCD部140に待ち受け画面等を表示する。
【0023】
ステップ111で送付した電子メールアドレス変更を通知するメールの例を図4に示す。本文は「田中太郎」「abab@cd.ne.jp(携帯電話機1の最新の電子メールアドレス)」等のアドレス帳のデータと記憶部120に保存されている定型文を基に制御部110が編集する。ここで、記憶部120に保存されている定型文は書き換えることが可能である。また、ステップ112において、ユーザへの報知方法としてLCD部140や着信ランプ等から光を発するようにしてもよいし、報知しないことも可能である。
【0024】
また、ユーザは携帯電話機1のLCD部140にアドレス帳のデータを表示させ、所望の相手についての送付フラグを確認するこができる。電子メールアドレス変更通知メールが送付される前の佐藤電夫のデータが図5に例示される。図5において、送付フラグが付与されていない場合には「変更通知を送信」のボタンが表示される。携帯電話機1のユーザは図5の画面において「変更通知を送付」のボタンをキー操作部130を用いて選択して、佐藤電夫に任意のタイミングで電子メールアドレス変更を通知するメールを送付することができる。尚、「変更通知を送付」のボタンを選択することで電子メールアドレス変更を通知するメールを送付した場合でも、送付フラグが付与される。
【0025】
更に、電子メールアドレスの変更を通知するメールの送付のトリガーに電子メールの送付を用いることもできる。この場合、通常の電子メールの本文の送付と一緒に電子メールアドレス変更を通知するメールを送付する、または通常の電子メールの本文に電子メールアドレス変更通知を添付して送付することで、ユーザは電子メールアドレスの変更後に電子メールアドレスの変更の通知するメールが送付されているか否かを意識することなく所望の相手に対して電子メールを送付することが可能となる。
【0026】
尚、本実施携帯の応用例として、ユーザの携帯電話機の通信会社と通話相手の携帯電話機の通信会社とが同じ場合には、通話相手の電話番号宛にショートメッセージサービスを利用して電子メールアドレス変更を通知することも可能である。尚、ショートメッセージサービスが利用できるか否かは、アドレス帳に登録されている電子メールアドレスのドメインが一致するかどうかで判断する。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る携帯電話機1は、アドレス帳に送付フラグがない場合にのみ電子メールアドレス変更通知メールを送付するので、送付が必要である相手に対してのみ確実に送付することができる。携帯電話機1が電話通信をトリガーとして電子メールアドレス変更を通知するメールを送付することから、携帯電話機1のユーザは電子メールアドレスを変更した場合にも電子メールドレス変更通知を送付し忘れたり、電子メールドレス変更通知の送付の要否をユーザがいちいち意識する必要がない。また、制御部110が電子メールアドレス変更通知メールを編集するので、携帯電話機1のユーザは送信ボタンを選択するだけで所望のメールを送付することができる。また、電子メールアドレス変更を通知するメールを送付した時にマイク170からアラーム音を発するので、ユーザに送付を確実に報知することができる。

ここで、段落【0025】の記載が、段落【0017】から続く「第1の実施の形態」についての説明であることや、段落【0027】の記載を踏まえると、上記段落【0025】でいう「電子メールアドレスの変更を通知するメールの送付のトリガーに電子メールの送付を用いる」という技術的事項と、「通常の電子メールの本文に電子メールアドレス変更通知を添付して送付する」という技術的事項を採用した場合における携帯電話機1の動作は、少なくとも次のような動作を含むものになると考えられる。
(1)ユーザによる電子メールの作成開始から送信までの何れかのタイミングで、送信先の電子メールアドレスを識別する。
(2)(1)で識別された送信先の電子メールアドレスに、送付フラグが付与されているか否かを判別し、付与されている場合は通常の動作(通常の電子メールの送付)を行うが、付与されていない場合は、通常の電子メールの本文に電子メールアドレス変更通知を添付して送付する。

以上を前提に、上記記載事項を関連図面と技術常識に照らせば、次のことがいえる。
ア.刊行物の図1に示される「携帯電話機1」は、段落【0018】、【0025】、【0026】等の記載から明らかなように、「ショートメッセージサービスに準拠したテキストの送受信及び電子メールの送受信」をすることが可能なものである。
イ.段落【0018】、【0019】等の記載によれば、上記「携帯電話機1」は、「携帯電話機1の電子メールアドレスを含むユーザ情報」と、「電子メールアドレス変更通知の文章」等を記憶しておく「記憶部120」であって、「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」をも記憶する「記憶部120」と、「利用者からの操作を受け付けるキー操作部130」を有している。
ウ.上記「ここで、」以下で検討した前提事項と、段落【0023】、【0025】、【0027】、図3の記載によれば、上記「携帯電話機1」は、「通常の電子メールを送付する手段A」といい得る手段と、「通常の電子メールの本文に電子メールアドレス変更通知を添付して送付する手段B」といい得る手段とを有しており、その「手段B」は、上記「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」の内容が未送付という内容だった場合(送付フラグが付与されていない場合)のみ、「電子メールアドレス変更通知」を通常の電子メールの本文に添付して送付するように動作するものである。
エ.段落【0023】や図4の記載によれば、上記「電子メールアドレス変更通知」は、記憶部120に記憶されている「携帯電話機1の電子メールアドレス」を含むものである。
オ.段落【0019】の記載によれば、上記「携帯電話機1」は、電子メールアドレスが変更された場合は、上記「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」の内容を未送付という内容に切り替える(送付フラグをリセットする)ように動作するものである。

以上を踏まえると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「 ショートメッセージサービスに準拠したテキストの送受信及び電子メールの送受信をすることが可能な携帯電話機1において、
前記携帯電話機1の電子メールアドレスを含むユーザ情報と、「電子メールアドレス変更通知」の文章等を記憶しておく記憶部120と、
利用者からの操作を受け付けるキー操作部130と、
通常の電子メールを送付する手段Aと、
通常の電子メールの本文に「電子メールアドレス変更通知」を添付して送付する手段Bと、
を備え、
前記「電子メールアドレス変更通知」は、前記記憶部120に記憶されている携帯電話機1の電子メールアドレスを含むものであり、
前記記憶部120は、「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」を更に記憶し、
前記手段Bは、前記「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」の内容が未送付という内容だった場合(送付フラグが付与されていない場合)のみ、前記「電子メールアドレス変更通知」を通常の電子メールの本文に添付して送付し、
前記電子メールアドレスが変更された場合は、前記「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」の内容を未送付という内容に切り替える(送付フラグをリセットする)
携帯電話機1。」

なお、刊行物の段落【0026】には、「電子メールアドレス変更」をショートメッセージサービスを利用して通知することもできる旨記載されているだけであり、同段落【0026】の記載をもってしても、段落【0025】でいう「トリガー」としての「電子メールの送付」を「ショートメッセージの送付」とすることや、「ショートメッセージの本文に、最新の電子メールアドレスを含む電子メールアドレス変更通知を挿入」することまでが刊行物に記載されているとはいえない。

2.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(1)引用発明の「携帯電話機1」は、端末装置の一種である。
また、その「携帯電話機1」は、「通常の電子メールの本文に電子メールアドレス変更通知を添付して送付する手段B」を備えるものであり、その「電子メールアドレス変更通知」は、「記憶部120に記憶されている携帯電話機1の電子メールアドレス」を含むものである。
これらによれば、引用発明の「手段B」は、「記憶部120に記憶されている携帯電話機1の電子メールアドレス」を通常の電子メールの本文に自動添付することを含んでいるといえる。
したがって、引用発明の「携帯電話機1」は、本願発明と同様に「メールアドレス自動添付端末装置」ともいい得るものである。
(2)引用発明の「携帯電話機1の電子メールアドレス」は、本願発明の「メールアドレス自動添付端末装置の電子メールアドレス」に相当し、引用発明の「記憶部120」は、本願発明の「記憶手段」に相当する。
(3)引用発明の「キー操作部130」は、本願発明の「入力手段」に相当する。
(4)引用発明における「電子メールアドレス変更通知」は、上述したように「記憶部120に記憶されている携帯電話機1の電子メールアドレス」を含むものであるから、引用発明でいう「通常の電子メールの本文に電子メールアドレス変更通知を添付」したものは、「通常の電子メールの本文に記憶部120から取得した携帯電話機1の電子メールアドレスを添付したもの」ということもできる。また、「電子メールの本文」は、「ユーザが生成したテキスト」であるのが普通である。
このことと上記(1)で述べたことを併せると、引用発明の「手段B」における「添付」の機能をつかさどる部分は、本願発明の「メールアドレス添付手段」と、「前記記憶手段から前記電子メールアドレスを取得し、当該取得した電子メールアドレスを生成したテキストに添付するメールアドレス添付手段」といい得るものである点で共通する。
(5)上記(4)を踏まえると、引用発明の「手段B」における「送付」の機能をつかさどる部分は、「前記添付が終了後に前記電子メールの本文を相手方端末に送信する」ものということができる。
したがって、上記「手段B」における「送付」の機能をつかさどる部分は、本願発明の「通信手段」と、「前記添付が終了後に生成したテキストを相手方端末に送信する通信手段」である点で共通する。
(6)引用発明における「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」は、通常の電子メール本文に「電子メールアドレス変更通知」を添付するか否かについての情報ということができ、そのことと上記(4)で述べたことを併せると、引用発明の上記「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」は、本願発明の「前記電子メールアドレスを前記生成したテキストへの挿入を行うか否かについての情報である設定情報」と、「前記電子メールアドレスを前記生成したテキストへ添付するか否かについての情報である設定情報」といい得る情報である点で共通する。
(7)上記(4)と(6)を併せると、引用発明において「手段B」が、前記「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」の内容が未送付という内容だった場合(送付フラグが付与されていない場合)のみ、前記「電子メールアドレス変更通知」を通常の電子メールの本文に添付して送付することと、本願発明において「メールアドレス添付手段」が、「前記設定情報の内容がテキストの挿入を行うという内容だった場合のみ前記挿入を行う」こととは、「メールアドレス添付手段」が、「前記設定情報の内容がテキストの添付を行うという内容だった場合のみ前記添付を行」うことである点で共通する。
(8)上記(7)を踏まえると、引用発明の携帯電話機1が、「前記電子メールアドレスが変更された場合は、前記「電子メールを送付したか否かを表すフラグのような情報(送付フラグ)」の内容を未送付という内容に切り替える(送付フラグをリセットする)」ことは、本願発明のメールアドレス自動添付端末装置が、「前記電子メールアドレスが変更された場合は、前記設定情報の内容をテキストの挿入を行うという内容に切り替える」ことと、「前記電子メールアドレスが変更された場合は、前記設定情報の内容をテキストの添付を行うという内容に切り替える」ことである点で共通する。

以上を踏まえると、本願発明と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「 ショートメッセージサービスに準拠したテキストの送受信及び電子メールの送受信をすることが可能なメールアドレス自動添付端末装置において、
当該メールアドレス自動添付端末装置の電子メールアドレスを記憶しておく記憶手段と、
利用者からの操作を受け付ける入力手段と、
前記記憶手段から前記電子メールアドレスを取得し、当該取得した電子メールアドレスを生成したテキストに添付するメールアドレス添付手段と、
前記添付が終了後に前記生成したテキストを相手方端末に送信する通信手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記電子メールアドレスを前記生成したテキストへ添付するか否かについての情報である設定情報を更に記憶し、
前記メールアドレス添付手段は、前記設定情報の内容がテキストの添付を行うという内容だった場合のみ前記添付を行い、
前記電子メールアドレスが変更された場合は、前記設定情報の内容をテキストの添付を行うという内容に切り替えることを特徴とするメールアドレス自動添付端末装置。」である点。

(相違点1)
本願発明の「メールアドレス添付手段」は、「入力手段が受け付けた操作内容からショートメッセージサービスに準拠したテキストを生成することを検知した場合」に、記憶手段から電子メールアドレスを取得し、当該取得した電子メールアドレスを生成したテキストに添付するものであり、その「生成したテキスト」が、「当該生成したテキスト」、すなわち「ショートメッセージサービスに準拠したテキスト」として生成されたテキストであるのに対し、引用発明の「メールアドレス添付手段」は、そのようなものではない(刊行物には、「記憶手段から電子メールアドレスを取得し、生成したテキストに添付する動作を開始する具体的契機についての記載がなく、また、引用発明の「生成したテキスト」は、「電子メール」として生成されたテキストであって、「ショートメッセージサービスに準拠したテキスト」として生成されたテキストではない。)点。

(相違点2)
本願発明の「電子メールアドレスの添付」は、「生成したテキストへの挿入」であるのに対し、引用発明の「電子メールアドレスの添付」は、「生成したテキストへの挿入」ではない点。

3.判断
当審は、引用発明において相違点1、2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たこととはいえないと判断する。理由は次のとおりである。
(1)上記1.の「ここで、」以下に述べたように、引用発明は、刊行物の段落【0025】でいう「電子メールアドレスの変更を通知するメールの送付のトリガーに電子メールの送付を用いる」という技術的事項が採用される場合に構成される発明であって、電子メールの送付が行われることを前提に、「通常の電子メールの本文に電子メールアドレス変更通知を添付して送付する」という電子メール特有の「添付」の機能を利用したものといえるから、その電子メールの送付を上記トリガーとすることに代えて、「添付」という機能を有しないショートメッセージの送付を上記トリガーとすることは直ちにはできず、そうすることを当業者が容易に推考し得たこととはいえない。
(2)引用発明における「電子メールアドレス変更通知」の送付のトリガーを、「電子メールの送付」ではなく「ショートメッセージの送付」とした場合には、アドレス帳に電子メールアドレスが登録されている相手であっても、加入する通信会社が異なる等の理由でショートメッセージを送付できない相手に対しては「電子メールアドレス変更通知」を自動的に送付することができないことになるから、その面からも、当業者は、引用発明における「電子メールアドレス変更通知」の送付のトリガーとして「ショートメッセージの送付」を用いようとはしないと考えられる。
(3)「電子メールの送付」を上記トリガーとすることに加えて「ショートメッセージの送付」をも上記トリガーとする場合には、上記(2)で言及したような問題は発生しないが、上記(1)で言及した問題は依然として残り、その問題に対処できるような特別の仕組み(ユーザが生成したショートメッセージに「電子メールアドレス変更通知」を挿入するといった仕組みや、ユーザが生成したショートメッセージと「電子メールアドレス変更通知」に対応するショートメッセージの2通のショートメッセージを送付するといった仕組み)が必要となり、装置が複雑化してしまう。また、上記問題に対処できるような特別な仕組みは、ショートメッセージの分野において普通に採用されている仕組みであるとは認められない。
したがって、電子メールの送付を上記トリガーとすることに加えてショートメッセージの送付をも上記トリガーとすることも、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(4)以上のことは、引用発明において相違点1、2に係る本願発明の構成を採用することが、当業者が容易に推考し得たことではなかったことを意味している。

以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

本願の請求項2、3に係る発明は、本願発明を方法あるいはプログラムの発明として表現し直したものに過ぎず、本願発明と実質的に相違するものではないから、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-3に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-03-07 
出願番号 特願2012-501805(P2012-501805)
審決分類 P 1 8・ 571- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 寺谷 大亮新田 亮  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
小曳 満昭
発明の名称 メールアドレス自動添付機能を有する端末装置、メールアドレス自動添付方法及びそのプログラム  
代理人 丸山 隆夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ