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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1311672 |
審判番号 | 不服2014-13654 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-14 |
確定日 | 2016-03-28 |
事件の表示 | 特願2011-523298「気体の充填された鏡を備えたオプトエレクトロニクス半導体チップおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月25日国際公開、WO2010/020213、平成24年 1月12日国内公表、特表2012-501065、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、2009年8月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年8月22日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月23日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年2月28日に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたが、同年3月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲の補正がなされ、当審において平成27年3月31日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月6日に誤訳訂正書が提出されたものである。 本願の請求項1ないし16に係る発明(以下、請求項の番号に応じて「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は、平成27年10月6日に提出された誤訳訂正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 活性領域(10)を含む半導体ボディ(1)と、 鏡面層(2)と、 前記半導体ボディ(1)と前記鏡面層(2)とのあいだに配置され、前記半導体ボディ(1)と前記鏡面層(2)とのあいだの距離(D)を定める複数のコンタクト点(3)とを有する、 オプトエレクトロニクス半導体チップにおいて、 前記半導体ボディ(1)と前記鏡面層(2)とのあいだに少なくとも1つの中空室(4)が形成されており、 該少なくとも1つの中空室(4)に気体(40)が含まれており、 前記鏡面層(2)は水平方向において全てのコンタクト点(3)を超えて延在しており、 前記鏡面層(2)は、高屈折率材料の層と低屈折率材料の層とを交互に配置して成るブラッグ鏡である ことを特徴とするオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項2】 前記複数のコンタクト点(3)のうち少なくとも1つは閉じた導体路を形成している、請求項1記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項3】 前記複数のコンタクト点(3)のうち少なくとも1つを介して、当該オプトエレクトロニクス半導体チップの動作中に所定の電流が前記活性領域(10)へ注入される、請求項2記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項4】 前記少なくとも1つの中空室(4)がパシベーション材料(5)によって封止されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項5】 前記気体(40)は前記少なくとも1つの中空室(4)内に常圧よりも小さい圧力で封入されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項6】 前記複数のコンタクト点(3)は前記半導体ボディ(1)に直接に接している、請求項1から5までのいずれか1項記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項7】 前記鏡面層(2)と前記半導体ボディ(1)とのあいだの距離(D)は10nm以上10μm以下である、請求項1から6までのいずれか1項記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項8】 前記鏡面層(2)は、ブラッグ鏡と金属鏡との組み合わせであり、 前記金属鏡は、前記活性領域(10)に面する向きで、前記ブラッグ鏡上に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項9】 前記複数のコンタクト点(3)は、はんだ材料Sn,In,Ga,Biのうち少なくとも1つを含んでいる、請求項1から8までのいずれか1項記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項10】 前記鏡面層(2)は支持体(7)上に被着されており、該支持体(7)は前記鏡面層(2)の、前記中空室(4)および前記半導体ボディ(1)から遠い側に位置する、請求項1から9までのいずれか1項記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項11】 前記支持体(7)と前記鏡面層(2)とのあいだに阻止層(6)が配置されている、請求項10記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ。 【請求項12】 少なくとも1つの活性領域(10)を備えた半導体ボディ(1)を用意するステップ、 鏡面層(2)を備えた支持体(7)を用意するステップ、 複数のコンタクト点(3)を前記鏡面層(2)の上面(2a)および/または前記半導体ボディ(1)の下面(1b)に被着するステップ、 熱圧着により、前記複数のコンタクト点(3)を介して前記半導体ボディ(1)と前記鏡面層(2)とを接続し、前記複数のコンタクト点(3)によって前記半導体ボディ(1)と前記鏡面層(2)とのあいだの距離(D)を定めるステップ、ならびに、 前記半導体ボディ(1)と前記鏡面層(2)とのあいだに少なくとも1つの中空室(4)を形成し、該中空室に気体(40)を封入するステップ を有し、 前記鏡面層(2)は、高屈折率材料の層と低屈折率材料の層とを交互に配置して成るブラッグ鏡である ことを特徴とするオプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法。 【請求項13】 前記鏡面層(2)は、ブラッグ鏡と金属鏡との組み合わせであり、 前記金属鏡は、前記活性領域(10)に面する向きで、前記ブラッグ鏡上に配置されている、請求項12記載のオプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法。 【請求項14】 前記複数のコンタクト点(3)をプリンティングプロセスにより被着する、請求項12または13記載のオプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法。 【請求項15】 前記複数のコンタクト点(3)を蒸着プロセスにより被着する、請求項12または13記載のオプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法。 【請求項16】 前記複数のコンタクト点(3)を、小さな部材として被着する、請求項12または13記載のオプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法。」 2.引用例及び引用発明 (1)引用例1 これに対して、当審の平成27年3月31日付け拒絶理由通知に引用された特開2006-269678号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに、以下の記載がある。(下線は、当審による。) ア 「【0022】 [第1実施形態] まず、本発明の第1実施形態に係る発光モジュールについて図面を参照して説明する。参照する図1A?Dは、第1実施形態に係る発光モジュールの説明図であり、このうち、図1Aは第1実施形態に係る発光モジュールの上面図、図1Bは図1Aに示す発光モジュールのキャップを外した状態の上面図、図1Cは図1AのI-I線断面図、図1Dは図1Cに示す発光モジュールに使用されるLEDチップ及び基台の拡大断面図である。 【0023】 図1Cに示すように、第1実施形態に係る発光モジュール1は、凹部11aを有するベース11と、ベース11と接合するキャップ12とからなるパッケージ10を含む。ベース11とキャップ12との接合は、例えば不活性ガス雰囲気下において、ベース11及びキャップ12のそれぞれの外縁部同士を押さえつけた状態でシーム溶接(数アンペア程度のパルス電流を用いた溶接)すればよい。また、パッケージ10内には、図1Aに示すように、複数の基台13と、各基台13上に設けられた、半導体多層膜50(図1D参照)を含むLEDチップ14とが収容されている。また、図1Bに示すように、それぞれのLEDチップ14は、基台13上に設けられた給電端子55(図1D参照)とワイヤ15とを介して互いに電気的に接続されている。また、LEDチップ14へ給電するための2本の端子部16が、ワイヤ15と基台13上に設けられた給電端子55(図1D参照)とを介してLEDチップ14と電気的に接続されている。なお、本実施形態では、端子部16を2本用いたが、本発明はこれに限定されず、LEDチップ14の配置状態や接続状態により3本以上の端子部16を用いてもよい。 ・・・ 【0025】 図1Dに示すように、LEDチップ14は、半導体多層膜50と、半導体多層膜50を支持するn-GaN基板51と、半導体多層膜50に設けられた電極52及び電極53とを含む。半導体多層膜50は、n-GaN基板51側から順に積層されたn型半導体層50a、発光層50b及びp型半導体層50cからなる。電極52は、p型半導体層50cに接触して形成されており、電極53は、n型半導体層50aに接触して形成されている。そして、電極52,53は、それぞれ基台13上に設けられた給電端子55とAuバンプ54を介して電気的に接続されている。また、基台13は、半田17(図1C参照)との接触面がTi/Auめっき膜56で覆われている。電極52の構成材料としては、発光層50bから発せられた光の少なくとも一部を反射する材料(例えばRh/Pt/Au等)を使用するのが好ましい。発光層50bから発せられた光を窓部12a(図1C参照)側へ反射することができるため、発光モジュール1の光の取り出し効率が向上するからである。この場合の電極52は、上述した「第2光反射層」に相当する。電極53の構成材料は、特に限定されず、例えばTi/Au等を使用することができる。給電端子55の構成材料としては、電極52の場合と同様の理由により、発光層50bから発せられた光の少なくとも一部を反射する材料(例えばTi/Pt/Al等)を使用するのが好ましい。 【0026】 このように構成された発光モジュール1によれば、LEDチップ14から発生する熱を基台13、Ti/Auめっき膜56、半田17及び金属製支持部11bを介して放熱することができる。また、基台13が無機材料からなるため、耐熱性及び耐光性の高い発光モジュール1とすることができる。更に、貫通孔11cがベース11の側面に設けられているため、ベース11の側面からLEDチップ14へ給電することができる。よって、ベース11の底面(金属製支持部11bの底面)に放熱体(図示せず)を直に接触させることが可能となるため、発光モジュール1の放熱性を良好に維持できる。なお、パッケージ10内において水分で加速される金属マイグレーションを抑制するためには、パッケージ10内に乾燥ガス(乾燥空気、乾燥窒素ガス、乾燥アルゴン等)が封入されていることが好ましい。」 イ 図1は、次のものである。 (2)引用発明1 ア 上記(1)アによれば、引用例1には、 「パッケージ10内に、基台13と、半導体多層膜50を含むLEDチップ14とが収容されており、 LEDチップ14は、半導体多層膜50と、半導体多層膜50を支持するn-GaN基板51と、半導体多層膜50に設けられた電極52及び電極53とを含み、 半導体多層膜50は、n型半導体層50a、発光層50b及びp型半導体層50cからなり、 電極52,53は、それぞれ基台13上に設けられた給電端子55とAuバンプ54を介して電気的に接続され、 給電端子55の構成材料として、発光層50bから発せられた光の少なくとも一部を反射する材料(例えばTi/Pt/Al等)を使用し、 パッケージ10内において水分で加速される金属マイグレーションを抑制するために、パッケージ10内に乾燥ガス(乾燥空気、乾燥窒素ガス、乾燥アルゴン等)が封入されている、 発光モジュール1。」が記載されている。 イ 上記(1)アの記載とともに、図1をみれば、Auバンプ54は複数設けられ、給電端子55は、複数のAuバンプ54が配置された領域よりも外側まで延在していることが見て取れる。 ウ したがって、引用文献1には、(パッケージ10内に収容された、給電端子55が設けられた基台13と、半導体多層膜50を含むLEDチップ14と、それらを接続するAuバンプ54に着目すれば、)以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「パッケージ10内に収容された、給電端子55が設けられた基台13と、半導体多層膜50を含むLEDチップ14と、それらを接続するAuバンプ54であって、 LEDチップ14は、半導体多層膜50と、半導体多層膜50を支持するn-GaN基板51と、半導体多層膜50に設けられた電極52及び電極53とを含み、 半導体多層膜50は、n型半導体層50a、発光層50b及びp型半導体層50cからなり、 電極52,53は、それぞれ基台13上に設けられた給電端子55とAuバンプ54を介して電気的に接続され、 給電端子55の構成材料として、発光層50bから発せられた光の少なくとも一部を反射する材料(例えばTi/Pt/Al等)を使用し、 パッケージ10内において水分で加速される金属マイグレーションを抑制するために、パッケージ10内に乾燥ガス(乾燥空気、乾燥窒素ガス、乾燥アルゴン等)が封入されており、 Auバンプ54は複数設けられ、給電端子55は、複数のAuバンプ54が配置された領域よりも外側まで延在した、 給電端子55が設けられた基台13と、半導体多層膜50を含むLEDチップ14と、それらを接続するAuバンプ54。」 (3)本願発明1と引用発明1との対比 ア 引用発明1の「発光層50b」、「(n型半導体層50a、発光層50b及びp型半導体層50cからなる)半導体多層膜50と、半導体多層膜50を支持するn-GaN基板51」、「Auバンプ54」は、それぞれ、本願発明1の「活性領域(10)」、「半導体ボディ(1)」、「コンタクト点(3)」に相当する。 イ 引用発明1の「(発光層50bから発せられた光の少なくとも一部を反射する材料(例えばTi/Pt/Al等)からなる)給電端子55」は、本願発明1の「鏡面層」と、光反射層である点で一致する。 ウ 引用発明1の「給電端子55が設けられた基台13と、半導体多層膜50を含むLEDチップ14と、それらを接続するAuバンプ54」は、本願発明1の「オプトエレクトロニクス半導体チップ」に相当する。 エ 引用発明1において、「Auバンプ54」は「給電端子55が設けられた基台13」と「半導体多層膜50を含むLEDチップ14」とを接続しているから、引用発明1において、半導体多層膜50と給電端子55とのあいだに配置され、半導体多層膜50と給電端子55とのあいだの距離を定めるAuバンプ54を有するといえる。 オ 引用発明1において、「Auバンプ54は複数設けられ、給電端子55は、複数のAuバンプ54が配置された領域よりも外側まで延在し」ているから、給電端子55は水平方向において全てのAuバンプ54を超えて延在しているといえる。 カ 以上によれば、本願発明1と引用発明1とは、 「活性領域(10)を含む半導体ボディ(1)と、 光反射層と、 前記半導体ボディと前記光反射層とのあいだに配置され、前記半導体ボディと前記反射層とのあいだの距離(D)を定める複数のコンタクト点(3)とを有する、 オプトエレクトロニクス半導体チップにおいて、 前記反射層は水平方向において全てのコンタクト点(3)を超えて延在している、 オプトエレクトロニクス半導体チップ。」 で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明1の光反射層は「鏡面層」であるのに対し、引用発明1の「(発光層50bから発せられた光の少なくとも一部を反射する材料(例えばTi/Pt/Al等)からなる)給電端子55」が、そのようなものか否か明らかではない点 [相違点2] 本願発明1は、「前記半導体ボディと前記光反射層とのあいだに少なくとも1つの中空室(4)が形成されており、該少なくとも1つの中空室に気体(40)が含まれている」のに対し、引用発明1がそのようなものか否か明らかではない点 [相違点3] 本願発明1の光反射層は、「高屈折率材料の層と低屈折率材料の層とを交互に配置して成るブラッグ鏡である」のに対し、引用発明1では、「(発光層50bから発せられた光の少なくとも一部を反射する材料(例えばTi/Pt/Al等)からなる)給電端子55」である点。 4.判断 q 上記相違点について検討する。 事案に鑑み、まず相違点3について検討する。 引用例1には、引用発明1における「給電端子55」を「高屈折率材料の層と低屈折率材料の層とを交互に配置して成るブラッグ鏡」とすることについて、記載も示唆もされていない。 また、当審の拒絶理由通知で引用された他の引用文献をみても、引用発明1における「給電端子55」を「高屈折率材料の層と低屈折率材料の層とを交互に配置して成るブラッグ鏡」とすることについて、示唆する記載は認められない。 さらに、引用発明1において、「給電端子55」として、「高屈折率材料の層と低屈折率材料の層とを交互に配置して成るブラッグ鏡」を適用する理由を認めることができない。 したがって、相違点1及び2についての検討するまでもなく、上記相違点3に係る事項を発明特定事項に含む本願発明1は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 本願発明2ないし11は、本願発明1をさらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法に係る本願発明12ないし16についても、発明特定事項として「前記鏡面層(2)は、高屈折率材料の層と低屈折率材料の層とを交互に配置して成るブラッグ鏡である」との事項を含んでいるから、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 また、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2007/136392号(以下「引用例2」という。)に記載された発明(以下「引用発明2」という。)は、本願発明1の「前記鏡面層(2)は水平方向において全てのコンタクト点(3)を超えて延在」するとの事項を備えるものでなく、さらに、上記相違点3に係る事項を示唆するものではないから、本願発明1ないし本願発明16について、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1ないし16に係る発明について、引用例1又は引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-03-11 |
出願番号 | 特願2011-523298(P2011-523298) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 村井 友和 |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
河原 英雄 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 気体の充填された鏡を備えたオプトエレクトロニクス半導体チップおよびその製造方法 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 星 公弘 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |