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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1311767
審判番号 不服2014-23403  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-17 
確定日 2016-03-03 
事件の表示 特願2012-516457「オーディオビジュアル資産の配信におけるオーディオ・ライセンシング」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月 6日国際公開、WO2011/000105、平成24年12月10日国内公表、特表2012-531764〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、2010年6月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年12月6日付けの拒絶理由通知に対し、平成26年6月10日付けで、意見書、補正書が提出されたが、平成26年7月4日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として、平成26年11月17日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.原査定の理由

原査定は、理由1(特許法第36条第6項第2号)、理由2(特許法第29条第1項柱書)及び理由3(特許法第29条第2項)によって本件出願を拒絶するものであって、上記理由3の概要は、本願の請求項1ないし40に係る各発明は下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものである。

刊行物1:特開2008-216889号公報
刊行物2:特開2004-234146号公報
刊行物3:特開2008-216890号公報
刊行物4:特開2006-86561号公報

3.補正の内容及び適法性について

(1)補正の内容

平成26年11月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成26年6月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、3、16を、以下のように補正するものである。
なお、下線部は、補正箇所であり、審判請求人が付したものである。

(ア)請求項1について

(ア-1)補正前の「配布者から受領者に前記オーディオビジュアル作品のコピーを伝達する段階であって」という記載を、「配布者によって創作された前記オーディオビジュアル作品のコピーを受領者の所有する再生装置がネットワーク側から受信する段階であって」という記載に補正する。

(ア-2)補正前の「前記受領者が、前記第一のオーディオ作品の識別情報を判別するよう前記第二のデータを読む段階」という記載を、「前記受領者の所有する再生装置が、前記第一のオーディオ作品の識別情報を判別するよう前記第二のデータを読む段階」という記載に補正する。

(ア-3)補正前の「前記受領者が、前記オーディオビジュアル作品の前記コピーを伝達する前記段階とは別個に、前記第一のオーディオ作品のコピーを取得する段階」という記載を、「前記受領者の所有する再生装置が、前記オーディオビジュアル作品の前記コピーを受信する前記段階とは別個に、前記第一のオーディオ作品のコピーを取得する段階」という記載に補正する。

(イ)請求項3について

補正前の「請求項3記載の方法」という記載を、「請求項2記載の方法」という記載に補正する。

(ウ)請求項16について

(ウ-1)補正前の「デジタル形式の前記オーディオビジュアル作品のコピーを受領する段階であって」という記載を、「デジタル形式の前記オーディオビジュアル作品のコピーを受領者の所有する再生装置がネットワーク側から受信する段階であって」という記載に補正する。

(ウ-2)補正前の「前記第一のオーディオ作品の識別情報を判別するよう前記第二のデータを読む段階」という記載を、「前記第一のオーディオ作品の識別情報を判別するようにするために、前記受領者の所有する再生装置が、前記第二のデータを読む段階」という記載に補正する。

(ウ-3)補正前の「前記オーディオビジュアル作品の前記コピーとは別個の源から前記第一のオーディオ作品のコピーを取得する段階」という記載を、「前記受領者の所有する再生装置が、前記オーディオビジュアル作品の前記コピーとは別個の情報源から前記第一のオーディオ作品のコピーを取得する段階」という記載に補正する。

(ウ-4)補正前の「前記第一のオーディオ作品を含む前記オーディオビジュアル作品の新しいバージョンを生成するよう、前記ビデオ・セグメントを前記オーディオ・セグメントの第1のセグメントと組み合わせる段階」という記載を、「前記第一のオーディオ作品を含む前記オーディオビジュアル作品の新しいバージョンを生成するよう、前記受領者の所有する再生装置が、前記ビデオ・セグメントを前記オーディオ・セグメントの第1のセグメントと組み合わせる段階」という記載に補正する。

(2)補正の適法性

上記(ア-1)?(ア-3)、(ウ-1)?(ウ-4)の補正は、拒絶査定における理由1の(1)(動作を実行する主体が記載されておらず、不明であり、明確でない点。)、理由2の(1)?(3)(請求項に係る発明が、人間の精神活動、もしくは、情報の単なる提示を記載したものである点。)を解消するための補正であり、上記(イ)の補正は、拒絶査定における理由1の(4)(請求項3は、請求項3自身を引用しており、意味不明であるため、明確でない点。)を解消するための補正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする補正であると認められ、特許法第17条の2第5項第4号で規定する要件を満たす適法な補正である。

4.本願発明

上記特許請求の範囲についての補正は、上記のとおり適法な補正であり、本件出願の請求項1ないし40に係る発明は、平成26年11月17日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし40に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項16に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
なお、A.?D.については、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成A」、・・・、「構成D」という。)

「A.ビデオ・セグメントおよびオーディオ・セグメントを含むオーディオビジュアル作品を再生する方法であって:
B-1.デジタル形式の前記オーディオビジュアル作品のコピーを受領者の所有する再生装置がネットワーク側から受信する段階であって、
B-2.前記コピーは前記オーディオビジュアル作品の前記ビデオ・セグメントを含む第一のデータおよび前記オーディオビジュアル作品の前記オーディオ・セグメントの第一のセグメントを含む第一のオーディオ作品を同定する第二のデータを含み、前記オーディオビジュアル作品の前記コピーは前記第一のオーディオ作品のコピーを含まない、段階と;
C.前記第一のオーディオ作品の識別情報を判別するようにするために、前記受領者の所有する再生装置が、前記第二のデータを読む段階と;
前記受領者の所有する再生装置が、前記オーディオビジュアル作品の前記コピーとは別個の情報源から前記第一のオーディオ作品のコピーを取得する段階と;
D.前記第一のオーディオ作品を含む前記オーディオビジュアル作品の新しいバージョンを生成するよう、前記受領者の所有する再生装置が、前記ビデオ・セグメントを前記オーディオ・セグメントの第1のセグメントと組み合わせる段階とを含む、
方法。」

5.刊行物1発明

原審の拒絶理由に引用された、特開2008-216889号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「電子音楽装置、電子音楽装置システム、及びそれらに用いるプログラム」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、放送コンテンツ自体に楽曲演奏データを含めなくても、番組の放送中に番組内で流れる音楽に連動して電子音楽装置を動作することのできる電子音楽装置、電子音楽装置システム、及びそれらに用いるプログラムを提供しようとするものである。また、電子音楽装置を動作させるために利用する音楽の著作権管理を容易にできるようにした電子音楽装置、電子音楽装置システム、及びそれらに用いるプログラムを提供しようとするものである。」

イ.「【0011】
この発明によれば、放送局から伝送する放送コンテンツに電子音楽装置を連動動作させるために利用する楽曲演奏データを含ませておくことなく、前記楽曲演奏データを放送局から配信される放送コンテンツとは分離させてサーバから取得するようにしたことから、電子音楽装置を連動動作することができる放送コンテンツの制作や、電子音楽装置を連動動作させるために利用する楽曲に関しての著作権管理が容易にできるようになる、という効果を得る。」

ウ.「【0022】
テレビ放送局Bは、コンテンツ制作装置CSで制作された放送コンテンツを無線あるいは有線にて放送する。テレビ放送局Bからの放送コンテンツの放送(配信)形態はディジタル放送であってもよいし、アナログ放送であってもよい。こうしたテレビ放送局Bから配信される放送コンテンツはコンテンツ制作装置CSにより制作され、例えばコンサートなどの音楽番組、音楽を含んだコマーシャル、音楽を含んだ映画やドラマなど、少なくとも番組の一部に映像や音声の他に音楽を含むコンテンツである。コンテンツ制作装置CSは、映像信号、音声信号、データ信号を含む放送コンテンツを制作する、あるいは映像、音声、音楽等の放送コンテンツの内容を変更するための機器である。コンテンツ制作装置CSで制作される放送コンテンツには、楽曲制御情報が含まれる。楽曲制御情報は、放送コンテンツに含まれる音楽に対応した楽曲データファイル(例えば、スタンダードMIDIデータファイル)を特定する楽曲特定情報と、該楽曲データファイルの再生を開始するタイミング(番組の放送に応じて音楽が流れはじめる時刻と等しい)を制御するための再生開始タイミング制御情報とを含むデータである。この楽曲制御情報は、テレビ放送局Bから放送される放送信号の映像信号部分、音声信号部分、データ信号部分のいずれかに含まれていればよい(映像信号や音声信号中に含ませる場合には、楽曲制御情報を電子透かし等の技術を用いて埋め込む)。すなわち、コンテンツ制作装置CSで制作される放送コンテンツには、電子音楽装置を連動動作するために利用する楽曲データファイル(MIDIデータなど)が含まれない。
【0023】
テレビ受信機Tは、受信・デコード部RD、ブラウン管や液晶ディスプレイあるいはプラズマディスプレイ等の映像再生部V、スピーカ等の音声再生部M、楽曲制御情報抽出部MCを少なくとも含む。受信・デコード部RDは、テレビ放送局Bからテレビ放送として配信される放送信号を受信し、受信した放送信号を映像信号、音声信号、データ信号に分けてデコードを行う。デコード後の映像信号は映像再生部Vに送られて、映像再生部Vは該デコード後の映像信号に基づき映像を表示する。一方、デコード後の音声信号は音声再生部Mに送られて、音声再生部Vは該デコード後の音声信号に基づき音声を発音する。デコード後のデータ信号については、図示していないデータ利用部によりデータ信号の種類に応じた利用がなされる。例えば、文字を表示する文字放送などがある。また、デコード後の映像信号、音声信号、データ信号は楽曲制御情報抽出部MCに送られ、楽曲制御情報抽出部MCは何れかの信号から楽曲制御情報を抽出する。抽出された楽曲制御情報は、電子楽器DMへと送られる。
【0024】
サーバSは、放送コンテンツ内の音楽に関連する楽曲データファイルを多数蓄積(記憶)しており、通信ネットワークを介して接続された電子楽器DMからの楽曲取得要求に応じて、要求された楽曲データファイルを電子楽器DMに対して送信する。電子楽器DMは上述の図1に示したような電子音楽装置であって、テレビ放送局Bで放送中の番組内で流される音楽にあわせて、自機が有する演奏操作子(鍵盤)4Aを駆動して自動的に押鍵動作を行ったり、音源回路7を駆動して音楽を鳴らしたり、ディスプレイ6Aを駆動して放送中の音楽の楽譜などを表示したり、さらには図示しない鍵盤LEDを駆動して自動的に点灯/消灯を繰り返し行ったりするなどの動作を連動して行うことができる機器である。記憶部Rは通信部Iを介して取得した各種情報、例えばテレビ受信機T(詳しくは楽曲制御情報抽出部MC)から送られる楽曲制御情報(楽曲特定情報と再生開始タイミング制御情報を含む)や、楽曲取得情報の要求に応じてサーバSから送られる楽曲データファイルなどを記憶する。
【0025】
制御部Cは、記憶部Rに記憶されている再生開始タイミング制御情報に従って、再生部Gに対して再生開始指示を行う。再生部Gは、制御部Cからの再生開始指示に応じて、記憶部Rに記憶された該当する楽曲特定情報(例えば楽曲データファイル名や楽曲データファイルURL(Uniform Resorce Locator)など)に従って、記憶部Rに記憶されている多数の楽曲データファイルの中から該当する楽曲データファイルを読み出す、あるいは通信部Iを介して、インターネットなどの既存の通信ネットワークを介して双方向通信可能に適宜に接続されるサーバSから該当する楽曲データファイルをストリーミング配信により受信する。記憶部Rから読み出した楽曲データファイル(又はサーバSからストリーミング配信された楽曲データファイル)は、音源部O、演奏操作子(鍵盤)駆動部KD、表示器駆動部DDの少なくともいずれか1つに送られて、テレビ放送局Bから配信される番組の放送中に流される音楽にあわせて該電子音楽装置を連動動作させる。すなわち、再生開始タイミング制御情報に基づいて楽曲データファイルの再生開始が制御され、再生された楽曲データファイルに基づいて、音源部O、演奏操作子駆動部KD、表示器駆動部DDのうちの少なくとも1つが制御されて、テレビ受信機に表示されている映像及び/又は再生される音声と同期して、電子楽器DMにおいて自動的に音楽を発音したり、演奏操作子(鍵盤)を自動的に駆動したり、表示器(ディスプレイや鍵盤LEDなど)を自動的に駆動したりする。」

エ.「【0028】
次に、上記図2?図4に示した連動動作システムを構成するテレビ受信機T(又はセットトップボックスTB)、電子楽器DM(電子音楽装置)、サーバSとで各々実行する、ユーザがテレビ受信機Tで視聴しているユーザ所望の番組内で流される音楽にあわせて、電子楽器DMを連動動作するまでの一連の処理概要について説明する。ただし、サーバSからの楽曲データファイルの配信形態として、大きくダウンロード方式とストリーミング配信方式(所謂逐次配信方式)とにわけることができることから、それぞれの配信形態毎に分けて説明する。
【0029】
まず、ダウンロード方式の場合について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、テレビ受信機T(又はセットトップボックスTB)、電子楽器DM、サーバSの各々が実行する「連動動作処理」の一実施例を説明するためのフローチャートである。図6は、ダウンロード方式の場合におけるテレビ受信機T(又はセットトップボックスTB)、電子楽器DM、サーバSとの間における情報の送受信のタイミングと、楽曲再生のタイミングとを示した概念図である。図5に示す処理は、図2に示したテレビ受信機T(又はセットトップボックスTB)、電子楽器DM、サーバSのそれぞれにおいて適宜起動されるソフトウェアプログラムであって、プログラム起動後は常に所定の待機状態にあり、これらの処理はそれぞれの機器本体の電源オンに応じて常時起動される。なお、実際にはテレビ受信機T(又はセットトップボックスTB)と電子楽器DMとサーバSとでは放送信号の受信から楽曲データファイルの再生までの処理をそれぞれ独立に実行するものであるが、ここでは説明を理解しやすくするために、一連の処理の流れに沿ってテレビ受信機T(又はセットトップボックスTB)と電子楽器DMとサーバSの各々で実行される処理について説明する。すなわち、それぞれの機器の間では所定の情報を送受信しながら並行して各々の処理を行うので、この情報の送受信の流れに沿って各々の処理を順に説明する。以下、図5及び図6を参照しながら、ダウンロード方式の場合における「連動動作処理」について説明する。
【0030】
まず、テレビ受信機T(又はセットトップボックスTB)はテレビ放送局Bから放送信号を受信・デコードすることに応じて、該受信・デコードした放送信号から楽曲制御情報(楽曲特定情報と再生開始タイミング制御情報とを含む)を抽出し、これを電子楽器DMに対して送信する(ステップS1)。この楽曲制御情報は、その中に含まれる再生開始タイミング制御情報により表されるタイミング(時刻)よりも十分前(少なくとも楽曲特定情報に基づいて楽曲データファイルをダウンロードする場合に、ダウンロードに要する時間よりも前)の放送信号内に含ませておく。電子楽器DMはテレビ受信機T(又はセットトップボックスTB)から楽曲制御情報を受信すると、該受信した楽曲制御情報を保存(記憶)する(ステップS11)。そして、該保存した楽曲制御情報のうちの楽曲特定情報に基づき、既に関連する楽曲データファイルを記憶済みであるか否かを判定する(ステップS12)。関連する楽曲データファイルを記憶済みでないと判定した場合には(ステップS12のNO)、電子楽器DMを通信ネットワークを介して所定のサーバSに接続し、該接続したサーバSに対して関連する楽曲データファイルを要求する(ステップS13)。サーバSは、電子楽器DMから要求された楽曲データファイルに関して、著作権管理に関する処理を実行する(ステップS21)。著作権管理に関する処理としては、例えば楽曲データファイルの利用に応じた分の課金や楽曲データファイルを使用できる範囲を決める使用権利の付与などの処理がある。こうした著作権管理に関する処理を終了すると、サーバSは電子楽器DMに対して該当の楽曲データファイルを送信する(ステップS22)。
【0031】
電子楽器DMはサーバSから楽曲データファイルを受信すると、該受信した楽曲データファイルを保存(記憶)する(ステップS14)。すなわち、ここではサーバSから楽曲データファイルをダウンロードする。楽曲データファイルのダウンロード後、保存した再生開始タイミング制御情報と現在時刻とを比較して、当該楽曲データファイルの楽曲再生開始タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS15)。なお、電子楽器DMは現在時刻を得るための時計を内蔵しているものとする。正確な時刻を得るために電波時計としたり、ネットワーク経由でNTP(ネットワークタイムプロトコル)サーバから時刻情報を取得し、内蔵時計の時刻を定期的に修正するとよい。楽曲再生開始タイミングが到来したと判定した場合には(ステップS15のYES)、該当する楽曲データファイルの再生を開始する(ステップS16)。電子楽器DMに記憶されて電子楽器DM内部で時間管理がなされる楽曲再生開始タイミングは、予め放送中の番組における該当する音楽が流れる時刻と同一タイミングに設定されていることから、図6に示すように、ユーザがテレビ受信機Tで視聴している番組内で流れる音楽(図中の音楽部分)と、当該電子楽器DMにおける再生音楽(図中の楽曲再生)とは同一時刻に同期して演奏されることになる。」

このような事項を踏まえ、上記ア.?エ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

(a)刊行物1には、上記ア.、イ.に記載があるように、利用する楽曲に関しての著作権管理を容易にできるようになるために、放送局から伝送する放送コンテンツに電子音楽装置を連動動作させるために利用する楽曲演奏データを含ませておくことなく、前記楽曲演奏データを放送局から配信される放送コンテンツとは分離させてサーバから取得するようにした電子音楽装置システムについての記載がある。

(b)上記ウ.の段落【0022】、【0023】、【0025】及びエ.の段落【0031】の記載から、刊行物1の電子音楽装置システムは、映像信号と音声信号と楽曲制御情報を含む放送コンテンツの映像信号を表示し、音声信号を発音し、楽曲制御情報に含まれる楽曲特定情報に基づく楽曲データファイルを再生する構成を有している。

(c)上記ウ.の段落【0022】?【0024】及びエ.の段落【0030】の記載から、刊行物1の電子音楽装置システムは、ディジタル放送で配信される放送コンテンツをテレビ受信機が放送により受信する段階であって、放送コンテンツは、映像信号と、音声信号と、楽曲データファイルを特定する楽曲特定情報を含む楽曲制御情報を含み、放送コンテンツは、楽曲データファイルを含まない段階を含んでいる。

(d)上記ウ.の段落【0023】?【0024】の記載から、刊行物1の電子音楽装置システムは、テレビ受信機が、放送コンテンツから抽出した楽曲特定情報を含む楽曲制御情報を電子楽器へ送信し、電子楽器は、楽曲特定情報に従って、サーバから楽曲データファイルを受信する段階を含んでいる。

(e)上記ウ.の段落【0025】及びエ.の段落【0031】の記載から、刊行物1の電子音楽装置システムは、映像信号や音声信号と同期して、電子楽器において楽曲データファイルを再生する段階を含んでいる。

(f)上記(c)?(e)より、刊行物1の電子音楽装置システムのテレビ受信機は、放送コンテンツを受信し、映像信号の表示及び音声信号の発音を行うとともに、抽出した楽曲制御情報を電子楽器に送信するものであり、電子楽器は、楽曲特定情報に従って、楽曲データファイルを受信し、映像信号や音声信号と同期して、楽曲データファイルを再生するものである。
このように、テレビ受信機と電子楽器は、受信し、表示、発音、再生を行うという受信側の装置を構成している。
そうすると、刊行物1の電子音楽装置システムは、テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置を有するものといえる。

(g)上記(f)のように、刊行物1発明の電子音楽装置システムは、テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置を有するものとすると、上記(c)?(e)は、以下のようになる。

(h)上記(c)、(g)より、刊行物1の電子音楽装置システムは、ディジタル放送で配信される放送コンテンツをテレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置が放送により受信する段階であって、放送コンテンツは、映像信号と、音声信号と、楽曲データファイルを特定する楽曲特定情報を含む楽曲制御情報を含み、放送コンテンツは、楽曲データファイルを含まない段階を含んでいる。

(i)上記(d)、(g)より、刊行物1の電子音楽装置システムは、テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置が、放送コンテンツから抽出した楽曲特定情報を含む楽曲制御情報における楽曲特定情報に従って、サーバから楽曲データファイルを受信する段階を含んでいる。

(j)上記(e)、(g)より、刊行物1の電子音楽装置システムは、テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置が、映像信号や音声信号と同期して、楽曲データファイルを再生する段階を含んでいる。

そして、刊行物1の電子音楽装置システムは、上記(h)?(j)のような段階を含むことにより、上記(b)のように、映像信号を表示し、音声信号を発音し、楽曲データファイルを再生するものであるから、刊行物1には、以下のような、方法の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されているものといえる。

なお、a.?d.については、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成a」、・・・、「構成d」という。)

[刊行物1発明]

「a.映像信号と音声信号と楽曲制御情報を含む放送コンテンツの映像信号を表示し、音声信号を発音し、楽曲制御情報に含まれる楽曲特定情報に基づく楽曲データファイルを再生する方法であって、
b-1.ディジタル放送で配信される放送コンテンツをテレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置が放送により受信する段階であって、
b-2.放送コンテンツは、映像信号と、音声信号と、楽曲データファイルを特定する楽曲特定情報を含む楽曲制御情報を含み、放送コンテンツは、楽曲データファイルを含まない、段階と;
c.テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置が、放送コンテンツから抽出した楽曲特定情報を含む楽曲制御情報における楽曲特定情報に従って、サーバから楽曲データファイルを受信する段階と;
d.テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置が、表示されている映像信号や音声信号と同期して、楽曲データファイルを再生する段階とを含む、
方法。」

6.本願発明と刊行物1発明との対比と、一致点・相違点の認定

ア.対比

(ア-1)構成Aと構成aの対比

刊行物1発明の「映像信号を表示」、「音声信号を発音」は、いずれも、再生することであり、構成dでは、映像信号や音声信号と同期して楽曲データファイルを再生している。
したがって、刊行物1発明の「映像信号と音声信号と楽曲制御情報を含む放送コンテンツの映像信号を表示し、音声信号を発音し、楽曲制御情報に含まれる楽曲特定情報に基づく楽曲データファイルを再生する」ことは、放送コンテンツの映像信号と音声信号と、関連する楽曲データファイルを同期したものを再生することであり、『映像信号と音声信号と楽曲データファイルを含み、それらを同期させることにより完成されたコンテンツ』を再生しているものといえる。
そして、刊行物1発明の「映像信号」は、本願発明の「ビデオ・セグメント」に相当し、また、刊行物1発明の「楽曲データファイル」は音であるから、刊行物1発明の「音声信号」と「楽曲データファイル」は、本願発明の「オーディオ・セグメント」に相当する。
また、『完成されたコンテンツ』は、映像と音から出来上がったものであるから、構成Aの「オーディオビジュアル作品」に相当する。
そうすると、『映像信号と音声信号と楽曲データファイルを含み、それらを同期させることにより完成されたコンテンツ』は、構成Aの「ビデオ・セグメントおよびオーディオ・セグメントを含むオーディオビジュアル作品」に相当する。

したがって、刊行物1発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

(ア-2)構成B-1と構成b-1の対比

刊行物1発明の「ディジタル放送で配信される放送コンテンツ」に関して、放送で配信されても、そのオリジナルは送信源に存在したままであるから、配信されるのは、オリジナルのコピーであり、「放送コンテンツ」は、オリジナルのコピーであるといえる。
そして、送信源に存在するオリジナルは、上記(ア-1)より、『映像信号と音声信号と楽曲データファイルを含み、それらを同期させることにより完成されたコンテンツ』(本願発明の、「ビデオ・セグメントおよびオーディオ・セグメントを含むオーディオビジュアル作品」に相当)であり、刊行物1発明では、それをコピーした「放送コンテンツ」を配信する際に、構成b-2のように、「映像信号と、音声信号と、楽曲データファイルを特定する楽曲特定情報を含む楽曲制御情報を含み、楽曲データファイルを含まない」ようにしたものであるから、刊行物1発明の「放送コンテンツ」は、本願発明の「前記オーディオビジュアル作品のコピー」に相当する。
また、ディジタル放送で配信されるので、デジタル形式であるといえる。
したがって、刊行物1発明の「ディジタル放送で配信される放送コンテンツ」は、本願発明の「デジタル形式の前記オーディオビジュアル作品のコピー」に相当する。

そして、刊行物1発明の「テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置」は、映像信号の表示及び音声信号の発音を行い、楽曲データファイルを再生する装置であり、表示及び発音も再生するものであるから、再生装置であるといえ、放送コンテンツを受信したい人が所有するものであるから、本願発明の「受領者の所有する再生装置」に相当する。

刊行物1発明は、「放送により受信する」ので、本願発明の「ネットワーク側から受信する」とは、「受信する」という点で共通する。

そうすると、刊行物1発明の構成b-1と本願発明の構成B-1は、「デジタル形式の前記オーディオビジュアル作品のコピーを受領者の所有する再生装置が受信する段階」という点で共通する。
しかし、「受信する」に関し、刊行物1発明では、「放送により受信する」のに対し、本願発明では、「ネットワーク側から受信する」という点で相違する。

(ア-3)構成B-2と構成b-2の対比

上記(ア-2)で検討したように、刊行物1発明の「放送コンテンツ」は、本願発明の「前記コピー」に相当する。

刊行物1発明の「映像信号」は、再生される『映像信号と音声信号と楽曲データファイルを含み、それらを同期させることにより完成されたコンテンツ』に含まれている映像信号であるから、本願発明の「前記オーディオビジュアル作品の前記ビデオ・セグメントを含む第一のデータ」に相当する。

上記(ア-1)で検討したように、刊行物1発明の「音声信号」、「楽曲データファイル」は、再生される『映像信号と音声信号と楽曲データファイルを含み、それらを同期させることにより完成されたコンテンツ』に含まれる音の部分であるが、音声信号は、放送コンテンツに含まれるのに対し、楽曲データファイルは、放送コンテンツに含まれないので、それぞれは、異なる部分であるといえ、「楽曲データファイル」が、『映像信号と音声信号と楽曲データファイルを含み、それらを同期させることにより完成されたコンテンツ』に含まれている音のうちの第一の部分とすると、「音声信号」は、第一の部分と異なる部分といえる。
そうすると、刊行物1発明の「(音のうちの第一の部分を含む)楽曲データファイル」は、本願発明の「前記オーディオビジュアル作品の前記オーディオ・セグメントの第一のセグメントを含む第一のオーディオ作品」に相当する。
そして、刊行物1発明の「楽曲特定情報を含む楽曲制御情報」は、「楽曲データファイルを特定する」ための情報であるから、本願発明の「第一のオーディオ作品を同定する第二のデータ」に相当する。
すなわち、刊行物1発明の「放送コンテンツは、映像信号と、音声信号と、楽曲データファイルを特定する楽曲特定情報を含む楽曲制御情報を含」むことは、本願発明の「前記コピーは前記オーディオビジュアル作品の前記ビデオ・セグメントを含む第一のデータおよび前記オーディオビジュアル作品の前記オーディオ・セグメントの第一のセグメントを含む第一のオーディオ作品を同定する第二のデータを含」むことに相当する。

刊行物1発明の「放送コンテンツは、楽曲データファイルを含まない」ことについて、放送コンテンツがオリジナルのコピーである以上、該放送コンテンツに含まれる信号は、いずれもオリジナル信号のコピーであるから、刊行物1発明の「放送コンテンツは、楽曲データファイルを含まない」についても、放送コンテンツ内の「楽曲データファイル」は、オリジナルでなくコピーである。
そうすると、刊行物1発明の「放送コンテンツは、楽曲データファイルを含まない」の「放送コンテンツ」と「楽曲データファイル」は、本願発明の「前記オーディオビジュアル作品の前記コピー」、「前記第一のオーディオ作品のコピー」に相当するので、刊行物1発明の「放送コンテンツは、楽曲データファイルを含まない」は、本願発明の「前記オーディオビジュアル作品の前記コピーは前記第一のオーディオ作品のコピーを含まない」ことに相当する。

したがって、刊行物1発明の構成b-2は、本願発明の構成B-2に相当する。

(ア-4)構成Cと構成cの対比

上記(ア-3)で検討したように、刊行物1発明の「楽曲特定情報」は、「楽曲データファイルを特定する」ための情報であり、本願発明の「第一のオーディオ作品を同定する第二のデータ」に相当する。
また、刊行物1発明の受信側の装置が「放送コンテンツから抽出した楽曲特定情報を含む楽曲制御情報における楽曲特定情報に従」うことから、楽曲データファイルを特定するための情報を判別するために、楽曲特定情報を読み取る段階を有することは自明である。
そうすると、刊行物1発明の「テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置が、放送コンテンツから抽出した楽曲特定情報を含む楽曲制御情報における楽曲特定情報に従って、」とは、本願発明の「前記第一のオーディオ作品の識別情報を判別するようにするために、前記受領者の所有する再生装置が、前記第二のデータを読む段階」に相当する。

また、刊行物1発明の「サーバから楽曲データファイルを受信する段階」に関して、サーバは、放送コンテンツの配信とは異なる情報源であるといえ、楽曲データファイルのオリジナルは、サーバ内に存在したままであるから、受信されるのは、オリジナルのコピーであるといえるので、刊行物1発明の「サーバから楽曲データファイルを受信する段階」は、本願発明の「前記受領者の所有する再生装置が、前記オーディオビジュアル作品の前記コピーとは別個の情報源から前記第一のオーディオ作品のコピーを取得する段階」に相当する。

そうすると、刊行物1発明の構成cは、本願発明の構成Cに相当する。

(ア-5)構成Dと構成dの対比

刊行物1発明の「テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置が、映像信号や音声信号と同期して、楽曲データファイルを再生する」ということは、映像信号と音声信号を含む放送コンテンツに、楽曲データファイルを同期させ、『映像信号と音声信号と楽曲データファイルを含み、それらを同期させることにより完成されたコンテンツ』を新たに作り出すために行っているものといえ、楽曲データファイルを含む『映像信号と音声信号と楽曲データファイルを含み、それらを同期させることにより完成されたコンテンツ』の新しいバージョンを生成するようにしたものである。

そして、刊行物1発明の「映像信号や音声信号と同期して、楽曲データファイルを再生する」ことは、映像と楽曲データファイルを組み合わせることであり、上記(ア-3)で検討したように、刊行物1発明の「楽曲データファイル」は、本願発明の「前記オーディオ・セグメントの第1のセグメント」に対応するから、刊行物1発明の「映像信号・・・と同期して、楽曲データファイルを再生する」ことは、本願発明の「前記ビデオ・セグメントを前記オーディオ・セグメントの第1のセグメントと組み合わせる」ことに相当する。

そうすると、刊行物1発明の「テレビ受信機と電子楽器からなる受信側の装置が、映像信号や音声信号と同期して、楽曲データファイルを再生する」ことは、本願発明の「前記第一のオーディオ作品を含む前記オーディオビジュアル作品の新しいバージョンを生成するよう、前記受領者の所有する再生装置が、前記ビデオ・セグメントを前記オーディオ・セグメントの第1のセグメントと組み合わせる」ことに相当する。

したがって、刊行物1発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当する。

イ.一致点・相違点

したがって、刊行物1発明と本願発明は、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]

「ビデオ・セグメントおよびオーディオ・セグメントを含むオーディオビジュアル作品を再生する方法であって:
デジタル形式の前記オーディオビジュアル作品のコピーを受領者の所有する再生装置が受信する段階であって、
前記コピーは前記オーディオビジュアル作品の前記ビデオ・セグメントを含む第一のデータおよび前記オーディオビジュアル作品の前記オーディオ・セグメントの第一のセグメントを含む第一のオーディオ作品を同定する第二のデータを含み、前記オーディオビジュアル作品の前記コピーは前記第一のオーディオ作品のコピーを含まない、段階と;
前記第一のオーディオ作品の識別情報を判別するようにするために、前記受領者の所有する再生装置が、前記第二のデータを読む段階と;
前記受領者の所有する再生装置が、前記オーディオビジュアル作品の前記コピーとは別個の情報源から前記第一のオーディオ作品のコピーを取得する段階と;
前記第一のオーディオ作品を含む前記オーディオビジュアル作品の新しいバージョンを生成するよう、前記受領者の所有する再生装置が、前記ビデオ・セグメントを前記オーディオ・セグメントの第1のセグメントと組み合わせる段階とを含む、
方法。」

[相違点]

「デジタル形式の前記オーディオビジュアル作品のコピーを受領者の所有する再生装置が受信する」ことに関して、本願発明は、「ネットワーク側から受信する」のに対し、刊行物1発明は、「放送により受信する」点。

7.当審の判断

上記相違点について検討する。

オーディオビジュアル作品のコピーを受信して再生する際に、放送により受信することも、インターネットのようなネットワーク側から受信することも、いずれも、周知技術である。
そうすると、刊行物1発明において、オーディオビジュアル作品のコピーを放送により受信することに代えて、ネットワーク側から受信するという周知技術を採用することは、当業者は容易に想到し得るものである。

よって、相違点については、格別のものではなく、本願発明に関する作用・効果も、その容易想到である構成から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8.むすび

以上のとおり、本願の請求項16に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-05 
結審通知日 2015-10-06 
審決日 2015-10-20 
出願番号 特願2012-516457(P2012-516457)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 574- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 渡辺 努
藤井 浩
発明の名称 オーディオビジュアル資産の配信におけるオーディオ・ライセンシング  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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