• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1311771
審判番号 不服2014-25049  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-05 
確定日 2016-03-03 
事件の表示 特願2010-156299「光学シート」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月26日出願公開,特開2012- 18330〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年7月9日の出願であって,平成26年1月15日付けで拒絶理由が通知され,同年3月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年9月18日付けで拒絶査定がなされたところ,同年12月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成26年12月5日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
(1)請求項1に係る補正
平成26年12月5日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は,同年3月11日提出の手続補正書による手続補正後(以下「本件補正前」という。)の特許請求の範囲及び明細書について補正しようとするものであって,そのうち請求項1に係る補正(以下,「請求項1に係る本件補正」という。)は次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)
ア 本件補正前の請求項1
「柱状単位プリズムをその稜線を互いに平行に配列して成るプリズム群を,シート状の本体部の一方の面に有し,該本体部の他方の面に,微小突起が表面に形成された凹凸塗膜を有する光学シートであって,
該微小突起の平均突出高さHが0.38μm以上であり,且つ該凹凸塗膜はバインダ樹脂中に該微小突起を生成する為の球状粒子と,滑剤を含有し,
前記滑剤として,ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを,前記バインダ樹脂に対して0.01?5質量%含有する,光学シート。」

イ 本件補正後の請求項1
「柱状単位プリズムをその稜線を互いに平行に配列して成るプリズム群を,シート状の本体部の一方の面に有し,該本体部の他方の面に,微小突起が表面に形成された凹凸塗膜を有する光学シートであって,
該微小突起の平均突出高さHが0.38μm以上であり,且つ該凹凸塗膜はバインダ樹脂中に該微小突起を生成する為の球状粒子と,滑剤を含有し,
前記滑剤として,重量平均分子量が5,000?25,000であるポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを,前記バインダ樹脂に対して0.01?5質量%含有する,光学シート。」

(2)補正事項
請求項1に係る本件補正は,本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」を,「重量平均分子量が5,000?25,000であるポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」と補正するものである。

2 新規事項の追加の有無について
請求項1に係る本件補正により付加される,ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの重量平均分子量が5,000?25,000である点は,願書に最初に添付した明細書の【0045】に記載されているから,請求項1に係る本件補正は,出願当初の明細書,特許請求の範囲または図面に記載された事項の範囲内においてなされた補正である。
よって,請求項1に係る本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に適合する。

3 補正の目的について
請求項1に係る本件補正は,本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」について,「重量平均分子量が5,000?25,000である」ことを限定するものであって,本件補正の前後で当該請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって,補正後の請求項1に係る本件補正は,特許法17条の2第5項の規定に適合する。

4 独立特許要件について
補正後の請求項1についての本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含んでいるから,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するのか否か(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否か)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(前記1(1)イにて示したとおりのもの)と認める。

(2)引用例
ア 特開2002-243920号公報
(ア)特開2002-243920号公報の記載
特開2002-243920号公報は,原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,液晶表示装置のバックライトユニットに組み込まれる光学シート及びこれを用いたバックライトユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶表示装置は,液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及し,液晶層の下面側にバックライトユニットが装備されている。かかるバックライトユニット50は,一般的には図3(a)に示すように,光源としての棒状のランプ51と,このランプ51に端部が沿うように配置される方形板状の導光板52と,この導光板52の表面側に積層された複数枚の光学シート53とを装備している。この光学シート53は,光線のピーク方向を法線方向側へ屈折させる機能,輝度分布を拡散・集光させる機能等の所定の光学的機能を有するものであり,具体的には,導光板52の表面側に配設されるビーズ塗工タイプ等の光学シート54やプリズムタイプの光学シート55などがある。
・・・(中略)・・・
【0005】上述の構造を有するバックライトユニット50において,特に導光板52の表面側に配設される光学シート54は,図3(b)に示すように基材層56と,基材層56の表面に形成された光学的機能層57とを備えたものが一般的に用いられており,ビーズ塗工タイプ等の光学的機能層57によって透過光線に対して集光,拡散等の光学的諸機能が奏される。また,光学シート54の裏面が平滑では裏面側の導光板52と密着して干渉縞が生じてしまう不都合を防止するため,光学シート54の裏面には,合成樹脂からなるバインダー59中に合成樹脂,ガラス等からなるビーズ60が分散し,このビーズ60の下部が層状のバインダー59の裏面から突出した構造のスティッキング防止層58が積層されている。このスティッキング防止層58の突出したビーズ60の下部が導光板52に当接し,光学シート54の裏面の全面が導光板52に当接することがなく,その結果,光学シート54と導光板52とのスティッキングが防止され,液晶表示装置の画面の輝度ムラが抑えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述の光学シート54のスティッキング防止層58において,ビーズ60の粒径にばらつきがあり,バインダー59の裏面からの突出比にもばらつきがあることから,突出の大きいビーズ60の摩擦によって導光板52の表面に傷が付くことがある。スティッキング防止層58のビーズ60としては透明性の高いアクリルビーズが好ましいが,このアクリルビーズは比較的硬質であるため,アクリルより軟質の材料である非晶性オレフィン系樹脂製の導光板(例;日本ゼオン(株)社製「ゼオノア導光板」)52と組合わせることは事実上不可能である。
【0007】本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり,重ねた配設される導光板等への傷付きを防止できるスティッキング防止層を備える光学シート及びこの光学シートを用いて傷付きによる輝度ムラの発生を防止できるバックライトユニットの提供を目的とするものである。」

b 「【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するためになされた発明は,透明な基材層と,この基材層の表面側に形成された光学的機能層と,基材層の裏面側に積層されたスティッキング防止層とを備え,このスティッキング防止層が,バインダー中にビーズが分散し,このビーズの下部が層状のバインダーの裏面から突出した構造の光学シートであって,上記ビーズの粒径が揃えられており,上記ビーズの突出比が10%以上50%以下であることを特徴とする光学シートである。ここで「突出比」とは,バインダーの裏面を基準としたビーズの突出距離の粒径に対する比を意味する。
【0009】当該光学シートによれば,ビーズの粒径が揃えられていることから,バインダー裏面から突出したビーズの最下点がシート面に対して一定距離に位置しやすくなる。そのため,当該光学シートを導光板表面に載置したときに,当該光学シート裏面の全ビーズで導光板表面に接し,その結果,荷重の作用する個所が多くの点に分散し,応力の集中が生じない。従って,突出したビーズによる傷付きを低減することができる。また,当該光学シートは,ビーズの突出比を10%以上50%以下にしていることから,スティッキング防止層の本質的機能であるスティッキング防止性と上述の傷付き防止性とを共に満たすことができる。
・・・(中略)・・・
【0013】また,上記スティッキング防止層のバインダー中に潤滑剤を含有するとよい。この手段によれば,潤滑剤の潤滑性及びスリップ性により,上記傷付き防止性をさらに促進することができる。
【0014】上記潤滑剤としては有機ポリシロキサンが好ましい。かかる有機ポリシロキサンは,スリップ性付与作用が大きく,かつ,透明性やバインダーを構成する合成樹脂中での安定性が高く,光学シートとしての光学的機能を阻害せずに上記傷付き防止性を促進することができる。
【0015】また上記有機ポリシロキサンとしては末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサンが好ましい。かかる変性有機ポリシロキサンは,バインダーのマトリックス樹脂との相溶性が高く,バインダー中に均一に分散化できるため,上記傷付き防止性を光学シート全面に均一に付与することができる。」

c 「【0017】
【発明の実施の形態】以下,適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1は本発明の一実施形態に係る光学シートを示す模式的断面図で,図2は図1の光学シートのスティッキング防止層におけるビーズ部分を拡大した模式的断面図である。
【0018】図1の光学シート1は,基材層2と,この基材層2の表面に積層された光学的機能層3と,基材層2の裏面に積層されたスティッキング防止層4とから構成されている。
・・・(中略)・・・
【0020】光学的機能層3は,透過光線に対して拡散,集光,法線方向側への屈折等の所定の光学的機能を奏するものであり,例えば,バインダー中にビーズが分散したいわゆるビーズ塗工タイプ,プリズム部が多条に形成されたプリズムタイプ,エンボスタイプなどがある。とりわけ,当該光学シートにより均質な光拡散効果を求める場合などには,バインダー内にビーズを分散させてなるビーズ塗工タイプの光拡散シートなどが好適に利用できる。なお,図では基材層2と光学的機能層3とを別の層としているがこれらの2層が一体に成形されている場合もある。
【0021】スティッキング防止層4は,基材層2の裏面に略一定厚で積層されたバインダー5と,ビーズ6の下部がバインダー5の裏面から突出するようバインダー5中に分散したビーズ6とから構成されている。
【0022】当該スティッキング防止層4は,バインダー5裏面からのビーズ6の突出距離が実質的に一定になるよう構成されており,裏面側に重ねられた導光板等との間に作用する応力を分散することで,異常に突出したビーズ6による導光板表面への傷付きを防止する。また,ビーズ6の突出部分にバインダー5を被覆させ,光学シート1の裏面を構成するスティッキング防止層4のバインダー5裏面を滑らかに形成することで,上記傷付き防止性を促進することができる。
【0023】ビーズ6の突出比としては,10%以上50%以下が好ましく,20%以上40%以下が特に好ましい。ここで,「ビーズ6の突出比」とは,図2に示すように,バインダー5の裏面(ビーズ6が存在しない領域の裏面)からのビーズ6の突出距離Lのビーズ6の粒径Dに対する比を意味する。これは,ビーズ6の突出比が上記範囲より小さいと,裏面側に載置される導光板等とのスティッキングを防止する効果を有効に奏することができず,逆に,ビーズ6の突出比が上記範囲を超えると,基材層2の裏面へのビーズ6の固定が不十分になってビーズ6の欠落等を生じ,欠落したビーズ6による傷付きが発生するおそれがあり,また突出量の大きいビーズにより導光板等への傷付きを招来するおそれがあることからである。
【0024】バインダー5に用いられるポリマーとしては,例えばアクリル系樹脂,ポリウレタン,ポリエステル,フッ素系樹脂,シリコーン系樹脂,ポリアミドイミド,エポキシ樹脂等が挙げられる。また,スティッキング防止層に傷付きを防止機能を付与すべく,ビーズを被覆するバインダーを形成するポリマーとして,比較的軟質または軟質なバインダーを形成するポリマーを選択することもできる。バインダー5中には,上記のポリマーの他,例えば可塑剤,安定化剤,劣化防止剤,分散剤,帯電防止剤等が配合されてもよい。バインダー5は光線を透過させる必要があるので透明とされており,特に無色透明が好ましい。
【0025】また,バインダー5には潤滑剤を含有させるとよい。バインダー5中の潤滑剤によって潤滑性及びスリップ性が発現し,上記傷付き防止性をさらに促進することができる。なお,上記潤滑剤としては,特に限定されるものではなく一般的に使用される潤滑剤を用いることができるが,中でも有機ポリシロキサンが好ましく,末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサンが特に好ましい。有機ポリシロキサンは,潤滑性及びスリップ性が大きく,かつ,透明性やバインダー5を構成する合成樹脂中での安定性が高く,光学シート1としての光学的機能を阻害せずに上記傷付き防止性を促進することができる。また変性有機ポリシロキサンは,マトリックス樹脂との相溶性が高く,バインダー5中に安定して均一に分散でき,上記傷付き防止性を光学シート1全面に均一に付与することができる。なお,変性有機ポリシロキサンにおける変性の態様としては,アミノ変性,エポキシ変性,カルボキシル変性,メタクリル変性,フェノール変性,ポリエーテル変性,メチルスリチル変性,アルキル変性,アルコキシ変性,フッ素変性等がある。
【0026】ビーズ6は略球形であり,樹脂ビーズ又はガラスビーズが用いられる。かかる樹脂ビーズの材質としては,例えばアクリル樹脂,ポリウレタン,ポリ塩化ビニル,ポリスチレン,ポリアクリロニトリル,ポリアミド等が挙げられる。ビーズ6は光学シート1を透過する光線量を多くするため透明とするのが好ましく,特に無色透明とするのが好ましい。
【0027】ビーズ6の粒径は,6μm以上12μm以下が好ましい。これは,粒径が上記範囲未満であると,ビーズ6をバインダー5の表面から突出させるよう塗工することが困難になり,逆に,粒径が上記範囲を越えると,バインダー5の裏面からの突出距離が相対的に大きくなり,裏面側に載置される導光板等への傷付きを招来するおそれがあることからである。
【0028】ビーズ6の粒径のバラツキを小さくし,粒度を揃える必要がある。具体的には,スティッキング防止層4に分散するビーズ6の80%以上のビーズの粒径が,分散する全ビーズの平均粒径の±10%以内の粒径にするとよい(例えば,100個のビーズを用い,それらの平均粒径が10μmである場合,その内の80個以上のビーズの粒径を9?11μmに収める)。これは,ビーズ6の粒径を実質的に一定にしなければ,上述のようにバインダー5裏面からのビーズ6の突出距離を実質的に一定になるよう構成することができなくなることからである。
【0029】スティッキング防止層4におけるバインダー5に対するビーズ6量(質量)は,1?5重量%の量,好ましくは,1?3重量%の量とする。これは,ビーズ6の質量比が上記範囲より小さいと,当該光学シート1における面積当たりのビーズ6の個数が少なく,上述の応力の分散による傷付き防止性を効果的に奏することができなくなり,逆に,ビーズ6の質量比が上記範囲を超えると,ビーズ6が近接しすぎ,少しの突出距離差でも大きな応力集中が生じ,上述の応力の分散による傷付き防止性を効果的に奏することができなくなることからである。」

d 「【0032】
【発明の効果】以上説明したように,本発明の光学シートによれば,重ねた配設される導光板等への傷付きを防止でき。また,当該光学シートを備えるバックライトユニットによれば,導光板等の傷付きによる輝度ムラの発生を防止できる。」

(イ) 引用文献1に記載された発明
前記(ア)aないしdの記載から,引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「基材層2と,この基材層2の表面に積層された光学的機能層3と,基材層2の裏面に積層されたスティッキング防止層4とから構成されている光学シート1であって,
前記光学的機能層3は,プリズム部が多条に形成されたプリズムタイプの光学的機能層であり,
前記スティッキング防止層4は,光学シート1の裏面側に重ねて配設される導光板等との密着により干渉縞が生じてしまう不都合を防止するために設けられたものであって,前記基材層2の裏面に略一定厚で積層されたバインダー5と,その下部がバインダー5の裏面から突出するよう前記バインダー5中に分散したビーズ6とから構成されており,前記ビーズ6の突出部分は前記バインダー5で被覆され,前記バインダー5裏面からの前記ビーズ6の突出距離Lが実質的に一定になるよう構成され,当該突出距離Lの前記ビーズ6の粒径Dに対する比が20%以上40%以下に設定されており,
前記バインダー5に,潤滑性及びスリップ性を発現する潤滑剤として,末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサンを含有させており,当該変性有機ポリシロキサンの変性の態様としてはポリエーテル変性が挙げられ,
前記ビーズ6は略球形であり,その粒径Dは6μm以上12μm以下であり,前記スティッキング防止層4に分散するビーズ6の80%以上のビーズの粒径が,分散する全ビーズの平均粒径の±10%以内の粒径にされ,前記バインダー5に対するビーズ6の量(質量)が1?3重量%である,
光学シート1。」(以下「引用発明」という。)

イ 周知の事項
(ア)国際公開第2008/062626号の記載
国際公開第2008/062626号(以下,「引用文献2」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用文献2には次の記載がある。(下線は,後述する周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「技術分野
[0001] 本発明は,液晶表示装置に組み込まれるバックライトユニットに用いられる光拡散シート及びこの光拡散シートを用いたバックライトユニットに関するものである。
背景技術
[0002] 液晶表示装置は,液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及し,液晶層の下面側にバックライトユニットが装備されている。かかるバックライトユニット20は,一般的には図2に示すように,光源としての棒状のランプ21と,ランプ21に端部が沿うように配置される方形板状の導光板22と,導光板22の表面側に配設される光拡散シート23と,光拡散シート23の表面側に配設されるプリズムシート24とを備えている(例えば特許文献1及び2参照。)。
・・・(中略)・・・
[0004] また図示していないが,上述のプリズムシート24の集光特性を考慮し,プリズムシート24の表面側にさらに光拡散シートやプリズムシートを配設するバックライトユニットもある。スティッキング防止層や光拡散層は,通常,有機溶剤により溶解された形態にて支持体上に塗布・乾燥して形成されるが,バインダー成分のみでは充分な強度が得られないため,通常,架橋剤により分子間を架橋・硬化して用いられる。しかしながら,塗布・乾燥直後には充分硬化が進んでおらず,残留溶媒も相当量含んでいるため,(加熱)養生による硬化完了までの運搬時等に振動によって裏面と擦れて傷が付いたり,その形状が変化するなど,光拡散シートの商品価値を損ねる可能性があった。従って,その取扱いには重大な注意を払いつつ,慎重な取り扱いを行わなければならなかった。
[0005]
この問題を解決する方法の1つとして,塗布・乾燥後,巻取りまでの間に高温の熱処理ゾーンを通過させて架橋・硬化を完了する方法があり,製造効率上も有効だが,通常熱処理には数分を要するためにゾーン内は接触ロールによって搬送方向を複数回反転して搬送する方式がとられている。このため,硬化の進んでいない熱処理ゾーン前段のロールに汚れや回転不良等不具合がある場合や,基材の熱膨張による幅寸法変化によりロールとの擦れ傷が発生することがあった。
特許文献1:特開平7-5305号公報
特許文献2:特開2000-89007号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明は,上記した従来技術での不都合に鑑みてなされたものであり,光拡散シートでの光拡散層とスティッキング防止層を構成する素材に関して,本発明者が鋭意研究を重ねた結果,本発明を完成するに至ったのである。すなわち,本願発明の要旨とするところは,透明な基材シート,この基材シートの一方の面に積層され,かつそのバインダー内にビーズが分散してなる光拡散層,およびこの基材シートの他方の面に積層されたスティッキング防止層を含む光拡散シートにおいて,該スティッキング防止層または光拡散層中にジメチルシロキサン構造単位を有する化合物を含有することで,製造効率上有効な塗布・乾燥・熱硬化連続処理において容易にはロールとの擦れ傷を発生せず,印刷適性等他の特性も良好な光拡散シートのスティッキング防止層または光拡散層を得ることが可能となる。」

b 「発明を実施するための最良の形態
[0019] 以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。
[0020] 以下,適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
[0021] 図1を参照すれば,一般に,本発明の光拡散シート1は,基材シート2,基材シート2の一方の面(表面)に積層された光拡散層3,基材シート2の他方の面(裏面)に積層されたスティッキング防止層4とから構成されている。
・・・(中略)・・・
[0023] 本発明は,上記光拡散シートを構成するスティッキング防止層4または光拡散層3がジメチルシロキサン構造単位を有する化合物を含有することを特徴とする。
・・・(中略)・・・
[0034] 水溶性または水分散性ポリマーに混合し,非皮膜形成性添加剤として用いる場合には,前記ジメチルシロキサン構造単位を有する化合物が有機変性ジメチルシロキサン化合物であることが好ましく,例えばポリオキシエチレンやポリオキシプロピレン等のポリエーテル変性ジメチルシロキサン化合物を用いることが好ましい。
[0035] ジメチルシロキサン構造単位を有する化合物の添加量は,乾燥後の質量比で0.1?10質量%の範囲が好ましく,0.5?5質量%の範囲がより好ましく,1.0?3.0質量%の範囲が特に好ましい。
・・・(中略)・・・
[0086] 〔スティッキング防止層用マット剤〕
スティッキング防止層には導光板とのスティッキングを防止するため,スティッキング防止層より突出するマット剤を用いることが好ましい。マット剤としては,前記光拡散剤と同様のものが使用可能となる。形状は光学性能への影響と接触部材への傷つけ防止の点で略球形であることが好ましく,平均粒径は0.3?10μmが好ましい。」

c 「0102] [実施例2]
本発明の試料の作製:
比較例1のスティッキング防止層を下記とした以外は比較例1と同様にして光拡散シートを作製した。
[0103] (スティッキング防止層)
水分散性アクリル・スチレン樹脂(大日本インキ(株)のバーノックWE-306,MFT=50℃,Tg=50℃,45%水性分散液)100部,ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン(株)のBYK-331)2部,水分散性ポリイソシアネート(大日本インキ(株)のバーノックDNW-5010,78%溶液)15部,平均粒子径が20nmのコロイダルシリカ(扶桑化学工業(株)の「PL-1」,12%水性分散液)50部,平均粒子径0.5μmの球形シリカ粒子(日本触媒(株)の「KE-P50」)10部を混合して塗工液を作製し,この塗工液をロールコート法により上記基材層の裏面に0.45g/m^(2)(固形分換算)塗工・乾燥,熱硬化させることでスティッキング防止層を積層した光拡散シートを得た。
[0104] 尚,上記についても比較例1同様,a条件とb条件の双方で作製を行った。
[0105] [実施例3]
本発明の試料の作製:
比較例1のスティッキング防止層を下記とした以外は比較例1と同様にして光拡散シートを作製した。
[0106] (スティッキング防止層)
水分散性アクリル・スチレン樹脂(大日本インキ(株)のバーノックWE-306,MFT=50℃,Tg=50℃,45%水性分散液)100部,ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のEFKA-3035,52%溶液)2部,水分散性ポリイソシアネート(大日本インキ(株)のバーノックDNW-5010)15部,平均粒子径が20nmのコロイダルシリカ(扶桑化学工業(株)の「PL-1」,12%水性分散液)50部,平均粒子径0.5μmの球形シリカ粒子(日本触媒(株)の「KE-P50」)10部を混合して塗工液を作製し,この塗工液をロールコート法により上記基材層の裏面に0.45g/m^(2)(固形分換算)塗工・乾燥,熱硬化させることでスティッキング防止層を積層した光拡散シートを得た。
[0107] 尚,上記についても比較例1同様,a条件とb条件の双方で作製を行った。
[0108] [実施例4]
本発明の試料の作製:
比較例1のスティッキング防止層を下記とした以外は比較例1と同様にして光拡散シートを作製した。
[0109] (スティッキング防止層)
水分散性アクリル・スチレン樹脂(大日本インキ(株)のバーノックWE-306,MFT=50℃,Tg=50℃,45%水性分散液)100部,ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)のFZ-2164)2部,水分散性ポリイソシアネート(大日本インキ(株)のバーノックDNW-5010,78%溶液)15部,平均粒子径が20nmのコロイダルシリカ(扶桑化学工業(株)の「PL-1」,12%水性分散液)50部,平均粒子径0.5μmの球形シリカ粒子(日本触媒(株)の「KE-P50」)10部を混合して塗工液を作製し,この塗工液をロールコート法により上記基材層の裏面に0.45g/m^(2)(固形分換算)塗工・乾燥,熱硬化させることでスティッキング防止層を積層した光拡散シートを得た。
【0109】
尚,上記についても比較例1同様,a条件とb条件の双方で作製を行った。
・・・(中略)・・・
[0118] (スティッキング防止層のロール擦れ傷の評価)
実施例および比較例で作製した光拡散シートについて,スティッキング防止層のロール擦れ傷の有無を評価した。
[0119] 評価はa条件で作製したもの,b条件で作製したものの双方について行い,評価の判断基準は傷や形状変化が全く認められなかったものを◎,微小に認められるものを○,傷や形状変化が明確に認められるものを×として評価した結果を表1に示す。
[0120] (耐傷性の評価)
評価の方法は200g/cm^(2)の荷重をかけて光拡散層とスティッキング防止層を20mm/secの速度で10往復擦り,スティッキング層に生じた擦り傷の有無をロール擦れ傷と同様の基準で評価した。尚,この評価はa条件で作製したものについて行った。
・・・(中略)・・・
[0122][表1]

[0123] 表1より,実施例1?4は十分な光拡散性を有し,且つロール擦れ傷,耐傷性,印刷適性において優れた性能を有することが明らかである。」

(イ)特開2004-309805号公報の記載
特開2004-309805号公報(以下,「引用文献3」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用文献3には次の記載がある。(下線は,後述する周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】
ディップ用感光性樹脂組成物及びそれを用いたプリント配線基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微細且つ高密度の導体パターンを有するプリント配線板を簡便且つ信頼性高く製造するために,解像性などの性能が本質的に優れている感光性レジスト液を絶縁基板の表面の金属導体層にディップ法により直接塗布して,エッチングレジスト層を形成し,このエッチングレジスト層を所定のレジストパターンに形成する方法が広く知られている。この方法は簡便であり,また形成されるエッチングレジスト層にピンホールが発生しないため,数μm?20μmの比較的薄い膜厚を必要とする場合には有効な方法である。
【0003】
しかし,これまでに使用されてきた感光性レジスト液により形成されたエッチングレジスト層はすべり性が悪く,エッチングレジスト層を形成した基材を重ねて取り扱う際にレジスト層同士が擦れて傷が入りやすい。傷がつき,塗膜の剥がれ等を起こしたエッチングレジスト被膜ではその破損箇所で電子回路形成ができない問題が起こる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するものであり,エッチングレジスト層同士の擦り傷が発生しにくいエッチングレジスト層を形成し,微細で高密度の導体回路を形成できる感光性レジスト液を提供することを目的とし,さらに該レジスト液を用い微細で高密度の導体回路を有するプリント配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果,本発明を完成した。
すなわち,本発明は,
(1) 重量平均分子量が5000から20万で酸価が20mgKOH/gから300mgKOH/gであるアルカリ水溶液に溶解可能な樹脂,感光性化合物および有機変性ポリシロキサンを含有してなる感光性樹脂組成物であって,該有機変性ポリシロキサンが感光性樹脂組成物の固形分中に0.5重量%から5重量%含有することを特徴とするディップ用感光性樹脂組成物・・・(中略)・・・に関する。」

b 「【0011】
本発明で使用される有機変性ポリシロキサンはスリップ性,耐擦り傷性,耐ブロッキング性を向上させる目的で加えるものであり,相溶性をコントロールすることにより,消泡機能を発現することもできる。有機変性ポリシロキサンとしてはジメチルシロキサン,ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン,メチルアルキルポリシロキサン,ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン,アラルキル変性ポリシロキサン,ポリエステル変性ポリシロキサン,反応性ポリシロキサン,シリコン系界面活性剤等が挙げられる。添加量は樹脂組成物の固形分中に0.5重量%から5重量%が好ましい。より好ましくは0.7重量%から3重量%程度の添加である。0.03重量%以上添加することによりスリップ性が向上し,耐擦り傷性が向上する傾向にある。しかしながら,0.03重量%程度の添加量ではスリップ性は良好であるが,塗膜にムラが発生する場合があるので,0.5重量%以上が好ましい。また,5重量%以上添加すると基材への密着性が低下する場合がある。」

(ウ)引用文献2及び引用文献3の記載から把握される周知の事項
前記(ア)で摘記した引用文献2の記載,及び前記(イ)で摘記した引用文献3の記載から,本願の出願前に,次の技術的事項が周知であったと認められる。

「塗膜を形成する組成物中に含有させる潤滑剤として,ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」と「ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン」は同義である。)を用い,当該ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの含有量を,前記組成物の乾燥後質量比で1.0ないし3.0質量%程度とすること。」(以下,「周知技術」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「プリズム部」,「基材層2」,「基材層2の表面」,「基材層2の裏面」,「スティッキング防止層4」,「バインダー5」,「『略球形』である『ビーズ6』」,「潤滑剤」及び「光学シート1」は,本願補正発明の「柱状単位プリズム」,「本体部」,「本体部の一方の面」,「本体部の他方の面」,「凹凸塗膜」,「バインダ樹脂」,「球状粒子」,「滑剤」及び「光学シート」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明における「プリズム部が多条に形成されたプリズムタイプ」が,多数の「プリズム部」(柱状単位プリズム)をその稜線が互いに平行になるように配列したプリズム群が形成されたタイプのものを指していることが当業者に自明である。
また,引用発明の「光学シート1」がシート状の形状を有していることは,その名称から明らかであるから,当該光学シート1の基材となる「基材層2」がシート状の形状を有していることは自明である。
しかるに,引用発明では,前記プリズムタイプの「光学的機能層3」が,シート状の形状を有する基材層2の「表面」(一方の面)に積層されているから,引用発明と本願補正発明は,「柱状単位プリズムをその稜線を互いに平行に配列して成るプリズム群を,シート状の本体部の一方の面に有」する点で一致する。

ウ 引用発明の「スティッキング防止層4」(凹凸塗膜)は,「基材層2」(本体部)の「裏面」(他方の面)に略一定厚で積層されたバインダー5と,その下部がバインダー5の裏面から突出するようバインダー5中に分散したビーズ6とから構成され,ビーズ6の突出部分はバインダー5で被覆されているところ,前記バインダー5で被覆されたビーズ6の突出部分が,本願補正発明の「微小突起」に相当する。
したがって,引用発明と本願補正発明は,「本体部の他方の面に,微小突起が表面に形成された凹凸塗膜を有する」点で一致する。

エ 引用発明では,バインダー5裏面からのビーズ6の突出距離Lが実質的に一定になるよう構成され,当該突出距離Lのビーズ6の粒径Dに対する比が20%以上40%以下に設定されており,ビーズ6の粒径Dは6μm以上12μm以下であるから,バインダー5裏面からのビーズ6の突出距離Lの平均値は少なくとも1.2μm(=6μm×20%)以上である。
しかるに,「バインダー5で被覆されたビーズ6の突出部分」(微小突起)の突出高さは,前記バインダー5裏面からのビーズ6の突出距離Lに,ビーズ6の突出部分を被覆するバインダー5の膜厚を加算した値であるから,引用発明において,「バインダー5で被覆されたビーズ6の突出部分」(微小突起)の「平均突出高さH」は,少なくとも1.2μmを越える値となると推認される。
したがって,引用発明と本願補正発明は,「微小突起の平均突出高さHが0.38μm以上であ」る点で一致する。

オ 引用発明の「スティッキング層4」(凹凸塗膜)は,基材層2の裏面に略一定厚で積層された「バインダー5」(バインダ樹脂)と,その下部がバインダー5の裏面から突出するよう前記バインダー5中に分散した「ビーズ6」(球状粒子)とから構成され,前記バインダ-5には,潤滑性及びスリップ性を発現する「潤滑剤」(滑剤)として,末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサンを含有させているから,引用発明の「スティッキング層4」と本願補正発明の「凹凸塗膜」は,「バインダ樹脂中に該微小突起を生成する為の球状粒子と,滑剤を含有」する点で一致する。

カ 引用発明では,「潤滑剤」として,末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサンを用いており,当該変性有機ポリシロキサンの変性の態様としてはポリエーテル変性が挙げられるところ,本願補正発明の「滑剤」として用いている「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」は,引用発明の「末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサン」という概念に包含される化合物である。
したがって,引用発明と本願補正発明は,「滑剤として,末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサンを用いている」点で共通している。

キ 前記アないしカから,本願補正発明と引用発明とは,
「柱状単位プリズムをその稜線を互いに平行に配列して成るプリズム群を,シート状の本体部の一方の面に有し,該本体部の他方の面に,微小突起が表面に形成された凹凸塗膜を有する光学シートであって,
該微小突起の平均突出高さHが0.38μm以上であり,且つ該凹凸塗膜はバインダ樹脂中に該微小突起を生成する為の球状粒子と,滑剤を含有し,
前記滑剤として,末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサンを用いている,光学シート。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本願補正発明では,「末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサン」として,「重量平均分子量が5,000?25,000であるポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」を用い,当該ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの含有量がバインダ樹脂に対して0.01?5質量%であるのに対して,
引用発明では,「末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサン」としてどのようなものを用いるのかは特定されておらず,また,その含有量も特定されていない点。

(4)相違点の容易想到性
ア 引用発明において,「末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサン」は,潤滑性及びスリップ性を発現する「潤滑剤」としてバインダー5に含有させたものであるところ,前記(2)イ(ウ)で「周知技術」として認定したように,「塗膜を形成する組成物中に含有させる潤滑剤として,ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを用い,当該ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの含有量を,前記組成物の乾燥後質量比で1.0ないし3.0質量%程度とすること。」が,本願の出願前に周知であったのだから,引用発明において,「潤滑剤」として,「末端及び/又は側鎖を変性した変性有機ポリシロキサン」に該当する「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」を採用するとともに,当該「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」の含有量を「スティッキング防止層4」を構成する組成物において1.0ないし3.0質量%程度の範囲内に設定することは,当業者が容易になし得たことである。
また,その際,どの程度の重量平均分子量の「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」を採用するのかは,粘性や潤滑剤としての性能等を総合的に考慮して,当業者が適宜決定すれば足りる設計上の事項にすぎないところ,5,000?25,000という重量平均分子量の値は,潤滑剤としても,「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」としても,従来のものと特段異なるものではないから(例えば,潤滑剤の重量平均分子量については特開2007-148398号公報の【0068】及び【0070】の記載等を,「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」の重量平均分子量については特開2000-86437号公報の【0032】の記載等を参照。),重量平均分子量が5,000?25,000の「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」を採用することは,引用発明に周知技術を適用して「潤滑剤」として「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」を採用するに際して,当業者が適宜なし得た設計上の事項である。
しかるに,「潤滑剤」として「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」を採用するとともに,その含有量を「スティッキング防止層4」を構成する組成物において0.5ないし5質量%の範囲内に設定した引用発明においては,「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」を含有させたバインダー5に対するビーズ6の量が1ないし3重量%であり,「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」が1.0ないし3.0質量%であるから,「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」を含まないバインダー5単独の量は,94(=100-3-3.0)ないし98(=100-1-1.0)質量%程度であり,バインダー5に対する「ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン」の含有量は,1.0(=1.0/98×100)ないし3.2(=3.0/94×100)質量%程度となって,相違点に係る本願補正発明の「0.01?5質量%」というバインダー樹脂に対するポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの含有量の規定を満足する。
したがって,引用発明を,相違点に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(5)効果について
本願補正発明の効果は,引用文献1の記載及び周知技術に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(6)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1及び2に係る発明は本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,前記第2〔理由〕1(1)アに本件補正前の請求項1として示したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明,並びに周知技術については,前記第2〔理由〕4(2)ア(ア)及び(イ),並びに前記第2〔理由〕4(2)イ(ウ)のとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は,上記第2〔理由〕3のとおり,本願発明の発明特定事項を限定したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が,上記第2〔理由〕4(6)に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-22 
結審通知日 2016-01-05 
審決日 2016-01-18 
出願番号 特願2010-156299(P2010-156299)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁大森 伸一  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 光学シート  
代理人 藤枡 裕実  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ