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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1311780
審判番号 不服2015-5312  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-19 
確定日 2016-03-03 
事件の表示 特願2011-184412「スクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 4日出願公開、特開2013- 43418〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成23年8月26日付けの特許出願であって、平成26年11月17日付けで特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正がされた後に、平成27年2月6日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同月17日)、これに対して、同年3月19日に拒絶査定不服審判の請求と同時に特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正がなされたものである。

第2.平成27年3月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は、平成26年11月17日付けの手続補正に係る特許請求の範囲及び明細書を補正するもので、特許請求の範囲の請求項1については、補正前に
「【請求項1】
基板の上面に接触されるマスクと、
基板の上面と接触したマスク上で2つのスキージのうちの一方を一の方向に摺動させる第1のスキージング動作及び2つのスキージのうちの他方を第1のスキージングのときとは反対の方向に摺動させる第2のスキージング動作を1回ずつ続けて行ってマスク上のペーストを基板に転写させるスキージヘッドと、
スキージヘッドによる基板へのペーストの転写が行われた後、基板をマスクから離間させて版離れを行う版離れ機構と、
ペーストが転写された基板を搬出するコンベアと、
版離れ機構による版離れが行われる毎にマスクの下面に付着したペーストを除去するマスククリーニングを行うクリーニング装置とを備え、
マスククリーニングを前記コンベアによる基板の搬出と並行して行うことを特徴とするスクリーン印刷機。」
とあるのを、次のとおりに補正するものである。
「【請求項1】
基板の上面に接触されるマスクと、
基板の上面と接触したマスク上で2つのスキージのうちの一方を一の方向に摺動させる第1のスキージング動作及び2つのスキージのうちの他方を第1のスキージングのときとは反対の方向に摺動させる第2のスキージング動作を1回ずつ続けて行ってマスク上のペーストを基板に転写させるスキージヘッドと、
スキージヘッドによる基板へのペーストの転写が行われた後、基板をマスクから離間させて版離れを行う版離れ機構と、
ペーストが転写された基板を搬出するコンベアと、
版離れ機構による版離れが行われる毎にマスクの下面に付着したペーストを除去するマスククリーニングを行うクリーニング装置とを備え、
マスククリーニングを前記コンベアによる基板の搬出と並行して行い、
マスククリーニングを基板の搬送動作の実行中に済ませることを特徴とするスクリーン印刷機。」
(なお、下線は、補正の内容を明らかにするために、審決で付した。)

上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「マスククリーニング」の態様に関して、「マスククリーニングを基板の搬送動作の実行中に済ませる」と限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、前記に記載された事項により特定されるところ、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
(1)引用例1
原査定に係る平成26年12月16日付けの拒絶理由通知で引用された、本願の出願前である平成23年6月30日に頒布された刊行物である特開2011-129598号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に半田接合用のペーストを印刷するスクリーン印刷装置および基板に電子部品を実装して実装基板を製造する部品実装システムならびにこの部品実装システムにおいて印刷後の基板を部品実装装置に供給する基板供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板に実装して実装基板を製造する部品実装システムは、基板に半田接合用のペーストを印刷するスクリーン印刷装置や、印刷後の基板に電子部品を実装する部品実装装置などを連結して構成されている。部品実装システムにおいて高い生産性を実現するには、システムを構成する各装置のラインバランスが保たれて、いずれの装置においても待機時間などのタクトロスが極力発生しないことが求められる。
【0007】
そこで本発明は、必要なクリーニング品質を確保しつつ下流側の部品実装装置が印刷後の基板の搬入待ちのために待機する無駄時間を排除することができるスクリーン印刷装置および部品実装システムならびにこの部品実装システムにおける基板供給方法を提供することを目的とする。」
イ.「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスクリーン印刷装置は、基板に電子部品を搭載する部品実装装置の上流側に連結されて部品実装システムを構成し、前記基板に部品接合用のペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、上流側装置より供給された基板を保持して所定の印刷位置に位置決めする基板位置決め部と、パターン孔が設けられ前記ペーストが供給されたマスクプレート上でスキージを摺動させることにより、前記基板位置決め部によって位置決め保持された前記基板に前記パターン孔を介してペーストを印刷するスクリーン印刷部と、前記マスクプレートの下面にクリーニングヘッドを摺接させることによりこのマスクプレートを清掃するマスククリーニング機構と、前記スクリーン印刷部によってペーストが印刷され前記基板位置決め部から搬出された後の基板をストックする基板ストック部と、前記基板ストック部における基板のストック量を検出するストック量検出部と、前記ストック量検出部によって前記ストック量が所定量に到達したことが検出されたならば、前記スクリーン印刷部による印刷作業を停止して前記マスククリーニング機構によるマスクプレートの清掃作業を実行させる制御処理部とを備えた。」
ウ.「【0016】
次に図2,図3を参照して、印刷機構5の構成および機能を説明する。図2において、印刷機構5は、基板位置決め部11の上方にスクリーン印刷部20を配設して構成されている。基板位置決め部11は、上流側装置より供給された基板4を保持して所定の印刷位置に位置決めする機能を有しており、Y軸テーブル12、X軸テーブル13およびθ軸テーブル14を段積みし、更にその上にZ軸テーブル15を載置して構成されている。Z軸テーブル15上には基板4を下面側から下受けして保持する基板保持部16が設けられている。上流側から搬入コンベア18A(図3)を介して搬入された基板4は基板保持部16上に搬入され、クランパ17によって両側から挟み込まれて位置が固定される。以下に説明するスクリーン印刷部20によって印刷された後の基板4は、搬出コンベア18B(図3参照)を介して下流側へ搬出される。
【0017】
基板位置決め部11の上方に配設されたスクリーン印刷部20は、マスク枠21に展張されたマスクプレート22を備えている。マスクプレート22には、印刷対象に応じたパターン孔22aが設けられている。マスクプレート22上にはスキージヘッド23が配設されている。スキージヘッド23は、水平なプレート24にスキージ26を昇降させるスキージ昇降機構25を配設した構成となっており、スキージ移動機構(図示省略)によってY方向に水平移動する(矢印b)。またスキージ昇降機構25を駆動することにより、スキージ26は昇降して(矢印c)マスクプレート22の上面に当接する。
【0018】
Z軸テーブル15を上昇させてマスクプレート22の下面を基板4に当接させた状態で、ペーストが供給されたマスクプレート22上で、スキージ移動手段を駆動してスキージ26をY方向に移動させることにより、パターン孔22aを介して基板4にはペーストが印刷される。すなわちスクリーン印刷部20は、パターン孔22aが設けられペーストが供給されたマスクプレート22上でスキージ26を摺動させることにより、基板位置決め部11によって位置決め保持された基板4にパターン孔22aを介して基板4の電極4aにペーストを印刷する。」
エ.引用例1の図2から、「スキージヘッド23には二つのスキージ26が設けられている」ことが看取できる。

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「基板に部品接合用のペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、上流側から搬入コンベアを介して供給された基板を保持して所定の印刷位置に位置決めする基板位置決め部と、パターン孔が設けられ前記ペーストが供給されたマスクプレート上でスキージを摺動させることにより、前記基板位置決め部によって位置決め保持された前記基板に前記パターン孔を介してペーストを印刷するスクリーン印刷部と、前記マスクプレートの下面にクリーニングヘッドを摺接させることによりこのマスクプレートを清掃するマスククリーニング機構と、前記スクリーン印刷部によってペーストが印刷され前記基板位置決め部から搬出された後の基板をストックする基板ストック部と、ストック量が所定量に到達したことが検出されたならば、前記スクリーン印刷部による印刷作業を停止して前記マスククリーニング機構によるマスクプレートの清掃作業を実行させる制御処理部とを備え、基板位置決め部は、上流側装置より供給された基板を保持して所定の印刷位置に位置決めする機能を有しており、Y軸テーブル、X軸テーブルおよびθ軸テーブルと、更にその上にZ軸テーブルを載置して構成されて、Z軸テーブル上には基板を下面側から下受けして保持する基板保持部が設けられており、スクリーン印刷部は、マスク枠に展張されたマスクプレートを備え、マスクプレート上には、2つのスキージを設けたスキージヘッドが配設され、Z軸テーブルを上昇させてマスクプレートの下面を基板に当接させた状態で、ペーストが供給されたマスクプレート上で、スキージをY方向に移動させることにより、パターン孔を介して基板にペーストが印刷され、スクリーン印刷部によって印刷された後の基板は、搬出コンベアを介して下流側へ搬出されるスクリーン印刷装置。」

(2)引用例2
同じく、原査定に係る平成26年12月16日付けの拒絶理由通知で引用された、本願の出願前である平成21年12月24日に頒布された刊行物である特開2009-297922号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.「【0006】
そこで、スクリーン印刷装置においては、スクリーンマスクの裏面を適時清掃する必要がある。
【0007】
このスクリーンマスクの裏面のクリーニング機構としては、残留ペースト状材を拭き取るクリーニングペーパを用いる方式や、スクリーンマスクの裏面を、ペーパによる拭き取りに代えて、板状部材からなるスクレーパを用いて、スクリーンマスクの裏面に付着したペースト状材を掻き取る方式を用いたものもある。
【0008】
ところで、高品質の印刷を実現するためには、クリーニングを行う必要があるが、同時に、印刷タクトを上げることへの要望も高い。そこで、印刷タクトを上げるために、数回の印刷工程毎にクリーニングを行うようにしており、品質面が犠牲になっていた。
【0010】
そこで、本発明は、上述の実情に鑑みてなされたものであり、印刷タクトを低下させることなく印刷を行うことができるとともに、印刷品質の低下も防止することができるスクリーン印刷装置に用いられるクリーニング装置及びスクリーン印刷装置を提供することを目的とする。」
イ.「【0012】
本発明は、クリーニングユニットが、クリーニングペーパをスクリーンマスクの一の面に当接させ、クリーニングペーパを介してスクリーンマスクの一の面を摺動する、凹凸面部を有するスクレーパを有することから、従来のクリーニングペーパを用いて拭き取るクリーニング方式と比較して、高速にクリーニングを行うことができる。そのため、従来と比して短時間の印刷タクトを実現することができる。また、印刷タクトを下げることなく、毎回の印刷工程毎にクリーニングを行うことができ、印刷品質を低下させることもなく、高品質の印刷を安定して行うことができる。」
ウ.「【0015】
図1は、本発明を適用したスクリーン印刷装置1の正面方向から見た概略図である。スクリーン印刷装置1は、図1に示すように、ワーク2に対してパターンを印刷する印刷パターンが形成されたスクリーンマスク11と、スクリーンマスク11を支持するスクリーン支持部12と、スクリーンマスク11と相対向して、ワーク2を支持するステージ13と、ステージ13及びスクリーンマスク11との間に搬送され、スクリーンマスク11のワーク2と対向する側の一の面11cのクリーニングを行うクリーニングユニット14と、クリーニングユニット14を、スクリーンマスク11の一の面11cの一端から他端に亘って搬送させる搬送手段15と、各手段の動作を制御する制御手段16とから構成されている。」
エ.「【0048】
次に、このように構成されたスクリーン印刷装置1の動作を図9のフローチャートを参照して説明する。
【0049】
まず、ステップS1において、制御手段16は、ステージ13上にワーク2をセットし、ステージ13のxy平面における搬送手段を制御し、当該ステージ13をスクリーンマスク11と相対向する位置まで搬送する。
【0050】
次に、ステップS2において、制御手段16は、ステージ13のz方向の搬送手段を制御し、xy平面における位置合わせが行われたステージ13をz方向に搬送し、スクリーンマスク11とワーク2とを密着させ、スキージ3をスクリーンマスク11の表面上を摺動させ、ペースト状材をワーク2に転写させ印刷する。
【0051】
次に、ステップS3において、制御手段16は、ステージ13を搬送させ、印刷が完了したワーク2をステージ13から取り除く。このとき、制御手段16は、ステージ13の退避とともに、スクレーパ移動手段23を制御し、スクレーパ22をクリーニングペーパ21を介してスクリーンマスク11の一の面11cに当接させる。また、制御手段16は、搬送手段15を制御し、クリーニングユニット14を搬送方向(x方向)に搬送し、スクレーパ22をスクリーンマスク11の一の面11c上を摺動させ、スクリーンマスク11の一の面11cに付着した残留ペースト状材を絡め取る。」
カ.「【0058】
以上のようなスクリーン印刷装置1は、クリーニングユニット14により高速にクリーニングを行うことができるので、印刷が終了したワーク2を退避させる間等の時間内で、クリーニングを行うことができるので、1印刷タクト内でクリーニングを行うことができ、すなわち、タクト時間のロスなく、毎回クリーニングを行うことができる。
【0059】
また、スクリーン印刷装置1においては、上述のように毎回クリーニングを行うことができるので、高品質を維持し、常に印刷品質の安定が可能となる。」

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「ワークに対してパターンを印刷する印刷パターンが形成されたスクリーンマスクと、スクリーンマスクを支持するスクリーン支持部と、スクリーンマスクと相対向して、ワークを支持するステージと、ステージ及びスクリーンマスクとの間に搬送され、スクリーンマスクのワークと対向する側の一の面のクリーニングを行うクリーニングユニットと、クリーニングユニットを、スクリーンマスクの一の面の一端から他端に亘って搬送させる搬送手段と、各手段の動作を制御する制御手段とから構成されているスクリーン印刷装置であって、制御手段は、ステージ上にワークをセットし、ステージのxy平面における搬送手段を制御し、当該ステージをスクリーンマスクと相対向する位置まで搬送し、次に、xy平面における位置合わせが行われたステージをz方向に搬送して、スクリーンマスクとワークとを密着させ、スキージをスクリーンマスクの表面上を摺動させ、ペースト状材をワークに転写させ印刷し、次に、ステージ13を搬送させ、印刷が完了したワークをステージから取り除き、このとき、ステージ13の退避とともに、スクレーパをクリーニングペーパを介してスクリーンマスクの一の面に当接させ、クリーニングユニットを搬送方向(x方向)に搬送し、スクレーパをスクリーンマスクの一の面上を摺動させ、スクリーンマスクの一の面に付着した残留ペースト状材を絡め取り、印刷が終了したワークを退避させる間等の時間内で、クリーニングを行うと共に毎回クリーニングを行うスクリーン印刷装置。」

(3)引用例3
前置審査に係る前置報告で引用された、本願の出願前である平成18年10月26日に頒布された刊行物である特開2006-289784号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.「【0005】
しかしながら、印刷装置においては、ステンシルの清掃作業中は通常の印刷作業が停止されるため、清掃作業が生産効率の低下を招いてしまうという点において改善の余地があった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、清掃作業を含めた全体の生産効率の向上を図ることができる印刷方法および印刷装置を提供することを目的とする。」
イ.「【0015】
[8] 印刷ステージ上の基板にステンシルを介してペーストを塗布する印刷装置において、
ステンシルに対して相対移動してステンシルを清掃するクリーナーと、
印刷ステージに対して基板の搬出入を行う基板搬出入手段と、
前記クリーナーによる清掃動作と並行して、前記基板搬出入手段による基板の搬出入動作を実行させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。」
ウ.「【0016】
上記発明[1]によると、クリーナーによるステンシルの清掃動作中に、印刷ステージでは次の基板への印刷準備を進行させておき、清掃動作後には、速やかに次の基板への印刷動作を開始することができ、これにより清掃作業を含めた全体の生産効率の向上を図ることができる。」
エ.「【0084】
なお上記実施形態においては、印刷ステージにおける基板の搬出入動作とステンシルの清掃動作とが同時に開始され、清掃動作中に基板の搬出入動作が完了する場合を例に説明したが、両動作は少なくとも一部分が並行して行われれば良く、いずれが先に開始されても、いずれが先に終了しても良い。また、印刷ステージから基板の搬出動作だけが清掃動作と並行して行われても良い。また清掃が先に終了すれば、清掃状態の確認を印刷ステージにおける基板搬出入動作や基板の固定動作と並行して行うようにしても良い。」
上記「エ.」の「印刷ステージにおける基板の搬出入動作とステンシルの清掃動作とが同時に開始され、清掃動作中に基板の搬出入動作が完了する場合を例に説明したが・・・いずれが先に終了しても良い」との記載から、「基板の搬出入動作中に清掃動作が完了する」ことが示されているといえる。

上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「印刷ステージ上の基板にステンシルを介してペーストを塗布する印刷装置において、ステンシルに対して相対移動してステンシルを清掃するクリーナーと、印刷ステージに対して基板の搬出入を行う基板搬出入手段と、前記クリーナーによる清掃動作と並行して、前記基板搬出入手段による基板の搬出入動作を実行させる制御手段と、を備え、印刷ステージにおける基板の搬出入動作とステンシルの清掃動作とが同時に開始され、基板の搬出入動作中に清掃動作が完了する印刷装置。」

3.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「マスクプレート」は、その機能、作用等からみて、前者における「マスク」に相当し、以下同様に、「基板」は「基板」に、「スキージ」は「スキージ」に、「スキージヘッド」は「スキージヘッド」に、「ペースト」は「ペースト」に、「(マスクプレートの)パターン孔を介して基板にペーストを印刷する」ことは「マスク上のペーストを基板に転写させる」ことに、「搬出コンベア」は「ペーストが転写された基板を搬出するコンベア」に、「マスクプレートの下面にクリーニングヘッドを摺接させることによりこのマスクプレートを清掃するマスククリーニング機構」は「マスクの下面に付着したペーストを除去するマスククリーニングを行うクリーニング装置」に、「スクリーン印刷装置」は、「スクリーン印刷機」に、それぞれ相当する。
また、後者における「スキージをY方向に移動させること」と前者における「2つのスキージのうちの一方を一の方向に摺動させる第1のスキージング動作及び2つのスキージのうちの他方を第1のスキージングのときとは反対の方向に摺動させる第2のスキージング動作を1回ずつ続けて行」うこととは、「一の方向に摺動させるスキージング動作」との概念で共通する。
また、後者における「基板位置決め部」は、Y軸テーブル、X軸テーブル、θ軸テーブル、及び基板保持部から構成されて、上流側装置より供給された基板を保持して所定の印刷位置に位置決めする機能を有しているから、Z軸テーブルを上昇させてマスクプレートの下面を基板に当接させる機能と共に、スキージング動作の完了後に、基板をマスクから離す「版離れ」の機能をも有することは明らかである。してみると、後者は、「スキージヘッドによる基板へのペーストの転写が行われた後、基板をマスクプレート(マスク)から離間させて版離れを行う版離れ機構を備えている」といえる。

したがって、両者は、
「基板の上面に接触されるマスクと、
基板の上面と接触したマスク上で一の方向に摺動させるスキージング動作を行ってマスク上のペーストを基板に転写させるスキージヘッドと、
スキージヘッドによる基板へのペーストの転写が行われた後、基板をマスクから離間させて版離れを行う版離れ機構と、
ペーストが転写された基板を搬出するコンベアと、
マスクの下面に付着したペーストを除去するマスククリーニングを行うクリーニング装置とを備えるスクリーン印刷機。」
の点で一致し、以下の2点で相違している。
[相違点1]
一の方向に摺動させるスキージング動作に関して、本願補正発明は、「2つのスキージのうちの一方を一の方向に摺動させる第1のスキージング動作及び2つのスキージのうちの他方を第1のスキージングのときとは反対の方向に摺動させる第2のスキージング動作を1回ずつ続けて行」うのに対し、引用発明1は、2つのスキージを備えるものの、スキージング動作についてはスキージをY方向に移動させるものである点。
[相違点2]
本願補正発明は、マスククリーニングを「版離れ機構による版離れが行われる毎に」行い、コンベアによる「基板の搬出と並行して行い」、「基板の搬送動作の実行中に済ませる」のに対し、引用発明1は、ストック量が所定量に到達したことが検出されたならば、スクリーン印刷部による印刷作業を停止してマスククリーニング機構によるマスクプレートの清掃作業を実行させる点。

4.判断
(1)相違点1について
一般にスクリーン印刷機において、2つのスキージを備え、基板の上面と接触したマスク上で2つのスキージのうちの一方を一の方向に摺動させる第1のスキージング動作及び2つのスキージのうちの他方を第1のスキージングのときとは反対の方向に摺動させる第2のスキージング動作を1回ずつ続けて行ってマスク上のペーストを基板に転写させることは、本願の出願時点で周知の技術事項(例えば、特開平9-314799号公報の段落【0002】?【0005】、【0010】、【0014】?【0019】参照。)である。
そして、引用発明1と上記周知の技術事項とは、共にスクリーン印刷機という技術分野に属し、2つのスキージを備えるものである。
してみると、引用発明1に上記周知の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、上記周知の技術事項を適用することにより、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
上記2.(2)によれば、引用発明2における「スクリーンマスク」は、その構造、機能、作用等からみて、本願補正発明における「マスク」に相当し、以下同様に、「ペースト状材」は「ペースト」に、「スクリーンマスクのワークと対向する側の一の面のクリーニング」は「マスクの下面に付着したペーストを除去するマスククリーニング」に、「クリーニングユニット」は「クリーニング装置」に、「ワーク」は「基板」に、「スクリーン印刷装置」は「スクリーン印刷機」に、それぞれ相当する。
また、引用発明2は、スクリーンマスクとワークとを密着させ、ペースト状材をワークに転写させ印刷した後、毎回クリーニングを行っているから、「版離れ機構による版離れが行われる毎に」マスクの下面に付着したペーストを除去するマスククリーニングを行うクリーニング装置とを備えているといえる。
また、引用発明2は、印刷が完了したワークをステージから取り除くときに、クリーニングユニットによって、スクリーンマスクのクリーニングを行っているから、「マスククリーニングを基板の搬出と並行して行っている」といえる。
また、引用発明2は、クリーニングを印刷が終了したワークを退避させる間の時間内、つまりワークの搬送動作の実行中に行って、1印刷タクト内でのタクト時間のロスをなくしているから、「マスククリーニングを基板の搬送動作の実行中に済ませる」ことが示唆されている。
してみると、上記相違点2に係る本願補正発明のマスククリーニングを「版離れ機構による版離れが行われる毎に」行い、「基板の搬出と並行して行い」との発明特定事項を備えている。
そして、引用発明1と引用発明2とは、スクリーン印刷機という共通の技術分野に属し、マスククリーニングを基板の搬出動作の実行中に済ませて、基板の搬入待ちのために待機する無駄時間を排除するという共通の課題を有するものであるから、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、上記2.(3)によれば、引用発明3における「清掃動作」は、その構造、機能、作用等からみて、本願補正発明における「マスククリーニング」に相当し、以下同様に、「基板」は「基板」に、「ステンシル」は「マスク」に、「『印刷ステージ上の基板にステンシルを介してペーストを塗布する印刷装置』、及び『印刷装置』」は「スクリーン印刷機」に、それぞれ相当する。
また、引用発明3は、印刷ステージにおける基板の搬出入動作とステンシルの清掃動作とが同時に開始され、基板の搬出入動作中に清掃動作が完了するから、「マスククリーニングを基板の搬出と並行して行い、マスククリーニングを基板の搬送動作の実行中に済ませる」といえる。
してみると、上記相違点2に係る本願補正発明のマスククリーニングを「基板の搬出と並行して行い」、「基板の搬送動作の実行中に済ませる」との発明特定事項を備えている。
そして、引用発明1と引用発明3とは、スクリーン印刷機という共通の技術分野に属し、マスククリーニングを基板の搬出動作の実行中に済ませて、基板の搬入待ちのために待機する無駄時間を排除するという共通の課題を有するものであるから、引用発明1において、引用発明3を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2、及び3を適用することにより、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1、2、及び3、並びに上記周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1、2、及び3、並びに上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願の発明について
1.本願の発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年11月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
基板の上面に接触されるマスクと、
基板の上面と接触したマスク上で2つのスキージのうちの一方を一の方向に摺動させる第1のスキージング動作及び2つのスキージのうちの他方を第1のスキージングのときとは反対の方向に摺動させる第2のスキージング動作を1回ずつ続けて行ってマスク上のペーストを基板に転写させるスキージヘッドと、
スキージヘッドによる基板へのペーストの転写が行われた後、基板をマスクから離間させて版離れを行う版離れ機構と、
ペーストが転写された基板を搬出するコンベアと、
版離れ機構による版離れが行われる毎にマスクの下面に付着したペーストを除去するマスククリーニングを行うクリーニング装置とを備え、
マスククリーニングを前記コンベアによる基板の搬出と並行して行うことを特徴とするスクリーン印刷機。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容、並びに引用発明は、上記「第2.2.引用例」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2.1.本件補正の概要」で検討したところから明らかなように、上記本願補正発明の「マスククリーニング」の態様に関して、「マスククリーニングを基板の搬送動作の実行中に済ませる」との限定を省いたものにあたる。

そうすると、本願発明と引用発明1とを対比した場合の相違点は、上記「第2.3.対比」で挙げた相違点1、及び相違点2のマスククリーニングを「版離れ機構による版離れが行われる毎に」行い、コンベアによる「基板の搬出と並行して行い」となるから、上記「第2.4.判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1、及び2、並びに上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、及び2、並びに上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-22 
結審通知日 2016-01-05 
審決日 2016-01-19 
出願番号 特願2011-184412(P2011-184412)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41F)
P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 宏之  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
畑井 順一
発明の名称 スクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  
代理人 藤井 兼太郎  

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