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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1311782
審判番号 不服2015-7399  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-20 
確定日 2016-03-03 
事件の表示 特願2013-535918「触感呈示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月 4日国際公開、WO2013/046670〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年9月26日(優先権主張平成23年9月27日)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月9日付けで拒絶理由通知がなされ、同年8月11日付けで手続補正がなされ、平成27年1月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1-4に係る発明は、平成26年8月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は以下のとおりである。(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

「 【請求項1】
タッチセンサと、
前記タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部と、
バッテリの情報を取得するバッテリ情報取得部と、
前記タッチセンサが接触を検出すると所定の処理を実行する第1の入力モード、または、前記タッチセンサをプッシュすると、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御するとともに所定の処理を実行する第2の入力モード、を切換可能に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記バッテリ情報取得部が取得した前記バッテリの情報に基づいて、前記第1の入力モードと、前記第2の入力モードとを切り換えるように制御する、触感呈示装置。」

第3 原査定の理由の概要

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1,2
・引用文献 1-4
・備考
引用文献1(p.182及び201等参照。)には、電池残量が一定値を切ったときに電力の消費を抑えてくれるecoモードを備えること、及びスマートフォンの入力時のバイブレータ機能のオン・オフをおこなうことが記載されており、第1の入力モードと触感を呈示する第2の入力モードとを切り換えるように制御するものであるか否かが明記されていない点で本願発明とは相違する。 しかしながら、請求項には、第1の入力モードが第2の入力モードと比較してどのような違いを持つモードなのかが明示されておらず、してみれば、どのようなモードを採用するかは当業者が適宜選択し得る事項である。
また、仮に第1の入力モードが触感を呈示しないモードであるとしても、携帯端末において、バイブレーションなどのフィードバック機能が電力を消費するものであることは技術常識(必要ならば引用文献2の「Androidスマートフォンのタッチパネルによる操作では、操作音やバイブでも電力を消費します。・・(中略)・・操作に慣れるまでは、操作音やリアクションがわかるバイブなどはあった方が良いかと思いますが、ある程度操作になれたら設定を切って節電しましょう。」の記載等を参照。)であり、引用文献1において、バッテリの情報に基づいて、触感を呈示するモードとしないモードを切り換えるように構成することで上記相違点に係る本願発明のように構成することは当業者が容易になし得ることである。
さらに、電池残量に応じて特定のモードに切り替えることは引用文献1以外にも引用文献3及び引用文献4等に示すとおり常とう手段である。

・・・(略)・・・

引 用 文 献 等 一 覧
1.法林岳之他3名&できるシリーズ編集部,Optimus bright
,株式会社インプレスジャパン,2011年7月1日,第1版,p.182,201
2.”知って得する「INFOBAR A01」のバッテリー節約術”、[online]、20
11年7月1日、Androvavi、[2012年10月12日検索]、インターネッ
ト<URL:http://andronavi.com/2011/07/101136>
3.特開2011-82623号公報
4.特開2010-258553号公報

出願人は意見書の中で、引用文献1記載の技術は、バイブレータ機能を備えるものの、画面をタップしたときのバイブレータであって、画面をプッシュしたときのバイブレータではない点で本願発明とは相違する旨を主張しているが、タッチパネルの画面の押圧時にタッチ面を振動させて触感を提示することは本願優先日前に周知の技術(引用文献5要約、引用文献6要約及び引用文献7要約等参照。)であるから、引用文献1に当該周知技術を適用して、当該相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
その他の点については、先の拒絶理由で述べたとおりである。
したがって、補正後の請求項1ないし4に係る発明は、依然として、先の引用文献及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。
よって、出願人の意見は採用することができない。

追加引用文献
5.特開2011-154559号公報
6.国際公開第2011/077687号
7.特開2011-129047号公報

第4 当審の判断

1.引用文献及び周知例

原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された「法林岳之他3名&できるシリーズ編集部,Optimus bright,株式会社インプレスジャパン,2011年7月1日,第1版)」(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「スマートフォン「Optimus bright」とは?
国内外で急速に注目を集め、普及が進み始めているスマートフォン。」(第10頁第1行目から第2行目まで)

「タッチ操作音やバイブレータをオフにするには
画面をタップしたときの操作音やバイブレータはオフにすることができます。」(第182頁冒頭)

「あとは、電池残量が一定値を切ったときに電力の消費を抑えてくれる[ecoモード]を設定しておくのもおすすめです。」(第201頁「A」本文第9行目から第10行目まで)

「通信機能のオフ
1 ホーム画面でメニューキーをタップし、[設定]-[無線とネットワーク]をタップ」(第201頁右下図)

ここで、上記記載を関連図面及び本願優先日前からの技術常識に照らせば、以下のことがいえる。

(1)第201頁等の「メニューキーをタップし」という記載や、スマートフォンがタップを検出するためのタッチセンサを有するという本願優先日前からの技術常識に照らせば、引用文献1に記載されたOptimus brightは、タップを検出するためのタッチセンサを有するといえる。

(2)第201頁の「電池残量が一定値を切ったときに電力の消費を抑えてくれる[ecoモード]を設定」という記載から、引用文献1に記載されたOptimus brightは、電池残量の情報を取得する手段を備え、当該手段が取得した電池残量が一定値を切ったときにecoモードに設定するといえる。

したがって、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「タッチセンサと、
バイブレータと、
電池残量の情報を取得する手段と、
電池残量が一定値を切った時に電力の消費を抑えるecoモードを備えたスマートフォン。」

原査定の拒絶の理由において、「引用文献5-7」として周知例を示す文献として引用された特開2011-154559号公報(要約)、国際公開第2011/077687号(要約)、特開2011-129047号公報(要約)には、そのいずれにも「タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部、及びタッチセンサをプッシュすると、タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する制御部を備える触感呈示装置」という技術的事項(以下「技術的事項1」という。)が記載されている。
したがって、上記技術的事項1は、本願優先日前に周知であったと認められる。

2.対比

本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(1)引用発明における「電池残量の情報」は、本願発明における「バッテリの情報」に相当する。

(2)引用発明における「バイブレータ」は、振動によって触感を呈示するものであるから、触感呈示部といえ、引用発明における「スマートフォン」は、本願発明における「触感呈示装置」に相当する。

(3)引用発明のスマートフォンは、「電池残量が一定値を切った時に電力の消費を抑えるecoモード」になるものであるから、電池残量が一定値を切っていない場合は、ecoモードとは異なるモード(以下「通常モード」という。)にあることは明らかであり、引用発明のスマートフォンは、本願発明と、少なくとも2つの入力モード(第1の入力モード、第2の入力モード)を有する点では一致する。
また、引用発明のスマートフォンは、電池残量の情報に基づいて、通常モードとecoモードとを切り換えるのであるから、引用発明のスマートフォンは、これらのモードの切り換えを行うための制御部も有するといえる。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)

「タッチセンサと、
触感呈示部と、
バッテリの情報を取得するバッテリ情報取得部と、
第1の入力モード、または、第2の入力モード、を切換可能に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記バッテリ情報取得部が取得した前記バッテリの情報に基づいて、前記第1の入力モードと、前記第2の入力モードとを切り換えるように制御する、触感呈示装置。」

(相違点1)

本願発明における「触感呈示部」は、タッチセンサのタッチ面を振動させるものであるのに対し、引用発明における「バイブレータ」は、どの部分を振動させるものであるかが特定されていない点

(相違点2)

本願発明における「第1の入力モード」「第2の入力モード」はそれぞれ、「タッチセンサが接触を検出すると所定の処理を実行する」モード、「タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御するとともに所定の処理を実行する」モードであるのに対し、引用発明における「ecoモード」「通常モード」はそれぞれ、電力の消費を抑えるモード、そうでないモードではあるものの、それぞれ「タッチセンサが接触を検出すると所定の処理を実行する」モード、「タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御するとともに所定の処理を実行する」モードとはされていない点

3.判断

(1)上記相違点1について

引用発明における「バイブレータ」と、技術的事項1とは、いずれも外部に触感を呈示するものである点で共通するものであり、引用発明の「バイブレータ」として、技術的事項1の「タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部」を採用することが困難といえる事情もないから、引用発明の「バイブレータ」として、技術的事項1の触感呈示部を採用することで、タッチセンサのタッチ面を振動させるものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(2)上記相違点2について

ア.本願発明の「タッチセンサが接触を検出すると所定の処理を実行する第1の入力モード」は、請求項1の記載上、「タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように触感呈示部を制御する」ものを排除しておらず、タッチセンサをプッシュすると、タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように触感呈示部を制御するものも含むと解釈される。
すなわち、本願発明は、第1の入力モード、第2の入力モードのいずれのモードの場合にも、「タッチセンサをプッシュすると、タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように触感呈示部を制御する」ものを含むと解釈される。

イ.タッチパネルに表示されたアイコン等への接触がタッチセンサにより検出されると、当該アイコン等に関連付けられた処理を実行するといった、「タッチセンサが接触を検出すると所定の処理を実行する」機能は、タッチパネルを有する携帯端末の基本的な機能である。
したがって、引用発明のスマートフォンにおいて、ecoモード時にも、上記「タッチセンサが接触を検出すると所定の処理を実行する」という基本的な機能も実行するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
また、上記「相違点(1)について」に記載したとおり、引用発明と、技術的事項1とは、いずれも外部に触感を呈示するものである点で共通するものであること、引用発明においても技術的事項1が有用な場合は容易に想定されること、引用発明において技術的事項1を採用することが困難である理由はないこと等の事情に照らせば、引用発明において技術的事項1を採用することも、当業者が容易になし得たことである。
そして、上記ア.に示した本願発明の解釈を踏まえると、以上のことは、引用発明において相違点2に係る本願発明の構成を採用することが、当業者に容易になし得たことであることを意味している。

ウ.念のために、本願発明の「第1の入力モード」が、「タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように触感呈示部を制御する」ものを含まないものであると仮定した場合についても検討する。

原査定の拒絶の理由において、「引用文献2」として引用された「”知って得する「INFOBAR A01」のバッテリー節約術”、[online]、2011年7月1日、Androvavi、[2012年10月12日検索]、インターネット<URL:http://andronavi.com/2011/07/101136>」に、操作音やバイブでも電力を消費するので、操作に慣れたら設定を切って節電を推奨する旨の記載があるとおり(「4.操作音・GPSをオフにして節電」の項参照)、バイブレーションは電力を消費するものであり、節電のために、必要に応じてバイブレーションの設定を切ることが推奨されるものである。
したがって、引用発明に、技術的事項1を適用する際に、通常モードの際は「タッチセンサをプッシュすると、タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する」ように構成する一方で、電池残量が一定値を切ったためにecoモードに移行した際は、節電のために、触感呈示部を動かすような制御は行わず、タッチセンサが接触を検出すると所定の処理を実行するという基本的な機能のみを実行するように構成することも、当業者であれば容易になし得たことである。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-24 
結審通知日 2016-01-05 
審決日 2016-01-18 
出願番号 特願2013-535918(P2013-535918)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 匡  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 稲葉 和生
玉木 宏治
発明の名称 触感呈示装置  
代理人 杉村 憲司  

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