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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1311802
異議申立番号 異議2015-700132  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-30 
確定日 2016-01-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第5707707号「リチウムイオン二次電池用負極材、該負極材を用いたリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5707707号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5707707号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成22年2月25日に特許出願され、平成27年3月13日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人小松保憲により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件特許
特許第5707707号の請求項1ないし4に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として、特開2006-324237号公報(以下、「甲第1号証」という)、及び、“Crystruct.info:結晶学や結晶構造解析に関する情報を紹介するウェッブサイト”、「リートベルト解析」、[online]、[2015年10月7日に検索]、<URL:http://crysyruct.info/Rietveld/index.html>(以下「甲第2号証」という。)を提出し、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、請求項1ないし4に係る特許は特許法第36条第6項第1号及び第2項の要件を満たしていないから、請求項1ないし4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.甲号証の記載
(1)本件特許の出願前に頒布された甲第1号証には、「リチウムイオン二次電池用負極材」の発明について、以下の事項が記載されている。
ア 「X線回折装置(XRD)測定より求められる炭素002面の面間隔d002が3.40?3.70Åである炭素粒子と、該炭素粒子の表面上に形成された炭素層とを備え、前記炭素粒子に対する前記炭素層の比率(重量比)が0.001?0.1であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材。」(請求項1)
イ 「平均粒子径(50%D)が5μm以上30μm以下、真比重が1.80g/cm^(3)以上2.20g/cm^(3)以下、77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積が0.5m^(2)/g以上25m^(2)/g以下で、かつ、相対圧1までの吸着量が5g/cm^(3)以上30g/cm^(3)以下、273Kでの二酸化炭素吸着より求めた比表面積が0.2m^(2)/g以上7.5m^(2)/g以下で、かつ、相対圧0.03までの吸着量が0.2g/cm^(3)以上5g/cm^(3)以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。」(請求項3)
ウ 「本発明は、従来のリチウムイオン二次電池と比較して、不可逆容量が小さく、かつエネルギー密度が大きく、入出力特性及び寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池、並びにそれを得るためのリチウムイオン二次電池用負極材とその製造方法、及び該負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極を提供することを目的とするものである。」(段落0007)
エ 「本発明よれば、従来のリチウムイオン二次電池と比較して、不可逆容量が小さく、かつエネルギー密度が大きく、入出力特性及び寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池、並びにそれを得るためのリチウムイオン二次電池負極材とその製造方法、及び該負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極を提供することが可能となる。」(段落0014)
オ 「上記熱可塑性の高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレンヘビーエンドピッチ、原油ピッチ、コールタールピッチ、アスファルト分解ピッチ、ポリ塩化ビニル等を熱分解して生成するピッチ、ナフタレン等を超強酸存在下で重合させて作製される合成ピッチ等が使用できる。また、熱可塑性の高分子化合物として、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等の熱可塑性合成樹脂を用いることもできる。また、デンプンやセルロース等の天然物を用いることもできる。」(段落0022)
カ 「また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、273Kでの二酸化炭素吸着より求めた比表面積が0.2m^(2)/g以上7.5m^(2)/g以下であることが好ましく、0.3m^(2)/g以上5m^(2)/g以下であることがより好ましい。・・・」(段落0034)
キ 「(実施例1?4)
石炭系コールタールを、オートクレーブを用いて400℃で熱処理し、生コークスを得た。この生コークスを粉砕した後、1200℃の不活性雰囲気中でカ焼を行い、コークス塊を得た。このコークス塊を分級機付きの衝撃粉砕機を用いて粉砕後、300メッシュの篩にて粗粉を除去して炭素粒子として実験に供した。
界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gを溶解したイオン交換水に、ポリビニルアルコール(重合度1700、完全けん化型)を15g(実施例1)、154g(実施例2)、770g(実施例3)、1390g(実施例4)をそれぞれ溶解し、4種の濃度の混合溶液を調製した。得られた各混合溶液と上記で作製した炭素粒子2000gを加熱機構を有する双腕型混錬機に投入し、室温(25℃)で1時間混合し、次いで120℃に温度を上げ、水を蒸発、除去し、ポリビニルアルコール被覆炭素粒子を得た。得られたポリビニルアルコール被覆炭素粒子を空気中、200℃で5時間加熱処理を行い、ポリビニルアルコールを不融化し、次いで窒素流通下、20℃/時間の昇温速度で900℃まで昇温し、1時間保持して炭素層被覆炭素粒子とした。得られた炭素被覆炭素粒子をカッターミルで解砕、300メッシュの標準篩を通し、負極材試料とした。ポリビニルアルコールを単独で200℃、5時間加熱処理し、次いで窒素流通下、20℃/時間の昇温速度で900℃まで昇温し、1時間保持した場合の炭化率は13%であった。この値及び炭素被覆量より各実施例での表層炭素率を計算したところ、それぞれ0.001(実施例1)、0.01(実施例2)、0.05(実施例3)、0.09(実施例4)であった。上記炭素粒子及び各実施例の負極材試料の物性値・電気的特性を下記の要領で測定した。測定結果を表1に示す。」(段落0050?0051)

(2)甲第2号証には、「リートベルト解析 初出:'10/11/25、更新:'11/04/16」と記載されているから、その電子的技術情報は2011年4月16日に電気通信回路を通じて公衆に利用可能となったものといえる。そして、甲第2号証は、本件特許の出願後に電気通信回路を通じて公衆に利用可能となったものであるが、「リートベルト解析」を説明するための参考資料として提出されたものといえ、甲第2号証には、「リートベルト解析」について次の事項が記載されている。
ア 「リートベルト解析とは?
・・・
ただし、リートベルト解析は手放しで万能と呼べるものではありません。与えられた初期値に対して精密化を行う解析であり,構造モデルが必要です。繰り返しになりますが,仮定した構造モデルに対する構造精密化であり,構造解析の一部であって,構造解析そのものではありません。・・・
・・・
・・・カーブフィッティングが故,解は構造モデルだけでなく,初期値に依存します。初期値次第で解が変わるということは,与えた初期値が適切か,得られた解が妥当かの判断をしながら解析を進めていく必要があることを意味します。・・・」
イ 「リートベルト解析が解り難い理由
・・・
・・・非線形最小二乗法では,
a.フィッティングする関数を人が与える
b.それに見合ったパラメータを選ぶ
必要があります。より簡単に言い換えると,
A.式を仮定している
B.初期値で答えが変わる
ということです。A.がすなわち2.リートベルト解析には構造モデルが必要であるということです・・・
・・・
すなわち、B.初期値で答えが変わるは,言い換えると,答え(と思しきもの)は複数あるということです。・・・」

5.判断
(1)「特許法29条2項違反」の検討
ア.請求項1に係る発明について
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)と特許異議申立人が提出した甲第1号証の発明とを対比すると、甲第1号証には、本件特許発明1の「粉末X線回折測定(XRD)の結果をリートベルト解析して求められる等方性温度因子(B値)の値が2.94Å^(2)以上4.61Å^(2)以下」との発明特定事項が記載も示唆もなされていない。
また、「273Kでの二酸化炭素吸着より求められる比表面積」に関して、甲第1号証には、本件特許発明1の「273Kでの二酸化炭素吸着より求められる比表面積が1.5m^(2)/g以上3.5m^(2)/g以下である」との発明特定事項を含む、広い数値範囲が特定されているものの、本件特許発明1の前記発明特定事項の数値範囲を満足する実施例は記載されておらず、また、当該数値範囲とすることも示唆されていない。
したがって、本件特許発明1は、上記甲第1号証に記載の発明から当業者が容易になし得るものではない。

特許異議申立人は、甲第1号証の上記記載事項ア?エ、カ、キに基づき、本件特許発明1と甲第1号証に記載された「リチウムイオン二次電池用負極材」とは、等方性温度因子以外の本件特許発明1の発明特定事項や課題効果が共通し、両者の実施例の製造条件がほぼ共通することから、甲第1号証に記載された「リチウムイオン二次電池用負極材」も、等方性温度因子に関する上記発明特定事項を満たす蓋然性が極めて高いと主張する。また、甲第1号証の上記記載事項オに基づき、炭素粒子を被覆する炭素前駆体として、甲第1号証の実施例で使用されているポリビニルアルコールに代えて、本件特許の明細書の実施例のようにコールタールピッチを使用することは、甲第1号証の開示内容からすれば当業者にとって自明であるから、その結果として必然的に、等方性温度因子に関する上記発明特定事項を満たす「リチウムイオン二次電池用負極材」が得られることも主張する。
しかしながら、甲第1号証の実施例は、上記記載事項キによれば、「ポリビニルアルコール」を「イオン交換水」に溶解した「混合溶液」を用いて、「ポリビニルアルコール被覆炭素粒子」を得た後に、「空気中、200℃で5時間加熱処理」を行い、次いで「窒素流通下、20℃/時間の昇温速度で900℃まで昇温し、1時間保持」する熱処理を行うものである。これに対して、本件特許の明細書の実施例は、「コールタールピッチ(軟化点98℃、炭化率50%)」を用いて「炭素粒子」を被覆した「ピッチ炭素複合体」を得た後に、「窒素流通下、20℃/時間の昇温速度で900℃まで昇温し、1時間保持」する熱処理を行うものである。
そうしてみると、両者の炭素粒子を被覆する炭素前駆体は異なっているし、また、炭素粒子を炭素前駆体で被覆した後の熱処理条件も異なっていることから、甲第1号証の実施例の記載から、甲第1号証の「リチウムイオン二次電池用負極材」が「粉末X線回折測定(XRD)の結果をリートベルト解析して求められる等方性温度因子(B値)の値が2.94Å^(2)以上4.61Å^(2)以下」であるとの発明特定事項を満たしているとまではいえない。
また、甲第1号証の上記記載事項オに、炭素粒子を被覆する炭素前駆体として「コールタールピッチ」を用いることが記載されていることから、甲第1号証の実施例で使用されている前駆体である「ポリビニルアルコール」を「コールタールピッチ」に代えることを当業者が容易になし得たとしても、甲第1号証の実施例は、「空気中、200℃で5時間加熱処理」を行い、次いで「窒素流通下、20℃/時間の昇温速度で900℃まで昇温し、1時間保持」する熱処理を行うものであり、本件特許の明細書の実施例の「窒素流通下、20℃/時間の昇温速度で900℃まで昇温し、1時間保持」する熱処理と、熱処理条件が異なっていることから、甲第1号証の炭素粒子を「コールタール」で被覆して熱処理した「リチウムイオン二次電池用負極材」が、「粉末X線回折測定(XRD)の結果をリートベルト解析して求められる等方性温度因子(B値)の値が2.94Å^(2)以上4.61Å^(2)以下」であるとの発明特定事項を直ちに満たしているとはいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は妥当なものとはいえない。

また、特許異議申立人は、「273Kでの二酸化炭素吸着より求められる比表面積」に関して、本件特許発明1の該比表面積は、例えば、特開2005-141916号公報、特開2008-300274号公報、特開2008-305661号公報に記載されているように、当業者にとって通常の範囲であるから、本件特許発明1と甲第1号証の「273Kでの二酸化炭素吸着より求められる比表面積」に、実質的な相違点でない旨を主張している。
しかしながら、これら公開公報には、「273Kでの二酸化炭素吸着より求められる比表面積」は記載されていないため、「273Kでの二酸化炭素吸着より求められる比表面積が1.5m^(2)/g以上3.5m^(2)/g以下である」ことが当業者にとって通常の範囲であるとはいえず、特許異議申立人の上記主張も妥当なものとはいえない。

以上のとおり、特許異議申立人の主張は妥当なものでなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.請求項2ないし4に係る発明について
本件特許の請求項2ないし4に係る発明は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記甲第1号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)「特許法36条6項1号要件不備」の検討
特許異議申立人は、本件特許の明細書の実施例1?4のいずれも、炭素粒子としてカ焼コークスを使用し、被覆炭素材料としてコールタールピッチを使用しており、結晶の特性に大きな影響を与えると思われる焼成条件や原料の種類等については、全く変化させていないため、これだけの実施例によって、本件特許の請求項1?4に係る発明の広範な規定が支持されているとはいえず、本件特許の請求項1?4に係る発明は、詳細な説明によってサポートされておらず、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない旨を主張している。
そこで、上記主張について検討する。
本件特許の請求項1に係る発明は、「従来のリチウムイオン二次電池と比較して、不可逆容量が小さく、入出力特性及び寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池」を提供するとの課題(段落0008)に対して、「炭素粒子の表面に炭素層で被覆した炭素材料からなるリチウムイオン二次電池用負極材」の「等方性温度因子」、「炭素002面の面間隔d002」及び「比表面積」の物性を特定したものである。
そして、本件特許の明細書の実施例1?4には、本件特許の請求項1に記載された物性を満足する「炭素粒子の表面に炭素層で被覆した炭素材料からなるリチウムイオン二次電池用負極材」が記載されており、上記課題を解決できることも記載されている。
また、化学物質は、特別な理由がない限り、その物性が同じであれば、同様の性質を示すものであるから、本件特許においても、本件特許の明細書の実施例1?4に記載された「炭素粒子の表面に炭素層で被覆した炭素材料からなるリチウムイオン二次電池用負極材」と同じ物性であれば、製造条件や原料が異なっていても、同実施例1?4と同様な結果が得られることが推認できる。
しかも、特許異議申立人は、「炭素粒子の表面に炭素層で被覆した炭素材料からなるリチウムイオン二次電池用負極材」の物性が本件特許の請求項1に記載された範囲であっても、焼成条件や原料の種類等の製造条件によっては上記課題を解決できないことを、合理的に説明できていない。
したがって、単に、実施例に記載された焼成条件と異なる条件や異なる原料を用いた実施例が無いことのみで、直ちにサポートされていないとまでいえないから、特許異議申立人の主張は妥当といえず、本件特許の請求項1及び請求項1に従属する請求項2?4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないとはいえない。

(3)「特許法36条6項2号要件不備、同29条2項違反」の検討
特許異議申立人は、甲第2号証の上記記載事項ア及びイに基づき、リートベルト解析が、仮定した構造モデルに対する構造精密化であり、「仮定条件」によって如何様にも答えが変わるため、「粉末X線回折測定(XRD)の結果をリートベルト解析して求められる等方性温度因子(B値)の値が2.94Å^(2)以上4.61Å^(2)以下」との発明特定事項によって、LIB用負極材の特性を規定することは、本件特許の請求項1?4に係る発明を極めて曖昧なものにしており、本件特許の請求項1?4に係る発明は特許法第36条第6項第2号明確性要件を満たしていない旨を主張している。さらに、特許異議申立人は、不明確な上記発明特定事項で規定された本件特許の請求項1?4に係る発明は、甲第1号証を含む先行文献との対比を困難なものにしており、この点においても、特許法第29条第2項の規定に違反している旨を主張している。
そこで、上記主張について検討する。
甲第2号証の上記記載事項ア及びイによれば、リートベルト解析の解を求めるためには、「仮定条件」として、構造モデル、フィッティングする関数、及び初期値の特定が必要といえる。
これに対して、本件特許の明細書には、リートベルト解析に関して、次のことが記載されている。
「(3)解析
解析ソフト:Rietan-2000
プロファイル関数:Thompson,Cox,Hastingの擬Voigt関数
Howardの方法で非対称化
結晶構造:六方晶グラファイト 空間群P6_(3)/mmc(No.194)
(4)解析初期値
a)ゼロ点シフト(Z),試料変位パラメータ(Ds),試料透過パラメータ(Ts)
高純度シリコン(純度:99.99%)のXRD測定、及びリートベルト

解析を行い、各補正パラメータを算出した。
b)バックグラウンドパラメータ(以下の10個の数値を用いた)
149.473, -158.835, 48.9286, 48.3934,-84.7554, 84.1913, 40.7335, -134.03, 103.333, -2.27067
c)格子定数
結晶構造を六方晶グラファイト 空間群P6_(3)/mmc(No.194)とし下記の値を使用した。
a:2.2464Å,b:2.2464Å,c:6.96Å,,α:90°,β:90°,γ:120°
d)尺度因子の初期値:s:0.0044825
e)非対称パラメータ(As):0.809113
f)配向性パラメータ(r):0.5
g)原子位置C1の占有率
g:1.0,x:0,y:0,z:0,B:0.8Å^(2)
h)原子位置C2の占有率
g:1.0,x:1/3,y:1/3,z:1/4,B:0.8Å^(2)
以上の条件により、フィッティングの正確さを表すRwp値,S値が各々Rwp:20%以下,S値:4以下となるまで、各パラメータの最適化設定を行いフィッティングを行った。フィッティング完了時のB値を測定値として用いた。」(段落0047?0048)
したがって、本件特許の請求項1に記載された「粉末X線回折測定(XRD)の結果をリートベルト解析して求められる等方性温度因子(B値)の値が2.94Å^(2)以上4.61Å^(2)以下」との発明特定事項のリートベルト解析のためのプロファイル関数、結晶構造モデル及び解析初期値は、本件特許の明細書において特定されているといえる。
そうしてみると、特許異議申立人の主張する「仮定条件」は本件特許の明細書において明確に特定されているから、本件特許の請求項1に記載された「粉末X線回折測定(XRD)の結果をリートベルト解析して求められる等方性温度因子(B値)の値が2.94Å^(2)以上4.61Å^(2)以下」との発明特定事項は明確であるといえる。
したがって、特許異議申立人の主張は妥当といえず、本件特許の請求項1及び請求項1に従属する請求項2?4に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の要件を満足している。
また、本件特許の請求項1?4に係る発明は明確であるから、本件特許が不明確であることを根拠とした、特許法第29条第2項の規定に違反しているとの特許異議申立人の主張が妥当であるとは認められない。

6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2015-12-25 
出願番号 特願2010-40230(P2010-40230)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (H01M)
P 1 651・ 121- Y (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 宮澤 尚之
小川 進
登録日 2015-03-13 
登録番号 特許第5707707号(P5707707)
権利者 日立化成株式会社
発明の名称 リチウムイオン二次電池用負極材、該負極材を用いたリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池  
代理人 三好 秀和  

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