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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1311851
異議申立番号 異議2015-700128  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-29 
確定日 2016-02-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第5709232号「フッ素置換されたオレフィンを含む発泡剤及び組成物、並びに発泡方法」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5709232号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 1 主な手続の経緯等

特許第5709232号(請求項の数は12。以下「本件特許」という。)は,平成18年6月26日(パリ条約による優先権主張 2005年6月24日 2006年3月21日 いずれもアメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特許出願である特願2008-518515号の一部を平成26年2月21日に新たな特許出願としたものであって,平成27年3月13日にその特許権が設定登録されたものである。

特許異議申立人アーケマ・インコーポレイテッド(以下,単に「異議申立人」という。)は,平成27年10月29日,本件特許の請求項1?12に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。

2 本件発明

本件特許の請求項1?12に係る発明は,その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という場合がある。なお,請求項2?12の記載は,これを省略する。)。

「【請求項1】
複数の高分子気泡(polymeric cell)と該気泡の少なくとも1個の中に含まれる発泡剤組成物を含む,閉じた気泡発泡体の発泡断熱材であって,
該発泡剤組成物が,少なくとも1つの,HFCO-1233zd(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)を含む発泡剤を含み,かつ
HFCO-1233zdが該発泡剤組成物中,5重量%以上の量で存在する,
前記発泡断熱材。」

3 申立理由の概要

異議申立人の主張は,概略,次のとおりである。

(1) 本件発明1?12は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である。すなわち,本件発明1?12は,後記する甲1に記載された発明を主たる引用発明とし,後記する甲2を参照したとき,この主たる引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえるし(以下「取消理由1」という。),後記する甲3に記載された発明を主たる引用発明とし,甲2を参照したとき,この主たる引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる(以下「取消理由2」という。)。

(2) そして,上記取消理由1?2にはいずれも理由があるから,本件発明1?12についての特許は,特許法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。

(3) また,証拠方法として書証を申出,以下の文書(甲1?3)を提出する。

・甲1: 特開平9-136936号公報
・甲2: 特表2001-500882号公報
・甲3: 米国特許出願公開第2004/0119047号

4 当合議体の判断

当合議体は,以下述べるように,取消理由1?2にはいずれも理由はないと解する。

(1) 取消理由1について

まず,本件発明1に対する取消理由1の存否について検討し,次いで本件発明2?12について検討する。

ア 甲1に記載された発明

本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲1には,特にその特許請求の範囲の請求項1及び2,明細書段落【0001】【0002】【0010】【0023】?【0025】【0029】に係る記載からみて,次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「有機ポリイソシアナート,ポリオール,発泡剤,触媒,整泡剤,およびその他の助剤から製造される硬質ポリウレタンフォームにおいて,発泡剤がハイドロフルオロカーボンであって,1,1,1,2-テトラフルオロエタン,1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン,1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン,1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン,1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン又はこれらの2種以上の混合物であり,その量がポリオール100重量部に対して5?50重量部であり,ポリオールが,平均官能基数2.0?4.0,水酸基価300?600mgKOH/gのエステルポリオールを20重量%以上含むポリオールである,断熱性能に優れ,かつ寸法安定性の良好な硬質ポリウレタンフォーム。」

イ 一致点及び相違点

本件発明1と甲1発明とを対比すると,甲1発明の「発泡剤」,「断熱性能に優れる硬質ポリウレタンフォーム」は,本件発明1の「発泡剤組成物」,「発泡断熱材」に相当する。そして,甲1発明の「断熱性能に優れる硬質ポリウレタンフォーム」とは,ウレタンフォームに関する当業者の技術常識からみて,独立気泡構造を有するものであるといえ,これは本件発明1の「閉じた気泡発泡体の発泡断熱材」に相当するといえる。
そして,独立気泡構造を有するポリウレタンフォームは,発泡剤の気泡の周りをウレタン樹脂が取り囲んでいる構造といえるから,複数の高分子気泡(polymeric cell)と該気泡の少なくとも1個の中に含まれる発泡剤組成物を含むものといえる。

そうすると,本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。

・ 一致点

複数の高分子気泡(polymeric cell)と該気泡の少なくとも1個の中に含まれる発泡剤組成物を含む,閉じた気泡発泡体の発泡断熱材。

・ 相違点1

発泡剤組成物について,本件発明1は「少なくとも1つの,HFCO-1233zd(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)を含む発泡剤を含み,かつHFCO-1233zdが該発泡剤組成物中,5重量%以上の量で存在する」と特定するのに対し,甲1発明は「ハイドロフルオロカーボンであって,1,1,1,2-テトラフルオロエタン,1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン,1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン,1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン,1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン又はこれらの2種以上の混合物であり,その量がポリオール100重量部に対して5?50重量部」との特定である点。

ウ 相違点1についての検討

(ア) 甲1の記載によれば,甲1発明は,従来発泡剤として利用されていたクロロフルオロカーボン類は,大気中であまりにも安定に存在するため,更に上空のオゾン層に達し,そこで紫外線等の作用で分解され,発生した塩素ラジカル等によりオゾン層が破壊されると考えられ,今まで硬質ポリウレタンフォームの発泡剤として用いられてきたCFC-11を利用せずに断熱性能,寸法安定性の良好な硬質発泡ウレタンフォームを得ることを解決課題とするものであり(甲1の【0003】?【0007】【0029】など),前記課題を解決するために,特定のポリオール(平均官能基数2.0?4.0,水酸基価300?600mgKOH/gのエステルポリオールを20重量%以上含むポリオール)を利用すると共に,特定の発泡剤である「ハイドロフルオロカーボンであって,1,1,1,2-テトラフルオロエタン,1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン,1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン,1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン,1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン又はこれらの2種以上の混合物」を特定量(その量がポリオール100重量部に対して5?50重量部)利用するものである。

(イ) そうすると,甲1発明は,特定のポリオールと特定のハイドロフルオロカーボンとの利用を前提としているものといえるから,当該特定されているハイドロフルオロカーボンをあえて他の発泡剤に変更する動機は存在しない。

(ウ) また,甲2には「1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFC-1233)は,冷媒,発泡剤として,並びにHFC-245fa及び他のフッ素化物質の製造における中間体として有用であるもう1つのハイドロカーボン代替物である」(明細書4頁21?24行)との記載があるものの,甲1発明は,従来発泡剤として利用されていたクロロフルオロカーボン類は,大気中であまりにも安定に存在するため,更に上空のオゾン層に達し,そこで紫外線等の作用で分解され,発生した塩素ラジカル等によりオゾン層が破壊されるとの前提に立つものであるから,甲1発明の特定のハイドロフルオロカーボンを甲2に記載の塩素を含む1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFC-1233)に変更しようとすることには阻害要因があるといえる。

(エ) また仮に,甲1発明に従たる甲2記載の技術事項を適用する動機があるといえたとしても,本件発明1は,相違点1に係る構成をとることで,「低オゾン層破壊係数及び低地球温暖化係数に加えて,断熱効率にすぐれた特徴,性質,及び/又は特性を提供する・・ある非常に好ましい態様において,本発明は,発泡体製品に形成される発泡体のような熱硬化性発泡体を提供し,それは,同じ発泡剤(又は,通常用いられる発泡剤であるHFC-245fa)を同じ量で用いるが,本発明に記載の式Iの化合物を有さずに作製された発泡体に比べて改善された熱伝導性を示す」(段落【0063】)といった有利な効果を奏するものであって,当該相違点に係る有利な効果については,甲1,甲2には全く記載されておらず,当業者といえども予期し得ないものと認められる。

エ 本件発明1についての小括

そうすると,本件発明1は,甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明2?12について

請求項2?12の記載は,請求項1を直接又は間接的に引用するものである。そして,請求項1に係る本件発明1が甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上述のとおりであるから,請求項2?12に係る本件発明2?12についても同様に,甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ まとめ

以上のとおりであるから,異議申立人が主張する取消理由1には理由がない。

(2) 取消理由2について

まず,本件発明1に対する取消理由2の存否について検討し,次いで本件発明2?12について検討する。

ア 甲3に記載された発明

本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3には,特に2頁右欄[0021]?[0025]及び3頁右欄[0038][0039」の記載から,次のとおりの発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「発泡剤として,以下式IIに記載の化合物を含む

ここで,各Rは独立してCl,F,Br,I又はHであり,R’は(CR_(2))_(n)Yであり,YはCRF_(2)であり,及びnは0又は1である。
閉じたセル状のフォームであって,上記式IIの化合物は発泡剤組成物として少なくとも5重量%の量で存在するセル状のフォーム。」

イ 一致点及び相違点

本件発明1と甲3発明とを対比すると,甲3発明の「発泡剤」は,本件発明1の「発泡剤組成物」に相当する。
甲3発明の「閉じたセル状のフォーム」は,当業者の技術常識からみて,独立気泡構造の発泡体であると認められるから,本件発明1の「閉じた気泡発泡体の発泡断熱材」に相当し,また,上記4(1)イで述べたとおり,複数の高分子気泡(polymeric cell)と該気泡の少なくとも1個の中に含まれる発泡剤組成物を含むものといえる。

そうすると,本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。

・ 一致点

複数の高分子気泡(polymeric cell)と該気泡の少なくとも1個の中に含まれる特定の発泡剤組成物を含み,当該特定の発泡剤組成物が発泡剤組成物中,5重量%以上の量で存在する,閉じた気泡発泡体の発泡断熱材。

・ 相違点2

発泡剤組成物について,本件発明1は「少なくとも1つの,HFCO-1233zd(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)を含む発泡剤」と特定するのに対し,甲3発明は「以下式IIに記載の化合物を含む

ここで,各Rは独立してCl,F,Br,I又はHであり,R’は(CR_(2))_(n)Yであり,YはCRF_(2)であり,及びnは0又は1である」と特定する点。

ウ 相違点2についての検討

(ア)甲3の記載によれば,甲3は,冷却システムを含む多くの用途に有用な組成物に関するものであり,塩素を含むフルオロカーボン類のオゾン層破壊の問題,その代用品には優れた熱移動性,化学的安定性,低毒性または無毒性,不燃性,潤滑剤相溶性が要求されていること(段落[0001],[0005],[0006])を踏まえ,これらの要求の1つ以上を満足する多数の用途において有用である組成物を得ることを課題とし,その具体的な用途として,熱移動組成物,消化/鎮火組成物,発泡剤,溶剤組成物,相溶化剤が例示されていて(段落[0015]),これら多数の用途の内の一つとして,当該課題を解決する組成物を発泡剤として利用したフォームとして,甲3発明が記載されている。
そして,甲3発明の「式IIに記載の化合物」には各基の組合せにより多数の化合物が包含されており,たしかに,式IIにおける3つあるRのうち1位の炭素に結合した1つがClで残り2つがHであり,且つ,n=0であることによりR’がYとなる場合であって,当該Y中のCRF_(2)のRがFである場合には,式IIはHFCO-1233zdとなるが,これは式IIにおける各基の選択肢の組合せの場合において,ただ一つの特定の基を選択して組み合わせた場合にすぎないものである。そして,甲3には,式IIに記載の化合物の中で好ましいものとして,YがCF_(3)であり,nが0であり,主端の不飽和炭素上の少なくとも1つのRがHであり,残りのRの少なくとも1つがFであるものとされており,当該好ましい化合物に属するHFO-1234,HFO-1225についての具体的な記載はあるものの,当該好ましい化合物に属さないHFCO-1233zdについての具体的な開示は一切なされていない。

(イ) 甲2には上記4(1)ウ(ウ)の記載がある。

(ウ) 甲3発明の多数の選択肢を有する式IIの化合物は,そのいずれの選択肢を選んでも,塩素を含むフルオロカーボン類の代用品として優れたものとして記載されており,甲2の記載からHFCO-1233zdが,塩素を含むフルオロカーボン(CFC)の代替えとして有用と理解できたとしても,甲2において他の代替えのフルオロカーボン類等とHFCO-1233zdとの有用性の比較がなされているものではないから,当該甲2の記載が,甲3発明においてすでに代替えとして優れているとされる式(II)の化合物に含まれる多数の化合物の中から,あえて好ましいとされている化合物に属さないものの中で,特にHFCO-1233zdを選択する動機とはならない。
また仮に,甲3発明に従たる甲2記載の技術事項を適用する動機があるといえたとしても,本件発明1は,相違点2に係る構成をとることで上記4(1)ウ(エ)でのべたとおりの有利な効果を奏するものであって,当該相違点に係る有利な効果については,甲3,甲2には全く記載されておらず,当業者といえども予期し得ないものと認められる。

エ 本件発明1についての小括

そうすると,本件発明1は,甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明2?12について

請求項1に係る本件発明1が甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上述のとおりであるから,請求項2?12に係る本件発明2?12についても同様に,甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ まとめ

以上のとおりであるから,異議申立人が主張する取消理由2には理由がない。

5 むすび

したがって,異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠によっては,特許異議の申立てに係る特許を取り消すことはできない。また,他に当該特許が特許法113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。

よって,結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2016-02-10 
出願番号 特願2014-31524(P2014-31524)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 村松 宏紀  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 大島 祥吾
田口 昌浩
登録日 2015-03-13 
登録番号 特許第5709232号(P5709232)
権利者 ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
発明の名称 フッ素置換されたオレフィンを含む発泡剤及び組成物、並びに発泡方法  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 アクシス国際特許業務法人  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 新井 規之  
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