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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04B |
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管理番号 | 1311858 |
異議申立番号 | 異議2015-700007 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-07-29 |
確定日 | 2016-02-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5723235号「スラブ構築方法およびデッキプレート構造物」の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5723235号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5723235号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成23年6月27日に特許出願され、平成27年4月3日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人株式会社富士昭技研により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 特許第5723235号の請求項1ないし11に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3.申立理由の概要 特許異議申立人は、主たる証拠として特開平7-62875号公報(以下「刊行物1」という。)、及び従たる証拠として特開平6-146575号公報(周知例。以下「刊行物2」という。)、特開平8-151718号公報(以下「刊行物3」という。)、特開2009-91874号公報(以下「刊行物4」という。)、特開平8-28068号公報(以下「刊行物5」という。)、特開平8-144413号公報 (以下「刊行物6」という。)、実願平2-37353号(実開平3-128102号)のマイクロフィルム(以下「刊行物7」という。)を提出し、請求項1ないし11に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、請求項1ないし11に係る特許を取り消されるべきものである旨主張している。 4.刊行物の記載 (1)刊行物1には、「上下方向に延びる複数本の柱に大梁鉄骨4を架設し、 施工すべき建築物に近接した地盤上に組み上げた架台上で、H形鋼からなる小梁鉄骨2の上に下面に型枠が固定された鉄筋ユニット3(「ファブデッキ」(伊藤忠商事販売))を敷き込んで、小梁鉄骨2と鉄筋ユニット3とを互いに溶接止めし、鉄筋ユニット3同士の鉄筋をジョイントして、床版ユニット10を施工し(第1の工程)、 床版ユニット10を鉄骨大梁4を組んでなる建築物の床の位置に吊り込み(第2の工程)、 小梁鉄骨2と大梁鉄骨1をハイテンションボルトで締結し、床版ユニット10と大梁鉄骨1とを溶接し、大梁鉄骨1の周囲に配設される梁鉄筋と床版ユニット10の鉄筋とをジョイントし(第3の工程)、 後の工程で、現場打ちコンクリートを打設することにより建築物の床が完成される、 鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建築物の床の施工方法。」の発明が記載されている。 (2)刊行物2には、「ファブデッキ」が「トラス構造をなすように配筋された床用補強鉄筋8の下側に捨て型枠として鋼板9を取り付けて構成されたものである」ことが記載されている。 (3)刊行物3には、「1本の上部鉄筋9と2本の下部鉄筋10、10とを並列して正面三角状に配置し、 上部鉄筋9は同じ方向に配列した波状補強鉄筋11上端部12に溶着され、下部鉄筋10は波状補強鉄筋11の下部13に溶着され、また、前記における波状補強鉄筋11は下端部が外方に向けて水平方向に屈曲して固定部14を形成してあり、同様に、前記上部鉄筋9と他方の下部鉄筋10の内側面10aとに、波状補強鉄筋11を溶着して三角トラス15と、 上方に突出するように屈曲して折り返して2つの突条2を形成したベース板7とからなり、 三角トラス15はベース板7上面より所定距離Hを保って保持され、突条2と固着部14とを挟んで横方向に、スポット溶接溶端子16を配置して、スポット溶接して固着する、デッキプレート17。」の発明が記載されている。 (4)刊行物4には、「平面生産エリアE1の搬送台車4上で小梁/デッキユニット10aを生産し、 生産された小梁/デッキユニット10aを搬送台車4ごとタワー式ストッカー2の最下部まで移動させ、 昇降装置14を用いて、小梁/デッキユニット10aを搬送台車4とともに配置すべき位置まで上昇させ、載せるべき荷重受けアーム12の上まで上げ越し、その後、小梁/デッキユニット10aを下降させて、荷重受けアーム12上に載置し、 一連の作業を繰り返し行うことによって、小梁/デッキプレート10a間の作業層を含んで小梁/デッキユニット10aが多層化され、小梁/デッキユニット10aを足場として先組み作業が開始され、 先組み作業が終わったフロア先組みユニット10は、立て方作業、すなわち、最上層にある仮設開閉屋根15を開け、吊り治具5を用いてフロア先組みユニットは揚重、搬出される、 現場において少ない所要面積で高密度のユニット部材を生産性高く先組みすることができるユニット部材の先組み方法。」の発明が記載されている。 (5)刊行物5には、「スラブユニット32を揚重するにあたって、大梁14または小梁16にシャックル3を設け、このシャックル30にクレーン26の吊ロープを玉掛けする」ことが記載されている。 (6)刊行物6には、「スラブ用配筋20の各上弦材15の間に仮設された連結用保持材29を着脱自在に連結する」ことが記載されている。 (7)刊行物7には、「H形鋼よりなる大梁1のウェブ部1bの両面に係合させた二つのスプリットティ2,3に設けられた上下方向に並ぶ複数の貫通孔と、H形鋼よりなる小梁4,5のウェブ部4b,5bに設けた上下方向に並ぶ複数の貫通孔とを、効力ボルト締めする」ことが記載されている。 上記各刊行物に記載された事項は、各刊行物の詳細な説明及び図面から当審で認定した。 なお、特許異議申立人は、同申立人が提出した刊行物1の記載及び刊行物2に記載された周知技術からみて、「C’ 所定面積を有して第1方向へ長い鋼板と前記鋼板の上面に設置されて前記第1方向へ延びる床用補強鉄筋とから構成された複数の鉄筋ユニット3を前記第1方向と交差する第2方向へ連結しつつ、前記第2方向へ延びる小梁鉄骨2を前記鋼板の下面に固定して所定面積の床版ユニット10を組み立てること。」は、刊行物1に記載されていると主張している。 しかしながら、刊行物1に記載された鋼板は、その【図1】をみたところ長方形ではあるものの、その技術思想として、ある方向に長いことを示しているとは認められないから、第1方向及び第2方向が、鋼板のどの方向を示しているのか不明である。さらに、床用補強鉄筋が延びる方向も、甲第1号証および甲第2号証の記載からみて不明である。 したがって、刊行物2の記載された周知技術を参酌しても、上記C’の構成が、刊行物1に記載されているとは認められない。 5.対比・判断 ア 請求項1に係る発明について 請求項1に係る発明と刊行物1に記載の発明とを対比すると、刊行物2に記載された周知技術を参酌したとしても、当該刊行物1には、「所定面積を有して第1方向へ長い金属板と前記金属板の上面に設置されて前記第1方向へ延びる鉄筋トラスとからなる複数のデッキプレートを前記第1方向と交差する第2方向へ連結しつつ、前記第2方向へ延びる取付梁を前記金属板の下面に固定して所定面積のデッキプレート構造物を組み立てるデッキプレート構造物組立工程」は記載されていない。また、この点は、刊行物3?7にも記載されていない。したがって、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載の発明から当業者が容易になし得たものではない。 イ 請求項2ないし8に係る発明について 特許異議申立人は、請求項2ないし8に係る発明に対して、さらに刊行物3ないし7を提出している。しかしながら、請求項2ないし8に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記刊行物1、3ないし7に記載の発明から当業者が容易になし得たものではない。 ウ 請求項9に係る発明について 特許異議申立人は、請求項9に係る発明に対して、刊行物1、5、7を提出している。 そこで、まず請求項9に係る発明と刊行物1に記載の発明とを対比すると、周知例として提出された刊行物2の記載を参酌しても、当該刊行物1には、「所定面積を有する金属板と前記金属板の上面に設置されて第1方向へ延びる鉄筋トラスとから形成されて前記第1方向と交差する第2方向へ連結された複数のデッキプレートと、前記第1方向へ所定寸法離間しつつ前記第2方向へ延びていて前記金属板の下面に溶接されたH形鋼」が記載されていない。また、この点は、刊行物3?7にも記載されていない。したがって、本件請求項9に係る発明は、上記刊行物1、5、7に記載の発明から当業者が容易になし得たものではない。 エ 請求項10及び11に係る発明について 特許異議申立人は、請求項10及び11に係る発明に対して、さらに刊行物3を提出している。しかしながら、請求項10及び11に係る発明は、請求項9に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項9に係る発明についての判断と同様の理由により、上記刊行物1、3、5、7に記載の発明から当業者が容易になし得たものではない。 以上のとおり、請求項1ないし11に係る発明は、刊行物1、3?7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6.むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-02-10 |
出願番号 | 特願2011-141560(P2011-141560) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E04B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 新井 夕起子 |
特許庁審判長 |
赤木 啓二 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 小野 忠悦 |
登録日 | 2015-04-03 |
登録番号 | 特許第5723235号(P5723235) |
権利者 | 矢口 滋 |
発明の名称 | スラブ構築方法およびデッキプレート構造物 |
代理人 | 小林 義孝 |
代理人 | 鈴木 由充 |