• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1311873
異議申立番号 異議2015-700143  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-04 
確定日 2016-03-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第5717969号「スロットマシン」の請求項1、3、及び5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5717969号の請求項1、3、及び5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5717969号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成22年1月26日に特許出願され、平成27年3月27日に特許の設定登録がされ、その後、同年11月4日に、その特許に対し、特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社により、本件特許の請求項1、3、及び5に係る発明の特許について特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件特許の請求項1、3、及び5に係る発明
本件特許の請求項1、3、及び5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1、3、及び5に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A-1ないしH-2は、異議申立書における本件特許の請求項1の分説にしたがったものである。)。

「【請求項1】
A-1 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
A-2 遊技用価値が用いられて賭数を設定したときに前記可変表示部の変動表示が開始可能となり、前記可変表示部の変動表示を開始した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
B 表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞について、入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
C 前記事前決定手段の決定結果に応じて表示結果を導出する導出制御手段と、
D 前記事前決定手段により前記特別入賞の発生を許容する旨が決定されたゲームにおいて当該特別入賞が発生しなかったときに、当該特別入賞の発生を許容する旨の決定結果を当該特別入賞が発生するまで持ち越す持越手段と、
E 前記特別入賞の発生が許容されていることを告知する告知手段と、
F 前記告知手段による告知後、前記特別入賞の発生前に所定の特典付与条件が成立したときに、前記遊技用価値と異なりかつ遊技状態に影響を与えない所定の特典を付与する特典付与手段とを備え、
G 前記告知がされてから前記特典付与条件が成立するまでの特典条件成立前期間において、遊技者が獲得した遊技用価値の量から遊技者が賭数の設定に用いた遊技用価値の量を差し引いた遊技用価値の増減量が、前記特別入賞の発生が許容されたときの遊技状態に応じて異なり、
H 前記告知手段は、
H-1 複数ゲームのうちの最終ゲームにおいて前記特別入賞の発生が許容されていることを告知するとともに当該最終ゲーム前のゲームでは前記特別入賞の発生が許容されている可能性を示唆する示唆演出を実行し、
H-2 前記示唆演出が実行されているゲームで所定操作が検出されたときには当該ゲームにおいて前記特別入賞の発生が許容されていることを告知することを特徴とする、スロットマシン。

【請求項3】
前記事前決定手段は、前記遊技用価値が用いられることなく次のゲームを開始可能な再ゲーム入賞の発生を許容するか否かをさらに決定し、
前記事前決定手段による再ゲーム入賞許容率が異なる複数種類の遊技状態に制御可能であって、前記特別入賞の発生が許容されたときの遊技状態が前記再ゲーム入賞許容率が異なる複数種類の遊技状態のいずれであっても、当該遊技状態を前記特別入賞の発生が許容されたことに基づいて他の遊技状態に移行させない遊技状態制御手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のスロットマシン。

【請求項5】
前記特典付与手段は、前記特典付与条件が成立してから前記特別入賞が発生した後に前記特典を付与することを特徴とする、請求項1?請求項4のいずれかに記載のスロットマシン。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2号証ないし甲第4号証を提出し、本件特許の請求項1、3、及び5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項ないし甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、本件請求項1、3、及び5に係る発明の特許は取り消すべきものである旨主張している。

<証拠方法>
甲第1号証:特開2007-97608号公報
甲第2号証:特開2006-149652号公報
甲第3号証:特開2009-268520号公報
甲第4号証:平成13年1月1日発行、辰巳出版株式会社、パチスロ必勝本、2001年1月号、p.22?23、写し

なお、甲第4号証には、頁番号が記載されていないが、特許異議申立書第60頁には、「提出した証拠には頁番号が付されていないが、該当頁の直前の頁に付されている頁番号が「21」であり、該当頁の直後の頁の更に次の頁に付されている頁番号が「25」であることから、該当頁は22?23頁である。」と記載されていることから、甲第4号証の頁番号は、「p.22?23」であると認定した。

第4 甲第1号証?甲第4号証の記載事項
1 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

(1)「【0008】
従来のスロットマシンでは、上記ボーナスフラグが記憶手段に記憶されるに伴って遊技状態がボーナス役の入賞が可能な状態となった場合、図柄を停止表示する際にボーナス役の入賞が成立し易いように引き込み制御が行われる。そのため、目押しの上手な遊技者にあっては、上記のボーナス役入賞可能遊技状態となってから(換言すると、ボーナスフラグが記憶されてから)相対的に短い期間でボーナス役の入賞を成立させることができるが、目押しの苦手な遊技者にあっては、ボーナス役の入賞を成立させるためには上記のボーナス役入賞可能遊技状態となってから相対的に長い期間を要する。その結果、ボーナス役入賞可能遊技状態となってからボーナス役入賞成立までの遊技媒体の消費量は、目押しの上手な遊技者に比べて目押しの苦手な遊技者の方が多くなり、両者間に不公平感が生じているのが実情である。」

(2)「【0028】
<実施の形態1>
[外観構成]
図1?図4を参照して、本実施の形態1に係るスロットマシン1は、前面が開放している箱形の筐体2と、この筐体2に対して開閉自在に取り付けられている前扉3とを備えている。
【0029】
前扉3の中央部正面には、正面パネル4が装着されている。この正面パネル4の主要部には、表示窓5が形成されている。この表示窓5は、主として、筐体2内の3つの回転リール6L,6C,6Rを観察するためのものであって、各リール6L,6C,6Rの外周面には、それぞれ、ボーナス役図柄及び小役図柄を含む、複数種類の役図柄が周方向に沿って描かれている。これらの図柄は、表示窓5を通して3つずつ観察される。表示窓5及び各リール6L,6C,6Rの両者は、正面パネル4上において遊技者に対面している。
【0030】
表示窓5の左側には、5つの賭けライン表示ランプ7A,7B,7C,7D,7Eが設けられている。これら5本の賭けライン表示ランプ7A?7Eは、1遊技における有効ラインを示すために点灯するランプである。他方、表示窓5の右側には、スタートランプ8、投入指示ランプ9、リプレイタイム(以下、「RT」という)告知ランプ10、アシストタイム(以下、「AT」という)告知ランプ11及びゲームオーバーランプ12が設けられている。スタートランプ8は、遊技が開始できる状態となった場合に点灯又は点滅するランプである。投入指示ランプ9は、メダルをスロットマシン1に投入できる状態である場合に点灯するランプである。RT告知ランプ10は、遊技状態がRTに移行した場合に点灯するランプである。AT告知ランプ11は、遊技状態がATに移行した場合に点灯するランプである。ゲームオーバーランプ12は、遊技が終了したときに点灯するランプである。これらランプ8?12は、正面パネル4の上方から下方に向かってこの順で配置されている。
【0031】
ここに、「RT」とは、役の成立に関する抽選においてリプレイ役が高確率で当選する遊技状態である。他方、「AT」とは、役の成立に関する抽選において当選した役の入賞の成立を支援するための参考情報が告知される遊技状態である。」

(3)「【0035】
前扉3の上部には、上パネル17が装着されている。この上パネル17の中央部には、液晶表示装置(以下、「LCD」という)18が設けられている。このLCD18は、遊技に関する種々の演出などを表示により行うための手段であって、上記の役成立抽選の結果としてボーナス役が当選した場合にはその旨を告知する演出情報などを表示する。なお、代替的に、LED表示装置やEL表示装置を採用して上記遊技演出情報を表示するようにしてもよい。LCD18を挟んだ左右両側には、スピーカー19A,19Bが配置されており、この左右一対のスピーカー19A,19Bは、上パネル18に嵌め込まれている。これらのスピーカー19A,19Bは、遊技の状況に応じて効果音等のサウンドを発するための手段である。他方、前扉3の下部には、下パネル20が装着されている。この下パネル20には、機種名及びイメージデザイン等が印刷されており、その下方には、メダル払出口21及びメダル受け皿22が設けられている。」

(4)「【0037】
マニュアル投入モードで遊技を行う際には、投入指示ランプ9が点灯している間に、メダルを投入口24に投入する必要がある。それゆえ、有効化される賭けラインは、メダルの投入枚数によって異なる。具体的には、メダルを1枚投入すると、表示窓5の中段において水平に延びる第1の賭けライン13Aが有効化され、この1ライン13Aが賭け対象となる。このとき、第1の賭けライン13Aの左端に配置されている賭けライン表示ランプ7Aが点灯する。メダルを2枚投入すると、第1の賭けライン13Aに加えて、表示窓5の上下段において水平に延びる第2の賭けライン13B及び第3の賭けライン13Cが有効化され、これら3ライン13A?13Cが賭け対象となる。このとき、賭けライン表示ランプAの点灯に加えて、第2の賭けライン13B及び第3の賭けライン13Cの左端に配置されている賭けライン表示ランプ7B,7Cが点灯する。メダルを3枚投入すると、第1の賭けライン13A、第2の賭けライン13B及び第3の賭けライン13Cに加えて、表示窓5の対角線上の第4の賭けライン13D及び第5賭けライン13Eが有効化され、これら5ライン13A?13Eに配置されている賭け対象となる。このとき、賭けライン表示ランプ7A?7Cの点灯に加えて、第4の賭けライン13D及び第5の賭けライン13Eの左端に配置されている賭けライン表示ランプ7D,7Eが点灯する。なお、本スロットマシン1においては、1遊技におけるメダルの賭け枚数は3枚が限度である。
【0038】
かかるマニュアル投入モードでは、有効化された賭けライン、すなわち有効ライン上で入賞を示す図柄の組み合わせが揃うことに起因して入賞が成立した場合には、その入賞役の種類に応じた数のメダルが払出口21から受け皿22に払い出される。」

(5)「【0041】
上記マニュアル投入モード或いはクレジットモードの手順に則して賭け対象となるメダルの枚数が設定されると、制御装置100(図7参照)は、この設定された賭け枚数分のメダルを取り込む。このメダルの取り込みにより、遊技を開始する条件が整う。このとき、スタートランプ8が点灯又は点滅する。このスタートランプ8の作動状態において、始動レバー26が操作されると、制御装置100は、全てのリール6L,6C,6Rを一斉に回転させる。
【0042】
各停止ボタン27L,27C,27Rを押圧操作すると、その操作に対応するリールの回転が停止する。全リール6L,6C,6Rの回転が停止したときに、有効ライン上に入賞役の1つが揃うと、制御装置100は、成立した入賞役の種類に従って、予め定められている枚数のメダルを上記メダルの入力モードに応じた態様で遊技者に払い出す。」

(6)「【0054】
本スロットマシン1では、役の成立に関する抽選においてボーナス役が内部的に成立すると、そのことを示すボーナスフラグがRAM1003に記憶され、このボーナスフラグの記憶状態(持ち越し状態)がボーナス役の入賞に至るまで継続される。それゆえ、持ち越しカウンター901は、ボーナスフラグが持ち越されたゲーム数をカウントするためのカウンターである。なお、このカウンターのカウント値は、以下においてはLCD18に表示されるようになっているが、LCD18に代えてLED表示器など他の表示器を用いて表示してもよい。
【0055】
遊技を開始するために、遊技者によって始動レバー26が操作され、その操作信号が入力されると、CPU1001は、リール6L,6C,6Rの回転を開始させるべく、モーター駆動制御回路1006を介してステッピングモーターSML,SMC,SMRに始動信号を出力する。その結果、表示窓5内においてリール6L,6C,6Rの図柄の変動表示が開始される。他方、リール6L,6C,6Rの回転を停止するために、遊技者によって停止ボタン27L,27C,27Rが押圧操作され、その操作信号が入力されると、CPU1001は、操作された停止ボタンに対応するリールの回転を停止させるべく、モーター駆動制御回路1006を介してステッピングモーターSML,SMC,SMRに停止信号を出力する。その結果、表示窓5内においてリール6L,6C,6Rの図柄の変動が順次停止表示される。」

(7)「【0060】
ここに、上記の特典演出画像及び特典演出音声は、共にスロットマシンの付加価値を高めるためのものであって、遊技に直接影響を与えないものである。詳細には、上記特典演出画像とは、通常演出画像に比べて希少価値のあるレア画像(プレミア画像)であって、出現頻度が極めて少なくその出現によって遊技者に入賞に関する期待感を高め且つ優越感を与える画像である。他方、上記特典演出音声とは、通常音声に比べて希少価値のあるレア音声(プレミア音声)であって、出現頻度が極めて少なくその出現によって遊技者に入賞に関する期待感を高め且つ優越感を与える音声であって、本スロットマシン1のイメージキャラクターなどの決まり文句やせりふなどを例示することができる。」

(8)「【0065】
LCD駆動制御回路1009は、CPU1001からの指示信号に基づいてLCD駆動信号を生成し、この生成したLCD駆動信号をLCD18に与える。その結果、LCD18は、その表示面上に種々の遊技演出情報を表示する。」

(9)「【0073】
始動レバー26が操作されると、CPU1001は、役の成立に関する抽選を行う(ステップS3)。この抽選は、マシン1内部で行われる。
【0074】
上記の役成立抽選を終了すると、CPU1001は、当選役はボーナス役か否かを判別する(ステップS4)。ボーナス役に当選しなかった場合には、CPU1001は、処理をステップS5に移す。他方、ボーナス役に当選した場合には、CPU1001は、そのことを示すボーナスフラグをRAM1002の所定のメモリー領域に書き込んで記憶させる(ステップS6)。
【0075】
ボーナスフラグの記憶が終了すると、CPU1001は、リール6L,6C,6Rの回転を開始させる(ステップS7)。その結果、表示窓5内においてリール6L,6C,6Rの図柄の変動表示が開始される。
【0076】
リール6L,6C,6Rの回転を開始させると、CPU1001は、全ての停止ボタン27L,27C,27Rが押圧操作されて目押しが完了し、且つ、全てのリール6L,6C,6Rの回転が停止するのを待つ(ステップS8及びステップS9)。各停止ボタン27L,27C,27Rの目押しが行われると、CPU1001は、その目押し順序に応じて各リール6L,6C,6Rの回転を順次停止させる。その結果、表示窓5内において回転リール6L,6C,6Rの図柄の変動が順次停止表示される。
【0077】
停止ボタン27L,27C,27Rの目押しが完了し、且つ、全リール6L,6C,6Rの回転が停止すると、CPU1001は、ボーナス役の入賞が成立したか否かを判別する(ステップS10)。有効ライン上にボーナス役の入賞図柄の組み合わせが揃い、ボーナスの入賞が成立した場合には、CPU1001は、ボーナスゲーム処理を行う(ステップS11)。このボーナスゲーム処理は、従来公知の処理内容と同様であるのでその説明を省略する。ボーナスゲーム処理の後、CPU1001は、上記RAM1002の所定のメモリー領域に記憶させたボーナスフラグを消去する(ステップS12)。そして、CPU1001は、処理を再びステップS1に戻してベットの完了を待つ。
【0078】
他方、ボーナス役の入賞が成立しなかった場合には、CPU1001は、上記ボーナスフラグを消去することなく、持ち越しカウンター901を作動させてそのカウント値を「1」増加させる(ステップS13)。このとき、持ち越しカウンター901のカウント値は、LCD18の表示面の適所に表示される。このボーナスフラグ持ち越しゲーム数カウント値のインクリメント処理の後、CPU1001は、会員カードRW902を作動させて当該カウント値に対応するポイントを会員カードCに記録する(ステップS14)。そして、CPU1001は、ボーナスフラグ持ち越しゲーム数カウント値(持ち越しカウンター901のカウント値)を判別する(ステップS15?ステップS17)。ボーナスフラグ持ち越しゲーム数カウント値が「3」である場合には(ステップS15においてYES)、CPU1001は、当該カウント値「3」をパラメーターとして上記ROM1003のテーブル格納領域TRに格納されているテーブルT1を参照し、この参照結果に基づいて、LCD18上に第1の特典演出画像F1を表示すると共にスピーカー19A,19Bから第1の特典演出音声S1を出力する(ステップS18及びステップS19)。このとき、LCD18上に表示された第1の特典演出画像F1の右下隅には、図12(A)に示すように、第1のWebサイトのサーバーにアクセスして当該第1の特典演出画像データを遊技者の所持する携帯電話機にダウンロード可能とする第1のQRコードC1が添付されている。その後、CPU1001は、処理をステップS24及びステップS25に移す。また、ボーナスフラグゲーム数カウント値が「6」である場合には(ステップS15においてNOでステップS16においてYES)、CPU1001は、当該カウント値「6」をパラメーターとして上記ROM1003に格納されているテーブルT1を参照し、この参照結果に基づいて、LCD18上に第2の特典演出画像F2を表示させると共にスピーカー19A,19Bから第2の特典演出音声S2を出力させる(ステップS20及びステップS21)。このとき、LCD18上に表示された第2の特典演出画像F2の右下隅には、図12(B)に示すように、第2のWebサイトのサーバーにアクセスして当該第2の特典演出画像データを遊技者の所持する携帯電話機にダウンロード可能とする第2のQRコードC2が添付されている。その後、CPU1001は、処理をステップS24及びステップS25に移す。さらに、ボーナスフラグゲーム数カウント値が「10」である場合には(ステップS15及びステップS16の両ステップにおいてNOでステップS17においてYES)、CPU1001は、当該カウント値「10」をパラメーターとして上記テーブルT1を参照し、この参照結果に基づいて、LCD18上に第3の特典演出画像F3を表示させると共にスピーカー19A,19Bから第3の特典演出音声S3を出力させる(ステップS22及びステップS23)。このとき、LCD18上に表示された第3の特典演出画像F3の右下隅には、図12(C)に示すように、第3のWebサイトのサーバーにアクセスして当該第3の特典演出画像データをダウンロード可能とする第3のQRコードC3が添付されている。その後、CPU1001は、処理をステップS24及びステップS25に移す。さらにまた、ボーナスフラグ持ち越しゲーム数カウント値が「3」、「6」及び「10」の何れにも該当しない場合には(ステップS15?ステップS17の何れのステップにおいてもNO)、CPU1001は、上記の特典演出画像Fの表示処理及び特典演出音声Sの出力処理を行わずに、処理を再びステップS1に戻してベットの完了を待つ。」

上記(1)ないし(9)の記載事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。
「周方向に沿って描かれている複数種類の役図柄(ボーナス役図柄、小役図柄を含む)を変動表示可能な回転リール6L、6C、6R及び表示窓5を備え、
3枚を限度とするメダルが賭け枚数として設定されると遊技を開始する条件が整い、始動レバー26が操作されると回転リール6L、6C、6Rが一斉に回転し、停止ボタン27L、27C、27Rが押圧操作されると、その操作に対応する回転リールの回転が停止し、有効ライン(有効化された掛けライン)上で入賞を示す図柄の組み合わせが揃うことに起因して入賞が成立するスロットマシン1において、
始動レバー26が操作されると、役の成立に関する抽選を行い、ボーナス役に当選した場合には、ボーナスフラグを記憶させ、ボーナスフラグの記憶が終了すると、回転リール6L,6C,6Rの回転を開始させ、全回転リール6L,6C,6Rの回転が停止すると、ボーナス役の入賞が成立したか否かを判別し、有効ライン上にボーナス役の入賞図柄の組み合わせが揃い、ボーナス役の入賞が成立した場合には、ボーナスゲーム処理を行うCPU1001と、
全ての停止ボタン27L,27C,27Rが押圧操作されて目押しが行われると、その目押し順序に応じて各回転リール6L,6C,6Rの回転を順次停止させ、表示窓5内において回転リール6L,6C,6Rの図柄の変動が順次停止表示されるCPU1001と、
役の成立に関する抽選においてボーナス役が内部的に成立すると、ボーナスフラグを記憶し、ボーナスフラグの記憶状態(持ち越し状態)をボーナス役の入賞に至るまで継続するCPU1001と、
ボーナス役が当選した場合には、その旨を告知する演出情報を表示するLCD18及びCPU1001と、
ボーナスフラグ持越しゲーム数カウント値が「3」、「6」、「10」である場合には、遊技状態に影響を与えない所定の特典演出画像(通常演出画像に比べて希少価値のあるレア画像(プレミア画像)であって、出現頻度が極めて少なくその出現によって遊技者に入賞に関する期待感を高め且つ優越感を与える画像)をLCD18に表示するCPU1001とを備え、
ボーナスフラグ持ち越しゲーム数カウント値が「3」、「6」及び「10」の何れにも該当しない場合には特典演出画像Fの表示処理の出力処理を行わず、
リプレイ役が高確率で当選する遊技状態であるリプレイタイムがある、
スロットマシン1。」

2 甲2号証に記載された発明
甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0038】
図2には、上記パチスロ機300の動作を制御するための制御ブロック図が概略的に示されている。」

(2)「【0044】
ここで、役には小役と大役とがある。このうち、大役には、ビッグボーナス(以下、適宜「BB」という)及びレギュラーボーナス(以下、適宜「RB」という)があり、それぞれに対応する遊技においては遊技者に対する有利さの度合いが異なる。RBに対応する遊技(以下、適宜「RBゲーム」という)は複数回の小役ゲームにより構成されており、BBに対応する遊技(以下、適宜「BBゲーム」という)は、その遊技中に、複数回のRBゲームを含んで構成されている。このため、当然、小役ゲームよりもRBゲームの方が、RBゲームよりもBBゲームの方が、遊技者にとってより有利な遊技状態となる。」

(3)「【0080】
副制御部150では、複数の遊技にわたって連続して演出を実行する連続演出を実行するようにしており、主制御部100による遊技の進行状況に応じて適宜演出コマンドに基づく演出が実行される。」

(4)「【0085】
演出実行制御部14では、ベットボタン352の操作タイミング信号(投入信号)、始動レバー354の操作タイミング信号(始動信号)及び停止ボタン356A、356B、356Cの操作タイミング信号(停止信号)がそれぞれ入力されると、演出パターン10から入力された演出パターン及び上記操作タイミング信号に応じて順次演出内容記憶部16から演出内容を読み出して、読み出した演出内容に基づいて適宜液晶制御回路152、スピーカ駆動回路154、ランプ駆動回路156を制御することにより、主制御部100の制御による遊技の進行状況に応じた演出が実行される。」

(5)「【0090】
中止操作切替部20では、入賞判定結果に応じて演出中止部22において演出のキャンセル指示とみなす操作を、投入操作又は始動操作に切り替える。入賞判定結果がリプレイ入賞を示すものであった場合は、投入信号に代えて始動信号を、他の場合には投入信号を、それぞれ演出のキャンセル指示とするように切り替える。」

(6)「【0112】
すなわち、全てのリール350A、350B、350Cが停止した後、実行すべき演出内容に基づく演出の実行中である場合は、投入信号が入力されるか、又は実行すべき演出が全て終了するまで、実行すべき演出が実行される。
【0113】
ここで、実行すべき演出の実行中に投入信号が入力された場合にはステップ222で肯定判定となってステップ226に移行し、演出の強制終了を実行する。
【0114】
演出の強制終了は、実行中の演出の最終画面を液晶制御回路152を介してLCD313に所定期間表示させた後に演出を終了することにより実行される。」
・・・
【0116】
図6は、内部抽選の結果、大役に当選していないことを報知する場合の演出画面の流れを模式的に示す図である。まず、始動レバー操作時には図6(a)に示されるように3つの図柄列が変動表示されている状態の演出画面がLCD313に表示され、その後、1回目の停止操作で図6(b)に示されるように左端の図柄列のみの変動表示が停止した状態の演出画面がLCD313に表示される。その後2回目の停止操作で図6(c)に示されるようにさらに中央の図柄列の変動表示が停止した状態状態の演出画面を表示し、3回目の停止操作に基づいて、予め設定された時間だけ図6(c)の演出画面の表示を維持した後に図6(d)に示されるように、全ての図柄列の変動表示が停止し、各図柄列の図柄が互いに一致してはいない状態の演出画面を表示する。すなわち、この図6(d)に示される画面が報知結果を示す画面であり、強制終了時に表示される最終画面である。
【0117】
また、図7は、内部抽選の結果、大役に当選したことを報知する場合の演出画面の流れを模式的に示す図である。始動レバー操作時には、外れを報知する場合と同様、図7(a)に示されるように3つの図柄列が変動表示されており、その後の停止操作に基づいて、図7(b)、図7(c)と表示する演出画面を切り替え、3回目の停止操作に基づいて、予め設定された時間だけ図7(c)の演出画面の表示を維持した後に、図7(d)に示されるように、全ての図柄列の変動表示が停止し、各図柄列の図柄が互いに一致している状態の演出画面を表示する。その後、図7(e)に示すように、内部抽選の結果が大当りであることを示す演出画面を表示し、さらに図7(f)に示すようなボーナス確定を示す演出画面を表示する。すなわち、この図7(d)?(f)に示される画面が報知結果(大役当選)を示す画面であり、強制終了時に表示される画面である。なお、本実施の形態では、強制終了時に図7(e)及び(f)の2つの演出画面を表示するようにしている。」

(7)「【0122】
ここで、実行すべき演出の実行中に始動信号が入力された場合にはステップ232で肯定判定となってステップ235に移行して、前回の遊技が開始した時点から次の遊技の始動操作を有効にするまでの4.1秒を計時する不図示のwait timerによる計時が終了して出力がON状態となるのを待ち、次のステップ236では、演出の強制終了を実行し、その後に再びステップ202に移行する。」

(8)段落【0116】?【0117】の記載を参照すると、図6,7には、始動レバー操作時から、次の始動レバー操作時の前までである、3回目の停止操作に基づき最終画面を表示するまで演出を行う点が図示されているから、図6,7に図示されている演出は、1ゲーム毎に行われる演出であると認められる。

(9)図5には、「212 全てのリール停止」の後に、「226 演出強制終了(結果表示)」、「236 演出強制終了(結果表示)」を行う点が記載されているから、段落【0085】、【0090】、【0112】?【0114】、【0116】の記載及び(8)の認定事項を参照すると、図5には、全てのリール350A、350B、350Cが停止した後、1ゲーム毎に行われる演出の実行中にベットボタン352(リプレイ入賞の場合は始動レバー354)の操作タイミング信号が入力された場合、演出を強制終了して結果表示である1ゲーム毎に行われる演出の最終画面を表示する点が記載されていると認められる。

上記(1)ないし(7)の記載事項、上記(8)及び(9)の認定事項を総合すると、甲第2号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という。)。
「複数の遊技にわたって連続演出を実行するものであり、全てのリール350A、350B、350Cが停止した後、1ゲーム毎に行われる演出の実行中にベットボタン352(リプレイ入賞の場合は始動レバー354)の操作タイミング信号が入力された場合、演出を強制終了して結果表示である1ゲーム毎に行われる演出の最終画面を表示するが、大役(ビッグボーナス、レギュラーボーナス)に当選したことを報知する場合、ボーナス確定を示す演出画面を表示する、
パチスロ機300。」

3 甲第3号証に記載された発明
甲3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0008】
本発明のスロットマシンでは、前記初期状態、前記第1RT状態、前記第2RT状態及び前記第3RT状態が、ボーナス状態ではない4種類の通常状態として設定されている。これら4種類の通常状態のうち、前記第1RT状態がリプレイ役の内部当選確率が最も高く比較的有利な遊技状態となっている。
【0009】
前記初期状態、前記第2RT状態及び前記第3RT状態は、前記第1RT状態よりもリプレイ役の内部当選確率が低く比較的不利な遊技状態となっている。このうち、前記初期状態では、前記第1特定図柄の停止表示に応じて比較的有利な前記第1RT状態に移行可能である。一方、前記第2RT状態及び前記第3RT状態においては、前記第2特定図柄あるいは前記第3特定図柄の停止表示に応じて前記初期状態に復帰できるのみである。」

(2)「【0059】
第1RT状態は、当選乱数テーブルDが適用される状態である。第1RT状態では、リプレイ1の入賞確率(当選確率)が高く設定された比較的有利な遊技状態である。第1RT状態が開始されてからの消化ゲーム数が30ゲームに達すると第2初期状態に復帰する。
第2RT状態は、当選乱数テーブルEが適用される状態である。第2RT状態では、リプレイ1の入賞確率(当選確率)が低く設定された比較的不利な遊技状態である。第2RT状態の終了条件は、特定小役である5枚役の入賞図柄(第4特定図柄)の停止表示である。第2RT状態は、5枚役の入賞に応じて終了し、第2初期状態に復帰する。
第3RT状態は、当選乱数テーブルEが適用される状態である。第3RT状態では、リプレイ1の入賞確率(当選確率)が低く設定された比較的不利な遊技状態である。第3RT状態が開始されてからの消化ゲーム数が100ゲームに達すると第2初期状態に復帰する。」

上記(1)及び(2)の記載事項を総合すると、甲第3号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲3発明」という。)。
「ボーナス状態ではない第1RT状態はリプレイ1の入賞確率(当選確率)が初期状態、第2RT状態、第3RT状態よりも高く設定され、初期状態、第2RT状態、第3RT状態はリプレイ1の入賞確率(当選確率)が第1RT状態よりも低く設定される、
スロットマシン。」

4 甲第4号証に記載された発明
甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)第22頁の「興奮度満点の連続型バトル」欄には、「この最大の目玉となっているのが最大5Gに渡って行われるガメラと敵怪獣との液晶連続バトルだ。今までのパチスロにおける液晶演出は1G単位で完結していて、そこでダメなら諦めるしかなかったのだが、連続演出にする事で液晶にしかできない迫力のゲーム性を実現しているのである。」と記載されている。

(2)第22頁の「その3 最大5ゲームの液晶バトル」欄には、「1ゲーム1攻撃の大攻防戦!!」、「ガメラが敵怪獣を倒せばボーナス確定!!」、「回転攻撃2連続 チャンス」、「5G目にガメラ攻撃 鉄板!」、及び「バトル演出は数百種類ものパターンが用意されている。基本的には、長くなるほど期待度もアップ。そして敵怪獣を倒せばボーナス確定だ。」と記載されている。

上記(1)及び(2)の記載事項を総合すると、甲第4号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲4発明」という。)。
「最大5Gに渡って、1ゲーム1攻撃で長くなるほど期待度がアップするガメラと敵怪獣とのバトル演出という連続演出が行われ、回転攻撃2連続ならチャンスであり、5G目にガメラが敵怪獣を倒せばボーナス確定する、
パチスロ。」

第5 当審の判断
1 本件特許の請求項1に係る発明について
(1)対比
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)と甲1発明を対比する。

(A-1)甲1発明の「回転リール6L、6C、6R及び表示窓5」は、本件特許発明の「可変表示部」に相当し、甲1発明の「回転リール6L、6C、6R」の「周方向に沿って描かれている複数種類の役図柄(ボーナス役図柄、小役図柄を含む)」は、本件特許発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報」に相当する。
したがって、甲1発明の「周方向に沿って描かれている複数種類の役図柄(ボーナス役図柄、小役図柄を含む)を変動表示可能な回転リール6L、6C、6R及び表示窓5」は、本件特許発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部」に相当する。

(A-2)甲1発明における「メダル」及び「スロットマシン1」は、それぞれ、本件特許発明の「遊技用価値」及び「スロットマシン」に相当する。
また、甲1発明における「遊技を開始する条件が整い」、「始動レバー26が操作されると回転リール6L、6C、6Rが一斉に回転し、停止ボタン27L、27C、27Rが押圧操作されると、その操作に対応する回転リールの回転が停止し、有効ライン(有効化された掛けライン)上で入賞を示す図柄の組み合わせが揃う」こと、及び「入賞を示す図柄の組み合わせが揃うことに起因して入賞が成立する」ことは、それぞれ、本件特許発明の「可変表示部の変動表示が開始可能とな」ること、「可変表示部の変動表示を開始した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出」すること、及び「表示結果に応じて入賞が発生可能」であることに相当する。
したがって、甲1発明の「3枚を限度とするメダルが賭け枚数として設定されると遊技を開始する条件が整い、始動レバー26が操作されると回転リール6L、6C、6Rが一斉に回転し、停止ボタン27L、27C、27Rが押圧操作されると、その操作に対応する回転リールの回転が停止し、有効ライン(有効化された掛けライン)上で入賞を示す図柄の組み合わせが揃うことに起因して入賞が成立するスロットマシン1」は、本件特許発明の「遊技用価値が用いられて賭数を設定したときに前記可変表示部の変動表示が開始可能となり、前記可変表示部の変動表示を開始した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシン」に相当する。

(B)甲1発明の「ボーナスゲーム」及び「ボーナス役の入賞」は、それぞれ、本件訂正発明の「遊技者にとって有利な特別遊技状態」及び「特別入賞」に相当する。
甲1発明は、「始動レバー26が操作されると、役の成立に関する抽選を行」った後で、「回転リール6L,6C,6Rの回転を開始させ」るものであるから、甲1発明の「始動レバー26が操作されると、役の成立に関する抽選を行い、ボーナス役に当選した場合には、ボーナスフラグを記憶させ、ボーナスフラグの記憶が終了すると、回転リール6L,6C,6Rの回転を開始させ、全回転リール6L,6C,6Rの回転が停止すると、ボーナス役の入賞が成立したか否かを判別し、有効ライン上にボーナス役の入賞図柄の組み合わせが揃い、ボーナスの入賞が成立した場合には、ボーナスゲーム処理を行うCPU1001」は、本件特許発明の「表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞について、入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」に相当する。

(C)刊行物1の段落【0008】に「従来のスロットマシンでは、上記ボーナスフラグが記憶手段に記憶されるに伴って遊技状態がボーナス役の入賞が可能な状態となった場合、図柄を停止表示する際にボーナス役の入賞が成立し易いように引き込み制御が行われる。そのため、目押しの上手な遊技者にあっては、上記のボーナス役入賞可能遊技状態となってから(換言すると、ボーナスフラグが記憶されてから)相対的に短い期間でボーナス役の入賞を成立させることができるが、目押しの苦手な遊技者にあっては、ボーナス役の入賞を成立させるためには上記のボーナス役入賞可能遊技状態となってから相対的に長い期間を要する。」と記載されているように、ボーナスフラグが記憶されているか否か(特別入賞の発生が許容されているか否か)に基づいて、目押しによる図柄停止の際に、引き込み制御が行われることから、甲1発明の「全ての停止ボタン27L,27C,27Rが押圧操作されて目押しが行われると、その目押し順序に応じて各回転リール6L,6C,6Rの回転を順次停止させ、表示窓5内において回転リール6L,6C,6Rの図柄の変動が順次停止表示されるCPU1001」は、本件特許発明の「事前決定手段の決定結果に応じて表示結果を導出する導出制御手段」に相当する。

(D)甲1発明の「役の成立に関する抽選においてボーナス役が内部的に成立すると、」「記憶」される「ボーナスフラグ」は、本件特許発明の「特別入賞の発生を許容する旨の決定結果」に相当するから、甲1発明の「役の成立に関する抽選においてボーナス役が内部的に成立すると、ボーナスフラグを記憶し、ボーナスフラグの記憶状態(持ち越し状態)をボーナス役の入賞に至るまで継続するCPU1001」は、本件特許発明の「前記事前決定手段により前記特別入賞の発生を許容する旨が決定されたゲームにおいて当該特別入賞が発生しなかったときに、当該特別入賞の発生を許容する旨の決定結果を当該特別入賞が発生するまで持ち越す持越手段」に相当する。

(E)甲1発明の「ボーナス役が当選した場合には、その旨を告知する演出情報を表示するLCD18及びCPU1001」は、本件特許発明の「前記特別入賞の発生が許容されていることを告知する告知手段」に相当する。

(F)甲1発明の「ボーナスフラグ持越しゲーム数カウント値が「3」、「6」、「10」である場合」は、本件特許発明の「前記特別入賞の発生前に所定の特典付与条件が成立したとき」に相当する。
また、甲1発明の「遊技状態に影響を与えない所定の特典演出画像(通常演出画像に比べて希少価値のあるレア画像(プレミア画像)であって、出現頻度が極めて少なくその出現によって遊技者に入賞に関する期待感を高め且つ優越感を与える画像)」は、本件特許発明の「遊技用価値と異なりかつ遊技状態に影響を与えない所定の特典」に相当する。
したがって、甲1発明の「ボーナス役が持ち越された状態である、ボーナスフラグ持越しゲーム数カウント値が「3」、「6」、「10」である場合には、遊技状態に影響を与えない所定の特典演出画像(通常演出画像に比べて希少価値のあるレア画像(プレミア画像)であって、出現頻度が極めて少なくその出現によって遊技者に入賞に関する期待感を高め且つ優越感を与える画像)をLCD18に表示するCPU1001」は、本件特許発明の「前記特別入賞の発生前に所定の特典付与条件が成立したときに、前記遊技用価値と異なりかつ遊技状態に影響を与えない所定の特典を付与する特典付与手段」に相当する。

(G)甲1発明は、「ボーナスフラグ持ち越しゲーム数カウント値が「3」、「6」及び「10」の何れにも該当しない場合には特典演出画像Fの表示処理の出力処理を行わ」ないのであるから、甲1発明において「ボーナスフラグ持ち越しゲーム数カウント値が「3」」に達していない、ボーナスフラグ持越しゲーム数カウント値が「1」又は「2」の場合は、本件特許発明の「前記特典付与条件が成立するまでの特典条件成立前期間」に相当する。
また、甲1発明の「リプレイ役が高確率で当選する遊技状態であるリプレイタイム」は、メダル(遊技用価値)を消費せずに遊技をすることができるリプレイ役が高確率で当選する遊技状態であるから、リプレイタイム以外の遊技状態と、遊技用価値の増減量が異なることは明らかであるから、甲1発明の「リプレイ役が高確率で当選する遊技状態であるリプレイタイム」は、本件特許発明の「遊技者が獲得した遊技用価値の量から遊技者が賭数の設定に用いた遊技用価値の量を差し引いた遊技用価値の増減量が、前記特別入賞の発生が許容されたときの遊技状態に応じて異な」る期間に相当する。

(H)上記(E)で示したように、甲1発明の「ボーナス役が当選した場合には、その旨を告知する演出情報を表示するLCD18及びCPU1001」は、本件特許発明の「前記告知手段」に相当する。

そうすると、本件特許発明と甲1発明とは、次の点で一致する。
「A-1 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
A-2 遊技用価値が用いられて賭数を設定したときに前記可変表示部の変動表示が開始可能となり、前記可変表示部の変動表示を開始した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
B 表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞について、入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
C 前記事前決定手段の決定結果に応じて表示結果を導出する導出制御手段と、
D 前記事前決定手段により前記特別入賞の発生を許容する旨が決定されたゲームにおいて当該特別入賞が発生しなかったときに、当該特別入賞の発生を許容する旨の決定結果を当該特別入賞が発生するまで持ち越す持越手段と、
E 前記特別入賞の発生が許容されていることを告知する告知手段と、
F 前記特別入賞の発生前に所定の特典付与条件が成立したときに、前記遊技用価値と異なりかつ遊技状態に影響を与えない所定の特典を付与する特典付与手段とを備え、
G 前記特典付与条件が成立するまでの特典条件成立前期間があり、
遊技者が獲得した遊技用価値の量から遊技者が賭数の設定に用いた遊技用価値の量を差し引いた遊技用価値の増減量が、前記特別入賞の発生が許容されたときの遊技状態に応じて異なることがあり、
H 前記告知手段を備える、
スロットマシン。」

そして、本件特許発明と甲1発明とは、次の点で相違する。
[相違点1]
「特典付与手段」について、本件特許発明は、「前記告知手段による告知後」所定の特典を付与するのに対して、甲1発明は、「前記告知手段による告知」がいつ行われるか不明であり、「前記告知手段による告知後」所定の特典を付与するものであるか、明確ではない点(構成F)。

[相違点2]
本件特許発明は、「前記告知がされてから前記特典付与条件が成立するまでの特典条件成立前期間において、遊技者が獲得した遊技用価値の量から遊技者が賭数の設定に用いた遊技用価値の量を差し引いた遊技用価値の増減量が、前記特別入賞の発生が許容されたときの遊技状態に応じて異な」るものであるのに対して、甲1発明は、そのように特定されているのか、明確ではない点(構成G)。

[相違点3]
本件特許発明は、「複数ゲームのうちの最終ゲームにおいて前記特別入賞の発生が許容されていることを告知するとともに当該最終ゲーム前のゲームでは前記特別入賞の発生が許容されている可能性を示唆する示唆演出を実行」するものであるのに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点(構成H-1)。

[相違点4]
本件特許発明は、「前記示唆演出が実行されているゲームで所定操作が検出されたときには当該ゲームにおいて前記特別入賞の発生が許容されていることを告知する」ものであるのに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点(構成H-2)。

(2)判断
事案の事情により、まず、相違点4について検討する。

ア 特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人は、特許異議申立書の第55頁第15行ないし第56頁第11行において、『甲2記載事項には、複数の遊技(つまりゲーム)に亘って連続して実行される連続演出(段落80)が記載されている。この「連続演出」は、甲4記載事項における「最大5ゲームまで連続するバトル演出」に対応し、甲2記載事項における「大役(ビッグボーナス、レギュラーボーナス)が内部当選していることを示す最終画面」は、甲4記載事項における「ボーナスの確定を告知する」演出に対応する。すなわち、甲2記載事項と甲4記載事項とは、複数の遊技(つまりゲーム)にわたって連続する演出の実行を想定している点、演出の最後でボーナスの確定を報知する点で共通する。しかも、演出の終了を最後まで待つことなく強制的に終了したいという技術課題は、本件特許発明1の出願当時において周知である…。従って、甲4記載事項に、甲2記載事項を適用することは当業者が容易になすことができる。そして、甲4記載事項に甲2記載事項を適用して得られる技術事項は、「演出キャンセルボタン…」の操作が「最終ゲームの前のゲーム」(すなわち、割り当てられた示唆演出の実行中)において行われた場合、当該ゲームにおいて連続演出が強制的に終了され、連続演出の最終画面であるボーナスの確定を告知する画面が出力されることになる。この技術事項は、構成H-2に相当する。…甲4記載事項に甲2記載事項を適用して得られる技術事項を甲1発明に適用して本件特許発明1(構成H-2)とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。」と主張しているので、以下検討する。

イ 当審の判断(1)
まず、特許異議申立人の主張にしたがい、甲4発明に甲2発明を適用し、さらに甲1発明に適用する場合について検討する。

甲2発明は、操作タイミング信号が入力されることにより演出が強制終了されても、そのゲームの結果表示である1ゲーム毎に行われる演出の最終画面は必ず表示される。このことから、甲4発明の示唆演出である「回転攻撃2連続」を行うゲームの中の1ゲームに、甲2発明の「ベットボタン352(リプレイ入賞の場合は始動レバー354)の操作タイミング信号が入力された場合、演出を強制終了して結果表示である1ゲーム毎に行われる演出の最終画面を表示する」発明を適用しても、そのゲームの結果表示である1ゲーム毎に行われる演出の最終画面が表示されるだけである。したがって、甲4発明に甲2発明を適用し、さらに甲1発明に適用しても、次ゲーム以降の演出を実行せず、次ゲーム以降に行われる告知演出を前倒しして実行する構成である「前記示唆演出が実行されているゲームで所定操作が検出されたときには当該ゲームにおいて前記特別入賞の発生が許容されていることを告知する」構成にはならない。

また、特許異議申立人は、演出の終了を最後まで待つことなく強制的に終了したいという技術課題は、本件特許発明1の出願当時において周知である旨主張している。
しかしながら、仮に上記技術課題が周知であるとしても、強制終了により1ゲーム毎に行われる複数ゲーム分の演出を、まとめて実行しないことが周知技術であるとはいえないから、甲2発明において上記周知の技術課題を考慮しても、「前記示唆演出が実行されているゲームで所定操作が検出されたときには当該ゲームにおいて前記特別入賞の発生が許容されていることを告知する」構成を導き出すことはできない。
しかも、甲2発明は、演出が強制終了されても、1ゲーム毎に行われる演出の最終画面は必ず表示されるから、上記技術課題を考慮しても、演出が強制終了されても必ず表示される1ゲーム毎に行われる演出の最終画面を、演出が強制終了されることにより表示しない構成にすることはできない。

したがって、演出の終了を最後まで待つことなく強制的に終了したいという技術課題が周知であるとしても、上記周知の技術課題を考慮して、甲4発明に甲2発明を適用したものを、さらに甲1発明に適用したとしても、上記相違点4に係る本件特許発明の構成H-2とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
よって、上記相違点4に対する特許異議申立人の主張は採用することができない。

なお、特許異議申立人は、演出の終了を最後まで待つことなく強制的に終了することは周知技術(甲第2号証の段落【0010】、特開2002-58791号公報の段落【0004】から)である旨主張するが、周知技術として提示された証拠は、いずれも1ゲーム中に行われる演出を強制的に終了するものであり、次ゲーム以降の演出を実行せず、告知演出を行うゲームを前倒しする構成ではない。

ウ 当審の判断(2)
さらに、特許異議申立人の主張以外の点、すなわち、甲1発明に甲2発明ないし甲4発明をそれぞれ適用した場合についても一応検討する。

甲2発明は、前記イにおいて既に検討したように、操作タイミング信号が入力されることにより演出が強制終了されても、そのゲームの結果表示である1ゲーム毎に行われる演出の最終画面は必ず表示されるから、甲1発明に甲2発明を適用しても「前記示唆演出が実行されているゲームで所定操作が検出されたときには当該ゲームにおいて前記特別入賞の発生が許容されていることを告知する」構成にはならない。

また、甲3発明は、「ボーナス状態ではない第1RT状態はリプレイ1の入賞確率(当選確率)が初期状態、第2RT状態、第3RT状態よりも高く設定され、初期状態、第2RT状態、第3RT状態はリプレイ1の入賞確率(当選確率)が第1RT状態よりも低く設定される、スロットマシン。」であり、所定操作により示唆演出を告知演出に変更する点は記載されていないから、甲1発明に甲3発明を適用しても「前記示唆演出が実行されているゲームで所定操作が検出されたときには当該ゲームにおいて前記特別入賞の発生が許容されていることを告知する」構成にはならない。

そして、甲4発明は、前記イにおいて既に検討したように、「5G目にガメラが敵怪獣を倒せばボーナス確定する」ものであるが、所定操作が検出されたことにより「ガメラが敵怪獣を倒」すゲームを前倒しする発明ではなく、「ガメラが敵怪獣を倒」さない場合もあるから、甲1発明に甲4発明を適用しても「前記示唆演出が実行されているゲームで所定操作が検出されたときには当該ゲームにおいて前記特別入賞の発生が許容されていることを告知する」構成にはならない。

よって、甲1発明に、甲2発明ないし甲4発明のいずれを適用しても、上記相違点4に係る本件特許発明の構成H-2にはならず、各甲発明をいかに組み合わせても、上記相違点4に係る本件特許発明の構成H-2を想到し得ないから、上記相違点4に係る本件特許発明の構成H-2とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

(3)小括
以上のことから、上記相違点4に係る本件特許発明の構成は、甲1発明ないし甲4発明から、当業者が容易になし得たものではない。

したがって、上記相違点1ないし3について検討するまでもなく、本件特許発明は、甲1発明ないし甲4発明に基づいて、本件出願日前に当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

2 本件特許の請求項3及び5に係る発明について
本件特許の請求項3及び5に係る発明は、本件特許の請求項1を引用するものであり、本件特許の請求項3及び5に記載された発明特定事項(上記第2 請求項3及び5を参照。)を付加するものである。したがって、本件特許発明が甲1発明ないし甲4発明に基づいて、本件出願日前に当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない以上、本件特許の請求項3及び5に係る発明についても、甲1発明ないし甲4発明に基づいて、本件出願日前に当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のことから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1、3、及び5に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3、及び5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-02-29 
出願番号 特願2010-14457(P2010-14457)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大澤 元成  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 瀬津 太朗
遠藤 孝徳
登録日 2015-03-27 
登録番号 特許第5717969号(P5717969)
権利者 株式会社三共
発明の名称 スロットマシン  
代理人 関谷 三男  
代理人 中田 雅彦  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 塚本 豊  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
代理人 平木 祐輔  
代理人 頭師 教文  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ