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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1311876
異議申立番号 異議2016-700022  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-14 
確定日 2016-03-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第5747396号「光軸調整装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 特許第5747396号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
特許第5747396号(以下「本件特許」という。)は,特願2014-192401号として平成26年9月22日(優先権主張 平成26年2月25日(以下「優先日」という。))に出願されたものであって,平成27年5月22日に特許権の設定登録がされたものである。
本件特許について,特許異議申立人 特許業務法人プロテックから,平成28年1月14日付け特許異議申立書により,特許異議の申立て(異議2016-700022号)が申し立てられた。
以下,本件特許に関し,その特許請求の範囲の請求項1?6に係る特許を,それぞれ,「本件特許1」?「本件特許6」という。また,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明を,それぞれ,「本件特許発明1」?「本件特許発明6」という。

2 本件特許発明
本件特許発明1?6は,それぞれ,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,構成要件毎に分説して記載すると,以下のとおりである。

「【請求項1】
A 第1の光学部品と第2の光学部品との光軸調節を行うための光軸調整装置であって,
B 前記第1の光学部品を載置する載置ステージと,
C 前記載置ステージの位置及び姿勢を調整するステージ調整機構と,
D 前記ステージ調整機構を制御するコントローラとを,備え,
E 前記載置ステージにおける前記第1の光学部品が載置される載置面と平行となる所定の方向をXと定義し,前記載置面と平行且つ前記Xと直交する方向をYと定義し,前記X及び前記Yに対して直交する方向をZと定義し,前記X及び前記Yと平行となる面をX-Y平面と定義し,
F 前記第1の光学部品は,光軸が前記Zに沿うように前記載置ステージに載置され,
G 前記ステージ調整機構は,
前記載置ステージを前記X-Y平面の平面方向,かつ前記X-Y平面に垂直となるZ軸方向へ移動させるシフトユニットと,
前記載置ステージを前記X-Y平面に平行するX軸周り,及び前記X-Y平面に平行し且つ前記X軸に直交するY軸周りに揺動させるチルトユニットとを有し,
H 前記コントローラは,前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行となるように,前記シフトユニット及び前記チルトユニットを制御し,
I 前記コントローラは,
前記第1の光学部品の基準位置から前記X軸までの長さであるX軸チルト半径,及び前記第1の光学部品の基準位置から前記Y軸までの長さであるY軸チルト半径の情報を保持し,
前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行となるための前記X軸周りの補正角度,及び前記Y軸周りの補正角度を算出するチルト補正条件算出部と,
J 前記チルト補正条件算出部が算出した前記X軸周りの補正角度及び前記X軸チルト半径を利用して,前記チルトユニットを前記X軸周りに揺動させるためのX軸回転制御値と,前記X軸周りの補正角度で前記チルトユニットを揺動させる際に該X軸チルト半径の揺動端が前記Y軸方向又は前記Z軸方向に移動するシフト量を相殺するために,前記シフトユニットを前記Y軸方向又は前記Z軸方向に移動させるXチルト時復帰制御値と,の双方を算出するXチルト値変換手段と,
K 前記チルト補正条件算出部が算出した前記Y軸周りの補正角度及び前記Y軸チルト半径を利用して,前記チルトユニットを前記Y軸周りに揺動させるためのY軸回転制御値と,前記Y軸周りの補正角度で前記チルトユニットを揺動させる際に該Y軸チルト半径の揺動端が前記X軸方向又は前記Z軸方向に移動するシフト量を相殺するために前記シフトユニットを前記X軸方向又は前記Z軸方向に移動させるYチルト時復帰制御値と,の双方を算出するYチルト値変換手段と,を有し,
L 前記X軸回転制御値及び前記Y軸回転制御値に基づいて前記チルトユニットが前記載置ステージを揺動し,かつ,前記Xチルト時復帰制御値と前記Yチルト時復帰制御値に基づいて前記シフトユニットが前記載置ステージを前記X-Y平面方向又は前記Z軸方向に移動させることで,前記X軸チルト半径及び前記Y軸チルト半径の前記揺動端が前記基準位置でほぼ静止したまま,前記X軸周りの補正角度及び前記Y軸周りの補正角度によるチルト制御を行う
ことを特徴とする光軸調整装置。

【請求項2】
M 前記コントローラは,
前記第1の光学部品と前記第2の光学部品の光軸が所定平面で一致させるための前記X-Y平面内の補正移動量を算出するシフト補正条件算出部と,
N 前記シフト補正条件算出部が算出した前記X-Y平面内の補正移動量を利用して,前記シフトユニットを前記X-Y平面内で移動させるためのX-Y平面移動制御値を算出するX-Yシフト値変換手段と,を有し,
O 前記X-Y平面移動制御値に基づいて前記シフトユニットが前記載置ステージを前記X-Y平面方向に移動させることで,前記X-Y平面内の補正移動量によるシフト制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の光軸調整装置。

【請求項3】
P 前記コントローラは,
前記載置ステージに搭載される前記第1の光学部品の前記基準面の位置を計測することで,前記X軸チルト半径及び前記Y軸チルト半径を算出するチルト半径算出部を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光軸調整装置。

【請求項4】
Q 前記光軸調整を行うことを目的として,前記載置ステージの位置又は姿勢を補正するための条件を,前記載置ステージの補正条件と定義した場合,
前記コントローラは,前記載置ステージの補正条件が,前記ステージ調整機構の可動範囲内であるか否かの判定を行う判定部を有し,
R 前記載置ステージの補正条件が前記ステージ調整機構の可動範囲外であると判定された場合,前記ステージ調整機構の可動範囲内で,前記載置ステージの位置または姿勢の調節を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光軸調整装置。

【請求項5】
S 前記載置ステージ及び前記ステージ調整機構を90度の角度範囲で回転させるステージ姿勢切替機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の光軸調整装置。

【請求項6】
T 前記載置ステージに載置された前記第1の光学部品を保持する保持状態と,前記保持が解除された保持解除状態との間で切替え可能なチャック機構をさらに備えたことを特徴とする請求項5記載の光軸調整装置。」

3 申立の理由の概要
特許異議申立人は,本件特許1?6は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとして特許異議の申立てをするところ,その申立の理由の概要は,以下のとおりである。
(1) 本件特許発明1及び4について
本件特許発明1及び4は,甲1発明を主引用発明として,甲1発明及び甲2記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。

(2) 本件特許発明2,3,5及び6について
本件特許発明2,3,5及び6は,甲1発明を主引用発明として,甲1発明,甲2記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 証拠方法
申立の理由について,異議申立人が提出した証拠方法は,甲1?4であるところ,これらはいずれも,本件特許の優先日前に頒布された以下の刊行物である。
(1) 甲1 特開平11-161337号公報(【公開日】平成11年6月18日,【発明の名称】ゴニオステージのワーク傾動中心位置補正装置,【出願番号】特願平9-325982号,【出願日】平成9年(1997)11月27日,【出願人】シャープ株式会社)

(2) 甲2 特開平8-17380号公報(【公開日】平成8年(1996)1月19日,【発明の名称】2軸傾斜試料微動装置及び像の逃げ補正方法,【出願番号】特願平6-148109号,【出願日】平成6年(1994)6月29日,【出願人】株式会社日立製作所,株式会社日立サイエンスシステムズ)

(3) 甲3 特開2010-57038号公報(【公開日】平成22年3月11日,【発明の名称】カメラマウント組立装置およびカメラマウントの組立方法,【出願番号】特願2008-221518号,【出願日】平成20年8月29日,【出願人】東芝テリー株式会社)

(4) 甲4 特開2005-86659号公報(【公開日】平成17年3月31日,【発明の名称】カメラモジュール生産方法およびその方法を用いた組立装置,【出願番号】特願2003-318415号,【出願日】平成15年9月10日,【出願人】ソニー株式会社)

第2 当合議体の判断
1 甲1?4に記載の事項及び甲1発明等
(1) 甲1に記載の事項
甲1には,以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,回転中心が外側にあるステージ,すなわち対象ワークをステージ外に保持しそのワークをワーク自体の一部を傾動中心にして傾動させるゴニオステージにおけるワーク傾動中心位置補正装置に関する。ゴニオステージは,例えば光素子(光ファイバーなど)や半導体モジュールの精密なアライメントや計測データ取りを実施する際に用いられる。」

イ 「【0002】
【従来の技術】図9の(a),(b)は従来のゴニオステージの概略の構成を示す平面図と正面図である。
【図9】

この図において,71は例えばβ軸用ゴニオステージ,72はゴニオステージ71にギアを介して回転自在に保持された旋回ブロック,73は駆動回転により旋回ブロック72を回転させるための駆動源(モーター)である。旋回ブロック72の回転中心Oはゴニオステージ71の外側に位置している。81はワーク取付け治具である。このワーク取付け治具81は,旋回ブロック72に対して着脱自在に取り付けられるベース板81aと,ベース板81aから垂直に突設されたアーム部81bとからなり,アーム部81bの先端に形成されたワーク保持部(貫通孔)82に対してワーク90が着脱自在に保持されるようになっている。ワーク保持部82の中心線は旋回ブロック72の回転中心Oを通る状態となっている。
【0003】駆動源73を駆動して旋回ブロック72を外側の回転中心Oまわりに指定角度θだけ回転させると,ワーク取付け治具81も一体となって同一角度回転され,保持されているワーク90が角度θだけ傾動する。この状態でワーク90に何らかの作用を与えることにより,傾動角度θにおけるデータを取得する。傾動角度θを適当に調整することにより,ワークにおける傾斜特性が得られる。
【0004】ゴニオステージ71はワークのデータ取得だけでなく,ワークのアライメントに使われる場合もある。
【0005】ワーク90をワーク自体の一部を傾動中心として傾動させるものであって,その傾動中心となるべき回転中心Oをステージ71の外側に設定する関係上,ワークを保持するためには外側へ突出するワーク取付け治具81を用いる必要がある。
【0006】ワーク90の所要の部位を傾動中心としてワーク90を傾動させるためには,そのワーク90を保持して旋回ブロック72に取り付けられるワーク取付け治具81の加工公差だけでなく治具と旋回ブロックとの取り付け精度を厳密に管理し調整しなければならない。もしその条件が満たされないと,旋回ブロック72を回転させたときにワーク90は所要の部位を中心にして傾動しないことになるからである。ワークが所要の部位を中心にして傾動しないときは,その所要部位は旋回ブロック72の回転中心Oまわりに回転移動することになり,ワークの所要部位が正規の位置からずれてしまう。この位置ずれ状態でデータを取得すると,傾き要素と位置ずれ要素が複合された形での取得データとなるためそのデータは正確さに欠けることになる。アライメントするときも,その位置精度が低下する。
【0007】このような不都合を避けるため,現状では,ワーク90の傾動中心としたいワークの所要部位を常に旋回ブロック72の回転中心Oと一致させるべく,ワーク取付け治具81の加工公差およびワーク取付け治具と旋回ブロックとの取り付け精度が厳密なものとなるようにワーク取付け治具をきわめてシビアに製作している。」

ウ 「【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の技術においては,次のような不都合が生じている。
【0009】 ワークの傾動中心となるべき所要部位をその場で変更した場合に,その変更後の所要部位を傾動中心としてワークを傾動させることは,ゴニオステージの機械的な制約から(傾動中心が回転中心Oからずれてしまうので)不可能となっている。
【0010】 別のワークをもってきてワークの傾動中心が変わるときには,そのワークの傾動中心を旋回ブロックの回転中心に一致させるためのワーク取付け治具が必要となり,新たにそのワーク取付け治具を製作しなければならない。
【0011】 ワークの寸法が変わるときには,そのワークの傾動中心を旋回ブロックの回転中心に一致させるためのワーク取付け治具が必要となり,新たにそのワーク取付け治具を製作しなければならない。
【0012】本発明はこのような事情に鑑みて創案されたものであって,ワークにおける任意の部位を傾動中心として定めたときに,その傾動中心がゴニオステージ(旋回ブロック)の回転中心からずれていても,常にその傾動中心として定めた所要部位を結果的に傾動中心としてワークを傾動させることが可能となるゴニオステージのワーク傾動中心位置補正装置を提供することを目的としている。この目的の達成を通して,ワーク取付け治具に要求される厳密な精度の緩和を図るとともに,ワーク条件が変わってもその都度新たにワーク取付け治具を製作する必要性を解消しようとしている。」

エ 「【0017】
【発明の実施の形態】以下,本発明に係るゴニオステージのワーク傾動中心位置補正装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】図1は6軸のゴニオステージ10の全体的な斜視図である。
【図1】

このゴニオステージ10は,X軸ステージ11,Y軸ステージ12,Z軸ステージ13,γ軸用θステージ14,β軸用ゴニオステージ15およびα軸用ゴニオステージ16を備えている。ゴニオステージ10にワーク取付け治具21が着脱自在に取り付けられている。ワーク取付け治具21は,ゴニオステージ10に取り付けられるベース板21aと,ベース板21aから垂直に突設されたアーム部21bとからなり,アーム部21bの先端にはワーク保持部(貫通孔)22が形成されている。このワーク保持部22は,対象ワークの一例としての光ファイバー60を挿入によって着脱自在に保持するようになっている。6軸のゴニオステージ10は,光ファイバー60を3次元方向で任意の位置に移動させ,かつ任意の角度に傾動させることができる。
【0019】図2はワーク取付け治具21の斜視図,図3は中心で切断したワーク取付け治具21の断面図である。
【図2】

【図3】

ワーク取付け治具21のアーム部21bはX軸方向に沿っており,そのX軸方向端面23xにY-Z平面用の第1のアライメントマーク24xが設けられている。また,アーム部21bのY軸方向側面23yにはZ-X平面用の第2のアライメントマーク24yが設けられ,Z軸方向側面23zにはX-Y平面用の第3のアライメントマーク24zが設けられている。第1のアライメントマーク24xおよび第2のアライメントマーク24yは,アーム部21bのワーク保持部22に保持されている光ファイバー60の端面である受光面60aの中心のX軸方向およびY軸方向の投影箇所に設けられている。第3のアライメントマーク24zはワーク保持部22の近傍に設けられている。第1ないし第3のアライメントマーク24x,24y,24zはともに微小なものであり,例えばアーム部21bをタッピングして円錐状の凹部として構成したり,ペイントの塗布によりマーク付けをしてもよい。
【0020】図4はアライメントマーク位置認識装置30をワーク取付け治具21とともに示す斜視図である。
【図4】

このアライメントマーク位置認識装置30は,第1のアライメントマーク24xを撮像するための光軸がX軸方向に沿った第1の鏡筒31xおよび第1の撮像装置32xと,第2のアライメントマーク24yを撮像するための光軸がY軸方向に沿った第2の鏡筒31yおよび第2の撮像装置32yと,第3のアライメントマーク24zを撮像するための光軸がZ軸方向に沿った第3の鏡筒31zおよび第3の撮像装置32zと,所要の画像処理に基づいて撮像した各アライメントマーク24x,24y,24zの座標位置検出を行う画像処理装置33とを備えている。各撮像装置32x,32y,32zはCCDカメラで構成されている。画像処理装置33は制御部40に接続されている。制御部40については図5で説明する。
【図5】



オ 「【0021】図5は6軸のゴニオステージ10の全体的な概略の構成を示すブロック図である。マイクロコンピュータをもって構成された制御部40は,CPU(中央演算処理装置)41とROM(リードオンリーメモリ)42とRAM(ランダムアクセスメモリ)43から構成され,操作部44が接続されている。制御部40の入力ポートにはアライメントマーク位置認識装置30の画像処理装置33が接続され,出力ポートには各ステージ11?16の駆動源(モーター)11a?16aが接続されている。
【0022】図6はワーク取付け治具21を介してゴニオステージ10に取り付けられた光ファイバー60の受光光量の角度特性評価装置50の概略的な構成を示す。
【図6】

51は赤外線レーザ,52は集光レンズ,53は検査用光ファイバー,54は受光光量検出装置,55は受光光量記録装置である。赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸とが一致し,かつ鉛直になるように設定されている。赤外線レーザ51から出射され集光レンズ52で集光されたレーザ光56を光ファイバー60の受光面60a上の任意の特定位置である所要部位(これは中心であってもよいが,そうでなくてもよい)に焦点を結ぶように入射させる。入射されたレーザ光は光ファイバー60および検査用光ファイバー53を通って受光光量検出装置54に入力され受光光量が検出されて,受光光量記録装置55に記録される。受光光量の角度特性を正確に測定するためには,光ファイバー60が点線のように傾動しても受光面60a上の全く同じ部位すなわち所要部位にレーザ光56を入射させなければならない。その部位が結果的に光ファイバー60の傾動中心となるべき所要部位である。ここで「結果的に」と表現しているのは,光ファイバー60の実際の傾動中心はゴニオステージ10の回転中心であり,受光面60a上の所要部位ではなく,傾動後の所要部位をX軸ステージ11やZ軸ステージ13の移動によって傾動前の所要部位に一致させることから,みかけ上は光ファイバー60が所要部位を傾動中心として傾動した状況となるからである。」

カ 「【0025】ワーク取付け治具21が水平状態にあるときにあらかじめ図4に示すアライメントマーク位置認識装置30における第2の鏡筒31yと第2の撮像装置32yとによりワーク取付け治具21のY軸方向側面23yの第2のアライメントマーク24yを撮像し,この第2のアライメントマーク24yの位置と光ファイバー60の受光面60a上の傾動中心とするべき所要部位(ここでは受光面60aの中心とする)との2次元的な相対位置関係を測定しておき,そのデータを制御部40におけるRAM43に記憶させておく。図8のベクトル図に示すように,この回転前の第2のアライメントマーク24yの位置ベクトルをM1,受光面60aの所要部位(中心)の位置ベクトルをW1とする。
【図8】

なお,ベクトルを表すときに,後記する数式中および図面中では文字の上に矢印(→)を付加するが,説明文中では表記制約の都合上,矢印を省略する。
【0026】ワーク取付け治具21が水平状態にあり光ファイバー60が鉛直姿勢にあるときに,受光光量の角度特性評価装置50の赤外線レーザ51を駆動し,レーザ光56を光ファイバー60の水平な受光面60aに対して入射させ,そのときの受光光量を受光光量検出装置54で検出し,受光光量記録装置55によって記録しておく。」

キ 「【0027】作業者は操作部44において光ファイバー60に与えるべき傾動角度θを入力し,β軸用ゴニオステージ15を起動する。入力された傾動角度θのデータはRAM43に格納される。制御部40はβ軸用ゴニオステージ15の駆動源(モーター)15aに対して駆動信号と傾動角度θの信号を送出する。駆動源15aが駆動され,旋回ブロック15bを回転中心Oyまわりに角度θだけ回転して停止する。この旋回ブロック15bの回転に伴ってワーク取付け治具21も回転中心Oyまわりに同一角度だけ回転し,ワーク取付け治具21に保持されている光ファイバー60も傾動角度θだけ傾動する。これに伴って,図7の部分拡大図に示すようにY軸方向側面23yに設けてある第2のアライメントマーク24yも回転中心Oyまわりに角度θだけ回転移動する。
【図7】

この回転移動後の第2のアライメントマークを24y′で表し,傾動後の受光面を60a′で表す。
【0028】旋回ブロック15bの回転中に第2の鏡筒31yおよび第2の撮像装置32yにより移動後の第2のアライメントマーク24y′を撮像しているが,旋回ブロック15bが角度θだけ回転し駆動源15aが停止した後に,画像処理装置33により移動後の第2のアライメントマーク24y′のX軸方向およびZ軸方向の座標を検出する。制御部40はその座標の信号を入力し,RAM43に格納する。図8において,移動後の第2のアライメントマーク24y′の位置ベクトルをM2で表し,傾動角度θの傾動後の光ファイバー60の受光面60aの中心の位置ベクトルをW2で表す。
【図8】

位置ベクトルM2は位置ベクトルM1が角度θだけ回転したものに相当し,位置ベクトルW2は位置ベクトルW1が角度θだけ回転したものに相当する。」

ク 「【0048】すでに述べたように,RAM43には回転開始前にあらかじめ,M1=(M1x,M1z)とW1=(W1x,W1z)と傾動角度θとが格納されており,回転後の測定によって,M2=(M2x,M2z)がRAM43に格納されるから,CPU41は(数9),(数10)の演算に基づいて,X軸方向戻し寸法ΔXとZ軸方向戻し寸法ΔZとを算出することができる。
【0049】この演算が終わると,CPU41は続いてX軸ステージ11の駆動源11aに対して駆動信号とX軸方向戻し寸法ΔXの信号を送出するとともに,Z軸ステージ13の駆動源13aに対して駆動信号とZ軸方向戻し寸法ΔZの信号とを送出する。すると,X軸ステージ11はX軸方向戻し寸法ΔXだけ戻り移動して停止し,Z軸ステージ13はZ軸方向戻し寸法ΔZだけ戻り移動して停止する。これにより,角度θだけ傾動した光ファイバー60の受光面60a′の中心は,光ファイバー60の傾動姿勢を保ったままで回転前の原点での受光面60aの中心と一致することになる。これが図6で点線で示す状態である。X軸方向とZ軸方向への戻し修正により,結果的に光ファイバー60はレーザ光56を入射させるべき所要部位をみかけ上,傾動中心として傾動されたことになる。
【0050】以上のようにして光ファイバー60を傾動させた状態において,再び,受光光量の角度特性評価装置50の赤外線レーザ51を駆動し,レーザ光56を光ファイバー60の受光面60aに対して入射させ,そのときの受光光量を受光光量検出装置54で検出し,受光光量記録装置55によって記録する。この場合,光ファイバー60が角度θの傾斜姿勢にあり受光面60aも水平面に対して角度θの傾斜姿勢になっているが,レーザ光56が入射する受光面60a上での部位は光ファイバー60を回転する前の受光面60aへの入射部位と全く同じである。すなわち,光ファイバー60の傾動にかかわらずレーザ光56の入射部位は不変であり,この部位を所要部位と呼んでいるわけであり,常に所要部位にレーザ光56を入射させて受光光量を検出しているのである。
要部位にレーザ光56を入射させて受光光量を検出しているのである。
【0051】実際上は,傾動角度θを少しずつシフトさせながら,上記と同様にして光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行い,そして受光光量を検出・記録することにより,光ファイバー60の受光光量の角度特性を計測する。」

ケ 「【0054】光ファイバーの受光光量の角度特性の測定の場合はα軸用ゴニオステージ16を駆動することはない。しかし,半導体モジュールなどのアライメントの場合には,α軸用ゴニオステージ16を駆動してワークをX-Y平面で回転させることがある。この場合,撮像系は第3の鏡筒31zおよび第3の撮像装置32zを用いて第3のアライメントマーク24zの位置を検出する。α軸用ゴニオステージ16の回転後の戻し移動は,X軸ステージ11とY軸ステージ12の駆動となる。」

(2) 甲1発明
ア 甲1発明に関する異議申立人の主張について
(ア)構成要件Aについて
異議申立人は,甲1発明の構成要件Aを,以下のとおり認定している。
「光ファイバー60と赤外線レーザ51及び集光レンズ52の光軸調整を行うための光軸調整を行う角度特性評価装置50」
しかしながら,甲1には,「光軸調整」という記載は存在しない。段落【0022】及び【0051】の記載に基づくと,角度特性評価装置50に関して,以下の事項が理解できる。
「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸とが一致し,かつ鉛直になるように設定され,傾動角度θを少しずつシフトさせながら,光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行い,そして受光光量を検出・記録することにより,光ファイバー60の受光光量の角度特性を計測する角度特性評価装置50」

(イ)構成要件E及びFについて
異議申立人は,図2から,「ワーク取付け治具21における光ファイバー60が載置される載置面と平行となる所定の方向をXと定義し,前記載置面と平行かつ前記Xと直交する方向をYと定義し,前記X及び前記Yに対して直交する方向をZと定義した際に,光ファイバー60の光軸が前記Zに沿うように前記ワーク取付け治具21に保持される」という点が読み取れると主張する(特許異議申立書の13頁14?19行)。
しかしながら,甲1には「光ファイバー60が載置される載置面」という記載は存在しない。【図2】及び段落【0026】の記載に基づくと,X,Y及びZ軸の定義に関して,以下の事項が理解できる。
「ワーク取付け治具21が水平状態にあるときのアーム部21bが沿っている方向をX軸と定義し,鉛直方向をZ軸と定義し,X軸及びZ軸に垂直な方向をY軸と定義する。」
また,段落【0018】及び【0026】の記載に基づくと,光ファイバー60の配置に関して,以下の事項が理解できる。
「ワーク保持部22は,光ファイバー60を着脱自在に保持し,ワーク取付け治具21が水平状態にあるとき光ファイバー60が鉛直姿勢にあり,光ファイバー60の受光面60aは水平である。」

(ウ)構成要件Hについて
異議申立人は,甲1発明の構成要件Hを,以下のとおり認定している。
「前記制御部40は,前記光ファイバー60の光軸が前記赤外線レーザ51及び集光レンズ52の光軸に対する傾動角度を変化させるように,前記ゴニオステージ10を制御する」
しかしながら,甲1には,「光ファイバー60の光軸」という記載は存在しない。【図5】及び段落【0051】の記載に基づくと,制御部40に関して,以下の事項が理解できる。
「制御部40は,傾動角度θを少しずつシフトさせながら光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行う」

イ 甲1発明
甲1には,以下の発明が記載されている(構成要件毎に,分説して記載する。以下「甲1発明」という。)。
「A 赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸とが一致し,かつ鉛直になるように設定され,傾動角度θを少しずつシフトさせながら,光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行い,そして受光光量を検出・記録することにより,光ファイバー60の受光光量の角度特性を計測する角度特性評価装置50であって,
B ゴニオステージ10に取り付けられるベース板21aと,ベース板21aから垂直に突設されたアーム部21bとからなり,光ファイバー60を着脱自在に保持するワーク取付け治具21,
C,D ワーク取付け治具21に保持されている光ファイバー60を傾動するために,ゴニオステージ10の駆動源(モーター)11a?16aを制御する制御部40とを,備え,
E ワーク取付け治具21が水平状態にあるときのアーム部21bが沿っている方向をX軸と定義し,鉛直方向をZ軸と定義し,X軸及びZ軸に垂直な方向をY軸と定義し,
F ワーク保持部22は,光ファイバー60を着脱自在に保持し,ワーク取付け治具21が水平状態にあるとき光ファイバー60が鉛直姿勢にあり,光ファイバー60の受光面60aは水平であり,
G X軸ステージ11,Y軸ステージ12,Z軸ステージ13,γ軸用θステージ14,β軸用ゴニオステージ15及びα軸用ゴニオステージ16を備える6軸のゴニオステージ10,
H 制御部40は,傾動角度θを少しずつシフトさせながら光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行い,
L 駆動源11a,13aが駆動信号に基づいてX軸ステージ11,Z軸ステージ13を駆動し,かつX軸方向戻し寸法ΔX,Z軸方向戻し寸法ΔZだけ戻り移動して停止することにより,角度θだけ傾動した光ファイバー60の受光面60a′の中心は,光ファイバー60の傾動姿勢を保ったままで回転前の原点での受光面60aの中心と一致することになる,
角度特性評価装置50。」

(3) 甲2について
甲2には,以下の事項が記載されている。
ア 「【0012】すなわち,本発明のユーセントリック・サイドエントリー2軸傾斜試料微動装置は,光軸と略直交する方向に進退可能でその中心軸上に位置する支点を中心に首振り運動及び回動可能な試料ホルダーと,試料ホルダー上に回動可能に設けられた試料台と,光軸に対する試料位置及び試料傾斜角を制御する手段と,演算手段とを有し,試料ホルダー上に試料ホルダーの中心軸と直交するx軸が設定され,光軸上に位置する観察点と前記支点とを結び光軸と直交する軸をy軸とし,x軸及びy軸に垂直な軸をz軸とし,光軸に垂直な平面に対するx軸の傾斜角をθx とし,x軸の回りに回動可能な試料台の試料ホルダー中心軸に対する傾斜角をθy とし,試料ホルダーの中心軸とx軸の交点を原点とする観察点の座標を(x,y,z)とするとき,傾斜角θy をθy_(1)からθy_(2)まで変化させたとき演算手段によって下式
Δy=y(1-cosθy_(2)/cosθy_(1))
Δz=y(sinθy_(2)-sinθy_(1))/cosθy_(1)
に基づいて観察像の逃げ補正量Δy及びΔzを算出し,前記試料位置制御手段によって観察点を座標(x,y-Δy,z-Δz)に移動することにより像の逃げを自動的に補正することを特徴とする。」

イ 「【0017】
【実施例】図1は,本発明の一実施例のハード構成ブロック図である。

1は電子線の光軸を表わし,2は鏡体の一部を表わしている。3は試料である。電子顕微鏡の一般的な操作は,操作パネル4により,ホストCPU10を介して行われる。ユーセントリック・サイドエントリー・ゴニオメータ・ステージ5,5’は,ゴニオメータ・ステージ制御用CPU9で各々制御される水平方向試料微動(x,y),垂直方向試料微動(z),及び試料2軸傾斜(θx,θy)の機能を備えている。6,6’はx,y方向の試料微動の操作部で,試料の視野探しや試料位置の設定等に使用される。7はz方向の試料微動の操作部である。8,8’は,試料2軸傾斜(θx,θy)の操作部である。
【0018】ゴニオメータステージ制御用のCPU9はホストCPU10と接続されており,電子顕微鏡の操作条件,例えば,倍率等にリンクして,試料微動や試料傾斜のスピードを自動的にコントロールするようなこともできる。ホストCPU10は,後述するような,試料傾斜時の試料移動を補正するための計算を迅速に行わしめるため16bitクラス以上のCPUが使用されている。」

ウ 「【0019】図6は,図5の光軸近傍の拡大図で,試料傾斜による試料位置のずれを定量的に説明するためのものである。
【図5】

【図6】

1は光軸である。3は試料,17はx方向の傾斜軸(θx 軸)であり,15はy方向の傾斜軸(θy 軸)である。試料微動のx軸は15に一致しており,y軸は17に一致している。厳密には,x軸15はy軸17と直交していないが,軸17と軸12のなす角θ_(0) は最大でも1°前後であり,軸15と軸17は直交しているとして扱っても支障はない。
【0020】図中,点(0,0)は試料微動x,yの原点である。ここからx=x_(01)(θx=0°),y=y_(01)(θy =0°)の位置を,傾斜角零度(θx =0°,θy =0°)で検鏡しているとする。即ち,光軸1とA点で交わっている点を検鏡している。A点のz_(0) は,z方向の制御で,(x_(0),y_(0))位置の焦点を合わせた時のzの値である。この状態からθx1,θy_(1)だけ試料を傾けたとすると,検鏡している位置は,B点に移動する。A点からの偏位は次式で与えられる。
【0021】
Δx=y_(01)sinθy_(1)・tanθx_(1) (1)
Δy=y_(01)(1-cosθy_(1)) (2)
Δz=y_(01)sinθy_(1) (3)
この偏位を補正してやれば,検鏡位置はA点に戻り,元の位置を検鏡することができる。補正後の座標(x_(1),y_(1),z_(1))は
x_(1)=x_(01)-Δx+(Δz)x=x_(01) (4)
y_(1)=y_(01)-Δy=y_(01)cosθy_(1) (5)
z_(1)=z_(01)-Δz=z_(01)-y0sinθy_(1) (6)
となる。(4)式中の(Δz)_(x) はzをΔz補正した時のx方向の成分であり,その値はΔxに等しく,従って,z方向でΔzの補正を行えば,x方向のΔxが自動的に補正されることになり,x方向の特別な補正は不要である。x_(01),y_(01)が一定で,傾斜角を変えるだけならば,傾斜角に応じて,(4)?(6)式で示される(x_(1),y_(1),z_(1))に座標を移せばよいが,現実には,傾斜角をθx,θy に保って,試料微動を働かせて,新しい試料位置を検鏡するのが普通である。」

(4) 甲3について
甲3には,以下の事項が記載されている。
ア 「【0014】
本発明の実施形態に係るカメラマウント組立装置は,図1および図2に示すように,矩形状の撮像面を有するイメージセンサ(以下CCDと称す)を取付けたセンサホルダ(以下CCDホルダと称す)10を撮像面を上方に向け露出させて固定支持するXY軸移動テーブル(以下,単にテーブルと称す)6と,上記撮像面のアオリおよび光軸位置に対するX,Y方向のずれを光学的に計測する三次元測定器1と,この三次元測定器1の計測値をもとに上記テーブル6をX,Y方向に移動させて上記撮像面の光軸位置合わせ調整を行う,X軸移動ステージ2およびY軸移動ステージ3を組み合わせたX,Y方向2軸直交移動ステージと,このX,Y方向2軸直交移動ステージに搭載され,上記三次元測定器1の計測値をもとに上記テーブル6をX,Y方向に傾斜させて上記撮像面のアオリを調整する,X軸傾斜ステージ5およびY軸傾斜ステージ4を組み合わせたX,Y2軸方向傾斜移動ステージと,上記テーブル6の上方においてマウントベース20を保持し,このマウントベース20を上記撮像面との間にフランジバックを保つ位置まで下降させて上記CCDホルダ10を上記マウントベース20に接着固定するZ軸移動ステージ7とを具備して構成される。
【図1】

【図2】



イ 「【0021】
工程1;CCD12が実装されたCCDホルダ10を撮像面12aを上方に向け露出させて,テーブル6に固定支持する。ここでは,テーブル6に固定したホルダ支持パレット9に,CCDホルダ10を取り付け,CCDホルダ10をテーブル6に固定支持する。
【0022】
工程2;三次元測定器1の光学測定部1bにより,CCDホルダ10に実装されたCCD12の撮像面12aのアオリを測定する。このアオリ測定は,図6に示すように,撮像面12aのX軸方向中心線上の両端付近の二点と前記撮像面のY軸方向中心線上の両端付近の二点をそれぞれ計測ポイントとして,距離を測定し,フランジ面に平行する基準面に対してのX軸,Y軸方向の傾きを三次元測定する。なお図6において,符号O3は撮像面12aの重心位置を示している。
【図6】

【0023】
工程3;上記工程2における三次元測定器1の計測値をもとに,X軸傾斜ステージ5およびY軸傾斜ステージ4を組み合わせたX,Y2軸方向傾斜移動ステージにより,テーブル6をX軸,Y軸方向に傾斜させて,撮像面12aのアオリを調整する。すなわち,撮像面12aがフランジ面と平行になるようにテーブル6の傾きを調整する。
【0024】
工程4;三次元測定器1の光学測定部1bにより,図7に示す,基準取付面21fと平行する基準面O2に対する,光軸と平行な垂直軸回りの傾きθ,および図8に示す,撮像面12aの光軸位置O1に対するX,Y方向のずれを計測する。
【図7】

【図8】

【0025】
工程5;上記工程4における三次元測定器1の計測値をもとに,撮像面12aの傾きθ,および光軸位置O1に対するX,Y方向のずれを調整する。ここで,傾きθに規定角以上のずれがあるときは,ホルダ支持パレット9のテーブル6への固定状態を一旦解除して傾きθに規定角以内に収め,ホルダ支持パレット9を再びテーブル6に固定する。なお,ここでは,傾きθの規定角以上のずれの発生頻度が低いことを前提に上記パレットの再固定による調整手段を適用しているが,実機では,X軸傾斜ステージ5とテーブル6の間にθ角調整ステージを設け,このθ角調整ステージによりθ角の調整を行っている。また,X軸移動ステージ2およびY軸移動ステージ3を組み合わせたX,Y方向2軸直交移動ステージにより,光軸位置O1に対するX,Y方向の調整する。
【0026】
工程6;テーブル6上において,該テーブル6にホルダ支持パレット9を介在して固定支持された上記調整後のCCDホルダ10をマウントベース20に接着固定する。この工程では,図5(b)および図9に示すように,テーブル6上のホルダ支持パレット9に固定支持されたCCDホルダ10の接着面15に,接着剤(例えば紫外線硬化型接着剤)Paを塗布する。
【図5】

【図9】

また,Z軸移動ステージ7の上昇位置にある昇降テーブル7aに固定されたブラケット8に,マウントベース20を取り付け,マウントベース20をブラケット8に固定支持する。その後,図10に示すように,マウントベース20を撮像面12aとの間にフランジバック(FB)を保つ位置まで矢印ed方向に下降させて,接着剤Paを硬化(af)させ,CCDホルダ10をマウントベース20に接着固定する。
【図10】



(5) 甲4について
甲4には,以下の事項が記載されている。
ア 「【0009】
次に,カメラモジュール20を組み立てる組立装置について説明する。
図4は組立装置40の構成を示す説明図である。
【図4】

組立装置40はフレーム42を有し,フレーム42には,撮像ユニット支持機構44,鏡筒支持機構46,第1,第2のレーザー光照射手段48,50,表示部52,テストパターン照射手段54が配設され,フレーム42の外部には第1,第2のディスプレイ56,58が設置されている。
フレーム42は,水平方向に延在する底壁4202と,該底壁4202の上方に間隔をおいて底壁4202と平行をなすように延在する上壁4204と,底壁4202の延在方向の両端から起立し上壁4204の両端に接続される2つの側壁4206とを有している。底壁4202の上面には底壁4202の延在方向と平行に延在するレール4208が設けられている。
撮像ユニット支持機構44は,レール4208上に配設された基台4402と,基台4402に連結された6軸調整ステージ4404(姿勢調整機構)と,6軸調整ステージ4404の上端に設けられ撮像ユニット26を着脱可能に保持する保持部4406とを有している。
6軸調整ステージ4404は保持部4406を,該保持部4406で保持した撮像ユニット26の受光面2402に沿って互いに直交するX軸方向およびY軸方向に,かつ,受光面2402に直交するZ軸方向に,かつ,受光面2402のZ軸回り方向(Z軸を中心として回転するθ方向)に,かつ,受光面2402の向きを変化させる方向に高い精度で移動できるように構成されている。
本実施例では,6軸調整ステージ4404は,XYステージ,回転ステージ,ゴニオステージを組み合わせることによって構成されており,各ステージに設けられたつまみを操作することによって,保持部4406に保持された撮像ユニット4406を,X軸方向,Y軸方向,Z軸方向,Z軸回り方向,受光面2402の向きを変化する方向のそれぞれに動かすことができるようになっており,このような6軸ステージ4404として市販品を使用可能である。
また,撮像ユニット支持機構44は基台4402がレール4208に沿って移動することにより,底壁4208の延在方向の一方寄りの箇所の第1の調整位置P1と,他方寄りの箇所の第2の調整位置P2との間を往復移動可能に構成されるとともに,不図示の保持機構により第1,第2の調整位置P1,P2のそれぞれの位置で移動不能に位置決め係止されるように構成されている。」

2 対比及び判断
(1) 対比
ア 構成要件Aについて
甲1発明は,「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸とが一致し,かつ鉛直になるように設定され,傾動角度θを少しずつシフトさせながら,光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行い,そして受光光量を検出・記録することにより,光ファイバー60の受光光量の角度特性を計測する角度特性評価装置50」である。
ここで,甲1発明の「光ファイバー60」は,本件特許発明1の「第1の光学部品」に相当する。また,甲1発明の「赤外線レーザ51」及び「集光レンズ52」は,本件特許発明1の「第2の光学部品」に相当する。
また,甲1発明の「傾動」及び「平面移動」と,本件特許発明1の「光軸調節」は,「相対移動」の点で共通する。また,甲1発明の「角度特性評価装置50」と本件特許発明1の「光軸調整装置」は,「相対移動装置」の点で共通する。
したがって,甲1発明の「角度特性評価装置50」と本件特許発明1の「光軸調整装置」は,「第1の光学部品と第2の光学部品との」相対移動を行うための相対移動「装置」の点で共通する。

イ 構成要件Bについて
甲1発明は,「ゴニオステージ10に取り付けられるベース板21aと,ベース板21aから垂直に突設されたアーム部21bとからなり,光ファイバー60を着脱自在に保持するワーク取付け治具21」を具備する。
ここで,甲1発明の「保持」と本件特許発明1の「載置」とは,「設置」の点において共通する。
したがって,甲1発明の「ワーク取付け治具21」と本件特許発明1の「載置ステージ」は,「前記第1の光学部品を」設置「する」設置「ステージ」の点で共通する。

ウ 構成要件C及びDについて
甲1発明は,「X軸ステージ11,Y軸ステージ12,Z軸ステージ13,γ軸用θステージ14,β軸用ゴニオステージ15及びα軸用ゴニオステージ16を備える6軸のゴニオステージ10」及び「ワーク取付け治具21に保持されている光ファイバー60を傾動するために,ゴニオステージ10の駆動源(モーター)11a?16aを制御する制御部40」を具備する。
ここで,甲1発明の「ゴニオステージ10」及び「駆動源(モーター)11a?16a」と本件特許発明1の「ステージ調整機構」は,「前記」設置「ステージの位置及び姿勢を調整するステージ調整機構」の点で共通する。
また,甲1発明の「制御部40」は,本件特許発明1の「コントローラ」に相当し,本件特許発明1の「前記ステージ調整機構を制御するコントローラ」の要件を満たす。

エ 構成要件Eについて
甲1発明は,「ワーク取付け治具21が水平状態にあるときのアーム部21bが沿っている方向をX軸と定義し,鉛直方向をZ軸と定義し,X軸及びZ軸に垂直な方向をY軸と定義し」ている。
ここで,甲1発明の「X軸」の方向,「Y軸」の方向及び「Z軸」の方向は,それぞれ,本件特許発明1の「X」,「Y」及び「Z」に相当する。また,甲1発明の「ワーク取付け治具21が水平状態にあるときのアーム部21bが沿っている方向」は,本件特許発明1の「所定の方向」に相当する。
そうしてみると,甲1発明の「ワーク取付け治具21が水平状態にあるときのアーム部21bが沿っている方向をX軸と定義し,鉛直方向をZ軸と定義し,X軸及びZ軸に垂直な方向をY軸と定義し」ている点と,本件特許発明1の「前記載置ステージにおける前記第1の光学部品が載置される載置面と平行となる所定の方向をXと定義し,前記載置面と平行且つ前記Xと直交する方向をYと定義し,前記X及び前記Yに対して直交する方向をZと定義し,前記X及び前記Yと平行となる面をX-Y平面と定義し」ている点は,「前記」設置「ステージにおける前記第1の光学部品が」設置「される」設置「面と平行となる所定の方向をXと定義し,前記」設置「面と平行且つ前記Xと直交する方向をYと定義し,前記X及び前記Yに対して直交する方向をZと定義し,前記X及び前記Yと平行となる面をX-Y平面と定義し」ている点で,共通する。

オ 構成要件Fについて
甲1発明の「ワーク保持部22は,光ファイバー60を着脱自在に保持し,ワーク取付け治具21が水平状態にあるとき光ファイバー60が鉛直姿勢にあり,光ファイバー60の受光面60aは水平であ」る。
したがって,甲1発明において,「ワーク取付け治具21が水平状態にあるとき」,甲1発明と本件特許発明1は,「前記第1の光学部品は,光軸が前記Zに沿うように前記」設置「ステージに」設置「され」ている点で共通する。

カ 構成要件Gについて
甲1発明は,「X軸ステージ11,Y軸ステージ12,Z軸ステージ13,γ軸用θステージ14,β軸用ゴニオステージ15及びα軸用ゴニオステージ16を備える6軸のゴニオステージ10」を具備する。
ここで,甲1発明の「X軸ステージ11」,「Y軸ステージ12」及び「Z軸ステージ13」は,本件特許発明1の「シフトユニット」に相当する。また,甲1発明の「γ軸用θステージ14」,「β軸用ゴニオステージ15」及び「α軸用ゴニオステージ16」は,本件特許発明の「チルトユニット」に相当する。
したがって,甲1発明の「ゴニオステージ10」と本件特許発明1の「ステージ調整機構」は,「前記ステージ調整機構は,前記」設置「ステージを前記X-Y平面の平面方向,かつ前記X-Y平面に垂直となるZ軸方向へ移動させるシフトユニットと,前記」設置「ステージを前記X-Y平面に平行するX軸周り,及び前記X-Y平面に平行し且つ前記X軸に直交するY軸周りに揺動させるチルトユニットとを有し」ている点で共通する。

キ 構成要件Hについて
甲1発明の「制御部40は,傾動角度θを少しずつシフトさせながら光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行」う。
したがって,甲1発明の「制御部40」と本件特許発明1の「コントローラ」は,「前記コントローラは」「前記シフトユニット及び前記チルトユニットを制御し」ている点で共通する。

ク 構成要件Lについて
甲1発明は,「駆動源11a,13aが駆動信号に基づいてX軸ステージ11,Z軸ステージ13を駆動し,かつX軸方向戻し寸法ΔX,Z軸方向戻し寸法ΔZだけ戻り移動して停止することにより,角度θだけ傾動した光ファイバー60の受光面60a′の中心は,光ファイバー60の傾動姿勢を保ったままで回転前の原点での受光面60aの中心と一致することになる」構成を具備する。
ここで,引用発明の「受光面60aの中心」は,本件特許発明1の「基準位置」に相当する。
したがって,甲1発明の「駆動源11a,13aが駆動信号に基づいてX軸ステージ11,Z軸ステージ13を駆動し,かつX軸方向戻し寸法ΔX,Z軸方向戻し寸法ΔZだけ戻り移動して停止することにより,角度θだけ傾動した光ファイバー60の受光面60a′の中心は,光ファイバー60の傾動姿勢を保ったままで回転前の原点での受光面60aの中心と一致することになる」構成と,本件特許発明の「前記X軸回転制御値及び前記Y軸回転制御値に基づいて前記チルトユニットが前記載置ステージを揺動し,かつ,前記Xチルト時復帰制御値と前記Yチルト時復帰制御値に基づいて前記シフトユニットが前記載置ステージを前記X-Y平面方向又は前記Z軸方向に移動させることで,前記X軸チルト半径及び前記Y軸チルト半径の前記揺動端が前記基準位置でほぼ静止したまま,前記X軸周りの補正角度及び前記Y軸周りの補正角度によるチルト制御を行う」構成は,「前記チルトユニットが前記」設置「ステージを揺動し,かつ,」「前記シフトユニットが前記」設置「ステージを前記X-Y平面方向又は前記Z軸方向に移動させることで」「基準位置でほぼ静止したまま」「チルト制御を行う」点で共通する。

(2) 一致点
本件特許発明1と甲1発明は,以下の構成において一致する。
「A 第1の光学部品と第2の光学部品との相対移動を行うための相対移動装置であって,
B 前記第1の光学部品を設置する設置ステージと,
C 前記設置ステージの位置及び姿勢を調整するステージ調整機構と,
D 前記ステージ調整機構を制御するコントローラとを,備え,
E 前記設置ステージにおける前記第1の光学部品が設置される設置面と平行となる所定の方向をXと定義し,前記設置面と平行且つ前記Xと直交する方向をYと定義し,前記X及び前記Yに対して直交する方向をZと定義し,前記X及び前記Yと平行となる面をX-Y平面と定義し,
F 前記第1の光学部品は,光軸が前記Zに沿うように前記設置ステージに設置され,
G 前記ステージ調整機構は,
前記設置ステージを前記X-Y平面の平面方向,かつ前記X-Y平面に垂直となるZ軸方向へ移動させるシフトユニットと,
前記設置ステージを前記X-Y平面に平行するX軸周り,及び前記X-Y平面に平行し且つ前記X軸に直交するY軸周りに揺動させるチルトユニットとを有し,
H 前記コントローラは,前記シフトユニット及び前記チルトユニットを制御し,
L 前記チルトユニットが前記設置ステージを揺動し,かつ,前記シフトユニットが前記設置ステージを前記X-Y平面方向又は前記Z軸方向に移動させることで,基準位置でほぼ静止したまま,チルト制御を行う
相対移動装置。」

(3) 相違点
本件特許発明1と甲1発明は,以下の点で相違する。
ア 相違点1
本件特許発明1は,第1の光学部品と第2の光学部品との「光軸調節を行うための光軸調整」装置であるのに対して,甲1発明は,「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸とが一致し,かつ鉛直になるように設定され,傾動角度θを少しずつシフトさせながら,光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行い,そして受光光量を検出・記録することにより,光ファイバー60の受光光量の角度特性を計測する角度特性評価装置50」である点。

イ 相違点2
本件特許発明1の「第1の光学部品」は,(載置ステージに)「載置」されるのに対し,甲1発明の「光ファイバー60」は,(ワーク取付け治具21に)「保持」されるものである点。

ウ 相違点3
本件特許発明1の「コントローラ」は,「前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行となるように,」前記シフトユニット及び前記チルトユニットを制御し,「前記第1の光学部品の基準位置から前記X軸までの長さであるX軸チルト半径,及び前記第1の光学部品の基準位置から前記Y軸までの長さであるY軸チルト半径の情報を保持し,前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行となるための前記X軸周りの補正角度,及び前記Y軸周りの補正角度を算出するチルト補正条件算出部と,前記チルト補正条件算出部が算出した前記X軸周りの補正角度及び前記X軸チルト半径を利用して,前記チルトユニットを前記X軸周りに揺動させるためのX軸回転制御値と,前記X軸周りの補正角度で前記チルトユニットを揺動させる際に該X軸チルト半径の揺動端が前記Y軸方向又は前記Z軸方向に移動するシフト量を相殺するために,前記シフトユニットを前記Y軸方向又は前記Z軸方向に移動させるXチルト時復帰制御値と,の双方を算出するXチルト値変換手段と,前記チルト補正条件算出部が算出した前記Y軸周りの補正角度及び前記Y軸チルト半径を利用して,前記チルトユニットを前記Y軸周りに揺動させるためのY軸回転制御値と,前記Y軸周りの補正角度で前記チルトユニットを揺動させる際に該Y軸チルト半径の揺動端が前記X軸方向又は前記Z軸方向に移動するシフト量を相殺するために前記シフトユニットを前記X軸方向又は前記Z軸方向に移動させるYチルト時復帰制御値と,の双方を算出するYチルト値変換手段と」を有するのに対して,甲1発明は,この構成を具備するとはいえない点。
そして,本件特許発明1の「光軸調整装置」は,「前記X軸回転制御値及び前記Y軸回転制御値に基づいて」前記チルトユニットが前記載置ステージを揺動し,かつ,「前記Xチルト時復帰制御値と前記Yチルト時復帰制御値に基づいて」前記シフトユニットが前記載置ステージを前記X-Y平面方向又は前記Z軸方向に移動させることで,「前記X軸チルト半径及び前記Y軸チルト半径の前記揺動端が前記」基準位置でほぼ静止したまま,「前記X軸周りの補正角度及び前記Y軸周りの補正角度による」チルト制御を行うものであるのに対し,甲1発明は,「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸とが一致し,かつ鉛直になるように設定され,傾動角度θを少しずつシフトさせながら,光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行い,そして受光光量を検出・記録することにより,光ファイバー60の受光光量の角度特性を計測する角度特性評価装置50」である点。

(4) 判断
相違点3に関して,本件特許発明1の「コントローラ」は,少なくとも,「前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行となるための前記X軸周りの補正角度,及び前記Y軸周りの補正角度を算出するチルト補正条件算出部」(以下「チルト補正条件算出部」という。)を有するところ,甲1発明は,「チルト補正条件算出部」の構成を具備せず,また,本件特許の優先日より前において,当業者が,甲1発明において,「チルト補正条件算出部」の構成を採用することが容易であったとはいえない。
その理由は以下のとおりである。

ア 甲1の段落【0022】には,「図6はワーク取付け治具21を介してゴニオステージ10に取り付けられた光ファイバー60の受光光量の角度特性評価装置50の概略的な構成を示す。51は赤外線レーザ,52は集光レンズ,53は検査用光ファイバー,54は受光光量検出装置,55は受光光量記録装置である。」と記載され,続けて,「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸とが一致し,かつ鉛直になるように設定されている。赤外線レーザ51から出射され集光レンズ52で集光されたレーザ光56を光ファイバー60の受光面60a上の任意の特定位置である所要部位(これは中心であってもよいが,そうでなくてもよい)に焦点を結ぶように入射させる。」と記載されている。
甲1の上記記載からみて,甲1発明の「角度特性評価装置50」は,「光ファイバー60」を取り付けただけで,「光ファイバー60の光軸」と「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸」が一致するように,その機械的な配置があらかじめ調整されている(ワーク取付け治具21が水平状態にあるときの,甲1の【図3】の符号22が指し示す貫通孔の中心が,光軸に一致するようにあらかじめ調整されている)と考えるのが妥当である。
したがって,甲1には,甲1発明の制御部40(本件特許発明1のコントローラ)において,第1の光学部品の光軸と第2の光学部品の光軸が平行でないことを前提に,これを平行とするべく「前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行となるように,」前記シフトユニット及び前記チルトユニットを制御する構成(以下,括弧付きで「平行制御手段」という。)を採用すること,その際,「チルト補正条件算出部」の構成を採用することについて,記載又は示唆があるとはいえない。

イ 甲1発明は,「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸とが一致し,かつ鉛直になるように設定され,傾動角度θを少しずつシフトさせながら,光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行い,そして受光光量を検出・記録することにより,光ファイバー60の受光光量の角度特性を計測する角度特性評価装置50」であるところ,甲1発明の「ワーク保持部22は,光ファイバー60を着脱自在に保持し,ワーク取付け治具21が水平状態にあるとき光ファイバー60が鉛直姿勢にあり,光ファイバー60の受光面60aは水平であり」,甲1発明の「制御部40は,傾動角度θを少しずつシフトさせながら光ファイバー60を傾動し,受光面60aの中心をレーザ光56の入射部位に戻す平面移動を行」うものである。すなわち,甲1発明の制御部40は,「前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行」となっている状態から,「前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行」とならない状態(角度θだけ傾動した状態)に制御するための「制御部40」である。
そうしてみると,甲1発明において,「光ファイバー60」(第1の光学部品)の「受光面60aに垂直かつその中心を通る線」(以下「光ファイバー60の光軸」という。)は,「制御部40」が制御する前に,「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸」と平行となっている。
したがって,甲1発明において「平行制御手段」を採用する必要はなく,また,「前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行となるための前記X軸周りの補正角度,及び前記Y軸周りの補正角度を算出するチルト補正条件算出部」を具備する必要もなく,これら構成を採用することについて,動機付けが存在しない。

ウ ところで,上記アでも述べたとおり,甲1発明の「角度特性評価装置50」は,「光ファイバー60」を取り付けただけで,「光ファイバー60の光軸」と「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸」が一致するように,その機械的な配置があらかじめ調整されていると考えるのが妥当であるところ,「あらかじめ調整」するためには,しかるべき調整機構が必要である。また,本件特許発明1の構成を後知恵として踏まえるならば,この調整機構として,「制御部40」が「チルト補正条件算出部」のような構成を設けることも,あり得るかもしれない。
しかしながら,甲1発明には,「制御部40」が制御する前に,どのようにして,「光ファイバー60の光軸」と「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸」を平行に調整しているのか,記載が存在しない。
したがって,甲1には,甲1発明の「制御部40」が「平行制御手段」及び「チルト補正条件算出部」を具備することを示唆する記載が存在するとはいえない。

エ 念のために,甲1発明において,「光ファイバー60の光軸」と「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸」が一致するように,その機械的な配置をあらかじめ調整する方法についても検討すると,以下のとおりとなる。
甲1の段落【0027】には,「作業者は操作部44において光ファイバー60に与えるべき傾動角度θを入力し,β軸用ゴニオステージ15を起動する。」と記載されている。すなわち,甲1発明では,「少しずつシフトさせながら」(段落【0051】),すなわち,何回も繰り返し行われる傾斜角度θの変更ですら,作業者の操作指示により行われている。
そうしてみると,甲1発明において,あらかじめ1回行えば良いだけである「光ファイバー60の光軸」と「赤外線レーザ51の出射軸と集光レンズ52の光軸」を一致させる調整作業については,なおさら,作業者の手作業(操作部44における入力等)により行われていると考えるのが妥当である。
したがって,甲1には,甲1発明において「平行制御手段」及び「チルト補正条件算出部」の構成を採用することについて,記載又は示唆があるといえないばかりか,むしろ,これを阻害する記載があるといえる。

オ 以上のとおりであるから,本件特許の優先日より前において,甲1発明において,「平行制御手段」及び「チルト補正条件算出部」の構成を採用することが,容易であったとはいえない。
そして,甲1発明において,「チルト補正条件算出部」の構成を採用することが容易であったとはいえないからには,「チルト補正条件算出部」の構成を前提とする構成である,「前記チルト補正条件算出部が算出した前記X軸周りの補正角度及び前記X軸チルト半径を利用して,前記チルトユニットを前記X軸周りに揺動させるためのX軸回転制御値と,前記X軸周りの補正角度で前記チルトユニットを揺動させる際に該X軸チルト半径の揺動端が前記Y軸方向又は前記Z軸方向に移動するシフト量を相殺するために,前記シフトユニットを前記Y軸方向又は前記Z軸方向に移動させるXチルト時復帰制御値と,の双方を算出するXチルト値変換手段」(以下「Xチルト値変換手段」という。)の構成及び「前記チルト補正条件算出部が算出した前記Y軸周りの補正角度及び前記Y軸チルト半径を利用して,前記チルトユニットを前記Y軸周りに揺動させるためのY軸回転制御値と,前記Y軸周りの補正角度で前記チルトユニットを揺動させる際に該Y軸チルト半径の揺動端が前記X軸方向又は前記Z軸方向に移動するシフト量を相殺するために前記シフトユニットを前記X軸方向又は前記Z軸方向に移動させるYチルト時復帰制御値と,の双方を算出するYチルト値変換手段」(以下「Yチルト値変換手段」という。)の構成を採用することも,容易であったとはいえない。また,「前記X軸回転制御値及び前記Y軸回転制御値に基づいて前記チルトユニットが前記載置ステージを揺動し,かつ,前記Xチルト時復帰制御値と前記Yチルト時復帰制御値に基づいて前記シフトユニットが前記載置ステージを前記X-Y平面方向又は前記Z軸方向に移動させることで,前記X軸チルト半径及び前記Y軸チルト半径の前記揺動端が前記基準位置でほぼ静止したまま,前記X軸周りの補正角度及び前記Y軸周りの補正角度によるチルト制御を行う」構成にも到らない。

カ なお,仮に,甲1発明において,「チルト補正条件算出部」の構成を採用したとしても,甲1発明において,「Xチルト値変換手段」及び「Yチルト値変換手段」の構成を採用するとは限らない。
すなわち,「チルト補正条件算出部」により「前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行となるための前記X軸周りの補正角度,及び前記Y軸周りの補正角度を算出」したと仮定しても,甲1発明が採り得る手段には,(A)まず,「前記第1の光学部品の光軸が前記第2の光学部品の光軸と平行となるための前記X軸周りの補正角度,及び前記Y軸周りの補正角度」に基づいて,X軸のチルト及びY軸のチルトを修正し(光ファイバー60の受光面60aを水平状態にし),(B)次に,光ファイバー60の受光面60aの中心が集光レンズ52の光軸(赤外線レーザ51の出射軸)上に移動するように,X軸ステージ11及びY軸ステージ12を制御する構成(前記X軸チルト半径及び前記Y軸チルト半径の前記揺動端が前記基準位置でほぼ静止したまま,前記X軸周りの補正角度及び前記Y軸周りの補正角度によるチルト制御を行わない構成)が考えられる。
前記エで述べたとおり,甲1に記載された「角度特性評価装置50」は,作業員の操作指示によりゴニオステージ10を制御するものである。したがって,仮に,甲1発明において,「チルト補正条件算出部」の構成を採用したとしても,その後は,算出されたチルト補正値を,作業員がゴニオステージ10に対して操作指示する(例えば上記(A)及び(B)の手順のように操作指示する)と考えるのが妥当である。

キ 甲2?4について
(ア)甲2について
甲1発明において,「平行制御手段」及び「チルト補正条件算出部」の構成を採用することについて,甲1に記載又は示唆があるといえないからには,甲1発明に対して,甲2記載事項を組み合わせることについても,甲1に記載又は示唆があるとはいえない。

なお,甲2には,傾斜角θy をθy_(1)からθy_(2)まで変化させたとき,演算手段によって観察像の逃げ補正量Δy及びΔzを算出し,前記試料位置制御手段によって観察点を座標(x,y-Δy,z-Δz)に移動することにより像の逃げを自動的に補正するという事項が開示されている。
すなわち,甲2に記載された事項は,傾斜角θが既知であることを前提として,観察像の逃げ補正量Δy及びΔzを算出する技術であるから,仮に,甲1発明と甲2記載事項を組み合わせるとしても,甲2に記載された事項は,制御部40が傾斜角度θを変化させたときに,X軸方向戻し寸法ΔX及びZ軸方向戻し寸法ΔZを算出する構成において組み合わせられるべき技術である。
したがって,仮に,甲1発明と甲2記載技術を組み合わせるとしても,本件特許発明1の構成には到らない。

(イ)甲3について
異議申立人は,本件特許発明1については,甲1発明と甲3記載技術の組合せに基づく容易推考を主張していないところではあるが,念のため,甲3記載技術についても検討する。
甲1発明において,「平行制御手段」及び「チルト補正条件算出部」の構成を採用することについて,甲1に記載又は示唆があるといえないからには,甲1発明に対して,甲3記載事項を組み合わせることについても,甲1に記載又は示唆があるとはいえない。

なお,甲3には,工程3においてアオリを調整して(段落【0023】),その後,工程5において撮像面12aの(面内方向の)傾きθ及びX,Y方向のずれを調整する(段落【0025】)という,本件特許発明1とは異なる構成が開示されている。
したがって,仮に,甲1発明と甲3記載技術を組み合わせたとしても,本件特許発明1とは異なる構成となるはずであるから,本件特許発明1の構成には到らない。

(ウ)甲4について
異議申立人は,本件特許発明1については,甲1発明と甲4記載技術の組合せに基づく容易推考を主張していないところではあるが,念のため,甲4記載技術についても検討する。
甲1発明において,「平行制御手段」及び「チルト補正条件算出部」の構成を採用することについて,甲1に記載又は示唆があるといえないからには,甲1発明に対して,甲4記載事項を組み合わせることについても,甲1に記載又は示唆があるとはいえない。

なお,甲4には,【図5】?【図9】の手順によって,レンズ鏡筒23と撮像ユニット26の光軸調整を行うという,本件特許発明1とは異なる構成が開示されている。
仮に,甲1発明と甲4記載技術を組み合わせるとしても,本件特許発明1とは異なる構成となるはずであるから,本件特許発明1の構成には到らない。
【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


(5) 小括
本件特許発明1は,甲1発明及び甲2記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるということができない。
また,仮に,甲3記載事項及び甲4記載事項も考慮したとしても,本件特許発明1は,甲1発明及び甲2?4記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるということができない。

本件特許発明2?6は,本件特許発明1をさらに減縮したものである。
同様の理由により,本件特許発明2?6は,甲1発明及び甲2?4記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるということができない。

第3 むすび
したがって,特許異議申立の理由及び証拠によっては,本件特許1?6を取り消すことはできない。
また,他に本件特許1?6を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-03-03 
出願番号 特願2014-192401(P2014-192401)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小倉 宏之  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 樋口 信宏
鉄 豊郎
登録日 2015-05-22 
登録番号 特許第5747396号(P5747396)
権利者 アキム株式会社
発明の名称 光軸調整装置  
代理人 横田 一樹  
代理人 佐原 雅史  

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