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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A63F |
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管理番号 | 1311881 |
異議申立番号 | 異議2015-700307 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-12-14 |
確定日 | 2016-03-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5735059号「スロットマシン」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5735059号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5735059号の請求項1に係る特許についての出願は、平成21年2月16日に出願した特願2009-033011号の一部を平成25年8月6日に特許出願したものであり、平成27年4月24日に特許権の設定登録がされ、平成27年12月14日に、その特許に対し、特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第5735059号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(A?Lは、特許異議申立人の主張に従って、当審で付与した。)。 【請求項1】 A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、 B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 C 入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、 D 可変表示部における識別情報の配列位置別に滑りコマ数を圧縮して規定した複数種類の圧縮滑りコマ数テーブルを記憶する圧縮滑りコマ数テーブル記憶手段と、 E 前記事前決定手段の決定に基づいて、前記圧縮滑りコマ数テーブルを可変表示部別に選択する圧縮滑りコマ数テーブル選択手段と、 F 前記圧縮滑りコマ数テーブル選択手段により選択された圧縮滑りコマ数テーブルを展開して滑りコマ数テーブルを得る展開手段と、 G 前記複数の可変表示部の各々に対応して設けられ、可変表示部の変動表示を停止させるための停止操作手段と、 H 前記停止操作手段の停止操作を検出する停止操作検出手段と、 I 全可変表示部の変動表示を開始させた後、前記停止操作手段の停止操作が検出されたときに、停止操作に対応する可変表示部の変動表示を停止させることにより、当該可変表示部の表示結果を導出させる制御を行なう導出制御手段とを含み、 J 前記展開手段は、前記停止操作検出手段によって所定の停止操作が検出されるまでに、当該所定の停止操作時に用いる滑りコマ数テーブルを展開し、 K 前記導出制御手段は、前記展開手段により展開された滑りコマ数テーブルに基づいて表示結果を導出させるテーブル制御を実行可能であり、 L 前記圧縮滑りコマ数テーブルは、最小滑りコマ数に向かって滑りコマ数が減少するパターンを構成する複数の滑りコマ数の組合せを一単位データに圧縮することにより得られる圧縮データを含んで構成されている、スロットマシン。 第3 申立理由の概要 特許異議申立人は、主たる証拠として下記甲第1号証及び従たる証拠として下記甲第2号証を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 <証拠方法> 甲第1号証:特開2008-6121号公報 甲第2号証:特開2007-307315号公報 第4 甲第1号証及び甲第2号証の記載 (1)甲第1号証には、特許異議申立書の第8頁第6行目?第25頁第5行目に記載のとおりの事項が記載されており、これらの事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。 「外周に描かれた複数の図柄を回転表示可能な3つのリール21a?21cを備え、 リール21a?21cを回転表示した後、リールの回転を停止することで停止図柄を導出し、リール21a?21cの停止図柄が所定の入賞配列であるときは入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 入賞の発生を許容するか否かを決定する内部抽選手段41-1と、 リールにおける図柄番号別にスベリコマ数を圧縮して規定した複数種類のスベリコマ数圧縮データを記憶する記憶手段と、 内部抽選手段41-1の決定に基づいて、スベリコマ数圧縮データをリール別に選択するテーブル制御手段41-3と、 選択手段により選択されたスベリコマ数圧縮データを展開してスベリコマ数テーブルを得るデータ展開手段41-2と、 3つのリール21a?21cの各々に対応して設けられ、リールの回転表示を停止させるためのストップボタン15a,15b,15cと、 ストップボタン15a,15b,15cの押下操作に対応するストップ信号を入力するCPU41と(0052)、 3つのリール21a?21cの回転表示を開始させた後、ストップボタン15a,15b,15cの押下操作が検出されたときに、押下操作に対応するリールの回転表示を停止させることにより、当該リールの停止図柄を導出させる制御を行なうCPU41とを含み、 データ展開手段41-2は、ストップボタン15a,15b,15cによって所定の押下操作が検出された後に、当該所定の押下操作時に用いるスベリコマ数圧縮データを展開し、 導出を制御するCPU41は、データ展開手段41-2により展開されたスベリコマ数テーブルに基づいて停止図柄を導出させるテーブル制御を実行可能である、スロットマシン。」 (2)甲第2号証には、特許異議申立書の第26頁第16行目?第28頁第10行目に記載のとおりの事項が記載されている。 第5 当審の判断 (1)対比 本件特許発明と甲1発明を対比すると、甲1発明における「リール21a?21c」、「内部抽選手段41-1」、「スベリコマ数圧縮データ」、「記憶手段」、「テーブル制御手段41-3」、「データ展開手段41-2」、「ストップボタン15a,15b,15c」は、本件特許発明における「可変表示部」、「事前決定手段」、「圧縮滑りコマ数テーブル」、「圧縮滑りコマ数テーブル記憶手段」、「圧縮滑りコマ数テーブル選択手段」、「展開手段」、「停止操作手段」にそれぞれ相当する。 特許異議申立人は、甲第1号証の「(スベリコマ数の)0」、「スベリコマ数の組合せ(3,2,1,0)」,及び、「図11の5バイト目」が、本件特許発明における「最小滑りコマ数」、「滑りコマ数が減少するパターンを構成する複数の滑りコマ数の組合せ」、「一単位データ」にそれぞれ相当する旨を主張している(特許異議申立書第29頁第24行目?同頁第29行目)。 しかしながら、甲第1号証の【0090】-【0091】には「スベリコマ数圧縮データは、図柄番号20のスベリコマ数データ、図柄番号19から0までのスベリ指定データ、特殊スベリコマ数指定データを組み合わせて生成する。例えば、(a1)から(a4)までの方法で求めたスベリコマ数データ、スベリ指定データ、特殊スベリコマ数指定データを次のように並べる。・・・このスベリコマ数圧縮データを、図12に示す。同図に示すように、スベリコマ数圧縮データは、1バイト目から5バイト目までをスベリ指定データで構成し、6バイト目の上位4ビットをスベリコマ数データで、6バイト目の下位4ビットを特殊スベリコマ数指定データでそれぞれ構成して、6バイト(48ビット)で表現可能としている。」と記載されている。このことから、「図11の5バイト目」のデータは、図柄番号19から16までの各スベリコマ数を変換したスベリ指定データを並べたものに過ぎず、図柄番号19から16までのスベリコマ数の組合せを「一単位」として圧縮したものではないから、甲第1号証における、「図11の5バイト目」は、本件特許発明の「一単位データ」に相当しない。 また、甲第1号証の【0083】-【0087】には、スベリコマ数が「0」の場合、スベリ指定データを「00」とし、スベリコマ数が、前回の図柄番号のスベリコマ数に1加えた数である場合、スベリ指定データを「01」とし、スベリコマ数が、前回の図柄番号のスベリコマ数に1加えた数ではない場合、特殊スベリAを指定するスベリ指定データ「10」、又は、特殊スベリBを指定するスベリ指定データ「11」のいずれかに変換することで、図柄番号19から0までの各スベリコマ数を2ビットのスベリ指定データに変換すると記載されているが、本件特許発明の「最小滑りコマ数に向かって滑りコマ数が減少するパターンを構成する複数の滑りコマ数の組合せを一単位データに圧縮する」という構成に相当する記載はない。 したがって、甲1発明は、本件特許発明の「最小滑りコマ数に向かって滑りコマ数が減少するパターンを構成する複数の滑りコマ数の組合せを一単位データに圧縮する」という構成Lに相当する構成を有するものではない。 よって、本件特許発明と甲1発明とは、本件特許発明の構成A?Lのうち、構成J及び構成Kにおいて相違し、残余の点で一致する。 (2)判断 ア 構成Jについて 甲第2号証の【0296】には「また、本実施例では、テーブル方式によって停止制御を行う場合に、停止操作が有効となる前、すなわち停止操作が検出される前に、滑りコマ数データに登録された滑りコマ数を展開し、・・・停止操作が検出された際には、仮想滑りコマテーブルを参照し、該当する停止操作位置の滑りコマ数を取得して停止制御を行うようになっており」と記載されている。 これより、甲第2号証には、本件特許発明の「所定の停止操作が検出されるまでに、当該所定の停止操作時に用いる滑りコマ数テーブルを展開」するという、構成Jに相当する構成が記載されている。 イ 構成Lについて 甲第1号証には、上記(1)において述べたように、【0083】-【0087】に、スベリコマ数が「0」の場合、スベリ指定データを「00」とし、スベリコマ数が、前回の図柄番号のスベリコマ数に1加えた数である場合、スベリ指定データを「01」とし、スベリコマ数が、前回の図柄番号のスベリコマ数に1加えた数ではない場合、特殊スベリAを指定するスベリ指定データ「10」、又は、特殊スベリBを指定するスベリ指定データ「11」のいずれかに変換することで、図柄番号19から0までの各スベリコマ数を2ビットのスベリ指定データに変換する圧縮方法が記載されている。このことから、甲第1号証には、「各スベリコマ数」を一単位として「2ビットのスベリ指定データ」に変換(圧縮)することについては記載されているが、「最小滑りコマ数に向かって滑りコマ数が減少するパターンを構成する複数の滑りコマ数の組合せ」を一単位として「一単位データ」に圧縮する点については記載も示唆もされていない。 甲第2号証には、【0117】に「そして、滑りコマ数データには、領域番号別の滑りコマ数が所定のルールで圧縮して格納されており、滑りコマ数データを展開することによって領域番号別の滑りコマ数を取得できるようになっている。」と記載されているものの、具体的な圧縮方法についての記載はない。これより、甲第2号証には、「最小滑りコマ数に向かって滑りコマ数が減少するパターンを構成する複数の滑りコマ数の組合せを一単位データに圧縮する」という、構成Lに相当する構成についての記載はない。 そして、本件特許発明は「最小滑りコマ数に向かって滑りコマ数が減少するパターンを構成する複数の滑りコマ数の組合せを一単位データに圧縮する」との構成を備えることにより、停止制御に必要な記憶容量を削減しつつも、ゲームにおいて効果的なシーンにおける出目の多様性を確保できるという効果を奏するものであり、この効果は甲1発明及び甲第2号証の記載事項から予測しうるものとはいえない。 (3)まとめ 上記(1)及び(2)において検討したように、本件特許発明の構成Lは、甲1発明及び甲2号証の記載事項に基づいて、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 よって、本件特許発明は、上記甲1発明及び甲第2号証の記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のことから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-03-07 |
出願番号 | 特願2013-163370(P2013-163370) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A63F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 東 治企 |
特許庁審判長 |
本郷 徹 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 山崎 仁之 |
登録日 | 2015-04-24 |
登録番号 | 特許第5735059号(P5735059) |
権利者 | 株式会社三共 |
発明の名称 | スロットマシン |
代理人 | 関谷 三男 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |
代理人 | 渡辺 敏章 |
代理人 | 頭師 教文 |