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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C03B |
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管理番号 | 1311885 |
異議申立番号 | 異議2015-700046 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-09-30 |
確定日 | 2016-03-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5694935号「ガラスを得るための方法及び得られたガラス」の請求項1?11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5694935号の請求項1?11に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5694935号の請求項1?11に係る特許についての出願は、2009年9月1日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 2008年9月1日(フランス)、2009年2月27日(フランス)、2009年6月26日(韓国))として特許出願され、平成27年2月13日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 小川 鐵夫により平成27年9月30日に特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 特許第5694935号の請求項1?11に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、「本件発明1」?「本件発明11」という。)。 3.申立理由の概要 特許異議申立人 小川 鐵夫は、証拠として甲第1?5号証(以下、「刊行物1」?「刊行物5」という。)を提出し、請求項1?11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1?11に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 刊行物1:特開平6-239618号公報 刊行物2:国際公開第2001/066477号 刊行物3:ガラス工学ハンドブック、朝倉書店、1999年7月5日 初版第1刷発行、第304-307、316-317、358-361頁 刊行物4:特開平6-191881号公報 刊行物5:米国特許第4599100号明細書 4.刊行物の記載 (1)刊行物1には、その【特許請求の範囲】【請求項1】、段落【0017】?【0019】、【0071】?【0072】及び【図1】等の記載からみて、 「板ガラスを製造する方法であって、複数のポート(16,17)内に位置するバーナーが配置されている溶融及び精製チャンバ(12)の上流側端部(18)から原料を投入する工程と溶融ガラスの塊を得る工程と次に溶融ガラスの塊を溶融及び精製チャンバ(12)の下流側(ウエスト19方向)に導く工程と、 8つのポートのうち、下流ゾーンの4つのポート(16,17)に化学量論を超える過剰空気を供給する工程とを備えている、 板ガラスを製造する方法。」、 の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。 (2)刊行物2には、その【特許請求の範囲】【請求項13】、第12頁第1行?第15頁第6行及び実施例7の記載等からみて、 「バッチ原料を上部加熱タンク型溶融炉に投入する工程、溶融ガラスの塊を得る工程、および溶融ガラスの塊を炉の下流側に導く工程を備えている、 下記の重量範囲内の量で含む化学組成を有する板ガラスを形成する工程を備え、 SiO_(2) 65?80% Al_(2)O_(3) 0?5% B_(2)O_(3) 0% CaO 5?15% MgO 0?7% Na_(2)O 10?18% K_(2)O 0?5% BaO 0% SO_(3) 0.05?0.3% Fe_(2)O_(3)(全鉄分) 0.02%以下 レドックス(FeO比)0.4未満を含む、高透過板ガラスを得る方法。」の発明が記載されており、 刊行物3?5には、それぞれ、「溶融チャンバに化学量論量を超える過剰空気を供給する弱酸化性の燃焼雰囲気が、ガラスのレドックス(透過性)に良い影響を与えること」が周知の技術的事項であることを示す事項が記載されていると理解できる。 5.対比・判断(特許法第29条第2項について) (1)本件発明1について 本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明は、 「次に下記の成分を下記の重量範囲内の量で含む化学組成を有する板ガラスを形成する工程、 SiO_(2) 60?75% Al_(2)O_(3) 0?10% B_(2)O_(3) 0?5% CaO 5?15% MgO 0?10% Na_(2)O 5?20% K_(2)O 0?10% BaO 0?5% SO_(3) 0.1?0.4% Fe_(2)O_(3)(全鉄分) 0?0.015% レドックス 0.1?0.3」 を有さない点で相違する。 そして、刊行物2には、当該相違点に係る板ガラスの化学組成に関し、それと重複する化学組成である、 SiO_(2) 65?80% Al_(2)O_(3) 0?5% B_(2)O_(3) 0% CaO 5?15% MgO 0?7% Na_(2)O 10?18% K_(2)O 0?5% BaO 0% SO_(3) 0.05?0.3% Fe_(2)O_(3)(全鉄分) 0.02%以下 レドックス(FeO比)0.4未満を含むものが開示されている。 そこで、刊行物1発明に、刊行物2に記載された板ガラスの化学組成を適用することが、当業者が容易に想到し得たことであるか否か検討する。 刊行物2に記載された板ガラスは「高透過」板ガラス、すなわち、「特に、建築用板ガラス、太陽電池パネル用ガラスなどとして好適な高い光線透過率を有する」板ガラス(第5頁「技術分野」等参照。)であり、刊行物2に記載された上記の板ガラスの化学組成は、そのような「高透過」の性質を奏する板ガラスの組成として開示されたものと認められる。 それに対して、刊行物1発明は、「再生ガラス炉」(【特許請求の範囲】【請求項1】等参照。)、すなわち、ガラスの再生利用を図るための炉に係るものであって、「フラットガラスを溶融」(段落【0005】)し、「ガラス成形品の例としてはボトル、ジャー、ドリンク用グラス、卓上食器類、プレスガラス器等の容器である。」(段落【0005】)との例示の記載がされているように、高い光線透過率を有することは、技術常識からみて必ずしも必要でない種類のガラス製品を対象とするものと認められる。 そうすると、仮に、ガラスの技術分野において、板ガラスの透過性を高めて品質を確保することは極めてありふれた課題」(特許異議申立書第21頁第9?11行)であったとしても、刊行物1発明は、技術常識からみて高い光線透過率を有することが必要といえない種類の再生ガラス品を対象とするものである以上、刊行物2に「高透過」の性質を奏する板ガラスの組成として開示された、建築用板ガラス、太陽電池パネル用ガラスなどを対象とするガラスの化学組成を、刊行物1発明に適用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 また、刊行物3?5には、板ガラスのレドックスを下げて板ガラスの透過性を高めるために、溶融チャンバに化学量論量を超える過剰空気を供給すること等が記載されているが、レドックス以外のガラスの化学組成について記載したものではないから、本件発明1と刊行物1発明との相違点に係る上記のガラスの化学組成の点は、刊行物3?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことともいえない。 したがって、本件発明1は、上記刊行物1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものではない。 (2)本件発明2?11について 本件発明2?11は、本件発明1に発明特定事項を付加して、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記(1)に、本件発明1について記載した判断と同様の理由により、上記刊行物1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものではない。 6.むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許請求の範囲の請求項1?11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-02-23 |
出願番号 | 特願2011-524439(P2011-524439) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C03B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大工原 大二 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
新居田 知生 萩原 周治 |
登録日 | 2015-02-13 |
登録番号 | 特許第5694935号(P5694935) |
権利者 | サン-ゴバン グラス フランス |
発明の名称 | ガラスを得るための方法及び得られたガラス |
代理人 | 出野 知 |
代理人 | 小林 良博 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 永坂 友康 |
代理人 | 石田 敬 |