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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1312153
審判番号 不服2015-12108  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-26 
確定日 2016-03-30 
事件の表示 特願2011- 36583「印刷装置の制御装置及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月10日出願公開、特開2012-174073、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成23年9月10日の出願であって、平成26年12月10日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成27年6月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否

1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、

「【請求項1】
複数の印刷装置を一元管理して現在要求されている印刷要求の転送制御を行う印刷装置の制御装置であって、
前記印刷要求を各印刷装置で実行させた場合の予想実行時間をそれぞれ算出して、印刷許容時間内に完了可能な印刷装置を特定する特定手段と、
この特定した印刷装置が複数存在する場合に、前記印刷要求を前記特定した印刷装置でそれぞれ実行させた際に、すべての印刷要求の実行が完了した時点でのすべての印刷装置の消費電力の合計が最小となる印刷装置を決定する決定手段と、
この決定した印刷装置に対して前記印刷要求の転送処理を行う転送処理手段を有し、
一つの印刷要求実行時の一つの印刷装置の消費電力は、前記印刷装置の状態移行にかかる消費電力量、前記印刷装置の稼動状態の消費電力量及び前記印刷要求の予想実行時間に基づいて算出され、この算出された消費電力を前記すべての印刷要求について加算したものを前記一つの印刷装置の最終的な消費電力とし、この最終的な消費電力を前記すべての印刷装置に対して求めて加算したものを前記消費電力の合計とすることを特徴とする印刷装置の制御装置。」

とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。(下線は補正事項を示している。)


2.補正の適否

本件補正のうち上記補正事項1は、補正前の請求項4に記載された「すべての印刷要求の実行が完了した時点でのすべての印刷装置の消費電力の合計」を、「この算出された消費電力を前記すべての印刷要求について加算したものを前記一つの印刷装置の最終的な消費電力とし、この最終的な消費電力を前記すべての印刷装置に対して求めて加算したもの」として限定したものであって、補正前の請求項4に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-46774号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審において付加した。)

ア.「【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術においても、各印刷装置について、現在の状態から、要求されたジョブを完了させるのに必要なエネルギ量を実際に計算しているわけではなく、単に処理時間でのみジョブの配分を決定しているので、必ずしも省電力化と利便性とを両立するように適切にジョブが割当てられているとは言えないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、適切にジョブを割当てることができるプリントサーバ、印刷システム、印刷ジョブ管理方法、プログラムおよび記録媒体を提供することである。」(4頁48行?5頁6行)

イ.「【0053】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、図1?図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0054】
図1?図3は、本発明の実施の一形態の印刷システム1?3の構成を示すブロック図である。これらの図1?図3において、同様の構成には、同一の参照符号を付して示す。
【0055】
図1の印刷システム1は、複数のホスト装置H1,H2,…Hnと、プリントサーバSと、複数の印刷装置P1,P2,…Pmとが、共通のネットワークNに接続されて構成されている。したがって、この図1の印刷システム1では、プリントサーバSに、各ホスト装置H1?Hnと印刷装置P1?Pmとが並列に接続されることになる。」(10頁15?26行)

ウ.「【0059】
図4は、前記プリントサーバSの一構成例を示すブロック図である。このプリントサーバSは、大略的に、制御部11と、印刷データ格納部12と、時計部13と、ネットワークインタフェイス部14とを備えて構成される。なお、この図4のシステム構成は、図1の印刷システム1に対応したもので、図2の印刷システム2では、ネットワークインタフェイス部14がネットワークN用とともに、各印刷装置P1?Pm用に設けられ、また図3の印刷システム3では、ネットワークインタフェイス部14がネットワークN用とともに、ローカルネットワークL用に設けられることになる。
【0060】
注目すべきは、本発明では、制御部11が、各ホスト装置H1?Hnから受付けた印刷ジョブを、予め定める配分ルールに従って、何れかの印刷装置P1?Pmに割当てることである。このため、制御部11は、印刷装置情報記憶部21と、演算部22と、配分ルール格納部23と、ジョブ配分部24と、印刷ジョブ入出力部25と、通信制御部26とを備えて構成される。
【0061】
前記通信制御部26は、たとえばTCP/IP環境ならばSNMP(Simple Network Management Protocol)で各印刷装置P1?Pmと定期的に通信を行い、各印刷装置P1?Pmの記憶部M(前記SNMPを用いるならばMIB(Management Information Base ))に格納されている各印刷装置P1?Pmのステータス情報を取得し、前記配分ルール格納部23を介して印刷装置情報記憶部21に格納する。また、前記通信制御部26は、各印刷装置P1?Pmとの通信で、各状態から印刷処理の実行状態に復帰するのに要するエネルギ量および時間と、用紙1枚当りの印刷処理に要するエネルギ量および時間との情報などを取得し、前記配分ルール格納部23を介して印刷装置情報記憶部21にテーブルとして格納する。これらの通信制御部26および印刷装置情報記憶部21は、監視手段を構成する。また、これらの通信制御部26および印刷装置情報記憶部21は、データ取得手段も構成している。なお、図2で示すように、プリントサーバSと印刷装置P1?Pmとを直接接続するならば、USB(Universal Serial Bus)等を用いて通信を行ってもよい。
【0062】
ここで、各印刷装置P1?Pmの状態としては、たとえばジョブ実行状態、待機状態、ローパワー状態、スリープ状態に切換え可能となっており、前記ジョブ実行状態および待機状態は定着装置が規定の温度に維持されている状態であり、前記ローパワー状態は定着装置が前記規定の温度よりも、たとえば50℃低い状態であり、前記スリープ状態は定着装置が通電停止の状態である。前記ステータス情報は、このような各印刷装置P1?Pmの現在の状態の他に、たとえばジョブを実行中であればその完了時間、キューに配分されているジョブの完了時間(既に配分されて処理を開始していない、すなわち後続のジョブの完了時間)、ローパワー状態およびスリープ状態に移行してからの経過時間などである。
【0063】
一方、各印刷装置P1?Pmが印刷処理の実行状態に復帰するのに要するエネルギ量の大部分は定着装置を前記規定の温度まで復帰させるのに必要となるエネルギ量であり、前記の各状態では、定着装置が規定の温度に維持されているジョブ実行状態および待機状態では0であり、前記規定の温度よりも低いローパワー状態および定着装置が通電停止状態であるスリープ状態では、それらの状態となってからの経過時間によって大きくなり、また周囲温度が低い程、大きくなる。
【0064】
前記各状態から印刷処理の実行状態に復帰するのに要するエネルギ量および時間および用紙1枚当りの印刷処理に要するエネルギ量および時間の情報は、上述のように各印刷装置P1?Pmから通信で取得するようにしてもよく、またホスト装置H1?Hnから、プリンタドライバの設定とともに、設定するようにしてもよい。ホスト装置H1?Hnから設定する場合には、前記ステータス情報は、プリントサーバS側で管理されることになる。しかしながら、データ取得手段である通信制御部26によって上述のように取得することで、ネットワークN,Lに印刷装置P1?Pmを接続すると、記憶部Mに記憶されている前記のデータを自動的に取得し、更新するので、印刷装置P1?Pmを接続するたびに、プリントサーバSにそのようなデータを設定する手間を省くことができる。
【0065】
また、前記演算部22は、前記通信制御部26から配分ルール格納部23を介してジョブを受付けると、上述のようにして印刷装置情報記憶部21に格納されているステータス情報およびテーブルに基づいて、そのジョブを各印刷装置P1?Pmで処理した場合に必要となるエネルギ量および時間を演算する。具体的には、先ず前記エネルギ量の演算は、たとえば各印刷装置P1?Pmの現在の状態から印刷処理の実行状態に復帰するのに要するエネルギ量と、実際の印刷処理に要するエネルギ量とに大別することができる。前記印刷処理の実行状態に復帰するのに要するエネルギ量は、前述の通りであり、ステータス情報による現在の状態から、テーブルを参照して求めることができる。また、前記実際の印刷処理に要するエネルギ量は、受付けられたジョブの用紙サイズから前記テーブルを参照して、その用紙1枚当りに要するエネルギ量を読出し、その読出したエネルギ量と、処理すべき枚数との積値で求めることができる。
【0066】
一方、前記ジョブを完了するまでに要する時間の演算は、前記定着装置を規定の温度に上昇させるのに必要な時間や、現在処理中のジョブを完了させるのに必要な時間等の今回受付けたジョブを実際に開始できるまでの時間と、用紙1枚当りに要する時間と処理すべき枚数との積値との和で求めることができる。前記定着装置を規定の温度に上昇させるのに必要な時間は、前記ステータス情報から前記テーブルを参照して求められる。前記現在処理中のジョブを完了させるのに必要な時間は、処理中のジョブの用紙サイズから、前記テーブルを参照して求められるその用紙1枚当りの処理に要する時間と、未処理の枚数との積値で求めることができる。
【0067】
そして、ジョブ割当て手段であるジョブ配分部24は、前記演算部22での演算結果に基づいて、前記配分ルール格納部23に格納されている配分ルールを参照し、最も適切と考えられる印刷装置にジョブを割当てる。その割当てられたジョブは、このジョブ配分部24に関連して設けられるキュー管理部27で、その順番が管理される。前記ジョブの割当ては、具体的には、たとえばその印刷ジョブに要求されるジョブ完了時間内でジョブを完了することができ、かつエネルギ量が最小となる印刷装置を選択したり、逆にジョブの量から判断して、許容されるエネルギ量内で、かつ処理時間が最短となる印刷装置を選択したり、あるいはジョブ完了時間とエネルギ量とのそれぞれ重み割合を考慮して、重み割合に対応した処理時間およびエネルギ量の印刷装置を選択したりすることで行われる。以下の説明では、簡単のために、規定の制限時間内で、ジョブを完了し、かつエネルギ量が最小となる印刷装置を選択するものとする。
【0068】
なお、上記制限時間とは、各ホスト装置H1?Hnから要求された印刷ジョブを完了するまでに必要な、ユーザなどによって指定されたジョブ完了時間である。この制限時間は、たとえば、各ホスト装置H1?HnやプリントサーバSに設けられた図示しない設定手段にて、ユーザによって設定される。
【0069】
こうして選択された印刷装置に、各ホスト装置H1?Hnから送信されてきて、ネットワークインタフェイス部14から印刷ジョブ入出力部25を介して印刷データ格納部12に格納されている印刷データが、前記印刷ジョブ入出力部25からネットワークインタフェイス部14を介して出力される。」(10頁44行?12頁41行)

エ.「【0086】
図7は、プリントサーバSによる印刷装置P1?Pmの制御動作を説明するためのフローチャートである。初期状態では総ての印刷装置P1?Pmは停止しており、ステップS1では、最もエネルギ効率の高い印刷装置のみが、定着装置を前記規定の温度で維持し、直ちに印刷処理を行うことができる待機状態とし、残余の印刷装置を、前記ローパワー状態またはスリープ状態の省エネモードとする。
【0087】
ステップS2では、新規ジョブを受付けたか否かを判断し、受付けていない場合にはステップS3に移ってキューに印刷待ちのジョブが残されているか否かが判断され、印刷待ちのジョブがない場合には前記ステップS1に戻り、印刷待ちのジョブがある場合および前記ステップS2で新規ジョブを受付けた場合にはステップS4に移る。ステップS4では、各印刷装置P1?Pmでのジョブの完了までに必要なエネルギ量および時間が、後述するようにして演算される。
【0088】
ステップS5では、前記ステップS4での演算結果に基づいて、ユーザがホスト装置H1?Hnから設定した制限時間内に総ての印刷装置P1?Pmでジョブを完了できるか否かを判断し、完了できる場合にはステップS6でエネルギ消費量が最小となる印刷装置を選択し、完了できない場合にはステップS7でジョブ完了時間が最小となる印刷装置を選択する。
【0089】
前記ステップS6,S7からはステップS8に移り、選択された印刷装置が省エネモードであるか否かが判断され、省エネモードである場合にはステップS9で、その印刷装置を印刷可能状態に復帰させた後ステップS10に移り、省エネモードでない場合は直接ステップS10に移る。ステップS10では、選択された印刷装置にジョブを割振り、前記ステップS2に戻る。」(15頁3?27行)


以上総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

〈引用発明〉

「複数のホスト装置H1,H2,…Hnと、複数の印刷装置P1,P2,…Pmとが、共通のネットワークNを介して接続されたプリントサーバSであって、
前記プリントサーバSの制御部11は、前記各ホスト装置H1?Hnから受付けた印刷ジョブを、予め定める配分ルールに従って、何れかの前記印刷装置P1?Pmに割当てるものであり、
前記制御部11は、印刷装置情報記憶部21と、演算部22と、配分ルール格納部23と、ジョブ配分部24と、印刷ジョブ入出力部25と、通信制御部26とを備え、
前記通信制御部26は、前記各印刷装置P1?Pmと定期的に通信を行い、前記各印刷装置P1?Pmの記憶部Mに格納されている各印刷装置P1?Pmのステータス情報を取得し、前記配分ルール格納部23を介して前記印刷装置情報記憶部21に格納し、また、前記各印刷装置P1?Pmとの通信で、各状態から印刷処理の実行状態に復帰するのに要するエネルギ量および時間と、用紙1枚当りの印刷処理に要するエネルギ量および時間との情報などを取得し、前記配分ルール格納部23を介して前記印刷装置情報記憶部21にテーブルとして格納するものであり、
前記演算部22は、前記通信制御部26から前記配分ルール格納部23を介してジョブを受付けると、前記印刷装置情報記憶部21に格納されている前記ステータス情報および前記テーブルに基づいて、そのジョブを前記各印刷装置P1?Pmで処理した場合に必要となるエネルギ量および時間を演算するものであって
前記エネルギ量の演算は、前記各印刷装置P1?Pmの現在の状態から印刷処理の実行状態に復帰するのに要するエネルギ量と、実際の印刷処理に要するエネルギ量とに大別し、前記印刷処理の実行状態に復帰するのに要するエネルギ量は、ステータス情報による現在の状態から、テーブルを参照して求めることができ、また、前記実際の印刷処理に要するエネルギ量は、受付けられたジョブの用紙サイズから前記テーブルを参照して、その用紙1枚当りに要するエネルギ量を読出し、その読出したエネルギ量と、処理すべき枚数との積値で求め、
さらに、前記ジョブを完了するまでに要する時間の演算は、前記定着装置を規定の温度に上昇させるのに必要な時間や、現在処理中のジョブを完了させるのに必要な時間等の今回受付けたジョブを実際に開始できるまでの時間と、用紙1枚当りに要する時間と処理すべき枚数との積値との和で求めるものであり、
前記ジョブ配分部24は、前記演算部22での演算結果に基づいて、前記配分ルール格納部23に格納されている、その印刷ジョブに要求されるジョブ完了時間内でジョブを完了することができ、かつエネルギ量が最小となる印刷装置を選択するという前記配分ルールにより、最も適切と考えられる印刷装置にジョブを割当てるものであり、
前記印刷ジョブ入出力部25は、前記選択された印刷装置に、前記各ホスト装置H1?Hnから送信されてきて、ネットワークインタフェイス部14から印刷ジョブ入出力部25を介して印刷データ格納部12に格納されている印刷データを、ネットワークインタフェイス部14を介して出力するものであって、
新規ジョブを受付けた場合には、前記各印刷装置P1?Pmでのジョブの完了までに必要なエネルギ量および時間が演算され、該演算結果に基づいて、ユーザが前記ホスト装置H1?Hnから設定した制限時間内に総ての前記印刷装置P1?Pmでジョブを完了できるか否かを判断し、完了できる場合にはエネルギ消費量が最小となる印刷装置を選択し、選択された印刷装置にジョブを割振りする、
プリントサーバS。」

(2)対比

補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「印刷装置」、及び「印刷ジョブ」は、補正発明の「印刷装置」、及び「印刷要求」に相当する。
そして、引用発明の「プリントサーバS」の「制御部11」は、「前記各ホスト装置H1?Hnから受付けた印刷ジョブを、予め定める配分ルールに従って、何れかの前記印刷装置P1?Pmに割当てる」ものであり、割当てた印刷ジョブを転送することは明らかであるから、引用発明の「プリントサーバS」は、補正発明の「複数の印刷装置を一元管理して現在要求されている印刷要求の転送制御を行う印刷装置の制御装置」に相当する。

イ.引用発明の「演算部22」は、「前記通信制御部26から前記配分ルール格納部23を介してジョブを受付けると、前記印刷装置情報記憶部21に格納されている前記ステータス情報および前記テーブルに基づいて、そのジョブを前記各印刷装置P1?Pmで処理した場合に必要となるエネルギ量および時間を演算」し、さらに、引用発明の「ジョブ配分部24」は、「前記演算部22での演算結果に基づいて、前記配分ルール格納部23に格納されている、その印刷ジョブに要求されるジョブ完了時間内でジョブを完了することができ」るか判断するものであるから、引用発明の「演算部22」及び「ジョブ配分部24」と、補正発明の「特定手段」とは、「前記印刷要求を各印刷装置で実行させた場合の予想実行時間をそれぞれ算出して、印刷許容時間内に完了可能な印刷装置を特定する手段」の点で共通する。

ウ.引用発明の「エネルギ量」は、補正発明の「消費電力」に相当する。
また、引用発明の「そのジョブを前記各印刷装置P1?Pmで処理した場合に必要となるエネルギ量」は、「前記各印刷装置P1?Pmの現在の状態から印刷処理の実行状態に復帰するのに要するエネルギ量」と、「実際の印刷処理に要するエネルギ量」の和として、さらに、「実際の印刷処理に要するエネルギ量」は、「受付けられたジョブの用紙サイズから前記テーブルを参照して、その用紙1枚当りに要するエネルギ量を読出し、その読出したエネルギ量と、処理すべき枚数との積値で求め」るものであるから、補正発明の「一つの印刷要求実行時の一つの印刷装置の消費電力は、前記印刷装置の状態移行にかかる消費電力量、前記印刷装置の稼動状態の消費電力量及び前記印刷要求の予想実行負荷量に基づいて算出され」る「一つの印刷要求実行時の一つの印刷装置の消費電力」に相当する。

エ.また、引用発明の「ジョブ配分部24」は、「エネルギ量が最小となる印刷装置を選択するという配分ルールにより、最も適切と考えられる印刷装置にジョブを割当てる」ものであり、さらに、引用発明は、「該演算結果に基づいて、ユーザが前記ホスト装置H1?Hnから設定した制限時間内に総ての前記印刷装置P1?Pmでジョブを完了できるか否かを判断し、完了できる場合にはエネルギ消費量が最小となる印刷装置を選択」するものであるから、引用発明の「ジョブ配分部24」は、「制限時間内に総ての前記印刷装置P1?Pmでジョブを完了できる」場合に、「エネルギ量が最小となる印刷装置を選択」しているものと認められ、また、「選択」を行うのであるから、「選択」の対象となる「印刷装置」は当然「複数存在」するものと認められる。
してみれば、引用発明の「ジョブ配分部24」と、補正発明の「この特定した印刷装置が複数存在する場合に、前記印刷要求を前記特定した印刷装置でそれぞれ実行させた際に、すべての印刷要求の実行が完了した時点でのすべての印刷装置の消費電力の合計が最小となる印刷装置を決定する決定手段」とは、「この特定した印刷装置が複数存在する場合に、すべての印刷要求の実行が完了した時点での印刷装置の消費電力が最小となる印刷装置を決定する手段」の点で共通する。

オ.引用発明の「印刷ジョブ入出力部25」は、「前記選択された印刷装置に、前記各ホスト装置H1?Hnから送信されてきて、ネットワークインタフェイス部14から印刷ジョブ入出力部25を介して印刷データ格納部12に格納されている印刷データを、ネットワークインタフェイス部14を介して出力する」ものであるから、引用発明の「印刷ジョブ入出力部25」は、補正発明の「この決定した印刷装置に対して前記印刷要求の転送処理を行う転送処理手段」に相当する。

よって、補正発明と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。

(一致点)

「複数の印刷装置を一元管理して現在要求されている印刷要求の転送制御を行う印刷装置の制御装置であって、
前記印刷要求を各印刷装置で実行させた場合の予想実行時間をそれぞれ算出して、印刷許容時間内に完了可能な印刷装置を特定する手段と、
この特定した印刷装置が複数存在する場合に、すべての印刷要求の実行が完了した時点での印刷装置の消費電力の最小となる印刷装置を決定する手段と、
この決定した印刷装置に対して前記印刷要求の転送処理を行う転送処理手段を有し、
一つの印刷要求実行時の一つの印刷装置の消費電力は、前記印刷装置の状態移行にかかる消費電力量、前記印刷装置の稼動状態の消費電力量及び前記印刷要求の予想実行負荷量に基づいて算出される、印刷装置の制御装置。」


(相違点1)補正発明では、「特定手段」(上記「特定する手段」に相当。)が、「前記印刷要求を各印刷装置で実行させた場合の予想実行時間」のみを算出し、また、「決定手段」(上記「決定する手段」に相当。)は、「この特定した印刷装置が複数存在する場合に」、「前記印刷要求を前記特定した印刷装置でそれぞれ実行させた」としているのに対して、引用発明の、「演算部22」(上記「特定する手段」に相当。)は、「時間」のみではなく「エネルギ量」も算出しており、「ジョブ配分部24」(上記「決定する手段」に相当。)は、「この特定した印刷装置が複数存在する場合に」、「前記印刷要求を前記特定した印刷装置でそれぞれ実行させた」とはしていない点。

(相違点2)補正発明では、「消費電力の合計」を「算出された消費電力を前記すべての印刷要求について加算したものを前記一つの印刷装置の最終的な消費電力とし、この最終的な消費電力を前記すべての印刷装置に対して求めて加算し」て算出し、「決定手段」が、この「消費電力の合計」が「最小となる印刷装置を決定する」のに対して、引用発明では、「消費電力の合計」は算出しておらず、「ジョブ配分部24」は、各「印刷装置」での「エネルギ量が最小となる印刷装置を選択」するものである点、

(相違点3)「予想実行負荷量」が、補正発明では「予想実行時間」であるのに対して、引用発明では、「処理すべき枚数」である点。


(3)判断

当審は次のとおり判断する。

下のア.?イ.に示す理由で、引用発明において上記相違点2に係る補正発明の構成を採用することは、当業者といえども容易に推考し得たこととはいえない。

したがって、その他の点について判断するまでもなく、補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

ア.引用発明においては、各印刷要求毎に各印刷装置での消費電力を算出し、消費電力が最小である印刷装置を決定すれば、消費電力が最小となる印刷装置が決定できるのであり、それで十分足りているのであるから、各印刷装置ですべての印刷要求について消費電力を算出し、さらに、すべての印刷装置の消費電力の合計を算出する必要はなく、引用発明において上記相違点2に係る補正発明の構成を採用するようにすべき理由はない。

イ.ほかに引用発明において上記相違点2に係る補正発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったといえる根拠は見当たらない。


よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび

本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。


第3 本願発明

本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-8に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-03-15 
出願番号 特願2011-36583(P2011-36583)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 緑川 隆田川 泰宏佐賀野 秀一  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 千葉 輝久
山澤 宏
発明の名称 印刷装置の制御装置及び制御方法  
代理人 佐々木 敬  
代理人 松田 順一  
代理人 池田 憲保  

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