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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1312212
審判番号 不服2014-21181  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-20 
確定日 2016-03-08 
事件の表示 特願2012-221062「カメラへのユーザ入力に基づく画像値インデックス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 20642〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2007年3月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年4月13日,米国)を国際出願日とする特願2009-505385号の一部を,平成24年10月3日に新たな特許出願としたものであって,同日に手続補正がなされ,平成26年1月20日付けで拒絶理由通知がなされ,同年4月16日に手続補正がなされたが,同年6月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年10月20日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年4月16日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。

<本願発明>
「画像形成評価方法であって,
カメラでシーンを画像形成することにより画像レコードを生成するステップと,
前記画像レコードをメモリに保存するステップと,
ユーザからの指示に応じて,前記メモリ内の前記画像レコードにアクセスするステップと,
前記カメラ上のアクセスされた画像レコードの前記ユーザの利用に関連する利用パラメータを追跡するステップと,
前記追跡された利用パラメータに基づいて,前記アクセスされた画像レコードについての画像値インデックスを計算するステップと,
前記アクセスされた画像レコードを分析して,画像品質及び画像内容のうち少なくとも1つに基づいて分析結果を生成するステップと,
前記分析結果に基づいて,前記画像値インデックスを修正するステップと,
シェアボタンの操作,ユーザリアクション,メタデータ関連情報,ユーザプロファイルと前記画像レコードとの比較,参照画像と前記画像レコードとの比較,及び撮影日時のうち少なくとも1つに関連する補足パラメータを求めるステップと,
前記補足パラメータに基づいて,前記画像値インデックスを修正するステップと,
を含むことを特徴とする方法。」

第3 引用文献

1.国際公開第2006/025209号(国際公開日2006年3月9日)

原査定の拒絶の理由において引用された国際公開第2006/025209号(以下,「引用文献1」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

ア.「[0001] 本発明は,画像表示制御装置及び画像表示方法に関し,特に,複数の画像の中からユーザの嗜好が反映された画像が表示されるように制御する画像表示制御装置,及び複数の画像の中からユーザの嗜好が反映された画像を表示する画像表示方法に関する。」

イ.「[0017] (第1実施形態)
図1から図13を参照して,本発明の画像表示制御装置の第1実施形態について説明する。本実施形態に係る画像表示制御装置は,ユーザの画像の好み度を示す嗜好レベル(嗜好度)を用いて多数の画像の中からユーザの好みの画像を抽出して,表示/出力部(表示装置)に表示させるように制御することを目的としている。
[0018] 本実施形態の画像表示制御装置は,画像表示装置の一部として構成される。図1は,本実施形態の画像表示制御装置を含む画像表示装置の全体ブロック図である。図1に示すように,画像表示装置100は,画像入力部10と,画像蓄積部20と,画像情報データベース30と,嗜好レベル算出部40と,嗜好レベルデータベース50と,表示・操作制御部60と,表示/出力部70と,ユーザ操作部80とを備えている。」

ウ.「[0020] 画像入力部10は,ディジタルカメラ,ビデオカメラ,画像ビューワ,パソコン,カメラ付き携帯電話,ディスク,メモリーカード,スキャナ,インタネットからのダウンロード等を用いて画像を入力する。・・・(中略)・・・
[0021] 画像蓄積部20は,画像入力部10によって入力された画像データを保存する。
画像情報データベース30には,画像蓄積部20に画像が保存されると同時に,その画像に関する画像情報が保存される。」

エ.「[0022] 嗜好レベル算出部40は,ユーザによる画像の鑑賞時間(画像の鑑賞履歴の時間に関するデータ)に基づいて,ユーザ毎に画像の嗜好レベルを算出する。嗜好レベルの算出方法については,図10を参照して後述する嗜好レベル更新アルゴリズムとして説明する。
[0023] 嗜好レベルデータベース50には,嗜好レベル算出部40によって算出された嗜好レベルがユーザ毎に保存される。その嗜好レベルは,ユーザの好みの画像の表示モードの時に,表示・操作制御部60によって利用される。嗜好レベルデータベース50の構成については,図13を参照して後述する。」

オ.「[0027] 図2に示すように,表示/出力部70の画面表示部300は,情報画面301と,操作画面302から構成され,情報画面301にはサムネイル303が表示されている。操作画面302には,ユーザ選択ボタン304と,リスト表示部305と,表示モード選択ボタン306と,スライドショー開始/終了ボタン307と,コメント入力ボタン308とが表示されている。」

カ.「[0045] [画像表示装置100の動作アルゴリズム]
次に,図8を参照して,画像表示装置100の動作アルゴリズムについて説明する。
[0046] まず,ステップS1に示すように,ユーザによるユーザ操作部80の操作に応答して,画像表示装置100が起動する。次に,ステップS2に示すように,ユーザにより,ユーザ選択ボタン304が操作されて,そのユーザの鑑賞環境が選択される。ここで,ユーザの鑑賞環境が選択されることにより,そのユーザの嗜好レベルを用いた,そのユーザの鑑賞環境に変更される(後述する嗜好レベルデータベース50(図13),又はその嗜好レベルDB部52が,そのユーザのものに切り替えられる)。
[0047] 次に,ステップS3に示すように,ユーザにより,リスト表示部305に表示された複数の撮影/保存日の中から一つが選択される。すると,表示・操作制御部60により,嗜好レベルデータベース50及び画像蓄積部20が参照されて,その選択された撮影/保存日の複数の画像が情報画面301にサムネイル表示される。
[0048] 次に,ステップS4に示すように,ユーザにより,表示モード選択ボタン306が操作されて,表示モードが選択される。その選択結果に応じて,情報画面301にサムネイル表示される画像が切り替えられる。このステップS4の詳細については,サムネイル画像表示モード選択アルゴリズム(図9)として説明する。
[0049] 次に,ステップS5に示すように,ユーザにより,ユーザ操作部80が操作されて,サムネイル表示された画像の中からユーザが鑑賞したい画像が選択される。ユーザにより画像が選択されると,表示・操作制御部60により,その選択画像が情報画面301に拡大表示される(ステップS5)。
[0050] ユーザにより選択された画像が拡大表示されると,嗜好レベル算出部40により,その画像が拡大表示されてから元のサムネイル表示に戻るまでの時間が鑑賞時間として計測される(ステップS6?ステップS8)。
[0051] 次に,ユーザにより次の画像が鑑賞されるか否かが,ユーザによるユーザ操作部80の操作に基づいて,表示・操作制御部60により判定される(ステップS9)。その判定の結果,次の画像が鑑賞されるときには,上記ステップS3からの動作が繰り返される。
[0052] ステップS9の判定の結果,次の画像が鑑賞されないときには,嗜好レベル算出部40は,上記ステップS6及びステップS7で測定された鑑賞時間を用いて,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルを更新して終了する(ステップS10)。このステップS10についての詳細は,嗜好レベル更新アルゴリズム(図10)として記述する。」

キ.「[0053] [サムネイル画像表示モード(通常/お好み)選択アルゴリズム]
次に,図9を参照して,サムネイル画像の表示モード(通常/お好み)の選択アルゴリズムについて説明する。
[0054] 上述した図8のステップS4において,ユーザにより表示モード選択ボタン306が選択操作されると,まず,ステップSA1に示すように,表示・操作制御部60により,お好みモードが選択されたか否かが判定される。その判定の結果,お好みモードが選択されていれば(ステップSA1-Y),表示・操作制御部60は,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルのデータを参照して,図8のステップS3にて選択されている撮影/保存日の複数の画像を嗜好レベルの降順にソートし(ステップSA2),嗜好レベルの上位X枚の画像のみを情報画面301に表示させる(ステップSA3)。ここで,ソートの順番は,他の方法を用いてもよい。」

ク.「[0056] [嗜好レベル更新アルゴリズム]
次に,図10を参照して,嗜好レベルの更新アルゴリズムについて説明する。
[0057] まず,ステップSB1に示すように,嗜好レベル算出部40は,図8のステップS6及びステップS7にて計測した鑑賞時間Tvが1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitを超えているか否かを判定する。・・・(中略)・・・
[0058] 上記ステップSB1の判定の結果,嗜好レベル算出部40は,鑑賞時間Tvが上限値Tlimit未満であれば(ステップSB1-Y),鑑賞時間Tvに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算する(ステップSB2)。
[0059] ここで,係数α(t)は,図11に示すように,画像を初めて鑑賞してから今回,鑑賞した日時までの経過時間t[日]の関数で定義される。本実施形態では,関数α(t)=1/(t+1)^(β)等の単調減少関数が利用される。
・・・(中略)・・・
[0061] 一方,上記ステップSB1の判定の結果,嗜好レベル算出部40は,鑑賞時間Tvが上限値Tlimit以上であれば(ステップSB1-N),1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算する(ステップSB3)。ステップSB2又はステップSB3にて嗜好レベルLが求められると,嗜好レベルデータベース50(図13)の嗜好レベル記録エリア507の嗜好レベルの値が更新される(図8のステップS10)。」

ケ.「[0066] 図13において,画像情報データベース30の画像データ名記録エリア501には,各画像のデータ名の情報が記録され,撮影場所記録エリア502には,各画像の撮影場所の情報が記録される。撮影場所記録エリア502に記録される撮影場所情報は,ディジタルカメラ,カメラ付き携帯電話等のGPS機能を使って画像データに自動で付与された形で画像入力部10から入力され,その入力データのうち画像データが画像蓄積部20に記録され,撮影場所情報が嗜好レベルデータベース50に保存されることも可能である。撮影場所情報が自動で入手できない場合は,図7に示したように,ユーザにより入力されることが可能である。
[0067] 図13において,画像情報データベース30の撮影日時記録エリア503には,各画像の撮影日時の情報が記録され,コメント記録エリア504には,各画像のコメントの情報が記録される。嗜好レベルデータベース50の鑑賞回数記録エリア505には,各画像の鑑賞回数の情報が記録され,累計鑑賞時間記録エリア506には,各画像の累計鑑賞時間[秒]の情報が記録され,嗜好レベル記録エリア507には,各画像の嗜好レベルLの情報が記録され,初鑑賞日時記録エリア508には,各画像の初めて拡大表示されて鑑賞された日時の情報が記録され,最新鑑賞日時記録エリア509には,各画像の最新の拡大表示されて鑑賞された日時の情報が記録される。画像が鑑賞された後には,嗜好レベルデータベース50の各記録エリア505?509の情報は,それぞれ更新される(図8のステップS10参照)。」

前記ア.?ケ.によれば,引用文献1には,次の事項が記載されているといえる。

・前記ア.の「本発明は,画像表示制御装置及び画像表示方法に関し,特に,複数の画像の中からユーザの嗜好が反映された画像が表示されるように制御する画像表示制御装置,及び複数の画像の中からユーザの嗜好が反映された画像を表示する画像表示方法に関する。」によれば,
引用文献1には,「複数の画像の中からユーザの嗜好が反映された画像を表示する画像表示方法」が記載されているといえる。

・前記イ.の「画像表示装置100は,画像入力部10と,画像蓄積部20と,画像情報データベース30と,嗜好レベル算出部40と,嗜好レベルデータベース50と,表示・操作制御部60と,表示/出力部70と,ユーザ操作部80とを備えている。」によれば,
引用文献1には,「画像表示装置100は,画像入力部10と,画像蓄積部20と,画像情報データベース30と,嗜好レベル算出部40と,嗜好レベルデータベース50と,表示・操作制御部60と,表示/出力部70と,ユーザ操作部80とを備え」が記載されているといえる。

・前記ウ.の「画像入力部10は,ディジタルカメラ,ビデオカメラ,画像ビューワ,パソコン,カメラ付き携帯電話,ディスク,メモリーカード,スキャナ,インタネットからのダウンロード等を用いて画像を入力する。」によれば,
引用文献1には,「画像入力部10は,ディジタルカメラ等を用いて画像を入力し」が記載されているといえる。

・前記ウ.の「画像蓄積部20は,画像入力部10によって入力された画像データを保存する。」によれば,
引用文献1には,「画像蓄積部20は,画像入力部10によって入力された画像データを保存し」が記載されているといえる。

・前記エ.の「嗜好レベルデータベース50には,嗜好レベル算出部40によって算出された嗜好レベルがユーザ毎に保存される。」の記載,
前記ケ.の「嗜好レベルデータベース50の鑑賞回数記録エリア505には,各画像の鑑賞回数の情報が記録され,累計鑑賞時間記録エリア506には,各画像の累計鑑賞時間[秒]の情報が記録され,嗜好レベル記録エリア507には,各画像の嗜好レベルLの情報が記録され,」の記載によれば,
引用文献1には,「嗜好レベルデータベース50は,嗜好レベル算出部40によって算出された各画像の嗜好レベルをユーザ毎に保存し」が記載されているといえる。

・前記オ.の「表示/出力部70の画面表示部300は,情報画面301と,操作画面302から構成され,情報画面301にはサムネイル303が表示されている。操作画面302には,ユーザ選択ボタン304と,リスト表示部305と,表示モード選択ボタン306と,スライドショー開始/終了ボタン307と,コメント入力ボタン308とが表示されている。」の記載によれば,
引用文献1には,「表示/出力部70の画面表示部300は,情報画面301と,操作画面302から構成され,情報画面301にはサムネイル303を表示し,操作画面302には,リスト表示部305と,表示モード選択ボタン306とを表示し」が記載されているといえる。

・前記カ.の「次に,ステップS3に示すように,ユーザにより,リスト表示部305に表示された複数の撮影/保存日の中から一つが選択される。すると,表示・操作制御部60により,嗜好レベルデータベース50及び画像蓄積部20が参照されて,その選択された撮影/保存日の複数の画像が情報画面301にサムネイル表示される。」によれば,
引用文献1には,「ユーザにより,リスト表示部305に表示された複数の撮影/保存日の中から一つが選択されると,表示・操作制御部60により,嗜好レベルデータベース50及び画像蓄積部20を参照して,その選択された撮影/保存日の複数の画像を情報画面301にサムネイル表示し(ステップS3)」が記載されているといえる。

・前記カ.の「次に,ステップS4に示すように,ユーザにより,表示モード選択ボタン306が操作されて,表示モードが選択される。その選択結果に応じて,情報画面301にサムネイル表示される画像が切り替えられる。このステップS4の詳細については,サムネイル画像表示モード選択アルゴリズム(図9)として説明する。」の記載,
前記キ.の「上述した図8のステップS4において,ユーザにより表示モード選択ボタン306が選択操作されると,まず,ステップSA1に示すように,表示・操作制御部60により,お好みモードが選択されたか否かが判定される。その判定の結果,お好みモードが選択されていれば(ステップSA1-Y),表示・操作制御部60は,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルのデータを参照して,図8のステップS3にて選択されている撮影/保存日の複数の画像を嗜好レベルの降順にソートし(ステップSA2),嗜好レベルの上位X枚の画像のみを情報画面301に表示させる(ステップSA3)。」によれば,
引用文献1には,「ユーザにより,表示モード選択ボタン306が操作され(ステップS4),お好みモードが選択されると(ステップSA1-Y),表示・操作制御部60は,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルのデータを参照して,選択されている撮影/保存日の複数の画像を嗜好レベルの降順にソートし(ステップSA2),嗜好レベルの上位X枚の画像のみを情報画面301に表示させ(ステップSA3)」が記載されているといえる。

・前記カ.の「次に,ステップS5に示すように,ユーザにより,ユーザ操作部80が操作されて,サムネイル表示された画像の中からユーザが鑑賞したい画像が選択される。ユーザにより画像が選択されると,表示・操作制御部60により,その選択画像が情報画面301に拡大表示される(ステップS5)。」の記載によれば,
引用文献1には,「表示・操作制御部60は,ユーザ操作部80が操作されて,サムネイル表示された画像の中からユーザが鑑賞したい画像が選択されると,その選択画像を情報画面301に拡大表示し(ステップS5)」が記載されているといえる。

・前記カ.の「ユーザにより選択された画像が拡大表示されると,嗜好レベル算出部40により,その画像が拡大表示されてから元のサムネイル表示に戻るまでの時間が鑑賞時間として計測される(ステップS6?ステップS8)。」によれば,
引用文献1には,「嗜好レベル算出部40は,画像が拡大表示されてから元のサムネイル表示に戻るまでの時間を鑑賞時間として計測し(ステップS6?ステップS8)」が記載されているといえる。

・前記カ.の「次に,ユーザにより次の画像が鑑賞されるか否かが,ユーザによるユーザ操作部80の操作に基づいて,表示・操作制御部60により判定される(ステップS9)。」によれば,
引用文献1には,「表示・操作制御部60は,ユーザによるユーザ操作部80の操作に基づいて,次の画像が鑑賞されるか否かを判定し(ステップS9)」が記載されているといえる。

・前記カ.の「ステップS9の判定の結果,次の画像が鑑賞されないときには,嗜好レベル算出部40は,上記ステップS6及びステップS7で測定された鑑賞時間を用いて,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルを更新して終了する(ステップS10)。」の記載によれば,
引用文献1には,「嗜好レベル算出部40は,次の画像が鑑賞されないときに,測定された鑑賞時間を用いて,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルを更新し(ステップS10)」が記載されているといえる。

・前記ク.の「次に,図10を参照して,嗜好レベルの更新アルゴリズムについて説明する。」の記載,
前記ク.の「まず,ステップSB1に示すように,嗜好レベル算出部40は,図8のステップS6及びステップS7にて計測した鑑賞時間Tvが1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitを超えているか否かを判定する。」の記載,
前記ク.の「上記ステップSB1の判定の結果,嗜好レベル算出部40は,鑑賞時間Tvが上限値Tlimit未満であれば(ステップSB1-Y),鑑賞時間Tvに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算する(ステップSB2)。」の記載,
前記ク.の「一方,上記ステップSB1の判定の結果,嗜好レベル算出部40は,鑑賞時間Tvが上限値Tlimit以上であれば(ステップSB1-N),1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算する(ステップSB3)。ステップSB2又はステップSB3にて嗜好レベルLが求められると,嗜好レベルデータベース50(図13)の嗜好レベル記録エリア507の嗜好レベルの値が更新される(図8のステップS10)。」の記載,
前記ク.の「ここで,係数α(t)は,図11に示すように,画像を初めて鑑賞してから今回,鑑賞した日時までの経過時間t[日]の関数で定義される。本実施形態では,関数α(t)=1/(t+1)^(β)等の単調減少関数が利用される」の記載によれば,
引用文献1には,「上記更新において,
嗜好レベル算出部40は,計測した鑑賞時間Tvが1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitを超えているか否かを判定し(ステップSB1),
鑑賞時間Tvが上限値Tlimit未満であれば(ステップSB1-Y),鑑賞時間Tvに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算し(ステップSB2),
鑑賞時間Tvが上限値Tlimit以上であれば(ステップSB1-N),1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算し(ステップSB3),嗜好レベルLを求めると,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルの値を更新し(図8のステップS10),前記係数α(t)は,画像を初めて鑑賞してから今回,鑑賞した日時までの経過時間tの単調減少関数で定義される」が記載されているといえる。

したがって,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

<引用発明>
「複数の画像の中からユーザの嗜好が反映された画像を表示する画像表示方法であって,
画像表示装置100は,画像入力部10と,画像蓄積部20と,画像情報データベース30と,嗜好レベル算出部40と,嗜好レベルデータベース50と,表示・操作制御部60と,表示/出力部70と,ユーザ操作部80とを備え,
画像入力部10は,ディジタルカメラ等を用いて画像データを入力し,
画像蓄積部20は,画像入力部10によって入力された画像データを保存し,
嗜好レベルデータベース50は,嗜好レベル算出部40によって算出された各画像の嗜好レベルをユーザ毎に保存し,
表示/出力部70の画面表示部300は,情報画面301と,操作画面302から構成され,情報画面301にはサムネイル303を表示し,操作画面302には,リスト表示部305と,表示モード選択ボタン306とを表示し,
ユーザにより,リスト表示部305に表示された複数の撮影/保存日の中から一つが選択されると,表示・操作制御部60により,嗜好レベルデータベース50及び画像蓄積部20を参照して,その選択された撮影/保存日の複数の画像を情報画面301にサムネイル表示し(ステップS3),
ユーザにより,表示モード選択ボタン306が操作され(ステップS4),お好みモードが選択されると(ステップSA1-Y),表示・操作制御部60は,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルのデータを参照して,選択されている撮影/保存日の複数の画像を嗜好レベルの降順にソートし(ステップSA2),嗜好レベルの上位X枚の画像のみを情報画面301に表示させ(ステップSA3),
表示・操作制御部60は,ユーザ操作部80が操作されて,サムネイル表示された画像の中からユーザが鑑賞したい画像が選択されると,その選択画像を情報画面301に拡大表示し(ステップS5),
嗜好レベル算出部40は,画像が拡大表示されてから元のサムネイル表示に戻るまでの時間を鑑賞時間として計測し(ステップS6?ステップS8),
表示・操作制御部60は,ユーザによるユーザ操作部80の操作に基づいて,次の画像が鑑賞されるか否かを判定し(ステップS9),
嗜好レベル算出部40は,次の画像が鑑賞されないときに,測定された鑑賞時間を用いて,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルを更新し(ステップS10),
上記更新において,
嗜好レベル算出部40は,計測した鑑賞時間Tvが1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitを超えているか否かを判定し(ステップSB1),
鑑賞時間Tvが上限値Tlimit未満であれば(ステップSB1-Y),鑑賞時間Tvに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算し(ステップSB2),
鑑賞時間Tvが上限値Tlimit以上であれば(ステップSB1-N),1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算し(ステップSB3),嗜好レベルLを求めると,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルの値を更新し(図8のステップS10),前記係数α(t)は,画像を初めて鑑賞してから今回,鑑賞した日時までの経過時間tの単調減少関数で定義される,
画像表示方法。」

2.特開2005-346494号公報

原査定の拒絶の理由において引用された特開2005-346494号公報(以下,「引用文献2」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

ア.「【0001】
本発明は,コンテンツ共有システム及びコンテンツ重要度判定方法に関し,特に,個々のユーザに対してあるコンテンツの重要度を判別し,ユーザに価値ある通知メッセージを送るコンテンツ共有システム及びそのコンテンツ重要度判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,インターネット等のサーバにアップロードされたマルチメディアデータのコンテンツを複数のユーザ間で共有するコンテンツ共有システムが提供されている。一方,コミュニケーションシステム及びマルチメデイア技術の発達により,従来にまして,多くのユーザ,コミュニティとの関係を保つために,様々なツールやマルチメディアデータを利用できるようになった。それ故に,コンテンツ共有システム上に出回るコンテンツの量が膨大なものとなっている。しかし,自分に関係のないコンテンツはいわばノイズであり,自分に必要なコンテンツの確認をより困難にする要因となっている。現在,これらの状況に対して,多くのコンテンツの中から重要度の高いものだけを取り出す方法が求められている。」

イ.「【0021】
以下,図1?図24を参照して,本発明の一実施の形態の例について説明する。本例は,マルチメディアデータを複数のユーザ間で共有するシステムにおいて,個々のユーザに対してあるコンテンツの重要度を判定できるようにしたものである。
【0022】
最初に,コンテンツ共有システムの概要について,図1?図8を用いて説明する。コンテンツ共有システムは,複数のユーザが,静止画像,動画,音声,テキストを例とするマルチメディアデータをインターネット等の通信網を介して記録,読み出すことができるシステムである。このシステムの基本的な構成は,インターネット等の通信網上のサーバと,各ユーザが操作する複数のクライアントからなる。
【0023】
図1は,コンテンツ共有システムの概略構成を示す図である。図1において,コンテンツ管理部200は,後述するメディアデータとメタデータからなるコンテンツ(図4参照)を管理するモジュールであり,コンテンツの保存,修正,コメント追加,閲覧等を制御する。また,適切な認証手段により,許可されたクライアントのみが各種操作を実行することができるようになっている。
【0024】
またクライアント100及び101は,ユーザが直接操作を行うアプリケーションプログラムであり,メディアのキャプチャ,テキスト入力などのユーザインターフェース,位置情報などのメタデータの取得,コンテンツ管理部200へのコンテンツの登録,コンテンツの表示等の機能を提供するものである。ユーザはクライアントを介して,システム上に公開されたコンテンツの閲覧,登録,取得,削除,変更等の操作を行うことができる。」

ウ.「【0054】
図9は,本発明の一実施の形態の例のシステム構成を示す図である。この図9においては,図1と比較して,重要度判定部210,キーワード抽出部220,表示内容決定部230,ユーザ情報管理部240,ユーザ設定情報管理部260,履歴情報管理部250を追設している。
【0055】
図9に示される,重要度判定部210は,後述するユーザ環境情報やユーザ設定情報などを用いてコンテンツの重要度を判定する。重要度判定部210は,各機能を制御する制御部214と各種判定部210a,210b,210cによって構成される。さらに,各判定部は必要に応じて,特定の文字列を抽出するキーワード抽出部220を用いて,取得したデータからキーワードを抽出する。その他,重要度判定部210の詳しい動作などは後述する。
【0056】
また表示内容決定部230は,コンテンツ管理部200からコンテンツデータを取得し,重要度判定部210にデータを送信,得られた各コンテンツの重要度を用いて,クライアント100(101)にどのコンテンツデータを表示させるのかを決定する。
【0057】
またユーザ情報管理部240は,履歴情報保存部251に保存されるユーザによる投稿履歴情報及び閲覧履歴情報や,ユーザ設定情報保存部261に保存されるユーザ設定情報などのユーザに関する各種情報を扱い,投稿履歴情報や閲覧履歴情報に関するデータは履歴情報管理部250と,ユーザ設定情報に関するデータはユーザ設定情報管理部260とやり取りを行う。
・・・(中略)・・・
【0059】
ユーザ設定情報管理部260は,ユーザ設定情報部251へのユーザ設定情報の登録,取得,削除,変更等の操作を行うことができる。」

エ.「【0081】
次に,ユーザ自身による設定情報を用いて重要度を判定してユーザに提示する場合について述べる。
・・・(中略)・・・
【0083】
まず,ユーザ設定情報の登録について説明する。各ユーザは自分に関する情報をユーザ設定情報として登録しなければならない。登録されているユーザ設定情報の例を図13に示す。この図13に示すようにユーザ設定情報は大きく,(A)プロフィール情報,(B)グループ情報,(C)嗜好情報に分類される。
【0084】
プロフィール情報(図13A参照)には,ユーザID,名前,性別,年齢などが蓄積される。ここでユーザIDはユーザ設定情報管理部260が管理をしやすくするためのもので,各ユーザに対しユニークな数字や文字列で定義される。
・・・(中略)・・・
【0086】
嗜好情報(図13C参照)には,ユーザID,対象,興味度などが蓄積される。対象とはユーザが興味を持っているものであり,他のユーザやグループ,キーワードなどである。興味度は興味の強さを定義するもので例えば0?100などの数値で表される。また,各ユーザは嗜好情報を持たなくてもいいし,複数の嗜好情報を持っても良い。」

オ.「【0088】
次に,類似した嗜好を持つユーザの抽出について説明する。予め登録されたユーザ設定情報を利用することで,例えば似たような嗜好を持つユーザを抽出し,そのユーザの持つコンテンツ情報を閲覧することができる。以下,類似した嗜好を持つユーザのコンテンツを表示する処理を,図14に示すフローチャートを参照して説明する。
【0089】
まず,誰の嗜好と類似したユーザを検索するか重要度判定部210に入力する。ユーザ本人の場合にはユーザ設定情報管理部260からユーザIDを取得する(ステップS1401)。他のユーザの場合には,ユーザの選択(もしくは入力)したユーザ名を用いてユーザ設定情報管理部260からユーザIDを取得する。
【0090】
次いで重要度判定部210は,上記ステップS1401で取得されたユーザIDを用いてユーザ設定情報管理部260からユーザの嗜好情報を取得する(ステップS1402)。
【0091】
続いて重要度判定部210は,上記ステップS1402で取得されたユーザの嗜好情報に対し,ユーザ設定情報管理部260で管理されている他のユーザの嗜好情報と参照し類似度を計算する(ステップS1403)。ここでいう類似度とは,コンテンツの重要度と等しい。以下,情報の類似度はコンテンツの重要度として扱う。類似度の計算は嗜好の対象と興味度から計算することができる。例えば,ユーザ設定情報管理部260に蓄積されている嗜好情報において,全ユーザの対象がx種類ある場合,各対象の興味度を要素とするx次元の配列を作成し,対象ユーザの配列との余弦を類似度とすることができる。
【0092】
上記ステップS1403で計算された類似度に基づき,類似度の高いユーザを選択する(ステップS1404)。ユーザは複数選択されてもよいし,類似度に基づき候補をユーザに提示し,ユーザからの入力に従って選択してもよい。本実施例では,類似度の高いユーザを選択する方が重要度が高いと判定するが,対象によっては類似度の低いユーザを選択してもよい。
【0093】
上記ステップS1404で選択されたユーザ情報を表示内容決定部230に渡すことで,表示内容決定部230はコンテンツ管理部300から指定されたユーザのコンテンツを取得する(ステップS1405)。もしくは重要度判定部210が直接コンテンツ管理部から指定されたユーザのコンテンツを取得し,表示内容決定部にコンテンツを渡す構造にしてもよい。
【0094】
表示内容決定部230により上記ステップS1305にて取得されたユーザのコンテンツは,表示構成部300において適切な表示構成データが生成され,クライアントに送信される(ステップS1406)。・・・(中略)・・・
【0096】
また,表示するコンテンツを嗜好の類似しているコンテンツに限定して表示してもよい。例えば,ユーザが「旅行」という嗜好を持つ場合,類似した嗜好を持つユーザのコンテンツの中で「旅行」以外に関するコンテンツは嗜好が同じでないため,興味がないと判断し,表示するコンテンツから削除する。図16にその表示例(その2)を示す。このように図15に示された「Taro」のコンテンツから「旅行」に関するコンテンツのみを表示し,それ以外のサッカー,釣り,ゴルフなどに関するコンテンツを削除して表示する。このとき,表示するかしないかの判断は,類似度の適当な閾値を決めて判断すればよい。
【0097】
どのコンテンツがユーザの嗜好に一致しているかは,各コンテンツの持つメタデータから判断することができる。メタデータは,ユーザがコンテンツを蓄積するときにコンテンツの種類(例えば,「旅行」「音楽」「食事」・・・)を指定することで,付け加えることができる。もしくは画像を撮影した場所や時間など,GPS(Global Positioning System)や時計を使うことでシステムが自動的に付加してもよい。さらに画像認識技術を用いて,何が写っているか(人,モノ,風景,・・・),どんな感じの画像か(暖かい,冷たい,躍動感のある,・・・)といった情報をメタデータとして付加してもよい。」

前記ア.?オ.によれば,引用文献2には,次の事項が記載されているといえる。

<引用文献2の記載事項>
「個々のユーザに対してあるコンテンツの重要度を判別する,コンテンツ共有システムのコンテンツ重要度判定方法において,
コンテンツ共有システムは,複数のユーザが,静止画像,動画等のマルチメディアデータを記録,読み出すことができるシステムであり,
コンテンツ管理部200は,メディアデータとメタデータからなるコンテンツを管理するモジュールであり,コンテンツの保存,閲覧等を制御し,
クライアント100,101は,コンテンツ管理部200へのコンテンツの登録,コンテンツの表示等の機能を提供し,ユーザはクライアントを介して,システム上に公開されたコンテンツの閲覧,登録等の操作を行うことができ,
重要度判定部210は,ユーザ設定情報を用いてコンテンツの重要度を判定し,
表示内容決定部230は,コンテンツ管理部200からコンテンツデータを取得し,重要度判定部210にデータを送信し,得られた各コンテンツの重要度を用いて,クライアント100(101)にどのコンテンツデータを表示させるのかを決定し,
ユーザ情報管理部240は,ユーザ設定情報保存部261に保存されるユーザ設定情報などのユーザに関する各種情報を扱い,ユーザ設定情報は,ユーザID,ユーザが興味を持っている対象,興味の強さを数値で表した興味度などの嗜好情報を含み,
ユーザ自身による設定情報を用いて重要度を判定してユーザに提示する場合に,
ユーザ本人のユーザIDを取得し(ステップS1401),
重要度判定部210は,取得されたユーザIDを用いてユーザ設定情報管理部260からユーザの嗜好情報を取得し(ステップS1402),続いて,取得されたユーザの嗜好情報に対し,ユーザ設定情報管理部260で管理されている他のユーザの嗜好情報と参照し類似度を計算し(ステップS1403),当該類似度は,コンテンツの重要度と等しく,全ユーザの対象がx種類ある場合,各対象の興味度を要素とするx次元の配列を作成し,対象ユーザの配列との余弦を類似度とし,計算された類似度に基づき,類似度の高いユーザを選択し(ステップS1404),
表示内容決定部230は,選択されたユーザのコンテンツを取得し(ステップS1405),
取得されたユーザのコンテンツは,表示構成部300において適切な表示構成データが生成され,クライアントに送信され(ステップS1406),
また,表示するコンテンツを嗜好の類似しているコンテンツに限定して表示してもよく,ユーザが「旅行」という嗜好を持つ場合,類似した嗜好を持つユーザのコンテンツの中で「旅行」以外に関するコンテンツは嗜好が同じでないため,興味がないと判断し,表示するコンテンツから削除し,このとき,類似度の適当な閾値を決めて,表示するかしないかの判断を行い,
どのコンテンツがユーザの嗜好に一致しているかは,各コンテンツの持つメタデータから判断することができ,メタデータは,ユーザがコンテンツを蓄積するときにコンテンツの種類(例えば,「旅行」「音楽」「食事」・・・)を指定することで,付け加えることができ,もしくは画像を撮影した場所や時間などを,GPSや時計を使うことでシステムが自動的に付加してもよく,さらに画像認識技術を用いて,何が写っているか(人,モノ,風景,・・・),どんな感じの画像か(暖かい,冷たい,躍動感のある,・・・)といった情報をメタデータとして付加してもよい,
コンテンツ重要度判定方法。」

第3 対比

次に,本願発明と引用発明とを対比する。

・本願明細書の「【0062】・・・(中略)・・・個々の画像レコードの画像値インデックスは,各々の画像レコードが利用されるときにも変化する。利用される画像はユーザにとってより価値があると仮定される。」の記載,「【0078】・・・(中略)・・・ある画像のカメラ上のディスプレイ中にシェアボタンを操作することは,画像値インデックスを最大値またはユーザが関心を持っていることを示すその他の所定の数値に変更する補足パラメータとして扱われる。」の記載によれば,本願発明の画像形成評価方法は,要するに,カメラで撮影された個々の画像に対して,ユーザがどの程度の価値や関心を有しているかを画像値インデックスで表すものである。
一方,引用発明の画像表示方法は,ディジタルカメラ等から得られた画像について,ユーザがどの程度の嗜好を有するかを嗜好レベルで表すものであり,この嗜好レベルは,ユーザの価値や関心の高さを表すものにほかならない。
したがって,引用発明の画像表示方法は,ディジタルカメラ等から得られた画像についてユーザの嗜好レベルを計算する点に着目すれば,カメラで形成された画像を評価する方法ということができ,本願発明の「画像形成評価方法」に相当する。

・引用発明の画像入力部10は,ディジタルカメラ等を用いて画像を入力するから,その入力の前に,ディジタルカメラでシーンを撮影して画像を生成するステップが存在することは明らかである。
したがって,引用発明の上記ステップは,カメラでシーンを画像形成することにより画像レコードを生成するステップに相当する。

・引用発明の「画像蓄積部20は,画像入力部10によって入力された画像データを保存し」は,本願発明の「前記画像レコードをメモリに保存するステップ」に相当する。

・引用発明の「ユーザにより,リスト表示部305に表示された複数の撮影/保存日の中から一つが選択されると,表示・操作制御部60により,嗜好レベルデータベース50及び画像蓄積部20を参照して,その選択された撮影/保存日の複数の画像を情報画面301にサムネイル表示し(ステップS3),
ユーザにより,表示モード選択ボタン306が操作され(ステップS4),お好みモードが選択されると(ステップSA1-Y),表示・操作制御部60は,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルのデータを参照して,選択されている撮影/保存日の複数の画像を嗜好レベルの降順にソートし(ステップSA2),嗜好レベルの上位X枚の画像のみを情報画面301に表示させ(ステップSA3),
表示・操作制御部60は,ユーザ操作部80が操作されて,サムネイル表示された画像の中からユーザが鑑賞したい画像が選択されると,その選択画像を情報画面301に拡大表示し(ステップS5)」は,全体として,ユーザからの指示によって,画像蓄積部に保存された画像を情報画面に表示するステップであるから,本願発明の「ユーザからの指示に応じて,前記メモリ内の前記画像レコードにアクセスするステップ」に相当する。

・本願明細書には,本願発明の「前記ユーザの利用に関連する利用パラメータ」について,次の事項が記載されている。

「【0088】・・・(中略)・・・利用パラメータの例としては,編集時間,閲覧時間,レビュー回数,作成されたハードコピーの数,作成されたソフトコピーの数,画像レコードのコピーやリンクを含めた電子メールの件数,この電子メールの受信者の数,アルバムでの利用,ウェブサイトでの利用,スクリーンセイバとしての利用,名前の変更,注釈付け,保存(アーカイブ)状態(archival state),その他のフルフィルメント(実行)がある。」

上記記載によれば,本願発明の「前記ユーザの利用に関連する利用パラメータ」は画像レコードの「閲覧時間」を含むことから,引用発明の「鑑賞時間」は,本願発明の「前記ユーザの利用に関連する利用パラメータ」に相当する。
したがって,引用発明の「嗜好レベル算出部40は,画像が拡大表示されてから元のサムネイル表示に戻るまでの時間を鑑賞時間として計測し(ステップS6?ステップS8)」と,本願発明の「前記カメラ上のアクセスされた画像レコードの前記ユーザの利用に関連する利用パラメータを追跡するステップ」は,「アクセスされた画像レコードの前記ユーザの利用に関連する利用パラメータを追跡するステップ」の点で共通する。
ただし,本願発明の画像レコードは,「カメラ上」の画像レコードであるのに対し,引用発明の画像は,画像表示装置の画像蓄積部20に保存されている点で相違する。

・前記のとおり,本願発明の「画像値インデックス」は,カメラで撮影された個々の画像に対して,ユーザがどの程度の価値や関心を有しているかを表すものである。これに対し,引用発明の「嗜好レベル」も,ディジタルカメラ等から得られた画像について,ユーザがどの程度の嗜好を有するかを表すものである。
したがって,引用発明の「嗜好レベル」は,本願発明の「画像値インデックス」に相当する。

・引用発明の「嗜好レベル算出部40は,計測した鑑賞時間Tvが1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitを超えているか否かを判定し(ステップSB1),
鑑賞時間Tvが上限値Tlimit未満であれば(ステップSB1-Y),鑑賞時間Tvに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算し(ステップSB2),
鑑賞時間Tvが上限値Tlimit以上であれば(ステップSB1-N),1回の鑑賞での鑑賞時間の増加の上限値Tlimitに係数α(t)を乗算したものを鑑賞前の嗜好レベルLに加算し(ステップSB3),嗜好レベルLを求めると,嗜好レベルデータベース50の嗜好レベルの値を更新し(図8のステップS10),前記係数α(t)は,画像を初めて鑑賞してから今回,鑑賞した日時までの経過時間tの単調減少関数で定義される」は,
本願発明の「前記追跡された利用パラメータに基づいて,前記アクセスされた画像レコードについての画像値インデックスを計算するステップ」に相当する。

したがって,本願発明と引用発明は,次の点で一致する。

<一致点>
「画像形成評価方法であって,
カメラでシーンを画像形成することにより画像レコードを生成するステップと,
前記画像レコードをメモリに保存するステップと,
ユーザからの指示に応じて,前記メモリ内の前記画像レコードにアクセスするステップと,
アクセスされた画像レコードの前記ユーザの利用に関連する利用パラメータを追跡するステップと,
前記追跡された利用パラメータに基づいて,前記アクセスされた画像レコードについての画像値インデックスを計算するステップ,
を含む方法。」

そして,本願発明と引用発明は,次の点で相違する。

<相違点1>
「アクセスされた画像レコード」が,本願発明では「前記カメラ上」の画像レコードであるのに対し,引用発明では,ディジタルカメラとは別の画像表示装置に蓄積されている点。

<相違点2>
本願発明は,「前記アクセスされた画像レコードを分析して,画像品質及び画像内容のうち少なくとも1つに基づいて分析結果を生成するステップと,
前記分析結果に基づいて,前記画像値インデックスを修正するステップ」とを有するのに対し,引用発明は,これらのステップを有しない点。

<相違点3>
本願発明は,「シェアボタンの操作,ユーザリアクション,メタデータ関連情報,ユーザプロファイルと前記画像レコードとの比較,参照画像と前記画像レコードとの比較,及び撮影日時のうち少なくとも1つに関連する補足パラメータを求めるステップと,
前記補足パラメータに基づいて,前記画像値インデックスを修正するステップ」を有するのに対し,引用発明は,これらのステップを有しない点。

第4 判断

1. <相違点1>について

引用文献1には,画像表示装置について,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

「[0122] 上記第1?第5実施形態は,画像を保存する記憶装置を有する装置全般に広く適用可能であり,画像表示装置100,100a,100bとしては,表示/出力部(表示装置)を有する装置として,パソコン,ディジタル・カメラ,携帯電話,情報端末,画像ビューワ等のモバイル機器に適用可能である。」

上記記載によれば,画像表示装置としてディジタルカメラを適用することが示唆されている。その場合,ディジタルカメラが画像蓄積部や表示/出力部を備えることになるから,ディジタルカメラが,撮影した画像データを画像蓄積部に保存し,その画像データにアクセスして表示/出力部に表示させることは普通に想到されることである。
してみると,引用発明において,引用文献1の上記記載に基づいて,画像表示装置をディジタルカメラとし,それにより,アクセスする画像レコードをカメラ上の画像レコードとすることは,容易に想到し得ることである。

2. <相違点2>について

引用文献1には,嗜好レベルの算出について,次の事項が記載されている。

「[0071] なお,ユーザによる画像の鑑賞時間に加えて,画像の印刷回数や送信回数を用いて,画像の嗜好レベルが算出されることができる。画像の印刷回数や送信回数が多いものは,ユーザの嗜好レベルが高いと考えられるためである。」

上記記載によれば,嗜好レベルは,鑑賞時間に加えて,ユーザの嗜好を把握し得る他の情報も用いて算出できることが示唆されている。
一方,引用文献2には,コンテンツ共有システム上にあるコンテンツのうち,ユーザにとって重要度の高いコンテンツを選択して表示する方法が記載されている。
表示するコンテンツはユーザの嗜好に類似しているコンテンツに限定され,表示するかしないかは,類似度に適当な閾値を決めて判断される。
どのコンテンツがユーザの嗜好に一致しているかは,各コンテンツの持つメタデータと,登録されたユーザの嗜好情報との類似度から判断される。そのメタデータは,ユーザが「旅行」「音楽」のようなコンテンツの種類を指定することで,付け加えてることができ,画像を撮影した場所や時間をGPSや時計を使うことでシステムが自動的に付加してもよく,画像認識技術を用いて,何が写っているか(人,モノ,風景・・・)の情報や,どんな感じの画像か(暖かい,冷たい,躍動感のある・・・)の情報を付加してもよい。
メタデータとユーザの嗜好情報と間の類似度は,静止画像などのコンテンツに対するユーザの嗜好レベルを表し,しかも,ユーザが好むコンテンツを選択表示するために利用され,引用発明の嗜好レベルと共通するものである。
そうすると,引用文献1には,上記のように,鑑賞時間に加えて他の情報も用いて嗜好レベルを算出できることが示唆され,さらに,引用文献2には,ユーザの嗜好レベルを表す類似度を利用して,静止画像などのコンテンツを選択表示することが記載されているから,引用発明において,複数の画像の中からユーザの嗜好が反映された画像を表示するために,鑑賞時間に加えて,引用文献2に記載された上記類似度を用いて嗜好レベルを算出することは格別困難ではない。
そして,上記類似度の算出に,画像認識技術を用いて付加されたメタデータを利用すれば,画像認識技術を用いてコンテンツの画像を分析し,画像内容に基づいて分析結果を生成することになる。
また,鑑賞時間に加えて上記類似度も考慮した嗜好レベルを算出する場合,鑑賞時間から算出された嗜好レベルすなわち画像値インデックスに,類似度に基づく嗜好レベルを加えることによって,画像値インデックスを修正することは,適宜なし得ることである。
してみると,引用発明において,複数の画像の中からユーザの嗜好が反映された画像を表示するために,鑑賞時間に加えて,引用文献2に記載された類似度も考慮して嗜好レベルを算出し,そのために,アクセスされた画像を画像認識技術を用いて分析し,何が写っているか,どんな感じの画像かといった画像内容に関する情報を生成し,分析結果である当該情報に基づいて嗜好レベルを修正して,上記相違点に係るステップを備えるようにすることは,容易に想到し得ることである。

3. <相違点3>について

本願発明の「補足パラメータ」について,本願明細書には次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

「【0078】
・・・(中略)・・・補足パラメータの例としては,ユーザの反応,画像品質,画像内容,メタデータに基づく情報,ユーザ入力以外のパラメータから得られる情報等がある。」

「【0081】
メタデータに基づく情報の例としては,画像レコードとともに保持されるテキストまたは音声による注釈から得られる情報,位置情報,現在の日時,撮影者の識別情報,がある。メタデータは,ユーザが入力しても,自動的に入力されてもよい。注釈は,ユーザが個々につけても,あるいは情報内容またはプリセット情報から生成されてもよい。たとえば,カメラが自動的に選択された地理的位置に「家」というキャプションを生成することも,あるいはユーザが同じキャプションを追加することもできる。全地球測位システムユニット等の位置情報判断に適したハードウェアとソフトウェアは,当業者の間で周知である。」

「【0082】
補足パラメータは,他のパラメータから導き出すことができる。導き出される情報の例には,予め決定されたユーザプロファイルのパラメータとの適合性,高いまたは低い画像値インデックスを持つと判断される1つまたは複数の基準画像と画像内容との相異度または類似度,日付と位置の組合せ等がある。」

上記記載によれば,「補足パラメータ」は,ユーザの反応,画像品質,画像内容,メタデータに基づく情報,予め決定されたユーザプロファイルのパラメータとの適合性などの総称である。
また,本願発明の「メタデータ関連情報」は,本願明細書に記載された「メタデータに基づく情報」に対応するもので,例えば,ユーザによって入力されたキャプション,全地球測位システムユニットの位置情報である。
一方,引用文献2に記載されたメタデータは,静止画像等のコンテンツに付加されるものであり,画像認識技術を用いて得られる情報以外に,ユーザが指定した「コンテンツの種類」,GPSや時計を使うことで自動的に付加される「画像を撮影した場所や時間」も含むものである。
ユーザが指定した「コンテンツの種類」は,本願明細書に記載されたユーザによって入力されるキャプションに相当し,GPSを使うことで自動的に付加される撮影場所は,本願明細書に記載された全地球測位システムユニットの位置情報に相当する。
したがって,引用文献2に記載された「コンテンツの種類」や撮影場所のメタデータは,本願発明の「メタデータ関連情報」に相当する。
さらに,引用文献2には,メタデータとして,時計を使うことで自動的に付加される画像を撮影した時間も記載されている。この撮影時間は,本願発明の「撮影日時」に相当する。
さらに,引用文献2には,コンテンツのメタデータとユーザの嗜好情報との類似度を算出するが,このユーザの嗜好情報は「ユーザプロファイル」といえるから,本願発明の「ユーザプロファイルと画像レコードとの比較」に相当する。

したがって,引用文献2には,「メタデータ関連情報」,「撮影日時」,「ユーザプロファイルと画像レコードとの比較」に基づいて,ユーザの嗜好レベルを表す類似度を判定することが記載されているといえる。
してみると,引用発明において,複数の画像の中からユーザの嗜好が反映された画像を表示するために,鑑賞時間に加えて,引用文献2に記載された類似度も考慮して嗜好レベルを算出し,そのために,コンテンツの種類や画像を撮影した場所に関するメタデータ(「メタデータ関連情報」),画像を撮影した時間(「撮影日時」),これらのメタデータとユーザの嗜好情報との類似度(「ユーザプロファイルと前記画像レコードとの比較」)に関連する補足パラメータを求め,その「補足パラメータ」に基づいて,嗜好レベルすなわち画像値インデックスを修正して,上記相違点に係るステップを備えるようにすることは,容易に想到し得ることである。

そして,本願発明の奏する作用効果も,引用発明,引用文献2の記載事項から予測される範囲のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願発明は,引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-13 
結審通知日 2015-10-14 
審決日 2015-10-27 
出願番号 特願2012-221062(P2012-221062)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋口 龍弥  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 緑川 隆
手島 聖治
発明の名称 カメラへのユーザ入力に基づく画像値インデックス  
代理人 大塚 文昭  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  
代理人 辻居 幸一  
代理人 岩崎 吉信  

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