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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1312487
審判番号 不服2014-17879  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-08 
確定日 2016-03-15 
事件の表示 特願2011-521009「ユーザインターフェースを実現する電子装置及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月 4日国際公開、WO2010/013876、平成23年12月15日国内公表、特表2011-530101〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2009年(平成21年)2月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年(平成20年)8月1日、大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成26年4月28日付けで拒絶査定がなされ、平成26年9月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において、平成27年6月4日付けで拒絶理由を通知し、同年9月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成27年9月8日付けの手続補正書の【請求項1】の欄に記載された次のとおりのものである。

「 【請求項1】
電子装置において、
客体をディスプレイする表示部と、
ユーザ入力の位置と圧力とを検知する検知部と、
前記ユーザ入力の位置が検知され、前記検知された圧力が第1の予め設定された値以下である場合は、前記ユーザ入力の種類を近接と判断し、
前記ユーザ入力の種類が近接と判断されない場合において、前記検知された圧力が、
前記第1の予め設定された値より大きくて、第2の予め設定された値以下の場合、前記ユーザ入力の種類をタッチと判断し、
前記第2の予め設定された値より大きい場合、前記ユーザ入力の種類をユーザにより加えられた圧力であると判断し、
3つの前記ユーザ入力の種類の判断に応じて、かつ、前記検知された位置に基づいて、前記ディスプレイされた客体に関連するデータをディスプレイするように前記表示部を制御する制御部と、
を含む電子装置。」

3.引用発明等
(1)平成27年6月4日付けの拒絶理由通知で引用した特開平10-171600号公報(以下、引用例1という。)には次の記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも操作者が選択可能な選択項目を表示する表示手段と、
前記選択項目に対する操作者の接触の有無を検知する検知手段とを有する入力装置において、
前記検知手段により検出した少なくとも接触の有無以外の多様な接触の度合いを判定する判定手段と、
前記判定手段によって判定された接触の度合いに応じて前記表示手段に表示される前記選択項目の表示内容を複数段階にわたり変化させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする入力装置。
・・・(中略)・・・
【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の入力装置において、
前記検知手段が座標検出回路及び圧力検出回路とで構成されていることを特徴とする入力装置。」

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば証明書自動交付機や現金自動預け払い機等の自動処理機に設けられている入力装置に関し、例えばCRT等の表示画面と同様な機能を果たす他に、例えばタッチパネル等の入力装置と同様の機能を果たすことができる入力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、証明書自動交付機や現金自動預け払い機等の自動処理機のCRT等の表示画面に重ね合わせて取り付けられている入力装置では、該入力装置の入力方法がタッチパネル式となっており、例えば図15(a)に示すように、その表示画面3Aに表示されている選択項目キーには、凸型を示す表示が施されていた。つまり、該選択項目キーを斜視図として表示したり影をつけた状態で表示することによって、利用者に対して該選択項目キーが凸型と見えるような工夫がされていた。そうした凸型に見えるような表示が施されている選択項目キーを利用者が触れた場合、即ち押下した場合、その凸型の表示を、例えば図15(b)に示すように、影を付ける部分を変化させることで凹形状に見えるような表示のキーに表示変化させることによって、利用者に対して、実際にそのキーが押下され、該選択項目が選択、確定されたことを認識させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうした従来の入力装置では、例えば、利用者が、表示画面上において、選択する意思などないキーにも関わらずそのキーに対して何気なしに触れてしまうと、入力装置側では、そのキーが選択された旨検知されてしまい、その選択した覚えのないキーが利用者によって選択、確定された結果となり、凸形状若しくは平面状となっているキーが一律に凹形状のキーに表示変化してしまっていた。
【0004】そのために、利用者は何気なしに触れたことによって選択確定され、表示変化されてしまったキーを、取り消して、再び選択されていない状態に戻すための操作をするために、例えば画面に所定領域に配置されている中止キー等を押下することにより、もう一度元に戻した状態からあらためてキーの選択をし直す動作を余儀なくさせられていた。
【0005】本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、操作者の意図に反して選択項目が押下された旨を検知されることがなく、かつ、操作者の好みに応じて選択入力の検知レベルを設定することのできる入力装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、請求項1に記載の入力装置は、少なくとも操作者が選択可能な選択項目を表示する表示手段と、前記選択項目に対する操作者の接触を検知する検知手段とを有する入力装置であって、前記検知手段により検出した少なくとも接触の有無より多様な接触の度合いを判定する判定手段と、前記判定手段によって判定された接触の度合いに応じて前記表示手段に表示される前記選択項目の確定度を複数段階にわたり変化させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】ゆえに、本発明の入力装置は、表示手段が少なくとも操作者が選択可能な選択項目を表示し、検知手段が該選択項目に対する操作者の接触の有無を検知し、判定手段が該検知手段により検出した少なくとも接触の有無以外の多様な接触の度合いを判定し、表示制御手段が該判定手段によって判定された接触の度合いに応じて該表示手段に表示される該選択項目の表示内容を複数段階にわたり変化させる。
【0008】ここでいう「接触の有無以外の多様な接触の度合い」とは、表示手段に表示されている選択項目に対して操作者が「触れる」あるいは「触れない」といった二者択一的な内容のみを指すのではなく、それに加えて、該選択項目に対して、操作者が指等によって触れた場合、その触れた指等の、選択項目に対して押下する力の程度をも意味したり、更には、該選択項目に対して操作者が接触し続ける接触時間の長さという意味したり、更には双方をも含む内容である。
【0009】従って、判定手段は、操作者の、選択項目に対する接触において、単に接触したか否という接触の有無の二者択一的な判定にとどまらず、それ以外の多様な接触の度合いを判定することができ、例えば、「たまたま触れただけ」、「選択しようかどうか迷いながら触れた」、「選択の意思をもって触れた」、「確固とした意思をもって触れた」等といったような、選択項目に対する操作者の意思状態に応じてきめ細かいレベルで判定することができる。と共に、例えば前述の「選択の意思をもって触れた」、「確固とした意思をもって触れた」場合に、選択が確定された旨の制御、即ち、選択後の段階に移行させる動作制御をさせるようにすればよい。
【0010】また、表示制御手段が、そのように判定手段によって判定されたきめ細かいレベルに応じて、選択項目の確定度を複数段階にわたり変化させることができるので、その表示された選択項目の確定度を見ることによって、どのような意思で該選択項目に操作者が触れたのかについて認識することができる。
【0011】ここでいう、「選択項目を複数段階にわたり変化させる」とは、例えば、前述したように、「たまたま触れただけ」、との判定手段による判定に対しては、接触前とは全く変わらない状態のままの表示をさせ、「選択しようかどうか迷いながら触れた」場合には、それに応じた、接触前の状態とは変化はさせるが、それほど変わらない内容の表示をさせ、更に、「選択の意思をもって触れた」、あるいは「確固とした意思をもって触れた」場合には、それに応じて、明らかに接触前とは異なる表示内容とさせることができる。
・・・(中略)・・・
【0020】そして、請求項4に記載の入力装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の入力装置であって、前記検知手段が座標検出回路及び圧力検出回路とで構成されていることを特徴とする。
【0021】ゆえに、検知手段を構成する座標検出回路が操作者による入力の位置情報を検出し、圧力検出回路が操作者による入力の意思の程度を検出する。従って、判定手段は、圧力検出回路が検出する信号を受信することによって、「接触の有無より多様な接触の度合い」を判定することができる。
【0022】その場合、圧力検出回路が検出する検出内容について、その検出した押圧力の程度に応じて、前述したように、例えば、「たまたま触れただけ」、「選択しようかどうか迷いながら触れた」、「選択の意思をもって触れた」、「確固とした意思をもって触れた」等といったような、選択項目に対する操作者の意思状態に応じてそれぞれ検出内容を異ならせてもよい。
・・・(中略)・・・
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
・・・(中略)・・・
【0036】続いて、タッチパネル部5の構成の詳細について、図4を参照して説明する。図4は、タッチパネル部5を、CRT表示装置4の画面に重ね合わせて取り付けて使用する場合の一実施例を示している。即ち、タッチパネル板52は、CRT表示装置4の画面に重ね合わせて取り付けられており、光学式又は静電式の座標検出素子を備えている。そのタッチパネル板52の外枠部の四隅には、圧力検出素子51が取り付けられており、操作者が指等によって操作入力する時に加えられる圧力を検知し、電圧に変換して、圧力検出回路53に出力する。この圧力検出回路53は、CPU100と接続されており、圧力検出素子51から入力した電圧に応じた信号をCPU100へ出力する。また、座標検出回路54は、CPU100と接続されており、ここでは図示しない座標検出素子からの信号を基に、操作者が触れた指等のタッチパネル板52上の位置を検出し、その旨の信号をCPU100へ出力する。なお、この圧力検出回路53及び座標検出回路54は、本発明における検知手段に相当する。
【0037】また、表示制御回路55は、本発明における表示制御手段に相当し、CPU100からの制御信号に基づいて、選択キーの表示内容、即ち窪み状態を示す画面をCRT表示装置4に表示させる。
【0038】更に、図5を参照して、本実施例における光学式のタッチパネル板52の詳細について説明する。なお、図では説明を簡単にするためにY軸方向の光学系のみ示す。
【0039】図5(a)は、タッチパネル部5を正面から見た図であり、左側に位置する発光部32と右側に位置する受光部33からなる座標検出素子及び発光部32及び受光部33間に位置する透明板状のタッチパネル板52からなって、公知のタッチパネルを構成している。発光部32と受光部33とは対になっており、タッチパネル板52の表面においてY軸方向に離散的に配置されている。
【0040】図5(b)は、タッチパネル部5の断面図であり、受光部33は発光部32から入射される光ビームを電圧に変換して座標検出回路54に出力するが、操作者の指31を透明板であるタッチパネル板52に近づけると、発光部32から出力されている光ビームが指で遮られ、それに対応する受光部33へは該光ビームが入力されなくなる。他の位置に配置されている発光部32から出力されている他の光ビームは対応する受光部33へ入力されている。そして、受光部33の出力電圧をCPU100がモニタすることにより、操作者の指による指示位置、即ちY軸の座標を知ることができる。なお、X軸の座標を知る手順についても同様である。
【0041】また、タッチパネル板52は、圧力検出素子51を挟んでベース部材35に接合され、そのベース部材35は、更に適宜の接合手段によりCRT表示画面4に対して固定して取り付けられている。
【0042】続いて、図6を参照して圧力検出素子51の構成の詳細について説明する。
【0043】圧力検出素子51は、図6に示すように、例えば電極41、42が接合された感圧導電ゴム43で形成されたものであり、電極を介して定電流が供給される。そして、押圧力が加わると、ゴムの抵抗値が変化し、例えば図7に示すような特性の電圧出力が得られるように構成されている。なお、その特性については、実線又は破線のいずれでもよい。なお、ここでは、破線を前提として、図3(a)の表示変化テーブルに対応した閾値a、b(bはaより大きい)が設定されている。この場合、例えば閾値a未満を押圧力xg重未満に対応させ、閾値a以上b未満を押圧力xg重以上yg重未満に対応させ、閾値b以上を押圧力yg重以上に対応させればよい。また、実線を前提とすると、その逆でもよい。
【0044】続いて、上記構成を有する入力装置が取り付けられた証明書自動交付機1の動作について、図8(a)のフローチャートを参照して説明する。
【0045】証明書自動交付機1は、通常時、すなわち誰も操作をしていないときは、操作者に対して、CRT表示装置3における画面へのタッチを促す表示を行っている。そして、操作者が、該画面をタッチする旨をCPU100が検知すると、タッチパネル部5のおけるキーの調整処理に移行する。
・・・(中略)・・・
【0053】ここで、S020、S060及びS100における入力装置に関わる動作について、図8(b)のフローチャートを参照して説明する。
【0054】CPU100は、操作者によってタッチパネル板52にタッチされたかどうか監視し(S200)、操作者が、その指等によってタッチ板52に触れると、その旨を前述したように、発光部32から出力されている光ビームが遮られ、その指が触れた箇所に対応する部分の受光部33には、該光ビームが入力されなくなり、その信号を座標検出回路54から受け取ることによって、操作者がタッチパネル板52に接触した位置に関する情報を得(S210:はい)、次に、該位置が操作者によってどれくらいの力で押されているかを判断する。
【0055】即ち、圧力検出素子51から検出された押下力が、xg重未満であれば、操作者は該選択項目を選択する意思がないものと判断して(S220:軽く押された)、CRT表示装置4に表示されている選択項目の表示内容を、接触されていないときと同じ表示のままにさせる。この場合、例えば、S020において、図10(a)に示すような証明書の種類を選択する旨の表示画面に対して、操作者が所望の証明書の選択をするとき、仮にCPU100が、操作者によって「印鑑登録証明書」の選択キーがxg重未満の押下力で接触された旨の信号を圧力検出回路53から受け取ると、HDD101内の表示変化テーブルを参照して、図10(b)の3Bに示すように、接触前と同じ平面状の表示内容のままにさせるのである。そして、引き続いて、操作者によってタッチパネル板52にタッチされたかどうかの監視へ戻って(S200)、そこから同じ動作を繰り返す。
【0056】一方、圧力検出素子51から検出された押下力が、xg重以上であり、かつyg重未満であれば、操作者は該選択項目を選択する意思が一応はあるがまだ確固とした意思まではないものと判断して(S220:やや強く押された)、CRT表示装置4に表示されている選択項目の表示内容を、少し変化させて表示させる(S230)。また、この場合は、該選択項目を確定させる制御はしない。例えば、S020において、図10(a)に示すような証明書の種類を選択する旨の表示画面に対して、操作者が所望の証明書の選択をするとき、仮にCPU100が、操作者によって「印鑑登録証明書」の選択キーがxg重以上yg重未満の押下力で接触された旨の信号を圧力検出回路53から受け取ると、HDD101内の表示変化テーブルを参照して、図10(b)の3Cに示すように、接触前に比べて少し窪んだような表示内容に変化させるのである。そして、引き続いて、操作者によってタッチパネル板52にタッチされたかどうかの監視へ戻って(S200)、そこから同じ動作を繰り返す。
【0057】また、圧力検出素子51から検出された押下力が、yg重以上であれば、操作者は該選択項目を選択する意思が確固としたものであると判断して(S220:強く押された)、CRT表示装置4に表示されている選択項目の表示内容を、大きく変化させて表示させる(S240)。また、この場合は、該選択項目を確定させる制御も同時に行う。例えば、S020において、図10(a)に示すような証明書の種類を選択する旨の表示画面に対して、操作者が所望の証明書の選択をするとき、仮にCPU100が、操作者によって「印鑑登録証明書」の選択キーがyg重以上の押下力で接触された旨の信号を圧力検出回路53から受け取ると、HDD101内の表示変化テーブルを参照して、図10(b)の3Dに示すように、接触前に比べて大きく窪んだような表示内容に変化させるのである。その後、メインルーチンに戻り、次の段階に移行する。
・・・(中略)・・・
【0060】なお、本実施例においては、タッチパネル部4におけるキーの表示変化を3種類示したが、それよりも多い種類の変化パターンを設定してもよい。
・・・(中略)・・・
【0064】
【発明の効果】以上説明したことから明かなように、請求項1に記載の入力装置によれば、判定手段は、操作者の、選択項目に対する接触において、単に接触したか否という接触の有無の二者択一的な判定にとどまらず、それよりも多様な接触の度合いを判定することができ、例えば、たまたま触れただけ、選択しようかどうか迷いながら触れた、選択の意思をもって触れた、確固とした意思をもって触れた等といったような、選択項目に対する操作者の意思状態に応じてきめ細かいレベルで判定することができる。また、表示制御手段が、そのように判定されたきめ細かいレベルに応じて、選択項目の確定度を複数段階にわたり変化させることができるので、その表示された選択項目の確定度を見ることによって、どのような意思で該選択項目に操作者が触れたのかについて認識することができる。
・・・(中略)・・・
【0068】更に、請求項4に記載の入力装置によれば、検知手段を構成する座標検出回路が操作者による入力の位置情報を検出し、圧力検出回路が操作者による入力の意思の程度を検出する。従って、判定手段は、圧力検出回路が検出する信号を受信することによって、「接触の有無以外の多様な接触の度合い」を判定することができる。」

そして、引用例1の上記記載事項を関連図面と技術常識に照らせば、次のことがいえる。
ア.引用例1の段落【0053】?【0057】に説明されている、図8(b)のS210とS220においてなされる判断は、請求項1でいう「判定手段」においてなされるものであり、同S210とS220においてなされる判断の結果は、同請求項1でいう「検知手段により検出した少なくとも接触の有無以外の多様な接触の度合い」を表すものである。
イ.引用例1の上記段落【0053】?【0057】の記載によれば、上記「接触の度合い」は、次のような度合いを含むものである。
(ア)座標検出回路54から操作者がタッチパネル板52に接触した位置に関する情報は得られるが、圧力検出素子51から検出された押下力が、xg重未満であるような度合い
(イ)圧力検出素子51から検出された押下力が、xg重以上であり、かつyg重未満であるような度合い
(ウ)圧力検出素子51から検出された押下力が、yg重以上であるような度合い

したがって、引用例1には、その請求項4に記載される発明を具体化した発明として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「操作者が選択可能な選択項目を表示する表示手段と、
座標検出回路及び圧力検出回路とで構成され、前記選択項目に対する操作者の接触の有無を検知する検知手段と、
前記検知手段により検出した少なくとも接触の有無以外の多様な接触の度合いを判定する判定手段と、
前記判定手段によって判定された接触の度合いに応じて前記表示手段に表示される前記選択項目の表示内容を複数段階にわたり変化させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする入力装置であって、
前記判定手段が判定する接触の度合いは、次の度合いを含む入力装置。
(ア)座標検出回路54から操作者がタッチパネル板52に接触した位置に関する情報は得られるが、圧力検出素子51から検出された押下力が、xg重未満であるような度合い
(イ)圧力検出素子51から検出された押下力が、xg重以上であり、かつyg重未満であるような度合い
(ウ)圧力検出素子51から検出された押下力が、yg重以上であるような度合い」

(2)平成27年6月4日付けの拒絶理由通知で引用した特開2005-352924号公報(以下、引用例2という。)には次の記載がある。

「【要約】
【課題】誤操作の防止に、より適したユーザインタフェース装置を提供する。
【解決手段】液晶画面のユーザ操作領域に表示されたボタンを押下する際に、まずユーザによるタッチパネル5への接触操作が検出されると、制御部15は、位置特定部12により特定されたユーザ接触位置に対応したボタンを特定し、そのボタンを表示制御部11に拡大表示させる。ユーザが更に液晶画面を押し込むと、第2操作検出部14がその押下を検出する。制御部15は、上記接触操作に続けて行われたユーザによる押下操作を入力確定操作とみなす。」

「【0057】
なお、本実施の形態では、入力方式として二段操作(二度押し)というユーザインタフェースを提供することによって操作の確認を容易にし、かつ誤操作の防止を図ることができるようにした。上記例では、二段操作のうちユーザ操作領域に対する接触操作(第1のユーザアクセス)でボタンを拡大表示し、ユーザ操作領域に対して続けて行われる押下操作(第2のユーザアクセス)で入力確定としたが、例えば、第1のユーザアクセスが検出されたときに、当該ボタンに割り付けた情報を画面表示させるなど、各ユーザアクセスを他の処理と関連付けるようにしてもよい。」

(3)平成27年6月4日付けの拒絶理由通知で引用した特開2008-16053号公報(以下、引用例3という。)には次の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のタッチパネルを備えた表示装置では、その表示画面に操作ボタン(タッチボタン)などのタッチ操作部材からなる入力手段の画像を表示することにより、その入力手段を顧客やユーザの視覚で認識させ、この認識のもとに、この入力手段の画像の操作したいと思われる個所をタッチして操作するものであるから、次のような問題が生ずる。
【0006】
まず、ユーザがタッチ操作するためのタッチ操作部材のタッチ操作エリアは、表示画面に表示されたものであるから、そのタッチ操作エリア以外の部分と同じ平面上にあり、キーボードなどの操作部とは違って、タッチ操作エリアをタッチした感じとそれ以外の部分をタッチした感じとは同じである。このため、指先でタッチした位置が所望とするタッチ操作エリアからずれても、気が付かない場合もあり得る。
【0007】
特に、タッチ操作部材として、案内のメッセージなどとともに、いくつかの操作ボタンを表示する場合には、これら操作ボタンを表示画面のあちこちに表示する場合があり、このように表示される操作ボタンを操作する場合には、指先のタッチ位置が所望とする操作ボタンの表示位置からずれる場合もあり得る。このようなずれがわずかであっても、この操作ボタンはタッチされなかったことになり、機能しない。しかし、ユーザとしては、その操作ボタンにタッチしたつもりであり、タッチしていないことに気が付かない場合もある。このため、再度同じ操作スイッチをタッチする操作をすることになるが、このためには、タッチしなかったと認識することが必要であり、しかし、この認識にある程度の時間を要することになる、という問題があった。
【0008】
また、多くの操作ボタンが互いに近接して表示画面に同時に表示するような場合もあり、このような場合には、各操作ボタンは比較的小さく表示されるので、指先のタッチ位置が所望とする操作ボタンの表示位置からわずかでもずれると、隣の操作ボタンにタッチしてしまうこともある。従来のタッパネルを備えた表示装置は、表示される操作ボタンがタッチされると、直ちに機能するように構成されているので、タッチ位置がずれて隣の操作ボタンにタッチすると、この隣の操作ボタンが機能してしまい、この機能を停止させて再度操作をし直さなければならない、という問題があった。
【0009】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、表示画面に表される操作ボタンなどのタッチ操作部材を指先などでタッチしたことを容易に認識でき、しかも、該タッチ操作部材を操作したことを容易にかつ確実に認識できるようにしたタッチパネルを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、表示パネルの表示画面に指示手段のタッチ位置を検出するタッチパネルが設けられ、表示画面に表示されるタッチ操作部材をタッチして操作できるようにしたタッチパネルを備えた表示装置であって、タッチ操作部材をタッチ操作する際の該指示手段による押圧力Pを検知する検知手段と、予め設定圧力P1,P2(但し、P1<P2)が設けられ、検知手段による検知圧力PがP1≦P<P2であるとき、指示手段によって押圧されたタッチ操作部材に関する第1の処理を行ない、押圧力PがP1≦P<P2からP2≦Pに変化したとき、指示手段によって押圧されたタッチ操作部材に関する第2の処理を行なう制御部とを有し、押圧力PがP1≦P<P2からタッチ操作部材が押し込められたとするP2≦Pに変化したとき、第2の処理により、表示画面を指示手段による押圧方向に移動させる機能を実行させるものである。」

「【0063】
次に、かかる動作による表示画面2での画面の具体例について説明する。
図9は、タッチ操作部材を操作ボタンとして、かかる画面の具体例を示す図である。
【0064】
図9(a)は表示画面2に操作ボタン24が表示され、この操作ボタン24をタッチ操作すると、表示色が処理A,B,Cで変化する場合の具体例を示すものである。図8のステップ100?102の動作では、処理Aが行なわれて画面(イ)が表示され、この画面(イ)で、いま、第1の色により、操作ボタン24が表示されているものとする。
【0065】
かかる表示状態で指先19でこの操作ボタン24のエリアをタッチすると、このときのタッチパネル9に対する圧力PがP1≦P<P2であるときには(図8のステップ102)、このとき、タッチセンサ(図6)により、このときの指先19のタッチ位置が検出され、このタッチ位置が、記憶部22(図6)でのデータを基に、操作ボタン24のエリア内にある(即ち、操作ボタン位置と一致している)と判定されると(ステップ103)、処理Bが実行され(図8のステップ104)、操作ボタン24が第2の色に変化した画面(ロ)が表示される。これとともに、図7での駆動1が実行され(図8のステップ105)、図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態に移り、表示画面2がガタッと小さく、もしくはゆっくりと小さく奥の方に後退する。以上の処理Bと駆動1により、指先19が操作ボタン24にタッチしたことが、視覚的にも、また、触覚的にも、認識できる。
【0066】
さらに、指先19で操作ボタン24を押し込むようにし、これにより、P2≦Pとなると、この場合も、タツチ位置が操作ボタン24の位置と一致していると、操作ボタン24が第3の色に変化した画面(ハ)が表示され、これとともに、図7に示す駆動2が実行されて、図2(b)に示す状態から図2(c)に示す状態に急速に移り、表示画面2がガタンと大きく奥の方に後退する(なお、図7(c)の場合には、逆に前進する)。これにより、この操作ボタン24で実行操作などの機能操作が行なわれたことが(即ち、間違いなくこの操作ボタン24を操作したことが)、視覚的にも、また、触覚的にも、認識できる。従って、誤った操作がなされたときには、これを容易に知ることができて、タッチ操作のやり直しを簡単に行なうことができ、誤操作防止も向上する。タッチパネル9から指先19を離すと、画面(イ)に戻る。
【0067】
図9(b)は表示画面2で操作ボタン24にタッチ操作すると、その形状が処理A,B,Cで変化する場合の具体例を示すものである。この具体例も、図8のステップ100?102の動作では、処理Aが行なわれて画面(イ)が表示され、この画面(イ)で、例えば、操作ボタン24が矩形状で表示されているものとする。
【0068】
かかる表示状態で指先19でこの操作ボタン24の位置(エリア)をタッチすると、このときのタッチパネル9に対する圧力PがP1≦P<P2であるときには(図8のステップ102)、このとき、タッチセンサ(図6)により、このときの指先19のタッチ位置が検出され、このタッチ位置が、記憶部22(図6)でのデータを基に、操作ボタン24の位置と一致していると判定されると(図8のステップ103)、処理Bが実行され(図8のステップ104)、操作ボタン24の形状が矩形状から他の形状に変化した画面(ロ)が表示される。これとともに、図7の駆動1が実行され(図8のステップ105)、図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態に移り、表示画面2がガタッと小さく、もしくはゆっくりと小さく奥の方に後退する。以上の処理Bと駆動1により、指先19が操作ボタン24にタッチしたことが、視覚的にも、また、触覚的にも、認識できる。
【0069】
さらに、指先19で操作ボタン24を押し込むようにし、P2≦Pとなると、この場合も、タツチ位置と操作ボタン24の位置とが一致していると、操作ボタン24が第3の形状(画面(イ)でのもとの形状でもよい)に変化した画面(ハ)が表示される。この場合、操作ボタン24の色も変化させるようにしてもよい。これとともに、図7の駆動2が実行されて、図2(b)に示す状態から図2(c)に示す状態に急速に移り、表示画面2がガタンと大きく奥の方に後退する(なお、図7(c)の場合には、逆に前進する)。これにより、この操作ボタン24で実行操作などの機能操作が行なわれたことが(即ち、間違いなくこの操作ボタン24を操作したことが)、視覚的にも、また、触覚的にも、認識でき、上記同様の効果が得られる。タッチパネル9から指先19を離すと、画面(イ)に戻る。
【0070】
図9(c)は表示画面2で操作ボタン24にタッチ操作すると、そのサイズが処理A,B,Cで変化する場合の具体例を示すものである。この具体例も、図8のステップ100?102の動作では、処理Aが行なわれて画面(イ)が表示され、この画面(イ)で、例えば、操作ボタン24が矩形状で表示されているものとする。
【0071】
かかる表示状態で指先19でこの操作ボタン24の位置(エリア)をタッチすると、このときのタッチパネル9に対する圧力PがP1≦P<P2であるときには(図8のステップ102)、このとき、タッチセンサ(図6)により、このときの指先19のタッチ位置が検出され、このタッチ位置が、記憶部22(図6)でのデータを基に、操作ボタン24の位置と一致していると判定されると(図8のステップ103)、処理Bが実行され(図8のステップ104)、操作ボタン24のサイズが、例えば、大きく変化した画面(ロ)が表示される。これとともに、図7の駆動1が実行され(図8のステップ105)、図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態に移り、表示画面2がガタッと小さく、もしくはゆっくりと小さく奥の方に後退する。以上の処理Bと駆動1により、指先19が操作ボタン24にタッチしたことが、視覚的にも、また、触覚的にも、認識できる。
【0072】
さらに、指先19で操作ボタン24を押し込むようし、P2≦Pとなると、この場合も、タツチ位置と操作ボタン24の位置とが一致していると判定されると、操作ボタン24のサイズが前とは異なる(画面(イ)でのもとのサイズでもよい)に変化した画面(ハ)が表示される。この場合、操作ボタン24の色も変化させるようにしてもよい。これとともに、図7の駆動2が実行されて、図2(b)に示す状態から図2(c)に示す状態に急速に移り、これにより、表示画面2がガタンと大きく奥の方に後退する(但し、図7(c)の場合には、逆に前進する)。これにより、この操作ボタン24で実行操作などの機能操作が行なわれたことが(即ち、間違いなくこの操作ボタン24を操作したことが)、視覚的にも、また、触覚的にも、認識でき、上記同様の効果が得られる。次いで、タッチパネル9から指先19を離すと、画面(イ)に戻る。
【0073】
なお、以上の操作ボタンの操作に関する処理では、処理Bは操作ボタンの選択処理、処理Cは操作ボタンによる機能を決定する決定処理とすることができる。
【0074】
また、図9(a)?(c)において、画面(ハ)の隣合う2つの辺部に影25を表示し、画面(ハ)が押されてへこんでいることを視覚的に表わすようにしてもよい。
【0075】
図10は図8に示す動作に伴う表示画面2での画面の他の具体例を示す図である。
【0076】
まず、図10(a)はタッチ操作部材を操作ボタンとし、パソコンでのマウスオーバーと同様の機能を持たせたものである。
【0077】
表示画面2に操作ボタン24が表示され、この操作ボタン24をタッチ操作すると、付加情報が表示されるようにした具体例を示すものである。図8のステップ100?102の動作では、処理Aが行なわれて操作ボタン24が表われた画面(イ)が表示されているものとする。
【0078】
かかる表示状態で指先19でこの操作ボタン24のエリアをタッチすると、このときのタッチパネル9に対する圧力PがP1≦P<P2であるときには(図8のステップ102)、このとき、タッチセンサ(図6)により、このときの指先19のタッチ位置が検出され、このタッチ位置が、記憶部22(図6)でのデータを基に、操作ボタン24の位置と一致していると判定されると(図8のステップ103)、処理Bが実行され(図8のステップ104)、例えば、「このボタンを押すと次の画面に進みます」といったような案内メッセージ(即ち、この操作ボタン24の機能)を表わす吹き出し26が表示された画面(ロ)が表示される。また、これとともに、図7の駆動1が実行されて(図8のステップ105)、図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態に移り、表示画面2がガタッと小さく、もしくはゆっくりと小さく奥の方に後退する。以上の処理Bと駆動1により、指先19が操作ボタン24にタッチしたことが、視覚的にも、また、触覚的にも、認識できる。
【0079】
次いで、指先19でさらに操作ボタン24を押し込むようして、P2≦Pとなると、この場合も、タツチ位置が操作ボタン位置と一致していることを判定して、例えば、操作ボタン24の色が変化した画面(ハ)が表示される。これとともに、図7の駆動2が実行されて、図2(b)に示す状態から図2(c)に示す状態に急速に移り、表示画面2がガタンと大きく奥の方に後退する(但し、図7(c)の場合には、逆に前進する)。これにより、この操作ボタン24で実行操作などの機能操作が行なわれたことが(即ち、間違いなくこの操作ボタン24を操作したことが)、視覚的にも、また、触覚的にも、認識でき、上記と同様の効果が得られる。タッチパネル9から指先19を離すと、画面(イ)に戻る。
【0080】
この具体例でも、処理Bは操作ボタンの選択処理、処理Cは操作ボタンによる機能を決定する決定処理とすることができる。
【0081】
また、画面(ハ)の隣合う2つの辺部に影25を表示し、画面(ハ)が押されてへこんでいることを視覚的に表わすようにしてもよい。
【0082】
以上の機能は、パソコンなどのマウスを移動させて所定の表示要素に一致させると、その表示要素に変化を与える、所謂「マウスオーバー」に相当するものであって、この実施形態では、タッチによるP1≦P<P2の状態と押し込みのP2≦Pの状態とに区分して、夫々毎に処理Bと処理Cとを行なわせるようにしたことにより、タッチパネルを備えた表示装置でかかるマウスオーバー機能を可能としている。
【0083】
なお、ここでは、吹き出し26によって操作ボタン24の機能を説明するようにしたが、スピーカ21(図6)から音声メッセージを出力するようにしてもよいし、この音声メッセージと吹き出し26とを組み合わせるようにしてもよい。
【0084】
図10(b)はタッチ操作部材をメッセージとしたものであり、表示画面2で表示されるメッセージの表示エリアの部分をタッチすると、その部分が拡大して表示させることができるようにした具体例を示すものである。
【0085】
この具体例も、図8のステップ100?102の動作では、処理Aが行なわれて画面(イ)が表示され、この画面(イ)では、例えば、「いらっしゃいませ」といったような案内メッセージ27が表示されているものとする。
【0086】
かかる表示状態で指先19でこの案内メッセージ27の表示エリアをタッチすると、このときのタッチパネル9に対する圧力PがP1≦P<P2であるときには(図8のステップ102)、このとき、タッチセンサ(図6)により、このときの指先19のタッチ位置が検出され、このタッチ位置が、記憶部22(図6)でのデータを基に、案内メッセージ27の表示エリアと一致していると判定されると、処理Bが実行され(図8のステップ104)、指先19のタッチ位置を中心とした所定領域がこれを含む拡大表示領域28に拡大して表示されることになる。従って、案内メッセージ27の一部を拡大表示させることができ、同じタッチ状態として指先19を案内メッセージ27に沿って移動させることにより、この拡大表示領域28を移動(ドラッグ)させることができる。従って、このようにドラッグさせることにより、虫眼鏡で文章を拡大して読んでいくように、案内メッセージ27を拡大してみることができる。また、これとともに、図7の駆動1が実行されて(図8のステップ105)、図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態に移り、表示画面2がガタッと小さく、もしくはゆっくりと小さく奥の方に後退する。以上の処理Bと駆動1により、指先19が操作ボタン24にタッチしたことが、視覚的にも、また、触覚的にも、認識できる。
【0087】
次いで、指先19でこの案内メッセージ27の表示エリアを押し込むようして、P2≦Pにすると、この場合も、タツチ位置と案内メッセージ27の表示エリアとの一致を判定して、「決定」処理などの処理Cが行なわれて画面(ハ)が表示され、この決定処理が終了すると、これに続く処理に移っていく。また、これとともに、図7の駆動2が実行して、図2(b)に示す状態から図2(c)に示す状態に急速に移り、表示画面2がガタンと大きく奥の方に後退する(但し、図7(c)の場合には、逆に前進する)。これにより、この案内メッセージ27に対する機能操作が行なわれたことが(即ち、間違いなくこの案内メッセージ27の表示エリアをタッチ操作したことが)、視覚的にも、また、触覚的にも、認識でき、上記と同様の効果が得られる。また、このとき、画面(ハ)の隣合う2つの辺部に影25を表示し、画面(ハ)が押されてへこんでいることを視覚的に表わすようにしてもよい。タッチパネル9から指先19を離すと、画面(イ)に戻る。
【0088】
図10(c)はタッチ操作部材をメニュー画面とカーソルとするものであり、表示画面2でタッチパネル9にタッチ操作すると、メニュー欄が表示されて、所望とするメニューを選択決定できるようにした具体例を示すものである。
【0089】
この具体例も、図8のステップ100?102の動作では、処理Aが行なわれて画面(イ)が表示されるが、この画面(イ)では、背景模様(図示せず)以外、何も表示されていないものとする。
【0090】
かかる画面(イ)の任意の位置を指先19でタッチすると、このときのタッチパネル9に対する検出圧力PがP1≦P<P2であるときには(図8のステップ102)、このとき、タッチセンサ(図6)により、このときの指先19のタッチ位置が検出され、このタッチ位置が、記憶部22(図6)でのデータを基に、画面(イ)内の位置と判定されると、処理Bが実行され(図8のステップ104)、複数のメニューからなるメニュー欄29が表示された画面(ロ)が表示される。また、これとともに、図7の駆動1が実行されて(図8のステップ105)、図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態に移り、表示画面2がガタッと小さく、もしくはゆっくりと奥の方に後退する。以上の処理Bと駆動1により、指先19が操作ボタン24にタッチしたことが、視覚的にも、また、触覚的にも、認識できる。
【0091】
また、処理Bにより、この画面(ロ)では、メニュー欄29での指先19のタッチ位置を含むメニューにカーソル30も表示され、同じタッチ状態を保ちながら指先19を移動させると、このカーソル30もこの指先19にくっついてドラッグし、所望のメニューを選択することができる。そして、カーソル30を所望のメニューに一致させた後(このとき、指先19のタッチ位置もこの所望のメニューに一致している)、さらに、指先19でこのメニューを押し込むようし、P2≦Pにすると(ステップ108)、この場合も、タツチ位置とメニューの位置との一致を判定して、処理Cを実行し(ステップ109)、この所望メニューの決定を行なう画面(ハ)が表示される。この場合、カーソル30の色も変化させるようにしてもよい。また、これとともに、図7の駆動2が実行して、図2(b)に示す状態から図2(c)に示す状態に急速に移り、表示画面2がガタンと大きく奥の方に後退する(但し、図7(c)の場合には、逆に前進する)。これにより、この案内メッセージ27に対する機能操作が行なわれたことが(即ち、間違いなくこの案内メッセージ27の表示エリアをタッチ操作したことが)、視覚的にも、また、触覚的にも、認識でき、上記と同様の効果が得られる。このとき、画面(ハ)の隣合う2つの辺部に影25を表示し、画面(ハ)が押されてへこんでいることを視覚的に表わすようにしてもよい。タッチパネル9から指先19を離すと、画面(イ)に戻る。
【0092】
このように、図10(b),(c)で示す具体例は、拡大表示領域28やカーソル30といったポイントを移動させ、選択した位置で決定を行なうマウスでのドラッグと決定との機能を持たせたものである。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(1)引用発明の「入力装置」は、各種電子回路を用いて実現されるものであり、本願発明と同様に「電子装置」といい得るものである。
(2)引用発明の「操作者が選択可能な選択項目」は、本願発明の「客体」に相当し、引用発明の「表示手段」は、本願発明の「表示部」に相当する。
(3)引用発明の「検知手段」は、本願発明の「検知部」に相当する。
(4)引用発明の「判定手段」と「表示制御手段」を併せた部分は、本願発明の「制御部」に対応する。
(5)引用発明において判定手段が接触の度合いを「(ア)の度合い」と判断することは、本願発明において制御手段がユーザ入力の種類を「近接」と判断することに相当する。
(6)引用発明において判定手段が接触の度合いを「(イ)の度合い」と判断することは、本願発明において制御手段がユーザ入力の種類を「タッチ」と判断することに相当する。
(7)引用発明において判定手段が接触の度合いを「(ウ)の度合い」と判断することは、本願発明において制御手段がユーザ入力の種類を「圧力」と判断することに相当する。
(8)引用発明の表示制御手段が表示内容を変化させる「選択項目」は、操作者の接触が検知された「選択項目」であり、その検知は、当然に座標検出回路で検知された位置にも基づいてなされるものである。これを踏まえると、引用発明において表示制御手段が「判定手段によって判定された接触の度合いに応じて前記表示手段に表示される前記選択項目の表示内容を複数段階にわたり変化させる」ことと、本願発明において制御手段が「3つの前記ユーザ入力の種類の判断に応じて、かつ、前記検知された位置に基づいて、前記ディスプレイされた客体に関連するデータをディスプレイするように前記表示部を制御する」こととは、「3つの前記ユーザ入力の種類の判断に応じて、かつ、前記検知された位置に基づいて、前記表示部を制御する」ことである点で共通する。

以上のことを踏まえると、引用発明と本願発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「電子装置において、
客体をディスプレイする表示部と、
ユーザ入力の位置と圧力とを検知する検知部と、
前記ユーザ入力の位置が検知され、前記検知された圧力が第1の予め設定された値以下である場合は、前記ユーザ入力の種類を近接と判断し、
前記ユーザ入力の種類が近接と判断されない場合において、前記検知された圧力が、
前記第1の予め設定された値より大きくて、第2の予め設定された値以下の場合、前記ユーザ入力の種類をタッチと判断し、
前記第2の予め設定された値より大きい場合、前記ユーザ入力の種類をユーザにより加えられた圧力であると判断し、
3つの前記ユーザ入力の種類の判断に応じて、かつ、前記検知された位置に基づいて、前記表示部を制御する制御部と、
を含む電子装置。」 である点。

(相違点)
制御部による表示部の制御の内容が、本願発明においては「ディスプレイされた客体に関連するデータをディスプレイする」ことであるのに対し、引用発明においては「ディスプレイされた客体の表示内容を変化させる」ことであって「ディスプレイされた客体に関連するデータをディスプレイする」ことではない点。

5.判断
(1)(相違点)について
以下の事情を総合すると、引用発明において上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
ア.上記2.で摘記した引用例2、3の記載箇所(引用例3については、特に段落【0068】、【0077】参照)には、そのいずれにも、引用発明と同様に「圧力に関するユーザ入力の種類の判断に応じて、かつ、前記検知された位置に基づいて、客体をディスプレイする表示部を制御する制御部」といい得る部分を有する電子装置において、その制御部による表示部の制御の内容を、引用発明のように「ディスプレイされた客体の表示内容を変化させる」ようにすることと、本願発明のように「ディスプレイされた客体に関連するデータをディスプレイする」ようにすることの両方が、当業者が選択的に採用し得る事項として記載されている。
イ.また、引用発明においても、上記引用例2、3に示されるもののように、ユーザ操作に応じて「ディスプレイされた客体に関連するデータをディスプレイする」ようにするのが望ましいケースは容易に想定される。
ウ.してみれば、引用発明における制御部による表示部の制御の内容を、「ディスプレイされた客体に関連するデータをディスプレイする」ものを含むものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1?3の記載事項および技術常識から当業者が予測し得る範囲のものであり、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るようなものではない。

(3)請求人の主張について
審判請求人は平成27年9月8日付け意見書において、「ユーザのタッチが感知されなくてもユーザ命令(近接)が入力されたと判断する」といった本願発明の技術的な特徴は、引用発明には開示されていない旨主張し、それを根拠に本願発明が進歩性を有する旨主張するが、次の理由で採用できない。
ア.本願の請求項1には、「ユーザのタッチが感知されなくてもユーザ命令(近接)が入力されたと判断する」という技術的事項(以下、「技術的事項A」という。)が本願発明の要件であることを示す記載はない(請求項1には、技術的事項Aに関すると思われる記載として、「前記ユーザ入力の位置が検知され、前記検知された圧力が第1の予め設定された値以下である場合は、前記ユーザ入力の種類を近接と判断し」という記載や、「前記ユーザ入力の種類が近接と判断されない場合において、前記検知された圧力が、前記第1の予め設定された値より大きくて、第2の予め設定された値以下の場合、前記ユーザ入力の種類をタッチと判断し、」という記載はあるが、それらの記載はいずれも、文言上、上記技術的事項Aが本願発明の要件であることを示す記載であるとは解されない。)。
したがって、上記審判請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
イ.仮に、請求人が主張する上記「ユーザのタッチが感知されなくてもユーザ命令(近接)が入力されたと判断する」という事項を本願発明の技術的特徴といい得た(本願発明を、請求人が主張するような「ユーザのタッチが感知されなくてもユーザ命令(近接)が入力されたと判断する」といった技術的特徴を有するものに限定して解釈することができた)としても、次の理由で本願発明の進歩性は肯定されない。
すなわち、引用例1の段落【0038】?【0040】に記載されるように、引用発明の「座標検出回路」としては、光学式のタッチパネルを利用するものが想定されており、そのような光学式のタッチパネルを利用する場合には、ユーザのタッチが感知されなくても光ビームが遮られる程度まで指が近接すれば、ユーザ命令が入力されたと判断されることは明らかである。そして、そのようなタッチを伴わない近接が検知された場合をも引用発明でいう(ア)の度合いに含めて差し支えないことは当業者に明らかである。
また、タッチ(接触)が感知されなくても近接を検出して入力を判断すること自体は、本願優先日前周知(特開2006-236143号公報等参照)でもある。
以上のことは、引用発明を上記技術的特徴Aを備えたものとすることが当業者にとって容易であったことを意味する。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-09 
結審通知日 2015-10-19 
審決日 2015-11-02 
出願番号 特願2011-521009(P2011-521009)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 涌井 智則岩崎 志保  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
小曳 満昭
発明の名称 ユーザインターフェースを実現する電子装置及びその方法  
代理人 実広 信哉  

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