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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02C |
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管理番号 | 1312492 |
審判番号 | 不服2015-9997 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-28 |
確定日 | 2016-03-14 |
事件の表示 | 特願2013-516356「中空湾曲板及びその製造方法ならびにガスタービンの燃焼器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月29日国際公開、WO2012/161142〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2012(平成24)年5月18日(優先権主張 2011(平成23)年5月24日)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月28日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成26年5月28日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成26年7月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年1月29日付けで拒絶査定がされ、平成27年5月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成27年9月24日に上申書が提出され、平成28年1月20日に審理再開の申立てがされたものである。 第2.平成27年5月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成27年5月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 (1)本件補正の内容 平成27年5月28日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正前の(すなわち、平成26年7月28日提出の手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の下記(イ)の記載へと補正するものである。 (ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 複数の直線状の第1溝を有する第1板部材と、 前記第1溝と略同一の幅である複数の直線状の第2溝を有し、前記第1板部材に拡散接合により接合された第2板部材とを備え、 前記第1溝は前記第2溝に対向して、前記第1溝と前記第2溝との幅方向位置が略一致し、前記第1溝および前記第2溝によって複数の中空部が形成されており、 前記第1板部材および前記第2板部材が接合された状態で曲げ加工によって湾曲され、前記複数の中空部は前記第1板部材と前記第2板部材が湾曲される方向に対して垂直な方向に延在し、 前記第1板部材と前記第2板部材の厚さと前記第2板部材の厚さは略同一である中空湾曲板。」 (イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 複数の直線状の第1溝を有する第1板部材と、 前記第1溝と略同一の幅である複数の直線状の第2溝を有し、前記第1板部材に拡散接合により接合された第2板部材とを備え、 前記第1溝は前記第2溝に対向して、前記第1溝と前記第2溝との幅方向位置が略一致するとともに前記第1溝と前記第2溝の延在方向が略一致し、前記第1溝および前記第2溝によって直線状の複数の中空部が形成されており、 前記第1板部材および前記第2板部材が接合された状態で曲げ加工によって湾曲され、前記第1溝および前記第2溝によって形成された直線状の前記複数の中空部は前記第1板部材と前記第2板部材が湾曲される方向に対して垂直な方向に延在し、 前記第1板部材の厚さと前記第2板部材の厚さは略同一であり、 前記第1溝および前記第2溝によって形成される直線状の前記複数の中空部は、それぞれ、前記湾曲される方向に対して垂直な方向に沿って連続的に延在している中空湾曲板。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。) (2)本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「前記第1板部材と前記第2板部材の厚さと前記第2板部材の厚さは略同一である」を「前記第1板部材の厚さと前記第2板部材の厚さは略同一であ」る旨に補正することにより誤記を訂正するものであるほか、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「第1溝」及び「第2溝」について「延在方向が略一致」する旨、同じく本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「複数の中空部」について「直線状」であり、「それぞれ、前記湾曲される方向に対して垂直な方向に沿って連続的に延在している」旨を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.独立特許要件についての判断 本件補正における特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.-1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開昭55-148151号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「多孔積層材」に関し、図面とともに、例えば、次のような記載がある。 (ア)「本発明は多孔積層材に関し、特に、ガスタービンエンジンの高温部例えば燃焼室に用いるのに特に適した多孔積層材に関するものである。」(第2ページ右上欄第8ないし10行) (イ)「第1図および第2図に示すガスタービンエンジン10は、流れの順序に、圧縮機11、環型又は環缶複合型燃焼室14を含む燃焼装置、および圧縮機駆動用タービン16から成つている。 燃焼室14の缶15は断面が円形で、内壁18と外壁20とで形成された環の中に収容されている。燃焼室14の壁14aおよび頭部14bは多孔積層材22で作られている。冷却空気および希釈空気が壁18、20と缶15との間の空間を通り、冷却空気は多孔積層材を貫通しその内面に冷却フイルムを形成する。冷却空気は頭部14bにも送られる。 第3図には、多孔積層材22の詳細が分解図で示されている。積層材22は一連の対称的に配列された孔32と一連の対称的に配列された溝34とを備えた外側シート30を有している。溝34は片面のみに形成され、孔32および溝34は電気化学的エツチングにより作られ、孔32は溝34の交叉点の1つ置きに設けられ、1つの溝34の上の孔32は隣りの溝34の孔32に対し喰違いに配置されている。内側シート36にも、一連の対称的に配列された孔38および交叉する溝40とが設けられ、溝40も片面のみに形成されているが、内側シート36の孔は単位面積当りの数が外側シート30の孔の2倍である。 」(第2ページ右下欄第14行ないし第3ページ左上欄第18行) (ウ)「第12図乃至第14図は第5図の多孔積層材を詳細に示す。孔比は4:1である。 両シート30、36は、溝34、40は同一パターンのものであり、両シートを互にろう付けすると、両シートの溝パターンが重なり合い、冷却空気が流れる通路(第17図)が両シートの対応する溝で形成される。適当なろう付け用合金としては、BS.l845-(N13)の仕様により作られたものがあり、この仕様に合致する市販品には、エンデユアランス・アロイの「CM53」や、「ニクロブレーズLM」がある。好ましいろう付け温度は、1100℃である。通路44は第13図および第14図に明瞭に示されている。第13図は対角方向の通路を示し、第14図は縦横の通路を示す。」(第3ページ右下欄第16行ないし第4ページ左上欄第10行) (2)引用文献1記載の事項 上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに第1ないし3図、第5図及び第12ないし14図の記載から、引用文献1には、次の事項が記載されていることが分かる。 (カ)上記(1)(イ)には、燃焼室14の間5は断面が円形で、燃焼室14の壁14aおよび頭部14bは多孔積層材22で作られている旨が記載されているから、このことと第2図の記載から、引用文献1には、湾曲した多孔積層材22が記載されていることが分かる。 (キ)上記(1)(ウ)並びに第5図び第12図の記載から、引用文献1に記載された湾曲した多孔積層材22は、複数の直線状の溝34を有する外側シート30と、溝34と略同一の幅である複数の直線状の溝40を有し、外側シート30にろう付けにより接合された内側シート36とを備えるものであることが分かる。 (ク)上記(1)(ウ)並びに第12ないし14図の記載から、引用文献1に記載された湾曲した多孔積層材22において、溝34は溝40に対向して、溝34と溝40との幅方向位置が略一致するとともに溝34と溝40の延在方向が略一致し、溝34および溝40によって縦横斜めの方向に直線状の複数の通路44が形成されていることが分かる。 (ケ)第13及び14図において、外側シート30の厚さと内側シート36の厚さは略同一であることが看取される。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)並びに第1ないし3図、第5図及び第12ないし14図の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「複数の直線状の溝34を有する外側シート30と、 溝34と略同一の幅である複数の直線状の溝40を有し、外側シート30にろう付けにより接合された内側シート36とを備え、 溝34は溝40に対向して、溝34と溝40との幅方向位置が略一致するとともに溝34と溝40の延在方向が略一致し、溝34および溝40によって縦横斜めの方向に直線状の複数の通路44が形成されており、 外側シート30の厚さと内側シート36の厚さは略同一である湾曲した多孔積層材22。」 2.-2 対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「溝34」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願補正発明における「第1溝」に相当し、以下同様に、「外側シート30」は「第1板部材」に、「溝40」は「第2溝」に、「内側シート36」は「第2板部材」に、「通路44」は「中空部」に、「湾曲した多孔積層材22」は「中空湾曲板」に、それぞれ相当する。 また、「第2板部材が第1板部材に接合され」るという限りにおいて、引用発明において「内側シート36」が「外側シート30にろう付けにより接合され」ることは、本願補正発明において「第2板部材」が「第1板部材に拡散接合により接合され」ることに相当する。 以上から、本願補正発明と引用発明は、 「 複数の直線状の第1溝を有する第1板部材と、 第1溝と略同一の幅である複数の直線状の第2溝を有し、第1板部材に接合された第2板部材とを備え、 第1溝は前記第2溝に対向して、第1溝と前記第2溝との幅方向位置が略一致するとともに第1溝と第2溝の延在方向が略一致し、第1溝および第2溝によって直線状の複数の中空部が形成されており、 第1板部材の厚さと第2板部材の厚さは略同一である中空湾曲板。」 である点で一致し、次の点で相違又は一応相違する。 〈相違点〉 (a)「第2板部材が第1板部材に接合され」ることに関し、本願補正発明においては、「第2板部材」が「第1板部材に拡散接合により接合され」るのに対し、引用発明においては、「内側シート36」が「外側シート30にろう付けにより接合され」る点(以下、「相違点1」という。)。 (b)本願補正発明においては、「第1板部材および第2板部材が接合された状態で曲げ加工によって湾曲され」、「第1溝および第2溝によって形成された直線状の複数の中空部は第1板部材と第2板部材が湾曲される方向に対して」「垂直な方向に沿って連続的に延在している」のに対し、引用発明においては、多孔積層材22は湾曲したものではあるものの、その加工の方法及び湾曲の方向と縦横斜めの方向に形成された通路との関係が不明である点(以下、「相違点2」という。)。 2.-3 判断 上記各相違点について検討する。 まず、相違点1に関し、ガスタービンエンジンの燃焼室を構成する壁部材を形成するに際し、金属材料等を拡散接合により接合することは、周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2009-186118号公報(以下、「引用文献2」という。)の段落【0020】及び図5等参照。)であるから、引用発明において、内側シート36を外側シート30に接合するに際し、拡散接合を用いることにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。 次に、相違点2に関し、引用文献1には、平板状の内側シート30および外側シート36を接合した多孔積層材22を、どのようにして湾曲させるかについて明記されていないが、技術常識からみて、内側シート30および外側シート36が接合された状態で曲げ加工によって湾曲させるものであることは明らかである(例えば、上記引用文献2の段落【0020】ないし【0022】及び図8記載の接合一体化された壁基材をプレス成形により環状に曲げたもの等参照。)。 そして、引用発明において、多孔積層材22を湾曲させるときには、通常、多孔積層材22の縦、横、斜めの通路44のうちのいずれかを燃焼室の軸方向に平行な方向とし、他の通路44のうちいずれかを、湾曲される方向に対して垂直な方向に沿って連続的に延在するように設定するものと考えられる。 してみると、引用発明においても、内側シート30および外側シート36が接合された状態で曲げ加工によって湾曲させ、溝34および溝40によって形成された直線状の複数の通路44が内側シート30と外側シート36が湾曲される方向に対して垂直な方向に延在しているものであるといえるから、上記相違点2は実質的な相違点ではない。 また、仮に、引用発明において、多孔積層材22を湾曲させるときに、多孔積層材22の縦、横、斜めの通路44のうちのいずれもが、湾曲される方向に対して垂直な方向に沿って延在するものでなかったとしても、通路44のうちいずれかを、湾曲される方向に対して垂直な方向に沿って延在するように設定することは、単なる設計上の事項にすぎないから、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。 なお、審判請求人は、審判請求書の3.(5)において、中空部が連続的に延在していることにより、第1板部材および第2板部材の接合体には、曲げ加工に起因した応力集中に原因になる中空部の交差部が存在しないことになり、中空湾曲板の曲げ加工時におけるクラック発生の抑制を効果的に図ることができる旨を主張している。 しかし、引用発明において、通路44は、他の通路44との交点を挟んで連続的に延在するものであるといえるし、また、少なくとも交点の間で連続的に延在するものである。 そして、本願補正発明は、中空部の交差部が存在しないことを発明特定事項としていないから、審判請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものであるとはいえず、失当である。 そして、本願補正発明は、全体として検討しても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできず、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 上記のとおり、平成27年5月28日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年7月28日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲、並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】のとおりのものである。 2.引用発明 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開昭55-148151号公報)記載の発明(引用発明)は、前記第2.の[理由]2.-1の(3)に記載したとおりである。 3.対比・判断 前記第2.の[理由]1.(2)で検討したとおり、本件補正は、該補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明、すなわち本願発明の発明特定事項をさらに限定するものであるから、本願発明は、実質的に本願補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.-2及び2.-3に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第4.むすび 上記第3.のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 第5.付記 審判請求人は、本拒絶査定不服審判事件の審理終結後に審理再開申立書を提出し、分割出願の機会が付与されることを目的として、審理再開の決定及び拒絶理由通知書の送付を求めている。 しかし、同申立書に記載された本願の審査及び審理の経緯に係る事情は、重大な証拠の取調べが未済であったとか、審理終結の通知と入れ違いに請求の理由の補充、明細書の補正がされていた等の審理の万全を期するために必要と認められる場合には当たらない。 そして、この審理再開の申立ては、法の定める分割出願を可能とする期間が過ぎた後に終結された審理を、同期間が過ぎた後に分割出願を行うために再開せよというものであって、分割出願をすることができる時期を定めた特許法上の分割出願制度の趣旨に見合わないものであることは明らかである。 したがって、本拒絶査定不服審判事件の審理再開の必要を認めない。 |
審理終結日 | 2016-01-12 |
結審通知日 | 2016-01-15 |
審決日 | 2016-01-27 |
出願番号 | 特願2013-516356(P2013-516356) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F02C)
P 1 8・ 121- Z (F02C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 敏行、後藤 泰輔 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 中村 達之 |
発明の名称 | 中空湾曲板及びその製造方法ならびにガスタービンの燃焼器 |
代理人 | 誠真IP特許業務法人 |