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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1312536
審判番号 不服2014-22392  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-04 
確定日 2016-03-16 
事件の表示 特願2012-535395「付着性が改善された直接装着型の光起電力装置、及びその方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月28日国際公開、WO2011/050225、平成25年 3月 7日国内公表、特表2013-508985〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年10月22日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2009年10月22日 米国、2009年11月3日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年6月19日に国際翻訳文(明細書の翻訳文、特許請求の範囲の翻訳文及び要約書の翻訳文)が提出され、平成24年6月27日に手続補正がなされ、平成25年9月3日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月4日に拒絶査定不服審判が請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされ、前記拒絶査定不服審判の審判請求書が同年12月17日付け手続補正書で補正がなされた後、平成27年3月9日付けで前置報告がなされ、同年7月28日に上申書が提出されたものである(以下、平成26年11月4日になされた手続補正を「本件補正」という。)。

第2 本件補正についての却下の決定
1 [結論]
本件補正を却下する。

2 [補正の内容]
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、本件補正前(平成26年3月10日付けの手続補正後のもの。)の
「構造体上に直接装着するのに適した光起電力装置であって、
電気エネルギーに変換するために、光起電力装置の光活性部分に光エネルギーを伝達するのを可能にする上面部分と、底部ボンディング・ゾーンを有する底面部分とを有する光起電力セル集成体を含む活性部分、ここで、前記底面部分は充填剤が充填されていない又は充填剤が充填されたエラストマー又はプラストマー材料を含む、及び
該装置を該構造体に結合するためのファスナーを受容するための領域を有し、そして上面に上部ボンディング・ゾーンを有する、該活性部分に直接隣接し且つ結合された不活性部分、ここで、前記不活性部分の上面部分は、充填剤が充填されていない又は充填剤が充填されたポリマーを含む、
を含んで成り、
当該装置は20mm未満かつ2mm超の厚さを有し、当該装置は、少なくとも2つのファスナーを使用して構造体に直接固定されるようになっており、底部ボンディング・ゾーンは第1ボンディング要素を含み、上部ボンディング・ゾーンは第2ボンディング要素を含み、第1ボンディング要素は、鉛直方向にオーバラップした隣接する光起電力装置上の第2ボンディング要素と相互作用することにより又は前記構造体と相互作用することにより該装置をかかる隣接する装置に又は該構造体にボンディングするように設計されている、
光起電力装置。」

「構造体上に直接装着するのに適した光起電力装置であって、
電気エネルギーに変換するために、光起電力装置の光活性部分に光エネルギーを伝達するのを可能にする上面部分と、底部ボンディング・ゾーンを有する底面部分とを有する光起電力セル集成体を含む活性部分、ここで、前記底面部分は充填剤が充填されていない又は充填剤が充填されたエラストマー又はプラストマー材料を含む、及び
該装置を該構造体に結合するためのファスナーを受容するための領域を有し、そして上面に上部ボンディング・ゾーンを有する、該活性部分に直接隣接し且つ結合された不活性部分、ここで、前記不活性部分の上面部分は、充填剤が充填されていない又は充填剤が充填されたポリマーを含む、
を含んで成り、
当該装置は20mm未満かつ2mm超の厚さを有し、当該装置は、少なくとも2つのファスナーを使用して構造体に直接固定されるようになっており、底部ボンディング・ゾーンは第1ボンディング要素を含み、上部ボンディング・ゾーンは第2ボンディング要素を含み、第1ボンディング要素は、鉛直方向にオーバラップした隣接する光起電力装置上の第2ボンディング要素と相互作用することにより又は前記構造体と相互作用することにより該装置をかかる隣接する装置に又は該構造体にボンディングするように設計されており、
該第1ボンディング要素が、第2ボンディング要素と適合可能な粘着剤又はコンタクト接着剤を含み、該第2ボンディング要素が、該第1ボンディング要素の少なくとも一部を受け入れるための少なくとも1つの凹部状ポケットを含むか又は平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含むか、あるいは、該第1及び第2のボンディング要素が、集成体厚を有する面ファスナー集成体を含み、該面ファスナー集成体の集成体厚が該少なくとも1つの凹部状ポケット内部に少なくとも90%配置される、光起電力装置。」(以下「本件補正発明」という。)
に補正する内容を含むものである(下線は請求人が付したとおりである)。

3 [理由1]
特許法第17条の2第3項について
(1)本件補正は、補正前の請求項1の「第2ボンディング要素が、」「平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」と記載される構成を付加する内容を含むものである。
そして、この記載は、「第2ボンディング要素」のみが、「平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」構成も含むと認められる。

(2)本願出願当初の明細書及び図面の記載内容
本願の平成24年6月19日に提出された国際翻訳文の明細書の翻訳文、特許請求の範囲の翻訳文及び要約書の翻訳文、及び、同時に提出された図面(以下「本願当初明細書等」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【請求項12】
該上部ボンディング・ゾーン、該底部ボンディング・ゾーン、又はその両方の一部が、平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載の装置。」

イ 「【0009】
本発明はさらに、ここに記載された特徴、例えば第1ボンディング要素が、接着ボンディング要素を形成する接着剤を含み、そして第2ボンディング要素が、第1ボンディング要素の少なくとも一部を受け入れるための適合可能な材料を含むこと;第1ボンディング要素が、活性部分の底面に活性部分の周縁と同じ広がりを有するか、又は活性部分の周縁から25mm以内に配置されていること;第2ボンディング要素が、第1ボンディング要素の少なくとも一部を受け入れるための少なくとも1つの凹部状ポケットを含むこと;少なくとも1つの凹部状ポケットが、少なくとも1.0mmのポケット深さを有していること;第1ボンディング要素が、接着剤の外面上に配置された取り外し可能な剥離ライナーをさらに含み、剥離ライナーが、第1ボンディング要素及び第2ボンディング要素、又は第1ボンディング要素及び構造体が結合を形成するのを可能にするように取り外されること;取り外し可能な剥離ライナーが、光起電力装置の周囲から側方に少なくとも10mmだけ延びて側方延長部分を形成しており、そして少なくともボンディング・ゾーンのうちの一方のゾーンで折り返されていること;取り外し可能な剥離ライナーが、活性部分の上面部分の一部を覆っており、それが取り外されるまでセルが電気を発生させるのを防ぐために不透明(例えばオパーク)であるか又は光制限していること;取り外し可能な剥離ライナーが、設置者にとって利用しやすいように、プリントされた設置指示を含むこと;取り外し可能な剥離ライナーが、滑り止めを備えた外面を含むこと;ボンディング要素が、-40℃?85℃の温度でASTM D 903-98による最小剥離力 3 PLI(1リニアインチ当たりのポンド)、より好ましくは5 PLI、そして最も好ましくは10 PLIを維持し、そしてASTM D 412-06による伸び率が>500%、より好ましくは>1000%である粘着剤を含むこと;上部ボンディング・ゾーン、底部ボンディング・ゾーン、又はその両方の一部が、平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含むこと;第1及び第2のボンディング要素は、所定の集成体厚を有する面ファスナーを含み、面ファスナー集成体厚が少なくとも1つの凹部状ポケット内部に少なくとも90%配置されること;第1ボンディング要素、第2ボンディング要素、又はその両方は、連続要素であるか、又は所定のスペースによって分離された不連続要素として構成されていること;装置が、活性部分とは反対側の縁部又はその近くに、不活性部分の増大した厚さを有していること、の1つ又は任意の組み合わせによって特徴づけることができる。

ウ 「【0019】
上部ボンディング・ゾーン48及び底部ボンディング・ゾーン30はさらに、第1ボンディング要素36を含むように規定されてよく、他方は第2のボンディング要素50を含む。機能上、ボンディング要素36,50は、装置10が隣接する光起電力装置10と鉛直方向にオーバラップさせられた場合に互いに相互作用するように設計されていてよい。装置のすぐ下に装置がない場合には、これらのボンディング要素のうちの一方は、装置10を構造体にボンディングすることもできる。
【0020】
必要に応じて、ボンディング・ゾーン30,48はパターン付き表面を含んでよい。パターン付き表面は、平らな表面に対して表面積を5%超だけ、好ましくは15%超だけ、そして最も好ましくは25%超だけ増大させる。例えば接着剤の不具合に必要な剪断構成部品を導入するために、鉛直の構成部品(例えば表面28及び/又は44から延びる突起)を有する構造を組み込むことも考えられる。また、捩れたパッチ型の不具合を防止するための目の粗いメッシュ構造を加えることも考えられる。」

(3)判断
ア 上記(2)によれば、本願当初明細書等の記載では、「パターン付き表面」は、「上部ボンディング・ゾーン、該底部ボンディング・ゾーン、又はその両方の一部」ないし「ボンディング・ゾーン30,48」に含まれるとされる。また、「上部ボンディング・ゾーン48及び底部ボンディング・ゾーン30はさらに、第1ボンディング要素36を含むように規定されてよく、他方は第2のボンディング要素50を含む」とも記載されている。
そうすると、「第2のボンディング要素50を含む」、「上部ボンディング・ゾーン48及び底部ボンディング・ゾーン30」のいずれか一方が「パターン付き表面」を含むことは記載されているが、「第2のボンディング要素50」のみが「パターン付き表面」を含むことは記載されていない。

イ しかるに、上記(1)のような、「第2ボンディング要素」に関して、「平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」との構成は、上記アでの検討に照らして、本願当初明細書等の記載により導かれる技術的事項とは別異のものであるから、本願当初明細書等には、上記「第2ボンディング要素が、」「平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」との構成は、本願当初明細書等に記載されていたということはできない。

(4)小括
以上によれば、前記「2 補正の内容」の内容を含む本件補正は、本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

なお、本願当初明細書等及び平成27年7月28日付け上申書(補正案)を勘案して、「第2ボンディング要素が・・・平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」との発明特定事項を、「上部ボンディング・ゾーンが・・・平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」と解釈しても、下記[理由2]により、特許法第17条の2第6項の規定に違反するものである。

4 [理由2]
特許法第17条の2第6項について
(1)補正の内容
本件補正は、上記第2 [補正の内容]に示したとおりのものである(なお、上記したとおり、「第2ボンディング要素が・・・平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」との発明特定事項は、「上部ボンディング・ゾーンが・・・平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」と解釈する。)。

(2)補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1において、「第1ボンディング要素」及び「第2ボンディング要素」に係り、「該第1ボンディング要素が、第2ボンディング要素と適合可能な粘着剤又はコンタクト接着剤を含み、該第2ボンディング要素が、該第1ボンディング要素の少なくとも一部を受け入れるための少なくとも1つの凹部状ポケットを含むか又は(上部ボンディング・ゾーンが)平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含むか、あるいは、該第1及び第2のボンディング要素が、集成体厚を有する面ファスナー集成体を含み、該面ファスナー集成体の集成体厚が該少なくとも1つの凹部状ポケット内部に少なくとも90%配置される」との限定を付加するものであるから、上記1の本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
ア 本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記第2 [補正の内容]において、本件補正後のものとして記載したとおりのものと認める(なお、上記したとおり、「第2ボンディング要素が・・・平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」との発明特定事項は、「上部ボンディング・ゾーンが・・・平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」と解釈する。)。

イ 刊行物の記載及び引用発明
(ア)原査定における拒絶理由に引用された、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-243166号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅屋根などに適応できる屋根用発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用太陽光発電を考えたときに設置場所は屋根が最適であるが、強風、耐震対策などのために、住宅用屋根に太陽電池を設置するときは強固な屋根材の上に強固な取付け架台とパネルタイプの太陽電池を設置することが必要とされてきた。このため、手間と設備のコストが設置の障害となっていた。」

b 「【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図示例を伴い説明する。
【0018】
図1は、本発明による一実施の形態としてのフィルム形太陽電池による屋根用発電システムの構成図を示し、太陽電池による発電システム1は、フィルム形太陽電池2,2,2と、これらのフィルム形太陽電池2,2,2をまとめて電気的に接続する接続箱3と、この接続箱3は、パワーコンディショナー4を介し商用連系点6を通じて、商用電源5及び負荷7に接続される。この接続箱3は、設けることが望ましいが、パワーコンディショナー4との接続により、設置を省略することも可能である。
【0019】
パワーコンディショナー4は、フィルム形太陽電池2の発電電圧が高いときには、商用連系点6を通じて負荷7に電力を供給し、発電電圧が低いときには、商用連系点6には電力供給をしないための調整を行う。
【0020】
このように太陽光がある昼間は商用電源の電力を補充し、太陽光の無い夜には商用電源の電力で負荷を駆動する。
【0021】
フィルム形太陽電池2は、図2に外観図を示すように、プラスチックフィルム22上に形成したフレキシブルな太陽電池で剛体の太陽電池より軽量である。
【0022】
この実施の形態では、図3に平面図、図4に断面図を示すように、取扱いの便宜のため鋼板と一体型とされる。すなわち、図3に示すように4枚直列、2枚並列8枚の太陽電池からなるフィルム形太陽電池2の単位モジュールとする。図3、図4に示すように、このフィルム形太陽電池2の単位モジュールは、薄い鋼板25に接着剤26で貼り付け、表面をコート材27でコートし、鋼板一体型単位モジュール20とする。ここでは、鋼板25は0.8mm厚のフッ素樹脂を塗装したガルバリウム鋼板であり、接着剤26は、エチレンビソールアセテート(EVA)である。またコート材27は、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)である。なお、鋼板25の裏側にはフィルム形太陽電池2からの導電端子28が端子箱24、コネクタ23へと伸びている。
【0023】
このような鋼板一体型単位モジュール20とすることにより、太陽電池の取扱いは容易となり、耐気候性のすぐれたものとなる。フィルム形太陽電池(シート)2を用いていることから鋼板更には敷設後の変形にも耐えられるものとなる。
【0024】
図5には上記のフィルム形太陽電池の鋼板一体型単位モジュール20を屋根瓦90に貼着配置した状態を示す屋根瓦の平面図である。単位モジュール20が、屋根瓦として屋根を構成するときに重ねられる部分、重ね部91,92,93を残して、屋根瓦90に接着剤などで貼着される。この例では、横1200mm、縦635mmの屋根瓦に0.642m^(2)のフィルム形太陽電池2(または20)を貼着している。一体型単位モジュール20が、2枚貼着されている。フィルム形太陽電池2(または20)の両端には電気接続端子Tが形成されている。
【0025】
図6には、フィルム形太陽電池の貼着配置した屋根瓦90の断面部分図を示す。屋根瓦90は、改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95を挟んで、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96,97が形成されている。改質アスファルトルーフィング97の下面には、粘着層98が形成され、その下には粘着層98の粘着時に剥がされる剥離紙99が付着している。改質アスファルトルーフィング96のうえには、フィルム形太陽電池の鋼板一体型単位モジュール20または、フィルム形太陽電池(単位モジュール)2が接着剤で重ね部を残して、貼着される。
【0026】
図7には、フィルム形太陽電池を貼着配置した屋根瓦の屋根構成の縦列の配置状態を示す平面図で、図8は、この一部を取り出して側面から眺めた側面図である。屋根瓦90は、屋根の下方から上方に、重ね部91の上に次々に重ねられ従来方法で屋根板80上に固定される。
【0027】
その後、各屋根瓦90のフィルム形太陽電池の単位モジュール20からの端子を図7のように縦列に接続し、接続箱3に集める。
【0028】
図9は、屋根全体の構成を示す斜視図で、図7の状態の縦列の構成が横方向にここでは3列並べられている。横方向の重ね部92、93も図上の左から右に向かって重ねられることを示している。
【0029】
この実施の形態では、フィルム形太陽電池の鋼板一体型単位モジュール20を取扱いが容易であるため用いている例を示したが、他の実施の形態では、鋼板一体型単位モジュールでなく、太陽電池セルの上下面をエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)で覆い下面に接着剤のエチレンビソールアセテート(EVA)等を着けた状態のフィルム形太陽電池単位モジュールを用いることが望ましい場合もある。」

c 図4ないし9及びは次のものである。
図4


d 上記a及びbを踏まえて、上記cの図5及び6を見ると、屋根瓦90は上面及び底面を有し、フィルム形太陽電池2(または単位モジュール20)を貼着した前記屋根瓦90の上面が、フィルム形太陽電池2(または単位モジュール20)に直接隣接し且つ結合されたフィルム形太陽電池2(または単位モジュール20)のない重ね部91を有する点が見てとれる。
また、上記a及びbを踏まえて、上記cの図6ないし8を見ると、フィルム形太陽電池2(または単位モジュール20)を貼着した屋根瓦90の底面において、改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の下面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング97が形成され、当該改質アスファルトルーフィング97の下面には、粘着層98が形成される点、及び、改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の上面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96が形成される点が見てとれる。
さらに、上記a及びbを踏まえて、上記cの図6ないし8を見ると、フィルム形太陽電池2(または単位モジュール20)を貼着した屋根瓦90の粘着層98は、鉛直方向にオーバラップした隣接するフィルム形太陽電池2(または単位モジュール20)を貼着した屋根瓦90上の改質アスファルトルーフィング96に貼着するように設けられ、前記屋根瓦90は、前記屋根板80上に直接固定される点がみてとれる。

e 引用発明
上記aないしdによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「鋼板一体型単位モジュール20は、4枚直列、2枚並列8枚の太陽電池からなるフィルム形太陽電池2の単位モジュールを、薄い鋼板25に接着剤26で貼り付け、表面をコート材27でコートしたものであり、
前記単位モジュール20が、屋根瓦として屋根を構成するときに重ねられる部分、重ね部91,92,93を残して、屋根瓦90に接着剤などで貼着され、
前記屋根瓦90は、改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95を挟んで、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96,97が形成されたものであり、
前記改質アスファルトルーフィング97の下面には、粘着層98が形成され、その下には粘着層98の粘着時に剥がされる剥離紙99が付着し、前記改質アスファルトルーフィング96の上には、フィルム形太陽電池2の鋼板一体型単位モジュール20が接着剤で重ね部91を残して、貼着され、
前記前記単位モジュール20、前記重ね部91、前記改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95、前記改質アスファルトルーフィング96、97及び前記粘着層98からなる屋根瓦(以下「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」という。)は、屋根の下方から上方に、重ね部91の上に次々に重ねられて屋根板80上に固定されるとともに、
前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦は上面及び底面を有し、前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦の上面が、前記単位モジュール20に直接隣接し且つ結合された前記単位モジュール20のない重ね部91を有し、
前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦の底面において、改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の下面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング97が形成され、当該改質アスファルトルーフィング97の下面には、粘着層98が形成され、
前記改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の上面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96が形成され、
前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦の前記粘着層98は、鉛直方向にオーバラップした隣接する前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦上の前記改質アスファルトルーフィング96に貼着するように設けられ、前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦は、前記屋根板80上に直接固定されるものである、単位モジュール20を貼着した屋根瓦。」

(イ)原査定における拒絶理由に引用された、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-279871号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
a 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強風や振動等により瓦の飛散、落下、ずれ等を防止する屋根瓦の瓦止め方法及びこれに用いる瓦止め部材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、瓦屋根に施工する屋根瓦は特定の屋根瓦を野地板等の下地材に釘打ちして固定し、他の屋根瓦は単に重ね合わせた状態で配置している。また、中古住宅の場合には、野地板が腐食して釘が効かなくなっていることが多いので、その場合には、屋根瓦を漆喰、セメント、シリコン等によるコーキング材で止めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記した特定の枚数のうちの1つの屋根瓦を釘等で野地板に固定する屋根瓦の固定方法においては、各屋根瓦の下部を強風で煽られると簡単に飛んでしまうことが多いという問題があった。また、コーキング材を用いて屋根瓦を固定する方法においては、瓦屋根の施工に工事費及び期間共にかかる上に、屋根瓦の見え掛かり部分を直接接合しているので、外から望見でき非常に見苦しいという問題があった。本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡単な施工で屋根瓦の重ね合わせ部分を接合し、強風や振動によっても吹き飛んだりずれたりしない屋根瓦の瓦止め方法及びこれに用いる瓦止め部材を提供することを目的とする。」

b 「【0006】
【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。ここに、図1(A)、(B)は本発明の一実施の形態に使用する瓦止め部材を示す図面であって(A)はその斜視図、(B)は(A)における矢視A-A断面図を示す。図2は本発明の一実施の形態に係る屋根瓦の瓦止め方法の説明図、図3は図2における矢視B-B断面図である。
【0007】図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る瓦止め部材10は、多数の気孔を有する合成樹脂繊維体11と、その内部に含ませた接着剤12とを有している。以下、これらについて詳しく説明する。合成樹脂繊維体11は、自由状態で平面視して正方形(又は長方形)で高さが水平の一辺より短い(例えば、2?3cm)直方体からなっている。この実施の形態では、合成樹脂の材料としてはウレタンを使用したが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ゴム、その他のゴム又は合成樹脂材を使用することができる。合成樹脂繊維体を構成する繊維の太さは直径が0.1?1.5mm(より好ましくは、0.4?0.8mm)程度を使用するのがよく、外側に連通する内部の空間は直径が1?8mm(より好ましくは、4?6mm)程度の気泡が繋がっている状態でよい。全体の大きさ(容積)に対する気泡の体積率は70?98%程度であるが、この範囲を超える場合であっても本発明は適用される。そして、この合成樹脂繊維体11は弾性力を有し、仮に外部から圧縮荷重があっても荷重を除くと元の状態に戻る性質を有している。
【0008】この合成樹脂繊維体11を液状又は半液状の接着剤の中に入れて、内部の空間部に接着剤を侵入させるか、あるいは合成樹脂繊維体11の内部に接着剤を注入する。接着剤としてはウレタン系又はゴム系の接着剤でもよいが、瓦の表面及び裏面と接合性がよく、しかも硬化後も弾性力を有するのが好ましい。この理由は、接着剤12が完全に硬化すると、その部分に荷重がかかった場合等において、瓦に集中荷重がかかり、割れやすくなるからである。従って、上下の瓦は接合するが、接合時に上に載っている瓦を持ち上げない程度の柔らかい合成樹脂繊維体及び接着剤を使用するのが好ましい。なお、接着剤としては、屋根瓦等の無機物に接合性がよく、しかも夏の高温時にあっても溶融せず、硬化時に弾性力を有し、雨水に溶けない種類の接着剤であれば、他の接着剤であってもよい。
【0009】次に、図2、図3を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る屋根瓦の瓦止め方法について説明すると、予め施工されている屋根瓦の場合には、現在配置されている上側の屋根瓦13を少し持ち上げて、一部重ね合わせた状態で並べて配置された上側の屋根瓦13と下側の屋根瓦13の重ね合わせ部分14に、瓦止め部材10を配置し、そのまま上側の屋根瓦13を下ろす。この場合、上側の屋根瓦13が元に位置に収まり、瓦止め部材10は上下方向に圧縮された状態で配置されていることが重要である。この場合には、圧縮された接着剤12の反発力は小さく、装着された屋根瓦13を持ち上げることがないようにしておく。
【0010】これによって、瓦止め部材10が上下に圧縮されて内部の接着剤12が表面に流れだしそのまま固化し、隣合う屋根瓦13を連結接合する。接着剤12が硬化すると、合成樹脂繊維体11は接着剤12の補強剤の役目をする。なお、硬化後瓦止め部材10は弾性状態を有する。従って、繊維強化型プラスチックと同様の構成となり、ある程度の厚みを有する瓦止め部材10の強度が増加する。なお、屋根瓦13の上側部分には釘孔15が設けられているので、適当箇所は野地板に釘を用いて固定されている。このような構造にすると、屋根瓦13の下部の隙間から強風16が吹き込んだり、あるいは強風17によって屋根瓦13が吸い上げられようとしても、屋根瓦13の下部は瓦止め部材10によって固定されているので、屋根瓦13が吹き上がることがない。
【0011】この実施の形態においては、瓦止め部材10は屋根瓦13の中央部分に設けられているが、その他の部分であっても本発明は適用される。この実施の形態では予め施工された屋根瓦13に対して本発明の一実施の形態に係る屋根瓦の瓦止め方法を適用したが、新築時に屋根瓦を一枚毎施工する際に瓦止め部材10を配置することもできる。なお、本発明において、瓦止め部材10で連結する屋根瓦13の枚数は任意であり、屋根全体の全部であってもよいし、その一部であってもよく、いずれであっても簡単に工事を行うことができる。」

c 図2は次のものである。


d 上記a及びbを踏まえて、上記cの図2を見ると、屋根瓦13の上側部分には釘孔15が2ヶ所設けられていることが見てとれる。

ウ 対比・判断
(ア)対比
a 本願補正発明と引用発明を対比すると、引用発明の「『フィルム形太陽電池2』及び『単位モジュール20』」、「重ね部91,92,93」、「改質アスファルトルーフィング97の下面」、「改質アスファルトルーフィング96の上面」、「粘着層98」、「屋根板80」、「(単位モジュール20を貼着した屋根瓦の)上面」、「(単位モジュール20を貼着した屋根瓦の)底面」及び「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、本願補正発明の「光活性部分」、「不活性部分」、「底部ボンディング・ゾーン」、「第2ボンディング要素」、「第1ボンディング要素」、「構造体」、「(光起電力装置の)上面部分」、「(光起電力装置の)底面部分」及び「光起電力装置」にそれぞれ相当する。

b 引用発明の「前記屋根板80上に直接固定される」「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、本願補正発明の「構造体上に直接装着するのに適した」「光起電力装置」に相当する。

c 引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、「上面及び底面を有し」、「前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦の底面において、改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の下面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング97が形成され」たのであり、「当該改質アスファルトルーフィング97の下面には、粘着層98が形成され、前記改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の上面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96が形成され」るものであって、当該「単位モジュール20」は「4枚直列、2枚並列8枚の太陽電池からなる」から、電気エネルギーに変換するために、単位モジュール20を貼着した屋根瓦に光エネルギーを伝達するのを可能にする上面と、改質アスファルトルーフィング97を有する底面とを有するといえる。
そうすると、引用発明の、「上面及び底面を有し」、「改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の下面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング97が形成され、当該改質アスファルトルーフィング97の下面には、粘着層98が形成され、前記改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の上面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96が形成され」た「屋根瓦90」の上面に、当該「4枚直列、2枚並列8枚の太陽電池からなる」「単位モジュール20」を貼着した「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、本願補正発明の「電気エネルギーに変換するために、光起電力装置の光活性部分に光エネルギーを伝達するのを可能にする上面部分と、底部ボンディング・ゾーンを有する底面部分とを有する光起電力セル集成体を含む活性部分」を含む「光起電力装置」に相当する。

d 引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦の上面が、前記単位モジュール20に直接隣接し且つ結合された前記単位モジュール20のない重ね部91を有」する「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、本願補正発明の「上面に上部ボンディング・ゾーンを有する、該活性部分に直接隣接し且つ結合された不活性部分」を含む「光起電力装置」に相当する。

e 引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、「上面及び底面を有し」、「前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦の底面において、改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の下面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング97が形成され」たのであり、「当該改質アスファルトルーフィング97の下面には、粘着層98が形成され、前記改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95の上面には、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96が形成され」るものであるから、単位モジュール20を貼着した屋根瓦は、底面に粘着層98が形成され、上面に改質アスファルトルーフィング96が形成されるものであるといえる。
そうすると、引用発明の「上面及び底面を有し」、「単位モジュール20を貼着した屋根瓦の底面において」、「改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング97が形成され、当該改質アスファルトルーフィング97の下面には、粘着層98が形成され」、「改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95を挟んで、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96が形成され」る「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、本願補正発明の「底部ボンディング・ゾーンは第1ボンディング要素を含み、上部ボンディング・ゾーンは第2ボンディング要素を含」む「光起電力装置」に相当する。

f 引用発明の単位モジュール20を貼着した屋根瓦の下面に形成された「粘着層98」は、「鉛直方向にオーバラップした隣接する前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦上の前記改質アスファルトルーフィング96に貼着するように設けられ」る「粘着層98」であるから、本願補正発明の「鉛直方向にオーバラップした隣接する光起電力装置上の第2ボンディング要素と相互作用することにより又は前記構造体と相互作用することにより該装置をかかる隣接する装置に又は該構造体にボンディングするように設計されて」いる「第1ボンディング要素」と、「鉛直方向にオーバラップした隣接する光起電力装置上の第2ボンディング要素と相互作用することにより該装置をかかる隣接する装置にボンディングするように設計されて」いる「第1ボンディング要素」である点で一致する。

g 引用発明の「粘着層98」は、「前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦上の前記改質アスファルトルーフィング96に貼着するように設けられ」るから、粘着層98が改質アスファルトルーフィング96と適合可能な粘着剤を含むといえる。
そうすると、引用発明の「前記単位モジュール20を貼着した屋根瓦上の前記改質アスファルトルーフィング96に貼着するように設けられ」る「粘着層98」は、本願補正発明の「第2ボンディング要素と適合可能な粘着剤又はコンタクト接着剤を含」む「第1ボンディング要素」と、「第2ボンディング要素と適合可能な粘着剤を含」む「第1ボンディング要素」である点で一致する。

h 上記aないしgによれば、本願補正発明と引用発明は、
「構造体上に直接装着するのに適した光起電力装置であって、
電気エネルギーに変換するために、光起電力装置の光活性部分に光エネルギーを伝達するのを可能にする上面部分と、底部ボンディング・ゾーンを有する底面部分とを有する光起電力セル集成体を含む活性部分、及び
上面に上部ボンディング・ゾーンを有する、該活性部分に直接隣接し且つ結合された不活性部分、
を含んで成り、
底部ボンディング・ゾーンは第1ボンディング要素を含み、上部ボンディング・ゾーンは第2ボンディング要素を含み、第1ボンディング要素は、鉛直方向にオーバラップした隣接する光起電力装置上の第2ボンディング要素と相互作用することにより又は前記構造体と相互作用することにより該装置をかかる隣接する装置に又は該構造体にボンディングするように設計されており、
該第1ボンディング要素が、第2ボンディング要素と適合可能な粘着剤又はコンタクト接着剤を含む、光起電力装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(a)本願補正発明の「光起電力装置」の「底面部分」は、「充填剤が充填されていない又は充填剤が充填されたエラストマー又はプラストマー材料を含」み、「光起電力装置」の「不活性部分の上面部分」は、「充填剤が充填されていない又は充填剤が充填されたポリマーを含む」のに対して、引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」の「底面」及び「上面」がこのようなものを含まない点(以下「相違点1」という。)。

(b)本願補正発明の「光起電力装置」は、「構造体に結合するためのファスナーを受容するための領域を有し」、「なくとも2つのファスナーを使用して構造体に直接固定されるようになって」いるのに対して、引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」はファスナーで固定されるものではない点(以下「相違点2」という。)。

(c)本願補正発明の「光起電力装置」は、「20mm未満かつ2mm超の厚さを有し」ているのに対して、引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は厚さが特定されない点(以下「相違点3」という。)。

(d)本願補正発明は、「第2ボンディング要素」が「第1ボンディング要素の少なくとも一部を受け入れるための少なくとも1つの凹部状ポケットを含む」か、「上部ボンディング・ゾーン」が「平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」か、あるいは、「該第1及び第2のボンディング要素」が、「集成体厚を有する面ファスナー集成体を含み、該面ファスナー集成体の集成体厚が該少なくとも1つの凹部状ポケット内部に少なくとも90%配置される」のに対して、引用発明の「改質アスファルトルーフィング96、97」は、このようなものと特定されない点(以下「相違点4」という。)。

(イ)判断
a 上記相違点1について検討する。
引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、「改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95を挟んで、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96,97が形成され」るものであるところ、当該改質アスファルトは、アスファルトにゴム(エラストマー)ないしプラスチック(プラストマー)の材料を含めたものであることは本願優先日当時周知の事項である。
したがって、引用発明の「改質アスファルトを含浸したポリエステル不織布95を挟んで、改質アスファルトを使用した防水シートである改質アスファルトルーフィング96,97が形成され」る「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、本願補正発明の「光起電力装置」と、「底部ボンディング・ゾーンを有する底面部分とを有する光起電力セル集成体を含む活性部分、ここで、前記底面部分は充填剤が充填されていない又は充填剤が充填されたエラストマー又はプラストマー材料を含む」点で一致するといえる。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

b 上記相違点2について検討する。
引用発明の「屋根の下方から上方に、重ね部91の上に次々に重ねられて屋根板80上に固定され」る「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」は、引用文献1によれば、「強風、耐震対策などのために、・・・強固な取付け・・・が必要とされ」(イ(ア)a)るものであるとされる。
これに対して、引用文献2には、「強風や振動によっても吹き飛んだりずれたりしない屋根瓦の瓦止め方法及びこれに用いる瓦止め部材を提供することを目的と」(イ(イ)a)して、「瓦止め部材10は、多数の気孔を有する合成樹脂繊維体11と、その内部に含ませた接着剤12とを有し」、「一部重ね合わせた状態で並べて配置された上側の屋根瓦13と下側の屋根瓦13の重ね合わせ部分14に、瓦止め部材10を配置し」、「瓦止め部材10」「内部の接着剤12が」「固化し、隣合う屋根瓦13を連結接合する」ものであって、「屋根瓦13の上側部分には釘孔15が2ヶ所設けられている」「釘孔15」で、「野地板に釘を用いて固定」(イ(イ)b)する「屋根瓦の瓦止め方法」(イ(イ)a)が記載されている。
そうすると、引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」を「屋根の下方から上方に、重ね部91の上に次々に重ねられて屋根板80上に固定」するに際して「強風、耐震対策などのために」、「強固な取付け」となす方法として、引用文献2に記載された「強風や振動によっても吹き飛んだりずれたりしない屋根瓦の瓦止め方法」である、瓦止め部材10の接着剤12が隣合う屋根瓦13を連結接合するとともに、屋根瓦13の上側部分に2ヶ所設けられている釘孔15で、釘を用いて固定する方法は、本願補正発明の「光起電力装置」と、「当該装置は、少なくとも2つのファスナーを使用して構造体に直接固定されるようになっており」の点に相当する。
したがって、引用発明に引用文献2に記載された上記構成を適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

c 上記相違点3について検討する。
引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」の厚さは、適宜定めるべき設計的事項にすぎず、これを2ないし20mmとする点に格別の困難性は認められない。
したがって、引用発明において「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」の厚さを適宜のものとなし、上記相違点3に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

d 上記相違点4について検討する。
引用発明の「単位モジュール20を貼着した屋根瓦」がザラザラとした表面(パターン付き表面)であることは、上記aで述べたとおり本願優先日当時周知の事項であるところ、どの程度のザラザラとした表面(パターン付き表面)とするかは適宜定めるべき設計的事項にすぎず、これを「平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含む」ものとする点に格別の困難性は認められない。
したがって、引用発明において、「改質アスファルトルーフィング96」を適宜の「平らな表面に対して表面積を増大させるパターン付き表面を含む」ものとなし、上記相違点4に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得た事項にすぎない。
(なお、屋根瓦を屋根の下方から上方に、重ね部の上に次々に重ねられて屋根板上に固定するに際して、ボンディング要素の少なくとも一部を受け入れるための少なくとも1つの凹部状ポケットを含む構成となすことは、本願優先日当時周知の事項である(例えば、特開2008-255673号公報の段落【0016】「凹部13には接着剤としてのコーキング剤16が充填され、平板瓦11を葺いたとき棟側の平板瓦11のえり部の瓦頭14aが凹部13に嵌ってコーキング剤16に押付けられ接着されるようになっている。」との記載参照)。
したがって、引用発明において、「改質アスファルトルーフィング96」を「粘着層98の少なくとも一部を受け入れるための少なくとも1つの凹部を含む」構成となし、上記相違点4のうち、「第2ボンディング要素」が「第1ボンディング要素の少なくとも一部を受け入れるための少なくとも1つの凹部状ポケットを含む」点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得た事項にすぎない。)

エ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献1並びに2に記載の事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)[補正却下の決定についてのむすび]
上記3 [理由1]での検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、上記4 [理由2]での検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成26年3月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、2 [補正の内容]において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明
上記第2、4 [理由2](3)イのとおりである。

3 対比・判断
前記第2、2 [補正の内容]のとおり、本件補正は、補正前の請求項1において、「第1ボンディング要素」及び「第2ボンディング要素」に係り、「該第1ボンディング要素が、第2ボンディング要素と適合可能な粘着剤又はコンタクト接着剤を含み、該第2ボンディング要素が、該第1ボンディング要素の少なくとも一部を受け入れるための少なくとも1つの凹部状ポケットを含むか又は平らな表面に対して表面積を5%超だけ増大させるパターン付き表面を含むか、あるいは、該第1及び第2のボンディング要素が、集成体厚を有する面ファスナー集成体を含み、該面ファスナー集成体の集成体厚が該少なくとも1つの凹部状ポケット内部に少なくとも90%配置される」との限定を付加するものである。
そうすると、本願発明は、本願補正発明から上記限定を省いたものと認められるところ、第2、4 [理由2](3)ウ(ア)での検討に照らすと、本願発明は、引用発明と上記相違点1ないし3で相違するものであると認められる。
したがって、第2、4 [理由2](3)ウ(イ)aないしcで検討したとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1並びに2に記載の事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1並びに2に記載の事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-19 
結審通知日 2015-10-20 
審決日 2015-11-02 
出願番号 特願2012-535395(P2012-535395)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 伊藤 昌哉
松川 直樹
発明の名称 付着性が改善された直接装着型の光起電力装置、及びその方法。  
代理人 胡田 尚則  
代理人 小林 良博  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 出野 知  

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