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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H02M 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M |
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管理番号 | 1312605 |
審判番号 | 不服2015-10444 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-03 |
確定日 | 2016-04-05 |
事件の表示 | 特願2011- 7825「電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 9日出願公開、特開2012-151963、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年1月18日の出願であって、平成26年7月24日付けで拒絶理由が通知され、平成26年9月29日付けで手続補正がされ、平成27年2月25日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年6月3日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-5に係る発明は、平成26年9月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】複数のスイッチング素子(Sr,Ss,St,Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を有し、交流電源(6)側からの電力を前記複数のスイッチング素子(Sr,Ss,St,Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作によって所定の周波数の交流電力に変換し、該交流電力を負荷(7)に出力する変換部(4)と、 前記交流電源(6)側からの入力電流(Iin)に含まれる調波成分(Iin2,Iin3,Iin4,…)のうちの特定の次数の調波成分(Iin2,Iin3,Iin4,…)を個別に抑制するように、前記複数のスイッチング素子(Sr,Ss,St,Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を制御する制御部(10)とを備え、 前記制御部(10)は、 前記変換部(4)を制御するためのモータ電流指令値を生成する電流指令生成部(20)と、 前記モータ電流指令値が入力され、該モータ電流指令値に基づいて前記変換部(4)のスイッチング素子(Sr,Ss,St,Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を制御するスイッチング制御部(12)と、 前記入力電流(Iin)における所望の次数の調波成分(Iin2,Iin3,Iin4,…)に対応する特定次数補正値(Iin2*,Iin3*,Iin4*,…)を生成するとともに、該特定次数補正値(Iin2*,Iin3*,Iin4*,…)によって前記スイッチング制御部(12)に入力される前のモータ電流指令値を補正する特定次数補正部(30)と、を備えることを特徴とする電力変換装置。」 第3 原査定の理由の概要 (理由1)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (理由2)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2004-248430号公報 引用文献1(段落0010、0017、0040-0049、図2-3等参照。)には、 複数のスイッチング素子(交流スイッチ21-26、半導体スイッチング素子41-46)を有し、交流電源(三相交流電源10)側からの電力を前記複数のスイッチング素子のスイッチング動作によって所定の周波数の交流電力に変換し、該交流電力を負荷(電動機)に出力する変換部(電流形PWM整流器20と電圧形PWMインバータ40)と、前記交流電源側からの入力電流に含まれる調波成分(高調波)のうちの特定の次数の調波成分(例えば、5次高調波、7次高調波)を個別に抑制するように、前記複数のスイッチング素子を制御する制御部(整流器制御手段50、インバータ制御手段60)とを備え、 制御部は、変換部を制御するためのモータ電流指令値を生成する電流指令生成部(入力電流指令発生手段400)と、前記モータ電流指令値が入力され、該モータ電流指令値に基づいて前記変換部のスイッチング素子を制御するスイッチング制御部(インバータ制御手段60)と、 前記入力電流における所望の次数の調波成分に対応する特定次数補正値(5次、7次高調波電流の振幅I5in、I7in)を生成するとともに、該特定次数補正値によってスイッチング制御部に入力される前のモータ電流指令値を補正する特定次数補正部(高調波電流指令演算手段330)と、を備える電力変換装置が記載されている。 よって、引用文献1に記載された発明と補正後の請求項1に係る発明とは発明特定事項に差異がない。したがって、補正後の請求項1に係る発明は上記拒絶理由通知書に記載した理由1-2によって、特許を受けることができない。 なお、出願人は意見書にて、「すなわち、引用文献1記載の発明では、整流器制御とインバータ制御との双方を個々独立に動作させており、モータを制御する通常のインバータ制御に加えて入力電流の高調波成分を低減するための整流器制御を採用して、この整流器制御において、5次、7次高調波電流の振幅I5in、I7inを求める構成を採用しています。」「b.これに対し、…(中略)…本願発明は、…(中略)…このインバータ回路(4)の出力電圧制御のみの構成により、インバータ回路(4)の入力電力(電源電圧は所定値として、インバータ(4)の入力電流(Iin)と同じ)を実質的に制御して、この入力電流(Iin)における所望の次数の調波成分(Iin2,Iin3,Iin4,…)を個別に低減しています。」「e.しかも、本願発明は、入力電流の高調波成分の低減に関する構成として、インバータ回路(4)の出力電圧を制御する構成のみを採用するので、引用文献1記載の発明のように通常のインバータ制御とは別途に、入力電流の高調波成分を低減するための整流器制御を採用する構成に比して、整流器制御が不要となり、構成を簡易にできるという、引用文献1からは到底得ることができない本願発明に特有の作用効果を奏します。」と主張している。 しかし、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された、インバータ回路が整流器制御を用いた出力電圧制御を有する発明も含まれる構成となっている。よって、上記の主張をもって補正後の請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明の相違が明確になるとはいえない。 また、出願人は意見書にて、「c.以上の通り、本願発明では、インバータ回路(4)の出力電圧を制御する構成(具体的には、上記特徴点iii.の通り、特定次数補正値(Iin2*,Iin3*,Iin4*,…)によってスイッチング制御部(12)に入力される前のモータ電流指令値を補正する構成)を採用して、入力電流(Iin)における所望の次数の調波成分(Iin2,Iin3,Iin4,…)を個別に低減する点で、引用文献1記載の発明のように整流器20の入力電流を制御する構成を採用して、入力電流における5次、7次高調波電流を個別に低減する発明とは、構成が全く相違します。」と主張している。 しかし、補正後の請求項1に係る発明の「交流電源(6)側からの入力電流(Iin)に含まれる調波成分(Iin2,Iin3,Iin4,…)のうちの特定の次数の調波成分(Iin2,Iin3,Iin4,…)を個別に抑制するように、前記複数のスイッチング素子(Sr,Ss,St,Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を制御する制御部(10)」との記載は、引用文献1に記載された、入力電流における5次、7次高調波電流を個別に低減する発明を含んでいる。よって、上記の主張をもって補正後の請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明の相違が明確になるとはいえない。 第4 当審の判断 1.引用文献の記載事項 引用文献1には、図面とともに(a)ないし(g)のとおりの記載がある。 (a)「【請求項2】 多相交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、この整流器から出力される直流電圧を多相交流電圧に変換するインバータと、を有する交流-交流電力変換器の制御装置であって、前記整流器の入力電流指令が与えられて整流器を制御する整流器制御手段と、前記インバータを制御するインバータ制御手段と、を備えた制御装置において、 前記整流器の入力電圧を検出する電圧検出手段と、 この電圧検出手段により検出された入力電圧の基本波成分及び高調波成分を検出する基本波検出手段及び高調波検出手段と、 これらの基本波検出手段及び高調波検出手段により検出された入力電圧の基本波成分の振幅及び高調波成分の振幅、並びに入力電流基本波指令を用いて、入力側の瞬時有効電力が一定になるような前記高調波成分と同じ次数の入力電流の高調波成分を演算し、高調波電流指令として出力する高調波電流指令演算手段と、 前記高調波電流指令を入力電流基本波指令に重畳して前記電力変換器に与える入力電流指令を生成する手段と、 を備えたことを特徴とする交流-交流電力変換器の制御装置。」 (b)「【0005】 なお、整流器20の制御は、整流器制御手段50により入力電流指令とキャリア波形とを比較し、その大小関係によりPWM指令を得て交流スイッチ21?26に対する制御パルスを生成する。 インバータ40側についても同様に、インバータ制御手段60により出力電圧指令とキャリア波形とを比較し、その大小関係によりPWM指令を得てスイッチング素子41?46に対する制御パルスを生成する。」 (c)「【0010】 ここで、図7は、図6の構成から直流リンク部のフィルタ30を除去した場合において、入力電圧に高調波成分(5次高調波が5%、7次高調波が2.5%)が含まれる場合の入力電圧波形及び出力電圧波形を単位法表示したものである。 図7のように入力電圧に高調波成分が含まれる場合、入力電流を正弦波に制御すると有効電力が脈動し、直流リンク部の電圧にリプルが現れる。従来のフィルタ30のように大容量のエネルギーバッファがある場合には、入力側の有効電力脈動はエネルギーバッファにより吸収することができるが、大容量のエネルギーバッファを有しない電力変換器では、直流リンク部の電圧に脈動が発生し、その結果、図7に示す如く出力電圧波形に歪みが発生する。出力電圧の歪みは、交流-交流電力変換器の負荷として電動機が接続されている場合、電動機のトルク振動や騒音を生じさせるだけでなく、高調波電流により銅損が増加し、効率を低下させることとなる。 【0011】 そこで本発明は、直流リンク部に大容量のエネルギーバッファを有しない電力変換器や、マトリクスコンバータのようにエネルギーバッファを介さずに交流-交流直接変換を行う場合において、入力電圧に高調波成分が含まれる場合でも出力電圧波形に歪みのない正弦波を得ることにより、小形かつ長寿命であり、電動機等の負荷の運転に障害を与えることがない交流-交流電力変換器の制御装置を提供しようとするものである。」 (d)「【0029】 前述した数式3は出力側の瞬時有効電力であり、数式6は入力側の瞬時有効電力である。エネルギー保存の法則から、エネルギーバッファのない電力変換器では、入力側と出力側の瞬時有効電力を一致させる必要がある。 しかし、数式6は右辺第2項にζを含んでいることから脈動分を持っており、入力電圧に高調波成分を含んでいる場合には入力電流と出力電圧とを対称三相正弦波とすることは物理的に不可能である。 【0030】 数式3と数式6を一致させるためには、入力電流または出力電圧のいずれかもしくはその両方を歪ませることにより、数式6の第2項を打ち消す必要がある。電力変換器に電動機等が接続されている場合、出力電圧をひずませて高調波が含まれると、電動機にトルクリプルを生じ、騒音が発生するので好ましくない。 そこで、入力側の瞬時有効電力が一定になるように、入力電流指令に高調波成分を重畳して数式7により制御することとした。」 (e)「【0040】 次に、図2は本発明の第2実施形態を示すブロック図である。 この実施形態では、交流-交流電力変換器として、入力電流を制御する電流形PWM整流器20と電圧形PWMインバータ40とがフィルタなしに直接接続されており、整流器制御手段50は、入力電流指令に応じた入力電流を流すように整流器20を制御し、インバータ制御手段60は、出力電圧指令に従った電圧を出力するべくインバータ40を制御するように構成されている。21?26は交流スイッチ、41?46は半導体スイッチング素子である。 【0041】 また、三相交流電源10には電圧検出手段200が接続され、その出力は基本波検出手段310及び高調波検出手段320に加えられていると共に、これらの検出手段310,320の出力は、入力電流基本波指令と一緒に高調波電流指令演算手段330に加えられている。そして、高調波電流指令演算手段330から出力される高調波電流指令は入力電流基本波指令と加算手段410により加算され、その加算結果が入力電流指令として整流器制御手段50に入力されている。」 (f)「【0049】 図2では、入力電圧を電圧検出手段200により検出し、基本波検出手段310により、基本波の電圧振幅Vmを抽出し、高調波検出手段320により5次、7次高調波の電圧振幅V5in,V7inを検出する。高調波電流指令演算手段330では数式13の演算により5次、7次高調波電流の振幅I5in,I7inを求め、これらを加算手段410により入力電流の基本波指令(振幅指令)に加算して整流器制御手段50に与える入力電流指令を得る。 【0050】 図3は、この実施形態によるシミュレーション結果を示す入力電圧波形及び出力電圧波形であり、図7の場合と同様に、入力電圧には5次高調波が5%、7次高調波が2.5%含まれている場合である。入力電流に5次、7次高調波電流を重畳することにより、入力側の瞬時有効電力を一定にし、入力電流波形及び出力電圧波形を歪みのない正弦波にすることができる。」 (g)「【0063】 【発明の効果】 以上のように本発明によれば、直流リンク部に大容量のエネルギーバッファを持たずに整流器及びインバータから構成される電力変換器や、マトリクスコンバータ等の交流-交流直接変換形電力変換器において、入力電圧に高調波が含まれる場合でも、出力電圧波形として歪みのない正弦波を得ることができる。 この結果、小形、長寿命であり、電動機等の負荷の運転に障害を与えない交流-交流電力変換器を提供することができる。」 そうすると、引用文献1には、 「交流スイッチ21?26を備えた整流器と、半導体スイッチング素子41?46を備えたインバータとを有し、出力が電動機等の負荷に接続される交流-交流電力変換器の制御装置であって、 入力電流指令に応じた入力電流を流すように整流器の交流スイッチ21?26を制御する整流器制御手段と、出力電圧指令に応じて、インバータの半導体スイッチング素子41?46を制御するインバータ制御手段とを備え、 前記整流器の入力電圧を検出する電圧検出手段と、 この電圧検出手段により検出された入力電圧の基本波成分及び高調波成分を検出する基本波検出手段及び高調波検出手段と、 これらの基本波検出手段及び高調波検出手段により検出された入力電圧の基本波成分の振幅及び高調波成分の振幅、並びに入力電流基本波指令を用いて、入力側の瞬時有効電力が一定になるような前記高調波成分と同じ次数の入力電流の高調波成分を演算し、高調波電流指令として出力する高調波電流指令演算手段と、 前記高調波電流指令を入力電流基本波指令に重畳して前記電力変換器に与える入力電流指令を生成する手段と、を備え、入力電圧に高調波成分が含まれる場合でも出力電圧波形として歪みのない正弦波を得ることのできる交流-交流電力変換器の制御装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 2.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の交流-交流電力変換器は、周波数を変換するものであることは明らかであるから、引用発明の「整流器」と「インバータ」とが協働したものが、本願発明における「複数のスイッチング素子を有し、交流電源側からの電力を前記複数のスイッチング素子のスイッチング動作によって所定の周波数の交流電力に変換し、該交流電力を負荷に出力する変換部」に相当する。 また、引用発明は、入力電流基本波指令を有し、負荷は電動機でよいから、本願発明の「変換部を制御するためのモータ電流指令値を生成する電流指令生成部」に相当する構成を有しているといえる。 また、引用発明の「入力電流指令に応じた入力電流を流すように整流器の交流スイッチ21?26を制御する整流器制御手段」と「出力電圧指令に応じて、インバータの半導体スイッチング素子41?46を制御するインバータ制御手段」とが協働したものは、本願発明の「モータ電流指令値が入力され、該モータ電流指令値に基づいて変換部のスイッチング素子を制御するスイッチング制御部」に相当する。 また、引用発明でいう「高調波電流指令」、「入力電流基本指令」は、それぞれ、本願発明でいう「特定次数補正値」、「前記スイッチング制御部(12)に入力される前のモータ電流指令値」に相当するものといえ、引用発明において「高調波電流指令を入力電流基本波指令に重畳」することは、本願発明において「特定次数補正値(Iin2*,Iin3*,Iin4*,…)によって前記スイッチング制御部(12)に入力される前のモータ電流指令値を補正」することに相当するといえるから、引用発明の「高調波電流指令演算手段」と「入力電流指令を生成する手段」を併せた部分は、本願発明の「特定次数補正部(30)」に相当する。 また、上で言及した引用発明の「電流指令生成部に相当する構成」と「『整流制御手段』と『インバータ制御手段』とが協働したもの」と「『高調波電流指令演算手段』と『入力電流指令を生成する手段』を併せた部分」を併せた部分は、全体として「交流電源側からの入力電流に含まれる調波成分を抑制するように、複数のスイッチング素子を制御する制御部」ともいい得るから、この点で本願発明の「制御部」と共通する。 以上によれば、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 「複数のスイッチング素子を有し、交流電源側からの電力を前記複数のスイッチング素子のスイッチング動作によって所定の周波数の交流電力に変換し、該交流電力を負荷に出力する変換部と、 前記交流電源側からの入力電流に含まれる調波成分を抑制するように、前記複数のスイッチング素子を制御する制御部とを備え、 前記制御部は、 前記変換部を制御するためのモータ電流指令値を生成する電流指令生成部と、 前記モータ電流指令値が入力され、該モータ電流指令値に基づいて変換部のスイッチング素子を制御するスイッチング制御部と、 前記入力電流における所望の次数の調波成分に対応する特定次数補正値を生成するとともに、該特定次数補正値によって前記スイッチング制御部に入力される前のモータ電流指令値を補正する特定次数補正部と、を備えることを特徴とする電力変換装置。」 [相違点] 本願発明の「制御部」は、「交流電源側からの入力電流に含まれる調波成分のうちの特定の次数の調波成分を個別に抑制するように」制御するものであるのに対し、引用発明の「制御部」は、そのように制御するものではなく、入力側の瞬時有効電力が一定となるように制御するものである点。 この点、引用発明の「制御部」は、「高調波成分と同じ次数の入力電流の高調波成分」を「高調波電流指令」とするものであって、本願発明でいう「特定次数補正値」に相当するものによって入力電流に含まれる調波成分を抑制するものとはいえるが、その「高調波成分と同じ次数の入力電流の高調波成分」の算出に、「入力電圧の基本波成分の振幅」、「各高調波成分の振幅」、「入力電流基本波指令」といった、抑制対象の特定の次数以外の調波成分の検出値をも使用することで、入力側の瞬時有効電力が一定になるように制御するものであるから、「交流電源側からの入力電流に含まれる調波成分のうちの特定の次数の調波成分を個別に抑制するように」制御するものとはいえない。 したがって、上記相違点で取り上げた点は、一致点ではなく相違点である。 3.判断 上記相違点について検討する。 引用発明の制御部を、「交流電源側からの入力電流に含まれる調波成分のうちの特定の次数の調波成分を個別に抑制するように」制御するものに改変することを、当業者が容易になし得たとういうべき理由は見当たらない。 また、引用文献1には、引用発明以上に本願発明と近接した発明は見当たらない。 したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明ではないし、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたともいえない。 本願の請求項2-5に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-5に係る発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-03-22 |
出願番号 | 特願2011-7825(P2011-7825) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(H02M)
P 1 8・ 121- WY (H02M) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 宮地 将斗 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
高瀬 勤 稲葉 和生 |
発明の名称 | 電力変換装置 |
代理人 | 特許業務法人前田特許事務所 |