ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
---|---|
管理番号 | 1312668 |
審判番号 | 不服2014-14901 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-30 |
確定日 | 2016-03-23 |
事件の表示 | 特願2012-232744「LEDパッケージにおけるテクスチャード加工された封止体表面」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月28日出願公開、特開2013- 42166〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年12月4日に出願した特願2008-309821号(パリ条約による優先権主張2007年12月14日、米国、以下「原出願」という。)の一部を平成24年10月22日に新たな特許出願としたものであって、平成24年10月30日に手続補正(自発)がなされ、平成25年6月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月28日に手続補正がなされ、同年11月15日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成26年2月20日に手続補正がなされたが、該手続補正は同年3月27日付けで補正却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月30日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成27年4月15日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月20日に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成27年8月20日付けの手続補正により補正された請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「マウント表面上の複数のLEDチップであって、少なくとも2つの異なる光スペクトルを放出するLEDチップを含む、複数のLEDチップと、 前記マウント表面に近接した封止体であって、前記封止体は、テクスチャード加工された主発光面と、発光側面を含む少なくとも1つの追加の発光面とを有し、前記主発光面が前記マウント表面と実質的に平行である、封止体と、を備え、 前記少なくとも1つの追加の発光面は、テクスチャード加工され、 前記テクスチャード加工された主発光面は、パターン化されたテクスチャーを含み、 前記テクスチャード加工された主発光面は、出力分布において受容できる程度の色温度一様性と色混合度を維持しながら、全内部反射による光損失を低減するように構成されている、ことを特徴とする発光ダイオード(LED)デバイス。」 第3 刊行物の記載 (1)当審拒絶理由に引用した、原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-234509号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。 ア 「【請求項1】 電極が形成された基板の上面に発光素子を載置し、該発光素子と前記電極とを電気的に接続すると共に、該発光素子を樹脂体で封止してなる発光ダイオードにおいて、 前記樹脂体の表面に凹凸状の光散乱部を設けたことを特徴とする発光ダイオード。」 イ 「【0009】前記光散乱部は、樹脂体の表面をエッチングあるいは切削する等の粗面加工によって容易に形成することができる。また、これ以外に、樹脂体の表面に別途凹凸面が形成された樹脂膜を印刷したり、樹脂体を形成する際に使用される金型内に予め凹凸を形成する等によって製造することができるので、同一品質の製品を一括して大量生産することが可能となる。」 ウ 「【0012】図1及び図2に示されるように、この実施形態に係る発光ダイオード21は、ガラスエポキシやBTレジン(Bismaleimide Triazine Resin)等からなる基板22と、この基板22上に載置される発光素子24と、該発光素子24を基板22上に封止する樹脂体26とで構成されている。前記基板22には、発光素子24との導通及びマザーボード等の外部基板に実装するための電極23a,23bが設けられている。発光素子24は、一対の素子電極部29a,29b(アノード電極,カソード電極)を備えた微小な四角形状のシリコンチップで、底部が前記基板22上に絶縁性接着剤28を介して固定され、前記素子電極部29a,29bと基板22上の電極23a,23bとがボンディングワイヤ25によって接続されている。また、樹脂体26は、発光素子24を中心にして基板22上に形成された略直方体形状の封止体であり、透光性を備えたエポキシ系の樹脂材を金型等に充填することによって形成される。そして、前記発光素子24及びボンディングワイヤ25を封止すると共に、発光素子24から発した光を透過する。」 エ 「【0013】この実施形態において、樹脂体26の上面は前記発光素子24の上面と対向する発光射出面27として構成され、この発光射出面27に凹凸状の光散乱部30が形成されている。この光散乱部30は、前記発光射出面27の全域に設けられた凹凸面であり、前記発光素子24から上方に向けて放射された光を多数の凸部や凹部の傾斜角に応じて外部に広角度に散乱させている。光散乱部30の凹凸形状は、樹脂体26を金型によって成形する際、半硬化した樹脂体26の上面をエッチング加工によって凹凸状にしたり、凹凸模様が形成された加工冶具を樹脂体26の上面に押圧することによって加工することができる。さらに、前記樹脂体26を完全に硬化させた後に、その上面を切削して所定の深さや傾斜角の凹凸を設けてもよい。前記光散乱部30を構成する各凸部や凹部の深さ及び傾斜角は、発光ダイオード21の使用目的や発光仕様に応じて設定されるが、光の散乱効果を大きくするには、各凸部及び凹部を深く形成するのが好ましい。本実施形態では、樹脂体26の厚み400μmに対して、前記凸部及び凹部の深さを4μm以上、傾斜角を1?45度の範囲で設定することで、大きな光散乱効果を得ることができた。なお、前記光散乱部30の各凸部及び凹部の深さ及び傾斜角は均一でなく、ある程度バラツキを持たせた方が光の屈折及び反射が不規則になり、散乱効果が大きくなる。 【0014】次に、上記構造からなる発光ダイオード21の発光作用を図2に基づいて説明する。この発光ダイオード21は周知のように、基板22に形成された電極23a,23bに電流を流すことによって発光素子24が励起されて光を発する。そして、その光は発光素子24と対向する樹脂体26の発光射出面27に向けて進み、さらにこの発光射出面27に形成された凹凸状の光散乱部30で屈折されて様々な角度で外部に放射される。このような光の屈折は凹凸の深さや傾斜角によって変化し、樹脂体26の上面から放射するものや、大きく屈折して樹脂体26の側面から放射する光もある。また、発光素子24から発せられた光が前記光散乱部30によって、逆に樹脂体26内部に反射したのち再度外部に放射される場合もある。このような光の屈折及び反射が樹脂体26の内部及び外表面に連続して発生するため、発光射出面27を直視したときの輝度と、発光射出面27を斜め側方にずれた角度から見た輝度に差が生じず、広角発光すると共に全体的な輝度の向上効果も得られることになる。」 オ 「【0017】上記各実施形態では、光散乱部30を樹脂体26の上面に位置する発光射出面27に設けた場合を示したが、樹脂体26の側面にも前記と同様の凹凸状の光散乱部を設けてもよく、さらに樹脂体30の側面側に発光射出面がある場合には側面だけに光散乱部を設けてもよい。また、樹脂体26の形状も直方体形状のものに限られず、樹脂体で封止されるあらゆる形状の発光ダイオードに適用可能である。また、上記実施形態では、基板22の電極23a,23bと発光素子24とをボンディングワイヤ25で接続したが、発光素子24の下面に半田バンプを形成し、基板22の電極23a,23bと直接接合するフリップチップ実装方式によって形成されたものであってもよい。」 カ 図2は、以下のものである。 (2)引用文献に記載された発明 ア 上記(1)アの記載によれば、引用文献には、 「電極が形成された基板の上面に発光素子を載置し、発光素子と電極とを電気的に接続すると共に、発光素子を樹脂体で封止してなる発光ダイオードにおいて、 樹脂体の表面に凹凸状の光散乱部を設けた、発光ダイオード。」 が記載されているものと認められる。 イ 上記(1)ウの記載に照らせば、 上記アの「発光素子」は、 微小な四角形状のものであってもよいものと認められる。 また、上記アの「樹脂体」は、略直方体形状であってもよいものと認められる。 ウ 上記(1)エの記載に照らせば、 上記アの「発光ダイオード」は、 樹脂体の上面を直視したときの輝度と、樹脂体の上面を斜め側方にずれた角度から見たときの輝度に差が生じないものであることが理解できる。 また、上記「凹凸状の光散乱部」は、凹凸模様が形成された加工冶具を樹脂体に押圧することによって加工したものであってもよいことが理解できる。 エ 上記(1)オの記載に照らせば、 上記「光散乱部」は、 樹脂体の上面及び側面に設けてもよいことが理解できる。 オ 上記(1)オの記載を踏まえて、図2を見ると、 樹脂体の上面は、基板と実質的に平行であることが理解できる。 カ 上記アないしオより、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「電極が形成された基板の上面に微小な四角形状の発光素子を載置し、発光素子と電極とを電気的に接続すると共に、発光素子を直方体形状の樹脂体で封止してなる発光ダイオードにおいて、 凹凸模様が形成された加工冶具を樹脂体に押圧することによって樹脂体の上面及び側面に凹凸状の光散乱部を設け、 樹脂体の上面は、基板と実質的に平行であり、樹脂体の上面を直視したときの輝度と、樹脂体の上面を斜め側方にずれた角度から見たときの輝度に差が生じない、 発光ダイオード。」 第4 対比・判断 1 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「基板」は、本願発明の「マウント」に相当し、以下同様に、 「発光素子」は、「LEDチップ」に、 「直方体形状の樹脂体」は、「封止体」に、 「発光ダイオード」は、「発光ダイオード(LED)デバイス」に、それぞれ、相当する。 (2)本願明細書には、本願発明の「主発光面」及び「発光側面」に関連して以下の記載がある。 ア 「【0037】 図8は、一実施形態によるLEDパッケージデバイス800の断面図である。……第2の電極808は、(不図示の)ワイヤ・ボンドでLEDチップ802へ接続することが出来る。 【0038】 封止体812は、LEDチップ802と、マウントの表面804と、電極806、808上に配置される。封止体812は平坦であり、マウントの表面804と平行な主発光面814を実現している。いくらかの光は、側面のような、主発光面814以外の封止体表面から逃げ出すこともある。」 イ 上記アで引用する図8は、以下のものである。 ウ 上記アの記載に照らして、図8を見ると、 本願発明の「主発光面」とは、「マウントの表面と平行な発光面」を意味し、「発光側面」とは、「主発光面以外の封止体表面」を意味するものと解される。 エ してみると、引用発明の「樹脂体の上面」は、本願発明の「主発光面」に相当し、引用発明の「(樹脂体の)側面」は、本願発明の「発光側面」に相当する。 (3)本願発明の「マウント表面に近接した封止体」と、引用発明の「『基板の上面』に『載置』された『発光素子』を『封止』する『直方体形状の樹脂体』」とを対比する。 まず、本願発明の「マウント表面に近接した封止体」とは、どのようなものであるかを、発明の詳細な説明の記載及び図面から検討する。 本願明細書には、上記文言の直接的な記載はなく、【課題を解決するための手段】に「【0013】発光ダイオード(LED)デバイスの一実施形態は、以下の要素を備える。少なくとも1つのLEDチップは、マウントの表面上に配置される。封止体は、マウントの表面の近くに、少なくとも1つのLEDから放出される光のほとんど全てが封止体を通るように配置される。」と記載されているのみである。 そして、本願の図1、図2及び図8をみると、何れも、サブマウント表面に接触した封止体が描かれている。 また、「近接」とは、「近くにあること。近づくこと。」(広辞苑第四版)を意味する。 そうすると、本願発明の「マウント表面に近接した封止体」とは、「サブマウント表面に接触した封止体」を包含するものと解される。 一方、引用発明の「『基板の上面』に『載置』された『発光素子』を『封止』する『直方体形状の樹脂体』」は、基板と接触していることが明らかであるから、「基板の表面(マウント表面)に近接した封止体」であるといえる。 (4)本願明細書には、「テクスチャード加工」に関連して、以下の記載がある。 ア 「【0014】 チップスケールパッケージ(chip-scale package)発光ダイオード(LED)デバイスの一実施形態は、以下の要素を備える。複数のLEDは、マウントの表面上に配置される。封止体は、マウントの表面に実質的に平行な発光面を有する。発光面は、複数の粗い(roughening)表面構造を作るためにテクスチャード加工される。」 イ 「【0028】 光の方向を変える1つの方法は、封止体の表面108の選択された領域を改質することである。表面108の改質は、エッチングや研磨などのいくつかのよく知られた、付加的または削除的方法によって行うことが出来る。例えば、以下に詳細に論じるように、テクスチャード加工された表面は、工程中に金型の表面がテクスチャード加工された外形(contour)を封止体に直接押し付けるモールディングまたは鋳型成型のような公知の任意の大量生産方法によって作製できる。……改質された表面108は、また、放出される光の放出角度をランダムにする効果を有する。図1に示すように、改質された表面108の不規則性は、光の方向を変え、もともと光源104から辿ってきた光路からそらすことになる。光が、もともとの光路とは無関係になるので、出力分布はより一様な色分布を呈することになる。 【0029】 改質された表面は、付加的または削除的工程によって形成でき、多くの異なる形状を持つ特徴物を有している。……例えば、改質された表面は、パターン化された、またはランダムな特徴を有することができる。前者の場合、表面に特定のパターン化されたテクスチャーを与えるように機械加工によって作られてもよい。表面が機械加工される場合は、表面の特徴物の山から谷までの寸法の平均の許容範囲は、50から200μmであろう。表面構造がランダムな場合には、それは放電加工のようないくつかの工程によって形成できる。表面改質は、球形、または半球形、三角形、歪んだ三角形、ピラミッド形、切り落としたピラミッド形、及び他の多くの形状を含むいくつかの形状を有する表面構造をもたらす。封止体表面を改質する他の多くの公知の方法がある。」 ウ 「【0035】 それぞれのキャビティ502は、少なくとも1つの凹凸表面(irregular surface)を有している。図6を参照すると、キャビティ502は、凹凸な底面508を有する。凹凸な底面508は、LEDデバイスの周りで硬化するときに封止体材料に形成される外形を有する。封止体が硬化すると、装置は取り除かれる。出来上がった封止体は、テクスチャード加工された上表面を有することになろう。……特定の仕様に従って凹凸をつけることが出来る。表面は、平均の山-谷間の距離が、数μmから数百μmの範囲内にあり、許容範囲は1-200μmである。」 エ 上記記載からして、 本願発明の「テクスチャード加工」とは、 封止体の表面に、複数の粗い表面構造を作ることであると解される。 オ 一方、引用発明の「樹脂体」の「上面」及び「側面」には、「凹凸状の光散乱部」が設けられているから、樹脂体の表面に、「テクスチャード加工」がなされたものであるといえる。 (5)本願明細書には、「全内部反射による光損失を低減する」ことに関連して、以下の記載がある。 ア 「【課題を解決するための手段】 【0013】 発光ダイオード(LED)デバイスの一実施形態は、以下の要素を備える。……封止体は、テクスチャード加工されていない発光面を有する同様の封止体に比べて、放出された光の全内部反射を低減する。」 イ 「【0017】 本発明は、出力分布(output profile)において受容できる程度の色温度一様性と色混合度を維持しながら、全内部反射(TIR)による光損失を低減するのに役立つ、テクスチャード加工された表面を有する封止体を備えたLEDデバイスの実施形態を提供する。」 ウ 上記記載から、 「テクスチャード加工された表面を有する封止体」は、全内部反射による光の損失を低減することができるものであと解される。 ウ 一方、上記(3)の検討によれば、引用発明の「樹脂体」も、「テクスチャード加工された表面を有する封止体」であるいえるから、その「上面」及び「側面」は、「全内部反射による光の損失を低減するように構成されている」といえる。 (6)以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「マウント表面上のLEDチップと、 前記マウント表面に近接した封止体であって、前記封止体は、テクスチャード加工された主発光面と、発光側面を含む少なくとも1つの追加の発光面とを有し、前記主発光面が前記マウント表面と実質的に平行である、封止体と、を備え、 前記少なくとも1つの追加の発光面は、テクスチャード加工され、 前記テクスチャード加工された主発光面は、テクスチャーを含み、 前記テクスチャード加工された主発光面は、全内部反射による光損失を低減するように構成されている、発光ダイオード(LED)デバイス。」 (7)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> マウント表面上のLEDチップに関して、 本願発明は、「少なくとも2つの異なる光スペクトルを放出するLEDチップを含む、複数のLEDチップ」であるのに対して、 引用発明は、異なる光スペクトルを放出する複数の発光素子であるか不明である点。 <相違点2> 主発光面のテクスチャーに関して、 本願発明は、「パターン化された」ものであり、かつ、「出力分布において受容できる程度の色温度一様性と色混合度を維持」するものであるのに対して、 引用発明は、「パターン化されたテクスチャーを含む」ものであるか不明であり、かつ、「出力分布において受容できる程度の色温度一様性と色混合度を維持」するようなものであるか不明である点。 2 判断 (1)上記<相違点1>について検討する。 ア 発光素子を利用した発光ダイオードにおいて、発光色の異なる複数の発光素子を採用して、白色光などの所望の色に発光させることは、当審拒絶理由で引用した下記の文献に記載されているように、原出願の優先日時点で周知である(以下「周知技術」という。)。 (ア)特開2007-227679号公報(【請求項1】及び図1を参照。) 【請求項1】には「発光面の面方向を揃えた状態で実装される放射する光の波長がそれぞれ異なる複数のLEDチップと、光拡散材を混入させた透光性を有する樹脂材料を用いて形成され、LEDチップを封止する封止部と、透光性を有する樹脂材料を用いて形成され、封止部ごと複数のLEDチップを覆うレンズ部とを備え、封止部は、LEDチップの発光面と平行する出射面を有していることを特徴とする発光装置。」と記載されている。 (イ)特開2007-110053号公報(【0075】及び図2を参照。) 【0075】には「(光半導体装置の作製) 3色(赤、緑、青)の光半導体素子が実装された基板を用意し、光半導体素子の上に上記で得た光半導体素子封止用シートを載せて、温度:150℃、真空減圧時間:30℃、プレス時間:60秒、プレス圧力:0.2MPaの条件下で、加圧成型した。」と記載されている。 (ウ)特開2007-5091号公報(【請求項1】及び図2を参照。) 【請求項1】には「バックライト用の線状発光素子アレイであって、 基板と、 上記基板上に一列以上配列した複数色種の発光素子と、 上記発光素子の各々を連続して覆う封止樹脂と を備え、 上記封止樹脂は、その表面に、上記発光素子から発した光を偏向させる表面形状を有し、 上記表面形状の、上記発光素子の配列方向に沿った断面における輪郭は、複数の三角形又は等脚台形が、上記発光素子の配列ピッチよりも短いピッチで、連続した形状を有する ことを特徴とする線状発光素子アレイ。」と記載されている。 イ してみると、引用発明において、「電極が形成された基板の上面」に、発光色の異なる複数の発光素子を配置して、白色光などの所望の色に発光させることは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。 ウ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。 (2)上記<相違点2>について検討する。 ア 本願発明の「パターン化されたテクスチャー」とは、どのようなものであるかを、発明の詳細な説明の記載から検討する。 (ア)本願明細書には、以下の記載がある。 「【0029】 改質された表面は、付加的または削除的工程によって形成でき、多くの異なる形状を持つ特徴物を有している。……例えば、改質された表面は、パターン化された、またはランダムな特徴を有することができる。前者の場合、表面に特定のパターン化されたテクスチャーを与えるように機械加工によって作られてもよい。表面が機械加工される場合は、表面の特徴物の山から谷までの寸法の平均の許容範囲は、50から200μmであろう。表面構造がランダムな場合には、それは放電加工のようないくつかの工程によって形成できる。」 (イ)上記記載からして、「パターン化されたテクスチャー」とは、ランダムなテクスチャーではなく、(例えば、凹凸の)「山から谷までの寸法」の平均が許容範囲になるテクスチャーを含むものと解される。 (ウ)一方、引用発明の「樹脂体」の「上面」には、加工治具に形成された「凹凸模様」が反映した凹凸が設けられ、その凹凸の「山から谷までの寸法」の平均は許容範囲になっているものと認められるから、「パターン化されたテクスチャー」であるといえる。 よって、この点は、実質的な相違点ではない。 なお、平成27年10月1日付けのファックスによる回答によれば、「パターン」とは、「再現可能・複製可能なもの」であるから、この点からしても、実質的な相違点ではない。 イ 上記「(1)上記<相違点1>について検討する。」で検討したように、引用発明において、発光色の異なる複数の発光素子を配置することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。 引用発明は、「樹脂体の上面を直視したときの輝度」と、「樹脂体の上面を斜め側方にずれた角度から見たときの輝度」に差が生じないものであるから、発光色の異なる複数の発光素子を配置した際も、各発光素子についてみれば、「樹脂体の上面を直視したときの輝度」と、「樹脂体の上面を斜め側方にずれた角度から見たときの輝度」に差が生じないものとなる。 そして、「発光ダイオード」からの発光色は、各発光素子からの各発光色を混合した混合色となるから、「樹脂体の上面を直視したときの混合色」と「樹脂体の上面を斜め側方にずれた角度から見たときの混合色」にも、差がないものと認められる。 両者の「混合色」に差がないということは、「樹脂体の上面」側と「樹脂体の上面を斜め側方にずれた角度」との間において、各発光色が同程度に混合され、同程度の色温度になっていることを意味するから、「出力分布において受容できる程度の色温度一様性と色混合度」を有するものであるといえる。 ウ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。 (3)効果 本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものである。 4 まとめ 本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-10-27 |
結審通知日 | 2015-10-28 |
審決日 | 2015-11-11 |
出願番号 | 特願2012-232744(P2012-232744) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 道祖土 新吾、高椋 健司 |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 星野 浩一 |
発明の名称 | LEDパッケージにおけるテクスチャード加工された封止体表面 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 岩崎 吉信 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 大塚 文昭 |