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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1312678
審判番号 不服2014-25296  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-10 
確定日 2016-03-23 
事件の表示 特願2012-515353「太陽電池及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月23日国際公開、WO2010/145648、平成24年11月29日国内公表、特表2012-530361〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年5月31日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2009年6月16日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成26年1月6日付けで拒絶理由が通知され、同年5月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月1日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月10日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされ、平成27年1月13日付けで審査官による前置報告がされ、同年4月23日付けで上申書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年12月10日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「少なくとも正面側コンタクトメタライゼーションと背面側コンタクトメタライゼーションと、半導体層(2)と、前記半導体層(2)の表面上に配置され、かつ前記半導体層表面(20)をパッシベーションするのに役立つパッシベーション層(3)とを備える太陽電池であって、前記パッシベーション層(3)は、前記半導体層表面(20)において上下に配置された、化学的パッシベーション用パッシベーション副層(31)と電界効果パッシベーション用パッシベーション副層(33)とを備えること、
前記化学的パッシベーション用パッシベーション副層(31)は、前記電界効果パッシベーション用パッシベーション副層(33)に直接に接すること、並びに、
(i)前記電界効果パッシベーション用パッシベーション副層(33)は、酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、窒化シリコン、酸窒化アルミニウム、および/または、酸化アルミニウムおよび1つ以上のさらなる元素からなる化合物を備えること、かつ
(ii)窒化シリコン(SiN_(x))からなる被覆層がパッシベーション層上に付けられていること
を特徴とする、太陽電池。」

3.引用例
(1)引用の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2008/065918号(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
ア 「[0001] 本発明は太陽電池およびその製造方法に関するものである。より詳細には、シリコン基板の受光面の反対面に屈折率が高いパッシベーション膜を用いた太陽電池およびその製造方法に関するものである。」
イ 「[0005] 基板表面での少数キャリアの再結合を抑制する方法としてパッシベーション膜を形成する方法が用いられる。しかし、裏面接合型太陽電池ではp領域とn領域が同一面に形成されているため、p領域およびn領域のどちらにも効果的なパッシベーション膜の開発が強く望まれている。」
ウ 「[0010] 以上の問題点から、本発明は、太陽電池におけるシリコン基板の表面のp領域およびn領域どちらにも高い効果を有するパッシベーション膜を形成した太陽電池を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
[0011] 本発明は、シリコン基板の受光面の反対面に窒化シリコン膜からなる第1パッシベーション膜が形成され、その屈折率が2.6以上である太陽電池に関する。
[0012] また、本発明の太陽電池は、シリコン基板の受光面の反対面にpn接合が形成された裏面接合型であることが好ましい。
[0013] また、本発明の太陽電池は、シリコン基板と第1パッシベーション膜との間に、酸化シリコン膜および/または酸化アルミニウム膜を含む第2パッシベーション膜を形成されていることが好ましい。」
エ 「[0017] また、本発明の製造方法は、シリコン基板と第1パッシベーション膜との間に、酸化シリコン膜を含む第2パッシベーション膜を形成する工程を含み、酸化シリコン膜は、熱酸化法により形成されることが好ましい。
[0018] また、本発明の製造方法は、第1パッシベーション膜を形成する工程の後に、シリコン基板をアニール処理する工程を含むことが好ましい。
[0019] また、本発明の製造方法において、アニール処理する工程は、水素と不活性ガスとを含む存在下で行なわれることが好ましい。
[0020] また、本発明の製造方法において、アニール処理する工程は、水素を0.1?4.0%含む存在下で行なわれることが好ましい。
[0021] また、本発明の製造方法において、アニール処理する工程は、350?600℃で、5分?1時間の範囲で行なわれることが好ましい。」
オ 「[0032] <パッシベーション膜>
本発明の第1パッシベーション膜は窒化シリコン膜からなり、その屈折率は2.6以上、更に好ましくは2.8以上である。第2パッシベーション膜は、酸化シリコン膜および/または酸化アルミニウム膜を含むものである。第2パッシベーション膜は、酸化シリコン膜と酸化アルミニウム膜との積層体であっても良いし、酸化アルミニウム膜のみからなるものであっても良いし、酸化シリコン膜のみからなるものであっても良い。ただし、第2パッシベーション膜は、酸化シリコン膜のみからなるものが特に好ましい。
[0033] ≪第1パッシベーション膜≫
図3(a)は、n型のシリコン基板上に形成した窒化シリコン膜の屈折率と、該シリコン基板の少数キャリアのライフタイムとの関係を示し、図3(b)は、表面にp領域を形成したn型のシリコン基板上に形成した窒化シリコン膜の屈折率と、該シリコン基板の少数キャリアのライフタイムとの関係を示す。図3(a)および図3(b)における横軸は窒化シリコン膜の屈折率の値を示し、縦軸はシリコン基板の少数キャリアのライフタイム(単位はマイクロ秒)を示す。なお、一般的にシリコン基板などの半導体のパッシベーション膜として利用されている窒化シリコン膜の屈折率は、2程度のものである。」
カ 「[0039] ≪第2パッシベーション膜≫
第2パッシベーション膜は、第1パッシベーション膜とシリコン基板との間に形成される。第2パッシベーション膜は、上述のとおり酸化シリコン膜および/または酸化アルミニウム膜を含む。ただし、第2パッシベーション膜は、酸化シリコン膜のみからなるものが特に好ましい。これには、以下の理由がある。まず、酸化シリコン膜の中でも、特に熱酸化膜は、高温で形成されるため、太陽電池の製造工程における高温過程においてもその性質を変化させることなく十分なパッシベーション効果を示す。そして、酸化アルミニウム膜は、これに含まれるアルミニウムがシリコン基板に不純物として取り込まれてp領域を形成する虞があるため、n領域のパッシベーション膜としては適していない。」
キ 「[0047] また、図4の屈折率は、エリプソメトリ法により測定した値である。
<太陽電池の製造方法>
図5は、本発明の太陽電池の製造方法の一形態における各工程を示した断面図である。なお、図5においては説明の便宜のためシリコン基板の裏面にn+層とp+層を1つずつしか形成していないが、実際には複数形成できる。図5(a)?(g)にそれぞれ対応したS1(ステップ1)?S7(ステップ7)および図5(h),(i)にそれぞれ対応したS9(ステップ9)、S10(ステップ10)に分けてそれぞれ個別に説明する。また、S8(ステップ8)は、図5(g)を参照して説明する。ここで、本発明の太陽電池の製造方法においては、「S7:パッシベーション膜および反射防止膜の形成」を含むことが特に必要である。本発明の太陽電池の製造方法において、S7には、第2パッシベーション膜を形成する工程および第1パッシベーション膜を形成する工程を含む。また、本発明の製造方法において、シリコン基板の裏面にpn接合を形成する工程であるS1?S6を含むことが好ましい。
[0048] 以下、図5に基づいて太陽電池10の製造方法について説明する。
≪S1:n型の半導体基板≫
図5(a)に示すように、n型のシリコン基板1を用意する。・・・(略)・・・
[0049] ≪S2:受光面のテクスチャ構造の形成≫
図5(b)に示すように、シリコン基板1の裏面に酸化シリコン膜などからなるテクスチャマスク7を常圧CVD法などにより形成したのちにシリコン基板1の受光面にテクスチャ構造4を形成する。・・・(略)・・・
[0050] ≪S3:拡散マスクの開口部形成≫
図5(c)に示すように、シリコン基板1の受光面および裏面に拡散マスク8を形成し、裏面の拡散マスク8に開口部を形成する。・・・(略)・・・
[0051] ≪S4:p型不純物拡散後HFクリーニング≫
図5(d)に示すように、p型不純物を拡散した後、S3で形成した拡散マスク8をフッ化水素(HF)水溶液などでクリーニングすることで、導電型不純物拡散層としてのp+層5を形成する。・・・(略)・・・
[0052] ≪S5:拡散マスクの開口部形成≫
図5(e)に示すように、シリコン基板1の受光面および裏面に拡散マスク8を形成し、裏面の拡散マスク8に開口部を形成する。・・・(略)・・・
[0053] ≪S6:n型不純物拡散後HFクリーニング≫
図5(f)に示すように、n型不純物を拡散した後、S5で形成した拡散マスク8をフッ化水素水溶液などでクリーニングすることで、導電型不純物拡散層としてのn+層6を形成する。・・・(略)・・・
[0054] ≪S7:パッシベーション膜および反射防止膜の形成≫
図5(g)に示すように、シリコン基板1の受光面に窒化シリコン膜からなる反射防止膜2、裏面にパッシベーション膜3を形成する。
[0055] パッシベーション膜3が第1パッシベーション膜のみからなる場合は、以下のような操作を行なう。まず、第1パッシベーション膜として、シリコン基板1の裏面に屈折率2.6以上の窒化シリコン膜をプラズマCVD法によって形成する。このとき上述した混合ガスを用いて第1パッシベーション膜の屈折率の調整を行なう。次いでシリコン基板1の受光面に例えば屈折率が1.9?2.1の窒化シリコン膜からなる反射防止膜2を形成する。
[0056] パッシベーション膜3が第1パッシベーション膜と第2パッシベーション膜とからなる場合には、以下のような操作を行なう。まず、シリコン基板1の裏面に第2パッシベーション膜として酸化シリコン膜、または酸化アルミニウム膜、または酸化シリコン膜と酸化アルミニウム膜との積層体を形成する。酸化シリコン膜はスチーム酸化、常圧CVD法などで形成することが可能であるが、熱酸化法によって形成されることが好ましく、熱酸化法による処理の温度は800?1000℃であることが好ましい。熱酸化法による形成は、簡易な方法であり、他の製法に比べ、形成される酸化シリコン膜の性質がよく、緻密であり、パッシベーション効果が高いためである。酸化アルミニウム膜は例えば蒸着法で形成することが可能である。
[0057] ここで、シリコン基板1の裏面に、熱酸化法によって酸化シリコン膜を形成すると、結果として同時にシリコン基板1の受光面においても酸化シリコン膜が形成されてしまう。このような場合には、シリコン基板1の裏面の酸化シリコン膜を保護した上で、受光面に形成された酸化シリコン膜はフッ化水素水溶液などですべて一旦除去することが好ましい。そして、形成された第2パッシベーション膜の上に、屈折率2.6以上の窒化シリコン膜からなる第1パッシベーション膜をプラズマCVD法によって形成する。第1パッシベーション膜の屈折率の調整方法は、上述したとおりである。次いでシリコン基板1の受光面に例えば屈折率が1.9?2.1の窒化シリコン膜からなる反射防止膜2を形成する。受光面の酸化シリコン膜は、第1パッシベーション膜の形成の後、除去しても良い。また、第2パッシベーション膜は、酸化シリコン膜および酸化アルミニウム膜以外の化学組成物からなる膜を含むものであっても差し支えない。
[0058] ・・・(略)・・・
[0059] ≪S8:アニール処理する工程≫
本発明において、パッシベーション膜3および反射防止膜2の形成の後に、シリコン基板1をアニール処理することが好ましい。本発明において、アニール処理とは、シリコン基板1を熱処理することをいう。該アニール処理は、水素と不活性ガスとを含む雰囲気下で、熱処理することが好ましい。該アニール処理は、350?600℃で、より好ましくは400?500℃でシリコン基板1を熱処理するものであることが好ましい。350℃未満でアニール処理する場合、アニール効果が得られない虞があり、600℃超過でアニール処理する場合、表面のパッシベーション膜3または反射防止膜2が破壊(膜中の水素が脱離)され特性が低下する虞があるためである。また、該アニール処理は、5分?1時間、より好ましくは15?30分間行なうことが好ましい。アニール処理が5分未満である場合、アニール効果が得られない虞があり、1時間超過である場合、表面のパッシベーション膜3または反射防止膜2が破壊(膜中の水素が脱離)され特性が低下する虞があるためである。
[0060]・・・(略)・・・
[0061] ≪S9:コンタクトホールの形成≫
図5(h)に示すように、p+層5およびn+層6の一部を露出させるためにシリコン基板1の裏面のパッシベーション膜3を一部エッチングによって除去して、コンタクトホールを作製する。該コンタクトホールは、例えば、上述したエッチングペーストを用いて作製することができる。
[0062] ≪S10:電極の形成≫
図5(i)に示すように、p+層5の露出面およびn+層6の露出面のそれぞれに接触するp電極11およびn電極12を形成する。形成方法は、例えば、銀ペーストを上述したコンタクトホール面に沿ってスクリーン印刷した後、焼成することが挙げられる。該焼成によって、シリコン基板1とコンタクトをとる銀からなるp電極11およびn電極12が形成される。以上で本発明の太陽電池が完成する。」
ク 図5


(2)引用発明の認定
ア [0056]((1)キ)の「シリコン基板1の裏面に第2パッシベーション膜として」「酸化シリコン膜と酸化アルミニウム膜との積層体を形成する」場合は、「酸化シリコン膜は」「熱酸化法によって形成されることが好ましく」、「酸化アルミニウム膜は例えば蒸着法で形成することが可能である」という記載からみて、引用例に記載された「第2のパッシベーション膜」は、まず、シリコン基板の裏面を熱酸化法等によって酸化することで「酸化シリコン膜」を形成し、次に、該「酸化シリコン膜」の上に「酸化アルミニウム膜」を「蒸着法」等で形成したものと認められる。

イ [0059]((1)キ)には、「本発明において、パッシベーション膜3および反射防止膜2の形成の後に、シリコン基板1をアニール処理することが好ましい。」と記載され、「アニール処理」によっては、「表面のパッシベーション膜3または反射防止膜2が破壊(膜中の水素が脱離)され特性が低下する虞がある」、「表面のパッシベーション膜3または反射防止膜2が破壊(膜中の水素が脱離)され特性が低下する虞がある」と記載されていることからみて、引用例の「パッシベーション膜3」は、膜中の水素が脱離しないようにしたもの、すなわち、ダングリングボンドが低減されたものであって、化学的パッシベーション膜を含むものと認められる。

ウ 「第2パッシベーション膜」の「蒸着法」等で形成された「酸化アルミニウム膜」は、パッシベーション膜として用いられている以上、負の固定電荷を有することは明らかであって(必要であれば、拒絶理由で引用された特開2008-10746号公報の「【0042】 次に、図4(g)に示すように、シリコン基板401についてドライ酸化(熱酸化)を行ない、シリコン基板401の裏面の全面に酸化珪素膜からなる第1パッシベーション膜403を形成する。・・・(略)・・・酸化珪素膜の他、第1パッシベーション膜403として負の固定電荷を有する酸化アルミニウム膜を蒸着法などにより成膜することも可能である。なお、第1パッシベーション膜403は、酸化珪素膜、酸化アルミニウム膜などからなる積層膜であってもよい。」という記載を参照。)、「酸化シリコン膜」に直接に接する電界効果パッシベーション用パッシベーション膜であるということができる。

エ そうすると、「酸化シリコン膜」と「酸化アルミニウム膜」との積層体である「パッシベーション膜3」は、上述したように、化学的パッシベーション用パッシベーション膜を含むところ、「酸化アルミニウム膜」が、電界効果パッシベーション用パッシベーション膜であるから、「酸化シリコン膜」は、化学的パッシベーション用パッシベーション膜である、ということができる。
また、「酸化シリコン膜」と「酸化アルミニウム膜」とは積層体であるから、それぞれ上下に配置されているということができる。

オ 引用例の記載及び上記のア?エを総合勘案すると、引用例には、
「テクスチャ構造4が形成されたn型のシリコン基板1の受光面に形成された、窒化シリコン膜からなる反射防止膜2と、
該シリコン基板1の裏面に形成されたp+層5とn+層6と、
該シリコン基板1の裏面に形成された、p+層5の露出面とn+層6の露出面とを有するパッシベーション膜3と、
p+層5の露出面及びn+層6の露出面のそれぞれに接触して形成された、銀からなるp電極11及び銀からなるn電極12を有する太陽電池において、
該パッシベーション膜3は、
該シリコン基板1の裏面に形成された化学的パッシベーション用パッシベーション膜である酸化シリコン膜と、該酸化シリコン膜の上に直接に接して形成された電界効果パッシベーション用パッシベーション膜である、負の固定電荷を有する酸化アルミニウム膜と、を上下に配置した第2パッシベーション膜と
該第2パッシベーション膜の上に、屈折率2.6以上の窒化シリコン膜からなる第1パッシベーション膜を備えた太陽電池。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「n型のシリコン基板1」、「該シリコン基板1」の「受光面」、「該シリコン基板1」の「裏面」、「該シリコン基板1の裏面に形成された、p+層5の露出面とn+層6の露出面とを有するパッシベーション膜3」、「シリコン基板1の裏面に形成された化学的パッシベーション用パッシベーション膜である酸化シリコン膜」、「該酸化シリコン膜の上に形成された電界効果パッシベーション用パッシベーション膜である酸化アルミニウム膜」及び「第2パッシベーション膜の上の、屈折率2.6以上の窒化シリコン膜からなる第1パッシベーション膜」は、本願発明の「半導体層」、「半導体層」の「正面」、「半導体層」の「背面」、「前記半導体層表面(20)をパッシベーションするのに役立つパッシベーション層(3)」、「化学的パッシベーション用パッシベーション副層(31)」、「酸化アルミニウム」からなる「電界効果パッシベーション用パッシベーション副層(33)」及び「窒化シリコン(SiN_(x))からなる被覆層」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「銀からなるp電極11」及び「銀からなるn電極12」は、「コンタクトメタライゼーション」である点で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「コンタクトメタライゼーションと、半導体層(2)と、前記半導体層(2)の表面上に配置され、かつ前記半導体層表面(20)をパッシベーションするのに役立つパッシベーション層(3)とを備える太陽電池であって、前記パッシベーション層(3)は、前記半導体層表面(20)において上下に配置された、化学的パッシベーション用パッシベーション副層(31)と電界効果パッシベーション用パッシベーション副層(33)とを備えること、
前記化学的パッシベーション用パッシベーション副層(31)は、前記電界効果パッシベーション用パッシベーション副層(33)に直接に接すること、並びに、
(i)前記電界効果パッシベーション用パッシベーション副層(33)は、酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、窒化シリコン、酸窒化アルミニウム、および/または、酸化アルミニウムおよび1つ以上のさらなる元素からなる化合物を備えること、かつ
(ii)窒化シリコン(SiN_(x))からなる被覆層がパッシベーション層上に付けられている太陽電池。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
「メタライゼーション」について、本願発明は、「少なくとも正面側コンタクトメタライゼーションと背面側コンタクトメタライゼーション」を備えているのに対し、引用発明は、「裏面」側に「銀からなるp電極11」及び「銀からなるn電極12」を備えている、すなわち、本願発明は、受光面に対して基板の導電型と反対の導電型となる不純物を拡散することによって受光面近傍にpn接合を形成するとともに、該受光面に一方の電極を配置し、他方の電極は受光面の反対面に形成する構造であるのに対し、引用発明は、裏面に一方の導電型の電極と他方の導電型の電極(すなわちp電極とn電極)の両者を有する所謂裏面接合型太陽電池である点。

ここで、相違点について検討する。
太陽電池の電極の配置において、引用発明のような、受光面側に電極を設けず、裏面側にp電極及びn電極を設けたものと、受光面側と裏面側とに電極を設けたものはいずれも周知であり、受光面側と裏面側とに電極を設けた太陽電池においても、パッシベーション膜を形成することは周知であって、電極の配置によって、パッシベーション膜の機能や構造に差異が生じるものではないことから、引用発明の「裏面」側に「銀からなるp電極11」及び「銀からなるn電極12」を備えた電極の配置を、受光面側と裏面側とに電極を配置したものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そうすると、引用発明に上記周知の事項を適用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-13 
結審通知日 2015-10-20 
審決日 2015-11-09 
出願番号 特願2012-515353(P2012-515353)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 川端 修
松川 直樹
発明の名称 太陽電池及びその製造方法  
代理人 宇佐美 綾  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 小谷 悦司  

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