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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1312819
審判番号 不服2014-14908  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-30 
確定日 2016-03-24 
事件の表示 特願2012-182373号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日出願公開、特開2012-223627号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯の概要
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成13年1月31日に出願した特願2001-023835号(以下「原出願」という。)の一部を平成22年9月2日に新たに出願(特願2010-196835号)し、その一部を、平成23年5月10日に新たに出願(特願2011-105326号)し、さらに、その一部を平成24年8月21日に新たに出願(特願2012-182373号)したものであって、平成26年7月9日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年7月15日)、これに対し、同年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、当審にて平成27年8月3日付けで拒絶理由を通知したところ、同年8月18日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、当審にて同年9月25日付けで拒絶理由を通知したところ、同年10月14日に意見書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年8月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「正面方向を向いた形態を有する人物又は想像上のキャラクタからなるキャラクタ態様部と、数字態様部とを合成した複数の合成図柄が画面上で変動後、停止して、遊技の結果を表現する遊技機であって、
上記変動のパターンである変動パターンを決定する変動パターン決定手段と、
上記変動パターン決定手段により決定された変動パターンが所定の変動パターンであるとき、変動している複数の上記合成図柄において、上記キャラクタ態様部のみを、上記合成図柄の移動方向を反映した形態に変更する図柄変更手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。」

3 刊行物の記載
(1)当審における平成27年9月25日付け拒絶理由に刊行物1として提示された特開平9-215828号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、始動条件の成立に基づき始動遊技を行い、該始動遊技の結果が所定条件を満たした場合に遊技者に有利な大当たり状態を発生させる遊技機に関する。」

イ 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の遊技機の場合、始動口への入賞率は、機種毎に、始動口や障害釘の配置、或いは遊技店における障害釘の調整などにより、一定であるため、始動口への入賞を楽しむといった点においては、変化に乏しいゲーム内容になってしまっていた。また、遊技機毎に入賞率が決まってしまっていたため、入賞率の高い遊技機と低い遊技機とで、始動遊技の発生回数に差が生じ、その結果、大当たりの発生回数に極端な差が生じてしまい遊技者に対して平等な機会を与えることが困難であった。
【0007】また、従来のパチンコ遊技機の場合、確率変動状態が発生可能であることにより、大当たりの発生とは別の遊技価値を遊技者に付与することができるが、その確率変動状態の発生は可変表示装置の大当たり図柄のみで決定される上、その状態の継続期間も次の大当たりが発生した時点で、最終的に獲得できる遊技価値が決まってしまっていた。そのため、その後の確率変動状態中の遊技は、単に次の状態への消化期間としての単調なものとなってしまい、遊技機本体のゲーム性である不規則に発生する大当たりの獲得を楽しむといった点においては、不十分な内容であった。
【0008】この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、変化に富んだ斬新な遊技が行えて遊技性の高い遊技機を提供することを目的とする。」

ウ 「【0075】図3には、リーチ可変表示遊技の種類とその内容についての図表を示す。
・・・
【0082】「リーチF](「]」は「」」の誤記。)の内容は、リーチA、リーチB、及びリーチEから発展して発生するリーチであり、リーチA,B,若しくはEが発生している状態で、当たり図柄が中央部を通過したとき、キャラクタ図柄(例えばピーマン)のみ停止して識別図柄(数、英字)のみスクロールを続け、次のキャラクタ図柄は停止中のキャラクタ図柄の後ろ側を通過する一方、識別図柄は前側を通過する。このリーチFが発生した場合は、100%大当たりが発生する。」

エ 「【0098】可変表示遊技において、例えば、図26に示すように、中段ラインの図柄(例えば、「1(ピーマン),-,1(ピーマン)」)がリーチ目になったときに、後述する遊技制御においてリーチFの処理に振り分けられている場合には、中可変表示部分の図柄がスクロール中に大当たりとなる図柄「1(ピーマン)」が通過するとき、キャラクタ図柄(ピーマン)のみが停止し、識別図柄「1」はスクロールを継続する。その後、図27に示すように、中可変表示部分では、停止しているキャラクタ図柄の後に続く図柄は、当該停止しているキャラクタ図柄を通過する。この場合、後続のキャラクタ図柄は停止しているキャラクタ図柄(ピーマン)の背面側を通過し、識別図柄は、キャラクタ図柄の前面側を通過する。このリーチFが発生した場合は、最終的に識別図柄がぞろ目で停止して100%大当たりが発生する。」

オ 「【0126】図31には、図28のゼネラルフローのステップS5において行われる特図処理のサブルーチン処理のフローチャートを示す。
【0127】先ず、ステップS50において役物用IC21による制御処理の過程で定められる特図処理NO.に従って、ステップS51?S61の内の該当する処理を行う分岐処理がなされる。
【0128】この分岐処理の順序としては、図32の制御処理の流れの説明図に示すように、普段処理(ステップS51)で特図始動口又は普通変動入賞装置への入賞に基づく始動記憶があるときに、該普段処理時に変動開始処理への処理NO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)において変動開始処理(ステップS52)がなされる。この変動開始処理は、特別図柄可変表示装置4における図柄の変動表示を人の目で追えない程度の速さで、変動させる処理である。
【0129】この変動開始処理の終了時に左図柄停止処理の処理NO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)において左図柄停止処理(ステップS53)が行われる。この左図柄停止処理の終了時に右図柄停止処理の処理NO.に変更されてゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)において右図停止処理(ステップS55)が行われる。
【0130】この右図柄停止処理において、リーチ図柄以外での停止であれば、中図柄停止処理の処理NO.に、リーチ図柄での停止があればリーチ停止処理の処理NO.にそれぞれ変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)においてその変更された処理NO.に応じた、中図柄停止処理(ステップS54)、又はリーチ停止処理(ステップS55)が行われる。
【0131】その結果、中図柄停止処理又はリーチ停止処理が行われると、それら中図柄停止処理又はリーチ停止処理の中でそれぞれ停止図柄判定処理の処理NO.に変換されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)において停止図柄判定処理(ステップS57)が行われる。
【0132】この停止図柄判定処理において、変動停止の図柄態様が大当たりか否かの判定が行われ、外れ図柄での停止であれば外れ処理の処理NO.に、大当たり図柄での停止であればファンファーレ処理の処理NO.に、それぞれ変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)においてその変更された処理NO.に応じた、外れ処理(ステップS58)、又はファンファーレ処理(ステップS59)が行われる。
【0133】その結果、外れ処理が行われたときには普段処理の処理ナンバーNO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)においてその普段処理(ステップS51)が行われる。
【0134】一方、ファンファーレ処理が行われたときには、該処理の中で大当たり処理の処理NO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)において大当たり処理(ステップS60)が行われる。この大当たり処理は各サイクル時に継続条件(継続入賞口(V入賞口)への入賞即ち継続スイッチ5dからのオン信号があること)が満たされることを条件に最高で所定サイクル(例えば、16サイクル)まで継続される。この大当たり処理で、大当たり処理の最終回である場合、或いは最終回でなくても継続条件が満たされていない場合は、大当たり終了処理の処理NO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)において大当たり終了処理がなされる(ステップS61)。この大当たり終了処理の終了時に、普段処理の処理NO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図31)において普段処理(ステップS51)が行われる。
【0135】このような順序で行われる上記ステップ50における分岐処理により、普段処理(ステップS51)、変動開始処理(ステップS52)、左図柄停止処理(ステップS53)、右図柄停止処理(ステップS55)、中図柄停止処理(ステップS54)、リーチ停止処理(ステップS56)、停止図柄判定処理(ステップS57)、外れ処理(ステップS58)、ファンファーレ処理(ステップS59)、大当たり処理(ステップS60)、大当たり終了処理(ステップS61)のうちの特図処理ナンバーNO.に対応する処理をして図28のゼネラルフローの次のステップS6に移行する。
【0136】図33には、図31の特図処理のフローのステップS51において行われる普段処理のサブルーチン処理のフローチャートを示す。
【0137】この普段処理が開始されると、先ず、ステップS70において、特図始動口を兼ねた普通変動入賞装置9への入賞の始動記憶があるか否かの判定を行い、始動記憶がなければこのサブルーチンを終了して図28のゼネラルフローのステップS6に移行するが、始動記憶があればステップS71で始動記憶の数を「1」ディクレメントしてステップS72に移行する。
【0138】ステップS72では、確率変動中であるか否かを、RAM21b中の確率変動カウンタの値が「0」であるか否かにより判定し、「0」であれば確率変動中でないと判断して、ステップS73でROM22中から通常確率中の乱数判定値を選択してステップS75に移行するが、「0」でなければステップS74でROM22中から確率アップ中(確率変動中)の乱数判定値を選択してステップS75に移行する。
【0139】このようにして、ステップS75に移行したときは、該ステップS75において、図29のスイッチ入力監視処理のステップS23で抽出した大当たり用乱数値をステップS73又は74で選択した乱数判定値と比較してステップS76に移行する。
【0140】ステップS76では、ステップS75での比較の結果として、その抽出乱数が当たり値であるか否かを判定し、当たり値でなければステップS77で停止の図柄態様をその時RAM21bに記憶されている外れ停止図柄に決定してステップS79に移行するが、当たり値であれば、ステップ78で停止の図柄態様をその時RAM21bに記憶されている大当たりの図柄態様に決定してテップS79に移行する。
【0141】ステップS79では、ステップS77又はステップS78で決定された停止のの図柄態様がリーチ図柄態様(前記図3で示した態様)であるか否かを判定する。その結果、リーチ図柄態様でなければそのままステップS84に移行するが、リーチ停止図柄態様であればステップS80で、RAM21b中のリーチフラグをセットしてステップS81に移行する。
【0142】ステップS81では、大当たり停止図柄に決定されているか否かを判定し、大当たり停止図柄に決定されていなければステップS82でリーチ種類A?Eの振り分け処理を実行して、ステップS84に移行するが、大当たり停止図柄に決定されていれば、ステップS83でリーチ種類A?Fの振り分け処理を実行してステップS84に移行する。」

カ 「【0207】つまり、このステップR5,R6の処理により、特図の可変表示装置4に表示される可変表示遊技、可変表示遊技中のリーチA?F、大当たりゲームなどの表示画像の表示制御処理が行われている。」

キ 「【0251】この分岐処理の順序としては、図49の制御処理の流れの説明図に示すように、普段処理(ステップS221)で特図始動口を兼ねた普通変動入賞装置9への入賞に基づく始動記憶があるときに、該普段処理時に変動開始処理への処理NO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図48)において変動開始処理(ステップS222)を行う。この変動開始処理は、特別図柄可変表示装置4における図柄の変動表示を人の目で追えない程度の速さで、変動させる処理である。
【0252】この変動開始処理において左図柄停止処理の処理NO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)の次のシーケンスの特図処理(図48)において特図処理のフロー(図48)の左図柄停止処理(ステップS223)が行われ、該左図柄停止処理の終了時に右図柄停止処理の処理NO.に変更される。そして、ゼネラルフロー(図28)のさらに次のシーケンスの特図処理(図48)において特図処理のフロー(図48)の右図停止処理(ステップS225)が行われる。この右図柄停止処理の終了時に、中図柄停止処理の処理NO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)のさらに次のシーケンスの特図処理(図48)において特図処理のフロー(図48)の中図柄停止処理(ステップS224)が行われる。
【0253】この中図柄停止処理の終了時に、図柄停止処理の処理NO.に変更されて、ゼネラルフロー(図28)のさらに次のシーケンスの特図処理(図48)において特図処理のフロー(図48)の次のシーケンスで図柄判定処理が行われる(ステップS226)。
【0254】この図柄判定処理において、外れ図柄での停止であれば外れ処理の処理NO.に、小当たり図柄での停止であれば小当たり処理の処理NO.に、大当たり図柄での停止であればファンファーレ処理の処理NO.に、それぞれ変更されて、ゼネラルフロー(図28)のさらに次のシーケンスの特図処理(図48)においてその変更された処理NO.に応じた、外れ処理(ステップS227)、小当たり処理(ステップS228)、ファンファーレ処理(ステップS229)が行われる。
・・・
【0258】このような順序で行われる上記ステップ220における分岐処理により、普段処理(ステップS221)、変動開始処理(ステップS222)、左図柄停止処理(ステップS223)、中図柄停止処理(ステップS224)、右図柄停止処理(ステップS225)、図柄判定処理(ステップS226)、外れ処理(ステップS227)、小当たり処理(ステップS228)、ファンファーレ処理(ステップS229)、大当たり処理(ステップS230)、大当たり終了処理(ステップS231)のうちの特図処理ナンバーNO.に対応する処理をして次のステップ232に移行して、時短決定処理を行った後、このサブルーチンを終了してゼネラルフロー(図28)の普図処理(ステップS5)に移行する。」

ク 上記ウ及びエの記載事項、及び、【図5】?【図27】の図示内容によると、図柄を識別図柄(数、英字)と、正面を向いたキャラクタ図柄(例えばピーマン)とから構成し、当該図柄を、特別図柄可変表示装置4において上下方向に変動させることが示されていると認められる。

ケ 上記オの記載事項、及び、【図31】?【図33】の図示内容によれば、リーチなし外れ、リーチ有り(リーチ種類A?E)外れ、リーチ有り大当たり(リーチ種類A?F)から、いずれかのパターンを決定することが示されていると認められる。

上記ア?キの記載事項、上記ク?ケの認定事項、及び、図面の図示内容を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。
「識別図柄(数、英字)と、正面を向いたキャラクタ図柄(例えばピーマン)とから構成される図柄を、特別図柄可変表示装置4において上下方向に変動させる変動開始処理(ステップS222)を行い、左図柄停止処理(ステップS223)、右図柄停止処理(ステップS225)、及び、中図柄停止処理(ステップS224)を順次行い、次に、図柄判定処理(ステップS226)を行う遊技機であって、
リーチなし外れ、リーチ有り(リーチ種類A?E)外れ、リーチ有り大当たり(リーチ種類A?F)から、いずれかのパターンを決定し、
リーチFは、リーチA、リーチB、及びリーチEから発展して発生するリーチであり、リーチA,B,若しくはEが発生している状態で、当たり図柄が中央部を通過したとき、キャラクタ図柄(例えばピーマン)のみ停止して識別図柄(数、英字)のみスクロールを続け、次のキャラクタ図柄は停止中のキャラクタ図柄の後ろ側を通過する一方、識別図柄は前側を通過するリーチである
遊技機。」

(2)当審における平成27年9月25日付け拒絶理由に刊行物2として提示された特開2000-61069号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の契機に基づき複数の図柄を変動表示可能な可変表示装置を備えるとともに、当該図柄の停止表示結果が特定の停止表示態様であることを必要条件に遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段を備えてなる遊技機において、
少なくとも前記図柄を複数の方向へ変動表示可能とするとともに、その図柄自身の向きを前記変動表示方向に対応させて表示するようにしたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】 請求項1に記載の遊技機において、
前記図柄は、通常時においては、所定の一方向へ変動表示されるものであり、特定状態時においては、前記一方向とは異なる他方向へ変動表示されるものであることを特徴とする遊技機。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ機等の遊技機に係り、特に、所定の契機に基づき複数の図柄を変動表示可能な可変表示装置を備えてなる遊技機に関するものである。」

ウ 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来技術においては、いずれのパターンにおいても、図柄は、常に一定の方向に変動表示させられるだけであった。そのため、当該図柄の停止に際しては、遊技者は、停止直前の図柄表示領域を眺めるだけで面白味に欠けた遊技内容となってしまうおそれがあった。特に、上記のような不具合は、リーチ遊技状態において顕著なものとなっていた。
【0007】例えば、3つの図柄が横に1列に可変表示される場合において、右・左の図柄がともに、「7」、「7」で停止表示されたとする。このときの状態は、リーチ状態であり、もしも中央の図柄が「7」で停止表示されれば、上述した「特別遊技状態」へと移行する。このようなリーチ状態において、中央の図柄が「1」→「2」→「3」→・・・といった具合にゆっくりと切替変動或いはスクロール変動した場合を考えてみると、遊技者は、単に当該図柄が表示される中央の表示領域を眺めるだけで、その図柄が停止するのを待つことになる。この場合、一定方向に向けて図柄は変動するものの、それ以外の点については何ら変化が起こるわけではなく、かかる点で、興趣の向上が望まれていた。
【0008】また、特定のリーチ状態に際して、図柄を逆方向に変動表示させることが考えられる。例えば、上記のようなリーチ状態において、中央の図柄が「6」→「7」→「8」→「7」・・・といった具合に切替変動した場合を考えてみると、この場合には、図柄が逆戻りしたことになかなか気づかない場合が生じうる。また、スクロール変動した場合を考えてみても、場合によっては(遊技者が切替変動のタイミングを見逃した場合や、1つの図柄列に1つの図柄しか表示されない場合や、半コマしか逆戻りしない場合等)、遊技者が、図柄が逆方向に変動表示させられていることに気がつかないおそれがあった。その結果、図柄を逆方向に変動表示する意義が没却されてしまうおそれがあった。
【0009】さらに、場合によっては、図柄を逆方向に変動表示させるだけだと、見る者にとって違和感を生じるおそれがあった。例えば、数字があるキャラクタと組み合わされて図柄が構成され、その図柄が変動表示させられる場合には、図柄が逆方向に変動表示されると、キャラクタが順方向を向いたまま、当該キャラクタが数字とともに逆方向に変動表示させられることとなる。そのため、キャラクタが通常ではありえない動きをする場合が生じ、遊技者が違和感を感じてしまうおそれがあった。
【0010】本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の図柄を変動表示可能な可変表示装置を備えた遊技機において、興趣の飛躍的な向上を図ることのできる遊技機を提供することにある。」

エ 「【0014】さて、本発明では、少なくとも前記図柄が複数の方向へ変動表示されうる。このため、図柄が常に一定方向へ変動表示させられる場合と比較して、面白味が増す。また、その図柄自身の向きが前記変動表示方向に対応して表示される。従って、遊技者にとっては、図柄の変動表示方向が切替えられたことを容易に判別することができる。さらに、図柄自身の向きが変動表示方向に対応して表示されるため、違和感が生じにくい。」

オ 「【0019】遊技盤2の中央部分(大入賞口4の上方)には、可変表示装置としての特別図柄表示装置(以下、単に「表示装置」という)8が組込まれている。表示装置8は、液晶(LCD)ディスプレイ8aを備えており、ここに複数の図柄列が表示される。図2に示すように、本実施の形態では、これらの図柄列として上図柄列14、中図柄列15及び下図柄列16の3つの図柄列が表示されるが、それ以外の数の図柄列が表示されてもよい。
【0020】各図柄列14?16は、基本的には、図2,3に示すように、複数種類(10種類)の図柄17A?17Jによって構成されている。各図柄17A?17Jはそれぞれ複数種類で複数個の図柄17A?17Iと、1種類で複数個の図柄17Jとによって構成されている。図柄17A?17Iは、基本的には海に生息する魚等の絵と、「1」?「9」の数字との組合せによって構成されており、「1」?「9」の数字は、上図柄列14においては降順に、中、下図柄列15,16においては昇順にそれぞれ配列されている。より詳しくは、「1」が「タコ」の絵と、「2」が「親子ハリセンボン」の絵と、「3」が「カメ」の絵と、「4」が「サメ」の絵と、「5」が「エビ」の絵と、「6」が「アンコウ」の絵と、「7」が「親子ジュゴン」の絵と、「8」が「親子エンゼルフィッシュ」の絵と、「9」が「カニ」の絵と組み合わされている。これらの図柄17A?17Iは、特別遊技図柄としての大当たり図柄、外れリーチ図柄及び外れ図柄のいずれかになりうる(これらについては後述する)。また、1つの図柄17Jは、貝の絵のみからなり、当該図柄17Jは、外れ図柄にのみなりうる。」

カ 「【0022】表示装置8のLCDディスプレイ8aでは、各図柄列14?16の図柄変動(スクロール変動)が、遊技球5の作動口3への入賞に基づいて開始させられる。また、大当たり図柄、外れリーチ図柄、外れ図柄の中から1つが選択され、これが停止図柄として設定される。停止図柄とは、各図柄列14?16が図柄変動を停止したときに表示される図柄である。
【0023】大当たり図柄は、いわゆるリーチ状態を経た後、遊技者に有利な大当たり状態を発生させるための図柄である。詳しくは、全ての図柄列14?16の変動が停止させられたとき、表示されている図柄17A?17Jの組合せが、予め定められた大当たりの組合せ、すなわち、同一種類の図柄が大当たりラインLに沿って並んでいるときの同図柄の組合せ(例えば、「7:親子ジュゴン」、「7:親子ジュゴン」、「7:親子ジュゴン」の図柄)となる場合がある。この組合せを構成する図柄が「大当たり図柄」である。大当たりの組合せが成立すると、特別電動役物が作動し(大入賞口4が開かれ)、遊技者にとって有利な大当たり状態の到来、すなわち、より多くの賞球を獲得することが可能となる。
【0024】また、リーチ状態とは、大当たり直前の状態をいう。リーチ状態には、下図柄列16の図柄変動が、大当たりラインL1?L5上において上図柄列14の停止図柄と同一種類の図柄で停止する状態が含まれる。図に示す例では、斜め2つの大当たりラインL4,L5上で停止している上・下両図柄列14,16の図柄17A?17Jが共に「5:エビ」又は「6:アンコウ」の付された図柄17E,17Fとなっている(いわゆるダブルリーチ)。
【0025】上記のリーチ状態には、中図柄列15の図柄変動が、最終的に上・下両図柄列14,16の停止図柄と同一種類の図柄(大当たり図柄)で停止して大当たり状態になるもの以外にも、異なる種類の図柄(これを「外れリーチ図柄」という)で停止して、大当たり状態とならないもの(以下、「外れリーチ状態」という)が含まれる。さらには、中図柄列15の図柄変動が一旦停止した後、再度変動したり(2段階リーチとも称される)、或いは、同一種類の図柄17A?17Jが大当たりラインL1?L5に沿って並んだ状態で、再度全図柄列14?16が変動し、その後全図柄列14?16の図柄17A?17Jが同時に停止するような場合(再変動リーチとも称される)も含まれる。
【0026】上記リーチ状態においては、種々のリーチパターンが設定されている。リーチパターンとしては、ほとんど何らの変化をも伴わずゆっくりと中図柄列15の図柄17A?17Jが停止する「ノーマルリーチ」、キャラクタ(図2に示すようなマリンちゃん等)が登場する複数種類の「キャラクタリーチ」等が設定されている。これらリーチパターンのうち、「ノーマルリーチ」以外のリーチパターンは、いわゆる「スーパーリーチ」と称されるものである。「スーパーリーチ」の動作が開始された場合には、「ノーマルリーチ」の場合に比べて、大当たり状態が発生する期待値(大当たり期待値)が高くなるようになっている。また、「スーパーリーチ」においても、各リーチパターンによって大当たり期待値が異なったものとなっている。」

キ 【0038】次に、本実施の形態の特徴的部分について説明する。
【0039】本実施の形態において、制御装置50は、上述した表示装置8の表示部8aにおいて、通常時は上図柄列14→下図柄列16→中図柄列15の順に変動を停止させる。ここで、上図柄列14→下図柄列16の順で図柄17A?17Jが停止した場合、図6に示すように、リーチ状態となることがある。この場合には、下図柄列16の図柄変動が、例えば斜めの大当たりラインL4,L5上において上図柄列14の停止図柄と同一種類の図柄で停止しており、中図柄列15が中央において「5:エビ」又は「6:アンコウ」の付された図柄17E,17Fで停止すれば大当たり状態が発生しうる。
【0040】このような場合において、所定の条件(所定のリーチ種別パターン乱数を獲得したりすること)が成立した場合には、制御装置50は、画像コントローラ36に対し、所定のリーチパターンにおける演出表示を行い、その後、中図柄列15をそれまでとは逆方向(図の左から右方向)に変動表示させる旨の信号を出力する。また、これとともに、中図柄列15の図柄17A?17J自身の向きをそれまでの向きに対し反転させた状態で表示せしめる(図7参照)。そして、その後、予め定められた図柄17A?17Jにて変動表示を停止させ、再度図柄17A?17Jの向きを元の状態に戻す(戻さないこととしても差し支えない)。
【0041】このような構成とすることにより、本実施の形態によれば、図柄が常に一定方向へ変動表示させられる場合と比較して、面白味が増す。また、その図柄17A?17J自身の向きが前記変動表示方向に対応して表示される(本実施の形態では左右に反転表示される)。従って、遊技者にとっては、図柄17A?17Jの変動表示方向が切替えられたことをより容易に判別することができる。さらに、図柄17A?17J自身の向きが変動表示方向に対応して表示されるため、違和感が生じにくい。より具体的には、図柄17A?17Jのうち、魚等の絵が頭側からではなく尾側から泳ぐ(バックする)ような不自然な動きがなくなり、遊技者にとっての違和感を払拭することができる。これらのことから興趣の飛躍的な向上を図ることができる。特に、本実施の形態の如く、図柄17A?17Jが非対称形の絵図柄を含んでいる場合には、より一層効果的に上記作用効果が奏される。
【0042】また、本実施の形態によれば、前記図柄17A?17Jは、通常時においては、左方向へ変動表示され、特定状態時においては、前記一方向とは反対の右方向へ変動表示される。従って、遊技者は、中図柄列15の図柄17A?17Jが戻るような感覚を覚える。これにより、変動中の図柄17A?17Jが所望の図柄にて停止せずに次の図柄17A?17Jに変動表示されてしまったとしても、その戻りによって再度所望の図柄図柄17A?17Jにて停止するかもしれないといった期待感を抱きうる。その結果、より一層の興趣の向上を図ることができる。
【0043】さらに、本実施の形態では、特に、リーチ状態に際して、変動表示方向がそれまでとは異なるように表示される。従って、遊技者はわくわくどきどきしながら中図柄列15を注目することとなり、より一層面白味が増す。」

ク 「【0053】尚、本発明は上述した実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、従って、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように実施してもよい。
【0054】(a)・・・
・・・
【0056】(c)上記実施の形態では、図柄を数字と絵との組み合わせによって構成したが、単に数字のみによって構成してもよいし、絵のみによって構成することとしてもよい。
【0057】(d)上記実施の形態では、左右逆方向に変動表示させることとしたが、上下逆方向に変動表示しうるようにしてもよい。また、それ以外の方向に変動表示しうるようにしてもよい。また、3つ以上の方向に変動表示させることとしてもよい。
【0058】(e)上記実施の形態では、リーチ遊技状態において、図柄の変動方向をそれまでと異ならせるようにしたが、リーチ状態以外においても、変動方向を変えることとしてもよい。
・・・
【0060】(g)上記実施の形態では、図柄の停止表示結果が特定の停止表示態様であることを必要条件に遊技者に有利な特別遊技状態を発生させることとした。ここで、特別遊技状態はいわゆる大当たり状態であったが、他の遊技状態であってもよい(例えば遊技球5の獲得個数が大当たり状態よりも少ない小当たり状態、或いは単に確率変動モードや時間短縮モードを獲得できる状態等)。」

ケ 「【0066】(2)請求項2及び上記付記(1)に記載の遊技機において、前記特定状態時は、リーチ遊技状態時であることを特徴とする遊技機。」

コ 上記キの記載事項及び【図6】、【図7】の図示内容から、図柄を構成する数字図柄の向きは変えずに、図柄を構成する魚等の絵図柄自身の向きをそれまでの向きに対し反転させた形態で表示させることが示されている。

上記ア?ケの記載事項、上記コの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物2発明」という。)。
「所定の契機に基づき複数の図柄を変動表示可能な可変表示装置を備えるとともに、当該図柄の停止表示結果が特定の停止表示態様であることを必要条件に遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段を備えてなる遊技機において、
前記図柄を複数の方向へ変動表示可能とするとともに、その図柄自身の向きを前記変動表示方向に対応させて表示するようにし、
前記図柄は、リーチ遊技状態時においては、通常時における所定の変動表示方向とは異なる他方向へ変動表示する遊技機において、

海に生息する魚等の絵と数字との組み合わせによって構成した図柄(17A?17J)をLCDディスプレイ8aにおいて変動後停止させる表示装置8と、
大当たり直前の状態であるリーチ状態となる場合に、所定のリーチ種別パターン乱数を獲得すると、中図柄列15をそれまでとは逆方向(図の左から右方向)に変動表示させる旨の信号を画像コントローラ36に対し出力する制御装置50と
を備え、

制御装置50が所定のリーチ種別パターン乱数を獲得すると、遊技者にとって、図柄の変動表示方向が切替えられたことをより容易に判別することができるよう、画像コントローラ36が、中図柄列15を図柄自身の向きをそれまでの向きに対し反転させた状態で表示装置8に表示し、逆方向に変動表示させ、
自身の向きをそれまでの向きに対し反転させた状態で表示される図柄は、数字図柄の向きは変えずに、絵図柄自身の向きをそれまでの向きに対し反転させた形態で表示させることにより、変動表示方向に対応させて表示させ、それにより、遊技者が違和感を感じることなく、興趣の飛躍的な向上を図ることのできる
遊技機。」

4 対比
刊行物1発明と本願発明とを対比する。
ア 刊行物1発明における「識別図柄(数、英字)とキャラクタ図柄(例えばピーマン)とから構成される図柄」は、本願発明の「正面方向を向いた形態を有する」「想像上のキャラクタからなるキャラクタ態様部と、数字態様部とを合成した複数の合成図柄」に相当する。

イ 刊行物1発明における「図柄を、特別図柄可変表示装置4において上下方向に変動させる変動開始処理(ステップS222)を行い、左図柄停止処理(ステップS223)、右図柄停止処理(ステップS225)、及び、中図柄停止処理(ステップS224)を順次行い、次に、図柄判定処理(ステップS226)を行う遊技機」と、本願発明の「合成図柄が画面上で変動後、停止して、遊技の結果を表現する遊技機」とを対比する。

刊行物1発明における「図柄を、特別図柄可変表示装置4において変動させる変動開始処理(ステップS222)を行」うことは、本願発明の「合成図柄が画面上で変動」することに相当する。
そして、刊行物1発明における「左図柄停止処理(ステップS223)、右図柄停止処理(ステップS225)、及び、中図柄停止処理(ステップS224)を順次行」うことは、本願発明の「停止」することに相当する。
また、刊行物1発明における「図柄判定処理(ステップS226)を行う」ことは、停止表示された図柄が当たりであるか外れであるかの判定を行う処理であり、停止表示された図柄が遊技の結果を表していることは当業者にとって自明であるから、本願発明の「遊技の結果を表現する」ことに相当する。

したがって、刊行物1発明における「図柄を、特別図柄可変表示装置4において変動させる変動開始処理(ステップS222)を行い、左図柄停止処理(ステップS223)、右図柄停止処理(ステップS225)、及び、中図柄停止処理(ステップS224)を順次行い、次に、図柄判定処理(ステップS226)を行う遊技機」は、本願発明における「合成図柄が画面上で変動後、停止して、遊技の結果を表現する遊技機」に相当する。

ウ 刊行物1発明における「リーチなし外れ、リーチ有り(リーチ種類A?E)外れ、リーチ有り大当たり(リーチ種類A?F)から、いずれかのパターンを決定」することと、本願発明における「変動のパターンである変動パターンを決定する変動パターン決定手段」とを対比する。

刊行物1発明における「リーチなし外れ」、「リーチ有り(リーチ種類A?E)外れ」、及び、「リーチ有り大当たり(リーチ種類A?F)」のパターンは、変動表示されるパターンを示すものであるから、本願発明における「変動のパターンである変動パターン」に相当する。

したがって、刊行物1発明における「リーチなし外れ、リーチ有り(リーチ種類A?E)外れ、リーチ有り大当たり(リーチ種類A?F)から、いずれかのパターンを決定」することは、本願発明における「変動のパターンである変動パターンを決定する変動パターン決定手段」に相当する。

エ 刊行物1発明における「リーチFは、リーチA、リーチB、及びリーチEから発展して発生するリーチであり、リーチA,B,若しくはEが発生している状態で、当たり図柄が中央部を通過したとき、キャラクタ図柄(例えばピーマン)のみ停止して識別図柄(数、英字)のみスクロールを続け、次のキャラクタ図柄は停止中のキャラクタ図柄の後ろ側を通過する一方、識別図柄は前側を通過するリーチである」ことと、本願発明における「上記変動パターン決定手段により決定された変動パターンが所定の変動パターンであるとき、変動している複数の上記合成図柄において、上記キャラクタ態様部のみを、上記合成図柄の移動方向を反映した形態に変更する図柄変更手段」とを対比する。

刊行物1発明における「リーチF」は、複数のパターンの中から決定されるものであることから、本願発明における「変動パターン決定手段により決定された変動パターンが所定の変動パターンであるとき」に相当する。
そして、刊行物1発明における「キャラクタ図柄(例えばピーマン)のみ停止して識別図柄(数、英字)のみスクロールを続け、次のキャラクタ図柄は停止中のキャラクタ図柄の後ろ側を通過する一方、識別図柄は前側を通過する」ことは、キャラクタ図柄と識別図柄とを分離して動作できるように図柄を変更するものである。他方で、本願発明における「変動している複数の上記合成図柄において、上記キャラクタ態様部のみを、上記合成図柄の移動方向を反映した形態に変更する」ことも、合成図柄を変更するものである。

したがって、刊行物1発明における「リーチFは、リーチA、リーチB、及びリーチEから発展して発生するリーチであり、リーチA,B,若しくはEが発生している状態で、当たり図柄が中央部を通過したとき、キャラクタ図柄(例えばピーマン)のみ停止して識別図柄(数、英字)のみスクロールを続け、次のキャラクタ図柄は停止中のキャラクタ図柄の後ろ側を通過する一方、識別図柄は前側を通過するリーチである」ことと、本願発明における「上記変動パターン決定手段により決定された変動パターンが所定の変動パターンであるとき、変動している複数の上記合成図柄において、上記キャラクタ態様部のみを、上記合成図柄の移動方向を反映した形態に変更する図柄変更手段」とは、「上記変動パターン決定手段により決定された変動パターンが所定の変動パターンであるとき、合成図柄を変更する」ことで共通する。

オ 上記ア?エより、刊行物1発明と本願発明とは、
「正面方向を向いた形態を有する人物又は想像上のキャラクタからなるキャラクタ態様部と、数字態様部とを合成した複数の合成図柄が画面上で変動後、停止して、遊技の結果を表現する遊技機であって、
上記変動のパターンである変動パターンを決定する変動パターン決定手段を備え、
上記変動パターン決定手段により決定された変動パターンが所定の変動パターンであるとき、合成図柄を変更する
遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
変動パターンが所定の変動パターンであるときの合成図柄の変更に関して、
本願発明では、変動している複数の合成図柄において、キャラクタ態様部のみを、合成図柄の移動方向を反映した形態に変更する図柄変更手段を備えているのに対して、
刊行物1発明は、リーチFにおいて、図柄をキャラクタ図柄と識別図柄とに分離したものに変更し、別々に変動動作させるものであるが、本願発明の図柄変更手段を備えていない点。

5 当審の判断
(1)相違点について
上記相違点について検討する。
まず、本願発明の「キャラクタ態様部のみを、合成図柄の移動方向を反映した形態に変更する」とした場合に、数字態様部がどのような形態を採るのかについて検討する。
当該特定事項は、キャラクタ態様部は変更されるが、数字態様部は変更されないことを意味する。
そして、数字態様部が変更されないとは、
a 数字の向きは変えないこと
と、
b 数字の向きを変えないことに加えて、数字の位置を変えないこと
の二通りに解釈できる。
そこで、以下、上記a及びbの解釈を行った場合について、それぞれ、検討する。

ア 「数字態様部が変更されないこと」を、a 数字の向きを変えないことと解した場合
刊行物2発明は、リーチ遊技状態時に図柄の変動表示方向を通常時における変動表示方向とは異なる方向とする遊技機において、図柄を数字図柄の向きは変えずに、絵図柄自身の向きを反転させた形態で表示させることにより、図柄自身の向きをそれまでの向きに対し反転させた状態で表示させるものである。
すなわち、刊行物2発明は、「変動している複数の合成図柄において、キャラクタ態様部を、合成図柄の移動方向を反映した形態に変更する図柄変更手段」を備えているといえる。
また、刊行物2には、「(d)上記実施の形態では、左右逆方向に変動表示させることとしたが、上下逆方向に変動表示しうるようにしてもよい。また、それ以外の方向に変動表示しうるようにしてもよい。また、3つ以上の方向に変動表示させることとしてもよい」(前記3(2)クを参照。)ことが記載されているから、刊行物2発明の「前記図柄は、リーチ遊技状態時においては、通常時における所定の変動表示方向とは異なる他方向へ変動表示する」という発明特定事項は、通常時に上下方向に変動表示していたものを、リーチ遊技状態時に左右方向に変動表示させる概念を含むものである。

そして、刊行物1発明も刊行物2発明も、図柄変動を通じ遊技の興趣を向上するという共通の課題を解決したものである。

これらのことからみて、刊行物1発明における「リーチF」に刊行物2発明を適用して、「リーチF」の変動表示を、識別図柄(数、英字)の向きは変えずに、キャラクタ図柄のみを移動方向を反映した形態に変更することにより、図柄の移動方向を反映した形態に変更した図柄を用いて行い、上記相違点に係る本願発明の構成にすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 「数字態様部が変更されないこと」を、b 数字の向きを変えないことに加えて、数字の位置を変えないことと解した場合

上記アにおいて検討したことに加えて、遊技機の技術分野において、遊技の興趣を向上させるために、図柄を構成する数字の向きを変えないことに加えて、図柄に占める図柄を構成する数字の位置を変えないように構成することは、本願の遡及日前に周知の技術事項(当審における平成27年9月25日付け拒絶理由に提示された刊行物3:特開2000-342795号公報の【図4】(b)、(c)、(e)?(g)には、下を向く形態の魚のキャラクタが図示され、【図4】(d)には、横を向く形態の魚のキャラクタが図示されているが、いずれの図柄においても、数字の向き、及び、数字の図柄における絶対位置は同じであり変更されないことが示され、同じく、当審における平成27年9月25日付け拒絶理由に提示された刊行物4:特開2000-342788号公報の【図4】には、下を向く形態の自動車のキャラクタが図示され、【図6】(c)、(d)には、横を向く形態の自動車のキャラクタが図示されているが、いずれの図柄においても、数字の向き、及び、数字の図柄における絶対位置は同じであり変更されないことが示されている。)である。

そして、刊行物1発明も刊行物2発明も、上記周知の技術事項も、図柄変動を通じ遊技の興趣を向上するという共通の課題を解決したものである。

これらのことからみて、刊行物1発明における「リーチF」に刊行物2発明を適用して、「リーチF」の変動表示を、識別図柄(数、英字)の向きは変えずに、キャラクタ図柄のみを移動方向を反映した形態に変更することにより、図柄の移動方向を反映した形態に変更した図柄を用いて行い、さらに、上記周知の技術事項に基づいて、識別図柄(数、英字)について、向きを変えないことに加えて、図柄に占める位置を変えないように構成し、上記相違点に係る本願発明の構成にすることは、当業者が容易になし得たものである。

(2)請求人の主張について
請求人は、平成27年10月14日の意見書において、「上記相違点の構成によれば、変動パターンが所定の変動パターンである場合と、そうでない場合とで、図柄の移動方向に対するキャラクタの向きの変化(正面方向を向いた形態/移動方向を反映した形態)が生じますので、遊技者は、図柄に含まれるキャラクタの向きを見るだけで、図柄の態様の変化を直感的に理解し、そのことに基づいて、所定の変動パターンであることを容易に知ることができます。
特に、キャラクタの向きの変化が、移動方向を予測できない態様(正面方向を向いた形態)から、移動方向を予測できる形態(移動方向を反映した形態)に変化するものですので、図柄の態様の変化を一層直感的に理解し、そのことに基づいて、所定の変動パターンであることを容易に知ることができます。
これに対し、引用文献2、3記載の発明のように、魚等のキャラクタが、常に、図柄の移動方向を向いていると、魚等のキャラクタを見ても、相異態様図柄が選択されたか否かを直感的に知ることができません。また、いうまでもなく、引用文献1記載の発明のように、キャラクタが常に正面を向いている場合や、引用文献4記載の発明のように、移動している図柄に含まれる車が常に下向きである場合も、相異態様図柄が選択されたか否かを直感的に知ることができません。
このように、上記相違点の構成は、引用文献1?4のいずれに記載の発明でも決して奏することができない顕著な効果(遊技者に、図柄の態様の変化、及び所定の変動パターンであるか否かを直感的に且つ即座に理解させることができる)を奏する構成ですから、決して容易に想起できる構成ではありません。」(3頁22?40行)と主張する。

しかしながら、刊行物2発明は、リーチ変動の際に、図柄の形態及び図柄の変動方向を、通常変動のときと異ならせるものであり、遊技者は、図柄の形態の変化から、図柄の変動方向の変化を認識することにより、遊技状態がリーチ変動であることを瞬時に知ることができるものである。
したがって、上記(1)において検討したように、刊行物1発明における「リーチF」に刊行物2発明を適用したものは、結果として、正面を向いて上下方向に変動していた図柄が、「リーチF」の変動を行う際に、正面以外の方向を向いて変動する図柄に変更されることにより、遊技者が図柄の態様の変化から、遊技状態がリーチ変動状態であることを直感的に且つ即座に理解できることは、当業者にとって明らかである。

よって、請求人の意見書における上記主張は採用できない。

(3)小括
上記(1)ア、イ、及び、(2)において検討したように、本願発明は、当業者が刊行物1?2発明に基づいて、あるいは、当業者が刊行物1?2発明及び周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明により奏される効果は、当業者が、刊行物1?2発明及び周知の技術事項から予測し得る範囲内のものであって、格別のものではない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-22 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-08 
出願番号 特願2012-182373(P2012-182373)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 関 博文
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 名古屋国際特許業務法人  
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