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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02S
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02S
管理番号 1312833
審判番号 不服2015-2197  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-04 
確定日 2016-03-24 
事件の表示 特願2014-141699「太陽光発電システム」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月9日の出願であって、平成26年8月12日付けで拒絶理由が通知され、同年10月15日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年11月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年2月4日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年2月4日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、本件補正前(平成26年10月15日付け手続補正書によるもの)の特許請求の範囲の請求項1につき、
「複数の太陽電池モジュール、及び前記太陽電池モジュール同士を直列接続するストリング内接続部を有し、発生した電力を負荷に供給する太陽電池ストリングと、
前記負荷の一方の端子及び前記太陽電池ストリングの一方の端子を互いに接続する第1接続部と、
前記負荷の他方の端子及び前記太陽電池ストリングの他方の端子を互いに接続する第2接続部と、
を備える太陽光発電システムであって、
前記太陽光発電システム内におけるアークの発生を検知するアーク検知部と、
前記アーク検知部が前記アークの発生を検知した際、前記太陽電池ストリング内における前記ストリング内接続部を電気的に切断することにより、前記太陽電池ストリングと前記第1接続部と前記第2接続部と前記負荷とによって構成される回路を切断する切断部と、
を備える太陽光発電システム。」
とあったものを、
「複数の太陽電池モジュール、及び前記太陽電池モジュール同士を直列接続するストリング内接続部を有し、発生した電力を負荷に供給する太陽電池ストリングと、
前記負荷の一方の端子及び前記太陽電池ストリングの一方の端子を互いに接続する第1接続部と、
前記負荷の他方の端子及び前記太陽電池ストリングの他方の端子を互いに接続する第2接続部と、
を備える太陽光発電システムであって、
前記太陽光発電システム内におけるアークの発生を検知するアーク検知部と、
前記アーク検知部が前記アークの発生を検知した際、前記太陽電池ストリング内における前記ストリング内接続部を電気的に切断することにより、前記太陽電池ストリングと前記第1接続部と前記第2接続部と前記負荷とによって構成される回路を、前記第1接続部及び前記第2接続部を含むアーク発生対象接続部に発生する直列アーク及び並列アークを消弧するために切断する、1つ以上であって前記複数の太陽電池モジュール毎に設けられていない、前記複数の太陽電池モジュールから前記負荷への電力の供給を止める切断部と、
を備える太陽光発電システム。」
に補正する内容を含むものである(下線は請求人が付したとおりである。)。

2 補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1において、「切断部」に係り、「・・・回路を切断する」とあったものを、「・・・回路を、前記第1接続部及び前記第2接続部を含むアーク発生対象接続部に発生する直列アーク及び並列アークを消弧するために切断する、1つ以上であって前記複数の太陽電池モジュール毎に設けられていない、前記複数の太陽電池モジュールから前記負荷への電力の供給を止める」と補正して、「切断」に関して「前記第1接続部及び前記第2接続部を含むアーク発生対象接続部に発生する直列アーク及び並列アークを消弧するために」及び「1つ以上であって前記複数の太陽電池モジュール毎に設けられていない、前記複数の太陽電池モジュールから前記負荷への電力の供給を止める」との限定を付加するものであるから、上記1の本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記1において、本件補正後のものとして記載したとおりのものと認める。

(2)刊行物の記載及び引用発明
ア 原査定における拒絶理由に引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2010/078303号(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(訳文を付した。下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「FIELD OF THE INVENTION
[002] The invention relates to an electrical safety shutoff system and associated devices that can disable the electrical output of individual photovoltaic modules, also known as solar panels, in a photovoltaic array.」
(発明の分野
[002]本願発明は、太陽光発電のアレイにおいて、ソーラーパネルとしても知られている太陽光発電のモジュールの個々の電気出力を停止させることができる電気の安全遮断システムと付属する装置に関連する。)

(イ)「[0011]A significant potential hazard in a PV array is electrical arcing, particularly because PV systems use DC rather than AC electricity. In general, arc faults in an electrical system can be of several types. Series arcs occur when normal current flow is interrupted at failed or improper interconnections, while parallel arcs occur when a portion of the circuit is short-circuited due to failed electrical isolation. Ground faults are a special case of parallel arcs. 」
「[0012] Analogous to other electrical systems, arc detection circuitry can be implemented for PV arrays, as indicated by the optional fault detection and interrupt 130 in Figure 1.
・・・途中省略・・・
The system may also separately detect parallel arcs and subsequently trigger an array short-circuit switch to bring the voltage to zero and extinguish the arc.」
「[0016] The invention provides a method, system, and associated devices that can be used to disable the electrical output of an array of PV modules 100. 」
([0011]特に、太陽光発電システムが交流よりむしろ直流を使うことから、太陽光発電アレイの重大な潜在的な危険は、電気的のアークの発生である。一般に、電気システムの中のアーク故障はいくつかのタイプがあり得る。通常の電流の流れが故障あるいは誤った相互接続のために遮られるときに直列アークが起こり、他方、電気的絶縁の故障のため回路の一部が短絡したときに並列アークが起こる。接地故障は並列アークの特別なケースである。
[0012]他の電気システムに類似しているが、図1に故障検知及び遮断システム130の一例として示されているアーク検知電気回路は、太陽光発電アレイに実装することができる。・・・途中省略・・・
システムは個々の並列アークを検出することもでき、そして配列された短絡スイッチは、短絡によってが電圧をゼロにして、アークを消弧する。
[0016]本発明は、太陽光発電モジュール100のアレイの電気出力を停止することに用いることができる、方法、システム及び付属した装置を提供する。)

(ウ)「[0021] FIGURE 2 depicts an overview of a shutoff system according to the disclosed subject matter. Labels on some repeated elements are omitted for clarity, and dashed lines indicate optional elements or combinations of elements. The system consists of individual shutoff circuits 300, each of which can disable the electrical output of a single module 100; and one or more enable signal generators 400, each of which transmits signals to the shutoff circuits 300 to enable electrical power output from their associated modules 100. The shutoff circuits 300 are designed such that, in the absence of an enable signal 310, the shutoff circuits 300 revert to a safe state in which the module 100 power is disabled. Preferably, the shutoff circuits 300 are integrated into the assemblies or the junction boxes of their associated modules 100. The enable signal 310 is transmitted via the DC power lines 105 of the PV array, such that no additional wiring to the modules is required beyond the normal interconnections. For simplicity Figure 2 depicts only one string 110, but it should be understood that the system could contain a plurality of strings 110.」
「[0027] In yet another embodiment, the shutoff circuit 300 includes both a controller 360 (not shown) and sensing elements (370 (not shown), 371 (not shown)) with which the controller 360 (not shown) can detect arc faults or ground faults in its associated module 100, and the controller 360 can cause the switch element 330 to disable module 100 power output in order to protect against detected faults.」
「[ 0031 ] The enable signal generator 400 may contain a disconnect switch 444 (not shown) to remove the enable signal 310 from the PV array, thus shutting off the array. It may also shut off the array in response to control signals from other equipment, such as inverters 140, fault detection systems 130, or other devices.」
「[ 0051 ] The enable signal generator 400 may be controlled from a control panel 410, and the control panel 410 may include a manual shutoff switch 444 (not shown) that stops the enable signal 310 and therefore disables the modules 100. The enable signal generator 400 may also respond to control signals from other equipment, such as signals from an inverter 140, fault detection equipment 130, or other equipment. 」
「[0053] Figure 2 depicts a particular embodiment (denoted "circuit interrupter") in which a normally open switch element 330 is in series with the PV generating capacity 102 and the switch element 330 is closed only when the enable signal 310 is detected. 」
「[0056] FIGURE 4 further depicts the operation of the shutoff system, in a circuit interrupter embodiment. The figure compares the voltages along an exemplary string 110' when the shutoff circuits 300 are enabled (left side - Figure 4A) versus disabled (right side - Figure 4B). The exemplary string 110' consists of 12 modules 100', wherein the modules 100' have a max power point voltage of 25 V and an open circuit voltage of 35 V, and where the negative terminal of the string 110' is at ground potential (0 V). When the enable signal 310 is present (left side - Figure 4A) signal detectors 320 cause the normally open switch elements to close (330') and the modules 100' are enabled. Voltages add from the negative to the positive end of the string 110' and voltages up to 300 V are present. In contrast, when the enable signal is not present (right side - Figure 4B), the switch elements are in their open state (330") and modules 110' are disabled. Current is arrested and cannot flow along the string 110', the wiring between the modules 100' is essentially disconnected, and the maximum voltage difference between any two points is limited to the open circuit voltage of 35 V. Furthermore, voltage hazards are confined to within the module 100' construction. Therefore, when the modules 100' are disabled the hazard potential is greatly reduced. In addition, both series and parallel arcs will be interrupted in most circumstances.」
([0021]図2は、開示された主題に従った遮断システムの概観を示す。いくつかの繰り返して用いられる要素の符号は明確さのために省略され、破線はオプション要素あるいは組み合わせ要素を示す。前記システムは、それぞれが一つのモジュール100の電気出力を停止させることができる個別の「遮断回路」300と、前記遮断回路300に、それぞれが関連したモジュール100からの電気出力を可能にするような信号を送る1つ以上の「イネーブル信号発生装置」400とからなる。前記遮断回路300は、イネーブル信号310が停止すると、前記遮断回路300が、前記モジュール100の電力を停止させ安全な状態に戻すよう設計される。好ましくは、前記遮断回路300は、組立部品あるいは関連した前記モジュール100内に組み込まれるか、接続されたジャンクションボックスに設けられる。前記イネーブル信号310は、通常の相互接続以外に前記モジュールへの追加の信号線を必要とすることのないよう太陽光発電アレイの直流電力線105によって送信される。単純化のために図2ではたった1本のストリング110が描かれているが、前記システムが複数のストリング110を含むことができると理解すべきである。
[0027]さらにもう1つの具体例では、遮断回路300は、コントローラー360(図示せず)と検知素子(370(図示せず)、371(図示せず))の両方を含み。そのうち、コントローラー360(図示せず)は、モジュール100とともにアーク故障または接地故障を検知することができるとともに、コントローラー360は、検知された故障から保護するためにスイッチ素子330にモジュール100の電力出力を停止させることができる。
[0031]前記イネーブル信号発生装置400は、前記太陽光発電アレイから前記イネーブル信号310を除去して、前記アレイを停止させる遮断スイッチ444(図示せず)を含んでもよい。それは、また、前記アレイの、インバーター140、故障検知システム130あるいは他の装置といった他の装置からの制御信号に応答して、アレイを遮断する。
[0051]前記イネーブル信号発生装置400はコントロールパネル410から制御され得るものであり、前記コントロールパネル410は、イネーブル信号310を停止することにより前記モジュール100を停止する手動遮断スイッチ444(図示せず)を含み得るものである。前記イネーブル信号発生装置400は、また、インバーター140、故障検知システム130あるいは他の装置といった、他の装置からの制御信号に応答し得るものである。
[0053]図2は、通常は太陽光発電の発電能力102に直列に接続されたスイッチ素子330が開放されるとともに、イネーブル信号310が検知されている間のみ前記スイッチ素子330が閉じられる、(「回路遮断装置」を示す)典型的具体例を描写したものである。
[0056]図4は、回路遮断の具体化に伴う前記遮断システムの動作のさらなる描写である。前記図は、例示されたストリング110´に沿った電圧について、遮断回路300がイネーブルとなった時(左側-図4A)と、非イネーブルとなった時(右側-図4B)とを比較する。前記例示のストリング110´は、最大電力電圧値が25Vで、無負荷電圧が35Vの12個のモジュール100´からなり、ストリング110´の負極側は接地電圧の0Vである。イネーブル信号310が存在する場合は(左側-図4A)、信号検出器320が常開スイッチ素子を閉じて(330´)モジュール100´はイネーブルとなる。ストリング110´の負極側から正極側までの電圧は加算されて、300Vまでの電圧が存在する。これに対して、イネーブル信号310が存在しない場合は(右側-図4B)、スイッチ素子は開放状態となり(330´´)、モジュール110´(審決注:100´の誤記)は非イネーブルとなる。電流は止められてストリング110´に沿って流れることができなくなり、モジュール100´間の配線は本質的に切断され、異なった2点間の最大電圧は前記無負荷電圧の35Vに制限される。さらに、電圧の危険はモジュール100´内に限定される。そのために、モジュール100´が非イネーブルとなると危険性は大きく減少する。加えて、直列と並列のアークは大概の状況で遮断される。)

(エ)図1、図2及び図4(Fig.1,Fig.2,Fig.4)は次のものである。


(オ)上記(ア)ないし(ウ)を踏まえて、上記(エ)の図2(Fig.2)を見ると、太陽光発電のモジュールの電気の出力を停止させる遮断システムは、複数の太陽光発電(PV)のモジュール100、前記モジュール100同士を直列接続する直流電力線、太陽光発電(PV)のストリング110、インバーター140、インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する直流電力線105、インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する直流電力線105、故障検知及び遮断システム130及び太陽光発電の発電能力102に直列に接続されたスイッチ素子330を含む遮断回路300からなるものであること、及び、前記遮断回路300の1つは、一方の前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線と他方の前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線の間に設けられていることがみてとれる。

(カ)ここで、上記ア(イ)に「一般に、電気システムの中のアーク故障はいくつかのタイプがあり得る。通常の電流の流れが故障あるいは誤った相互接続のために遮られるときに直列アークが起こり、他方、電気的絶縁の故障のため回路の一部が短絡したときに並列アークが起こる。」と記載されているとおり、アーク故障として、直列アークと並列アークが周知であったとされている。
さらに、上記ア(ウ)の[0027]には「コントローラー360(図示せず)は、モジュール100とともにアーク故障または接地故障を検知することができるとともに、コントローラー360は、検知された故障から保護するためにスイッチ素子330にモジュール100の電力出力を停止させることができる。」と記載され、[0056]に、「前記図は、例示されたストリング110´に沿った電圧について、遮断回路300がイネーブルとなった時(左側-図4A)と、非イネーブルとなった時(右側-図4B)とを比較する。前記例示のストリング110´は、最大電力電圧値が25Vで、無負荷電圧が35Vの12個のモジュール100´からなり、ストリング110´の負極側は接地電圧の0Vである。イネーブル信号310が存在する場合は(左側-図4A)、信号検出器320が常開スイッチ素子を閉じて(330´)モジュール100´はイネーブルとなる。ストリング110´の負極側から正極側までの電圧は加算されて、300Vまでの電圧が存在する。これに対して、イネーブル信号310が存在しない場合は(右側-図4B)、スイッチ素子は開放状態となり(330´´)、モジュール110´(審決注:100´の誤記)は非イネーブルとなる。電流は止められてストリング110´に沿って流れることができなくなり、モジュール100´間の配線は本質的に切断され、異なった2点間の最大電圧は前記無負荷電圧の35Vに制限される。さらに、電圧の危険はモジュール100´内に限定される。そのために、モジュール100´が非イネーブルとなると危険性は大きく減少する。加えて、直列と並列のアークは大概の状況で遮断される。」と記載されている。
したがって、アーク故障または接地故障を検知することができるコントローラー360は、アーク故障として、直列アークと並列アークを検知し消弧するものであるといえる。
また、ストリング110´上の2点間の電圧を最大300Vから最大35Vに下げることで直列と並列のアークを遮断することができるとされる。

(キ)引用発明
上記(ア)ないし(カ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数の太陽光発電の発電能力102、前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線、太陽光発電のストリング110、インバーター140、インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する直流電力線105、インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する直流電力線105、故障検知及び遮断システム130及び太陽光発電の発電能力102に直列に接続されたスイッチ素子330を含む遮断回路300からなり、
前記遮断回路300の1つは、一方の前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線と他方の前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線の間に設けられ、
前記システムは、それぞれが一つのモジュール100の電気出力を停止させることができる個別の遮断回路300と、前記遮断回路300に、それぞれが関連したモジュール100からの電気出力を可能にするような信号を送る1つ以上のイネーブル信号発生装置400とからなり、
アーク検知電気回路は前記故障検知及び遮断システム130として示され、
前記遮断回路300は、イネーブル信号310が停止すると、前記遮断回路300が、前記モジュール100の電力を停止させ安全な状態に戻すよう設計され、
コントローラー360は、モジュール100とともにアーク故障または接地故障を検知することができるとともに、検知された故障から保護するためにスイッチ素子330にモジュール100の電力出力を停止させることができ、
アーク故障または接地故障を検知することができる前記コントローラー360は、アーク故障として、直列アークと並列アークを検知し消弧するものであり、
前記イネーブル信号発生装置400は、前記太陽光発電アレイから前記イネーブル信号310を除去して、前記アレイを停止させる遮断スイッチ444からなり、
前記アレイの、インバーター140、前記故障検知及び遮断システム130あるいは他の装置といった他の装置からの制御信号に応答して、前記アレイを遮断し、
前記ストリング110上の2点間の電圧を最大300Vから最大35Vに下げることで直列と並列のアークを遮断することができ、
前記イネーブル信号発生装置400は、前記故障検知及び遮断システム130あるいは他の装置といった、他の装置からの制御信号に応答し得るものである、太陽光発電のモジュールの電気の出力を停止させる遮断システム。」

イ 原査定における拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3189106号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0020】
図2は、配線に直列接続を切り離すスイッチが設けられている太陽光発電ストリング110(太陽光発電システム)およびパワーコンディショナー本体120aを示すブロック図である。太陽光発電ストリング110は、複数の太陽光発電パネル111、接続線112およびスイッチ115を備えている。なお、接続線は、発電機能の直列接続を構成する線を指す。
【0021】
太陽光発電ストリング110は、複数の太陽光発電パネル111が接続線112により直列接続され、太陽光発電パネル111で太陽光エネルギーから変換された直流電圧を直列接続で高電圧にしパワーコンディショナー本体120aへ出力する。接続線112には、スイッチ115が設けられており、スイッチ115により、複数の太陽光発電パネル111による直列接続を切り離すことを可能にしている。
【0022】
操作部116aは、操作を受け付け、スイッチ115を制御するための制御信号を送出する。操作部116aが受け付けたON、OFFの操作が制御線116によりスイッチ115へ伝わることによりスイッチ115のON/OFFがなされる。これにより、火災の際、複数の太陽光発電パネル111の直列接続を切り離すことができ、放水による作業者の感電を防止できる。
【0023】
スイッチ115は、直列接続で累積された電圧が各区間で200V以下となるように複数の太陽光発電パネルによる直列接続を切り離す位置に設けられていることが好ましい。少なくとも家庭用電源の電圧より大きくならないように太陽光発電パネルによる直列接続を切り離すことで、火災の放水の際に人体に流れる電流を防止し、感電を防止できる。
【0024】
なお、スイッチ115は、直列接続で累積された電圧が各区間で100V以下となるように設けることがさらに好ましい。図2に示す例では、太陽光発電パネル111ごとにスイッチ115を設け、接続を切り離すことができるため、切り離された直列接続の各区間で累積された電圧は、数十V以下になる。
【0025】
スイッチ115は、太陽光発電パネル111の端子を接続する接続線112上に設けられ、接続線112に並列接続する制御線116が伝える信号により接続線112の切り離しおよび接続を行なう。これにより、外部からの制御で一度に複数個所の接続を切り離すことができ、操作を容易にすることができる。例えば、スイッチ115は、外部からの信号がHighLevelの時ONとなるように設計できる。なお、上記の例では、太陽光発電パネル111ごとに接続を切り離すスイッチ115を設けているが、複数の太陽光発電パネル111のストリングごとに設けてもよい。
・・・途中省略・・・
【0030】
太陽光セル117は光が当たっていれば、常に発電状態にある。このような状態では、火災等で太陽光発電ストリング110の一部、または、太陽光発電パネル111の一部の電極(活部)が露出した場合に、消火のための放水で、水を介して放水作業者が感電する。スイッチ115a?cを設けることで、上記のような事態を阻止し、太陽光発電ストリング110の出力電圧、または太陽光発電パネル111の水がかかりうる区間の出力電圧を低下させることができる。
【0031】
太陽光発電ストリング110は、通常、複数枚の太陽光発電パネル111を直列に接続して形成され、数百ボルトの電圧を発生させる。このような太陽光発電パネル111内部、または太陽光発電パネル111同士の接続部に、外部信号でON/OFFできるスイッチを設ける。
【0032】
その結果、太陽光発電パネル111単体、または、小規模の太陽光発電ストリング110(出力電圧が100V以下)に直列接続を切り離すことにより、太陽光発電ストリング110の出力電圧を低下させることができる。」

(3)対比・判断
ア 対比
(ア)本願補正発明と引用発明を対比すると、引用発明の「(複数の)太陽光発電の発電能力102」、「(前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する)直流電力線」、「太陽光発電のストリング110」、「インバーター140」、「『(インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する)直流電力線105』及び『(インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する)直流電力線105』」、「(アーク検知電気回路である)故障検知及び遮断システム130」、「(前記モジュール100の電力を停止させ安全な状態に戻すよう設計される)遮断回路300」及び「太陽光発電のモジュールの電気の出力を停止させる遮断システム」は、本願補正発明の「(複数の)太陽電池モジュール」、「(前記太陽電池モジュール同士を直列接続する)ストリング内接続部」、「太陽電池ストリング」、「負荷」、「『(前記負荷の一方の端子及び前記太陽電池ストリングの一方の端子を互いに接続する)第1接続部』及び『(前記負荷の他方の端子及び前記太陽電池ストリングの他方の端子を互いに接続する)第2接続部』」、「(アークの発生を検知する)アーク検知部」、「(前記複数の太陽電池モジュールから前記負荷への電力の供給を止める)切断部」及び「太陽光発電システム」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「遮断回路300」の1つは、「一方の前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線と他方の前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線の間に設けられ」、「それぞれが一つのモジュール100の電気出力を停止させることができる」ものであって、「複数の太陽光発電の発電能力102、前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線、太陽光発電のストリング110、インバーター140、インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する直流電力線105、インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する直流電力線105」で回路を構成するものであるから、太陽光発電のストリング110内における、一方の太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線と他方の太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線の間を電気的に切断することにより、前記太陽光発電のストリング110、インバーター140、インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する直流電力線105、インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する直流電力線とによって構成する回路を遮断するものであるといえる。
そうすると、引用発明の「一方の前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線と他方の前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線の間に設けられ」、「それぞれが一つのモジュール100の電気出力を停止させることができる」ものであって、「複数の太陽光発電の発電能力102、前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線、太陽光発電のストリング110、インバーター140、インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する直流電力線105、インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する直流電力線105」で回路を構成する「遮断回路300」の1つは、本願補正発明の「前記太陽電池ストリング内における前記ストリング内接続部を電気的に切断することにより、前記太陽電池ストリングと前記第1接続部と前記第2接続部と前記負荷とによって構成される回路を」「切断する、」「前記複数の太陽電池モジュールから前記負荷への電力の供給を止める」「切断部」に相当する。

(ウ)a 引用発明の「故障検知及び遮断システム130」は、「アーク検知電気回路」として機能し、「イネーブル信号発生装置400」は、「前記故障検知及び遮断システム130あるいは他の装置といった他の装置からの制御信号に応答して、前記アレイを遮断し」、「前記太陽光発電アレイから前記イネーブル信号310を除去して、前記アレイを停止させる遮断スイッチ444からなり」、「遮断回路300」は、「イネーブル信号310が停止すると、前記遮断回路300が、前記モジュール100の電力を停止させ安全な状態に戻すよう設計され」るから、引用発明の「遮断回路300」は、故障検知及び遮断システム130がアークを検知すると、太陽光発電の発電能力102を含むモジュール100の電力を停止させ、アークを消弧して安全な状態に戻すものであるといえる。

b さらに、アーク故障は、「複数の太陽光発電の発電能力102、前記太陽光発電の発電能力102同士を直列接続する直流電力線、太陽光発電のストリング110、インバーター140、インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する直流電力線105、インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する直流電力線105」のいずれかの箇所で発生することから、アーク故障の発生箇所として、「インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する直流電力線105、インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する直流電力線105」が含まれることは当然である。

c よって、引用発明の「前記故障検知及び遮断システム130あるいは他の装置といった他の装置からの制御信号に応答して、前記アレイを遮断し」、「前記太陽光発電アレイから前記イネーブル信号310を除去して、前記アレイを停止させる遮断スイッチ444からな」る「アーク検知電気回路」である「イネーブル信号発生装置400」、及び、「イネーブル信号310が停止すると、前記遮断回路300が、前記モジュール100の電力を停止させ安全な状態に戻すよう設計され」る「遮断回路300」は、直列アークと並列アークを検知する「アーク検知電気回路」及び、「インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する直流電力線105、インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する直流電力線105」を含む箇所で発生する直列アークと並列アークを消弧するために遮断する「遮断回路300」といえるから、本願補正発明の「前記第1接続部及び前記第2接続部を含むアーク発生対象接続部に発生する直列アーク及び並列アークを消弧するために切断する」「切断部」に相当すると認められる。

イ 一致点及び相違点
上記ア(ア)ないし(ウ)によれば、本願補正発明と引用発明は、
「複数の太陽電池モジュール、及び前記太陽電池モジュール同士を直列接続するストリング内接続部を有し、発生した電力を負荷に供給する太陽電池ストリングと、
前記負荷の一方の端子及び前記太陽電池ストリングの一方の端子を互いに接続する第1接続部と、
前記負荷の他方の端子及び前記太陽電池ストリングの他方の端子を互いに接続する第2接続部と、
を備える太陽光発電システムであって、
前記太陽光発電システム内におけるアークの発生を検知するアーク検知部と、
前記アーク検知部が前記アークの発生を検知した際、前記太陽電池ストリング内における前記ストリング内接続部を電気的に切断することにより、前記太陽電池ストリングと前記第1接続部と前記第2接続部と前記負荷とによって構成される回路を、前記第1接続部及び前記第2接続部を含むアーク発生対象接続部に発生する直列アーク及び並列アークを消弧するために切断する、前記複数の太陽電池モジュールから前記負荷への電力の供給を止める切断部と、
を備える太陽光発電システム。」
である点で一致し、下記点で相違する。

・相違点
本願補正発明の「切断部」は、「1つ以上であって前記複数の太陽電池モジュール毎に設けられていない」のに対して、引用発明の「遮断回路300」は、太陽光発電の発電能力102毎に設けられている点(以下「相違点」という。)。

ウ 判断
上記相違点について検討する。
a 上記ア(ウ)で検討したとおり、引用発明の「遮断回路300」は、直列アークと並列アークを検知する「アーク検知電気回路」及び、「インバータ140の一方の端子と前記ストリング110の一方の端子を互いに接続する直流電力線105、インバータ140の他方の端子と前記ストリング110の他方の端子を互いに接続する直流電力線105」を含む箇所で発生する直列アークと並列アークを消弧するために遮断する「遮断回路300」といえる。

b そして、太陽光発電パネルの電圧を下げる点に関して、引用文献2には、「複数の太陽光発電パネルによる直列接続を切り離す位置に設けられていることが好ましい」及び「太陽光発電パネル111ごとに接続を切り離すスイッチ115を設けているが、複数の太陽光発電パネル111のストリングごとに設けてもよい」と記載されている。

c そうすると、引用発明は、異なった2点間の最大電圧を35Vに制限することでアークを遮断しているものの、発電能力102の無負荷電圧が35Vよりも小さければ、発電能力102毎に遮断回路300を設ける必要がないことは明らかである。一方、発電能力102の無負荷電圧が35Vより小さいものは周知であって、しかも、複数の発電能力102(太陽光発電パネル)毎に遮断回路300を設けることは、引用文献2に見られるように周知であるから、上記bの引用文献2の記載に接した当業者が、遮断システムによって電圧を下げるという課題を解決するために、引用発明の「遮断回路300」を、モジュール100ごとに設ける構成にかえて、モジュール100のストリング110ごとに設ける構成となして、電圧を下げてアークを消弧して安全な状態に戻すものとなすことにより、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのむすび
上記3の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成26年10月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、[理由]1において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明
上記第2、[理由]3(2)アのとおりである。

3 対比・判断
上記「第2、[理由]2 補正の目的」のとおり、本件補正は、補正前の請求項1において、「切断部」に係り、「切断」に関して「前記第1接続部及び前記第2接続部を含むアーク発生対象接続部に発生する直列アーク及び並列アークを消弧するために」、及び、「1つ以上であって前記複数の太陽電池モジュール毎に設けられていない、前記複数の太陽電池モジュールから前記負荷への電力の供給を止める」との限定を付加するものである。
したがって、本願発明は、上記「第2、[理由] 3」で検討した本願補正発明を特定するための事項である、「切断部」に係り、「切断」に関して「前記第1接続部及び前記第2接続部を含むアーク発生対象接続部に発生する直列アーク及び並列アークを消弧するために」、及び、「1つ以上であって前記複数の太陽電池モジュール毎に設けられていない、前記複数の太陽電池モジュールから前記負荷への電力の供給を止める」との限定を省いたものである。
これに対して、上記「第2、[理由]3(3)イ」で検討したとおり、引用発明は、上記限定のうち、「1つ以上であって前記複数の太陽電池モジュール毎に設けられていない」との限定を省いた本願補正発明の構成をすべて備えている。
そうすると、引用発明は、本願発明の構成もすべて備えていると認められる。
よって、本願発明は、引用発明である。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-20 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-08 
出願番号 特願2014-141699(P2014-141699)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02S)
P 1 8・ 113- Z (H02S)
P 1 8・ 575- Z (H02S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河村 麻梨子門 良成井上 徹  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 川端 修
松川 直樹
発明の名称 太陽光発電システム  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 池田 正人  
代理人 平野 裕之  
代理人 城戸 博兒  
代理人 荒井 寿王  

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