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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1312841
審判番号 不服2015-7018  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-14 
確定日 2016-03-24 
事件の表示 特願2010-185369「情報処理装置、情報処理システム、および情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月 1日出願公開、特開2012- 43288〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年8月20日の出願であって、平成26年6月6日付けで拒絶理由が通知され、平成26年8月8日付けで手続補正されたが、平成27年1月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年4月14日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年4月14日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数のアプリケーションから選択的に所定のアプリケーションを実行する情報処理装置であって、
前記情報処理装置が位置している場所の環境の状態を検出する検出部と、
前記検出部が検出した環境の状態を示す検出データを記憶する第1記憶部と、
前記アプリケーションを実行するアプリケーション実行部と、
前記アプリケーション実行部に電力が供給されて前記アプリケーションが実行可能な通常モードと少なくとも前記アプリケーション実行部への電力供給が制限されて前記アプリケーションが実行できない省電力モードとを少なくとも切り替える動作モード切替部と、
少なくとも前記省電力モード、および、前記アプリケーション実行部が前記通常モードにおいて前記複数のアプリケーションのうち前記検出データを利用しないアプリケーションの実行中において、前記検出部に環境の状態を検出させ、当該検出された環境の状態を示す前記検出データを所定の時間間隔毎に前記第1記憶部に記憶する検出データ制御部とを備え、
前記検出データ制御部は、前記アプリケーション実行部が出力するデータ要求を受信することに応じて、前記検出データを前記アプリケーション実行部に出力する、情報処理装置。」
と補正された。
本件補正のうちの上記請求項1についての補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「検出データ制御部」について「前記アプリケーション実行部が出力するデータ要求を受信することに応じて、前記検出データを前記アプリケーション実行部に出力する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-117424号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の(a)ないし(f)のとおりの記載がある。

(a)「【0028】
図1に示される情報処理装置は、例えば、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)、或いは小型のパーソナルコンピュータなどの携帯型の装置(またはその一部)である。
【0029】
MCU(Micro Controller Unit)1は、例えば、予め用意されるアプリケーションを内部のRAM(Random Access Memory)に展開し、情報処理装置の全体の動作を制御する1チップのマイクロコンピュータである。」

(b)「【0034】
このような構成を有する情報処理装置においては、消費電力を抑えるために、センサ3に対する電源Vccの供給、およびMCU1自体の状態が制御される。
【0035】
図2は、MCU1とセンサ3の状態遷移の例を示す図である。
【0036】
図2に示されるように、MCU1の状態には、Run状態とSleep状態とがあり、MCU1は、その2つの状態を繰り返すようになっている。すなわち、間欠的な動作が行われる。
【0037】
ここで、Run状態とは、用意されるタスクを実行し、センサ3に対する電源Vccの供給の制御などを行う状態をいう。
【0038】
また、Sleep状態とは、Run状態のときより消費電力が少ない状態をいう。Sleep状態のときには、Run状態のときに設定したタイマによる割り込みによって、Run状態に復帰する。
【0039】
なお、Sleep状態は、MCU1が実行するOS(Operating System)の種類によってその意味が異なり、次の2つが含まれる。
【0040】
例えば、MCU1が実行するOSが非リアルタイムOSの場合、Sleep状態は、クロックの速度を落とすなどして、必要最小限の入出力管理のみを除いてプログラムの実行を停止させる状態を意味する。
【0041】
また、MCU1が実行するOSが、あるイベントが発生したとき、決められた時間内にイベントハンドラが起動されることを保証するリアルタイムOSの場合、Sleep状態は、実行中の1つのタスクの中断を意味する。従って、この場合、Sleep状態からの復帰はタスクのWake処理を意味する。
【0042】
リアルタイムOSが用いられる場合、1つのタスクが中断された結果、他のタスクが実行可能な状態となり、最も優先度の低いタスクに、非リアルタイムOSの場合と同様のSleep状態に遷移することを指示するコードが記述されていることによって、実行すべきタスクがないときに、そのSleep状態への遷移が行われることになる。」

(c)「【0228】
以上においては、例えば、センサとともにMCU1を間欠動作させるとしたが、MCU1が、外部のRAMにプログラムを展開し、RAMなどが内蔵された1チップのユニットに較べて、そのプログラムを高速に実行することができるような高性能なユニットである場合、MCU1のクロックの速度と、RAMのクロックの速度が異なり、双方のクロックを安定させるまでに時間が掛かることなどから、Run状態とSleep状態の切り替えを高速に行わせることができない。
【0229】
また、そのような高性能なMCU1は、RAMなどが内蔵された1チップのユニットに較べて消費電力が多いため、高性能なMCU1をセンサとともに間欠動作させ、サンプリングを行うためだけにSleep状態から起動させることは、省電力化という観点からは好ましくない。
【0230】
従って、センサの出力のサンプリングを行う例えば1チップのユニットを、高性能なMCUとは別に情報処理装置に用意するようにしてもよい。
【0231】
図19は、本発明を適用した情報処理装置のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【0232】
図19の情報処理装置には、Main MCU81とSub MCU82が設けられている。
【0233】
Main MCU81は、外部に設けられているROMに記憶されているプログラムを外部のRAMに展開し、それを実行する。また、Main MCU81は、センサ3の出力のサンプリング結果を所定のタイミングでSub MCU82から取得し、サンプリング結果を用いて所定の処理を行う。
【0234】
Sub MCU82は、例えば、RAMなどが内蔵された1チップのユニットである。Sub MCU82は、Main MCU81に較べてRun状態とSleep状態の切り替えを高速に行うことができるとともに、その消費電力も少ない。Sub MCU82は、基本的に、図1のMCU1と同様の機能を有している。
【0235】
すなわち、Sub MCU82は、センサ3とともに間欠動作を行い、GPO端子91から出力する信号によりFET2のOn/Offを切り替えることでセンサ3に対する電源Vccの供給を制御するとともに、センサ3からGPI端子12に供給される信号のサンプリングを行う。
【0236】
Sub MCU82によるサンプリングの結果はバッファ93に保存され、繰り返し行われるサンプリングにより、所定の量のサンプリング結果が格納されたとき、格納されているサンプリング結果が、バスを介してSub MCU82からMain MCU81にまとめて供給される。
【0237】
これにより、Main MCU81は、センサ3の出力のサンプリングを行う毎にSleep状態から復帰する必要はなく、Sub MCU82から供給される、ある程度の量のまとまったサンプリング結果を取得する場合にのみ復帰すればよいことになる。Main MCU81は、消費電力がSub MCU82より多く、そのような消費電力の多いユニットの動作時間を短縮させることで、装置全体としての消費電力を抑えることができる。」

(d)「【0239】
ここで、図20乃至図22のフローチャートを参照して、図19のSub MCU82の処理について説明する。この例においては、図12に示されるような複数のセンサがSub MCU82に接続されているものとする。また、Sub MCU82は、図14の各構成を有しているものとする。」

(e)「【0250】
サンプリング部24は、ステップS210において、GPSモジュール51の出力のサンプリング(測位)を行い、ステップS211に進み、測位結果を表すデータをバッファ93(図19)に格納する。情報処理装置が屋外に持ち出されている場合、図20の処理が繰り返されることで、測位結果の履歴を表すデータがバッファ93に格納されることになる。
【0251】
ステップS212において、サンプリング部24は、バッファ93にある程度のデータ(サンプリング結果)が貯まったか否かを判定し、ある程度のデータが貯まっていないと判定した場合、処理を終了させる。その後、所定の周期で図20の処理が繰り返される。
【0252】
サンプリング部24は、ステップS212において、バッファ93にある程度のデータが貯まったと判定した場合、ステップS213に進み、Main MCU81に対して、バッファ93に格納されているデータの取得を要求して処理を終了させる。この要求に応じて、Main MCU81はSleep状態から復帰し、バッファ93に格納されているデータをバスを介して取得する(図24のステップS234)。」

(f)「【0279】
ステップS231において、Sleep状態にあるMain MCU81は、Sub MCU82からの通知(例えば、図20のステップS203,S208の通知、ステップS213の要求)があったとき、それを受信する。
【0280】
Main MCU81は、ステップS232において、受信した通知がサンプリング結果を取得することの要求(図20のステップS213の要求)であるか否かを判定し、その通知ではないと判定した場合、処理を終了させる。
【0281】
一方、Main MCU81は、ステップS232において、受信した通知がサンプリング結果を取得することの要求であると判定した場合、ステップS233に進み、Sleep状態から復帰する。
【0282】
Sleep状態から復帰した後、ステップS234において、Main MCU81は、Sub MCU82のバッファ93に格納されているサンプリング結果を表すデータをバスを介して取得し、サンプリング結果に基づく所定の処理を行う。
【0283】
以上のように、センサの出力のサンプリングを消費電力の少ないSub MCU82に行わせ、情報処理装置がおかれている状況に基づいてセンサに対する電源Vccの供給を制御させるとともに、ある程度の量のサンプリング結果をまとめてMain MCU81に提供させることで、状況に応じたセンサの動作と、消費電力の多いMain MCU81の動作時間を短縮させることが可能となり、装置全体の消費電力を抑えることができる。」

ここで、上記摘記事項(a),(c)によれば、引用例1には、「アプリケーションを実行する情報処理装置であって、アプリケーションを実行するメインMCUを備えた情報処理装置。」が記載されているといえる。
また、上記摘記事項(b),(c)によれば、引用例1のメインMCUは、Run状態では、プログラムを実行可能な状態であり、Sleep状態では、必用最小限の入出力管理を除いてプログラムの実行を停止させた消費電力の少ない状態である。そして、プログラムが実行可能であればアプリケーションも実行可能であり、プログラムの実行が停止されていれば、アプリケーションも実行できないから、引用例1の情報処理装置は、メインMCUを、アプリケーションを実行可能なRun状態と、消費電力の少ないアプリケーションを実行できないSleep状態とに切り替えるものであるといえる。
また、図12,上記摘記事項(d)によれば、引用例1の情報処理装置はGPSモジュールを備えている。
また、上記摘記事項(d),(e)によれば、引用例1の情報処理装置は、GPSモジュールによりサンプリングしたサンプリング結果をバッファに保存するサブMCUを有し、上記摘記事項(e)によれば、図20の動作は所定の周期で繰り返されるから、サンプリング結果のバッファへの保存は、所定の周期で行われるといえる。
また、上記摘記事項(e)によれば、サブMCUは、少なくともメインMCUがSleep状態のときにセンサの出力のサンプリングをしているといえる。
また、上記摘記事項(c),(e),(f)によれば、引用例1の情報処理装置のサブMCUは、バッファにある程度のデータが貯まったと判断した場合、メインMCUに対して、バッファに格納されているサンプリング結果の取得を要求し、メインMCUは、受信した要求がサンプリング結果の取得の要求である場合に、Sleep状態から復帰してバッファに格納されているサンプリング結果を表すデータを取得するものであるといえる。

したがって、引用例1には、
「アプリケーションを実行する情報処理装置であって、
GPSモジュールと、
前記GPSモジュールによりサンプリングしたサンプリング結果を保存するバッファと、
前記アプリケーションを実行するメインMCUと、
ここで、前記メインMCUは、アプリケーションを実行可能なRun状態と、消費電力の少ないアプリケーションを実行できないSleep状態とを切り替え可能なものであり、
少なくともメインMCUがSleep状態において、前記GPSモジュールによりサンプリングしたサンプリング結果を所定の周期でバッファに保存するサブMCUとを備え、
前記サブMCUは、前記メインMCUにデータ取得を要求し、前記メインMCUは、データ取得の要求に応じて、前記サンプリング結果を前記バッファから取得する、情報処理装置。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、まず、本願補正発明と引用例1発明とは、「アプリケーションを実行する情報処理装置」である点で一致し、引用例1発明のメインMCUは、アプリケーションを実行するものであるから、本願補正発明と引用例1発明とは、「アプリケーションを実行するアプリケーション実行部」を有している点で一致する。
また、引用例1発明の「GPSモジュール」は、情報処理装置の位置を検出するものであるから、引用例1発明の「GPSモジュール」と本願補正発明の「情報処理装置が位置している場所の環境の状態を検出する検出部」とは、「検出部」である点で共通する。
また、本願補正発明の「検出部が検出した環境の状態を示す検出データを記憶する第1記憶部」と引用例1発明の「GPSモジュールによりサンプリングしたサンプリング結果を保存するバッファ」とは、「検出部が検出した検出データを記憶する第1記憶部」である点で共通する。
また、引用例1発明の「Run状態」、「Sleep状態」は、それぞれ、本願補正発明の「通常モード」、「省電力モード」に相当することは明らかであり、引用例1発明において、メインMCUをRun状態とSleep状態とに切り替え可能であるから、本願補正発明における「動作モード切替部」に相当する構成を有しているといえる。
また、本願補正発明の「少なくとも前記省電力モード、および、前記アプリケーション実行部が前記通常モードにおいて前記複数のアプリケーションのうち前記検出データを利用しないアプリケーションの実行中において、前記検出部に環境の状態を検出させ、当該検出された環境の状態を示す前記検出データを所定の時間間隔毎に前記第1記憶部に記憶する検出データ制御部」と引用例1発明の「少なくともメインMCUがSleep状態において、GPSモジュールによりサンプリングしたサンプリング結果を所定の周期でバッファに保存するサブMCU」とは、いずれも「少なくとも前記省電力モードにおいて、前記検出部に検出させ、当該検出された検出データを所定の時間間隔毎に第1記憶部に記憶する検出データ制御部」という点で共通する。
また、引用例1発明において、サブMCUは、メインMCUにバッファからサンプリング結果を出力しているから、本願補正発明の「前記検出データ制御部は、前記アプリケーション実行部が出力するデータ要求を受信することに応じて、前記検出データを前記アプリケーション実行部に出力する」構成と引用例1発明の「前記サブMCUは、前記メインMCUにデータ取得を要求し、前記メインMCUは、データ取得の要求に応じて、前記サンプリング結果を前記バッファから取得する」構成とは、いずれも「前記検出データ制御部は、前記検出データを前記アプリケーション実行部に出力する」という点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用例1発明とは、
「アプリケーションを実行する情報処理装置であって、
検出部と、
前記検出部が検出した検出データを記憶する第1記憶部と、
前記アプリケーションを実行するアプリケーション実行部と、
前記アプリケーション実行部に電力が供給されて前記アプリケーションが実行可能な通常モードと少なくとも前記アプリケーション実行部への電力供給が制限されて前記アプリケーションが実行できない省電力モードとを少なくとも切り替える動作モード切替部と、
少なくとも前記省電力モードにおいて、前記検出部に検出させ、当該検出された前記検出データを所定の時間間隔毎に前記第1記憶部に記憶する検出データ制御部とを備え、
前記検出データ制御部は、前記検出データを前記アプリケーション実行部に出力する、情報処理装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、複数のアプリケーションから選択的に所定のアプリケーションを実行するものであるのに対し、引用例1発明はそのようものとはされていない点。
[相違点2]
検出部が、本願補正発明では情報処理装置が位置している場所の環境の状態を検出する検出部であるのに対し、引用例1発明では情報処理装置の位置を検出するGPSモジュールである点。
[相違点3]
検出データ制御部による検出部に検出させ、当該検出された検出データを所定の時間間隔毎に第1記憶部に記憶する処理が、本願補正発明では、省電力モードにおいてのみでなく、アプリケーション実行部が通常モードにおいて複数のアプリケーションのうち検出データを利用しないアプリケーションの実行中においても行われるのに対し、引用例1発明はそのようには構成されていない点。
[相違点4]
検出データ制御部による検出データのアプリケーション実行部への出力の契機が、本願補正発明では、検索データ制御部がアプリケーション実行部の出力したデータ要求を受信したときであるのに対して、引用例1発明では、サブMCUがメインMCUへ取得要求をしたときである点。

4.判断
[相違点1]について
引用例1の上記摘記事項(a)によれば、引用例1発明の「情報処理装置」は、携帯電話機、PDA、小型のパーソナルコンピュータなどの携帯型の装置であり得、これらの装置においては、アプリケーションを複数有し、選択的に所定のアプリケーションが実行されることは普通のことである。
したがって、引用例1発明を携帯電話機、PDA、小型のパーソナルコンピュータなどとして、複数のアプリケーションから選択的に所定のアプリケーションを実行するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2]について
引用例1の図12、上記摘記事項(d)によれば、引用例1の情報処理装置は、情報処理装置が位置している場所の環境の状態を検出する検出部といえる湿度センサ、照度センサ、紫外線センサを有しており、これらのセンサの検出データをGPSモジュールからのデータと同様の態様(検出データを所定時間毎に第1記憶部に記憶させる態様)で使うか否かは、情報処理装置のアプリケーションがセンサの検出データをどのように利用するかに応じて当業者が適宜決定すべき事項である。
そして、引用例1発明においても、湿度センサ、照度センサ、紫外線センサ等の検出データをGPSモジュールからのデータと同様の態様で利用するアプリケーションは容易に想定されるので、引用例1発明の検出部(検出データが第1記憶部に記憶される検出部)を、GPSモジュールに代えて、あるいは、GPSモジュールに加えて、情報処理装置が位置している場所の環境の状態を検出するものとすることは当業者が容易になし得たことである。

[相違点3]について
引用例1の上記摘記事項(c)によれば、引用例1発明において、メインMCUはアプリケーションの実行を担い、サブMCUはセンサ出力のサンプリングを担うものであり、メインMCUは、サブMCUの動作とは関係なく、アプリケーションの実行を行うものであるから、Run状態において複数のアプリケーションのうちセンサのサンプリング結果を利用しないアプリケーションの実行中においても、サブMCUがセンサ(GPSモジュール)によりサンプリングしたサンプリング結果を所定の周期でバッファに保存する構成とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。

[相違点4]について
一般に2つの装置間でデータを伝送する際、データを送信する側が最初に要求を出すようにするか、データを受信する側が最初に要求を出すようにするかは、両装置の機能や適用場面に応じて、当業者が適宜決定すべき事項である。
そして、引用例1発明においても、データを受信する側であるメインMCUの側から最初に要求を出すのが適する場面は容易に想定される。例えば、何らかのイベントに応じてメインMCUがRun状態に復帰し、検出データを処理する処理を実行しようとする場合などである。以上の事情に照らせば、引用例1発明における「サブMCUがメインMCUへ取得要求したとき」という契機に代えて、あるいはそれに加えて「メインMCUからのデータ要求を受信したとき」をデータ出力の契機とすることは当業者が容易に推考し得たことというべきである。
以上のことは、引用例1発明において相違点4に係る本願補正発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったことを意味している。

以上判断したとおり、本願補正発明における上記相違点1ないし4に係る構成はいずれも当業者が容易に想到し得たものであり、また、各相違点を総合しても本願補正発明は当業者が想到することが困難なものとはいえない。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成27年4月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成26年8月8日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数のアプリケーションから選択的に所定のアプリケーションを実行する情報処理装置であって、
前記情報処理装置が位置している場所の環境の状態を検出する検出部と、
前記検出部が検出した環境の状態を示す検出データを記憶する第1記憶部と、
前記アプリケーションを実行するアプリケーション実行部と、
前記アプリケーション実行部に電力が供給されて前記アプリケーションが実行可能な通常モードと少なくとも前記アプリケーション実行部への電力供給が制限されて前記アプリケーションが実行できない省電力モードとを少なくとも切り替える動作モード切替部と、
少なくとも前記省電力モード、および、前記アプリケーション実行部が前記通常モードにおいて前記複数のアプリケーションのうち前記検出データを利用しないアプリケーションの実行中において、前記検出部に環境の状態を検出させ、当該検出された環境の状態を示す前記検出データを所定の時間間隔毎に前記第1記憶部に記憶する検出データ制御部とを備える、情報処理装置。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、および、その記載事項は、前記「第2」の「2.」の欄に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「検出データ制御部」の限定事項である「前記アプリケーション実行部が出力するデータ要求を受信することに応じて、前記検出データを前記アプリケーション実行部に出力する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「4.」に記載したとおり、引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-25 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-08 
出願番号 特願2010-185369(P2010-185369)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 緑川 隆脇水 佳弘  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 高瀬 勤
稲葉 和生
発明の名称 情報処理装置、情報処理システム、および情報処理方法  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  
代理人 石原 盛規  

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