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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1312847
審判番号 不服2015-12155  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-26 
確定日 2016-03-24 
事件の表示 特願2011-196416「電子素子実装方法、及び電子基板」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日出願公開、特開2013- 58635〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月8日の出願であって、平成26年9月26日付けの拒絶理由通知に対して、同年11月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年4月22日付け(発送日:同年4月28日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成27年6月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年6月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成27年6月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
基板上に所定の電子素子を実装する電子素子実装方法であって、
前記所定の電子素子が設けられる領域近傍に銅箔領域を形成するステップと、
前記銅箔領域に複数の貫通孔を形成するステップと、
前記基板の銅箔領域を加熱し前記所定の電子素子の半田を溶融させるステップと、
を含み、
前記銅箔領域は、所定の電子素子周辺に分散して複数形成されており、
前記所定の電子素子は、熱容量の大きい大型素子である、ことを特徴とする電子素子実装方法。」を、
補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
基板上に所定の電子素子を実装する電子素子実装方法であって、
前記所定の電子素子が設けられる領域近傍に銅箔領域を形成するステップと、
前記銅箔領域に複数の貫通孔を形成するステップと、
前記基板の銅箔領域を加熱し前記所定の電子素子の半田を溶融させるステップと、
を含み、
前記銅箔領域は、所定の電子素子周辺に分散して複数形成されており、
前記所定の電子素子は、熱容量の大きい大型素子であり、
前記貫通孔の直径は略0.4mm以上であり、
前記複数の貫通孔は、前記基板の銅箔領域に略2.0?2.5mmの等間隔で形成されている、ことを特徴とする電子素子実装方法。」
と補正するものである。
なお、下線は補正箇所であり、請求人が付したとおりである。

本件補正は、発明を特定するために必要な事項である「貫通孔」につき「貫通孔の直径は略0.4mm以上」であること及び「複数の貫通孔は、基板の銅箔領域に略2.0?2.5mmの等間隔で形成されている」ことを限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項(下線は当審で付与したものである。)
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2007-299816号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「電子部品実装基板及び電子部品実装基板の製造方法」に関して、図面(特に、【図1】及び【図2】参照)とともに、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与したものである。

(ア)「【0006】
上記課題を解決するために、本発明にて講じた技術的手段は、請求項1に記載の様に、絶縁体から成るベース基板と、該ベース基板における一方の面に設けられ、導電層から成る第1パターンと、前記第1パターンに設けられ、半田が塗布されたランドと、前記ベース基板における他方の面に設けられ、導電層から成る第2パターンと、前記第1パターン及び前記第2パターンを、スルーホールを介して貫通させた電子部品実装基板であって、前記スルーホールは、前記ランドの外側に複数設けられている。この場合、ランドは実装される電子部品が所望の位置にて確実に設置できるように、円形もしくは長方形形状となっている。この場合には、ランドの近傍(ランドの端から1?3mm程度、より好ましくは2mm)において、第1パターンの領域内でベース基板の熱伝達特性を考慮して規則的な位置に等間隔で複数設けられていることが好ましい。
【0007】
前記スルーホールは、前記ランドの周囲に形成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明にて講じた技術的手段は、請求項3に記載の様に、ベース基板と、該ベース基板の一方の面に設けられ導電層からなる第1パターンと、他方の面に設けられ導電層からなる第2パターンと、前記第1パターンに設けられたランドとを備える絶縁性の回路基板に、半田付けにより電子部品を実装する電子部品実装基板の製造方法において、前記ベース基板、前記第1パターン及び前記第2パターンを前記ランドの外側に設けられたスルーホールを介して貫通した前記回路基板を用いて、前記ランドに半田を塗布する塗布工程と、前記ランドに前記電子部品を設置する設置工程と、前記電子部品が設置された前記回路基板の両側から加熱することにより、前記他方の面に与えた熱を前記スルーホールを介して前記ランドへ伝達させる加熱工程とを備える。
【0009】
前記加熱工程は、前記回路基板の一方の面からの加熱より前記回路基板の他方の面からの加熱を強くしたものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子部品実装基板及び電子部品実装基板の製造方法によれば、前記第1パターン及び前記第2パターンを、スルーホールを介して貫通させたため、半田溶融時において基板を加熱したとき、ランド上の半田に第1パターンから熱が供給されるだけでなく、第2パターンからもスルーホールを介してランド上の半田に熱が供給される。また、ランドの外側にスルーホールが複数形成されているため、半田に十分な熱が供給される。よって、本発明によれば、半田付けが確実になされ、半田付け不良を防止できる。上記構成により、また、電子部品の耐熱性を考慮して回路基板の加熱が抑えられても、ランドには十分な熱が供給され半田付けが確実になされる。」

(イ)「【0013】
電子部品実装基板1は、回路基板2と、半田8を介して設置された電子部品7とを備えている。回路基板2は、ベース基板15と、パターン(第1パターン)3と、パターン(第2パターン)4と、ランド5と、スルーホール6とを備えている。ベース基板15は、絶縁体(ベークライト、エポキシ樹脂等)から成る板状のものである。パターン3は、ベース基板15の表面15aに設けられ、銀箔、銅箔などの導電層から成る。パターン4は、ベース基板15の裏面15bに設けられ、銅箔、銀箔などの導電層から成る。パターン4は、電気的に独立している(電子部品等に接続されない)。パターン3とパターン4は、公知のエッチングにより形成される。ランド5は、パターン3の電子部品7が搭載される所望の位置に形成され、電子部品7(抵抗、コイル、リレー、コンデンサ、IC等)が半田付けされる部分である。ランド5は電子部品のリードまたは端子形状に合わせて円形もしくは長方形形状を呈しており、パターン3の一部分でありパターン3と一体に設けられている。ランド5には、クリーム半田(鉛フリー半田)が塗布され半田層8が形成される。電子部品7は、その端子部7aにて、半田8層上に設置される。スルーホール6は、回路基板2の厚み方向(図1示上下方向)に関して、パターン3、ベース基板15、及びパターン4を貫通している。スルーホール6は、ランド5の外側(ランド5の端から1?3mmほどの位置、より好ましくは、2mm)に複数設けられている。この場合、ランド5の領域内に複数設けることも可能である。スルーホール6は、図1に示す様に、ランド5の周囲に複数設けられている(同図においては、一部のものにだけ符番を付す)。スルーホール6の内面には、パターン3とパターン4とを接続すべく銅メッキ、銀メッキなど導電層が施されている。
【0014】
次に、電子部品実装基板の製造方法について説明する。
【0015】
製造方法は、上述した複数のスルーホール6を有する回路基板2を準備する工程と、回路基板に半田を塗布する半田塗布工程と、電子部品を設置する設置工程と、半田を溶融させる加熱工程とを備えている。
【0016】
図3は、電子部品7を、半田層を介して設置した回路基板2の加熱を行うための加熱装置10の概略図である。加熱装置10は、回路基板2の製造ラインの一部に組みこまれている。回路基板2は、クリーム半田の塗布と電子部品7の取り付けを終えた後(図1参照)、加熱装置10に投入される。加熱装置10には、コンベア11と、ヒータ12とが設けられる。コンベア11は、回路基板2を所定の方向(図3示P方向)に搬送するためのものである。ヒータ12は、コンベア11に対して、上方および下方に配置されている。ヒータ12は、電子部品を設置した回路基板2の搬送方向Pに沿って配備されている。ヒータ12としては、例えば赤外線パネルヒータの適用が可能である。ヒータ12は、コンベア11で搬送される電子部品7を設置した回路基板2を熱風によって加熱する。これにより、回路基板2の所定部位(ランド5)に塗布された半田層8が溶融し、電子部品7が回路基板2に半田付けされる。また、回路基板2の加熱工程は、回路基板2の上面側からの加熱より下面側からの加熱(加熱量、加熱温度、加熱時間)が強いものであってもよい。このようなものであれば、電子部品を強く加熱することなく、半田を確実に溶融させることができる。
【0017】
本発明の電子部品実装基板1によれば、回路基板2が加熱装置10のヒータ12によって加熱される際に、パターン3からランド5に熱が供給されるだけでなく、パターン4からもスルーホール6を介してランド5に熱が供給される。この構造においては、電子部品7の耐熱性を考慮して回路基板2の加熱(例えば、上方のヒータ12の加熱)が抑えられても、ランド5には十分な熱が供給される。これにより、半田8が十分に溶融するので、電子部品7のランド5への半田付けが確実になされ、半田付け不良を防止できる。
【0018】
さらに、本発明の実施例においては、パターン4には、部品が実装されていないため、パターン4がヒータ12から受けとった熱の大部分がスルーホール6を介してパターン3に伝えられ、ランド5に熱を効率的に供給できる。なお、パターン4には、電子部品が実装されていてもよい。」

(ウ)上記記載事項(ア)、上記記載事項(イ)の「銅箔などの導電層から成る」との記載及び【図2】のスルーホールの形状から「電子部品実装基板の製造方法であって、電子部品7が設置されるランドの近傍に銅箔からなる第1パターンが設けられ、スルーホールが第1パターンの領域内に複数設けられ、複数のスルーホールは、断面略円の形状であり、第1パターンの領域内に等間隔で設けられている」ことが理解できる。

(エ)上記記載事項(イ)の「パターン(第1パターン)3」との記載、「パターン3は、ベース基板15の表面15aに設けられ・・・銅箔などの導電層から成る」との記載、「半田を溶融させる加熱工程」との記載及び「回路基板2が加熱装置10のヒータ12によって加熱される際に、パターン3からランド5に熱が供給される」との記載から、「回路基板2の銅箔からなる第1パターンを加熱し半田を溶融させる加熱工程」が理解できる。

(オ)上記記載事項(ア)の「ランドは実装される電子部品が所望の位置にて確実に設置できる」との記載、上記記載事項(イ)の「ランド5は、パターン3の電子部品7が搭載される所望の位置に形成され、電子部品7(抵抗、コイル、リレー、コンデンサ、IC等)が半田付けされる部分である」との記載、【図1】及び【図2】から、「銅箔からなる第1パターンは、電子部品7が確実に設置できる位置に形成される」ことが理解できる。

上記記載事項及び上記認定事項並びに【図1】及び【図2】を総合して、本願補正発明に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「電子部品実装基板の製造方法であって、
電子部品7が設置されるランドの近傍に銅箔からなる第1パターンが設けられ、
スルーホールが第1パターンの領域内に複数設けられ、
回路基板2の銅箔からなる第1パターンを加熱し半田を溶融させる加熱工程、
を含み、
銅箔からなる第1パターンは、電子部品7が確実に設置できる位置に形成され、
複数のスルーホールは、断面略円の形状であり、第1パターンの領域内に等間隔で設けられている、
電子部品実装基板の製造方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2010-45324号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「電子回路基板及び電子制御装置」に関して、図面(特に、【図2】、【図3】及び【図7】参照)とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0026】
しかし、大面積のパターンは、ベタパターン以外に、例えば請求項15に記載したように、パターン内に少なくとも1つのパターンが存在しない領域(例えば、スリットパターン)が形成されたものであっても良いし・・・。」

(イ)「【0035】
本実施形態では、そのような大型の部品であるため、また内部に配置されたコアやコイルのために熱容量が大きくなるパワーチョークコイルL1を表面実装型素子として、リフロー加熱により回路基板にはんだ付けする。ただし、上述したようにパワーチョークコイルL1は熱容量が大きいため、単に、リフロー加熱を行なっただけでは、パワーチョークコイルL1を内蔵する表面実装型素子の端子の温度上昇が不十分となり、はんだ付け品質が低下する虞がある。
【0036】
そのため、本実施形態では、パワーチョークコイルL1を内蔵する表面実装型素子をリフロー加熱により回路基板にはんだ付けしても、はんだ不濡れやはんだ溶融が不十分になるなどのはんだ付け品質の低下を抑制することができるように、回路基板の構成を工夫した。
【0037】
以下、図2及び図3を参照しつつ、昇圧回路が搭載される電子回路基板12の構成について詳しく説明する。なお、図2は、リフロー炉内を搬送される電子回路基板12を示す斜視図である。表面実装型素子14をリフロー加熱によりはんだ付けする際には、まだ、端子挿入型素子からなるコンデンサC1,C2は回路基板12に実装されていない。このため、図2においては、端子挿入型素子からなるコンデンサC1,C2は点線で示されている。また、図2及び後述する図6?図9では、回路基板12の構成を明瞭に図示すべく、例えば回路基板12が非常に厚く示されるなど、回路基板12を模式的に示している。図3は、回路基板12の表面配線層における配線パターンを示す平面図である。この図3においても、回路基板12に実装される表面実装型素子14、整流ダイオードD1、及び各コンデンサC1,C2が点線によって示されている
図2及び図3に示すように、コンデンサC1の一方の端子と、パワーチョークコイルL1を内蔵した表面実装型素子14の一方の接続端子15とは、共通の大面積パターン20に接続されている。この大面積パターン20は、銅やアルミニウムなどの熱伝導性の良好な金属材料によって形成され、図示しない配線を介して電源に接続されている。
【0038】
表面実装型素子14は、端子として、接続端子15に加え、表面実装型素子14の回路基板12への固定を補助するための固定補助端子16も有し、この固定補助端子16は、接続端子15と同じ大面積パターン20に接続されている。また、表面実装型素子14の他方の接続端子18ともう1つの固定補助端子17は、大面積パターン20と隣接して設けられた大面積パターン21にそれぞれ接続されている。固定補助端子16,17は、接続端子15,18と電気的に無関係であるため、固定補助端子16,17と接続端子15,18を同一の大面積パターン20,21にはんだ接続してもなんら問題は生じない。逆に、同一の大面積パターン20,21にはんだ接続することにより、大面積パターン20,21の面積を大きくすることが容易になる。なお、本実施形態では、大面積パターン20、21が、隙間なく広がったベタパターンとなっている。」

(ウ)「【0060】
本実施形態による電子回路基板12bでは、図7に示すように、回路基板12bの裏面にも大面積パターン24を形成するとともに、表面に形成された大面積パターン20aと裏面に形成された大面積パターン24とを繋ぐように、内部に銅などの金属材料が堆積されたビアホール22が形成されている点が、第2実施形態による電子回路基板12aと異なる。
【0061】
このような構成の回路基板12bは、まず基板12bに、エッチングやドリルによりビアホール22を形成し、そのビアホール22の内面に無電界めっき及び電界めっきなどによって銅などの金属材料を堆積させ、その後、回路基板12bの表面及び裏面に大面積パターン20a、24を形成することによって得られる。
【0062】
このような構成を採用することにより、回路基板12bの表面の大面積パターン20aに加え、裏面の大面積パターン24も利用して集熱することができる。そして、裏面の大面積パターン24によって集められた熱は、ビアホール22を介して、表面の大面積パターン20aに伝えられる。このため、本実施形態の電子回路基板12bによれば、表面実装型素子の接続端子15及び固定補助端子16、さらにそれらに対応するランド25、26の温度をはんだが十分に溶融する温度まで容易に高めることができる。」

上記記載事項及び図示内容を総合すれば、刊行物2には、パワーチョークコイルL1に接続された接続端子15、固定補助端子16及び接続端子18、固定補助端子17とは、スリットパターンを設けることにより回路基板12bの表面に形成された大面積パターン20a及び大面積パターン21aに分散して接続されていること(以下、「刊行物2の記載事項」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「電子部品実装基板の製造方法」は、その機能、構造からみて、本願補正発明の「基板上に所定の電子素子を実装する電子素子実装方法」に相当し、同様に、「電子部品7が設置されるランドの近傍に銅箔からなる第1パターンが設けられ」る工程は「所定の電子素子が設けられる領域近傍に銅箔領域を形成するステップ」に、「スルーホールが第1パターンの領域内に複数設けられ」る工程は「銅箔領域に複数の貫通孔を形成するステップ」に、「回路基板2の銅箔からなる第1パターンを加熱し半田を溶融させる加熱工程」は「基板の銅箔領域を加熱し所定の電子素子の半田を溶融させるステップ」に、相当する。
また、引用発明の「銅箔からなる第1パターンは、電子部品7が確実に設置できる位置に形成され」るから、「銅箔からなる第1パターン」が「電子部品7」の周辺に形成されていることは明らかであるところ、引用発明の「銅箔からなる第1パターンは、電子部品7が確実に設置できる位置に形成され」ることと本願補正発明の「銅箔領域は、所定の電子素子周辺に分散して複数形成されており、所定の電子素子は、熱容量の大きい大型素子であ」ることは、「銅箔領域は、所定の電子素子周辺に形成されて」いるという限りで相当する。
さらに、引用発明の「複数のスルーホールは、断面略円の形状であ」るから、直径を有することは明らかであるところ、引用発明の「複数のスルーホールは、断面略円の形状であり、第1パターンの領域内に等間隔で設けられている」ことと本願補正発明の「貫通孔の直径は略0.4mm以上であり、複数の貫通孔は、基板の銅箔領域に略2.0?2.5mmの等間隔で形成されている」ことは、「貫通孔の直径は一定以上であり、複数の貫通孔は、基板の銅箔領域に等間隔で形成されている」ことの限りで相当する。

以上の点からみて、本願補正発明と引用発明とは、

[一致点]
「基板上に所定の電子素子を実装する電子素子実装方法であって、
所定の電子素子が設けられる領域近傍に銅箔領域を形成するステップと、
銅箔領域に複数の貫通孔を形成するステップと、
基板の銅箔領域を加熱し所定の電子素子の半田を溶融させるステップと、
を含み、
銅箔領域は、所定の電子素子周辺に形成されており、
貫通孔の直径は一定以上であり、
複数の貫通孔は、基板の銅箔領域に等間隔で形成されている、電子素子実装方法。」
である点で一致し、

次の点で相違する。
[相違点]
相違点1
「銅箔領域」及び「所定の電子素子」に関して、本願補正発明では、「所定の電子素子周辺に分散して複数形成されて」おり、「熱容量の大きい大型素子」であるのに対して、引用発明では、「電子部品7が確実に設置できる位置に形成され」いる点。

相違点2
「複数の貫通孔」に関して、本願補正発明では、その「直径は略0.4mm以上であり」、「基板の銅箔領域に略2.0?2.5mmの等間隔で形成されている」のに対して、引用発明では、不明である点。

4 判断
(1)相違点1について
刊行物2の「回路基板12bの表面に形成された大面積パターン20a及び大面積パターン21a」は、いずれも、引用発明の「回路基板2の銅箔からなる第1パターン」と同じ機能を果たすところ、刊行物2の「パワーチョークコイルL1」に接続された「接続端子15、固定補助端子16及び接続端子18、固定補助端子17」は、「回路基板12bの表面に形成された大面積パターン20a及び大面積パターン21aに分散して接続されている」から、大面積パターン20a及び大面積パターン21aは、L1周辺に分散して複数形成されていると解される(【図3】及び【図7】参照)。
また、刊行物2の「パワーチョークコイルL1」は、「パワーチョークコイルL1は熱容量が大きい」(段落【0035】)との記載からみて、「大型素子」といえるところ、引用発明の「電子部品7」も「コイル」であり得るから(段落【0013】)、引用発明の「電子部品7」に刊行物2の記載事項を適用して、熱容量の大きい大型素子とすることは、当業者が容易に推考し得ることといえる。
よって、上記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて容易になし得たことである。

(2)相違点2について
刊行物1の「スルーホール6は、ランド5の外側(ランド5の端から1?3mmほどの位置、より好ましくは、2mm)に複数設けられている。」(段落【0013】)との記載及び【図2】から、引用発明の複数のスルーホールの直径も略0.4mm以上であり、第1パターンの領域内に略2.0?2.5mmの等間隔で設けられているといえるし、仮に、そうでないとしても、引用発明の複数のスルーホールの直径を略0.4mm以上とし、第1パターンの領域内に略2.0?2.5mmの等間隔で設けることは、本願補正発明の上記数値限定に臨界的意義が明らかでないことも併せ考慮すれば、当業者が適宜なし得る設計事項といえる。
よって、上記相違点2は実質的な相違点ではないし、仮に、そうでないとしても、上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が引用発明に基いて容易になし得たことである。

(3)作用効果について
そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び刊行物2の記載事項から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年11月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のもの(以下、「本願発明」という。)である。

「【請求項1】
基板上に所定の電子素子を実装する電子素子実装方法であって、
前記所定の電子素子が設けられる領域近傍に銅箔領域を形成するステップと、
前記銅箔領域に複数の貫通孔を形成するステップと、
前記基板の銅箔領域を加熱し前記所定の電子素子の半田を溶融させるステップと、
を含み、
前記銅箔領域は、所定の電子素子周辺に分散して複数形成されており、
前記所定の電子素子は、熱容量の大きい大型素子である、ことを特徴とする電子素子実装方法。」

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1及び2の記載事項並びに引用発明は、上記「第2」の「2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明に係る「貫通孔」につき「貫通孔の直径は略0.4mm以上であり」及び「複数の貫通孔は、基板の銅箔領域に略2.0?2.5mmの等間隔で形成されている」こととの発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記「第2」の「3」及び「4」に記載したとおり、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-21 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-08 
出願番号 特願2011-196416(P2011-196416)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 誠山中 なお遠藤 秀明  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小柳 健悟
内田 博之
発明の名称 電子素子実装方法、及び電子基板  
代理人 家入 健  

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