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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
管理番号 1312958
審判番号 不服2013-21613  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-05 
確定日 2016-03-30 
事件の表示 特願2009-528789「リファキシミン」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月27日国際公開、WO2008/035109、平成22年 2月12日国内公表、特表2010-504314〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年9月24日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年9月22日(IN)インド〕を国際出願日とする出願であって、
平成21年5月25日付けで特許法第184条の8第1項の規定による補正書の翻訳文の提出がなされ、
平成24年11月30日付けの拒絶理由通知に対して、平成25年6月4日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、
平成25年6月24日付けの拒絶査定に対して、平成25年11月5日付けで審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、
平成27年4月8日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年10月14日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。

第2 本願の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載
本願は、その発明の名称の欄にある「リファキシミン」に関するものであって、その特許請求の範囲の記載は、平成27年10月14日付けの手続補正によって、補正前の
「【請求項1】結晶性リファキシミンを実質的に含まない、無定形形態のリファキシミン。
【請求項2】図1で示されるXRPDパターンにより特徴付けられる無定形形態のリファキシミン。
【請求項3】図2で示されるFT-IRスペクトルにより特徴付けられる無定形形態のリファキシミン。
【請求項4】少なくとも99重量%の純度レベルを有する、請求項1?3何れか1項記載の無定形形態のリファキシミン。
【請求項5】0.3?0.4g/mlより大きい範囲のかさ密度を有する、請求項1?5何れか1項記載の無定形形態のリファキシミン。
【請求項6】少なくとも99重量%の請求項1?6何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンを含む、組成物。
【請求項7】薬学的に受容可能な担体と組み合わせた請求項1?6何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンを含む医薬組成物。
【請求項8】医薬としての使用のための請求項1?4何れか1項記載の無定形形態のリファキシミン。
【請求項9】過敏性腸症候群、下痢、旅行者下痢、微生物関連下痢、クローン病、慢性膵炎、膵不全及び/又は大腸炎のような腸関連疾患を処置するための医薬製造での使用のための請求項1?4何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンの使用。
【請求項10】過敏性腸症候群、下痢、旅行者下痢、微生物関連下痢、クローン病、慢性膵炎、膵不全及び/又は大腸炎のような腸関連疾患を処置するための請求項1?4何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンを含む医薬。
【請求項11】
a)リファマイシンSを、適切な溶媒の存在下、2-アミノ-4-ピコリンと反応させること、
b)上記反応塊に、適切な溶媒中に溶解されたヨウ素と、引き続き、還元剤を添加すること、
c)攪拌下、反応塊のpHを、1.5?2.5の間に調整すること、
d)水不混和性有機溶媒で抽出し、有機層を濃縮し、残留物を生成すること、
e)工程d)で得られた残留物を、水不混和性溶媒若しくは水不混和性溶媒の混合物でストリッピングし残留物を得ること、
f)工程e)で得られた残留物を、水不混和性溶媒若しくはその混合物とともに攪拌し、固形物を得ること、
g)固形物をろ過し、同じ一或いは複数の溶媒で洗浄すること、及び
h)固形物を40℃未満の温度で乾燥することを含む請求項1?4何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンの製造方法。
【請求項12】工程e)で使用される一或いは複数の溶媒が、n-ヘプタン、n-ヘキサン、ジ-イソプロピルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム及び酢酸エチルのうちの1以上から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】工程f)での溶媒が、n-ヘプタン、n-ヘキサン、ジ-イソプロピルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム及び酢酸エチルのうちの少なくとも二つから選択される、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】無定形形態のリファキシミンを、有機酸と水との混合物と組み合わせ、次いで100?110℃の温度でリファキシミン混合物を乾燥し、γ型リファキシミンを生じることを含む、請求項1?4何れか1項記載の、無定形リファキシミンのγ型結晶リファキシミンへの変換方法。
【請求項15】有機酸が、酢酸若しくは蟻酸である、請求項14記載の方法。
【請求項16】無定形形態のリファキシミンを、有機酸/水の混合物と組み合わせる前に、リファキシミンが、40?60℃で有機溶媒中に溶解され、水と組み合わされ、冷却され、ろ過され、有機酸と水の混合物と組み合わせられたリファキシミン残留物を生成する、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】無定形形態のリファキシミンを、水混和性有機溶媒と水との混合物と組み合わせ、次いで80?110℃の温度でリファキシミン混合物を乾燥し、β型リファキシミンを生じることを含む、請求項1?4何れか1項記載の無定形リファキシミンのβ型結晶リファキシミンへの変換方法。
【請求項18】水混和性溶媒がアセトン、アセトニトリル及び1以上のC1-4アルコールのうちの少なくとも一つである、請求項17記載の方法。
【請求項19】無定形形態のリファキシミンを有機溶媒と水との混合物と組み合わせる前に、無定形リファキシミンが、40?60℃で有機溶媒中に溶解され、水と組み合わされ、冷却されおかれ、ろ過され、水混和性溶媒と水の混合物と組み合わせられたリファキシミン残留物を生成する、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】結晶性リファキシミンを適切な溶媒中に溶解し、溶液をろ過し、適切な溶媒でろ液を洗浄し、40?60℃で残留物を濃縮し、引き続き、
(a)水不混和性溶媒若しくは水不混和性溶媒混合物で、リファキシミン残留物をストリッピングすること、
(b)工程(a)で得られた残留物を、水不混和性溶媒若しくはその混合物でストリッピングし、固形物を得ること、
(c)固形物をろ過し、同じ1以上の溶媒で洗浄すること、及び
(d)固形物を40℃未満の温度で乾燥すること
の工程によって、リファキシミン残留物を生成することを含む、請求項1?6何れか1項記載の、結晶型のリファキシミンを無定形形態のリファキシミンへ変換する方法。
【請求項21】工程(b)で使用される溶媒が、n-ヘプタン、n-ヘキサン、ジ-イソプロピルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム及び酢酸エチルのうちの1以上から選択される、請求項20記載の方法。」から、補正後の
「【請求項1】 図1で示されるXRPDパターンにより特徴付けられる無定形形態のリファキシミン。[図1]

【請求項2】図2で示されるFT-IRスペクトルにより特徴付けられる無定形形態のリファキシミン。[図2]

【請求項3】少なくとも99重量%の純度レベルを有する、請求項1または請求項2記載の無定形形態のリファキシミン。
【請求項4】0.3?0.4g/mlより大きい範囲のかさ密度を有する、請求項1?3何れか1項記載の無定形形態のリファキシミン。
【請求項5】少なくとも99重量%の請求項1?4何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンを含む、組成物。
【請求項6】薬学的に受容可能な担体と組み合わせた請求項1?5何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンを含む医薬組成物。
【請求項7】医薬としての使用のための請求項1?3何れか1項記載の無定形形態のリファキシミン。
【請求項8】過敏性腸症候群、下痢、旅行者下痢、微生物関連下痢、クローン病、慢性膵炎、膵不全及び/又は大腸炎のような腸関連疾患を処置するための医薬製造での使用のための請求項1?3何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンの使用。
【請求項9】過敏性腸症候群、下痢、旅行者下痢、微生物関連下痢、クローン病、慢性膵炎、膵不全及び/又は大腸炎のような腸関連疾患を処置するための請求項1?3何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンを含む医薬。
【請求項10】
a)リファマイシンSを、水不混和性溶媒の存在下、2-アミノ-4-ピコリンと反応させること、
b)上記反応塊に、水不混和性溶媒中に溶解されたヨウ素と、引き続き、還元剤を添加すること、
c)攪拌下、反応塊のpHを、1.5?2.5の間に調整すること、
d)水不混和性有機溶媒で抽出し、有機層を濃縮し、残留物を生成すること、e)工程d)で得られた残留物を、水不混和性溶媒若しくは水不混和性溶媒の混合物でストリッピングし残留物を得ること、
f)工程e)で得られた残留物を、水不混和性溶媒若しくはその混合物とともに攪拌し、固形物を得ること、
g)固形物をろ過し、同じ一或いは複数の溶媒で洗浄すること、及び
h)固形物を40℃未満の温度で乾燥することを含む請求項1?3何れか1項記載の無定形形態のリファキシミンの製造方法。
【請求項11】工程e)で使用される一或いは複数の溶媒が、n-ヘプタン、n-ヘキサン、ジ-イソプロピルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム及び酢酸エチルのうちの1以上から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】工程f)での溶媒が、n-ヘプタン、n-ヘキサン、ジ-イソプロピルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム及び酢酸エチルのうちの少なくとも二つから選択される、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】無定形形態のリファキシミンを、有機酸と水との混合物と組み合わせ、次いで100?110℃の温度でリファキシミン混合物を乾燥し、γ型リファキシミンを生じることを含む、請求項1?3何れか1項記載の、無定形リファキシミンのγ型結晶リファキシミンへの変換方法。
【請求項14】有機酸が、酢酸若しくは蟻酸である、請求項13記載の方法。
【請求項15】無定形形態のリファキシミンを、有機酸/水の混合物と組み合わせる前に、リファキシミンが、40?60℃で有機溶媒中に溶解され、水と組み合わされ、冷却され、ろ過され、有機酸と水の混合物と組み合わせられたリファキシミン残留物を生成する、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】無定形形態のリファキシミンを、水混和性有機溶媒と水との混合物と組み合わせ、次いで80?110℃の温度でリファキシミン混合物を乾燥し、β型リファキシミンを生じることを含む、請求項1?3何れか1項記載の無定形リファキシミンのβ型結晶リファキシミンへの変換方法。
【請求項17】水混和性溶媒がアセトン、アセトニトリル及び1以上のC1-4アルコールのうちの少なくとも一つである、請求項16記載の方法。
【請求項18】無定形形態のリファキシミンを有機溶媒と水との混合物と組み合わせる前に、無定形リファキシミンが、40?60℃で有機溶媒中に溶解され、水と組み合わされ、冷却されおかれ、ろ過され、水混和性溶媒と水の混合物と組み合わせられたリファキシミン残留物を生成する、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】結晶性リファキシミンを水不混和性溶媒中に溶解し、溶液をろ過し、水不混和性溶媒でろ液を洗浄し、40?60℃で残留物を濃縮し、引き続き、
(a)水不混和性溶媒若しくは水不混和性溶媒混合物で、リファキシミン残留物をストリッピングすること、
(b)工程(a)で得られた残留物を、水不混和性溶媒若しくはその混合物で攪拌し、固形物を得ること、
(c)固形物をろ過し、同じ1以上の溶媒で洗浄すること、及び
(d)固形物を40℃未満の温度で乾燥すること
の工程によって、リファキシミン残留物を生成することを含む、請求項1?5何れか1項記載の、結晶型のリファキシミンを無定形形態のリファキシミンへ変換する方法。
【請求項20】工程(b)で使用される溶媒が、n-ヘプタン、n-ヘキサン、ジ-イソプロピルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム及び酢酸エチルのうちの1以上から選択される、請求項19記載の方法。」に改められた。

また、本願明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0042】無定形リファキシミンは、0.3?0.4g/mlの範囲のかさ密度を示し、タップ密度は、0.4?0.5g/mlの範囲であるが、α形リファキシミンは、0.2?0.3g/mlの範囲のかさ密度を示し、タップ密度は、0.3?0.4g/mlの範囲である。…
【0054】本発明は、次の例により更に今や実証されるであろうが、決して、本発明の範囲を限定するものではない。
【0055】例 例1 リファマイシンS100g(0.143モル)、ジクロロメタン300mlと2-アミノ-4-ピコリン46.4g(0.434モル)が、窒素雰囲気下室温で混合された。ジクロロメタン700ml中に溶解されたヨウ素19g(0.074モル)が、室温で、30?45分間滴下された。反応混合物は、次いで、室温で、15?18時間攪拌された。100mlの水中に溶解されたL(-)アスコルビン酸20g(0.113モル)が添加された。混合物は、室温で30?45分間攪拌され、次いで、10?15℃まで冷却された。反応混合物のpHは、12.5%の稀HCl溶液を使用して、2に調整された。塊は10?15分間攪拌され、有機層が分離され、最初に脱塩水、次いで10%チオ硫酸ナトリウム、最後に水で、中性のpHが得られるまで、洗浄された。有機層は活性炭処理され、ハイフロ(hyflo)によりろ過され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、真空下50℃未満で濃縮された。生成物は、n-ヘプタンでストリッピングされ、こうして得られた粗物質は、20%のジクロロメタンとヘプタン[500ml]の混合物で、室温で、30?45分間攪拌された。固形物はろ過され、20%のジクロロメタンとヘプタンの混合物で洗浄され、真空下40℃未満で、10?12時間乾燥され、100gの無定形リファキシミンを得た。
【0056】例2…62?65gのγ型リファキシミンを得た。
【0057】例3…40?45gのβ型リファキシミンを得た。
【0058】例4…40?45gのβ型リファキシミンを得た。
【0059】例5 結晶性リファキシミン(40g)が、ジクロロメタン(10?15容量)中に室温で溶解され、ハイフロによりろ過され、ジクロロメタン(2容量)で洗浄された。溶液は、真空下50℃で濃縮された。固形物は、n-ヘプタンでストリッピングされ、n-ヘプタン(50ml)中で室温で30分間攪拌された。最後に、固形物はろ過され、n-ヘプタンで洗浄され、真空下40℃未満で10?12時間乾燥され、35?38gの無定形リファキシミンを得た。
【0060】例6 無定形リファキシミンを含む錠剤組成物。」

第3 通知された拒絶の理由の概要
平成27年4月8日付けの拒絶理由通知書(以下「先の拒絶理由通知書」という。)には、
その理由1として「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。」との理由と、
その理由2として「この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」との理由が示され、
その「記」には、次の指摘が示されている。
「1.理由1及び2について
(1)本願請求項1に記載された「結晶性リファキシミンを実質的に含まない」という発明特定事項について、その「実質的」という発明特定事項は『範囲を曖昧にする表現がある結果、発明の範囲が不明確な場合』に該当し、特許を受けようとする発明の範囲を明確に把握できない。また、当該『結晶性リファキシミンを含まない』という技術事項は、例えば、組成物に関する発明を特定する事項としては不自然な点はないものの、同項の「無定形形態のリファキシミン」という物質の形態に関する発明を特定する事項としては不自然なものである。
したがって、本願請求項1及びその従属項の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
(2)本願請求項2に記載された「図1で示されるXRPDパターンにより特徴付けられる」という発明特定事項、及び本願請求項3に記載された「図2で示されるFT-IRスペクトルにより特徴付けられる」という発明特定事項は『請求項の記載が、発明の詳細な説明又は図面の記載で代用されている結果、発明の範囲が不明確となる場合』に該当し、特許を受けようとする発明の範囲を明確に把握できない。
したがって、本願請求項2及び3並びにその従属項の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
(3)本願請求項4に記載された「少なくとも99重量%の純度レベルを有する」という事項により特定された発明、及び本願請求項6に記載された「少なくとも99重量%の…無定形形態のリファキシミンを含む」という事項により特定された発明について、本願明細書の段落0055及び0059の「例1」及び「例5」の具体例においては、その得られた「無定形リファキシミン」の「純度」及び「無定形形態の割合」が明らかにされていない。
このため、本願請求項4及び6並びにその従属項に係る発明が、発明の詳細な説明に実質的に記載されているとは認められず、どのようにすれば「99重量%の純度レベル」の無定形リファキシミンを得ることができるのか、また、得られた生成物の「無定形形態の割合」をどのように測定できるのか、当業者といえども過度の試行錯誤をしなければ、その発明の実施をすることができない。
したがって、本願請求項4及び6並びにその従属項の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されていないので、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願請求項4及び6並びにその従属項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものではないから、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものではない。
(4)本願請求項5に記載された「0.3?0.4g/mlより大きい範囲のかさ密度を有する」という発明特定事項について、その「0.3?0.4g/mlより大きい範囲」という範囲の定義は一般的な技術用語の語法として意味不明である。
また、本願明細書の段落0055及び0059の「例1」及び「例5」の具体例においては、得られて無定形形態のリファキシミンにおける具体的な「かさ密度」のデータが明らかにされていないので、本願請求項5に係る発明の具体例に相当するものとは認められない。
このため、本願請求項5及びその従属項に係る発明が発明の詳細な説明に記載されているとは認められず、また、本願所定の「かさ密度」の無定形リファキシミンを得るための具体的な方法が記載されているとはいえないので、当業者といえども過度の試行錯誤をしなければ、その発明の実施をすることができない。
したがって、本願請求項5及びその従属項の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、また、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されていないので、特許法第36条第6項第1号に適合するものでもない。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願請求項5及びその従属項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものではないから、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものではない。
(5)本願請求項11及び20に記載された「適切な溶媒」という発明特定事項について、その「適切」に当て嵌まる「溶媒」の範囲が明確に定義されているとはいえないから、特許を受けようとする発明の範囲を明確に把握できない。
また、本願請求項11及び20に記載された「水不混和性溶媒」若しくは「水不混和性有機溶媒」及び「水不混和性溶媒…の混合物でストリッピング」等の発明特定事項、並びに本願請求項12及び21の「使用される溶媒が、n-ヘプタン、…ジクロロメタン…から選択される」という発明特定事項について、
本願明細書の段落0027の「本出願における用語、ストリッピングは、第2の溶媒を添加し、それを蒸溜して残留物とすることによる、残留物からの第1の溶媒の跡形もない除去を指す。」との記載、同段落0055の「例1…ジクロロメタン…有機相は…乾燥され…濃縮された。生成物は、n-ヘプタンでストリッピングされ、…固形物はろ過され、20%ジクロロメタンとヘプタンの混合物で洗浄され」との記載、及び同段落0059の「結晶性リファキシミン…が、ジクロロメタン…中に室温で溶解され、…溶液は…濃縮された。固形物は、n-ヘプタンでストリッピングされ、…固形物はろ過され、n-ヘプタンで洗浄され」との記載を参酌するに、
結晶性リファキシミンは、ジクロロメタンに可溶で、n-ヘプタンに不溶(若しくは難溶)であると解される。
してみると、当該「ジクロロメタン」と「n-ヘプタン」は、リファキシミンに対する溶解性が正反対の性状であるのに、当該請求項11及び20の記載においては「水不混和性溶媒」として一律な位置づけに置かれているという点で、その技術的な意味が不明である。
そして、本願請求項11及び20に記載された「水不混和性溶媒」の範囲について、例1及び例5において実際に使用されている「n-ヘプタン」以外のものにまで一般化できるとは認められない。
また、本願における「ストリッピング」は「第1の溶媒」と「第2の溶媒」を区別して使用するものと解されるところ、本願請求項11及び20の記載は、当該「第1の溶媒」と「第2の溶媒」の内容を、特許を受けようとする発明が明確になる程度に、明確に反映していない。
したがって、本願請求項11?13及び20?21の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、また、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載された範囲のものではないので、特許法第36条第6項第1号に適合するものでもない。
(6)本願明細書の段落0055の「例1…反応混合物のpHは、12.5%の稀HCl溶液を使用して、2に調整された。塊は10?15分間攪拌され、有機層が分離され、最初に脱塩水、次いで10%チオ硫酸ナトリウム、最後に水で、中性のpHが得られるまで、洗浄された。有機層は活性炭処理され、ハイフロ(hyflo)によりろ過され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、真空下50℃未満で濃縮された。」との記載について、その『塊が攪拌され、有機層が分離され』との記載部分の「塊」は、一般に「攪拌」できるような物質状態にあるとはいえないので、当該「例1」の具体例については当業者が実施可能な程度に記載されているとは認められない。
また、本願請求項11に記載された「d)水不混和性有機溶媒で抽出し、有機層を濃縮し、残留物を生成すること」という発明特定事項について、本願明細書の「例1」の具体例においては「水不混和性有機溶媒で抽出」する工程に該当する工程が存在していないので、当該「例1」は本願請求項11に係る発明の具体例に相当するものとは認められない。
そして、本願請求項20の「適切な溶媒中に溶解し、溶液をろ過し、適切な溶媒でろ液を洗浄し」という発明特定事項における「適切な溶媒でろ液を洗浄」とは、具体的にどのようにろ液を溶媒で洗浄するのか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても技術的に理解できず、また、同項の「(a)…リファキシミン残留物をストリッピングすること、(b)工程(a)で得られた残留物を…ストリッピングし、固形物を得ること」という「ストリッピング」の工程を2回行う発明特定事項についても、本願明細書の「例5」の具体例においてはストリッピングの工程が2回行われていないので、当該「例5」は本願請求項20に係る発明の具体例に相当するものとは認められない。
さらに、当該「例1」及び「例5」の具体例における「固形物は、n-ヘプタンでストリッピングされ」とは具体的にどの程度の「n-ヘプタン」を使用したのか明確ではなく、当該具体例の「10?12時間乾燥」や「35?38gの無定形リファキシミンを得た」等の「?」を含む記載は、実施例の記載として曖昧であって、その具体的な条件が明確かつ十分に記載されているとはいえない。
このため、当業者といえども過度の試行錯誤をしなければ、本願請求項1及びその従属項に記載された「無定形形態のリファキシミン」に関する一連の発明を実施することができるとは認められない。
また、本願請求項11及び20並びにその従属項に係る発明が、発明の詳細な説明に実質的に記載されているとも認められない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願請求項1?13及び20?21に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものではないから、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
また、本願請求項11?13及び20?21の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されていないので、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。」

第4 当審の判断
1.本願の「かさ密度」の明確性要件について
先の拒絶理由通知書の『1.(4)』の記載不備の指摘に対して、平成27年10月14日付けの意見書では特段の釈明がなされていない。
また、補正前の請求項5に対応する補正後の請求項4の「0.3?0.4g/mlより大きい範囲のかさ密度」との記載は、千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約第3条(2)に規定する明細書(以下「本願原文明細書」という。)の第15頁第13?14行の「a bulk density in the range greater than 0.3 to 0.4 g/ml」との記載(和訳にして「0.3より大きく0.4g/mlまでの範囲のかさ密度」との記載)と整合しておらず、補正後の請求項4の当該記載について精査を尽くしても、当該記載が明確であると認めるに足る事情は見当たらない。
してみると、補正後の請求項4に記載された「0.3?0.4g/mlより大きい範囲のかさ密度」という範囲の定義は一般的な技術用語の語法として明確であるとはいえず、本願は、上記『1.(4)』に指摘した記載不備の拒絶の理由を依然として解消していないものである。
したがって、本願の請求項4及びその従属項の記載は、上記『1.(4)』に指摘のとおり特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

2.本願の「かさ密度」のサポート要件及び実施可能要件について
先の拒絶理由通知書の『1.(4)』の記載不備の指摘に対して、平成27年10月14日付けの意見書では特段の釈明がなされていない。
そして、本願明細書の段落0055及び0059に記載された「例1」及び「例5」の具体例においては、得られる無定形形態のリファキシミンについての具体的な「かさ密度」のデーターが明らかにされておらず、同段落0042には「無定形リファキシミンは、0.3?0.4g/mlの範囲のかさ密度を示し」との記載がなされている。すなわち、かさ密度が0.4g/mlより大きい範囲の無定形形態のリファキシミンについては、本願明細書の発明の詳細な説明に記載がない。
してみると、本願明細書の発明の詳細な説明には、補正前の請求項5に対応する補正後の請求項4に記載された「0.3?0.4g/mlより大きい範囲のかさ密度」の無定形リファキシミンが記載されておらず、当該「かさ密度」の無定形リファキシミンを得るための具体的な方法も記載されていないので、補正後の請求項4及びその従属項に係る発明について、本願は、上記『1.(4)』に指摘した記載不備の拒絶の理由を依然として解消していないものである。
したがって、本願の請求項4及びその従属項の記載は、上記『1.(4)』に指摘のとおり特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、上記『1.(4)』に指摘のとおり本願の請求項4及びその従属項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものではないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

3.本願の「純度」及び「無定形形態の割合」について
先の拒絶理由通知書の『1.(3)』の記載不備の指摘に対し、平成27年10月14日付けの意見書において、審判請求人は『請求項4と請求項6に関するご指摘については、それらの請求項に規定された「少なくとも99%」という事項は、請求項1に導入された図1のXRPDパターンから当業者が認識することができると本出願人は思料致します。図1のXRPDパターンには不純物を示すピークは示されていません。』との釈明をしている。
しかしながら、当該「図1のXRPDパターン」を参酌しても、当該パターンに『不純物を示すピークが示されていない』といえる技術的な根拠は示されていない。また、無定形物質の「純度レベル」や「無定形形態の割合」を当該「XRPDパターン」に基づいて当業者が認識ないし測定できるという根拠も示されていない。
そして、例えば、特表2007-509904号公報(先の拒絶理由通知書で提示した刊行物1に対応する公表公報)の段落0015の「固体状態でリファキシミン中の水の存在は可逆的であること、従って適当な環境下において水の吸収および/または放出はやがて起こることが判明した。」との記載、及び同段落0052の「カールフィッシャー法で測定して5.0%?6.0%の水分含量になるまで乾燥されると多形体βが生じ、2.0%?3.0%の水分含量になるまで乾燥が続けられると多形体αが生じる。」との記載にあるように、固体状態のリファキシミンには相当量の水分が含まれていることが知られているので、当該「図1のXRPDパターン」により特徴付けられる無定形形態のリファキシミンの純度レベルが100重量%(含水量が0重量%)にあると直ちに解することができない。
また、リファキシミンを含む組成物の「無定形形態」の割合が「少なくとも99重量%」であることをどのように測定できるのかも明らかにされていないので、当業者といえども過度の試行錯誤をしなければ、その発明の実施をすることができない。
してみると、補正前の請求項4に対応する補正後の請求項3の「少なくとも99重量%の純度レベルを有する」という事項により特定された発明、及び補正前の請求項6に対応する補正後の請求項5の「少なくとも99重量%の…無定形形態のリファキシミンを含む」という事項により特定された発明について、本願は、上記『1.(3)』に指摘した記載不備の拒絶の理由を依然として解消していないものである。
したがって、本願の請求項3及び5並びにその従属項の記載は、上記『1.(3)』に指摘のとおり特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、上記『1.(3)』に指摘のとおり本願の請求項3及び5並びにその従属項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものではないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

4.本願の「水不混和性溶媒」について
先の拒絶理由通知書の『1.(5)』の記載不備の指摘に対し、平成27年10月14日付けの意見書において、審判請求人は『請求項11(補正後の請求項10)と請求項20(補正後の請求項19)の「適切な溶媒」という記載は「水不混和性溶媒」に補正されたので、「溶媒」の範囲を把握することができます。よってご指摘の拒絶理由は解消しました。』との釈明をしている。
しかしながら、先の拒絶理由通知書で指摘した『当該「ジクロロメタン」と「n-ヘプタン」は、リファキシミンに対する溶解性が正反対の性状であるのに、当該請求項11及び20の記載においては「水不混和性溶媒」として一律な位置づけに置かれているという点で、その技術的な意味が不明である。』との指摘に対して、平成27年10月14日付けの意見書では特段の釈明がなされていない
そして、補正前の請求項11に対応する補正後の請求項10、及び補正前の請求項20に対応する補正後の請求項19の複数箇所に記載された「水不混和性溶媒」又は「水不混和性有機溶媒」という事項により特定された発明について、反応、抽出、ストリッピング等の各々の段階に応じて、当該「水不混和性溶媒」の種類を使い分けない場合にまで、発明を一般化できるとは認められない。
してみると、補正後の請求項10及び19に記載された発明について、本願は、上記『1.(5)』に指摘した記載不備の拒絶の理由を依然として解消していないものである。
したがって、本願の請求項10及び19並びにその従属項の記載は、上記『1.(5)』に指摘のとおり特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

5.むすび
以上の通り、本願は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項に規定する要件を満たしていないから、その余の事項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-30 
結審通知日 2015-11-04 
審決日 2015-11-17 
出願番号 特願2009-528789(P2009-528789)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (C07D)
P 1 8・ 537- WZ (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡山 太一郎吉住 和之福井 悟  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 齊藤 真由美
木村 敏康
発明の名称 リファキシミン  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
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