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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1312963
審判番号 不服2014-14633  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-25 
確定日 2016-03-30 
事件の表示 特願2010-501013「結晶形およびその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月 9日国際公開、WO2008/121352、平成22年 7月 8日国内公表、特表2010-522756〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2008年3月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年3月29日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年3月25日に手続補正書が提出され、平成25年4月8日付けで拒絶理由が通知され、同年10月15日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年3月20日付けで拒絶査定がされ、同年7月25日に拒絶査定に対する審判請求がされ、同年9月17日に審判請求書を補正する手続補正書が提出されたものである。
なお、平成26年7月25日に、特願2014-152252号が分割出願されている。

第2 本願発明
この出願の発明は、平成25年10月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「化合物1:

[式中、前記化合物は窒素について(R)立体配置である]
の結晶であって、7.9±0.2度、8.18±0.2度、20.3±0.2度、21.44±0.2度、24.11±0.2度および25.12±0.2度の2θにおけるピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶。」
なお、この出願の明細書(以下「本願明細書」という。補正されていない。)の段落【0008】及び【0009】には、この化合物1が「(R)-N-メチルナルトレキソン臭化物」又は「(R)-MNTX」と称されることが記載されている。

第3 原査定の理由
原査定の理由は、平成25年4月8日付けの拒絶理由通知における理由2であり、概略、この出願の請求項1?14に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。その引用文献1は国際公開第2006/127899号(以下「刊行物1」という。)である。本願発明は、拒絶理由で言及された請求項1に係る発明に対応するものであって、「B形態の化合物1であって・・・A形態の化合物1を実質的に含まない」と特定されていたものを、それに代えて上記形態の化合物1が示す粉末X線回折の2θ値により特定し直したものである。

第4 当審の判断
当審は、原査定の理由のとおり、本願発明は、上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1 刊行物
刊行物1:国際公開第2006/127899号
刊行物2:岡野定舗編著,「新・薬剤学総論(改訂第3版)」,南江堂,1987年4月10日,p.26,111,256、257
刊行物3:C. G. WERMUTH編,長瀬博監訳,「最新 創薬化学 下巻」,株式会社テクノミック,平成11年9月25日,p.452-453
刊行物4:日本化学会編,「化学便覧 応用化学編 第6版」,丸善,平成15年1月30日,p.178
刊行物5:長倉三郎,井口洋夫,江沢洋,岩村秀,佐藤文隆,久保亮五編,「岩波 理化学辞典 第5版」,第5版第8刷,2004年12月20日,岩波書店,p.504
刊行物6:緒方章,菰田太郎,新延信吉著,「化学実験操作法」,訂正第36版,昭和52年6月20日,南江堂,p.55-59,526-533
刊行物7:日本化学会編,「第4版 実験化学講座1 基本操作I」,第2刷,丸善,平成8年4月5日,p.184-186
刊行物8:平山令明編著,「有機結晶作製ハンドブック」,丸善,平成12年4月20日,p.109-113
刊行物9:長倉三郎,井口洋夫,江沢洋,岩村秀,佐藤文隆,久保亮五編,「岩波 理化学辞典 第5版」,第5版第8刷,2004年12月20日,岩波書店,p.1510
刊行物2?9は、この出願の優先日当時の技術常識を示すために引用するものである。

2 刊行物に記載された事項

ア 刊行物1
訳文により示す。
(1a)「1.R-MNTXを含む組成物であって、0.02%の検出限界及び0.05%の定量限界においてHPLCによって検出可能なS-MNTXが存在しない、前記組成物。
2.組成物中に存在するMNTXが、塩のカチオンであり、アニオンと対になっている、請求項1に記載の組成物。
3.アニオンが、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン又は有機荷電アニオン種である、請求項2に記載の組成物。
4.アニオンがハロゲン化物イオンであり、該ハロゲン化物イオンが臭化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン又はフッ化物イオンである、請求項3に記載の組成物。
5.ハロゲン化物イオンが臭化物イオンである、請求項4に記載の組成物。
・・・・・・・・・・・・・・・
81.R-MNTX臭化物塩の立体選択的合成方法であって、
(a)3-O-保護-ナルトレキソンをメチル化剤でメチル化して3-O-保護-R-MNTXヨウ化物塩を生じること;
(b)3-ヒドロキシ保護基を除去してR-MNTX臭化物/ヨウ化物塩を生じるための、臭化水素酸による加水分解;及び
(c)R-MNTX臭化物/ヨウ化物塩をアニオン交換体(臭化物型)に通してR-MNTX臭化物塩を生じること、
を含む前記方法。
82.メチル化剤がヨウ化メチルである、請求項81に記載の方法。
83.保護基の除去の前に、3-O-保護-R-MNTXヨウ化物塩を精製する、請求項81に記載の方法。
84.R-MNTX臭化物塩の精製を更に含む、請求項81に記載の方法。
85.R-MNTX臭化物塩が98%を超える純度を有する、請求項84に記載の方法。
86.R-MNTXを再結晶によって精製する、請求項84に記載の方法。
87.再結晶の溶媒がメタノールである、請求項86に記載の方法。
88.R-MNTXをクロマトグラフィーによって精製する、請求項84に記載の方法。
89.純度をC18逆相カラムを用いたHPLCによって決定する、請求項85に記載の方法。
90.細孔のサイズが5ミクロンである、請求項89に記載の方法。
91.カラムがLuna C18(2)である、請求項89に記載の方法。」(66頁及び73?74頁、請求の範囲の請求項1?5及び81?91)
(1b)「本発明の分野
本発明は、(R)-N-メチルナルトレキソン(R-MNTX)及びその中間体の立体選択的合成、R-MNTX又はその中間体を含む医薬製剤及びそれらの使用方法に関する。」(1頁3?6行)
(1c)「発明の背景
メチルナルトレキソン(MNTX)は、純粋なオピオイドアンタゴニストであるナルトレキソンの第四級誘導体である。これは塩として存在する。文献においてMNTXの臭化物塩に使用される名称としては、以下が挙げられる:メチルナルトレキソン臭化物;N-メチルナルトレキソン臭化物;ナルトレキソンメトブロミド;ナルトレキソンメチルブロミド;MRZ 2663BR。MNTXは、70年代半ばにGoldbergらによって米国特許第4,176,186号に記載されるように報告された。環の窒素へのメチル基の付加が、ナルトレキソンよりも大きな極性及び低い脂溶性を有する荷電化合物を形成すると考えられる。MNTXのこの特徴は、ヒトにおいて血液脳関門の通過を防ぐ。結果として、MNTXは、中枢神経系よりもむしろ末梢においてこの効果を発揮し、中枢神経系におけるオピオイドの鎮痛作用を妨げないという利点を伴う。
MNTXはキラル分子であり、第四級の窒素はR又はS立体配置であり得る(図1参照)。MNTXの異なる立体異性体が、異なる生物学的特性及び化学特性を示すか否かは知られていない。文献に記載され報告された機能の全てが、MNTXが末梢オピオイドアンタゴニストであることを示す。これらのアンタゴニスト機能のいくつかは、米国特許第4,176,186号、第4,719,215号、第4,861,781号、第5,102,887号、第5,972,954号、第6,274,591号、第6,559,158号、及び6,608,075、並びに米国特許出願第10/163,482号(2003/0022909A1)、第10/821,811号(20040266806)、第10/821,813号(20040259899)及び第10/821,809号(20050004155)に記載されている。これらの用途は、オピオイドの効果を低下させることなくオピオイド副作用を減少させることを含む。かかる副作用は、吐き気、嘔吐、不快、掻痒、尿閉、腸の運動低下、便秘、胃の運動低下、遅発性胃内容排出及び免疫抑制を含む。当該技術は、MNTXがオピオイド鎮痛処置に起因する副作用を減少させるだけでなく、内因性オピオイド類単独で又は外因性オピオイド処置との組み合わせによって媒介される副作用をも減少させることを開示する。かかる副作用は、胃腸運動の阻害、術後胃腸機能障害、突発性便秘、及び上記のものを含むがこれらに限定されない他の状態を含む。しかしながら、当該技術からは、これらの研究に使用されたMNTXがR立体異性体とS立体異性体との混合物であったか単一の立体異性体であったかは明らかでない。」(1頁8行?2頁7行)
(1d)「本発明の要旨
S-MNTXは今や高純度で製造され、このことにより、クロマトグラフィーにおけるその相対保持時間をR-MNTXのそれに対して特徴付けることが可能となる。S-MNTXが文献において報告されたMNTXの活性とは異なる活性を有することが見出された。これは、R-MNTXの製造方法及び高純度への精製方法への必要性を浮かび上がらせた。
本発明は、実質的に純粋なR-MNTX及びその中間体、実質的に純粋なR-MNTXの結晶及びその中間体、実質的に純粋なR-MNTXの新規の製造方法、R-MNTXとS-MNTXとの混合物におけるR-MNTXの分析及び定量方法、R-MNTXとS-MNTXとの混合物からのR-MNTXの単離方法、これを含む医薬製品、並びにこれらの材料の関連用途を提供する。
本発明は、R-MNTXの立体選択適合性のための合成経路、実質的に純粋なR-MNTX、実質的に純粋なR-MNTXの結晶、実質的に純粋なR-MNTXを含む医薬製剤及びこれらの使用方法を提供する。」(3頁23行?4頁7行)
(1e)「図面の簡単な説明
図1は、R-MNTX及びS-MNTXの臭化物塩の化学構造を提供する。
図2は、S-及びR-MNTXの混合物における、MNTXのR体及びS体の分離を示すクロマトグラムである。
・・・・・・・・・・・・・・・
図6は、好ましいヒドロキシ保護基を用いた、R-MNTXの合成のための反応スキームを示す。」(15頁21行?16頁2行)
(1f)「詳細な説明
本発明は、R-MNTX[モルヒナニウム、17R,17-(シクロプロピルメチル)-4,5-エポキシ-3,14-ジヒドロキシ-17-メチル-6-オキソ-、塩、(5α)-(9Cl)]の立体選択的合成のための合成経路、実質的に純粋なR-MNTX、実質的に純粋なR-MNTXの結晶、実質的に純粋なR-MNTXを含む医薬製剤、及びこれらの使用方法を提供する。
R-MNTXは下記式の構造を有する:

ここでX^(-) は対イオンである。対イオンはあらゆる対イオンであってよく、双性イオンを含む。好ましくは、対イオンは医薬的に許容される。対イオンは、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、及びアニオン荷電有機種を含む。ハロゲン化物イオンは、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン又はこれらの組合せであり得る。一態様において、ハロゲン化物イオンはヨウ化物イオンである。好ましい態様において、ハロゲン化物イオンは臭化物イオンである。アニオン荷電有機種は、スルホン酸イオン又はカルボン酸イオンであってもよい。スルホン酸イオンは、メシレート、ベシレート、トシレート、又はトリフレートであってもよい。カルボン酸イオンは、ギ酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、又はフマル酸イオンであってもよい。」(16頁8?25行)
(1g)「例1
R-及びS-MNTXのHPLC分析
HPLC分析を、以下の方法を用いた、Varian Starソフトウェアによって制御されるVarian ProStar HPLCで行った:
HPLC方法I:
・・・・・・・・・・・・・・・
HPLC方法II:
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・典型的なHPLC流出入において、S-MNTXは、R-MNTXが溶出する約0.5分前に溶出する。S-MNTXの保持時間はおよそ9.3分である;R-MNTXの保持時間は約9.8分である。
図2に図解するように、MNTXのS体及びR体は、HPLCクロマトグラムにおいてはっきりと区別することができる。」(56頁1行?57頁12行)
(1h)「例2
R-MNTXの立体選択的合成
例2の合成スキームを図6に示す。
一般。全ての無水反応を炉乾(130℃)ガラス製品において、乾燥窒素(N_(2))の雰囲気下で行った。全ての市販の試薬及び溶媒は、更なる精製なしに使用した。核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、Varian Gemini又はVarian Mercury 300 MHzスペクトロメータのいずれかを用いて得た。質量スペクトルは、Finnigan LCQで測定した。HPLC純度は、Waters 717 Autosampler及びWaters 996 Photodiode Array Detectorを用いて測定した。
3-O-イソブチリル-ナルトレキソン(2)。化合物(1)(1.62g,4.75mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF)(120mL)溶液へ、0℃でトリエチルアミン(NEt_(3))(1.4mL,10mmol)を加えた。反応物を15分間、0℃で撹拌した後、塩化イソブチリル(1.05mL,10mmol)を滴下で加えた。反応混合物を0℃で1時間、そして室温で18時間撹拌し、飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO_(3))(aq)(70mL)及び30mlのH_(2)Oでクエンチした。反応物を塩化メチレン(CH_(2)Cl_(2))(2×200mL)で抽出した。抽出物を合わせ、塩水(130ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム(Na_(2)SO_(4))(50g)で乾燥し、真空内で濾過し濃縮した。粗製品をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(カラムサイズ40×450mm,シリカゲルを40×190mm充填したもの)(9.8:0.2→9.6:0.4→9.4:0.6CH_(2)Cl_(2)/MeOH)で精製し、化合物(2)(1.5g76.8%)を白色固体として得た。
^(1)H NMR・・・。MS[M+H]^(+):412。
3-O-イソブチリル-N-メチルナルトレキソンヨウ化物塩(3)。化合物(2)(689mg,1.67mmol)をスパチュラでガラス圧力容器へ移動した。容器をマニホールドにおいて5分間窒素で穏やかにパージし、高真空で真空にした。真空が一定となったとき、容器の下部を液体窒素に浸した。ヨウ化メチル(973mg,6.85mmol)をマニホールド上の別のフラスコへ窒素雰囲気中に分注し、液体窒素で凍結した。凍結ヨウ化メチル容器を高真空下で真空にした。主マニホールドチャンバーを高真空ポンプから分離した。ヨウ化メチルを周辺温度まで加温させ、液体窒素冷却した3-O-イソブチリル-ナルトレキソンに主チャンバーを介して昇華させた。昇華が完了すると、窒素をガラス圧力容器へゆっくりと浸出させた。そして容器を密封し、マニホールドから外し、88?90℃で17時間油浴で加熱した。窒素を容器に流れ込ませる前に、容器を周辺温度まで冷却させた。そして容器を高真空下で真空にし、不反応ヨウ化メチルの残留物を取り除き、白色固体を得た。固体のサンプルを ^(1)H NMR分析のために取り出した。これは優れた生成物への変換を示した。生成物の薄層クロマトグラフィー(TLC)[ジクロロメタン/メタノール9:1(v/v),順相シリカ,UV検出]は、出発材料(2)(R_(f)=0.8)の痕跡及び拡散領域(R_(f)=0?0.4)を示した。固体をジクロロメタン/メタノール(4:1、最小体積)に溶解し、シリカゲルカラム(超高純度シリカゲル、ジクロロメタン中に22g、床寸法:200mm×20mm内径)に適用した。カラムは以下のように溶出した:
ジクロロメタン/メタノール98:2(300ml)
ジクロロメタン/メタノール97:3(300ml)
ジクロロメタン/メタノール94:6(200ml)
ジクロロメタン/メタノール92:8(400ml)
分画をTLC[ジクロロメタン/メタノール9:1(v/v),順相シリカ,UV検出]で分析した。主成分のみを含んでいる分画(R_(f)=0.4)を合わせてメタノールで共にすすぎ、濃縮し、867mgの白色固体を得た。これは3-O-イソブチリル-ナルトレキソンに基づいて91%の収率を表す。^(1)H NMRは整合している。
N-メチルナルトレキソン臭化物/ヨウ化物塩(4)。化合物(3)(862mg,1.56mmol)をメタノール(13ml)に溶解した。この混合物に滅菌水(11.5ml)を加え、続けて48%水性臭化水素酸(1.5ml)を加えた。得られた混合物を窒素下で撹拌し、油浴で64-65℃で6.5時間加熱した。反応混合物の(メタノールに分散した)サンプルのTLC分析は、残留した出発材料(3)(R_(f)=0.4)を示さず、R_(f)=0-0.15での材料への変換を示した。混合物を22-25℃の恒温槽を有するロータリーエバポレーターで、およそ1mlの油性液体が残るまで濃縮した。アセトニトリル(10ml)を加え、混合物を再濃縮した。10mlのアセトニトリルを用いて、これを更に3回繰り返し、赤茶色のサクサクした発泡体(590mg,86%粗収率)を得た。
アニオン交換樹脂カラムの調製。30gのAG 1-X8樹脂を中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)カラム(20mm内径)に、100mlの水を用いて充填し、樹脂スラリーを作った。樹脂床を1.0N水性臭化水素酸(200ml)で、次いで滅菌水で、水性溶出液のpHがpH6?7になるまで洗浄した。およそ1.5Lの水が必要であった。
N-メチルナルトレキソン臭化物(5)。発泡体(4)(597mg)を水(6ml)/メタノール(2ml)中に分散した。いくらかの暗色の油が溶解せずに残った。透明な上澄みを調製したアニオン交換樹脂カラムに注ぎ込んだ。残留物をメタノール(0.2ml)/水(3ml)で2度洗浄した。上澄みをカラムに適用した。カラムを4.2Lの滅菌水で溶出し、?20mlの画分を集めた。N-メチルナルトレキソン塩の存在を液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)によって検出した。N-メチルナルトレキソンの大部分は、最初の1.5Lの溶出液にあり、TLC(4:1ジクロロメタン/メタノール,順相シリカ)によれば、そのうち最初の600mlが最も純粋な物質を含んでいた。最初の600mlの溶出液を合わせ、ロータリーエバポレーターで濃縮し、白みがかったガラス状物を得た。水浴を?35度に保持した。蒸発させながら溶出液の泡立ちを制御するために、注意が必要であった。
N-メチルナルトレキソン臭化物(5)の調製。メタノールからの再結晶。残留物を、窒素下のメタノール(60ml)中で還流の直下まで加温し、そしてガラスシンターを通して、少量の不溶性物質を取り除いた。この濾液を窒素の気流中に吹き出しておよそ10mlまで蒸発させ、そして氷/水中で窒素下で冷却した。いくらかの白色沈殿物が形成したが、明らかに大量の固体が溶液に残った。次いで、混合物を蒸発によって濃縮し、わずかに色づいたゴム状物を得た。これをメタノール(3ml×2)を用いて砕いた。粉砕の合間に、メタノールを注意深くピペットで除いた。白色残留物をメタノール(60ml)に溶解し、ガラスシンターを通して濾過した。濾液をおよそ1mlまで濃縮し、さらにメタノール(1ml)の一部を加えて、固体を砕いた。上澄みを前述のように除いた。固体を乾燥し、白色固体、バッチA(178.0mg)を得た。HPLC分析は、97.31%のR-MNTX、及び2.69%のS-MNTXを示した。
メタノール中の全ての濾液/上澄みを合わせ、濃縮し、白色ガラス状物を得た。この残留物をメタノール(3mlx2)を用いて砕き、前述のように注意深く上澄みを取り除いた。残留物をメタノール(50ml)に溶解し、ガラスシンターを通して濾過した。濾液を濃縮し、およそ1mlの溶液を得て、さらにメタノール(1ml)を加えて、固体を砕いた。前述のように上澄みを除き、残留物をさらにメタノール(2ml)を用いて砕いた。上澄みを除き、残留物を乾燥し、白色固体、バッチB(266.0mg)を得た。バッチBのHPLC分析は、97.39%のR-MNTX、及び2.61%のS-MNTXを示した。バッチA及びBを合わせた全収量436.8mg(64%)を示した。^(1)H NMRは整合している。MS[M+H]^(+):356。
バッチA及びBで実証されたように、メタノールからの再結晶は、高率のR-MNTXの生成物をもたらす。^(14)CH_(3)-標識材料を用いて、同じ条件下で行われた反応において、メタノールからの再結晶前の粗反応混合物の組成物は94.4%のR-MNTX^(*) 及び4.7%のS-MNTX^(*) であることが分かった。メタノールからの再結晶は、98.0%のR-MNTX^(*) 及び1.5%のS-MNTX^(*) を含む生成物をもたらした。メタノールからの2度目の再結晶は、98.3%のR-MNTX^(*) 及び1.2%のS-MNTX^(*) をもたらした。
当該合成プロトコルは、少ない率のS体のみを有する、94%より多いR体をもたらすと考えられる。合成スキーム1を用いて、実質的に純粋な物質を、クロマトグラフィーカラム、調製HPLC又は再結晶でさらに得ることが可能である。イオン交換に続いての1回の再結晶において、R体の純度は98%より高かった。2度目の再結晶は、98.3%のR-MNTXをもたらした。1?4の回(あるいは6回又は10回のようにもっと多回)の、さらなる再結晶及び/又はクロマトグラフィーが、99.95%以上のR体を保証し、微量のS体が存在したとしてもそれを除くと考えられる。」(57頁20行?61頁27行)
(1i)「

」(図面頁の1/6、図1)
(1j)「

」(図面頁の1/6、図2)
(1k)「

」(図面頁の4/6、図6)

イ 刊行物2
(2a)「1.2.3 化学構造と溶解性
・・・・・・・・・・・・・・・
ix.結晶多形では準安定形(低融点)のものの方が安定形(高融点)のものより溶けやすい(例.インドメタシン).^(*)
x.同種薬品で無晶性のものは結晶より溶けやすい(例.novobiocin)^(**).」26頁10?27行
(2b)「多形polymorphism:同一化合物が異なる結晶構造,結晶形をもつ現象を多形という.多形の結晶はX線回折像,融点,屈折率,溶解度などが異なる.多くの化合物は多形で,医薬品でも,アスピリン,インドメタシン,カカオ脂,グリセリド,脂肪酸,スルホンアミド類,セファロリジン,バルビタール酸,chloramphenicol palmitate,ステロイドホルモン(プレドニゾロン,エストロンなど),リボフラビンなど多くのものについて結晶多形が報告されている.^(3)) プロゲステロンには5種の結晶形が知られている.
結晶多形によって溶解度が異なる事実は製剤学的に重要で,多くの場合,結晶の溶解度(または溶解速度)は消化管吸収を律速するが,溶解度の大きい方が吸収が速い.多形のうち安定性の低い結晶(準安定形meta-stable form)の方が安定形stable formより融点が低く,溶解度も大きい.Ostwaldによれば,溶液から結晶が析出するさいには,準安定形の方がさきに結晶化する(逐次転移の法則law of successive transformation).結晶形の移行は,再結溶媒,結晶化の速さ(冷却温度)および保存の温度条件,粉砕などによって起きる.たとえばアスピリンを95%エタノールから再結したものと,n-ヘキサンから再結したものは結晶形が異なるが,後者の方がはるかに速やかに水に溶解する.」(111頁3から18行)
(2c)「c)結晶形crystal form
すでに述べたように,多くの薬物は結晶多形^(*) を示し,多形のうち準安定形の方が安定形より溶解度が大きい.
Chloramphenicol palmitateの結晶には少なくともA,B2種の多形があり,B型の方が易溶性である.懸濁液を経口投与するとき,B型のC_(max) はA型の7倍であることが報告されている.^(5)) また,インドメタシンには3種の結晶多形があるが,このうちα,γ両型が実用される.坐剤にした場合,α型の溶出性はγ型の約2倍とすぐれており・・・血中濃度もα型の坐剤の方が高い・・・.
・・・・・・・・・・・・・・・
結晶多形のうち,溶解度の大きい準安定形は安定形より熱力学的に不安定で,時間がたつにつれて前者は後者に転移する.したがって準安定形の薬物を用いて製剤をつくる場合は,そのバイオアベイラビリティが保存中に低下することに留意する必要がある.
薬物の無晶形のものは溶解時に結晶の格子エネルギーに打ち勝つ必要がないので,結晶性のものに比べて溶解しやすい.インスリン-亜鉛錯体には結晶性のものと無晶性のものがあるが,後者の方が吸収が速やかである・・・.」(256頁下から3行?257頁下から8行)

ウ 刊行物3
(3a)「IV.メソモルフィック結晶(mesomorphic crystalline)^(〔訳註5〕) の取扱い□
ある種の物質は結晶となるときに複数の結晶状態をとりうることが知られている.その結晶状態に決定する要因には,結晶化溶媒の物性,結晶化するときの温度,不純物の有無などがある.このような性質を結晶多形または単に多形(polymorphism)という.可能な結晶状態のなかには準安定な結晶がある.準安定状態(metastable state)の結晶はより安定な状態に変化して異なる物理化学性質を示すことになる.この変化は2つのタイプに分けられる.可逆的転移である互変(enantiotropy)と不可逆的転移の単変(monotropy)である.前者は文字どおり多形のそれぞれの状態が相互変換可能な場合である.後者は,熱力学的に不安定な状態からより安定な状態へ変化する現象であり,一般的にはこの種の転移が多い.ある薬物が異なる結晶形を示すときに,それぞれの結晶形を識別する方法には,融点測定,溶解度測定,示差走査熱量測定,熱重量分析,赤外分光,X線回折,走査電子顕微鏡による形態観察などがある.
一般論として,準安定状態の物質には安定状態に比べてその溶解度および溶解速度が大きいという特徴がある.極端な場合,両状態の溶解度の差が4倍以上にもなることがあるが^(21,22),通常よく観察されるのは溶解度が50?100%程度上昇する現象である^(23).一例としてここではリボフラビン(riboflavin)を挙げる.この薬物には3種の多形があり,その溶解度はそれぞれ60mg/L,810mg/L,1200mg/Lと大きな開きがみられる^(24).また,準安定状態の結晶を溶媒と接触できるようにしておくと,この結晶は最も安定な状態に徐々に変化し,これに伴って溶解度が低下することがある.たとえば,ノボビオシン(novobiocin)は酸性のアモルファス固体(無定形または非晶質固体)であるが,溶解度の非常に低い結晶に変化しやすい^(25).このためにノボビオシンを懸濁液として投与することは困難である.薬物を噴霧乾燥(spray drying)によって溶解度の高いアモルファス固体とすることがある.この場合,純粋な薬物を噴霧しても良いが,実際には均質な分散薬物を得るために添加剤を加えることが多い^(26).
ある結晶状態が他の状態に変化する現象すなわち転移は,工業的な製造プロセスにおいても起こりうる.たとえば,クロロキン二リン酸(chloroquine diphosphate)の一水和物の結晶を高温で保存しておくと無水物となることがある.この脱水反応は薬物を粉砕する際にも起こりやすい.さらにクロロキン二リン酸無水物を湿度の高い状態で保存していると他の水和物に転移することもある.また,薬物の原末を圧縮する際にも結晶形の変化が起こりうる^(27).クロラムフェニコール(chloramphenicol)のステアリン酸塩の場合は,A結晶(form A)をコロイドシリカ(coloidal silica)の存在下で粉砕するとB結晶(form B)に変化することが知られている^(28).以上の事例から明らかなことではあるが,固体の薬物を製造する場合は,プロセスを標準化するのと同時に,品質管理の一環として固体薬物の結晶状態に関するより精密な検査を行うことが特に重要であることをここで強調しておきたい.」(452頁下から12行?453頁20行)

エ 刊行物4
(4a)「4.3.3 晶析
a.晶析とその役割
晶析は,目的の特性を有する結晶を,再現性よく,確実に製造する技術である.晶析は,化学物質の製造全般に広く用いられており,分離精製のみならず,機能性固体(結晶)の生産という観点からも重要である.たとえば,糖・アミノ酸などの食品の製造,記録媒体としてのα-鉄(α-Fe)・マグへマイト(γ-Fe_(2)O_(3))などの電子材料の製造,ナノ粒子の製造,さらにその90%が結晶である医薬品(原薬)とその中間体の製造などであり,いずれも結晶特性の制御が高度に要求されている.
1998年の調査(化学工学会晶析技術特別研究会)によれば,わが国で行われている晶析は,80%が溶液からの晶析である.また,75%が回分法で行われている.次に融液からの晶析が多く,大規模の精製晶析についても優れた技術,たとえばKCP法(呉羽テクノエンジ)が開発されている.
b.結晶特性
おもな結晶特性は,晶癖・粒径・粒径分布・純度・多形・結晶化度である.これらの特性が異なれば,溶解度・溶解速度・安定性・比容・操作性(ろ過性(注:ろ過の「ろ」は原文ではさんずいに戸であるが、ひらがなで記す。以下も同じ。)・粉じん爆発性・打錠性・計量性)などが異なり,医薬品ではとくにバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が異なることから,結晶特性の制御は非常に重要である.
(i) 晶癖 ・・・
(ii) 粒径・粒径分布 ・・・
(iii) 純度 結晶への不純物の取込みについては,二つのメカニズムがある.母液の結晶への取込み,あるいは結晶表面への付着によるものと,結晶構造への組込みによるものである.前者は,結晶成長の粗さ,凝集などによって引き起こされるものであり,晶析速度の調整,洗浄などで解決する可能性がある.後者は,溶媒の変更,多形の選択など根本的な変更が必要である.結晶溶媒(結晶構造に組み込まれた溶媒)も不純物と見なすことができる.
(iv) 多形 化合物は同じで,結晶構造が異なるものである.結晶溶媒の有無で溶媒和結晶は擬多形とよばれている.多形結晶は,外観のみでは判断できない.粉末あるいは単結晶X線回折・赤外吸収(IR)・示差走査熱量測定(DSC)などで同定する必要がある.多形は,溶媒の種類・温度・冷却速度・過飽和度・かくはん速度・不純物などに影響を受ける.溶媒によって異なる多形が析出する場合が多く,重要な溶媒については混合溶媒も含めて,どのような結晶が析出するか,点検することが必要である.溶媒を選択することによって,目的の結晶多形が唯一選択的に得られる場合と,いったん析出した結晶多形(準安定結晶)が経時的に他の多形(安定結晶)に転移する,いわゆる溶媒媒介転移が起こる場合がある.溶媒媒介転移が起こるのは,準安定結晶と安定結晶の溶解度が異なるためである.どの多形が析出するかはオストワルドの段階則(Ostwald's step rule;状態の移行は,エネルギー的にもっとも近い状態を経由して順次に進行するという法則)に従うとされており,通常,溶解度が大きいほうの結晶が先に析出する.しかし,オストワルドの段階則に従わない場合もあり,多形を制御するためには,平衡論(オストワルドの段階則)のみではなく,速度論的な検討を行う必要がある.
c.晶析操作
晶析操作としては,冷却晶析,濃縮晶析,反応晶析,貧溶媒晶析が多い.・・・」(178頁左欄5行?右欄下から7行)

オ 刊行物5
(5a)「再結晶 [英 recrystallization・・・][1]結晶性物質を溶媒に溶解し,適当な方法でふたたび結晶として析出させる操作をいう.そのためには,温度による溶解度の相違を利用して高温の飽和溶液を冷却するとか,溶媒を蒸発させて濃縮するとか,溶媒に他の適当な溶媒を加えて溶解度を減少させるなどの方法が取られる.共存する不純物は多くの場合溶液中に残るので,精製の方法としてよく使われる.」(504頁右欄017の項)

カ 刊行物6
(6a)「有機溶剤
・・・・・・・・・・・・・・・
メタノール(bp64.7°,水と混和する)
溶剤としての性質からいうと,メタノールは水とエタノールとの,ほぼ中間にあり,価も安く沸点もエタノールよりも低いので,用途はエタノール以上に広いといっても過言ではない.」(55頁16?末行)
(6b)「分別結晶(分別晶出)
2種あるいは,それ以上の物質の混合物を,分離精製するには,再結晶^(*)(Recrystallization・・・)なる仕方による.各物質の溶剤への,溶解度(Solubility・・・)は違っているので,その溶剤を適当に使った場合に,一方の物質は析出し,他方の物質は母液中に残る性質を利用するのである.
また2物質の,同一溶剤中から晶出する速度が,著しく異っているときにも,分別結晶の仕方によって,両物質を分離できる.」(526頁16?22行)
(6c)「飽和溶液を冷やして結晶させる仕方
この仕方は再結晶の一般的な仕方であって,普通に“再結晶を行なう”というときには,この仕方か,あるいはつぎに述べる仕方による.
再結晶を行なうには,溶質を加えた溶剤を沸点まで熱して,その中に溶質を溶けるだけ溶かし,熱時にこし分け,ろ液を冷やして結晶を析出させる.
溶剤の選び方 ・・・予試験を各種の溶剤について行ない,冷熱両時の溶解度の差の最大なものを採用する.しかし・・・結晶を母液からこし分けることが困難なものや,結晶の析出速度があまりに速いものは,操作が面倒であるから・・・他のものを選ぶ方がよい.・・・
物質の溶かし方 ・・・一般に溶剤は過量に使わないようにする.・・・
さて透明なろ液を得てから,冷やして結晶を析出させるのであるが,その冷やし方は,大きな結晶を作ろうとするのと,小さな結晶を作ろうとするのとで違ってくる・・・・大きな結晶を作る場合には・・・極ゆるゆると冷やす.また小さな結晶を作る場合には・・・急に冷やす.いずれの場合でも,液がある温度まで下がっても,すぐにその条件で析出し得る結晶が全部析出するものではないから,しばらくそのまま放置して,待たなければならない.このようにして常温で出た結晶をこし分ける.さらにその「ろ液」を冷やすと,なお多量の結晶を得る場合がある.」(527頁26行?529頁17行)
(6d)「溶液を濃縮して結晶させる仕方
物質の溶液を蒸発濃縮して,結晶を析出させることは,物質を精製する点からいえば,“飽和溶液を冷やして結晶させる仕方”(p.527)よりも好ましくはないが,溶液を冷やしただけでは,結晶の出る量が少ないから,通常は適当に濃縮して結晶を出す場合が多い.濃縮結晶を行なう場合は,
○1(注:原文は○の中に1であるが、このように表記する。以下も同じ。) 溶剤を使いすぎたとき 誤って溶剤を多量に使いすぎたときは,無論のことであるが,物質が飽和溶液になる量の溶剤で溶かすことは,操作に時間がかかるから,物質を溶かしやすい程度に溶剤を幾分過量に加え,つぎに適当に濃縮して,結晶を出すことはよく行なっている.
○2 物質を熱して溶かすことができないとき 物質が熱のために,分解しやすくて,熱することができない場合には,まず物質を常温で溶剤に飽和させ,ろ過してから減圧,低温で溶剤の一部を留去する.
○3 冷熱両時の物質の溶解度に大差がないとき ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
溶剤の一部分を蒸散させて結晶させるときの結晶容器は,物質の性質や,溶剤の蒸発を常温で行なうか,熱時で行なうかなどによって違ってくる.常温で蒸発させる場合には,口が広くて浅い「さら」を使う.
・・・・・・・・・・・・・・・
溶剤がエーテル,アセトンなどのように引火性,もしくは高価なもののときには,水浴上で蒸発することは避け,溶剤を蒸留回収する.この際には容器として三角フラスコを使い,蒸留中にフラスコ内の液の周囲に,乾燥固着してくる結晶は,ときどきフラスコを振り動かして,液中に落して溶かすか,または固着しているフラスコの外壁に,口で息を吹きかけて溶かす・・・.
第1回の結晶をこし分けた母液をそのまま放置するか,または適度の濃さまで蒸発または蒸留濃縮すると,第2回の結晶を得るが,実際には冷やして析出させる仕方と,濃縮して析出させる仕方とを,あわせて行なう場合が多い.」(531頁17行?532頁下から5行)
(6e)「溶液に他の液体を加えて結晶させる仕方
溶液を冷やすか,溶剤を蒸散または留去して,過飽和の状態に導く仕方以外に,溶液に他の液体を混ぜて,溶質の溶解度を減じ,結晶を析出させる仕方もある.
これに使う溶剤のおもな組合わせは,つぎの通りである.
・・・・・・・・・・・・・・・
この仕方のうち,最も多く使われるものは,水とエタノールとである.この二つは互に随意の比に混じるから,一方に溶けて他方に溶けない性質の物質は,この二つの溶剤を適当に使い分ければ,よく結晶する.」(533頁15?26行)

キ 刊行物7
(7a)「a.再結晶
物質の精製法として蒸留法,および再結晶法は基本的操作である.再結晶は,加熱下で溶質を溶媒に溶解して飽和溶液とし,次にこの溶液を冷却すると溶質の溶解度が下がり,過剰の溶質は沈殿(結晶)し,一方,不純物は飽和溶液に達せず,そのまま溶液に留まる.・・・不純物・・・は再結晶により除去できることになる.
(i)試料の純度 再結晶を行う試料の純度は特に有機物では最初に薄層クロマトグラフィーで確認しておく.その際,用いた展開剤の極性と薄層上のR_(f) 値との関係は再結晶の溶媒選択に役立つし,また不純物の大よその極性も分かる.精製する物質の純度は高い方が望ましく,純度があまりにも低すぎる場合には、蒸留,カラムクロマトグラフィーや活性炭による脱色を行うなどして,夾雑物をある程度除去しておいた方がよい.勿論,精製が可能かどうかは再結晶の原理からみて,溶解度曲線の形に関係するので,不純物が多い場合にも,純粋な結晶が得られることも少なくない.
(ii)溶媒の選択 再結晶溶媒の選択には一定の規則があるわけでなく,試行錯誤により選択するのが基本である.したがって,試料約20mg程度を試験管で溶媒に対する溶解性や結晶性を調べてみるとよい.既知化合物であれば,化合物辞典などで再結晶溶媒や溶解度を調べるのがよい^(1)).未知化合物においても,同族体の既知化合物のデータを参照するとよい.しかし,古くから,同族体は同族体をよく溶かすという経験則があり,これを基本にして選ぶとよい選択ができる.つまり精製しようとする化合物が,水素結合性であるのか非水素結合性か,極性基または疎水基をもっているかどうか,イオン性であるかどうかなどである.一般には水素結合性,極性を考慮すれば,次の6種の溶媒の中から選択すれば十分であろう.
ヘキサン<ベンゼン<酢酸エチル<アセトン<エタノール<水(極性小から大)
さらにこの中間の極性のものが欲しい場合には,2種の溶媒を混合するか,表4・5を参考にされたい.その際,極性値(誘電率ε,溶解度パラメーターδ,極性値E_(T);ε,δ,E_(T) は数字が大きいと極性が大きい)や沸点,融点を選択の基準とすればよい.反応性溶媒や沸点が高い溶媒はできれば避けた方がよい.このような溶媒では有機物の再結晶中に脱離や置換が起きた多数の例がある.
(iii)加熱溶解 溶解は三角フラスコを用いて水浴中でふりまぜながら行うが,溶解しにくい結晶の場合には,結晶を粉砕して,環流下,マグネチックスターラーでかくはんしながら1時間ほど加熱溶解させる.超音波による溶解法も試みてみてもよい.
(iv)結晶化 結晶が析出する速さ,大きさや形は放冷速度,溶媒,濃度などによって異なる.時には結晶組成が異なってしまうこともある.一般に低融点のものや分子量の大きな物質は結晶化しにくい傾向がある.結晶化が起きにくい場合には,○1放冷を徐々に行う(湯浴に浸したままにしておく).○2結晶の種を入れる.○3管壁をガラス棒などで擦り,種をつくる.○4冷蔵庫内に数日から数か月放置する.○5混合溶媒にして溶解度を下げる.○6自然蒸発を待つ.急冷すると結晶にならず,オイル状となり精製ができないことも多い.論文中には記載がないが,X線構造解析用の結晶が放置したNMR試料管中から偶然得られたということも少なくない.
(v)純度の確認 物質の純度はクロマトグラフィー,各種スペクトル,元素分析などの危機分析が最近の微量分析の方法であるが,融点測定も手軽にできる方法でありおろそかにしてはいけない.融点は,物質が不純であれば文献値よりも低下し,不明瞭になる.また融点測定時に液晶状態が観測される場合もあるから注意されたい.」(184頁20行?186頁末行)
(7b)「

」(186頁)

ク 刊行物8
(8a)「医薬品の大半は化学合成あるいは天然物由来の有機化合物であり,それらは製造の最終工程で晶析により結晶性粉末として調製されることが多い.
結晶は晶析条件に依存してさまざまな構造,形状,大きさ,凝集状態などを示すが,それら固体物性あるいは粉体物性は,医薬品の生物学的有効性,安定性,製剤化などに重要な影響を与える.たとえば,結晶構造の異なる多形や晶癖の異なる結晶の溶解速度は一般的に異なるため,医薬品の生物学的有効性に相違が生じる.こうした相違は,散剤,錠剤,顆粒剤,カプセル剤などといった固体状態の医薬品を経口投与する場合においてとくに顕著に表れる.医薬品の作用部位への到達濃度を決定する要因の一つに投与部位からの吸収の効果があり,経口投与される医薬品では製剤から放出される主薬の溶解性が消化管での吸収に大きく影響するからである.
結晶多形の密度や融点,格子エネルギーなどは異なり,結果として熱や湿度,光といったストレスに対する結晶の物理的あるいは化学的な安定性に相違が生じる.このような理由から保存条件によっては準安定形から安定形への結晶転移が生じ,医薬品の生物学的有効性が変わることもあり得る.したがって,安定性の観点からは,一般に常温で安定な結晶形が選択されることが多い.しかし,一方で準安定形の溶解性が安定形と比較して優位に優れる場合があることから,あえて準安定形を開発の基本形として選択し,生物学的有効性に優れた製剤を設計することもある.
結晶中に溶媒が取り込まれた溶媒和物の結晶は,厳密な意味での結晶多形と区別するため疑似結晶多形と称される.・・・
医薬品は人体に直接作用するものである.疾病の治療や予防に有効であることはもとより,期待通りの薬効が発揮されるように一定の品質をもち,安全性が確保されることが強く要求されている.医薬品の結晶化は通常、溶液の冷却,溶媒の蒸散,低溶解性の溶媒の添加,塩の形成などの方法と,種結晶をかくはん下添加する方法などをさまざまに組み合わせることによって達成される.これらの結晶化条件にかかわる溶媒の特性,過飽和度,温度などのさまざまな因子が,結晶の特性を決定する.したがって,晶析条件と析出する結晶のさまざまな特性の相関を明確にし^(1,2)),医薬品の品質を保証することが重要である^(3)).本書では,そのような医薬品の品質設計の観点から結晶化を概説する.」(109頁3行?110頁23行)
(8b)「6.2.1 結晶多形の検索
複数の結晶相が存在する結晶多形は,医薬品においてもしばしば認められる現象である.しかし,結晶構造と晶析条件との相間はいまだ解明されておらず,結晶多形の有無は試行錯誤を繰り返しつつ求めざるを得ないのが現状である.したがって,偶然に見いだされる場合も少なくないが,結晶多形に重要な影響を与えると思われる各因子を適宜組み合わせ,比較的簡便な方法で検索しているいくつかの報告もある^(4,5)).
表6.1はその例の一つで,抗高血圧剤あるいは利尿剤として広く用いられているFurosemide[図6.1(a)]での析出条件と,各結晶形の析出挙動をまとめたものである^(4)).医薬品における結晶多形の制御は溶媒の選択によってなされることが多いが,ここでも水を含めて18種類の溶媒が検討に用いられた.これら溶媒に対して,さまざまな冷却法や溶媒の蒸発法を組み合わせることにより温度や過飽和度の異なる条件を発生させた.その結果,従来はI形とII形の2種の多形についてだけ報告されていたが,新たに多形1種(III形)と,N,N-ジメチルホルムアミドおよび1,4-ジオキサンを含有した2種の溶媒和物(IV形およびV形)が見いだされた.表6.1(1)の加温溶解し徐冷する方法においてはメタノールやエタノールのような低沸点の溶媒からI形が,ブタノールなどのより高沸点の溶媒からII形が析出する傾向がみられた.(3)の有機溶媒に加温溶解し水を添加する方法でも,また(4)のN,N-ジメチルホルムアミドに加温溶解し他の溶媒を添加する方法においても,同様の傾向がみられた.」(110頁25行?111頁16行)
(8c)「

」(111?112頁表6.1)
(8d)「

」(113頁図6.1)

ケ 刊行物9
(9a)「ロータリーエバポレーター [rotary evaporator]目的とする溶液を入れたフラスコをすり合わせソケットで冷却器と結合し,図のように水浴で加熱しながら減圧,回転することにより,溶媒を速やかに比較的低い温度で蒸発させる装置.実験室で溶液の濃縮や溶媒回収に用いられる.

」(1510頁左欄040の項)

3 刊行物に記載された発明
刊行物1は、R-MNTXと略称される(R)-N-メチルナルトレキソンに関する特許文献である(摘示(1a)(1b))。
刊行物1には、MNTXと略称されるN-メチルナルトレキソンが、ナルトレキソンの第四級誘導体であって臭化物塩などの塩として存在すること、MNTXはキラル分子であって、例えばN-メチルナルトレキソン臭化物は第四級の窒素が以下のR又はS立体配置

であり得ること(摘示(1c)(1i))、MNTXは末梢オピオイドアンタゴニストであって、オピオイドの鎮痛処置に起因する吐き気等の副作用をオピオイドの効果を低下させることなく減少させることが知られていたこと(摘示(1c))が記載されている。
そして、刊行物1には、刊行物1に記載の発明は、MNTXのうちR立体配置を有するR-MNTXに着目して、実質的に純粋なR-MNTXを提供するものであること(摘示(1d))、R-MNTXは以下の構造

を有し、X^(-) は対イオンであって臭化物イオンなどであることが記載されている(摘示(1f))。
そして、例2には、実際に、図6の合成スキームに従って、以下の化合物1

から出発してN-メチルナルトレキソン臭化物/ヨウ化物塩を取得し、アニオン交換樹脂カラムで処理して分取した溶出液を濃縮してN-メチルナルトレキソン臭化物をガラス状物として取得し、バッチA及びBにおいてメタノール溶液からの濃縮による再結晶により白色固体を取得したこと、バッチAではR-MNTX97.31%及びS-MNTX2.69%であり、バッチBではR-MNTX97.39%及びS-MNTX2.61%であったこと、また、^(14)CH_(3)-標識材料を用いた別の実験では、メタノールからの2度の再結晶により、R-MNTX98.3%及びS-MNTX1.2%であったことが、記載されている(摘示(1h))。
上記の、バッチA、バッチB及び別の実験は、再結晶と明記されていることから得られた固体は結晶であって、それぞれ、N-メチルナルトレキソン臭化物の97.31%、97.39%及び98.3%がR-MNTXである結晶であると認められる。
したがって、刊行物1には、
「(R)-N-メチルナルトレキソン臭化物の結晶」
の発明(以下「引用発明」といい、その化合物を「引用化合物」という。)が記載されているということができる。

4 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用化合物である「(R)-N-メチルナルトレキソン臭化物」は、本願発明の「化合物1:

[式中、前記化合物は窒素について(R)立体配置である]」と、同じ化学構造の化合物であり(以下、この化合物を「化合物M」という。)、また、結晶として取得できるものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「化合物Mの結晶」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
本願発明においては、化合物Mが、「7.9±0.2度、8.18±0.2度、20.3±0.2度、21.44±0.2度、24.11±0.2度および25.12±0.2度の2θにおけるピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる」と、特定の2θピークの組を含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられると特定されているのに対し、引用発明においてそのように特定されていない点

5 相違点についての検討

ア 化合物Mを特定の2θピークの組を含むX線粉末回折パターンを有する結晶とすることについて検討する。
この出願の優先日当時、一般に、医薬化合物については、安定性、純度、扱いやすさ等の観点において結晶性の物質が優れていることから、その物質を結晶化することについては強い動機付けがあり、医薬化合物が結晶で得られる条件を検討することは、文献を示すまでもなく、当業者がごく普通に行うことであるものと認められる。結晶化の条件により得られる結晶が異なることがあることも、よく知られている(摘示(2a)?(2c)、(3a))。
そうすると、化合物Mについても、当業者が結晶が得られる条件を検討したり、得られた結晶について分析することには、十分な動機付けを認めることができる。
そして、本願発明の上記「7.9±0.2度、8.18±0.2度、20.3±0.2度、21.44±0.2度、24.11±0.2度および25.12±0.2度の2θにおけるピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる」結晶とは、本願明細書の段落【0023】?【0026】に、
「B形態は、そのXRPDパターンにおいて実質的に全てのピークを、約7.9、8.18、20.3、21.44、24.11および25.12度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。」、
「ある態様において、B形態の化合物1は、そのXRPDパターンにおいて次の表2Aに挙げた実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
表2A.B形態のXRPDピーク


と記載されていることからみて、本願明細書において、B形態として記載されている結晶であると認められる。
そして、本願明細書には、本願発明の化合物M(審決注;上記4のとおり、化合物1と同じ)のB形態を製造するための方法については、
段落【0075】の例2に、
「B形態の調製
化合物1(52.8mg)をメタノール(35mL)に音波破砕しつつ溶解して、透明な溶液を得た。溶液を0.2μmのナイロンフィルター(Whatman)を通してろ過し、回転蒸発器を用いて蒸発させた(周囲温度浴を用いた)。試料が目視的に乾燥した後、試料を回転蒸発器に約1時間静置した。ニードル(needle)およびブレード(blade)を有する複屈折の球晶(spherulites)を含む白色固体を得た。蒸発を約45℃で行った場合に、A形態のXRPDパターンおよび追加ピークを観察した。」
と記載され、
段落【0080】?【0102】の「化合物の多形スクリーニング」と題する例6において、種々の結晶化条件と生成する結晶形の関係を調べた表が記載される中、その表7(段落【0088】?【0091】)に、メタノールからの結晶化で形態Bが生成することについて、
「表7.化合物Mの多形スクリーン

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・」
と記載されている。ここで、「条件」の欄の「RE」は、段落【0082】の
「用語「回転蒸発」(「RE」)とは、化合物1または非晶質の化合物1の濃縮溶液を、種々の有機溶媒中に調製し、0.2μmのナイロンフィルターを通してオープンバイアル中にろ過する方法を意味する。いくつかのケースにおいては、ろ過した溶液の4?5mLのアリコートを、透明バイアル中に分取した。バイアルを回転蒸発器に取り付けて、溶媒を蒸発させて乾燥した。水浴は通常は周囲温度で行ったが、いくつかのケースにおいては水浴は約50℃に加熱して蒸発を促進した。回転蒸発後に試料が完全に乾燥していない場合は、バイアルを真空オーブン中に25℃で18時間入れた。固体を分離して分析した。」
である。
上記例2及び例6の化合物MのB形態の製造方法は、化合物Mをメタノールに溶かし、回転蒸発器を用いて周囲温度にて溶媒のメタノールを蒸発させる、というものである。
このような操作は、ごく一般的な、溶液の濃縮による結晶化であって(摘示(4a)(5a)(6d)(7a)(8a)(8b))、溶媒の選択にしても、メタノールのような、ありふれた、医薬化合物の結晶化に際して当業者が通常選択する溶媒が用いられるものであると認められ(摘示(6a)(7b)(8c))、しかも、メタノールは、刊行物1において再結晶のために用いられている溶媒でもある(摘示(1h))。蒸発を常温で行うか熱時で行うか、また、減圧を用いるかも、当業者が通常選択し得る事項である(摘示(6d)(8c))。回転蒸発器とは、ロータリーエバポレーターを意味するものと解されるが、ロータリーエバポレーターは減圧・回転を用いて溶液の溶媒を速やかに比較的低い温度で蒸発させる装置として、実験室で溶液の濃縮に普通に用いられるものであって(摘示(9a))、ロータリーエバポレーターによる周囲温度すなわち室温での濃縮も、当業者が通常選択することであると認められる。なお、例2では「化合物1(52.8mg)をメタノール(35mL)に音波破砕しつつ溶解して、透明な溶液を得た」としているが、超音波による溶解法も当業者が通常試みる手段である(摘示(7a))。
してみると、本願発明の化合物MのB形態の結晶は、引用発明において、当業者が、通常行う再結晶の操作により得られるものであると認められる。
そして、相違点に係る、特定の2θピークの組を含むX線粉末回折パターンを有する結晶である点は、当業者が、結晶性が期待される医薬化合物の分析において通常用いるX線回折を行った場合に得られる結果を、提示しただけのことに過ぎない。
以上によれば、引用発明において、化合物Mの結晶を得ることを試み、その際に結晶化条件を検討したり、得られた結晶について分析することにより、相違点に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ なお、本願明細書の上記例2及び例6には、回転蒸発器での蒸発温度が45℃であった場合にはA形態が生成することが記載されている(例2の摘示箇所の最終行、例6の表7の摘示箇所の最終行)。また、例6には、メタノールからの結晶化でも条件が「FE」又は「SE」の場合にはA形態が生成することが記載されている(例6の表7の摘示箇所の1、2行)。ここで、「FA」は段落【0081】に「高速蒸発」、「溶液は、周囲条件下でオープンバイアル中で蒸発させた」と記載される条件であり、「SE」は段落【0083】に「除蒸発」、「溶液を、ピンホールを開けたアルミニウムホイルで蓋をしたバイアル中で、周囲条件にて蒸発させた」と記載される条件である。
しかし、上記アで述べたとおり、溶液の濃縮による結晶化に際し、静置又は放置して蒸発させる方法以外に、ロータリーエバポレーターによる周囲温度すなわち室温での濃縮も、当業者が当然に選択しうることであるから、ロータリーエバポレーターで45℃で濃縮した場合やロータリーエバポレーターを用いずに周囲温度で蒸発させた場合にB形態とは異なるA形態の結晶が得られるとしても、本願発明の化合物MのB形態の結晶が、引用発明において、当業者が通常行う再結晶の操作を行う場合に得られるものであることに、変わりはない。

6 効果について
本願発明の効果は、本願明細書の段落【0005】に「本発明は、末梢μオピオイド受容体アンタゴニストである化合物1の、固体形態を提供する」と記載され、段落【0013】に「ある態様において、本発明はA形態の化合物1を提供する」と記載され、段落【0023】に「ある態様において、本発明はB形態の化合物1を提供する」と記載され、他に、摘示は省略するが、例1に「A形態の調製」の実施例が記載され、例6の「化合物の多形スクリーニング」においてA形態が多くの条件で得られることが記載され、例7にA形態の種々の溶媒中での溶解度が記載されている一方、化合物MのB形態については、物理化学的性質や生物化学的性質について特段の記載はされていないことからみて、化合物Mの、A形態とは異なるB形態の結晶を提供できたことであると認められる。
しかし、引用発明において、相違点に係る本願発明の構成を備えた、化合物MのB形態の結晶とすることは、当業者が容易に想到し得ることは、上記5で述べたとおりであり、その結晶は、A形態とは異なるB形態の結晶に固有の性質を当然に備えていると解されるから、上記のB形態の結晶を提供できたという本願発明の効果は、格別のものであるとすることはできない。

7 まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-22 
結審通知日 2015-10-27 
審決日 2015-11-16 
出願番号 特願2010-501013(P2010-501013)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 保  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 中田 とし子
木村 敏康
発明の名称 結晶形およびその使用  
代理人 鮫島 睦  
代理人 田村 恭生  
代理人 鮫島 睦  
代理人 品川 永敏  
代理人 田村 恭生  
代理人 品川 永敏  
代理人 森本 靖  
代理人 森本 靖  

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