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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04H
管理番号 1312997
審判番号 不服2014-11270  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-13 
確定日 2016-03-31 
事件の表示 特願2009-261157「デジタル送信機用監視装置及び監視方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月 2日出願公開、特開2011-109332〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成21年11月16日の出願であって,平成26年3月7日付けで拒絶査定され,同年6月13日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされ,平成27年5月15日付けで,当審から拒絶理由を通知(以下「当審第1拒絶理由通知」という。)し,同年7月10日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,同年9月14日付けで,当審から拒絶理由(最後)を通知(以下「当審第2拒絶理由通知」という。)し,同年10月30日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされたものである。


第2 本願発明

1. 本件補正の概要
(1) 平成27年10月30日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,当審第1拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において,最後に受けた当審第2拒絶理由通知に係る特許法第五十条の規定により指定された期間内になされたものである。
そして,当審第2拒絶理由通知は,特許法第36条第4項第1号,同条第6項第1号,同項第2号を拒絶の理由とする通知である。

(2) 本件補正は,本件補正前の平成27年7月10日付け手続補正書の特許請求の範囲における請求項1の記載を,以下のように補正することを含むものである。(下線は請求人が付与。)

[本件補正前]
【請求項1】
入力されたデジタル放送のOFDM信号をTS信号に復調する手段と、前記TS信号からPATおよび該PATのCCを取得する手段と、前記PATの周期性と前記PATのCCの値連続性の少なくともいずれか一方を解析する解析手段と、前記解析手段による情報によりアラームとして外部に出力する手段を具備し、前記解析手段は、TS信号が無意味な信号となったとき、連続する少なくとも2つのPATの周期が予め定められた周期ではないことを検知することでデジタル放送のOFDM信号の変調異常として、この情報をアラームとすることを特徴とするデジタル送信用監視装置。

[本件補正後]
【請求項1】
入力されたデジタル放送のOFDM信号をTS信号に復調する手段と、前記TS信号からPATおよび該PATのCCを取得する手段と、前記PATの周期性と前記PATのCCの値連続性の少なくともいずれか一方を解析する解析手段と、前記解析手段による情報によりアラームとして外部に出力する手段を具備し、前記解析手段は、TS信号内にあるPATの周期が予め定められた周期ではないことを検知することで、TS信号が無意味な信号になったと判定し、デジタル放送のOFDM信号の変調異常としてアラームとすることを特徴とするデジタル送信用監視装置。

2.本願発明
以上によると,本件補正は,明りようでない記載の釈明を目的としたのものであるといえる。
よって,本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.」の(2)における[本件補正後]の記載を参照。)により特定されるとおりのものである。

なお,<1> 本願明細書【0001】には,「本発明は、デジタル放送の送出設備のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調器の監視装置及び監視方法に関する。」との記載が,<2> 同【0003】には,「特許文献1には、二重化構造における第1系および第2系のTS(Transport Stream)パケットを取得し、ここで取得したTSパケット数を比較することによる監視方法が開示されている。」との記載が,<3> 同【0004】には,「特許文献2には、系統内のTSパケットのPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)を取得し、該PATまたは該PMTで指定されるPID(Packet Identification)の送出予定PIDと、実際に送られるPIDとを比較し、PATまたはPMTの取得時間から指定のTSパケットを取得するまでにかかる取得時間を判別する方法が開示されている。」との記載が,<4> 同【0007】には,「これら従来技術である特許文献1、文献2および文献3には、本発明のようにOFDM変調後のOFDM変調信号(以下OFDM変調信号とは、搬送波をOFDM変調するためのデジタル信号を指す)のPATの周期およびPATの連続性指標CC(Continuity Counter)の連続性を監視し、正しくOFDM変調が行われているかを判定することには言及がない。」との記載が,それぞれある。

また,前記審第2拒絶理由通知における「補正等の示唆」の「2.」には,「上記の拒絶の理由を解消することが,平成27年5月15日付けで通知した拒絶の理由も解消することを意図するものではない。」と記している。
そこで,本件補正によって,「平成27年5月15日付けで通知した拒絶の理由」つまり「当審第1拒絶理由」が解消しているか否かを検討する。


第3 引用発明

1.当審第1拒絶理由の概要
当審第1拒絶理由通知は,特許法第29条第2項を理由とした通知であって,請求項に係る発明は,原査定の理由に引用された特表2003-517798号公報(平成15年5月27日国内公表。以下「引用例」という。)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると通知したものである。

2.引用例記載事項及び引用発明
引用例には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1) 記載事項1
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定数の解析パラメータを導出するための信号を構成するトランスポートストリーム(TS)パケットの巡回解析を含むデジタルテレビジョン信号(SME、LI、SMR)の伝送リンクにおいて使用するためのサービス品質監視方法であって、
第1の解析パラメータ(TSSL、PATE、PMTE)および第2の解析パラメータ(CCE、TPE;CRCE、PCRE、NITE、CDTE)を事前選択するステップと、
前記事前選択した第1の解析パラメータの変動(ΔTSSL、ΔPATE、ΔPMTE)の最大値、および前記事前選択した第2の解析パラメータの変動(ΔCCE、ΔTE;ΔCRCE、ΔPCRE、ΔNITE、ΔSDTE)の最大値を周期的に判定して、前記リンクにおける機器ユニット(EM、REC、LI)に関する同期を表す第1のパラメータ(SS)、およびサービスの劣化を表す第2のパラメータ(DS;FD)をそれぞれ導出するステップ(E1ないしE6)を特徴とする方法。
【請求項2】 機器ユニットの前記同期を表す前記第1のパラメータ(SS)が、トランスポートストリーム同期損失パラメータ(TSSL)、プログラム関連テーブル誤りパラメータ(PATE)、およびプログラムマップテーブル誤りパラメータ(PMTE)である3つの解析パラメータに依存する請求項1に記載の方法。
【請求項3】 サービスの劣化を表す前記第2のパラメータ(DS)が、連続性カウント誤りパラメータ(CCE)およびトランスポート誤りパラメータ(TE)である2つの解析パラメータに依存する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】 サービスの劣化を表す前記第2のパラメータ(FD)が、巡回冗長性検査誤りパラメータ(CRCE)、プログラムクロック基準誤りパラメータ(PCRE)、ネットワーク情報テーブル誤りパラメータ(NITE)、およびサービス記述テーブル誤りパラメータ(SDTE)である4つの解析パラメータに依存する請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】 サービスの劣化を表す2つの第2のパラメータの一方が、連続性カウント誤りパラメータ(CCE)およびトランスポート誤りパラメータ(TE)である2つの解析パラメータに依存して決定され、他方が、巡回冗長符号誤りパラメータ(CRCE)、プログラムクロック基準誤りパラメータ(PCRE)、ネットワーク情報テーブル誤りパラメータ(NITE)、およびサービス記述テーブル誤りパラメータ(SDTE)である4つの解析パラメータに依存して決定される請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】 パケット解析サイクル(dt)が、およそ1秒の継続時間を有し、機器ユニットの前記同期およびサービスの劣化をそれぞれ表す第1のパラメータ(SS)および第2のパラメータ(DS、FD)が導出される期間(Δt)が、およそ10秒である請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
(2ページ)

(2) 記載事項2
【0002】
(発明の背景)
本発明は、デジタルテレビジョンリンクにおける、より詳細には、MPEG-2(Moving Picture Expert Group)およびDVB(Digital Video Broadcasting)標準に準拠するデジタルテレビジョン信号におけるサービス品質の監視に関する。
【0003】
(従来技術の説明)
現在、デジタル電話網の中でセットアップされているリンクにおけるサービス品質監視は、3組の測定値に基づいている。
監視が適用されるリンクが、地上通信リンク、またはサテライトと地上放送局の間のリンク、あるいはケーブルリンクまたはATMリンク等であるとき、デジタルテレビジョン信号の変調後の無線周波数信号に関する測定値、デジタル信号におけるビット誤り率(BER)に関する測定値、および無線周波数信号のレベルに関する測定値を測定することができる。
MPEG-2標準およびDVB標準に準拠する構文解析器を使用して、1997年5月のETR290標準、「Measurement guidelines for DVB systems」(ETSI)によって規定される19のパラメータを測定することによる、デジタルテレビジョン信号のトランスポートストリーム(TS)に関する測定値、および
デジタルテレビジョン信号サービスのオーディオ成分およびビデオ成分に関する測定値。
【0004】
本発明は、より詳細には、従来技術では、ETR290標準に準拠する少なくとも19のパラメータを測定することを伴うデジタルトランスポートストリーム(TS)に関する測定を対象としている。この多数の技術的に複雑なパラメータは、デジタルテレビジョン網におけるサービス品質の信頼できる推定を迅速に得るためには、解釈するのが非常に困難である。誤りが生じた場合、多くの警報がログ記録され、監視手段によって管理されなければならず、その場合、監視手段は、リアルタイムでそれらの警報を管理する際に問題に直面することになる。
【0005】
(本発明の目的)
本発明は、必要とされる測定の数を最小限に抑え、その解釈を容易にすることにより、デジタルトランスポートストリーム測定を単純化することを目的とする。この単純化のおかげで、考慮されなければならないパラメータの数およびサービス品質監視の費用を低減させることができる。
(4ページ?5ページ)

(3) 記載事項3
【0013】
図1は、MPEG-2標準に準拠するデジタルテレビジョン網におけるエミッタEMと受信機REの間でデジタルテレビジョン信号を伝送するためのリンクLIを図示している。
【0014】
エミッタEMは、基本的に、複数の基本パケット化回路CMP、パケタイザ-マルチプレクサPM、および無線周波数変調器MOを含む。パケタイザ回路CMPは、MPEG-2符号器を構成するそれぞれの異なるソースに接続され、オーディオビジュアルサービスプログラムに関連する成分、すなわち、オーディオ成分、ビデオ成分、およびデータ成分、ならびに以上のプログラムに関連する通知テーブル生成器に関係しており、本発明は、この生成器に、より詳細に関係している。
【0015】
Program Specific Information PSIテーブルによって表現される通知は、パケタイザ-マルチプレクサPMから発して、受信機REが、初期オーディオビジュアルサービスプログラムにアクセスするのに必要なパラメータおよび成分を識別できるようにするトランスポート多重信号SMEに関係する通知を規定する。通知テーブルには、プログラムの成分を識別するテーブルPMTの識別子PIDに対してプログラム番号をマッチするProgram Association Table(PAT)、およびプログラムの成分の可変記述子PIDとその成分の主な特性をマッチするProgram Map Table PMTが含まれる。テーブルに関連するパケット化回路CMPは、テーブルをMPEG-2標準において「セクション」と呼ばれる基本パケットPEに形成する。
【0016】
また、オーディオビジュアルサービスプログラムに関連するその他のパケット化回路CMPは、基本パケットPEの形態でオーディオストリーム、ビデオストリーム、およびデータストリームを伝送する。
【0017】
数キロバイトの様々な長さを有する基本パケットPEは、(トランスポートストリーム)TSトランスポートパケットに分割され、パケタイザ-マルチプレクサPMの中で多重化されて、変調器MOの入力に適用されるデジタルテレビジョンエミット多重信号SMEを構成する。TSパケットは、通常、188バイトという一定の長さを有する。各TSパケットは、図2に示すとおり、01ないし04の4バイトを有するヘッダEN、および184バイトのデータフィールドCDから構成される。ヘッダの第1のバイト01は、その16進コード値が、通常、「47」に等しい同期バイト(Sync Byte)である。エミットされるTSパケットの中の第1のバイトは、受信機RE内のMPEG-2復号器をこの受信機が受信するTSトランスポートパケットと同期するのに使用される。ヘッダの第2のバイト02の第1のビットは、当該のパケットの中に誤ったビットが存在するのを示すためのフラグを構成するトランスポート誤りインディケータビットである。ヘッダの第2のバイト02および第3のバイト03の最後の5ビットは、以下に定義するとおり、MPEG-2標準またはDVB標準に準拠する13ビットテーブル識別子PIDを含む。ヘッダの第4のバイトの最後の4ビットは、それぞれのオーディオビジュアルサービスプログラムの同一の識別子に対応する各TSパケットごとに16を法とする1単位だけ増分されるカウンタに関連する4ビット連続性カウントを構成する。
(6ページ?8ページ)

(4) 記載事項4
【0020】
エミッタEMと受信機REの間のリンクLIは、図1に示すとおり、解析器/測定器AMによって監視される。解析器/測定器AMは、一方で、MPEG-2標準に従ってトランスポートストリームの中の構文を解析するため、より正確には、前述したETR290標準で定義される19の解析パラメータを測定するための従来技術の解析器、ならびに本発明によるリンク品質監視方法を実施するための測定器を含む。解析器は、通常、ドイツ国の会社、RHODE&SCHWARTZによって市販されるDVMDストリーム解析器(MPEG2測定復号器)である。
【0021】
測定器は、解析器によって供給される19の解析パラメータのうち9のパラメータを使用する。9のパラメータは、ETR290標準に準拠する19のパラメータのなかから選択され、数百のデジタルテレビジョン信号シーケンスに対してETR290標準の19のパラメータの数十の組み合わせを試験した後、本発明により、それら9のパラメータを組み合せてデジタルテレビジョン信号リンクの品質基準を表す3つのパラメータSS、DS、およびFDにすることができるようになっている。
【0022】
実際には、解析器/測定器は、図1のAM1で示すとおり、送信機EMの中のパケタイザ-マルチプレクサPMと変調器MOの間のエミットされた多重信号SMEにおける、または図1のAM3で示すとおり、受信機REの中の復調器DMとデマルチプレクサ-デパケタイザDDの間の受信多重信号SMRにおけるパケットトランスポートストリーム(TS)を解析するか、あるいは図1のAM2で示すとおり、変調器MOと復調器DMの間のリンクLIのレベルにおけるトランスポートストリームを分析し、その場合、復調器(図示せず)は、解析器の入力に設けられる。
【0023】
本発明によるサービス品質監視方法によって使用されるETR290標準に準拠する9の解析パラメータを以下に定義する。各解析パラメータは、解析器がパラメータに関連する誤りをTSパケットストリームの中で検出するたびに毎回、1単位だけ増分される誤りカウントを構成する。解析器は、各解析サイクルにおいて、あるパラメータに関連する最大で1つの誤りを検出することができ、このサイクルは、通常、およそ1秒の継続時間を有する。このことは、時刻tにおけるパラメータの値が、ストリーム解析開始時刻から開始して、そのパラメータに関連する誤りが知らされた解析サイクルの回数に等しいことを意味する。例えば、ある所与のパラメータに関して、解析が、t=10時に開始し、解析器の中のパラメータカウンタが、ゼロに設定される。誤りが、10時01分における0.5秒の期間中、および10時02分から10秒の連続期間中に生じる。
解析器は、以下のことを知らせる。
10時から10時01分まで:誤りは、まったく検出されず、パラメータは、ゼロに等しい。
10時01分00秒から10時01分01秒まで:1秒の期間中に誤りが検出され、パラメータが、1単位だけ増分される。
10時02分00秒から10時02分10秒まで:誤りが、連続して検出され、パラメータが、1秒ごとに1単位だけ増分される。
【0024】
1)第1のパラメータ、Transport Stream Synchronization Loss(TSSL)は、トランスポートストリームにおける、すなわち、TSパケット、特に多重信号SMEまたはSMRのTSパケットにおける同期の損失に関連する。既に述べたとおり、TSパケット(図2)の中の第1のバイト01は、通常、16進値「47」を有する。同期は、デマルチプレクサ-デパケタイザDDが、連続する5つのTSパケットの中で5つの通常の第1のバイトを検出したとき、受信機REの中で確立される。同期は、受信機が、連続する3つのTSパケットの中で全く通常の第1のバイトを検出しないか、または1つだけの通常の第1のバイトを検出した場合、損失した、または獲得されなかったと見なされる。この条件は、同期の損失に当たると見なされる。
【0025】
解析器は、各同期損失、すなわち、連続する3つのTSパケットの第1のバイトが、せいぜい、16進法の「47」に等しい1つの正しいパケットしか含まないとき、それに対応するパラメータTSSLを生成する。
【0026】
2)Program Association Table(PAT)は、プログラムに関連し、多重信号SME、SMRのTSパケットのトランスポートストリームに含まれるProgram Map Tables PMTのPID識別子と対応する関係にあるすべてのオーディオビジュアルサービスプログラムのリストを含む。PMTは、プログラムの詳細な説明、すなわち、各プログラムの成分の記述子を含む。したがって、PATは、オーディオ-ビデオプログラムを復号化するために必要不可欠である。PATテーブルが無効である、または誤りを含む場合、受信機REの中の復号器DECは、多重信号SMRによってサポートされる伝送されたプログラムを選択して復号化することができない。
【0027】
PATテーブルは、16進法で「00」に等しいPID識別子を有するパケットで伝送される。PATテーブルは、パケット化回路CMPの中でそれぞれ最大256バイトのセクションタイプの複数の基本パケットPEに分割される。各セクションはテーブル識別子バイト「00」で開始する。
【0028】
PATテーブル誤りを知らせる第2のパラメータPATEは、以下の3つのイベントのどれかに応答して解析器によって生成される。
PATテーブル識別子が、「00」とは異なるか、または
PATテーブルが、暗号化された(スクランブルされた)形式で伝送されるか、または
同一のプログラムに関連する連続する2つのPATテーブル間の時間間隔が、通常、0.5秒に等しい時間しきい値STを超える。
【0029】
3)プログラムマップテーブル(PMT)が、PATテーブルの中で識別されたそれぞれのオーディオビジュアルサービスプログラムを詳細に記述する。PMTテーブルに含まれる重要な情報は、各プログラムのオーディオ成分、ビデオ成分、およびデータ成分に関連するすべてのTSパケットの中の記述子PIDのリスト、ならびにリンクLIのクロックを使用せずに各復号器DECの中で各符号器CODのクロックを回復するための各プログラムに関連するProgram Clock Reference(PCR)値を伝送するのに使用されるTSパケットのPID識別子である。
【0030】
PMTテーブルが無効である、または誤りを含む場合、各復号器DECは、多重信号SMRの中の各オーディオビジュアルサービスプログラムを選択して復号化することができない。PMTテーブルの中のプログラム成分の記述子PIDは、16進法で「0010」から「1FFE」までの範囲にある。PMTテーブルは、最大で256セクションを有するセクションタイプのいくつかの基本部分に分割することができ、各セクションは、オーディオビジュアルサービスプログラムに対応する。各セクションの、したがって、各プログラムのPMTテーブルの識別子は、通常、「02」に等しい。
【0031】
第3のパラメータPMTEは、以下のイベントのどれかに応答して解析器によって供給される。
PMTテーブルの識別子が、「02」とは異なるか、または
PMTテーブルが、暗号化(スクランブルされた)形式で伝送されるか、または
連続して伝送される2つのPMTテーブル間の時間間隔が、通常、0.5秒に等しい時間しきい値STを超える。
【0032】
TSパケットのヘッダENの第4のバイト04に含まれる4ビット連続性カウントは、同一の識別子PIDを有する各TSパケットごとに1単位だけ増分されるパケタイザ-マルチプレクサPM内のカウンタからのカウントである。このカウンタのカウントは、16を法とする0から15までの範囲にある。連続性カウントは、プログラムの欠落しているパケット、または重複して受信されたパケットにマークを付けるのに使用される。
【0033】
MPEG-2標準は、関与するパケットのオプションの適応フィールド(AF)の中で示される場合、カウントの不連続性を許容する。この方法は、TSパケットのトランスポートストリームの再多重化のためプログラムの変化が生じた場合における誤りメッセージをなくすために使用される。
【0034】
連続性カウントの誤りを知らせる第4のパラメータCCEは、以下の3つのイベントのどれかに応答して解析器によって生成される。
同一のTSパケットが、AFフィールドの中で示されることなしに、解析器の中で少なくとも2回、受信されたか、または
TSパケットが欠落しているか、または
TSパケットが、エミットされた正しい順序で着信していない。
【0035】
5)各TSパケットのヘッダENの第2のバイト02に含まれるトランスポート誤りインディケータビットからなるフラグが、当該の誤り訂正符号がすべての誤りを訂正することができないのを知らせるため、復調器DMにおける復調中にViterbi復号化またはReed Solomon復号化によって立てられる。当該の復号器DECは、このフラグによって示されたパケットを解釈してはならない。この場合、ストリーム解析器は、論理「1」のビットTEの形でトランスポート誤りパラメータと呼ばれる第5のパラメータを生成し、フラグによって示されたパケットを処理しない。
(9ページ?13ページ)

(5) 記載事項5
【0045】
本発明によれば、ストリーム解析器に関連する測定器が、前述したETR290標準の9つの解析パラメータに依存する3つのパラメータ、Syncronization of Services(サービス同期)パラメータSS、Degradation of Services(サービス劣化)パラメータDS、および強度Degradations(劣化)パラメータFDにより、デジタルテレビジョン信号伝送リンクLIにおけるサービス品質を監視する。
【0046】
サービス同期パラメータSSは、所定期間Δt中におけるトランスポートストリーム同期損失パラメータTSSL、プログラム関連テーブル誤りパラメータPATE、およびプログラムマップテーブル誤りパラメータPMTEの変動の最大値として定義される。例えば、前述した3つの解析パラメータTSSL、PATE、およびPMTEのそれぞれが、ストリーム解析器により、およその継続時間dt=1秒のTSパケットの各解析サイクルで供給され、測定器が、およそΔt=10秒ごとに以上3つの分析パラメータの変動の最大値をパラメータSSとして生成する。パラメータSSは、リンクLIにおける測定器/解析器の上流の装置ユニットが、エミットされた多重信号SMEの中でトランスポートストリームと初期に同期することができるかどうかを示す。パラメータSSが0に等しくない場合、このことは、装置ユニットが、同期することができず、オーディオビジュアルプログラムサービスが、リンクの中に存在しないことを示している。
【0047】
サービス劣化パラメータDSは、期間Δt中における連続性カウント誤りパラメータCCEおよびトランスポート誤りパラメータTEの変動の最大値として定義される。パラメータDSは、サービス劣化のレベルの正確な評価を可能にする。サービス劣化が存在しない場合、パラメータDSは、空値を有する。サービス品質の劣化のレベルは、パラメータDSの値に正比例する。
【0048】
例えば、図3は、本発明による、サービス劣化パラメータ(DS)に等しい最大値を導出するため、時間間隔Δt中に解析器によって供給される解析パラメータCCEおよびTEの変動ΔCCEおよびΔTEを示す2つのグラフである。例えば、時刻tでCCE(t)=10かつTE(t)=2である場合、および期間t+Δtの終りでCCE(t+Δt)=14かつTE(t+Δt)=11である場合、測定値は、以下のとおり計算される。
ΔCCE=CCE(t+Δt)-CCE(t)=4
ΔTE=TE(t+Δt)-TE(t)=9
すなわち、DS=max[ΔCCE,ΔTE]=9
【0049】
強度劣化パラメータFDは、期間Δt中における巡回冗長性検査誤りパラメータCRCE、プログラムクロック基準誤りパラメータPCRE、ネットワーク情報テーブル誤りパラメータNITE、およびサービス記述テーブル誤りパラメータSDTEの変動の最大値として定義される。パラメータFDは、非常に深刻な劣化の存在を示し、パラメータDSを非常によく補完するものである。パラメータFDの空値は、リンクにおいて強度の劣化が存在しないことを示す。パラメータFDの空でない値は、リンクにおいて強度の劣化が存在するレベルを示す。
(16ページ?18ページ)

(6) 記載事項6
【図1】


3.引用発明
上記「2.」によれば,引用例には,次の発明が記載されているといえる。

所定数の解析パラメータを導出するための信号を構成するトランスポートストリーム(TS)パケットの巡回解析を含むデジタルテレビジョン信号(SME,LI,SMR)の伝送リンクにおいて使用するためのサービス品質監視方法であって,
第1の解析パラメータ(TSSL,PATE,PMTE)および第2の解析パラメータ(CCE,TPE;CRCE,PCRE,NITE,CDTE)を事前選択し,
前記事前選択した第1の解析パラメータの変動(ΔTSSL,ΔPATE,ΔPMTE)の最大値,および前記事前選択した第2の解析パラメータの変動(ΔCCE,ΔTE;ΔCRCE,ΔPCRE,ΔNITE,ΔSDTE)の最大値を周期的に判定して,
前記リンクにおける機器ユニット(EM,REC,LI)に関する同期を表す第1のパラメータ(SS),および
サービスの劣化を表す第2のパラメータ(DS;FD)をそれぞれ導出し(E1ないしE6),

機器ユニットの前記同期を表す前記第1のパラメータ(SS)が,
トランスポートストリーム同期損失パラメータ(TSSL),
プログラム関連テーブル誤りパラメータ(PATE),および
プログラムマップテーブル誤りパラメータ(PMTE)
でありる3つの解析パラメータに依存し,

サービスの劣化を表す前記第2のパラメータ(DS)が,連続性カウント誤りパラメータ(CCE)およびトランスポート誤りパラメータ(TE)である2つの解析パラメータに依存し,
デジタルテレビジョン網におけるエミッタEMと受信機REの間でデジタルテレビジョン信号を伝送するためのリンクLIであって,前記リンクLIは解析器/測定器AM2によって監視され,変調器MOと復調器DMの間のリンクLIのレベルにおけるトランスポートストリームを分析し,その場合,復調器は,解析器の入力に設けられ,
解析器によって供給される19の解析パラメータのうち9のパラメータを使用する測定器であり,リンク品質監視方法を実施するための測定器。


第4 当審の判断

1.対比
本願発明と引用発明を比較すると次のことがいえる。

(1) 引用発明における「解析器」及び「測定器」が,それぞれ「装置」であることは明白であり,また,それぞれが,「リンク品質監視」をするものであるといえる。
このことは,該「解析器」及び該「測定器」はそれぞれ「監視装置」といえ,また,「解析器/測定器AM」も「監視装置」といえることを示している。

(2) 引用例【0019】には,「エミッタEMに相応する形で、受信機REは、リンクLIに接続され、エミットされた多重信号SMEと等価の受信デジタルテレビジョン多重信号SMRを構成するTSトランスポートパケットを生成する復調器DM、および受信TSトランスポートパケットを多重分離して、それぞれのパケット化解除回路CDPに適用される基本パケットPEを再構成するためのデマルチプレクサ-デパケタイザDDを含む。」との記載があり,同【0022】には,「あるいは図1のAM2で示すとおり、変調器MOと復調器DMの間のリンクLIのレベルにおけるトランスポートストリームを分析し、その場合、復調器(図示せず)は、解析器の入力に設けられる」との記載がある。
これらの記載によると,トランスポートストリームの分析に際し,引用発明における「解析器/測定器AM」(AM2)に設けられる「復調器」が,「リンクLI」に接続され,「TSトランスポートパケット」を生成していることは明らかであり,この「生成」の意味するところが,「TSトランスポート信号」を生成することであると,技術的にいい得る。
また,上記「リンクLI」は,「デジタルテレビジョン網におけるエミッタEMと受信機REの間」で「デジタルテレビジョン信号」を伝送するためのものである。このことは,該「リンクLI」を介して,「デジタルテレビジョン信号」つまり「デジタル放送信号」が,「エミッタEM」から送信され,「受信機RE」において受信されることを示している。

以上によると,引用発明は,「解析器/測定器AM」(AM2)に「入力されたデジタル放送の信号をTS信号に復調する手段」を開示しているといい得ることを示している。

(3) 引用発明においては,「リンクLI」における「トランスポートストリーム(TS)」を解析,分析することにより,
ア 「プログラム関連テーブル誤りパラメータ(PATE)」を含む解析パラメータに依存する「第1のパラメータ(SS)」及び
イ 「連続性カウント誤りパラメータ(CCE)」を含む解析パラメータに依存する「第2のパラメータ(DS)」を,それぞれ導出する。ここで,
<ア> 引用例【0026】ないし【0028】における記載(上記「第3 2.」の「(4) 記載事項4」を参照。)等を参照すると,次のことがいえる。
<ア-1> 上記「プログラム関連テーブル誤りパラメータ(PATE)」とは,「PATテーブル誤り」つまり「Program Association Table(PAT)」の「テーブル誤り」を意味する「パラメータ」といえることは明らかである。そして,
<ア-2> 上記「PATE」は,「同一のプログラムに関連する連続する2つのPATテーブル間の時間間隔が、通常、0.5秒に等しい時間しきい値STを超える」ことに応答して,「解析器」によって生成されるものである。
このことは,該「解析器」が,「PAT」の「周期性」を解析することを示し,加えて,「PAT」の周期が予め定められた周期でないことを検知しているといい得ることを示している。
<ア-3> 上記<ア-1>及び<ア-2>より,引用発明における「解析器」は,「TS信号」から「PAT」を取得する手段と,「PATの周期性」を解析する「解析手段」とを有しているといい得,加えて,該「解析器」は,「TS信号内にあるPATの周期が予め定められた周期ではない」こと検知しているといい得る。そして,
<イ> 引用例【0032】及び【0034】における記載(上記「第3 2.」の「(4) 記載事項4」を参照。)を参照すると,次のことがいえる。
<イ-1> 上記「連続性カウント誤りパラメータ(CCE)」とは,「連続性カウント」の「誤り」を意味する「パラメータ」といえることは明らかである。そして,
<イ-2> 上記「CCE」は,「同一のTSパケットが、AFフィールドの中で示されることなしに、解析器の中で少なくとも2回、受信された」、または「TSパケットが欠落している」、または「TSパケットが、エミットされた正しい順序で着信していない」ことに応答して,「解析器」によって生成されるものである。
更に,
<イ-3> 上記「連続性カウント」は,「TSパケット」に含まれるものであって,「同一の「識別子PID」を有する各「TSパケット」ごとに1単位だけ増分される「カウント」」であり,「16を法とする0から15までの範囲」にあり,「「プログラムの欠落しているパケット」,または「重複して受信されたパケット」にマークを付けるのに使用される」ものであることは明らかである。
上記のうち,特に「重複して受信されたパケット」にマークを付けるのに使用される」との事項に着目すると,上記「連続性カウント」とは,同一の「識別子PID」の連続性を示すカウントであるといい得る。
<イ-4> 「PATテーブル」については、「16進法で「00」に等しいPID識別子を有するパケットで伝送される」(上記「第3 2.」の「(4) 記載事項4」における【0027】を参照。)ものであり,この「パケット」が「TSパケット」を意味することは,引用例の【0026】における記載から明らかであるといい得ること,加えて,上記<イ-3>に述べたこと,及び上記<ア-1>に述べたように,上記「PATテーブル」は「プログラム」に関連する「テーブル」であることも踏まえると,
引用発明における「解析器」は,「TSパケット」から「PAT」の「PID」の「連続性」を示す「カウント」を解析する手段,換言すると,上記「解析器」は「PATの連続性カウント」を解析する「解析手段」といいうることを示している。
また,「連続性カウント」が,「Continuity Count」を略して「CC」と呼び得るものであることは文言上明らかである。
<イ-5> 上記<イ-1>及び<イ-4>より,引用発明における「解析器」は,「「TS信号」から「PAT」の「CC」を取得する手段と,「PAT」の「CCの値連続性」を解析する解析手段と」を有することを開示しているといい得る。
<ウ> 上記「(2)」に述べたとおり,引用発明における「復調器」によって「TS信号」が復調され,そして,上記<ア>及び<イ>に述べたとおりであり,引用発明における「解析器」は,「PATE」,「CCE」を生成する。
そうすると,上記<ア-3>及び<イ-5>より,引用発明は,「TS信号からPATおよび該PATのCCを取得する手段」と,「PATの周期性と前記PATのCCの値連続性の少なくともいずれか一方を解析する解析手段」と,「解析手段は、TS信号内にあるPATの周期が予め定められた周期ではないことを検知すること」とを有することを開示しているといい得る。

加えて,引用例の【0004】及び【0005】における記載(上記「第3 2.」の「(2) 記載事項2」を参照。)によれば,引用発明は,「「誤り」が生じた場合、多くの「警報」がログ記録され、「監視手段」によって管理されなければなら」ないことに対応し,「デジタルトランスポートストリーム測定を単純化すること」を目的とするものである。
このことは,引用発明は,「誤り」により「警報」を出力することが想定されていることを示している。
そして,引用発明における「PATE」も「CCE」も「誤り」を意味する「パラメータ」であることは,既に述べたとおりである。そして,これらの「パラメータ」はそれぞれ,「PAT」の「テーブル誤り」を意味する「情報」と,「連続性カウント」の「誤り」を意味する「情報」といえる。
これにより,引用発明における「解析器」は,「PATE」及び「CCE」が「誤り」を意味する「情報」それぞれを生成し,該「情報」に基づき「警報」を出力しているといい得る。また,引用発明においては,「警報」は,管理されるものであるのだから,該「警報」の出力が外部に出力されることは明白である。
また,この「警報」が「アラーム」と呼びうるものであることも明白である。
そうすると,引用発明は,「解析手段による情報によりアラームとして外部に出力する手段」を有することを開示しているといい得る。
また,「PATE」及び「CCE」に係る「誤り」は,「デジタル放送」の「信号」の「異常」といい得るものである。
これらにより,引用発明は,「解析手段は、TS信号内にあるPATの周期が予め定められた周期ではないことを検知することで,デジタル放送の信号の異常としてアラームとすること」を開示しているといい得る。

(4) 上記(1)ないし(3)に述べたことより,本願発明と引用発明は,次の点で一致し,相違するといえる。

[一致点]
入力されたデジタル放送の信号をTS信号に復調する手段と、前記TS信号からPATおよび該PATのCCを取得する手段と、前記PATの周期性と前記PATのCCの値連続性の少なくともいずれか一方を解析する解析手段と、前記解析手段による情報によりアラームとして外部に出力する手段を具備し、前記解析手段は、TS信号内にあるPATの周期が予め定められた周期ではないことを検知することで、デジタル放送の信号の異常としてアラームとすることを特徴とする監視装置。

[相違点]
[相違点1]
本願発明における「監視装置」は「デジタル送信用」であるのに対して,引用発明にはそのような「監視装置」であるとの特定がない点。

[相違点2]
<相違2-1> 本願発明における「デジタル放送」の「信号」が「OFDM信号」であるのに対し,引用発明にはそのような「信号」であるとの特定がない点(以下「相違2-1」という。)。
<相違2-2> 本願発明においては,「TS信号内にあるPATの周期が予め定められた周期ではないことを検知すること」で,「解析手段」は,「TS信号が無意味な信号になったと判定」するのに対し,引用発明には,「TS信号」がそのような「信号になった」という特定もなく,またそのような「信号になった」と「判定」することの特定もない点で相違する(以下「相違2-2」という。)。
<相違2-3> 上記相違2-2により,本願発明においては,「判定」し,「変調異常としてアラームとする」のに対して,引用発明には,このようにして,「変調異常」とすることの特定がない点で相違する(以下「相違2-3」という。)。

2.検討
(1) 相違点2について
ア 相違2-1に関して
「デジタル放送」の変調方式として,「OFDM」が利用されることは,例を示すまでもなく周知の事項である。
そうすると,「デジタル放送」の「信号」を,「OFDM信号」とすることは,引用発明に周知技術を適用することにより,当業者が適宜なしえた事項であるといえる。
よって,相違2-1のように構成することは,当業者が容易になしえたものであるといい得る。

イ 相違2-2及び相違2-3に関して
引用発明における「PATE」は,既に述べたとおり,「同一のプログラムに関連する連続する2つのPATテーブル間の時間間隔が、通常、0.5秒に等しい時間しきい値STを超える」ことに応答して生成されるものである。
このことは,技術常識に照らせば,「エミッタEM」から「TS信号」が送信されなかった状況,あるいは,「TS信号」が「エミッタEM」と「解析器」との間で損失された状況等が生じているといい得る。
このような状況で,「受信機RE」がテレビ映像等を正しく再生し得ないことは当然である。
そうすると,このような「TS信号」は,テレビ映像等を正しく再生しない「無意味な信号」といい得る。
これにより,引用発明に基づいて,「TS信号内にあるPATの周期が予め定められた周期ではないことを検知すること」で、「TS信号」が「無意味な信号になった」と「判定」するようにすることは,当業者が適宜なしえた事項であるといえる。

そして,上述したごとく,「TS信号」が「無意味な信号」と判定される状況には,「TS信号」が「エミッタEM」から送信されなかった状況が想定されうる。
このような状況が,「エミッタEM」を構成する「パケタイザ-マルチプレクサPM」又は「変調器MO」等の異常でも生じることは,当業者には明らかである。
このような「変調器」の「異常」が発生することにより,変調された信号にも「異常」が生じうることは技術的に明らかである。そのため,当該「異常」は「変調信号」の「変調異常」といえる。
このことは,上記のようにして,「TS信号」が「無意味な信号になった」と判定された場合に,「デジタル放送のOFDM信号」の「異常」が「変調異常」といえることを示している。
これにより,引用発明に基づいて,相違2-3のように構成することは,当業者が適宜なしえたものであるといえ,このように構成することに,格別な技術的困難があったということもできない。

(2) 相違点1について
上記(1)に述べたことを踏まえると,引用発明に係る「監視装置」を「エミッタEM」に使用するようにすること,つまり,「エミッタEM」用「監視装置」とすることは,当業者が適宜なしえたものであるいえる。
そして,該「エミッタEM」は,「デジタル放送」の「OFDM信号」を「デジタル送信」するものであるといい得るから,「エミッタEM」用「監視装置」は,「デジタル送信」用「監視装置」と換言しうる。

(3) 上記(1)及び(2)に述べたとおりであって,本願発明のように構成したことによる効果も,引用発明及び周知技術から予測できる程度のものあり,また,格別なものであるともいえない。

したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。


第5 むすび

以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2016-01-28 
結審通知日 2016-02-02 
審決日 2016-02-17 
出願番号 特願2009-261157(P2009-261157)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 貴裕  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
吉田 隆之
発明の名称 デジタル送信機用監視装置及び監視方法  
代理人 宮田 信道  
代理人 宮田 信道  

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