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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1313010 |
審判番号 | 不服2015-1295 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-22 |
確定日 | 2016-03-31 |
事件の表示 | 特願2013-168741「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日出願公開、特開2014- 4437〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年12月19日に出願した特願平2008-324749号の一部を平成25年8月14日に新たな特許出願としたものであって、平成26年5月16日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年6月27日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成26年11月18日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成27年1月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。 第2 平成27年1月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年1月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 所定の演出を表示する表示画面と、 始動入賞口に入賞し保留球が発生するごとに所定の順序で表示するとともに、保留球が消費されるごとに所定の順序とは逆の順序で消去することによって、保留球数を示す保留表示群と、 前記表示画面を制御して、当該表示画面上の表示したまたは表示している保留表示に対応する位置に所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに表示している別の保留表示に対応する位置へ前記所定の画像を移動するように表示する表示制御手段と、 を備え、 前記保留表示群は、保留球が発生するごとに所定の端の保留表示から順次表示し、保留球が消費されるごとに所定の端とは反対側の表示している保留表示から順次消去し、 前記表示制御手段は、表示した保留表示または表示しているいずれかの保留表示に対応する位置に前記所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに、前記所定の端側の隣の保留表示に対応する位置へ順次、前記所定の画像を移動するように表示し、前記所定の画像が前記所定の端に移動した後に、当該所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示し、 前記演出の展開を示唆する画像は、出現したキャラクターまたはアイテムの種類によって、つぎにおこなう演出における大当たり当選への期待度を示唆することを特徴とする遊技機。」 から、 「【請求項1】 所定の演出を表示する表示画面と、 始動入賞口に入賞し保留球が発生するごとに所定の順序で表示するとともに、保留球が消費されるごとに所定の順序とは逆の順序で消去することによって、保留球数を示す保留表示群と、 前記表示画面を制御して、当該表示画面上の表示したまたは表示している保留表示に対応する位置に所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに表示している別の保留表示に対応する位置へ前記所定の画像を移動するように表示する表示制御手段と、 を備え、 前記保留表示群は、保留球が発生するごとに所定の端の保留表示から順次表示し、保留球が消費されるごとに所定の端とは反対側の表示している保留表示から順次消去し、 前記表示制御手段は、表示した保留表示または表示しているいずれかの保留表示に対応する位置に前記所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに、前記所定の端側の隣の保留表示に対応する位置へ順次、前記所定の画像を移動するように表示し、前記所定の画像が前記所定の端に移動した後に、当該所定の端における保留表示に対応する位置を保ったまま、または、当該所定の端における保留表示に対応する位置から、前記保留表示群が配置された列方向とは直交する方向へ移動しつつ、当該所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示し、 前記演出の展開を示唆する画像は、出現したキャラクターまたはアイテムの種類によって、つぎにおこなう演出における大当たり当選への期待度を示唆することを特徴とする遊技機。」 に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。 2 補正の適否について 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示制御手段」に関して「所定の画像が前記所定の端に移動した後に、当該所定の端における保留表示に対応する位置を保ったまま、または、当該所定の端における保留表示に対応する位置から、前記保留表示群が配置された列方向とは直交する方向へ移動しつつ、当該所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示」する点を限定するものである。 上記補正に関して、願書に最初に添付した明細書には、以下の記載がある。 (1)「図7-1、図7-2および図7-3において、保留表示ランプに対応して表示した滴状のキャラクターが、もっとも左側の保留表示ランプに対応する位置まで移動し、当該保留表示ランプに対応する演出を開始する前の状態、すなわち1つ前の保留球に対応する演出の実行中となると、滴状のキャラクターが対応する保留表示ランプ120aから徐々に落下しはじめる画像を表示し(図7-1における符号710を参照)、保留表示ランプ120aから離間して落下する画像を表示する(図7-2おける符号720を参照)。」(段落【0112】参照) (2)「滴状のキャラクターが落下した後は、落下した滴状のキャラクターが演出の展開を示唆するキャラクターやアイテムなどに変化したような画像を表示する(図7-3おける符号730を参照)。演出の展開を示唆するキャラクターやアイテムは、任意の画像によって示すことができ、具体的には、たとえば妖精や頭蓋骨、西洋式の甲冑における頭部防具(ヘルメット)など、演出のストーリーに関係する各種の画像とすることができる。」(段落【0113】参照) これらの記載によれば、「演出の展開を示唆する画像」(キャラクターやアイテムなどに変化したような画像)は、図7-2、図7-3に示されるように滴状のキャラクターが落下しながら表示されるもの、すなわち、「保留表示群が配置された列方向とは直交する方向へ移動しつつ」表示されるものであり、図7-1に示すように「保留表示に対応する位置を保ったまま」表示されるものではない。 したがって、上記補正の「所定の画像が前記所定の端に移動した後に、当該所定の端における保留表示に対応する位置を保ったまま」「該所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示」する点は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という)の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、当初明細書等から自明なものでもない。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 独立特許要件について (1)本件補正発明 本件補正については、上記2で述べたとおりであるが、上記補正が、仮に、当初明細書等の範囲内においてしたものとした場合に、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても、一応、検討しておく。 (2)刊行物1に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2004-283408号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (1-a)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】 このような構成の遊技機においては、保留ランプの点灯状態を変化させることにより予告演出を実行する場合に生じていた不具合(保留記憶数がいくつなのかの判断が難しくなり、遊技者を困惑させる)を、保留記憶数を示す保留ランプと予告演出を行うリーチランプとを別々に設けることにより解消することができた。しかし、予告演出の決定及び制御をメインの制御基板で行っていたため、メインの制御基板にかかる制御負担が大きくなってしまっていた。また、メインの制御基板とサブの制御基板とに制御を分けた場合には、保留記憶数の認識がずれてしまう恐れがあった。本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、メインの制御基板の負担を大きくすることなく予告演出を実行する遊技機を提供することにある。」 (1-b)「【0014】 遊技領域7の中央付近には、遊技盤に設けられ所定の始動条件が成立(例えば、始動入賞)した後に可変表示の開始条件(例えば、前回の特別図柄の可変表示および大当り遊技状態の終了)の成立に基づいて各々が識別可能な複数種類の識別情報(例えば、特別図柄10a)を可変表示し、表示結果を導出表示する可変表示装置8を備えている。本実施形態では、可変表示装置8はLCD表示装置により構成され、その中央には飾り図柄9a?9cを可変表示する複数の表示領域(本実施形態では3つ)を有する飾り図柄表示部9が設けられ、該飾り図柄表示部9の右下側には特別図柄10aを可変表示する特別図柄表示部10が設けられている。本実施形態における特別図柄表示部10では、1つの表示領域によって表示される特別図柄10aの比較的単調な可変表示を行なっている。飾り図柄表示部9は、この特別図柄表示部10で行われる可変表示の内容を、より演出効果を高めて遊技者に表示するための可変表示装置である。」 (1-c)「【0018】 また、飾り図柄表示部9の下方には、始動入賞口14に入り始動条件が成立したが未だ可変表示装置8の開始条件(例えば、前回の特別図柄10aの可変表示および大当り遊技状態の終了)が成立していない始動条件の成立回数である始動記憶数を記憶する始動記憶手段(主基板31のRAM55により始動記憶数を記憶する機能)に記憶された始動記憶数を主基板31からのコマンドに基づいて表示する始動記憶表示手段としての4つの特別図柄始動記憶表示器18a?18dが設けられている。この特別図柄始動記憶表示器18は、始動記憶表示制御手段(表示制御用CPU111のLEDを制御する機能)によって表示制御され、所定数(本実施形態では4つ)を上限として始動入賞数を個々に表示するものであり、本実施形態においては、有効始動入賞(本実施形態では、始動記憶数が4未満のときの始動入賞)がある毎に、LEDを点灯させ、可変表示装置8の可変表示が開始される毎に、特別図柄始動記憶表示器18の点灯しているLEDを1減らす。」 (1-d)「【0152】 また、上述したように、この実施の形態では、飾り図柄表示部9における飾り図柄の可変表示の結果(停止図柄)がはずれとなる場合には、飾り図柄表示部9における連続予告は出現しない。すなわち、遊技制御手段(CPU56)は、始動入賞が生じたときに変動パターンに関わる判定を行っているので、可変表示の結果がはずれとなる場合に用いられる図柄の変動パターンを、実際に図柄の変動が開始される前に(当たりか否か)判定でき、演出制御手段(演出制御用CPU111)は、遊技制御手段(CPU56)の判定結果に応じて、可変表示の結果がはずれとなる場合には、飾り図柄表示部9において連続予告を選択しないようにする。すなわち、飾り図柄表示部9における連続予告は、特別図柄表示部10における特別図柄の可変表示の結果が大当りとなることが始動入賞時に判定された場合に出現する。 【0153】 また、本実施形態においては、連続予告として予告演出Aおよび予告演出Bを設けているが、始動記憶数が4であるとき(予告判定テーブル4)では、確変大当りとなる(特定大当り入賞指定)判定結果コマンドを受信したときには、予告演出Bは出現しない。そして、大当りとなる非特定大当り入賞指定の判定結果コマンドを受信したときには、予告演出Aの出現する確率が低く設定されている。 このように、大当りとなる信頼度を実行する演出によって異ならせることで、遊技者に大当りの期待を抱かせるようにしてもよい。また、このように大当りとなる信頼度を異ならせることなく、予告演出Aおよび予告演出Bを均等に出現するようにしてもよい。」 (1-e)「【0190】 次に、本実施形態の連続予告の具体例として、第1実施形態および第2実施形態について説明する。 【0191】 まず、第1実施形態の一例として、図36および図37を参照して説明する。この実施の形態では、特別図柄始動記憶表示器18a?18dに個々に表示される始動記憶のうち、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が特定可能となるように特別図柄始動記憶表示器18a?18dとは別に設けられた予告表示装置としての予告演出表示部17を表示制御する予告演出表示制御手段(演出制御用CPUにより、連続予告実行時に予告演出表示部17を表示制御する機能)を備えている。予告演出表示部17は飾り図柄表示部9の下部に設けられている。そして、この実施の形態では、予告演出表示制御手段が、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が特定できるように予告演出表示部17を表示制御することで連続予告を実行している。 【0192】 図36は、予告演出Aの一例であり、図37は、予告演出Bの一例である。図36の予告演出Aでは、予告演出表示部17に矢印が表示され、図37の予告演出Bでは、予告演出表示部17にキャラクタ(この実施の形態では指)が表示されている。そして、予告演出表示部17に表示されるこれらの図柄(矢印およびキャラクタ)によって可変表示装置8の下方にある特別図柄始動記憶表示器18a?18dの対応する始動記憶を特定し、遊技者に容易に認識させることができるような構成となっている。 【0193】 本実施形態では、始動入賞時に抽出した大当り判定用乱数の値が、入賞時数値データ判定手段によって図11(A)に示す大当り判定値と一致する判定がなされたときに、主基板31の特定コマンド送信手段はその旨を示す特定コマンドを演出制御手段(演出制御用CPU111)に送信する。そして、連続予告の判定処理で連続予告を実行する判定がなされたことによって図36(A)および図37(A)に示す図柄(矢印およびキャラクタ)が予告演出表示部17に表示される。この実施の形態では予告演出表示部17に、予告演出Aとして可変表示装置8に矢印が点滅表示され(図36(A))、また、予告演出Bとして可変表示装置8にキャラクタとして指の形が点滅表示され(図36(A))、矢印および該キャラクタの人差し指で連続予告を実行するきかっけとなった始動記憶18bの上方から該始動記憶18bを指し示すことにより、遊技者に連続予告が実行されていることを認識させるものである。そして、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が表示される位置が変更されるに従って、予告演出表示制御手段は、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶を指し示すように予告演出表示部17を表示制御する(図36(A)?図36(C)、図37(A)?図37(C))。つまり、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が特別図柄始動記憶表示器18bである図36(A)および図37(A)のときの可変表示が終了し、次の可変表示が開始されるときに特別図柄始動記憶表示器18bに表示されていた始動記憶は特別図柄始動記憶表示器18aへと移動表示される(図36(B)、図37(B))。その際、予告演出表示制御手段は、予告演出表示部17に表示される図柄(矢印およびキャラクタ)が特別図柄始動記憶表示器18aを指し示すように予告演出表示部17を表示制御する(図36(C)、図37(C))。 【0194】 なお、始動記憶表示制御手段は、特別図柄始動記憶表示器18a?18dに表示される始動記憶をそれぞれ複数の表示態様(例えば、表示色を変更したり、点滅される間隔を変更したり、等)によって表示する機能を有し、図36(A)および図37(A)に示すように、この実施の形態では予告演出表示部17に表示される図柄(矢印およびキャラクタ)によって特定された始動記憶18bは、始動記憶表示制御手段(演出制御用CPU111のLEDを制御する機能)によって特別表示態様としての点滅表示制御される。 【0195】 連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶以外の始動記憶に基づく可変表示が終了すると(図36(A)?図36(D)、図37(A)?図37(D))、図33のステップ884にて、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶に基づく可変表示の開始を遊技者に報知する予告変動開始処理が実行される(開始時演出手段)。具体的には、可変表示装置8に報知演出表示24を表示させる(図36(E)、図37(E))。これにより、遊技者は、今まで行われていた演出がどの始動記憶に基づいて行われていたのか認識することができ、さらにその始動記憶に基づく可変表示が開始されることを認識することができる。そして、遊技における期待感を高めることができる。なお、ステップS884の予告変動開始処理では、開始時演出手段として報知演出表示24を表示させるが、報知演出表示24だけでなく、表示、音およびランプ等によって演出を行うようにしてもよい。このようにすることで、遊技者の期待感をより高めることができる。」 (1-f)「【0207】 なお、上述したように、演出制御用CPU111は、始動記憶数指定コマンドに基づいて所定数を上限(例えば、4つ)として始動条件の成立数(始動記憶数)を個々に表示する特別図柄始動記憶表示器18a?18dを表示制御する始動記憶表示制御手段と、特定コマンド(特定大当り入賞指定、非特定大当り入賞指定の判定結果コマンド)を受信したことに基づいて特別図柄始動記憶表示器18a?18dに個々に表示される始動記憶のうち当該特定コマンドが送信される起因となった始動記憶が特定可能な予告演出(例えば、図36(A)?図36(E)に示す演出)を実行するか否かの判定を行う予告判定手段(例えば、連続予告の判定処理:ステップS644、S648)と、予告判定手段によって予告演出を実行する旨の判定がなされたときに特別図柄始動記憶表示器18a?18dとは別に設けられた可変表示装置8の予告演出表示部17に報知演出表示24を表示させる制御を行う予告演出表示制御手段と、を備えたことにより、メインの制御手段である遊技制御手段の制御負担を軽減できるとともに、始動条件の成立数の表示と予告演出の表示を別に表示させることでそれぞれを遊技者に明確に報知することができる。さらに、サブの制御手段である表示制御手段で、始動条件の成立数にずれやコマンド受信に不具合が生じても、始動条件の成立数に変化が生じることによって遊技制御手段から成立数コマンドが送信されるためすぐに修正することができる。」 (1-g)段落【0018】から、始動記憶数が4未満のとき始動入賞口14に入る毎に、LEDを点灯させ、可変表示が開始される毎に、点灯しているLEDを1減らし、始動記憶数を表示する特別図柄始動記憶表示器18a?18dを備えているといえる。 (1-h)段落【0191】?【0193】から、飾り図柄表示部9の下部に設けられている予告演出表示部17を表示制御して、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が特定できるように予告演出表示部17に矢印を表示し、矢印によって特別図柄始動記憶表示器18a?18dの対応する始動記憶を特定し、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が表示される位置が変更されるに従って、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶を指し示すように予告演出表示部17を表示制御する予告演出表示制御手段を備えているといえる。 (1-i)図36(B)、図36(C)から、予告演出表示部17に表示される矢印は特別図柄始動記憶表示器18bから特別図柄始動記憶表示器18aを指し示すことが把握できる。 (1-j)図36(E)から、報知演出表示24として「次はアツイよ!」と表示させることが把握できる。 上記の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。 「可変表示の内容をより演出効果を高めて表示する飾り図柄表示部9と、 始動記憶数が4未満のとき始動入賞口14に入る毎に、LEDを点灯させ、可変表示が開始される毎に、点灯しているLEDを1減らし、始動記憶数を表示する特別図柄始動記憶表示器18a?18dと、 飾り図柄表示部9の下部に設けられている予告演出表示部17を表示制御して、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が特定できるように予告演出表示部17に矢印を表示し、矢印によって特別図柄始動記憶表示器18a?18dの対応する始動記憶を特定し、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が表示される位置が変更されるに従って、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶を指し示すように予告演出表示部17を表示制御する予告演出表示制御手段と、 を備え、 可変表示が終了し、次の可変表示が開始されるときに特別図柄始動記憶表示器18bに表示されていた始動記憶は特別図柄始動記憶表示器18aへと移動表示され、 その際、予告演出表示制御手段は、予告演出表示部17に表示される矢印が特別図柄始動記憶表示器18bから特別図柄始動記憶表示器18aを指し示すように予告演出表示部17を表示制御し、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶以外の始動記憶に基づく可変表示が終了すると、遊技者に報知する報知演出表示24として「次はアツイよ!」と表示させ、遊技者の期待感を高める遊技機。」 (3)対比 本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。 ア 刊行物1発明において、「可変表示の内容をより演出効果を高めて表示する」ことは何らかの演出を行っていることは明らかであるから、刊行物1発明の「可変表示の内容をより演出効果を高めて表示する飾り図柄表示部9」は、本願補正発明の「所定の演出を表示する表示画面」に相当する。 イ 刊行物1発明の「始動記憶」は、本願補正発明の「保留球」に相当する。また、遊技機において、始動記憶数が4未満のときには保留球が発生するものであり、可変表示が開始されるときには、保留球が消費されることを意味するものであるから、刊行物1発明の「始動記憶数が4未満のとき始動入賞口14に入る毎」、「可変表示が開始される毎」とは、本願補正発明の「始動入賞口に入賞し保留球が発生するごと」、「保留球が消費されるごと」に、それぞれ、相当する。 また、刊行物1発明において、「特別図柄始動記憶表示器18a?18d」の始動記憶数を表示するLEDを点灯させるときには所定の順序で点灯し、点灯しているLEDを減らすときには、所定の順序と逆の順序で消去することは自明な事項である。 よって、刊行物1発明の「始動記憶数が4未満のとき始動入賞口14に入る毎に、始動記憶を表示するLEDを点灯させ、可変表示が開始される毎に、点灯しているLEDを1減らし、始動記憶数を表示する特別図柄始動記憶表示器18a?18d」は、本願補正発明の「始動入賞口に入賞し保留球が発生するごとに所定の順序で表示するとともに、保留球が消費されるごとに所定の順序とは逆の順序で消去することによって、保留球数を示す保留表示群」に相当する。 ウ 刊行物1発明の「矢印」は、本願補正発明の「所定の画像」に相当するものであり、刊行物1発明において、「連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が特定できるように予告演出表示部17に矢印を表示」することは、本願補正発明の「保留表示に対応する位置に所定の画像を表示」することに相当する。 よって、刊行物1発明の「飾り図柄表示部9の下部に設けられている予告演出表示部17を表示制御して、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が特定できるように予告演出表示部17に矢印を表示し、矢印によって特別図柄始動記憶表示器18a?18dの対応する始動記憶を特定し、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶が表示される位置が変更されるに従って、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶を指し示すように予告演出表示部17を表示制御する予告演出表示制御手段」は、本願補正発明の「表示画面を制御して、当該表示画面上の表示したまたは表示している保留表示に対応する位置に所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに表示している別の保留表示に対応する位置へ前記所定の画像を移動するように表示する表示制御手段」に相当する。 エ 刊行物1発明において、「特別図柄始動記憶表示器18a?18d」の始動記憶を表示するLEDを点灯させるときに、所定の端から順次表示し、点灯しているLEDを減らすときには、所定の端とは反対側から順次消去することは、前記イでも検討したとおり、自明な事項である。 そして、前記イにおける検討を踏まえれば、刊行物1発明は、本願補正発明の「保留表示群は、保留球が発生するごとに所定の端の保留表示から順次表示し、保留球が消費されるごとに所定の端とは反対側の表示している保留表示から順次消去」するとの構成を有している。 オ 刊行物1発明において、「可変表示が終了し、次の可変表示が開始されるときに特別図柄始動記憶表示器18bに表示されていた始動記憶は特別図柄始動記憶表示器18aへと移動表示され」ることは、始動記憶(保留球)が消費されることを意味し、「特別図柄始動記憶表示器18bに表示されていた始動記憶は特別図柄始動記憶表示器18aへと移動表示され、その際、予告演出表示制御手段は、予告演出表示部17に表示される矢印が特別図柄始動記憶表示器18bから特別図柄始動記憶表示器18aを指し示すように」表示制御することは、始動記憶(保留球)が消費されるごとに、所定の端側の隣の特別図柄始動記憶表示器(保留表示)に対応する位置へ順次、矢印(所定の画像)を移動するように表示することを意味するものである。 また、刊行物1発明において、「連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶以外の始動記憶に基づく可変表示が終了する」時期は、所定の端にある特別図柄始動記憶表示器18aを矢印が指し示すように予告演出表示部17を表示制御した後であるといえる。 そして、刊行物1発明の「次はアツイよ!」と遊技者に報知する報知演出表示24は、本願補正発明の「演出の展開を示唆する画像」に相当し、刊行物1発明においては、矢印(所定の画像)を「次はアツイよ!」と遊技者に報知する報知演出表示24(演出の展開を示唆する画像)に変化するように表示しているといえる。 さらに、刊行物1発明における上記「次はアツイよ!」の表示は、遊技者にとって可変表示の開始だけでなく、つぎにおこなう演出における大当たり当選への期待度を示唆するものであることは自明な事項である。 よって、刊行物1発明の「可変表示が終了し、次の可変表示が開始されるときに特別図柄始動記憶表示器18bに表示されていた始動記憶は特別図柄始動記憶表示器18aへと移動表示され、その際、予告演出表示制御手段は、予告演出表示部17に表示される矢印が特別図柄始動記憶表示器18bから特別図柄始動記憶表示器18aを指し示すように予告演出表示部17を表示制御し、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶以外の始動記憶に基づく可変表示が終了すると、遊技者に報知する報知演出表示24として「次はアツイよ!」と表示させ、遊技者の期待感を高める」点と、本願補正発明の「表示制御手段は、表示した保留表示または表示しているいずれかの保留表示に対応する位置に所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに、所定の端側の隣の保留表示に対応する位置へ順次、所定の画像を移動するように表示し、所定の画像が所定の端に移動した後に、所定の端における保留表示に対応する位置を保ったまま、または、当該所定の端における保留表示に対応する位置から、保留表示群が配置された列方向とは直交する方向へ移動しつつ、所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示し、演出の展開を示唆する画像は、出現したキャラクターまたはアイテムの種類によって、つぎにおこなう演出における大当たり当選への期待度を示唆する」点とは、 「表示制御手段は、表示した保留表示または表示しているいずれかの保留表示に対応する位置に所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに、所定の端側の隣の保留表示に対応する位置へ順次、所定の画像を移動するように表示し、所定の画像が所定の端に移動した後に、所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示し、演出の展開を示唆する画像は、つぎにおこなう演出における大当たり当選への期待度を示唆する」点で共通する。 キ したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、 「所定の演出を表示する表示画面と、 始動入賞口に入賞し保留球が発生するごとに所定の順序で表示するとともに、保留球が消費されるごとに所定の順序とは逆の順序で消去することによって、保留球数を示す保留表示群と、 前記表示画面を制御して、当該表示画面上の表示したまたは表示している保留表示に対応する位置に所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに表示している別の保留表示に対応する位置へ前記所定の画像を移動するように表示する表示制御手段と、 を備え、 前記保留表示群は、保留球が発生するごとに所定の端の保留表示から順次表示し、保留球が消費されるごとに所定の端とは反対側の表示している保留表示から順次消去し、 前記表示制御手段は、表示した保留表示または表示しているいずれかの保留表示に対応する位置に前記所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに、前記所定の端側の隣の保留表示に対応する位置へ順次、前記所定の画像を移動するように表示し、前記所定の画像が前記所定の端に移動した後に、当該所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示し、 前記演出の展開を示唆する画像は、つぎにおこなう演出における大当たり当選への期待度を示唆することを特徴とする遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 表示制御手段に関して、本願補正発明は、「所定の端における保留表示に対応する位置を保ったまま、または、当該所定の端における保留表示に対応する位置から、保留表示群が配置された列方向とは直交する方向へ移動しつつ」所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示するのに対して、刊行物1発明は、そのように特定されていない点。 [相違点2] 演出の展開を示唆する画像に関して、本願補正発明は、「出現したキャラクターまたはアイテムの種類によって」つぎにおこなう演出における大当たり当選への期待度を示唆するのに対して、刊行物1発明は、「次はアツイよ!」といった文字により期待感を高める点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について 遊技機の技術分野において、保留表示に対応する位置を保ったまま演出の展開を示唆する画像を表示する点は、本願出願前において周知の技術である(例えば、特開2004-194814号公報の段落【0096】?【0107】図13における「当」マークの付加された表示態様、特開2004-229888号公報の段落の段落【0074】?【0085】図10における予告補助表示としての「当」のマーク、特開2005-95409号公報の段落【0123】、【0124】、図14における「爆弾」と「ライター」の組合わせからなる保留表示の表示態様を参照のこと。)。 そして、刊行物1発明においては、所定の端における始動記憶の表示(保留表示)に対応する位置において矢印(所定の画像)を表示しており、矢印(所定の画像)が所定の端に移動した後に、報知演出表示24として「次はアツイよ!」と表示させるものといえる。 よって、刊行物1発明の報知演出表示24に換えて、周知の技術を適用し、所定の端における保留表示に対応する位置を保ったまま画像の展開を示唆する画像を表示するように構成し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について 遊技機における演出の展開を示唆する画像として、キャラクター、アイテムの画像を用いるか、文字による画像を用いるかは、当業者が適宜選択できる事項に過ぎない。 よって、刊行物1発明における報知演出表示24を、出現したキャラクターまたはアイテムの種類によって、つぎにおこなう演出における大当たり当選への期待度を示唆するように構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 請求人は、審判請求書において、「引用文献1に記載の発明における・・・図36、図37における予告演出表示部17と報知演出表示24とは全く別のものであり、そこには、両者における関連(対応)性も連続性も全くありませんし、また、両者における関連性または連続性を示唆する演出もありません。したがって、遊技者にとっては、予告演出表示部17(図36(D)における矢印形状画像)が、報知演出表示24(図36(E)における『次はアツイよ!』というメッセージ)に変化したとは、連想することは到底できないものと思量します。」と主張する。 しかしながら、刊行物1における「予告演出表示部17」と「報知演出表示24」はともに飾り図柄表示部9に表示されるものであり、図36(D)に示される飾り図柄表示部9の画面から図36(E)に示される飾り図柄表示部9の画面に変化している。 そして、連続予告を実行するきっかけとなった始動記憶に関連する表示に着目すれば、演出表示部17を報知演出表示24に変化するように表示しているといえる。 なお、請求人は、両者における関連(対応)性も連続性も全くないと主張するが、本願の請求項1に係る発明においては、両者の関連性(対応)や連続性については特定されていない。 よって、請求人の主張は採用できない。 ウ 本願補正発明が奏する効果について 上記相違点によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明及び周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 エ まとめ 以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明及び周知の技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記「第2 2」又は「第2 3」のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成26年6月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 所定の演出を表示する表示画面と、 始動入賞口に入賞し保留球が発生するごとに所定の順序で表示するとともに、保留球が消費されるごとに所定の順序とは逆の順序で消去することによって、保留球数を示す保留表示群と、 前記表示画面を制御して、当該表示画面上の表示したまたは表示している保留表示に対応する位置に所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに表示している別の保留表示に対応する位置へ前記所定の画像を移動するように表示する表示制御手段と、 を備え、 前記保留表示群は、保留球が発生するごとに所定の端の保留表示から順次表示し、保留球が消費されるごとに所定の端とは反対側の表示している保留表示から順次消去し、 前記表示制御手段は、表示した保留表示または表示しているいずれかの保留表示に対応する位置に前記所定の画像を表示するとともに、保留球が消費されるごとに、前記所定の端側の隣の保留表示に対応する位置へ順次、前記所定の画像を移動するように表示し、前記所定の画像が前記所定の端に移動した後に、当該所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示し、 前記演出の展開を示唆する画像は、出現したキャラクターまたはアイテムの種類によって、つぎにおこなう演出における大当たり当選への期待度を示唆することを特徴とする遊技機。」 2 刊行物 刊行物1及びその記載事項並びに刊行物1発明は、上記「第2 3(2)」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から「表示制御手段」に関して「所定の画像が前記所定の端に移動した後に、当該所定の端における保留表示に対応する位置を保ったまま、または、当該所定の端における保留表示に対応する位置から、前記保留表示群が配置された列方向とは直交する方向へ移動しつつ、当該所定の画像を演出の展開を示唆する画像に変化するように表示」するという限定を省いたものである。 そうすると、本願発明と刊行物1発明とを対比した相違点は、上記「第2 3(4)」で述べた相違点2と同様のものになるから、上記「第2 3(5)」で検討したとおり、本願発明は、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-01-28 |
結審通知日 | 2016-02-02 |
審決日 | 2016-02-15 |
出願番号 | 特願2013-168741(P2013-168741) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 澤田 真治 |
特許庁審判長 |
本郷 徹 |
特許庁審判官 |
平城 俊雅 関 博文 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 酒井 昭徳 |