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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S |
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管理番号 | 1313013 |
審判番号 | 不服2015-3540 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-25 |
確定日 | 2016-03-31 |
事件の表示 | 特願2011- 62604「超音波センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開、特開2012-198106〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この審判事件に係る特許出願(以下、「本願」という。)は、平成23年3月22日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。 平成26年11月19日付け:拒絶査定(同年同月25日送達) 平成27年 2月25日 :審判請求書、手続補正書の提出 平成27年 3月20日 :前置報告 平成27年10月30日付け:拒絶理由の通知(同年11月4日発送) 平成27年12月28日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成27年12月28日に提出された手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「 超音波の送受波を行う送受波素子を収納する送受波ブロックと、前記送受波素子を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装された回路基板と、開口を具備して前記開口を介して前記回路基板が基板収納部に収納されるとともに、前記送受波ブロックが取り付けられるハウジングと、前記ハウジングに設けられた挿通口を通して前記送受波素子と前記回路基板の電子回路とを電気的に接続する導通手段と、前記開口を閉塞する手段と、前記送受波ブロックの内部に充填されている充填材とを備え、 前記挿通口は、前記充填材によって封止されており、且つ前記基板収納部には充填材が充填されていないことを特徴とする超音波センサ。」 第3 当審における拒絶の理由 当審において、平成27年10月30日付けで通知した拒絶の理由の一つは、以下のとおりである(以下、「当審拒絶理由」という。)。 「1 この審判事件に関する特許出願(以下、「本願」という。)の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献については引用文献一覧参照) (1)請求項1,2 引用文献1,2 備考: 引用文献2(段落0007,図2の記載を主に参照)には、 超音波の送受波を行う送受波素子を収納する送受波ブロック(圧電素子1、有底筒状ケース2)と、前記送受波素子を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装された回路基板(基板11)と、開口を具備して前記開口を介して前記回路基板が基板収納部に収納されるとともに、前記送受波ブロックが取り付けられるハウジング(9)と、前記ハウジングに設けられた挿通口を通して前記送受波素子と前記回路基板の電子回路とを電気的に接続する導通手段と、前記基板収納部を封止する封止材12とを備え、 前記挿通口は前記送受波ブロックの内部に充填される充填材(封止材14)によって封止される超音波センサ(超音波送受波器を用いたプリアンプモジュール) が開示されている。 前記導通手段は、回路基板の電子回路に電気的に接続されたピン端子(金属端子16a,16b)と、一端が前記送受波素子に接続されたリード線(入出力リード5a,5b)の他端とを電気的に接続して成るものである。 次に、引用文献1には、超音波センサに関し、基板収納部の耐水性を確保するための手段として、充填材を充填する構成(段落0003の記載を参照)に代えて、開口に覆設される蓋部材7(段落0082?0085,0092,0093の記載を参照)を用いることで、重量及びコストの増加を抑制し、回路基板の歪みの発生を防止し、製造時間の短縮を図る手法が開示されている。 超音波センサを製造する際に、重量及びコストの増加を抑制することや、充填剤による回路基板の歪みの発生を防止すること、製造時間の短縮を図ることは、いずれも自明の課題である。 してみると、引用文献2に開示された超音波センサにおいて、重量及びコストの増加を抑制し、回路基板の歪みの発生を防止し、製造時間の短縮を図るため、基板収納部を封止材12によって封止する構成に代え、開口に覆設される蓋部材、すなわち、開口を閉塞する手段を用いるよう構成することに格別の困難性は存しない。」 「 引 用 文 献 一 覧 1.特開2011-053109号公報 2.特開2010-118958号公報」 第4 引用文献の記載事項 1 引用文献2 (1)引用文献2の記載 当審拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2010-118958号公報(平成22年5月27日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審が付した。) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、超音波周波数帯の送信、受信を行う超音波送受波器を用いたプリアンプモジュールに関するものである。」 「【0007】 (中略) 図2は本発明の実施の形態に関わる別の超音波送受波器を用いたプリアンプモジュールの概略断面図を上部、電子部品が搭載された基板11を透過した上面よりの見取り図を下部に示す。図2において、アルミニウム材等からなる有底筒状ケース2の底面内部に圧電素子1を固着しユニモルフ振動子を形成する。圧電素子1は銀電極が裏面から折り返し構造で表に取り出されて2つの電極が1面に設置されている。これをPBT樹脂等からなるハウジング9に弾性樹脂からなるクッション10で固定する。圧電素子の銀電極に入出力リード5a、5bを半田付け等をして取り出す。これらの入出力リードをハウジング9に埋設された金属端子16a、16bに半田付け等により接続する。これに例えば発泡性シリコーン材や発泡性ウレタン剤15や砕いた発泡体等と弾性剤を混合した封止剤14を充填する。ハウジングに設けられた埋設金属端子16a、16bの位置に予めスルーホールが設けられた電子回路が搭載された基板11を装着し半田付け等により電気的に部に接続され、ワイヤ13等によりコントローラに接続するための端子が設けられ、ウレタン等からなる封止剤12で封止されてプリアンプモジュールを構成する。 (以下略)」 【図2】 (2)引用文献2から読み取れる技術事項 a 段落0001の記載から、引用文献2には「超音波周波数帯の送信、受信を行う超音波送受波器を用いたプリアンプモジュール。」との技術事項が記載されていることが分かる。 b 段落0007の記載から、「有底筒状ケース2の底面内部に圧電素子1を固着し、これをハウジング9にクッション10で固定し、圧電素子1の銀電極に入出力リード5a、5bを半田付け等をして取り出し、これらの入出力リードを金属端子16a、16bに半田付け等により接続する。」という技術事項が読み取れる。 c 段落0007の記載及び図2から、「有底筒状ケース2の内部に封止剤14が充填されている。」という技術事項が読み取れる。 d 段落0007の記載から、「金属端子16a、16bの位置に予めスルーホールが設けられた電子回路が搭載された基板11を装着し半田付け等により電気的に接続される。」という技術事項が読み取れる。 e 段落0007の記載及び図2から、「ハウジング9が具備する開口を介して基板11が収納され、ハウジング9の基板11が収納される部分は封止剤12で封止されている。」という技術事項が読み取れる。 f 図2から、「入出力リード5a、5bはハウジング9に設けられた挿通口を通る。」という技術事項が見て取れる。 g 図2から、「ハウジング9に設けられた挿通口は、封止剤14によって封止されている。」という技術事項が見て取れる。 (3)上記技術的事項aないしgを総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 超音波周波数帯の送信、受信を行う超音波送受波器を用いたプリアンプモジュールであって、 有底筒状ケース2の底面内部に圧電素子1を固着し、これをハウジング9にクッション10で固定し、前記圧電素子1の銀電極に入出力リード5a、5bを半田付け等をして取り出し、これらの入出力リードを金属端子16a、16bに半田付け等により接続し、前記有底筒状ケース2の内部に封止剤14が充填されており、前記金属端子16a、16bの位置に予めスルーホールが設けられた電子回路が搭載された基板11を装着し半田付け等により電気的に接続され、 前記ハウジング9が具備する開口を介して前記基板11が収納され、前記ハウジング9の前記基板11が収納される部分は封止剤12で封止されており、 前記入出力リード5a、5bは前記ハウジング9に設けられた挿通口を通り、 前記挿通口は、前記封止剤14によって封止されている、 プリアンプモジュール。」 2 引用文献1 (1)引用文献1の記載 当審拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2011-053109号公報(平成23年3月17日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審が付した。) 「【0001】 本発明は、車両に搭載されて障害物検知等に用いられる超音波センサに関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来から、図13に示すように、一面に開口を具備する中空状のハウジング101と、超音波の送受波が行われる送受波面がハウジング101の他面に露出する送受波素子102と、ハウジング101内に収納されて送受波素子を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装される回路基板103と、送受波素子102と回路基板103とを電気的に接続する配線104と、ハウジング101の開口に覆設される蓋部材105と、一端が回路基板103に溶接等により接続されて他端が図示しない給電端子に接続される端子106とを備えた超音波センサが提供されている。 【0003】 そして、上記超音波センサが車両用として用いられる場合、当該超音波センサは、バンパーやフロントグリル等、被水可能性が高く且つ振動の激しい箇所に設置される。そのため、従来、多くの超音波センサでは、その回路基板103等が収納されるハウジング101内に、疎水性及び弾力性を有する充填材107(シリコン等)が充填されている。そして、これにより、その要求される高い耐水性、及び耐振性を確保する構成が一般的となっている(例えば特許文献1参照)。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、上記従来構成のように充填材107を充填することにより、その分、重量及びコストが増加するのみならず、その存在により、ハウジング101内に収納された回路基板103に歪みが生じる可能性があり、当該回路基板103上に実装された電子部品との間のハンダ付け部分に亀裂が生ずる虞がある。或いは、その充填の前後でセンサの検知エリア特性が変化してしまうという虞もある。尚、上記電子回路103に歪みを生じさせる要因としては、例えば、充填材107の熱膨張及び収縮に伴う外部負荷があり、また、充填前後における検知エリア特性の変化としては、その検知エリアの狭小化等が挙げられる。そして、さらには、その乾燥工程に多大な時間を要する等といった課題もあり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。 【0006】 本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、防水性を確保しつつ、重量及びコストの増加を抑制して、更には、電子回路基板の歪みの発生を防止し、製造時間の短縮を図ることができる超音波センサを提供することにある。」 「【0060】 (中略) 【図8】本発明の実施形態2における超音波センサの断面図を示す。 (中略) 【図13】従来例における超音波センサの断面図を示す。」 「【0062】 (実施形態1) 本実施形態における超音波センサは、図1に示すように、超音波の送受波を行う送受波素子1と、送受波素子1の送受波面以外の面を覆うカバー2と、送受波素子1を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装された回路基板3と、送受波素子1が収納される素子収納部41、及び開口部42aを具備して回路基板3が収納される基板収納部42が設けられ、素子収納部41と基板収納部42とを連通する連通孔43が形成されるハウジング4と、連通孔43を閉塞する封止板5と、一端が回路基板3に接続されて他端が図示しない外部端子に接続される外部接続端子6と、基板収納部42の開口部を覆設する蓋部材7とを備えている。」 「【0069】 回路基板3は、開口42aを介して基板収納部42内に収納され、連通孔43を挿通する接続端子14と接続される。 【0070】 ハウジング4は、一面に開口42aを具備する略中空箱型の基板収納部42、及び基板収納部42における他面(隔壁44)を挟んで基板収納部42に隣接する一面に開口41aを具備した略円筒状の素子収納部41、及び隔壁44を挿通して基板収納部42の他面と素子収納部41の他面とを連通させる連通孔43から構成される。」 「【0082】 蓋部材7は、白色の(透光性を有した)ポリブチレンテレフタレートからなる、略矩形平板状の天板71と天板71の周縁から当該天板71に対して略垂直に延設される延設部72とから構成され、天板71を基板収納部42の底面に対向させた状態で基板収納部42の開口42aに覆設される。そして、蓋部材7は、天板71と基板収納部42における開口42aの周縁部とが超音波溶着、または、レーザー溶着によって密閉接合される。なお、溶着の方法は、超音波溶着、レーザー溶着に限定されず、振動溶着等であってもよい。また、溶着を行う代わりに、接着剤による接合を行ってもよい。 【0083】 これにより、蓋部材7とハウジング1との間が閉塞されるため、基板収納部42の開口42aを介して基板収納部内へ水分が侵入することを防止できる。 【0084】 このように、本実施形態の超音波センサでは、封止板5がハウジング4及び送受波素子1に溶着されることで連通孔43を閉塞し、更に、蓋部材7がハウジング4に溶着されることで基板収納部42の開口42aを閉塞して、基板収納部42が封止された防水構造を有している。 【0085】 よって、本実施形態の超音波センサでは、防水性を確保しつつも、回路基板3の被水防止のために基板収納部42に充填材を充填する必要がないため、重量及びコストの増加を抑制でき、更には、回路基板3の歪みの発生を防止し、製造時間の短縮を図ることができる。 【0086】 更に、封止板5とハウジング4との間、及び封止板5と送受波素子1との間、及び蓋部材7とハウジング4との間にシール材を挟み込むことで、基板収納部42の防水性をより向上させることができる。」 「【0089】 (実施形態2) 本実施形態における超音波センサは、封止板5を有しておらず、連通孔43が接着剤9のみによって閉塞されている点が、実施形態1における超音波センサと異なっている。なお、その他の構成については、実施形態1と共通であるため共通の符号を付して説明を省略する。 【0090】 本実施形態では、封止板5が設けられていないため、カバー2の挿通孔2a及び連通孔43を介して基板収納部42側にベース13が露出している。 【0091】 そして、比較的大きな開口を有する凹部42bに接着剤9を注ぎ込むことで、当該接着材9が、凹部42bから開口の小さい連通孔43に流入し、凹部42bからベース13にまで容易、且つ確実に接着剤9を充填することができる。これにより、基板収納部42と素子収納部41との間が閉塞されて、連通孔43を介して素子収納部41から基板収納部42への水分の浸入が防止される。 【0092】 また、基板収納部42の開口42aは、実施形態1と同様、蓋部材7が覆設された後に当該蓋部材7とハウジング4とが溶着されることで閉塞され、開口42aを介して基板収納部42への水分の浸入が防止される。 【0093】 以上により、本実施形態の超音波センサにおいても、基板収納部42が、蓋部材7と接着剤8とによって、封止された防水構造を有する。」 【図8】 【図13】 (2)引用文献1から読み取れる技術事項 上記記載から、次の技術事項(以下、「引用文献1記載の技術事項」という。)が読み取れる。 「 基板収納部42の開口部を覆設する蓋部材7がハウジング4に溶着されることで基板収納部42の開口42aを閉塞して、基板収納部42が封止された防水構造を有していることにより、 回路基板3の被水防止のために基板収納部42に充填材を充填する必要がないため、 防水性を確保しつつも、重量及びコストの増加を抑制でき、更には、回路基板3の歪みの発生を防止し、製造時間の短縮を図ることができる超音波センサ。」 第5 対比及び判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明は、超音波周波数帯の送信、受信を行うものである。よって、引用発明の「圧電素子1」は、本願発明の(超音波の送受波を行う)「送受波素子」に相当する。 イ 引用発明において、「基板11」に搭載された電子回路が、超音波信号を処理するためのものであることは、当業者であれば常識的に分かることである。よって、引用発明の「基板11」は、本願発明の(送受波素子を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装された)「回路基板」に相当する。 ウ 引用発明の「入出力リード5a、5b」及び「金属端子16a、16b」が、「圧電素子1」と「基板11」に搭載された電子回路とを電気的に接続するものであることは明らかである。 よって、引用発明の「入出力リード5a、5b」及び「金属端子16a、16b」は、本願発明の(前記送受波素子と前記回路基板の電子回路とを電気的に接続する)「導通手段」に相当する。 エ 本願明細書の段落0021及び0022の記載によると、「送受波ブロック」とは、圧電素子から成る送受波素子10と、内部に送受波素子10を収納するケース11とから構成されるものである。してみれば、本願発明の「送受波ブロック」とは、「送受波素子」と、内部に送受波素子を収納するケースとから構成されたもの、と認めるのが相当である。 一方、引用発明は、「圧電素子1」と、内部に圧電素子1が固着された「有底筒状ケース2」とを有している。ここで、「有底筒状ケース2」は、内部に圧電素子1を収納しているということができる。 よって、引用発明の「圧電素子1」及び「有底筒状ケース2」は、本願発明の(超音波の送受波を行う送受波素子を収納する)「送受波ブロック」に相当する。 オ 本願発明において、「ハウジング」とは、開口を具備し、前記開口を介して回路基板が基板収納部に収納されるとともに、送受波ブロックが取り付けられ、導通手段が通る挿通口が設けられたものである。 一方、引用発明の「ハウジング9」は、具備する開口を介して「基板11」(「回路基板」に相当)が収納されるものであり、「圧電素子1」及び「有底筒状ケース2」(「送受波ブロック」に相当)が固定されるものであり、また、入出力リード5a、5b(「導通手段」に相当)が通る挿通口を有するものである。 よって、引用発明の「ハウジング9」は、本願発明の「ハウジング」に相当し、同時に、引用発明の「前記入出力リード5a、5bは前記ハウジング9に設けられた挿通口を通り」は、本願発明において、「導通手段」が「前記ハウジングに設けられた挿通口を通」ることに相当する。 ここで、引用発明において、ハウジング9の基板11が収納される部分は封止剤12で封止されている。そこで、逆に、「ハウジング9」において、封止剤12で封止されている部分を「基板11が収納される部分」と捉えることができる。そして、この「基板11が収納される部分」が、本願発明の「基板収納部」に相当する。 カ 本願発明の「充填材」は、「送受波ブロック」の内部に充填されるものであり、さらに、ハウジングに設けられた挿通口を封止するものである。 一方、引用発明の「封止剤14」は、「有底筒状ケース2の内部に充填されて」おり、さらに、ハウジング9に設けられた挿通口を封止するものである。 ここで、「有底筒状ケース2」が、本願発明の「送受波ブロック」に相当すること(上記「エ」)を踏まえると、引用発明の「封止剤14」は、本願発明の「充填材」に相当する。 キ 引用発明の(超音波周波数帯の送信、受信を行う超音波送受波器を用いた)「プリアンプモジュール」は、本願発明の「超音波センサ」に相当する。 2 一致点及び相違点 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「 超音波の送受波を行う送受波素子を収納する送受波ブロックと、前記送受波素子を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装された回路基板と、開口を具備して前記開口を介して前記回路基板が基板収納部に収納されるとともに、前記送受波ブロックが取り付けられるハウジングと、前記ハウジングに設けられた挿通口を通して前記送受波素子と前記回路基板の電子回路とを電気的に接続する導通手段と、前記送受波ブロックの内部に充填されている充填材とを備え、 前記挿通口は、前記充填材によって封止されている超音波センサ。」 (相違点) 本願発明が「開口を閉塞する手段」を備えており、「基板収納部には充填材が充填されていない」のに対し、引用発明は「開口を閉塞する手段」を備えておらず、「基板11が収納される部分は封止剤12で封止されて」いる点。 3 判断 以下、相違点について検討する。 ア 上記引用文献1記載の技術事項から、引用文献1の記載に接した当業者であれば、超音波センサに関し、基板収納部に充填材を充填する構成に代えて、開口を閉塞するための蓋部材を備えることにより、重量及びコストの増加を抑制し、回路基板の歪みの発生を防止し、製造時間の短縮を図ることができることを理解する。 ここで、超音波センサを製造する際に、重量及びコストの増加を抑制することや、充填剤による回路基板の歪みの発生を防止すること、製造時間の短縮を図ることは、いずれも自明の課題である。 してみると、引用発明のプリアンプモジュール(超音波センサ)において、重量及びコストの増加を抑制し、回路基板の歪みの発生を防止し、製造時間の短縮を図るため、基板11が収納される部分(基板収納部)を封止剤12で封止する構成、すなわち、基板収納部に充填材を充填する構成に代えて、開口を閉塞するための蓋部材、すなわち、開口を閉塞する手段を備え、結果として基板収納部には充填材が充填されていない構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 イ そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1記載の技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 ウ したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-01-29 |
結審通知日 | 2016-02-02 |
審決日 | 2016-02-15 |
出願番号 | 特願2011-62604(P2011-62604) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 亮 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
堀 圭史 中塚 直樹 |
発明の名称 | 超音波センサ |
代理人 | 仲石 晴樹 |
代理人 | 西川 惠清 |
代理人 | 坂口 武 |
代理人 | 北出 英敏 |