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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1313051
審判番号 不服2015-10770  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-08 
確定日 2016-04-01 
事件の表示 特願2011- 36634「印刷開示範囲制御方法、印刷システム、印刷管理サーバ、および印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月10日出願公開、特開2012-174078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年2月23日の出願であって、平成26年12月4日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年6月8日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年6月8日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項4は、
「印刷ジョブを作成するコンピュータ端末であって、
作成された文書を表す文書データを複数のブロックに区切って、前記ブロック毎に開示可能なユーザまたはユーザグループを指定する開示先情報を埋め込んだ、一つの開示先埋め込み文書データを作成する文書作成手段と、
前記開示先埋め込み文書データを前記印刷ジョブとして出力する印刷ジョブ生成手段と、
を含むコンピュータ端末。」
と補正された。
本件補正のうちの上記請求項4についての補正は、請求項4に記載した発明を特定するために必要な事項である「開示先埋め込み文書データ」について「一つの」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項4に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-267175号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の(a)ないし(d)のとおりの記載がある。

(a)「【請求項1】
ホストコンピュータと印刷装置がネットワークにて接続され、印刷装置はグループ単位でユーザー認証する機能を有する印刷システムにおいて、ホストコンピュータは、グループの権限に応じて印刷データに印刷できる部分とできない部分の指定を行う機能を有し、印刷装置は、ユーザー認証通過後、印刷を実行したユーザーの属しているグループの権限に応じて、印刷される部分とされない部分を分ける機能を有することを特徴とする印刷システム。」

(b)「【0005】
本発明の印刷システムにおいては、複数のユーザー認証グループ毎に印刷される部分とされない部分を分けることができるので、情報の多様化に合わせたきめ細かく柔軟性のあるセキュリティを図ることができる。
(中略)
また、印刷を実行できなかった時にその旨を印刷要求があったホストコンピュータに通知することができるので、印刷装置に行く前にユーザーに印刷トラブルを伝えることができる。
また、印刷を実行できなかった時に印刷要求があったホストコンピュータに印刷できる印刷装置を通知することができるので、ユーザーはどの印刷装置なら印刷できるのか知ることができる。」

(c)「【0007】
図1は本発明の印刷システムの構成図である。本印刷システムは、多数のホストコンピュータ1(1-1?1-n)と多数の印刷装置2(2-1、2-2、2-3…)がネットワーク回線3で接続されることで構成されている。
ホストコンピュータ1において認証機能対応用印刷データ作成装置を使い、閲覧の制限をかけたい個所に複数のユーザー認証グループの指定を行い、印刷データを作り出す。このために、ネットワーク回線3上にある印刷装置2の中から認証機能付きの印刷装置2-2に該当するホストコンピュータ1から印刷データの送信を行う。印刷装置2-2は印刷データを受信し、印刷データの蓄積を行う。印刷装置2-2にてユーザーが認証を行い、合格した場合に印刷装置2-2は印刷データの印刷を行う。印刷は認証を通過したユーザーの属するグループの権限に応じて印刷される個所とされない個所に分かれて行われる。印刷例を図2、図3に示す。この図2、図3では、通常通り印刷された個所と、グループの権限によって印刷されない個所とに分けられて印刷される様子を示す。」

(d)「【実施例6】
【0012】
ホストコンピュータ1より認証が必要な印刷データを印刷装置2に送信する際に、(中略)
【実施例7】
【0013】
ホストコンピュータ1より認証が必要な印刷データを印刷装置2に送信する際に、(中略)
【実施例8】
【0014】
ホストコンピュータ1より認証が必要な印刷データを印刷装置2に送信する際に、(中略)」

上記摘記事項(c)によれば、引用例1には、印刷データ作成装置を使って、印刷データの作成を行うホストコンピュータが記載され、そのホストコンピュータは、閲覧の制限をかけたい個所に複数のユーザー認証グループの指定を行った印刷データの作成を行うものである。
また、上記摘記事項(b),(d)によれば、引用例1のホストコンピュータは、認証の必用な印刷データを印刷装置に送信するものである。

したがって、引用例1には、
「印刷データを作成するホストコンピュータであって、
閲覧の制限をかけたい個所に複数のユーザー認証グループの指定を行った印刷データを作成する印刷データ作成装置を有し、
印刷データを印刷装置に送信する
ホストコンピュータ。」
の発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、次のことがいえる。
(1)引用例1発明の「ホストコンピュータ」は、本願補正発明の「コンピュータ端末」に相当する。

(2)以下の事情に照らせば、引用例1発明の「印刷データ」は、本願補正発明の「開示先埋め込み文書データ」と、「作成された文書を表す文書データを複数のブロックに区切って、前記ブロック毎にユーザまたはユーザグループを指定する情報を埋め込んだ、一つの埋め込み文書データ」である点で共通するといえる。

ア.引用例1の請求項1と段落【0007】の記載によれば、引用例1発明の「ホストコンピュータ」で作成された「印刷データ」は、「印刷装置」に送信され、「印刷装置」において、ユーザーの属しているグループの権限に応じて印刷される部分とされない部分に分けられ、それによって図2,3のように印刷されるのであるから、同図2,3が引用例1発明の「印刷データ」の内容を表していることは明らかである。
そして、それらによれば、引用例1発明の「印刷データ」は、「作成された文書を表す文書データを複数のブロックに区切って、前記ブロック毎にユーザまたはユーザグループが指定された文書データ」と言い得るものである。

この点に関し、請求人は、引用例1発明の「印刷データ」は、「ユーザやユーザグループ毎に閲覧の制限をかけたい個所を指定」したものであって、「閲覧の制限をかけたい個所毎にユーザやユーザグループを指定」したものではない旨主張している(平成27年2月3日付け意見書及び審判請求書)が、次の理由で採用できない。
(ア)上記請求項1に「印刷データ」に対して「印刷できる部分とできない部分の指定」を行う旨の記載があることと、上記段落【0007】に「閲覧の制限をかけたい個所」に対して「複数のユーザー認証グループの指定」を行う旨の記載があることを併せ考えると、引用例1発明の「印刷データ」は、「ユーザやユーザグループ毎に閲覧の制限をかけたい個所を指定」したものではなく、「閲覧の制限をかけたい個所毎にユーザやユーザグループを指定」したものと解するのが自然である。
(イ)これに対し、請求人が主張の根拠とする引用例1の段落【0005】や【0007】の記載は、審査官が拒絶査定で指摘するように、引用例1発明の「印刷データ」が「ユーザやユーザグループ毎に閲覧の制限をかけたい個所を指定」したものであることを表す記載とは解されず、ほかに該「印刷データ」を「ユーザやユーザグループ毎に閲覧の制限をかけたい個所を指定」したものと解すべき理由は見当たらない。

イ.引用例1には、「印刷データ」以外の情報が「ホストコンピュータ」から「印刷装置」に送信される旨の記載がないことと、引用例1の請求項1の「ホストコンピュータは、グループの権限に応じて印刷データに印刷できる部分とできない部分の指定を行う」という記載、同段落【0007】の「ホストコンピュータ1において認証機能対応用印刷データ作成装置を使い、閲覧の制限をかけたい個所に複数のユーザー認証グループの指定を行い」という記載を併せ考えると、引用例1発明における「閲覧の制限をかけたい個所へのユーザー認証グループの指定」は、「印刷データ」に対して行われるものであり、その指定に関する情報は、「印刷データ」の中に何らかの形で含まれている、換言すれば埋め込まれていると考えるのが自然である。

ウ.上記イ.で述べたことと、上記ア.で述べたように、引用例1発明の「ホストコンピュータ」で作成された「印刷データ」は、「印刷装置」に送信され、「印刷装置」において、ユーザーの属しているグループの権限に応じて印刷される部分とされない部分に分けられるものであることを併せ考えると、引用例1発明の「印刷データ」は、「ホストコンピュータ」で作成され、「印刷装置」へ送信される段階では、一つの文書データと考えるのが自然である。
この点に関し、請求人は、審判請求書において、引用例1の段落【0007】の記載を文言通りに解釈するとすれば、「閲覧の制限をかけたい個所に」「複数のユーザー認証グループの指定を行う」のであるから、得られる「印刷データ」は1つではなく、複数であると推察される旨主張し、それを根拠に引用例1発明の「印刷データ」は「一つの文書データ」ではない旨主張しているが、「一つの文書データ」において「閲覧の制限をかけたい個所に」「複数のユーザー認証グループの指定を行う」ようにすることができない理由はないから、採用できない。

(3)上記(2)を踏まえると、引用例1発明の「印刷データ作成装置」は、「文書作成手段」ともいえる。

(4)引用例1発明の「ホストコンピュータ」は、印刷データを印刷装置に送信するものであり、引用例1の段落【0007】の記載によれば、印刷装置は印刷データの印刷を行うのであるから、引用例1発明の印刷データを送信する機能をつかさどる部分は、本願補正発明の「印刷ジョブ生成手段」といえる。

以上によれば、本願補正発明と引用例1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「印刷ジョブを作成するコンピュータ端末であって、
作成された文書を表す文書データを複数のブロックに区切って、前記ブロック毎にユーザまたはユーザグループを指定する情報を埋め込んだ、一つの埋め込み文書データを作成する文書作成手段と、
前記埋め込み文書データを前記印刷ジョブとして出力する印刷ジョブ生成手段と、
を含むコンピュータ端末。」

[相違点1]
「ユーザまたはユーザグループを指定する情報」が、本願補正発明では「開示可能なユーザまたはユーザグループを指定する開示先情報」であるのに対し、引用例1発明では「開示可能なユーザまたはユーザグループを指定する開示先情報」であるとは限らない(引用例1には、「ユーザまたはユーザグループを指定する情報」が、「開示可能なユーザまたはユーザグループについての情報」なのか、「開示不可のユーザまたはユーザグループについての情報」なのかについての記載がない)点。

4.判断
(1)[相違点1]について
引用例1の段落【0003】等の記載から把握される引用例1発明が解決しようとした課題に照らすと、引用例1発明において、閲覧の制限をかける際に、閲覧できるユーザまたはユーザグループを指定するか、閲覧不可のユーザまたはユーザグループを指定するかは、当業者が適宜選択する設計事項といえる。してみれば、引用例1発明において、「ユーザまたはユーザグループを指定する情報」を「開示可能なユーザまたはユーザグループを指定する開示先情報」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

(2)本願補正発明の効果について
本願補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1の記載事項から当業者が予測し得る範囲を超えるものとはいえない。

5.予備的判断
上記「3.対比」の欄に示した対比は、本件補正後の請求項4における「前記ブロック毎に」という記載は、「指定する」という語を修飾する語であり、「埋め込んだ」という語を修飾する語ではないという解釈、換言すれば、本願補正発明の「開示先埋め込み文書データ」は、「開示先情報」が「ブロック毎に埋め込まれている」ものには限定されていないという解釈に基づいてしたものであるが、上記本件補正後の請求項4における「前記ブロック毎に」という記載は、本件補正後の請求項4の文脈上、「指定する」という語ではなく「埋め込んだ」という語を修飾する語である、換言すれば、本願補正発明の「開示先埋め込み文書データ」は、「開示先情報」が文書データ中に「ブロック毎に埋め込まれている」ものに限定されていると解する余地もある。
そこで、そのような解釈(本願補正発明の「開示先埋め込み文書データ」は、「開示先情報」が文書データ中に「ブロック毎に埋め込まれている」ものに限定されているという解釈;以下、「解釈A」という。)に立った場合の判断を、以下に示す。
解釈Aに立つ場合には、本願補正発明と引用例1発明の間には、上記相違点1に加えて、次の相違点2もあるということになる。

[相違点2]
本願補正発明の「文書作成手段」が作成する「一つの埋め込み文書データ」は、ユーザまたはユーザグループを指定する情報を「ブロック毎に埋め込んだ」ものであるのに対し、引用例1発明の「一つの埋め込み文書データ」(印刷データ)は、ユーザまたはユーザグループを指定する情報を「ブロック毎に埋め込んだ」ものであるとは限らない(引用例1には、ユーザまたはユーザグループを指定する情報を印刷データにどのように埋め込むかについての記載がない。)点。

上記[相違点2]について検討する。
引用例1には、「印刷データ」が特定の形式のデータでなければならないことを示す記載はなく、引用例1発明の「印刷データ」(文書データ)をどのような形式のものとするかは、ユーザまたはユーザグループを指定する情報を埋め込み可能な形式の中から当業者が任意に選択可能なものといえる。
一方、ユーザまたはユーザグループを指定する情報を埋め込み可能な文書データの形式として、XMLやHTML等の構造化された文書データが周知であり、それらの周知の構造化された文書データにおいて、文書の開示範囲に関する情報を文書構成要素毎に埋め込むことも、周知である。この点は、特開2001-273285号公報の段落【0021】?【0025】、特開2001-325249号公報の段落【0024】、【0048】、【0049】等の記載から明らかである。
そして、引用例1発明において、上記周知の文書データの形式や、文書の開示範囲に関する情報を文書構成要素毎に埋め込むという技術を採用できない理由はない。
してみれば、引用例1発明において、上記周知の文書データの形式や、文書の開示範囲に関する情報を文書構成要素毎に埋め込むという技術を採用することは、当業者が容易に推考し得たことである。
以上のことは、引用例1発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったことを意味している。

また、解釈Aに基づく本願補正発明の構成によってもたらされる効果についても、引用例1の記載事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲を超えるものとはいえない。

6.まとめ
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例1発明に基づいて、あるいは引用例1発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

7.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成27年6月8日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「印刷ジョブを作成するコンピュータ端末であって、
作成された文書を表す文書データを複数のブロックに区切って、前記ブロック毎に開示可能なユーザまたはユーザグループを指定する開示先情報を埋め込んだ、開示先埋め込み文書データを作成する文書作成手段と、
前記開示先埋め込み文書データを前記印刷ジョブとして出力する印刷ジョブ生成手段と、
を含むコンピュータ端末。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1は、前記「第2」の「2.」の欄に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「開示先埋め込み文書データ」の限定事項である「一つ」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「4.」ないし「6.」に記載したとおり、引用例1発明に基づいて、あるいは引用例1発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明に基づいて、あるいは引用例1発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、あるいは引用例1発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-27 
結審通知日 2016-02-03 
審決日 2016-02-16 
出願番号 特願2011-36634(P2011-36634)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田川 泰宏佐賀野 秀一緑川 隆  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山澤 宏
高瀬 勤
発明の名称 印刷開示範囲制御方法、印刷システム、印刷管理サーバ、および印刷装置  
代理人 松田 順一  
代理人 佐々木 敬  
代理人 池田 憲保  

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