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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 A45D 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A45D |
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管理番号 | 1313063 |
異議申立番号 | 異議2016-700012 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-01-08 |
確定日 | 2016-03-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5747275号「塗布材押出容器」の請求項1ないし4、6ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5747275号の請求項1ないし4、6ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5747275号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成23年11月14日に特許出願され、平成27年5月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1ないし4、6ないし8に係る特許に対し、特許異議申立人株式会社インフォメックスにより特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 特許第5747275号の請求項1ないし4、6ないし8に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4、6ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものである。 第3 申立理由の概要 特許異議申立人は、主たる証拠として特開2010-274989号公報(以下「刊行物1」という。)及び従たる証拠として特開2006-239083号公報(以下「刊行物2」という。)、「機構学」糸島寛典著 パワー社 昭和49年6月25日発行(以下「刊行物3」という。)、「図解 モノづくりのためのやさしい機械設計」有光隆・八木秀次著 技術評論社 2010年5月25日発行(以下「刊行物4」という。)を提出し、請求項1ないし4、6ないし8に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるか、または、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1ないし4、6ないし8に係る特許を取り消すべき、さらに、特許請求の範囲の請求項1は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 第4 刊行物 1 刊行物1について 刊行物1には、「本体12と、前記本体12に相対回転可能な操作筒26とを有する液体繰出し容器10であって、 前記本体12と前記操作筒26とが一方向に相対回転されると、前記液体繰出し容器10内に配設された操出し体(ピストン22及びピストンロッド24)が、中ネジ筒32及びこれと螺合するピストンロッド24により前進又は後退し、前記液体繰出し容器10内のタンク部Tに充填された液体Lを押し出して前記液体繰出し容器10先端の先端供給口12bから吐出させる液体繰出し容器10であって、 前記本体12と前記操作筒26とが一方向に1クリック相対回転される毎に、前記操出し体を、鋸歯30cが鋸歯32aの頂を乗り越える一定量だけ前に移動させ、乗り越えた後にリターンスプリングにより後退させることにより往復動させる、鋸歯30c,32aを含む変換機構を備え、 前記変換機構は、前記本体12と前記操作筒26との相対回転の回転力によって、前記操出し体を一定量前進させ、リターンスプリング36のバネ力によって後退させることで、操出し体を一定量前後に往復動させる、液体繰出し容器10。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 2 刊行物2について 刊行物2には、「液体化粧料容器において、液体吐出機構6の軸筒4に対する先筒体8の回転によって、液体吐出機構6の先筒体8を軸筒4に対し前後方向に繰り返し摺動させるために、誘導ピン8gを誘導溝11内に沿ってスライド自在に遊嵌する構成」が記載されている。 3 刊行物3及び刊行物4について 刊行物3及び刊行物4には、カム機構(カム装置)は平面カムと立体カムとに大別され、立体カムには円筒カム(円柱カム)、端面カム、斜板カムなどがあることが記載され、それらのカムが図示されている。 第5 当審の判断 1 特許法第29条第1項第3号の規定違反及特許法第29条第2項の規定違反についての判断 (1)請求項1に係る発明(以下「特許発明1」という。)と刊行物1に記載された発明との対比及び相違点 本件特許の請求項1に係る発明(以下「特許発明1」という。)と引用発明1とを対比すると、容器前部と容器後部とが一方向に一定回転量相対回転される毎に、移動部を一定量進退させる機構において、特許発明1は「容器前部と容器後部との相対回転の回転力によって、移動部を一定量進退させるカム機構」を有するのに対し、引用発明1は、「容器前部(本体12)と容器後部(操作筒26)との相対回転の回転力によって、移動部(操出し体)を一定量前進させ、リターンスプリング36のバネ力によって後退させることで、移動部(操出し体)を一定量進退させる変換機構」を有する点(以下、「相違点」という。)で相違している。 (2)特許法第29条第1項第3号の規定違反についての判断 ア 特許発明1について 上記(1)で検討したとおり、特許発明1と引用発明1とは相違点を有しており、また、この相違点により、特許発明1は明細書段落【0008】、【0016】に記載されたように、「カム機構は、バネ等の弾性体の付勢力によらず、相対回転の回転力によって移動部を一定量進退させることができ、塗布材が開口部から漏出するのを容易且つ確実に抑制することが可能となる。」効果を奏するものである。 したがって、特許発明1は引用発明1に対し相違点を有しており、特許発明1は刊行物1に記載された発明ではない。 イ 特許発明2ないし4、6ないし8について 請求項2ないし4、6ないし8は、いずれも請求項1を直接的または間接的に引用しており請求項1に記載された構成を全て有しているから、上記アと同じ理由により、特許発明2ないし4、6ないし8のいずれも、刊行物1に記載された発明ではない。 ウ 特許法第29条第1項第3号の規定違反についての小括 上記ア、イのとおりであるから、異議申立人が主張する、請求項1ないし4、6ないし8に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるという主張は理由がない。 (3)特許法第29条第2項の規定違反についての判断 ア 特許発明1について 上記(1)の相違点について検討する。 刊行物2には、上記第4 2のとおり、「液体化粧料容器において、液体吐出機構6の軸筒4に対する先筒体8の回転によって、液体吐出機構6の先筒体8を軸筒4に対し前後方向に繰り返し摺動させるために、誘導ピン8gを誘導溝11内に沿ってスライド自在に遊嵌する構成」が記載されており、当該構成は、先筒体8を、誘導ピン8gと誘導溝11とで構成される円筒カム機構で前後退させる機構といえる。しかしながら、その機構は液体化粧料容器の先端に設けられた先筒体8を前後進させるものであるから、先筒体8は、引用発明1の中ネジ筒32とは全く機構も構成も異なる部材であり、刊行物1及び刊行物2のいずれにも、中ネジ筒32に当該円筒カム機構を適用させる動機付けについて記載も示唆もない。 また、異議申立人が提出した刊行物3及び刊行物4には、立体カムとして円筒カムは記載及び図示されているが、いずれにも、中ネジ筒32に当該円筒カム機構を適用させる動機付けについては記載も示唆もない。 そして、特許発明1は上記(2)アで記載したとおりの特有の効果を奏するものである。 したがって、特許発明1は異議申立人が提出した刊行物1ないし刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 特許発明2ないし4、6ないし8について 請求項2ないし4、6ないし8は、いずれも請求項1を直接的または間接的に引用しており請求項1に記載された構成を全て有しているから、上記アと同じ理由により、特許発明2ないし4、6ないし8のいずれも、刊行物1ないし刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 特許法第29条第2項の規定違反についての小括 上記ア、イのとおりであるから、異議申立人が主張する、請求項1ないし4、6ないし8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるという主張は理由がない。 (4)異議申立人の主張について 異議申立人は、特許異議申立書において、引用発明1に刊行物2に記載された技術を適用することの動機付けとして、「技術分野」、「課題」、「作用・機能」のいずれも共通性があることを主張し、また、適用の阻害要因も存在しないと主張している(異議申立書25?26頁。)。 しかしながら、上記(3)アで述べたとおり、引用発明1はカム機構が設けられている部材は、容器内に配設された繰出し体22,24を前後進させる中ネジ筒32であり、しかも、そのカム機構は後端面に設けられた鋸歯32aである。一方、刊行物2に記載された構成のカム機構が設けられた部材は、液体化粧料容器の先端に設けられた先筒体8であって、そのカム機構は先筒体8の側面部に設けられたものであり、適用する部材が全く異なる上、カムを設ける場所も全く相違しており、その適用に動機付けがあるとは認められない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 2 特許法第36条第6項第2号に規定する要件違反について (1)異議申立人の主張 異議申立人は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載において、押出機構とカム機構との技術的関連が不明確で、特に、押出機構によって移動部が変位しても、カム機構による一定量の進退を持続するのに必要な構成が何ら特定されていない、本件特許発明の、塗布剤が押し出されて吐出された後、使用者の操作を別途要することなく、充填領域の減圧を自動的に実現することは押出機構によって移動部がどこに位置していても達成されるべきものであるから、押出機構とカム機構との技術的関連性を明確にすることが不可欠である旨主張している。 (2)請求項1の記載 請求項1には押出機構について「容器前部と前記容器後部とが一方向に相対回転されると、前記容器内に配設された移動部が押出機構により前進又は後退し、前記容器内の充填領域に充填された塗布材を押し出して前記容器先端の開口部から吐出させる」と記載され、移動部が押出機構により前進又は後退されることが特定されている。 一方、カム機構について「前記容器前部と前記容器後部とが前記一方向に一定回転量相対回転される毎に、前記移動部を一定量進退させるカム機構を備え」と特定され、さらに、「カム機構は、前記容器前部と前記容器後部との相対回転の回転力によって、前記移動部を一定量進退させること」と特定されている。 そこで検討するに、請求項1には、押出機構は、容器前部と前容器後部とが一方向に相対回転されることで、容器内に配設された移動部を前進又は後退して充填領域に充填された塗布材を押し出して前記容器先端の開口部から吐出させるものであることが明確に記載されている。しかも、発明の詳細な説明には、押出機構として移動部を前進させる機構として説明され(段落【0007】)、押出機構として、移動部に含まれる螺合部が例示され(段落【0016】)、その実施例として螺子筒4とこれに螺合する雌螺子4eから構成される螺合部9が記載されており(【0033】?【0034】、【図1】?【図3】、【図7】)、上記請求項1の押出機構についての記載は、発明の詳細な説明とも整合している。 カム機構についても、請求項1には、容器前部と容器後部とが一方向に一定回転量相対回転される毎に、移動部を一定量進退させる機構であること、容器前部と容器後部との相対回転の回転力によって、移動部を一定量進退させることが明確に記載されている。しかも、発明の詳細な説明には、カム機構は移動部を一定量進退させること、バネ等の付勢力によらず、相対回転の回転力によって移動部を一定量進退させるものとして説明され(段落【0007】、【0008】)、その実施例としてカム機構20が記載されており(段落【0024】、【0029】、【0030】、【0038】?【0042】、【図5】、【図6】、【図14】?【図19】)、上記請求項1のカム機構についての記載は、発明の詳細な説明とも整合している。 請求項1には、押出機構とカム機構との関連は特定されていないが、押出機構とカム機構とはそれぞれ機構として独立しており、それぞれが、容器前部と容器後部との相対回転によって移動部を前進又は後退させる機構であるから、両者の関連の記載がないことは不明確となる理由にはならない。 (3)小括 以上のとおりであるから、請求項1の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。 また、異議申立人が主張する、押出機構とカム機構との技術的関連性の記載がないことは、請求項1の不明確性の理由とはならない。 したがって、特許請求の範囲の請求項1は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるという主張は理由がない。 第6 むすび 上記第5で検討したとおり、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠によっては、請求項1ないし4、6ないし8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし4、6ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-03-14 |
出願番号 | 特願2011-248885(P2011-248885) |
審決分類 |
P
1
652・
537-
Y
(A45D)
P 1 652・ 121- Y (A45D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 横溝 顕範 |
特許庁審判長 |
高木 彰 |
特許庁審判官 |
山口 直 熊倉 強 |
登録日 | 2015-05-22 |
登録番号 | 特許第5747275号(P5747275) |
権利者 | 株式会社トキワ |
発明の名称 | 塗布材押出容器 |
代理人 | 久米川 正光 |
代理人 | 荒井 寿王 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 澤田 優子 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 阿部 寛 |