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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C22C
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C22C
管理番号 1313297
審判番号 訂正2015-390118  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2015-10-26 
確定日 2016-03-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4557079号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4557079号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?10について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

本件訂正審判の請求に係る特許第4557079号(以下、「本件特許」ということがある。)は、その特許出願(特願2008-516055)が、2008年(平成20年) 3月11日(優先権主張 2007年 3月12日、日本国)に国際出願され、その請求項1ないし10に係る発明は、平成22年 7月30日にその特許権の設定登録がなされたものである。
本件特許に対して、平成27年10月26日に本件訂正審判の請求がなされ、その後の方式上の手続を除く手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年11月20日:訂正拒絶理由通知(平成27年11月25日発送)
平成27年12月24日:意見書、手続補正書

第2 平成27年12月24日付けの手続補正書による補正の適否

(1)この補正は、平成27年10月26日付けの審判請求書における訂正事項1?8(以下、それぞれ「補正前訂正事項1?8」という。)を補正し、訂正事項1?13(以下、それぞれ「補正後訂正事項1?13」という。)とするものである。これらの補正前訂正事項1?8及び補正後訂正事項1?13の内容からみて、補正前訂正事項と補正後訂正事項との対応関係を、「補正前訂正事項→補正後訂正事項」で表すと、次のとおりであるといえる。

補正前訂正事項1→補正後訂正事項1 (交換的変更)
補正前訂正事項2→補正後訂正事項2 (補正なし)
補正前訂正事項3→補正後訂正事項3 (交換的変更)
補正前訂正事項4→補正後訂正事項4 (補正なし)
→補正後訂正事項5 (追加的変更)
→補正後訂正事項6 (追加的変更)
補正前訂正事項5→補正後訂正事項7 (補正なし)
→補正後訂正事項8 (追加的変更)
→補正後訂正事項9 (追加的変更)
補正前訂正事項6→補正後訂正事項10(交換的変更)
補正前訂正事項7→補正後訂正事項11及び補正後訂正事項12(交換的変更)
補正前訂正事項8→補正後訂正事項13(交換的変更)

(2)これらの補正事項についてみてみる。

(3)補正前訂正事項1及び3に対する補正について
補正前訂正事項1に対する補正は、「特許請求の範囲の請求項1に『Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下』とあるのを、『Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下』に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10も同様に訂正する)。」とあるのを、「特許請求の範囲の請求項1を削除する。」に補正して、訂正後補正事項1とするものである。
また、補正前訂正事項3に対する補正は、「特許請求の範囲の請求項3に『Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下』とあるのを、『Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下』に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10も同様に訂正する)。」とあるのを「特許請求の範囲の請求項3を削除する。」に補正して、訂正後補正事項3とするものである。
これらの補正は、請求項1及び3の訂正事項を、当該請求項の削除という訂正事項に変更する補正であるから、審判請求書の要旨を変更しないものである。

(4)補正前訂正事項6?8に対する補正について
補正前訂正事項6に対する補正は、「 願書に添付した明細書の段落【0010】の記載を以下の通りに訂正する。
『【0010】
すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 質量比で、
Co:15.0質量%以下、
Cr:4.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(2) 質量比で、
Co:15.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(3) 質量比で、
Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、
Cr:4.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(4) 質量比で、
Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(5) 前記組成のうち、
W:2.9質量%以下
を満足する前項(1)?(4)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金。
(6) 前記組成のうち、
W:1.9質量%以下
を満足する前項(1)?(4)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金。
(7) 質量比で、
Co:5.0質量%以上8.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下、
W:1.9質量%以下、
Ta:5.5質量%以上8.0質量%以下、
Al:5.4質量%以上6.0質量%以下、
Ti:0.5質量%以下、
Hf:0.08質量%以上0.5質量%以下、
Nb:1.0質量%以下、
Re:4.0質量%以上7.5質量%以下、
Ru:1.0質量%以上5.0質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有するNi基単結晶超合金。
(8) P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する前項(7)に記載のNi基単結晶超合金。
(9) P2(パラメータ2)=30×[W(質量%)]+10×[Re(質量%)]-30×[Cr(質量%)]-20×[Mo(質量%)]+30×[Al(質量%)]+90×[Ti(質量%)]+60×[Ta(質量%)]-5×[Ru(質量%)]としたときに、P2≦500を満足する前項(1)?(8)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金。
(10) 前項(1)?(9)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼。』」とあるのを、
「 願書に添付した明細書の段落【0010】の記載を以下の通りに訂正する。
『【0010】
すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
(1)(削除)
(2) 質量比で、
Co:15.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(3)(削除)
(4) 質量比で、
Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(5) 前記組成のうち、
W:2.9質量%以下
を満足する前項(2)または(4)に記載のNi基単結晶超合金。
(6) 前記組成のうち、
W:1.9質量%以下
を満足する前項(2)または(4)に記載のNi基単結晶超合金。
(7) 質量比で、
Co:5.0質量%以上8.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下、
W:1.9質量%以下、
Ta:5.5質量%以上8.0質量%以下、
Al:5.4質量%以上6.0質量%以下、
Ti:0.5質量%以下、
Hf:0.08質量%以上0.5質量%以下、
Nb:1.0質量%以下、
Re:4.0質量%以上7.5質量%以下、
Ru:1.0質量%以上5.0質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有するNi基単結晶超合金。
(8) P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する前項(7)に記載のNi基単結晶超合金。
(9) P2(パラメータ2)=30×[W(質量%)]+10×[Re(質量%)]-30×[Cr(質量%)]-20×[Mo(質量%)]+30×[Al(質量%)]+90×[Ti(質量%)]+60×[Ta(質量%)]-5×[Ru(質量%)]としたときに、P2≦500を満足する前項(2)、(4)?(8)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金。
(10) 前項(2)、(4)?(9)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼。』」に補正し、補正後訂正事項10にするものである。

また、補正前訂正事項7に対する補正は、「願書に添付した明細書の段落【0015】?【0018】にそれぞれ記載された『Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下』とあるのを、『Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下』に訂正する。」とあるのを、補正後訂正事項11及び補正後訂正事項12に補正し、それぞれ、「願書に添付した明細書の段落【0015】及び【0017】の記載を削除する。」、「願書に添付した明細書の段落【0016】及び【0018】にそれぞれ記載された『Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下』とあるのを、『Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下』に訂正する。」に補正するものである。

さらに、補正前訂正事項8に対する補正は、「願書に添付した明細書の段落【0020】に記載された『Mo:2.2質量%以上4.8質量%以下』とあるのを、『Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下』に訂正する。」とあるのを、訂正後補正事項13に補正し、「願書に添付した明細書の段落【0020】に記載された『Mo:2.2質量%以上4.8質量%以下』とあるのを、『Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下』に訂正する。」に補正し、補正後訂正事項13とするものである。

これらの補正は、上記(3)の請求項1及び3の訂正事項を当該請求項の削除という補正後訂正事項1及び3に変更する補正に整合させるための明細書についての訂正事項の補正であるから、審判請求書の要旨を変更しないものである。

(5)補正後訂正事項5、6、8及び9は、それぞれ、請求項5、請求項6、請求項9及び請求項10の引用請求項から請求項1及び請求項3を削除する訂正事項が追加されたものであり、これらの訂正事項を追加する補正は、上記(3)の請求項1及び3の訂正事項を当該請求項の削除という補正後訂正事項1及び3に変更する補正に整合させるための特許請求の範囲についての訂正事項の追加であるから、審判請求書の要旨を変更しないものである。

2 よって、この補正は、特許法第131条の2第1項の規定に適合する適法なものといえるので、この補正を認める。

第3 請求の趣旨と訂正事項

上記第2で述べたとおり、平成27年12月24日付けの手続補正書による補正は認められるので、本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4557079号の明細書、特許請求の範囲を同手続補正書によって補正された全文訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」ということがある。)及び同手続補正書によって補正された訂正特許請求の範囲(以下、「本件訂正特許請求の範囲」ということがある。)のとおり訂正することを求めるものであって、次の補正後訂正事項1?13のとおりのものである。

(1)補正後訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)補正後訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下」とあるのを、「Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10も同様に訂正する)。

(3)補正後訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)補正後訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下」とあるのを、「Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10も同様に訂正する)。

(5)補正後訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4の何れか一項に記載」とあるのを、「請求項2または4に記載」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項9及び10も同様に訂正する)。

(6)補正後訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?4の何れか一項に記載」とあるのを、「請求項2または4に記載」に訂正する(請求項6記載(当審注:「請求項6の記載」の誤記であると認める。)を引用する請求項9及び10も同様に訂正する)。

(7)補正後訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「Mo:2.2質量%以上4.8質量%以下」とあるのを、「Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8、請求項9、及び請求項10も同様に訂正する)。

(8)補正後訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?8の何れか一項に記載」とあるのを、「請求項2、4?8の何れか一項に記載」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する)。

(9)補正後訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?9の何れか一項に記載」とあるのを、「請求項2、4?9の何れか一項に記載」に訂正する。

(10)補正後訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0010】の記載を以下の通りに訂正する。
「【0010】
すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
(1)(削除)
(2) 質量比で、
Co:15.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(3)(削除)
(4) 質量比で、
Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(5) 前記組成のうち、
W:2.9質量%以下
を満足する前項(2)または(4)に記載のNi基単結晶超合金。
(6) 前記組成のうち、
W:1.9質量%以下
を満足する前項(2)または(4)に記載のNi基単結晶超合金。
(7) 質量比で、
Co:5.0質量%以上8.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下、
W:1.9質量%以下、
Ta:5.5質量%以上8.0質量%以下、
Al:5.4質量%以上6.0質量%以下、
Ti:0.5質量%以下、
Hf:0.08質量%以上0.5質量%以下、
Nb:1.0質量%以下、
Re:4.0質量%以上7.5質量%以下、
Ru:1.0質量%以上5.0質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有するNi基単結晶超合金。
(8) P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する前項(7)に記載のNi基単結晶超合金。
(9) P2(パラメータ2)=30×[W(質量%)]+10×[Re(質量%)]-30×[Cr(質量%)]-20×[Mo(質量%)]+30×[Al(質量%)]+90×[Ti(質量%)]+60×[Ta(質量%)]-5×[Ru(質量%)]としたときに、P2≦500を満足する前項(2)、(4)?(8)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金。
(10) 前項(2)、(4)?(9)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼。」

(11)補正後訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0015】及び【0017】の記載を削除する。

(12)補正後訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0016】及び【0018】にそれぞれ記載された「Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下」とあるのを、「Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下」に訂正する。

(13)補正後訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0020】に記載された「Mo:2.2質量%以上4.8質量%以下」とあるのを、「Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下」に訂正する。

第4 訂正拒絶理由通知の概要

当審からの平成27年11月20日付けの訂正拒絶理由通知の概要は以下のとおりである。
(1)本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3、5及び10に係る発明は、本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであり、本件審判請求は、特許法第126条第7項の規定に適合しない。

引用例は、次のとおりのものである。
引用例1:米国特許出願公開第2006/0057018号明細書

第5 当審の判断

1 訂正の対象の一群の請求項について

(1)本件特許の特許請求の範囲の訂正について

補正後訂正事項1に係る訂正前の請求項1、5、6、9及び10は、当該訂正事項を含む訂正前の請求項1の記載を、訂正前の請求項5、6、9及び10が引用しているから、当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係を有する。

補正後訂正事項2に係る訂正前の請求項2、5、6、9及び10は、当該訂正事項を含む訂正前の請求項2の記載を、訂正前の請求項5、6、9及び10が引用しているから、当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係を有する。

補正後訂正事項3に係る訂正前の請求項3、5、6、9及び10は、当該訂正事項を含む訂正前の請求項3の記載を、訂正前の請求項5、6、9及び10が引用しているから、当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係を有する。

補正後訂正事項4に係る訂正前の請求項4、5、6、9及び10は、当該訂正事項を含む訂正前の請求項4の記載を、訂正前の請求項5、6、9及び10が引用しているから、当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係を有する。

補正後訂正事項7に係る訂正前の請求項7、8、9及び10は、当該訂正事項を含む訂正前の請求項7の記載を、訂正前の請求項8、9及び10が引用しているから、当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係を有する。

してみると、訂正前の請求項1?10は、一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係が、当該関係に含まれる請求項を介して他の一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係と一体として特許請求の範囲の全部又は一部を形成するように連関している関係を有する。

よって、これらの訂正前の請求項1?10に対応する訂正後の請求項1?10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。

一方、本件訂正は、訂正後の請求項1?10が請求の対象とされており、一群の請求項毎に請求がされているものであるから、本件請求は特許法第126条第3項に適合するものである。

(2)本件特許の発明の詳細な説明の訂正について
補正後訂正事項10で訂正する段落【0010】は、訂正前の請求項1?10と関係する。
補正後訂正事項11で訂正する段落【0015】は、訂正前の請求項1、請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10に対応し、段落【0017】は、訂正前の請求項3、請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10と関係する。
補正後訂正事項12で訂正する段落【0016】は、訂正前の請求項2、請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10に対応し、段落【0018】は請求項4、請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10と関係する。
補正後訂正事項13で訂正する段落【0020】は、訂正前の請求項7、請求項8、請求項9、及び請求項10と関係する。

一方、願書に添付した明細書の訂正である当該補正後訂正事項10?13と関係する全ての一群の請求項(請求項1?10)が請求の対象とされている。

よって、本件請求は、特許法第126条第4項に適合するものである。

2 訂正の目的について

(1)補正後訂正事項1について

補正後訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、補正後訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)補正後訂正事項2について

補正後訂正事項2は、訂正後の請求項2、並びに訂正後の請求項2を引用する請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10の発明特定事項である請求項2に記載された「Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下」のMoの上限を、「6.5質量%以下」から「4.0質量%以下」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、補正後訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)補正後訂正事項3について

補正後訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、補正後訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(4)補正後訂正事項4について

補正後訂正事項4は、訂正後の請求項4、並びに訂正後の請求項4を引用する請求項5、請求項6、請求項9、及び請求項10の発明特定事項である請求項4に記載された「Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下」のMoの上限を、「6.5質量%以下」から「4.0質量%以下」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、補正後訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(5)補正後訂正事項5について

補正後訂正事項5は、訂正後の請求項5、並びに訂正後の請求項5を引用する請求項9及び請求項10が、請求項5の「請求項1?4の何れか一項に記載」との記載により、請求項1及び3の発明特定事項をも有していたものを、「請求項2または4に記載」として、請求項1及び3の発明特定事項を有しないものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、補正後訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(6)補正後訂正事項6について

補正後訂正事項6は、訂正後の請求項6、並びに訂正後の請求項6を引用する請求項9及び請求項10が、請求項6の「請求項1?4の何れか一項に記載」との記載により、請求項1及び3の発明特定事項をも有していたものを、「請求項2または4に記載」として、請求項1及び3の発明特定事項を有しないものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、補正後訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(7)補正後訂正事項7について

補正後訂正事項7は、訂正後の請求項7、並びに訂正後の請求項7を引用する請求項8、請求項9、及び請求項10の発明特定事項である請求項7に記載された「Mo:2.2質量%以上4.8質量%以下」のMoの上限を、「4.8質量%以下」から「4.0質量%以下」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、補正後訂正事項7は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(8)補正後訂正事項8について

補正後訂正事項8は、訂正後の請求項9、及び訂正後の請求項9を引用する請求項10が、請求項9の「請求項1?8の何れか一項に記載」との記載により、請求項1及び3の発明特定事項をも有していたものを、「請求項2、4?7に記載」として、請求項1及び3の発明特定事項を有しないものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、補正後訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(9)補正後訂正事項9について

補正後訂正事項9は、訂正後の請求項10が、請求項10の「請求項1?9の何れか一項に記載」との記載により、請求項1?9の発明特定事項を有してものを、「請求項2、4?8に記載」として、請求項1及び3の発明特定事項を有しないものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、補正後訂正事項9は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(10)補正後訂正事項10?13について

補正後訂正事項10?13は、補正後訂正事項1?9に係る訂正によって生じる特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載の齟齬を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

3 新規事項の追加の有無について

補正後訂正事項1?13が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについて検討する。

補正後訂正事項1及び3は、請求項を削除するものであるから、補正後訂正事項1及び3は、同明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
補正後訂正事項2、4?9に係る事項は、同明細書の段落【0042】の【表1】に記載される実施例7、10、12にMoが「4.00wt%」である実施例が記載されているから、補正後訂正事項2、4?9は、いずれも同明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
補正後訂正事項10?13に係る事項は、補正後訂正事項1?9に係る訂正によって生じる特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載の齟齬を解消するものであるから、補正後訂正事項1?9に係る事項と同様の理由により、いずれも同明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

したがって、補正後訂正事項1?13は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

4 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について

補正後訂正事項1?8は、上記2で述べたように特許請求の範囲の減縮及びそれに伴う明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、これら補正後訂正事項により、実質上特許請求の範囲が拡張されたり、変更されたりするものでもないことは明らかである。
したがって、補正後訂正事項1?8は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

5 訂正後の請求項1?10(請求項1及び3は削除された。)に係る発明の独立特許要件について

補正後訂正事項1?9は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後の請求項1?10に係る発明(請求項(以下、それぞれ「本件訂正発明1?10」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかについて検討する。

(1)本件訂正発明1?10について

本件訂正発明1?10は、次のとおりである。
「 【請求項1】(削除)
【請求項2】
質量比で、
Co:15.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
質量比で、
Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
【請求項5】
前記組成のうち、
W:2.9質量%以下
を満足する請求項2または4に記載のNi基単結晶超合金。
【請求項6】
前記組成のうち、
W:1.9質量%以下
を満足する請求項2または4に記載のNi基単結晶超合金。
【請求項7】
質量比で、
Co:5.0質量%以上8.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下、
W:1.9質量%以下、
Ta:5.5質量%以上8.0質量%以下、
Al:5.4質量%以上6.0質量%以下、
Ti:0.5質量%以下、
Hf:0.08質量%以上0.5質量%以下、
Nb:1.0質量%以下、
Re:4.0質量%以上7.5質量%以下、
Ru:1.0質量%以上5.0質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有するNi基単結晶超合金。
【請求項8】
P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する請求項7に記載のNi基単結晶超合金。
【請求項9】
P2(パラメータ2)=30×[W(質量%)]+10×[Re(質量%)]-30×[Cr(質量%)]-20×[Mo(質量%)]+30×[Al(質量%)]+90×[Ti(質量%)]+60×[Ta(質量%)]-5×[Ru(質量%)]としたときに、P2≦500を満足する請求項2、4?8の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金。
【請求項10】
請求項2、4?9の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼。」

(2)引用例の記載事項
(2-1)本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2006/0057018号明細書(以下、「引用例1」という。)には次の事項が記載されている。

ア 「This invention relates to compositions of matter. More particularly, but not exclusively, this invention relates to nickel based alloys, such as nickel based superalloys. Embodiments of the invention relate to nickel-based single crystal superalloys.」([0001])
(当審訳:この発明は物質の組成に関する。特に、限定されるものではないが、この発明はニッケル基超合金のようなニッケル基合金に関する。具体的には、この発明はニッケル基単結晶超合金に関する。)

イ 「To improve the performance and efficiency of gas turbine engines, single crystal Ni-base superalloy turbine blades have been increasingly alloyed with dense refractory elements to enhance high temperature creep properties.」([0002])
(当審訳:ガスタービンの性能及び効率を向上させるために、単結晶ニッケル基超合金タービンブレードは、高温クリープ特性を強化するために、緻密な耐火性元素によりますます合金化されている。)

ウ TABLE 1には、Compositions (in wt. %) of selected alloys analysed.(当審訳:分析された合金組成(重量%))に関するものが記載されており、合金の1つであるLDSX5合金の合金組成が、Alが6.0重量%、Crが3.0重量%、Coが8.0重量%、Moが2.5重量%、Tiが0.25重量%、Taが6.5重量%、Wが2.9重量%、Reが6.2重量%、Ruが5.0重量%、Hfが0.1重量%、残部がNiであるものが記載されている。

エ 「The chromium content, preferably 3 to 4 weight percent, should not be less than about 2 weight percent nor more than about 5 weight percent (all compositional percentages herein are by weight). The chromium content is desirably high due to its benefit on both hot corrosion and oxidation resistance and castability by minimising the formation of solidification related grain defects. However it desirably does not exceed 5% because chromium contributes to microstructural instability with respect to the formation of deleterious topologically close-packed (TCP) phases following prolonged exposure at elevated temperatures. Below 2% chromium the hot corrosion and oxidation resistance become unacceptable in the preferred embodiment.」([0079])
(当審訳:Crの含有量は、好ましくは3?4重量%であり、約2重量%より少なく又は約5重量%より多くすべきではない(ここでは全ての組成の百分率は重量基準である。)。Crの含有量は、粒欠陥に関連した凝固の形成を最小限にすることにより、熱腐食抵抗、耐酸化性、鋳造性の両方の効果のために高いことが望ましい。しかしながら、好ましくは5%を超えない、なぜなら、クロムは、高温に長時間曝されることにより、位相幾何学的に有害な最密充填相(TCP相)の形成に関してミクロ組織不安定性を生じさせるためである。2%より少ないCrは、熱腐食及び耐酸化性が、好ましい実施例において許容できない。)

オ 「The molybdenum content ranges from 2 to 5.5%, and preferably 3.5 to 4.5%. Molybdenum is preferably present in concentrations greater than 2% because it improves the castability of the alloy. It is also an effective strengthening element in the gamma phase and has a lower density than the alternative strengtheners tungsten and rhenium.」([0080])
(当審訳:Moの含有量は2?5.5%、好ましくは3.5?4.5%である。合金の鋳造性を向上させることができるため、Moは2%を超える濃度で存在することが望ましい。γ相の有効な強化元素であり、他の強化成分であるタングステン及びレニウムと比較し、低い密度を有する。)

カ 「Tungsten contents range in the preferred embodiment, from about 2 to about 5%, preferably 3.5 to 5%. Tungsten partitions to both the gamma and gamma prime phases and is also an effective strengthener. Concentrations greater than 2% are desirable to provide sufficient strength to the superalloy but its density undesirably increases the density of the alloy and greatly hinders the ease of single crystal solidification.」([0082])
(当審訳:Wの含有量は約2?約5%、好ましくは3.5?5%である。Wは、γ層及びγ’相の双方に分散し、有効な強化元素でもある。超合金に十分な強度を提供するために2%を超える濃度が好ましいが、タングステンの密度は、合金の密度を増加させる点で望ましくなく、また、単結晶凝固の容易さを大きく阻害する。)

キ 「The preferred embodiments of the present invention provide a nickel-based single crystal superalloy which have the advantage of exhibiting improved castability, i.e. less susceptibility to the formation of solidification related grain defects during single crystal solidification, by increasing the Cr and Mo contents and minimising the (W+Re)/Ta ratio by decreasing the W content relative to typical nickel-based single crystal superalloy compositions.」([0085])
(当審訳:本発明の好適な実施形態は、Cr及びMo含量を増大させ、代表的なNi基単結晶超合金組成物に関連してW含有量を減少させることにより(W+Re)/Ta比を最小化することによって、例えば、単結晶凝固時の凝固関連結晶粒欠陥が少ない鋳造性の改善という利点を有するNi基単結晶超合金を提供する。)

ク 「The preferred embodiment comprises a nickel-based single crystal superalloy where the compositions consists of 2-8 of Co, 2-5 of Cr, 2-5.5 of Mo, 2-5 of W, 5-7 of A1, 4-8 of Ta, 5-8 of Re, 2-6 of Ru, 0-2 of Ti and 0-0.5 of Hf in terms of % by weight and residual part substantially consists of Ni wherein said alloy may contain unavoidable impurities.」([0086])
(当審訳:好ましい実施形態は、ニッケル基単結晶超合金であって、その組成は、重量%で、2-8のCo、2-5のCr、2-5.5のMo、2-5のW、5-7のAl、4-8のTa、5-8のRe、2-6のRu、0-2のTi、0-0.5のHf、及び残部実質的にNiからなり、前記合金は、不可避不純物を含んでも良い。)

(3)引用例1に記載された発明
ア 引用例1には、上記ア及びウの記載からみて、
「Alが6.0重量%、Crが3.0重量%、Coが8.0重量%、Moが2.5重量%、Tiが0.25重量%、Taが6.5重量%、Wが2.9重量%、Reが6.2重量%、Ruが5.0重量%、Hfが0.1重量%、残部が実質的にNiであるニッケル基単結晶超合金。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(4)引用発明1との対比・判断

(4-1)本件訂正発明2について

ア 本件訂正発明2と引用発明1とを対比する。

イ 合金組成について、重量%と質量%とはその値がそれぞれ換算なしで同じ値であることから、引用発明1のCo、Mo、W、Ta、Al、Ti、Hf、Re、Ruの合金組成は、本件訂正発明2のこれらの元素の組成範囲を満たす。
引用発明1は、Nbの組成について特定していないが、本件訂正発明2のNbの組成は、3.0質量%以下であり、本件訂正明細書の【0030】には、「Nbの添加を抑制する又はNbを添加しない場合であっても・・・、可能である。」と記載されていることからみて、3.0質量%以下とは、0を含むものといえるから、引用発明1のNbの合金組成は、本件訂正発明2のNbの組成範囲を満たす。
また、引用発明1と本件訂正発明2とは、共にCrを含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成である点で一致する。

ウ そうすると、両者は、
「 質量比で、
Co:15.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
Crを含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有するNi基単結晶超合金。」である点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:Crの含有量について、本件訂正発明2が、「Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下」であるのに対し、引用発明1が、「3.0」質量%である点
相違点2:本件訂正発明2が、「P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する」ものであるのに対し、引用発明1においては、当該点について特定されていない点

エ 相違点1について検討する。

オ まず、本件訂正発明2の解決しようとする課題についてみてみる。

カ 本件訂正明細書には、次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した第4,5世代のNi基単結晶超合金は、高温下で高いクリープ強度を得るために、WやReなどの重金属を多く添加しているため、第2世代以前のNi基単結晶超合金に比べて比重が大きい。その結果、第4,5世代のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼は、高温下で高いクリープ強度を有するものの、翼重量の増加により周速の低下を招いたり、上述した航空機エンジンや産業用ガスタービンなどの重量増加を招いたりする。したがって、タービン翼の軽量化と耐用温度の向上を図るためには、比重当たりのクリープ強度が高い、いわゆる比クリープ強度が高いNi基単結晶超合金の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、比クリープ強度に優れたNi基単結晶超合金及びこれを用いたタービン翼を提供することを目的とする。」

キ してみると、本件訂正発明2の解決しようとする課題は、比重当たりのクリープ強度が高い、いわゆる比クリープ強度が高いNi基単結晶超合金の開発が望まれているという問題に対して、比クリープ強度に優れたNi基単結晶超合金及びこれを用いたタービン翼を提供することであるといえる。

ク 次に、相違点1に係る本件訂正発明2の発明特定事項であるCrの含有量を特定することの技術的意義について、本件訂正明細書には、次の記載がある。

「【0023】
Crは、耐酸化性に優れた元素であり、Hf及びAlと共にNi基単結晶超合金の高温耐食性を向上させる元素である。しかしながら、Crが4.1質量%未満になると、所望の高温耐食性を確保することが困難となる。一方、Crが8.0質量%を超えると、γ´相の析出が抑制されると共に、σ相やμ相などの有害相が析出し、高温強度が低下する。したがって、Crは、4.1質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5.1質量%以上8.0質量%以下である。」

この記載からみて、Crは、Ni基単結晶超合金の高温耐食性を向上させる元素であり、その下限値は、所望の高温耐食性を確保するために定められるものであるといえる。

一方、引用発明1において、Crの含有量についての技術的意義をみてみる。

引用例1のエには、Crの含有量は、粒欠陥に関連した凝固の形成を最小限にすることにより、熱腐食抵抗、耐酸化性、鋳造性の両方の効果のために高いことが望ましく、2%より少ないCrが許容できないこと、及び、Crは高温に長時間曝されることにより、位相幾何学的に有害な最密充填相(TCP相)の形成に関してミクロ組織不安定性を生じさせるため、好ましくは5%を超えないことが記載されている。

当該記載からみて、引用発明1において、そのCrの含有量は、熱腐食抵抗、耐酸化性、鋳造性及びTCP相の形成等の影響を考慮すると、2?5%の範囲において、調整することについて示唆されているといえるが、積極的に5%を超えて添加することは好ましくないものであるといえるから、引用発明1において、相違点1に係る本件訂正発明2の発明特定事項を導出することはできない。

そうすると、相違点2についての検討をするまでもなく、本件訂正発明2は、引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、他に本件訂正発明2が、特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

よって、本件訂正発明2は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

(4-2)本件訂正発明4について

本件訂正発明4は、Coの組成範囲の下限値を「4.0質量%以上9.5質量%以下」に本件訂正発明2のCoの組成範囲をさらに特定するものである。

本件訂正発明4と引用発明1とを対比すると、引用発明1のCoの含有量は、8.0重量%であって、本件訂正発明4のCoの組成範囲を満たすから、上記(4-1)の検討を踏まえると、上記相違点1及び相違点2と同じ相違点で相違し、その余の点で一致している。

上記相違点1について、上記(4-1)で検討したものと同じ理由により、引用発明1において、相違点1に係る本件訂正発明4の発明特定事項を導出することはできない。

そうすると、相違点2についての検討をするまでもなく、本件訂正発明4は、引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、他に本件訂正発明4が、特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

よって、本件訂正発明4は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

(4-3)本件訂正発明5及び6について

本件訂正発明5及び6は、本件訂正発明2又は本件訂正発明4の全ての発明特定事項を含むものであるから、上記(4-1)及び(4-2)で述べたものと同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、他に本件訂正発明5及び6が、特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

よって、本件訂正発明5及び6は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

(4-4)本件訂正発明7について

本件訂正発明7と引用発明1とを対比する。
上記(4-1)の検討を踏まえると、合金組成について、引用発明1のCo、Mo、Ta、Al、Ti、Hf、Nb、Re、Ruの含有量は、本件訂正発明7のこれらの元素の含有量を満たす。
また、引用発明1と本件訂正発明7とは、共にCrを含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成である点で一致する。

そうすると両者は、
「 質量比で、
Co:5.0質量%以上、8.0質量%以下、
Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下、
Ta:5.5質量%以上8.0質量%以下、
Al:5.4質量%以上6.0質量%以下、
Ti:0.5質量%以下、
Hf:0.08質量%以上、0.5質量%以下、
Nb:1.0質量%以下、
Re:4.0質量%以上7.5質量%以下、
Ru:1.0質量%以上5.0質量%以下を含有し、
Cr及びWを含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有するNi基単結晶超合金。」である点で一致し、次の点で相違している。

相違点7-1:Crの含有量について、本件訂正発明7が、「Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下」であるのに対し、引用発明1が、「3.0」質量%である点
相違点7-2:Wの含有量について、本件訂正発明7が、「W:1.9質量%以下」であるのに対し、引用発明1が、「2.9」質量%である点
相違点7-3:本件訂正発明7が、「P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する」ものであるのに対し、引用発明1においては、当該点について特定されていない点

相違点7-1は、相違点1と同じであるから、上記(4-1)で検討したものと同じ理由により、引用発明1において、相違点7-1に係る本件訂正発明7の発明特定事項を導出することはできない。

そうすると、相違点7-2、7-3についての検討をするまでもなく、本件訂正発明7は、引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、他に本件訂正発明7が、特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

よって、本件訂正発明7は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

(4-5)本件訂正発明8?10について

本件訂正発明8は、本件訂正発明7の全ての発明特定事項を含むものであるから、上記(4-4)で述べたものと同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件訂正発明9及び10は、本件訂正発明2、4又は7の全ての発明特定事項を含むものであるから、上記(4-1)、(4-2)、(4-4)で述べたものと同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、他に本件訂正発明8?10が、特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

よって、本件訂正発明8?10は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

(5)よって、本件訂正は特許法第126条第7項の規定に適合する。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項、第3項ないし第7項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
Ni基単結晶超合金及びこれを用いたタービン翼
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ni基単結晶超合金及びこれを用いたタービン翼に関する。
本願は、2007年3月12日に日本に出願された特願2007-61501号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
航空機エンジンや産業用ガスタービンなどに使用されるタービン翼(静・動翼)は、高温下に長時間晒されることから、耐熱性に優れた材料としてNi基単結晶超合金が用いられている。このNi基単結晶超合金は、ベースであるNiにAlを添加してNi_(3)Al型の析出物を析出させて強化し、更にCr、W、Taなどの高融点金属を添加して合金化し、単結晶化させた超合金である。また、Ni基単結晶超合金は、所定の温度で溶体化処理を行った後、時効処理を行って強度向上のために適切な金属組織を得ている。この超合金は、いわゆる析出硬化型合金と呼ばれており、母相(γ相)中に析出相(γ´相)が分散析出した結晶構造を有している。
【0003】
このようなNi基単結晶超合金には、Reを含まない第1世代、Reを3質量%程度含む第2世代、Reを5?6質量%含む第3世代が既に開発されており、世代が進むに従ってクリープ強度が向上している。例えば、第1世代のNi基単結晶超合金としてはCMSX-2(キャノン・マスケゴン社製、特許文献1を参照。)、第2世代のNi基単結晶超合金としてはCMSX-4(キャノン・マスケゴン社製、特許文献2を参照。)、第3世代のNi基単結晶超合金としてはCMSX-10(キャノン・マスケゴン社製、特許文献3を参照。)などが知られている。
【0004】
ところで、第3世代のNi基単結晶超合金であるCMSX-10は、第2世代のNi基単結晶超合金よりも高温下でのクリープ強度の向上を目的としている。しかしながら、このNi基単結晶超合金は、Reの組成比が5質量%以上と高く、Reの母相(γ相)への固溶量が限界を越えてしまうために、高温下で余剰となったReが他の元素と化合して、いわゆるTCP(Topo1ogically Close Packed)相を析出させることがある。このため、第3世代のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼では、高温下で長時間の使用によりTCP相の量が増加して、クリープ強度が低下するという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、TCP相を抑制するRuを添加し、且つ他の構成元素の組成比を最適な範囲に設定することにより、母相(γ相)の格子定数と析出物(γ´相)の格子定数とを最適な値とし、高温下での更なる強度向上を可能としたNi基単結晶超合金が開発されている。
【0006】
具体的には、Ruを3質量%程度まで含む第4世代のNi基単結晶超合金と、Ruを4質量%以上含む第5世代のNi基単結晶超合金とが開発されており、世代が進むに従って更にクリープ強度が向上している。例えば、第4世代のNi基単結晶超合金としてはTMS-138(NIMS-IHI社製、特許文献4を参照。)、第5世代のNi基単結晶超合金としてはTMS-162(NIMS-IHI社製、特許文献5を参照。)等が知られている。
【特許文献1】米国特許第4582548号明細書
【特許文献2】米国特許第4643782号明細書
【特許文献3】米国特許第5366695号明細書
【特許文献4】米国特許第6966956号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0011271号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した第4,5世代のNi基単結晶超合金は、高温下で高いクリープ強度を得るために、WやReなどの重金属を多く添加しているため、第2世代以前のNi基単結晶超合金に比べて比重が大きい。その結果、第4,5世代のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼は、高温下で高いクリープ強度を有するものの、翼重量の増加により周速の低下を招いたり、上述した航空機エンジンや産業用ガスタービンなどの重量増加を招いたりする。したがって、タービン翼の軽量化と耐用温度の向上を図るためには、比重当たりのクリープ強度が高い、いわゆる比クリープ強度が高いNi基単結晶超合金の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、比クリープ強度に優れたNi基単結晶超合金及びこれを用いたタービン翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく研究を重ねた結果、比重の大きいWの添加量を抑えつつ、(1)高温下で高いクリープ強度を維持することができる最適な組成範囲を特定する、(2)組織安定性を示す最適な組成範囲を特定することによって、高温下でのクリープ強度の向上を図りながら、第4,5世代のNi基単結晶超合金に対して比重の小さいNi基単結晶超合金が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
(1)(削除)
(2) 質量比で、
Co:15.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(3)(削除)
(4) 質量比で、
Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
(5) 前記組成のうち、
W:2.9質量%以下
を満足する前項(2)または(4)に記載のNi基単結晶超合金。
(6) 前記組成のうち、
W:1.9質量%以下
を満足する前項(2)または(4)に記載のNi基単結晶超合金。
(7) 質量比で、
Co:5.0質量%以上8.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下、
W:1.9質量%以下、
Ta:5.5質量%以上8.0質量%以下、
Al:5.4質量%以上6.0質量%以下、
Ti:0.5質量%以下、
Hf:0.08質量%以上0.5質量%以下、
Nb:1.0質量%以下、
Re:4.0質量%以上7.5質量%以下、
Ru:1.0質量%以上5.0質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有するNi基単結晶超合金。
(8) P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する前項(7)に記載のNi基単結晶超合金。
(9) P2(パラメータ2)=30×[W(質量%)]+10×[Re(質量%)]-30×[Cr(質量%)]-20×[Mo(質量%)]+30×[Al(質量%)]+90×[Ti(質量%)]+60×[Ta(質量%)]-5×[Ru(質量%)]としたときに、P2≦500を満足する前項(2)、(4)?(8)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金。
(10) 前項(2)、(4)?(9)の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、比クリープ強度に優れたNi基単結晶超合金として、比重の増加を抑えつつ、高温下で高いクリープ強度を維持することが可能である。したがって、このような比クリープ強度に優れたNi基単結晶超合金を用いたタービン翼では、軽量化と耐用温度の向上との両立を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、表1に示す各実施例及び参考例の密度とL.M.P.との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0013】
1…タービン翼
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用したNi基単結晶超合金及びこれを用いたタービン翼について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】(削除)
【0016】
また、本発明を適用したNi基単結晶合超金は、質量比で、Co:15.0質量%以下、Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、W:3.9質量%以下、Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、Ti:1.0質量%以下、Hf:0.5質量%以下、Nb:3.0質量%以下、Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する。
【0017】(削除)
【0018】
また、本発明を適用したNi基単結晶超合金は、質量比で、Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、W:3.9質量%以下、Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、Ti:1.0質量%以下、Hf:0.5質量%以下、Nb:3.0質量%以下、Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する。
【0019】
また、本発明では、比重の小さいNi基単結晶超合金を得るために、上記Ni基単結晶超合金の組成のうち、Wを0.0質量%以上2.9質量%以下とすることができ、更にWを0.0質量%以上1.9質量%以下とすることができる。
【0020】
さらに、本発明を適用したNi基単結晶超合金は、質量比で、Co:5.0質量%以上8.0質量%以下、Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下、W:1.9質量%以下、Ta:5.5質量%以上8.0質量%以下、Al:5.4質量%以上6.0質量%以下、Ti:0.5質量%以下、Hf:0.08質量%以上0.5質量%以下、Nb:1.0質量%以下、Re:4.0質量%以上7.5質量%以下、Ru:1.0質量%以上5.0質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有する。
【0021】
上記Ni基単結晶超合金の金属組織は、何れも母相(γ相)中に析出相(γ´相)が分散析出した結晶構造を有している。このうち、γ相はオーステナイト相からなり、γ´相は主としてNi_(3)Alといった規則構造を持つ金属間化合物からなる。本発明のNi基単結晶超合金では、γ相と、このγ相中に分散されたγ´相との組成を最適化することによって、高温下で優れた強度特性を得ることができる。
【0022】
以下、上記Ni基単結晶超合金を構成する各成分の組成範囲を限定した理由について説明する。
Coは、Al、Ta等を含む母相に対する高温下での固溶限度を大きくし、熱処理によって微細なγ´相を分散析出させ、高温強度を向上させる元素である。しかしながら、Coが15.0質量%を超えると、Al、Ta、Mo、W、Hf、Crなどの他の添加元素とのバランスが崩れ、有害相が析出して高温強度が低下する。したがって、Coは、15.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4.0質量%以上9.5質量%以下であり、更に好ましくは5.0質量%以上8.0質量%以下である。
【0023】
Crは、耐酸化性に優れた元素であり、Hf及びAlと共にNi基単結晶超合金の高温耐食性を向上させる元素である。しかしながら、Crが4.1質量%未満になると、所望の高温耐食性を確保することが困難となる。一方、Crが8.0質量%を超えると、γ´相の析出が抑制されると共に、σ相やμ相などの有害相が析出し、高温強度が低下する。したがって、Crは、4.1質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5.1質量%以上8.0質量%以下である。
【0024】
Moは、W又はTaとの共存下において母相となるγ相に固溶して高温強度を増加させると共に、析出硬化により高温強度に寄与する元素である。しかしながら、Moが2.1質量%未満になると、所望の高温強度を確保することが困難となる。一方、Moが6.5質量%を超えると、高温強度が低下し、更には高温耐食性も低下する。したがって、Moは、2.1質量%以上6.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2.2質量%以上4.8質量%以下である。
【0025】
Wは、Mo又はTaとの共存下において固溶強化と析出硬化の作用により高温強度を向上させる元素である。しかしながら、Wが3.9質量%を超えると、高温耐食性が低下する。したがって、Wは、3.9質量%以下であることが好ましい。また、Wは、比重の小さいNi基単結晶超合金を得るために、2.9質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.9質量%以下である。本発明では、このようにWの添加量を抑制する又はWを添加しない場合であっても、他の構成元素の組成比を最適な範囲に設定することによって、高温下で高いクリープ強度を維持することが可能である。
【0026】
Taは、Mo又はWとの共存下において固溶強化と析出硬化の作用により高温強度を向上させ、また一部がγ´相に対して析出硬化することで、高温強度を向上させる元素である。しかしながら、Taが4.0質量%未満になると、所望の高温強度を確保することが困難となる。一方、Taが10.0質量%を超えると、σ相やμ相などの有害相が析出し、高温強度が低下する。したがって、Taは、4.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5.5質量%以上8.0質量%以下である。
【0027】
Alは、Niと化合しながら、母相中に微細均一に分散析出するγ´相として、Ni_(3)Alで表される金属間化合物を60?70%(体積百分率)の割合で形成する。すなわち、Alは、Niと共に高温強度を向上させる元素である。また、Alは、耐酸化性に優れた元素であり、Cr及びHfと共にNi基単結晶超合金の高温耐食性を向上させる元素である。しかしながら、Alが4.5質量%未満になると、γ´相の析出量が不充分となり、所望の高温強度及び高温耐食性を確保することが困難となる。一方、Alが6.5質量%を超えると、共晶γ´相と呼ばれる粗大なγ相が多く形成され、溶体化処理が不可能となり、所望の高温強度を確保することが困難となる。したがって、Alは、4.5質量%以上6.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5.4質量%以上6.0質量%以下である。
【0028】
Tiは、Mo又はWとの共存下において固溶強化と析出強化の作用により高温強度を向上させ、また、一部がγ´相に対して析出硬化し、高温強度を向上させるための元素である。しかしながら、Tiが1.0質量%を超えると、有害相が析出して高温強度が低下する。したがって、Tiは、1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。本発明では、このようにTiの添加量を抑制する又はTiを添加しない場合であっても、他の構成元素の組成比を最適な範囲に設定することによって、高温下で高いクリープ強度を維持することが可能である。
【0029】
Hfは、粒界偏析元素であり、粒界に偏在して粒界を強化し、これにより高温強度を向上させる元素である。また、Hfは、耐酸化性に優れた元素であり、Cr及びA1と共にNi基単結晶超合金の高温耐食性を向上させる元素である。しかしながら、Hfが0.5質量%を超えると、局部溶融を引き起こして高温強度を低下させることがある。したがって、Hfは、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.08質量%以上0.5質量%以下である。
【0030】
Nbは、高温強度を向上させる元素である。しかしながら、Nbが3.0質量%を超えると、有害相が析出して高温強度が低下する。したがって、Nbは、3.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは.1.0質量%以下である。本発明では、このようにNbの添加量を抑制する又はNbを添加しない場合であっても、他の構成元素の組成比を最適な範囲に設定することによって、高温下で高いクリープ強度を維持することが可能である。
【0031】
Reは、母相であるγ相に固溶し、固溶強化により高温強度を向上させる元素である。また、耐蝕性を向上させる効果もある。しかしながら、Reが3.0質量%未満になると、γ相の固溶強化が不充分となって所望の高温強度を確保することが困難となる。一方、Reが8.0質量%を超えると、高温時に有害相であるTCP相が析出し、所望の高温強度を確保することが困難となる。したがって、Reは、3.0質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4.0質量%以上7.5質量%以下である。
【0032】
Ruは、TCP相の析出を抑え、高温強度を向上させる元素である。しかしながら、Ruが0.5質量%未満になると、高温時にTCP相が析出し、所望の高温強度を確保することが困難となる。一方、Ruが6.5質量%を超えると、有害相が析出して高温強度が低下する。したがって、Ruは、0.5質量%以上6.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下である。
【0033】
また、本発明を適用したNi基単結晶超合金は、更に、B、C、Si、Y、La、Ce、V、Zrの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の元素を含有するものであってもよい。具体的に、これらの添加元素を含む場合には、有害相が析出して高温強度が低下することがないように、個々の組成範囲については、B:0.05質量%以下、C:0.15質量%以下、Si:0.1質量%以下、Y:0.1質量%以下、La:0.1質量%以下、Ce:0.1質量%以下、V:1質量%以下、Zr:0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0034】
また、本発明では、以下のパラメータ式P1を用いて、高温下で高い比クリープ強度を維持することができる最適な組成範囲を特定している。
P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]
すなわち、上記パラメータ式P1は、P1≦700であることが好ましく、より好ましくはP1≦450であり、更に好ましくはP1≦300である。本発明のNi基単結晶超合金では、上記パラメータ式P1の条件を満足することで、比重の大きいWの添加量を抑えつつ、高温下で高いクリープ強度を維持することができる。
【0035】
また、本発明では、以下のパラメータ式P2を用いて、組織安定性を示す最適な組成範囲を特定している。
P2(パラメータ2)=30×[W(質量%)]+10×[Re(質量%)]-30×[Cr(質量%)]-20×[Mo(質量%)]+30×[Al(質量%)]+90×[Ti(質量%)]+60×[Ta(質量%)]-5×[Ru(質量%)]
すなわち、上記パラメータ式P2は、P2≦500であることが好ましく、より好ましくはP2≦400である。本発明のNi基単結晶超合金では、上記パラメータ式P2の条件を満足することで、比重の大きいWの添加量を抑えつつ、組織安定性を示すことができる。
【0036】
以上のように、本発明を適用したNi基単結晶超合金では、比重の増加を抑えつつ、高温下で高いクリープ強度を維持することが可能である。具体的には、比重の小さいNi基単結晶超合金を得るために、Wの添加量を2.9質量%以下に抑えた場合であっても、高温下で高いクリープ強度を維持することができ、更にWの添加量を1.9質量%以下に抑えた場合であっても、高温下で高いクリープ強度を維持することができる。したがって、本発明によれば、比重当たりのクリープ強度が高い(比クリープ強度が高い)Ni基単結晶超合金を得ることが可能である。
【0037】
また、本発明のNi基単結晶超合金は、例えば図1に示すようなタービン翼1に好適に用いることができる。すなわち、本発明のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼1では、高温下で高いクリープ強度を有し、高温下での長時間の使用にも耐え得ると共に、第4,5世代のNi基単結晶超合金に対して比重が小さいことから、軽量化と耐用温度の向上との両立を図ることが可能である。
【0038】
したがって、本発明のNi基単結晶超合金は、上述した航空機エンジンや産業用ガスタービンなどに使用されるタービン翼(静・動翼)などに幅広く適用することが可能である。さらに、本発明のNi基単結晶超合金は、上述した航空機エンジンや産業用ガスタービンなどに使用されるタービン翼に限らず、高温下で長時間使用される部品又は製品に対して幅広く利用することが可能である。
【0039】
なお、本発明によれば、γ相と、このγ相中に分散させたγ´相との組成を最適化することができるため、上述したNi基単結晶超合金のみならず、一方向凝固材や普通鋳造材などにも同様に本発明を適用することができる。その場合、本発明と同様の効果を得ることが可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0041】
先ず、真空溶解炉を用いて各種のNi基単結晶超合金の溶湯を調整し、この合金溶湯を用いて組成の異なる実施例1?20の合金インゴットを鋳造した。これら実施例1?20の各合金インゴットの組成比を表1に示す。また、表1には、参考例1?8として、公知のNi基単結晶超合金の組成比を示す。
【0042】
【表1】

【0043】
次に、表1に示す各合金インゴットに対して溶体化処理及び時効処理を行い、実施例1?20のNi基単結晶超合金を得た。なお、溶体化処理については、1503?1563K(1230?1290℃)から多段のステップにより1573?1613K(1300?1340℃)まで昇温した後、1?10時間以上保持した。また、時効処理については、1273?1423K(1000℃?1150℃)で3?5時間保持する1次時効処理を行った。
【0044】
そして、これら実施例1?20のNi基単結晶超合金について、合金組織の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、何れも組織中にTCP相は確認されなかった。
【0045】
次に、実施例1?20の各Ni基単結晶超合金に対してクリープ試験を行った。クリープ試験は、温度1000?1050℃及び応力245MPaの条件下で、各試料がクリープ破断するまでの時間を寿命として測定した。
そして、実施例1?20及び参考例1?8の各Ni基単結晶超合金の比重(密度:g/cm^(3))に対する以下に示すラーソン・ミラー・パラメータ(L.M.P.)を用いたクリープ寿命の評価を行った。その評価結果を表1に示し、表1に示す各実施例1?20及び比較例1?8の比重とL.M.P.との関係を示す特性図を図2に示す。
L.M.P.=(T+273)×(20+Logt)/1000T:温度(℃)、t:クリープ破断時間(hr)
【0046】
表1及び図2に示すように、実施例1?20のNi基単結晶超合金は、参考例1?8のNi基単結晶超合金よりも比重に対するL.M.P.が高い値を示していることがわかる。
また、Wの添加量が2.9質量%以下に抑えられた実施例1,9,10,20のNi基単結晶超合金でも、比重当たりのクリープ強度が高く維持され、さらに、Wの添加量が1.9質量%以下に抑えられた実施例2,5,7,11,15?19のNi基単結晶超合金でも、比重当たりのクリープ強度が高く維持されていることがわかる。一方、Wを添加していない実施例3,4,6,8,12?14のNi基単結晶超合金でも、比重当たりのクリープ強度が高く維持されていることがわかる。
以上のことから、本発明によれば、比クリープ強度に優れたNi基単結晶超合金を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、比クリープ強度に優れたNi基単結晶超合金を提供することが可能である。したがって、このような比クリープ強度に優れたNi基単結晶超合金を用いたタービン翼では、軽量化と耐用温度の向上との両立を図ることが可能である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
質量比で、
Co:15.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
質量比で、
Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.1質量%以上4.0質量%以下、
W:3.9質量%以下、
Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、
Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、
Ti:1.0質量%以下、
Hf:0.5質量%以下、
Nb:3.0質量%以下、
Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、
Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、なお且つ、P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足するNi基単結晶超合金。
【請求項5】
前記組成のうち、
W:2.9質量%以下
を満足する請求項2または4に記載のNi基単結晶超合金。
【請求項6】
前記組成のうち、
W:1.9質量%以下
を満足する請求項2または4に記載のNi基単結晶超合金。
【請求項7】
質量比で、
Co:5.0質量%以上8.0質量%以下、
Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、
Mo:2.2質量%以上4.0質量%以下、
W:1.9質量%以下、
Ta:5.5質量%以上8.0質量%以下、
Al:5.4質量%以上6.0質量%以下、
Ti:0.5質量%以下、
Hf:0.08質量%以上0.5質量%以下、
Nb:1.0質量%以下、
Re:4.0質量%以上7.5質量%以下、
Ru:1.0質量%以上5.0質量%以下を含有し、
残部がNi及び不可避的不純物からなる組成を有するNi基単結晶超合金。
【請求項8】
P1(パラメータ1)=137×[W(質量%)]+24×[Cr(質量%)]+46×[Mo(質量%)]-18×[Re(質量%)]としたときに、P1≦700を満足する請求項7に記載のNi基単結晶超合金。
【請求項9】
P2(パラメータ2)=30×[W(質量%)]+10×[Re(質量%)]-30×[Cr(質量%)]-20×[Mo(質量%)]+30×[Al(質量%)]+90×[Ti(質量%)]+60×[Ta(質量%)]-5×[Ru(質量%)]としたときに、P2≦500を満足する請求項2、4?8の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金。
【請求項10】
請求項2、4?9の何れか一項に記載のNi基単結晶超合金を用いたタービン翼。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-02-12 
結審通知日 2016-02-16 
審決日 2016-02-29 
出願番号 特願2008-516055(P2008-516055)
審決分類 P 1 41・ 851- Y (C22C)
P 1 41・ 856- Y (C22C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 河野 一夫  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 富永 泰規
木村 孔一
登録日 2010-07-30 
登録番号 特許第4557079号(P4557079)
発明の名称 Ni基単結晶超合金及びこれを用いたタービン翼  
代理人 高橋 久典  
代理人 志賀 正武  
代理人 寺本 光生  
代理人 志賀 正武  
代理人 寺本 光生  
代理人 高橋 久典  

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