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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07G
管理番号 1313385
審判番号 不服2015-8677  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-11 
確定日 2016-04-04 
事件の表示 特願2012- 39380号「飲食店用券売機を用いた料理提供システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 5日出願公開、特開2013-175063号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成24年2月24日の特許出願であって、平成26年8月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月1日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲及び明細書について補正がなされたが、平成27年2月4日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成27年5月11日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲及び明細書についてさらに補正がなされたものである。

第2 平成27年5月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年5月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
平成27年5月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成26年9月1日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。

(1)<補正前>
「【請求項1】
ネットワークにより接続される、1または2以上の自動券売機と、厨房に設置される厨房端末と、ホールに設置される客用端末と、給仕用カウンタに設置される配膳口端末とで構成される、料理提供システムであって、
上記自動券売機は、少なくとも、ネットワークコントローラ、現金投入手段、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、料理メニューと整理番号の情報をバーコードに化体した交換用カード類を発行する発券手段、および通信手段を備え、
上記厨房端末は、少なくとも、ネットワークコントローラ、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、通信手段を備え、
上記客用端末は、少なくとも、ネットワークコントローラ、表示用モニタ、通信手段、および報知手段を備え、
上記配膳口端末は、少なくとも、ネットワークコントローラ、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、通信手段、および前記交換用カード類のバーコードを読み取るバーコードリーダを備えており、
自動券売機は、表示用モニタに料理メニュー選択画面を表示し、タッチパネル式の入力装置による料理メニューの選択に基づいて、料理メニューと整理番号の情報をバーコードに化体した交換用カード類を発行するとともに、該料理メニューと整理番号の情報を厨房端末と客用端末に送信し、
前記情報を受信した厨房端末は、表示用モニタに料理メニューと整理番号を表示し、
前記情報を受信した客用端末は、表示用モニタに整理番号を表示し、
前記情報を受信した配膳口端末は、表示用モニタに整理番号を表示し、
厨房端末は、タッチパネル式の入力装置による消し込みに基づいて、表示用モニタに表示された料理メニューと整理番号を、調理済みであることを示す表示に切替え、
客用端末は、厨房端末の消し込みに基づいて、該当する整理番号について報知手段を作動させ、
配膳口端末は、厨房端末の消し込みに基づいて、表示用モニタに表示された料理メニューと整理番号を、調理済みであることを示す表示に切替え、利用客の持参した交換用カード類を回収してそのバーコードをバーコードリーダで読み取るとともに、厨房端末、客用端末および配膳口端末のそれぞれ表示用モニタに表示された該当する整理番号を消去し、
給仕用カウンター担当者は、厨房から運ばれてきた該当する料理(料理メニュー)を利用客に提供するようにしたことを特徴とする飲食店用券売機を用いた料理提供システム。」

(2)<補正後>
「【請求項1】
ネットワークにより接続される、1または2以上の自動券売機と、厨房に設置される厨房端末と、ホールに設置される客用端末と、給仕用カウンタに設置される配膳口端末とで構成される、料理提供システムであって、
上記自動券売機は、少なくとも、ネットワークコントローラ、現金投入手段、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、料理メニューと整理番号の情報をバーコードに化体した交換用カード類を発行する発券手段、および通信手段を備え、
上記厨房端末は、少なくとも、ネットワークコントローラ、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、通信手段を備え、
上記客用端末は、少なくとも、ネットワークコントローラ、表示用モニタ、通信手段、および報知手段を備え、
上記配膳口端末は、少なくとも、ネットワークコントローラ、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、通信手段、および前記交換用カード類のバーコードを読み取るバーコードリーダを備えており、
自動券売機は、表示用モニタに料理メニュー選択画面を表示し、タッチパネル式の入力装置による料理メニューの選択に基づいて、料理メニューと整理番号の情報をバーコードに化体した交換用カード類を発行するとともに、該料理メニューと整理番号の情報を厨房端末と配膳口端末および客用端末に送信し、
前記情報を受信した厨房端末は、表示用モニタに料理メニューと整理番号を表示し、
前記情報を受信した客用端末は、表示用モニタに整理番号を表示し、
前記情報を受信した配膳口端末は、表示用モニタに整理番号を表示し、
厨房端末は、タッチパネル式の入力装置による消し込みに基づいて、表示用モニタに表示された料理メニューと整理番号を、調理済みであることを示す表示に切替え、
客用端末は、厨房端末の消し込みに基づいて、該当する整理番号について報知手段を作動させ、
配膳口端末は、厨房端末の消し込みに基づいて、表示用モニタに表示された料理メニューと整理番号を、調理済みであることを示す表示に切替え、利用客の持参した交換用カード類を回収してそのバーコードをバーコードリーダで読み取るとともに、厨房端末、客用端末および配膳口端末のそれぞれ表示用モニタに表示された該当する整理番号を消去し、
給仕用カウンター担当者は、厨房から運ばれてきた該当する料理(料理メニュー)を利用客に提供するようにしたことを特徴とする飲食店用券売機を用いた料理提供システム。」

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1における「自動券売機」の「料理メニューと整理番号の情報」の送信先に「配膳口端末」を加えるものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、同法同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件に適合するか否かについて検討する。
(1)補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「飲食店用券売機を用いた料理提供システム」であると認める。

(2)刊行物
これに対して、原審の平成26年8月12日付け拒絶の理由に引用された、本件出願日前に頒布された刊行物である特開2005-202910号公報には、以下の事項及び発明が記載されていると認められる。

ア 刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「飲食店用券売機を用いた料理提供方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
1または2以上のコントローラ付き自動券売機と、この自動券売機と通信手段によって接続された厨房および給仕用カウンタに設置されたコントローラ付き厨房モニタおよびコントローラ付き客用モニタとで構成され、
上記自動券売機は少なくとも、コントローラ、現金投入手段、表示用モニタ、発券手段、および通信手段を備え、また表示用モニタにはタッチパネル式の入力装置が付設され、
上記厨房モニタはタッチパネル式の入力装置と、印字装置を備え、
また上記客用モニタは呼出し手段を備えており、
(発券)
利用客は自動券売機の表示用モニタのメニュー表示を確認しながら、タッチパネル式の入力装置を操作して所望の料理メニューを選択し、交換用カード類の発行を受ける。
(調理)
利用客が入力装置を操作して所望のメニューを選択して交換用カード類が発行されると、その情報が厨房モニタに送信されてメニューと交換用カード類の整理番号とが表示される。厨房の担当者はそのメニューを見て調理に取りかかる。
それとともに、給仕用カウンタに設置された客用モニタには少なくとも交換用カード類の整理番号が調理中を示す欄に表示される。
(調理完了・呼出)
調理の終了に応じて厨房の担当者が厨房モニタに表示された料理メニューを消し込むと同時に、少なくとも当該料理メニューに対応する整理番号が印字され、配膳表として利用される。
この配膳表の印字は、メニューの購入による交換用カード類の発行時であっても、また料理メニューの提供時であってもよい。
また厨房モニタに表示された料理メニューを消し込むと同時に、給仕用カウンタに設置された客用モニタの交換用カード類の番号表示が調理済みを示す欄に表示され、利用客が客用モニタの呼出し手段により給仕用カウンタまで呼び出される。
(給仕)
厨房の担当者は、利用客の提示した交換用カード類の整理番号を上記配膳表に記入された整理番号で確認し、交換用カード類と交換に料理メニューを提供する。
(消し込み)
料理メニューの提供後、厨房担当者は厨房モニタの調理済みメニューの調理済み表示を最終的に消し込む。
それと同時に客用モニタの番号表示も消去される。
ようにしたことを特徴とする飲食店用券売機システム。」

(イ)
「【0020】
図1および図2において、1は整理番号等を印字した交換用カード類を、表示用モニタ2の料理メニューに触れることにより発行するコントローラ付き自動券売機である。この券売機1は主にサーバを備えた親機と複数の子機とで構成するネットワーク対応型であり、したがって、整理番号が複数の自動券売機で同一のものが発生しないようになっている。もちろん、有線あるいは無線通信等でデータのやり取りが行なえるものであることが望ましい。また3はパソコンで、事務所やコントロールセンター等に設置されており、上記券売機1とネットワークを介して接続されている。なおこのパソコン3は、サーバを備えた親機に各種データの記憶手段や処理能力を備えさせておくことにより、これを省略することができる。
6は厨房モニタ4に付設した配膳表を打ち出すプリンタ、7は厨房モニタ4に付設した交換用カード類の回収装置である。なお交換用カード類の回収装置に例えばカードに記憶させた整理番号等のデータを読み取らせれば、交換用カード類の整理番号の照合を迅速に行なうことができるとともに、指でタッチしなくても消し込み操作を行うことができる。」


(ウ)
「【0021】
上記券売機1において特に親機は、図3に示すような構成からなっている。すなわち、券売機1はサーバを備えるとともにコントローラを内蔵するよう構成され、前面11には表示用モニタ2が取り付けられている。この表示用モニタ2にはタッチパネル式の入力装置が付設され、表示用モニタ2に表示される料理メニューに触れることにより、当該料理メニューの入力を行なうことができる。また券売機1の前面11のテーブル部分12には、それぞれ複数の紙幣ごとや複数の硬貨ごとに一括して投入することが可能な投入口を備えた現金投入手段13が設けられている。したがって、現金をこの投入口へ投入し、表示用モニタ2のタッチパネル式の料理メニューに触れることにより、当該料理メニューの入力を行なうことができるのである。・・・(後略)」

(エ)
「【0024】
図3において14は発券手段で、現金や、ICカード、プリペイドカード、SFカード(サイバネ規格準拠)、クレジットカード等の各種のカード類を挿入口から投入し、表示用モニタ2のタッチパネル式の料理メニューに触れることにより、当該料理メニューの入力を行なうと、発券手段14の発券口から適宜の構造の交換用カード類が発券される。・・・(中略)・・・上記交換用カード類15には料理メニュー欄16と利用客の整理番号17とを印字してある。最低限必要な記載事項は整理番号17である。もちろん、日付や時刻、単価等の表示があってもよい。・・・(後略)」

(オ)
「【0028】
次にコントローラ付きの厨房モニタ4は調理場に近接して設置され、タッチパネル式の入力装置と、プリンタ6等の感熱式等の印字装置を備えている。
すなわち、利用客が券売機1の表示用モニタ2に表示された所望のメニューを選択して交換用カード類が発行されると、その情報が直接、厨房モニタ4(コントローラ)に送信され、画面上に料理メニューと交換用カード類の整理番号とが表示される。厨房の担当者はその料理メニューを見て即座に調理に取りかかることができる。」

(カ)
「【0029】
上記厨房モニタ4の画面は図8ないし図11に示す通りである。すなわち、メニューまとめ表示画面(図8および図9)においては、画面上に料理メニュー22とそれに対応する1以上の交換用カード類の整理番号23とが表示される。この表示は交換用カード類の発行に応じて先詰め式に配列される。・・・(中略)・・・
【0030】
図8の画面はオーダー状況を示す画面であり、中華丼の欄の右側3個が最初の消し込みにより反転表示されている。図9の画面は最終の消し込みにより、表示されている料理メニューが調理中であることを示している。すなわち、調理が完了して厨房の担当者が最上段の料理メニューに触れると、タッチパネル式の入力装置にその料理メニューに対し1回目の消し込みが行なわれる。その際、当該料理メニューは消えるのではなく白黒(白抜きとベタ)反転するようになっている。次に配膳を確認して上記反転表示に触れることにより、調理の完了を確定することができる。・・・(後略)」

(キ)
「【0031】
図10および図11の画面はオーダ受付順を示す表示であり、左側の上部2個が最初の消し込みにより反転表示されている。すなわち、調理が完了して厨房の担当者が最上段の料理メニューに触れると、タッチパネル式の入力装置にその料理メニューに対し1回目の消し込みが行なわれる。そして、図11の画面は最上段のメニュー欄が最終の消し込みにより、先詰め式に繰り上げられた状態を示している。」

(ク)
「【0033】
次にホールに近接して設置されたコントローラ付き客用モニタ5について説明する。この客用モニタ5もネットワークを介して券売機1に接続されている。そして、利用客が券売機1の表示用モニタ2に表示された所望のメニューを選択して交換用カード類が発行されると、その情報が直接厨房モニタ4(コントローラ)のみならず、客用モニタ5(コントローラ)にも送信され、その画面上に交換用カード類の整理番号が先詰め式に表示される。利用客はその整理番号を見て自分の料理メニューが調理のどの段階かを把握することができるので、いらいらして待つことがなくなる。
【0034】
図12ないし図14にコントローラ付き客用モニタ5の画面構成の1例を示す。図12では調理中のものと調理済みのものとが横に並べられて表示されている。・・・(中略)・・・
なお、上記客用モニタ5は呼出し手段を備えている。この呼出し手段としては、整理番号の点滅、報知ランプの点灯もしくは点滅、整理番号の調理済みポジションへの移行、整理番号の音声による呼出し等が考えられる。」

(ケ)
「【0036】
次に動作手順について説明する。まず、利用客が自動券売機1に金銭を投入し、表示用モニタ2のメニュー選択画面から料理メニューを選択すると、選択したメニュー内容が白黒反転したり、点滅したりする。そこで利用客は自分の選択したメニューを確認し、確認ボタン等を押して注文すれば(行程1)、整理番号の付された交換用カード類が発行される(行程2)。と同時に、自動券売機1で発行された交換用カード類の例えばメニューや整理番号等は、直接コントローラの通信機能を介して全調理場の厨房モニタ4(コントローラ)のみならず、ホール内に設置した客用モニタ5(コントローラ)に送信される(行程3)。厨房モニタ4には注文された順に料理メニューや整理番号等が表示される(行程4)。厨房モニタ4には、料理メニューの表示や注文の順序を示す優先順位の表示、色の変化による仕掛かり時間の表示のみならず、上記交換用カード類に付された整理番号等の情報が画面表示される(行程5)。」

(コ)
「【0037】
利用客がセルフサービスのサービスカウンタにつくと、すでに調理が始まっており、短時間で料理が調理されてサービスカウンタに提供される(行程6)。・・・(中略)・・・
調理が終了した際、厨房の担当者は厨房モニタ4のタッチパネルを操作して消し込みを行なう(行程7)。
すると、厨房モニタ4の画面において該当メニューが白黒反転し、客用モニタ5において整理番号の点滅、報知ランプの点灯もしくは点滅、整理番号の調理済みポジションへの移行、もしくは整理番号の音声による呼出し等の呼出しが発動する。また、プリンタ6から料理メニューと整理番号等が印刷された配膳表が出力される(行程8)。
【0038】
利用客の所持している交換用カード類には整理番号が記入されているので、利用客は調理済みの報知に応じて給仕用カウンタで交換用カード類を手渡す。そこで厨房の担当者が利用客から前記交換用カード類を受け取って整理番号を確認し、厨房の担当者(例えば調理人)は料理メニューを利用客に提供する(行程9)。最後に、厨房モニタ4から上記料理メニューや整理番号が消され、同時に客用モニタ5の整理暗号の表示も消される。
なお、上記交換用カード類を磁気カード等のデータの書き込み機能を備えたものとし、端末機で交換用カード類の情報を読み取らせ、整理番号の照合を自動的に行なうこともできる。」

イ 刊行物1発明
(サ)上記記載事項(オ)に「コントローラ付きの厨房モニタ」とあるところ、該「厨房モニタ」は、「ネットワーク対応型」の「券売機」(上記記載事項イ)と接続されている(図1等)ことから、該「コントローラ」は、ネットワーク上のコントロール機能も有するものと認められ、「ネットワークコントローラ」ということができる。また、該「厨房モニタ」は「券売機」と接続されていることから、何らかの通信手段を有することは明らかである。

(シ)上記記載事項(ク)に「コントローラ付き客用モニタ」とあるところ、該「客用モニタ」は、「ネットワークを介して券売機1に接続されている」ことから、該「コントローラ」は、ネットワーク上のコントロール機能も有するものと認められ、「ネットワークコントローラ」ということができる。また、該「客用モニタ」は「券売機」と接続されていることから、何らかの通信手段を有することは明らかである。

そこで、上記記載事項(ア)ないし(コ)並びに上記認定事項(サ)及び(シ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて補正発明に照らして整理すると刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。(以下「刊行物1発明」という。)
「ネットワークにより接続される、1または2以上の自動券売機と、厨房および給仕用カウンタに設置される厨房モニタと、ホールに設置される客用モニタとで構成される、飲食店用券売機システムであって、
上記自動券売機は、少なくとも、ネットワークコントローラ、現金投入手段、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、料理メニューと整理番号のデータを磁気的に書き込んだ交換用カード類を発行する発券手段、および通信手段を備え、
上記厨房モニタは、ネットワークコントローラ、タッチパネル式の入力装置が付設された表示画面、通信手段を備え、
上記客用モニタは、ネットワークコントローラ、表示用モニタ、通信手段、および呼出し手段を備え、
自動券売機は、表示用モニタに料理メニュー選択画面を表示し、タッチパネル式の入力装置による料理メニューの選択に基づいて、料理メニューと整理番号のデータを磁気的に書き込んだ交換用カード類を発行するとともに、該料理メニューと整理番号の情報を厨房モニタおよび客用モニタに送信し、
前記情報を受信した厨房モニタは、表示画面に料理メニューと整理番号を表示し、
前記情報を受信した客用モニタは、表示用モニタに整理番号を表示し、
厨房モニタは、タッチパネル式の入力装置による消し込みに基づいて、表示画面に表示された料理メニューと整理番号を、調理済みであることを示す白黒反転に切替え、
客用モニタは、厨房モニタの消し込みに基づいて、該当する整理番号について呼出し手段を発動させ、
厨房モニタは、利用客から交換用カード類を受け取って磁気情報を読み取るとともに、厨房モニタ、客用モニタのそれぞれ表示画面または表示用モニタに表示された該当する整理番号を消し、
厨房の担当者は、料理メニューを利用客に提供するようにした飲食店用券売機システム。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「厨房モニタ」は、補正発明の「厨房端末」に相当することは、その機能及び技術常識に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「客用モニタ」は「客用端末」に、「表示画面」は「表示用モニタ」に、「呼出し手段」は「報知手段」に、「調理済みであることを示す白黒反転に切替え」は「調理済みであることを示す表示に切替え」に、「呼出し手段を発動させ」は「報知手段を作動させ」に、「利用客から交換用カード類を受け取って」は「利用客の持参した交換用カード類を回収して」に、「表示画面または表示用モニタ」は「表示用モニタ」に、「該当する整理番号を消し」は「該当する整理番号を消去し」に、「料理メニューを利用客に提供する」は「料理(料理メニュー)を利用客に提供する」に相当することも明らかである。
また、刊行物1発明の「飲食店用券売機システム」は、「料理メニューを利用客に提供するようにした飲食店用券売機システム」であることから、補正発明の「料理提供システム」または「飲食店用券売機を用いた料理提供システム」に相当するといえる。

次に、刊行物1発明の「厨房および給仕用カウンタに設置される厨房モニタ」は、補正発明の「厨房に設置される厨房端末」と、「少なくとも厨房に設置される厨房端末」である限りにおいて共通する。
また、刊行物1発明の「料理メニューと整理番号のデータを磁気的に書き込んだ交換用カード類」は、補正発明の「料理メニューと整理番号の情報をバーコードに化体した交換用カード類」と、「料理メニューと整理番号の情報を備えた交換用カード類」である限りにおいて共通する。
刊行物1発明の「厨房の担当者」は、補正発明の「給仕用カウンター担当者」と、「担当者」である限りにおいて共通する。

そして、刊行物1発明の
「厨房モニタは、利用客から交換用カード類を受け取って磁気情報を読み取るとともに、厨房モニタ、客用モニタのそれぞれ表示画面または表示用モニタに表示された該当する整理番号が消」すことは、
上記対応関係を踏まえ、
「厨房端末は、利用客の持参した交換用カード類を回収して磁気情報を読み取るとともに、厨房端末、客用端末のそれぞれ表示用モニタに表示された該当する整理番号を消去」することと言い換えられるところ、
これは、補正発明の
「配膳口端末は、」「利用客の持参した交換用カード類を回収してそのバーコードをバーコードリーダで読み取るとともに、厨房端末、客用端末および配膳口端末のそれぞれ表示用モニタに表示された該当する整理番号を消去」することと、
「端末は、利用客の持参した交換用カード類を回収して交換用カード類の情報を読み取るとともに、厨房端末、客用端末のそれぞれ表示用モニタに表示された該当する整理番号を消去」することである限りにおいて共通する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「ネットワークにより接続される、1または2以上の自動券売機と、少なくとも厨房に設置される厨房端末と、ホールに設置される客用端末を含んで構成される、料理提供システムであって、
上記自動券売機は、少なくとも、ネットワークコントローラ、現金投入手段、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、料理メニューと整理番号の情報を備えた交換用カード類を発行する発券手段、および通信手段を備え、
上記厨房端末は、ネットワークコントローラ、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、通信手段を備え、
上記客用端末は、ネットワークコントローラ、表示用モニタ、通信手段、および報知手段を備え、
自動券売機は、表示用モニタに料理メニュー選択画面を表示し、タッチパネル式の入力装置による料理メニューの選択に基づいて、料理メニューと整理番号の情報を備えた交換用カード類を発行するとともに、該料理メニューと整理番号の情報を厨房端末および客用端末に送信し、
前記情報を受信した厨房端末は、表示用モニタに料理メニューと整理番号を表示し、
前記情報を受信した客用端末は、表示用モニタに整理番号を表示し、
厨房端末は、タッチパネル式の入力装置による消し込みに基づいて、表示用モニタに表示された料理メニューと整理番号を、調理済みであることを示す表示に切替え、
客用端末は、厨房端末の消し込みに基づいて、該当する整理番号について報知手段を作動させ、
端末は、利用客の持参した交換用カード類を回収して交換用カード類の情報を読み取るとともに、厨房端末、客用端末のそれぞれ表示用モニタに表示された該当する整理番号を消去し、
担当者は、料理(料理メニュー)を利用客に提供するようにした飲食店用券売機を用いた料理提供システム。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の6点で相違している。
<相違点1>
補正発明は、少なくとも、ネットワークコントローラ、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、通信手段、および前記交換用カード類のバーコードを読み取るバーコードリーダを備えた、給仕用カウンタに設置された配膳口端末を有するのに対し、刊行物1発明の厨房モニタは厨房および給仕用カウンタに設置されて、別途配膳口端末を設けずに、いわば厨房モニタが配膳口端末の機能を兼ね備えている点。
<相違点2>
「料理メニューと整理番号の情報を備えた交換用カード類」に関し、補正発明の交換用カード類は、料理メニューと整理番号の情報をバーコードに化体したものであるのに対し、刊行物1発明の交換用カード類は、料理メニューと整理番号のデータを磁気的に書き込んだものである点。
<相違点3>
補正発明の自動券売機は、料理メニューと整理番号の情報を厨房端末と配膳口端末および客用端末に送信し、情報を受信した厨房端末と配膳口端末および客用端末は、表示用モニタに整理番号を表示するのに対し、刊行物1発明の自動券売機は、料理メニューと整理番号の情報を厨房モニタおよび客用モニタに送信し、厨房モニタと客用モニタにおいて整理番号を表示する点。
<相違点4>
補正発明においては、配膳口端末は、厨房端末の消し込みに基づいて、表示用モニタに表示された料理メニューと整理番号を、調理済みであることを示す表示に切替えるのに対して、別途の配膳口端末を設けていない刊行物1発明はそのようなことは行わない点。
<相違点5>
端末は、利用客の持参した交換用カード類を回収して交換用カード類の情報を読み取るとともに、厨房端末、客用端末のそれぞれ表示用モニタに表示された該当する整理番号を消去することに関し、
補正発明においては、配膳口端末が、厨房端末の消し込みに基づいて、表示用モニタに表示された料理メニューと整理番号を、調理済みであることを示す表示に切替え、利用客の持参した交換用カード類を回収してそのバーコードをバーコードリーダで読み取るとともに、厨房端末、客用端末および配膳口端末のそれぞれ表示用モニタに表示された該当する整理番号を消去するのに対し、
刊行物1発明においては、厨房モニタが、利用客から交換用カード類を受け取って磁気情報を読み取るとともに、厨房モニタ、客用モニタのそれぞれ表示モニタ(表示画面)に表示された該当する整理番号を消すものである点。
<相違点6>
補正発明においては、給仕用カウンター担当者が、厨房から運ばれてきた該当する料理メニューを利用客に提供するのに対し、刊行物1発明においては、厨房の担当者が料理メニューを利用客に提供する点。

(4)相違点の検討
ア 相違点2について
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。料理メニューと整理番号の情報をバーコードに化体して食券に記憶させ、当該バーコードをバーコードリーダで読み取ることで、利用客が注文した料理メニューと整理番号を特定することは、原審において示した刊行物である特開2012-14566号公報(段落【0016】?【0018】等参照)、特開平5-197871号公報(段落【0009】?【0010】等参照)に示されるように従来周知の技術事項である。
そして、料理メニューと整理番号のデータを磁気的に書き込んだ刊行物1発明の交換用カード類に、上記従来周知の技術事項を適用してバーコードリーダ読み取り式とし、相違点2に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

イ 相違点1について
次に、相違点1について検討する。
(ア)刊行物1発明の厨房モニタは厨房および給仕用カウンタに設置されており、別途配膳口端末を設けずに、いわば厨房モニタが配膳口端末の機能を兼ね備えているものではあるが、(i)そもそも、複数の端末を別個に設けるか一つの端末にまとめて設けるかは、経済性と作業効率等を勘案して当業者が適宜選択し得る事項であることは従来周知の技術事項であり(例えば、特開2010-204873号公報の段落【0083】、特開平11-338912号公報の段落【0024】参照)、(ii)また、厨房端末と配膳口端末とを別々の端末として設けることも、原審において示した刊行物である特開2003-248869号公報(段落【0015】?【0017】、図1、図2等参照)、及び、特開2002-197542号公報(段落【0015】?【0017】、図1、図2等参照)にいずれも示されるように従来周知の技術事項である。
そうしてみると、刊行物1発明において、経済性より作業効率等を優先することとし、上記従来周知の技術事項を適用して、厨房端末と配膳口端末とを別々の端末として設けることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

(イ)請求人は審判請求書にて、「確かに引用文献2および3には、厨房端末と配膳口端末とを別々の端末として設けることが示されています。しかしながら、このような厨房端末と配膳口端末とを別々の端末として設けることは周知技術ではありません。なぜなら、引用文献2および3はいずれも出願人の出願に係るものであり、しかもいずれも特許(第4025907号:引用文献2、第4587245号:引用文献3)されているからであります。」と主張する。しかしながら、上記原審において示した2つの周知例(特開2003-248869号公報、特開2002-197542号公報)は、いずれも本件出願の10年位前に頒布された刊行物であるから、それが請求人の特許出願に係るもので特許になったものであることを考慮しても、周知性が損なわれるものではない。したがって請求人の主張には理由がない。

(ウ)上記(ア)にて指摘したように、厨房端末を配膳口端末とは別々の端末として設けることは想到容易であるところ、新たに別個の端末として設ける配膳口端末は、なるべく(分離元たる)厨房端末と同様の構成を備えることが、機能的にも経済的にも合理的であることを踏まえれば、新たな配膳口端末も、(分離前の)厨房端末と同様に、少なくとも、ネットワークコントローラ、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、通信手段を備えることが最も当業者が自然に取り得る構成である。

(エ)また、上記ア(「相違点2について」)で示したように、料理メニューと整理番号の情報をバーコードに化体して食券に記憶させ、当該バーコードをバーコードリーダで読み取ることで、利用客が注文した料理メニューと整理番号を特定することは従来周知の技術事項であり、かかる従来周知を技術事項の刊行物1発明に適用することに格別困難性はないところ、そのようにバーコードリーダを備えるとした場合、そのバーコードリーダは、厨房端末よりも利用客のアクセス性がよい配膳口端末に備えることが好ましいことは明らかである。

(オ)上記(ア)ないし(エ)を総合すると、刊行物1発明において、厨房端末を配膳口端末とは別個の端末として設け(上記(ア))、別個の端末として設ける配膳口端末は、少なくとも端末ネットワークコントローラ、タッチパネル式の入力装置が付設された表示用モニタ、通信手段を備えるものとし(上記(ウ))、さらに、交換用カード類のバーコードを読み取るバーコードリーダを備えさせて(上記(エ))て、相違点1に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものということになる。

ウ 相違点3及び4について
上記イにて指摘したように、厨房端末と配膳口端末とを別々の端末として設けることは想到容易であるところ、そのように配膳口端末を厨房端末と別個の端末として設けた場合、配膳口端末にも厨房端末と同じ情報を可能な範囲で送信し、そのうち重要な情報を表示させたいと当業者が考えるのはごく自然であるから、刊行物1発明において、料理メニューと整理番号の情報を厨房モニタおよび客用モニタのみならず、別個に設ける配膳口端末にも送信し、配膳口端末にも重要な情報たる整理番号を表示することとすることとし、相違点3に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、厨房端末において調理済みの消し込みが行われた際には、刊行物1発明において別個の端末として設ける配膳口端末においても、重要な情報の共有のために、料理メニューと整理番号について同様に調理済みであることを示す表示に切替えることとし、相違点4に係る補正発明の構成とすることも、当業者が容易になし得ることである。

エ 相違点5について
まず、相違点5のうち、補正発明において、配膳口端末が、厨房端末の消し込みに基づいて、表示用モニタに表示された料理メニューと整理番号を、調理済みであることを示す表示に切替える点については、上記ウ(「相違点3及び4」について)と同様であり想到容易なものである。
次に、上記ア(「相違点2について」)で示したように、料理メニューと整理番号の情報をバーコードに化体して食券に記憶させ、当該バーコードをバーコードリーダで読み取ることで、利用客が注文した料理メニューと整理番号を特定することは従来周知の技術事項であり、かかる従来周知の技術事項を刊行物1発明に適用することに格別困難性はなく、そのようにバーコードリーダを備える場合、そのバーコードリーダは、厨房端末よりも利用客のアクセス性がよい配膳口端末に備えることが好ましいことは上記イ(「相違点1について」)で指摘したとおりである。。
また、利用客の交換用カード類を回収した後は、該当する整理番号を、厨房端末、客用端末のみならず、(別個に設けることとする)配膳口端末においても消去することは当然考慮されるべきことである。
そうしてみると、刊行物1発明に上記従来周知の技術事項を適用して、相違点5に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

オ 相違点6について
一般に、料理メニューを利用客に提供する際において、厨房の担当者が料理メニューを利用客に提供することも、給仕用カウンター担当者が、厨房から運ばれてきた該当する料理メニューを利用客に提供することも、例示するまでもなく広く知られていることであり、いずれの方式を選択するかは当業者が適宜選択し得る事項に過ぎない。よって、相違点6は格別なものではない。

カ 小括
したがって、補正発明は、刊行物1発明及び従来周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたところ、本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成26年9月1日付けの手続補正書により補正された上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「飲食店用券売機を用いた料理提供システム」であると認める。

2 刊行物
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された刊行物は、上記第2の2(2)に示した刊行物1であり、刊行物1の記載事項は上記第2の2(2)のとおりである。

3 対比・検討
本願発明は、実質的に、上記第2の2で検討した補正発明の「自動券売機」の「料理メニューと整理番号の情報」の送信先から、「配膳口端末」を削除したものである。
そうすると、本願発明より狭い範囲を特定事項とする補正発明が、上記第2の2で検討したとおり想到容易である以上、それよりも広い範囲を特定事項とする本願発明も、刊行物1発明及び従来周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということになる。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-08 
結審通知日 2016-02-09 
審決日 2016-02-22 
出願番号 特願2012-39380(P2012-39380)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G07G)
P 1 8・ 121- Z (G07G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 津子松田 長親古川 峻弘太田 良隆  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 長屋 陽二郎
平瀬 知明
発明の名称 飲食店用券売機を用いた料理提供システム  
代理人 土橋 博司  

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