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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62D
管理番号 1313408
審判番号 不服2014-13090  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-07 
確定日 2016-04-13 
事件の表示 特願2012-542377号「自動車のボディシェルの製造方法及び自動車用ボディシェル」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月16日国際公開、WO2011/069581、平成25年 4月22日国内公表、特表2013-513502号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明
本願は、2010年10月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年12月10日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年3月3日付けで拒絶査定がされ、同年7月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において平成27年6月5日付けで拒絶理由が通知され、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1ないし8に係る発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、平成27年9月2日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「自動車のボディシェルであり、前記自動車の前記ボディシェルに割り当てられている、少なくとも1つのサポート部(10,24)を含むサポート構造を備えるボディシェルであって、
前記サポート部(10,24)には、前記自動車の構造バリエーションに応じて、少なくとも部分的に、少なくとも1つの強化部品(22)が取り付けられ、
前記サポート部(10,24)は、一方のハーフシェル(14)と2つ目のハーフシェル(16)とから形成されており、これらのハーフシェルは、それぞれの接合フランジ(18,20)によって中空の断面形状(12)を形成しながら相互に接続され、
前記サポート部(10,24)に、時間的には前記サポート構造の製造後に前記強化部品(22)が取り付けられ、
前記強化部品(22)は、一方のハーフシェル(14)または2つ目のハーフシェル(16)のいずれか一方のみと、その外側表面のみで接触するように取り付けられていることを特徴とするボディシェル。」

第2 刊行物
1.刊行物に記載の事項及び引用発明
当審の平成27年6月5日付け拒絶理由で引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である独国特許出願公開第102005043698号明細書(以下「刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、ドイツ語原文のa,uのウムラウトは、a,u,と代替表記し、βに似たエスツェットはsと代替表記し、当審で仮訳を作成した。
(1a)
Die Erfindung betrifft einen Seitenschweller einer Kraftwagenkarosserie mit einem aus wenigstens zwei Teilschalen zusammengesetzten Kastenprofil der im Oberbegriff des Patentanspruchs 1 angegebenen Art. ([0001])
「本発明は、特許請求の範囲1に申告されているような上位概念による最低でも二つのサイドシルのうちの一つを共に装備するボックスプロファイルをもつ自動車ボディのサイドシルである。」
(1b)
Bei dem Seitenschweller nach der Erfindung umfasst das Strukturteil ein faserverstarktes Kunststoffteil, welches zumindest an einer der Teilschalen des ersten Kastenprofils abgestutzt ist. ([0006])
「本発明に基づくサイドシルによる構造部分は、少なくとも第一のボックスプロファイルのサブシェルのどちらか一方に支持されている繊維補強されたプラスチック部品が包含される。」
(1c)
In Fig.1 ist in schematischer Schnittansicht entlang einer vertikal in Fahrzeughochrichtung verlaufenden Schnittebene ein Seitenschweller einer Kraftwagenkarosserie dargestellt, dessen Kastenprofil 10 eine ausere Teilschale 12 und eine innere Teilschale 14 aufweist. Die beiden Teilschalen 12, 14 bestehen im vorliegenden Ausfuhrungsbeispiel aus einem Metallblech, insbesondere aus einer Stahl- oder Aluminiumlegierung und sind uber jeweils eine Flanschverbindung 16 miteinander verbunden.
([0021]図1、図2)
「図1にある車両上下方向にある切り口面に垂直な状態に沿った切り口の概略図において、ボックスプロファイル10が外部のサブシェル12と内部のサブシェル14を持つ自動車ボディのサイドシルが示される。サブシェル12、14の双方は既に存在する実施例において板金、特にスチールもしくはアルミ合金からなり、フランジ接続16によりそれぞれが互いに接続される。」
(1d)
In Fig.2 ist in einem Querschnitt gemas Fig.1 eine alternative Ausfuhrungsform des Seitenschwellers dargestellt, bei der das faserverstarkte Kunststoffteil 22 auserhalb des Kastenprofils 10 angeordnet ist. Dabei ist das Kunststoffteil 22 an der auseren, in Fahrzeughochrichtung verlaufenden Bereitseite der auseren Teilschale 12 beispielsweise mittels einer Klebverbindung oder einer Schraubverbindung befestigt. Die ausere Teilschale 12 und das faserverstarkte Kunststoffteil 22 bilden somit ein weiteres Kastenprofil 30, welches ausenseitig des Kastenprofils 12 angeordnet ist.([0024]図2)
「図2には、図1の断面におけるサイドシルの繊維補強されたプラスチック部品22においてボックスプロファイル10の外部に配置されるという他の実施形態が示される。また、プラスチック部品22は外部においてサブシェル12の外部の車両上下方向にあるブロードサイドに接着接続もしくはネジによる接続等で固定される。外部のサブシェル12と繊維補強されたプラスチック部品22は、これによりボックスプロファイル12の外部側に配置される更なるボックスプロファイル30を形成する。」
(1e)
Im rechten Ausfuhrungsbeispiel gemas Fig.3 ist an der innenseitigen Breitseite der inneren Teilschale 14 das Kunststoffteil 22 flachig befestigt. Ausenseitig der Breitseite der auseren Teilschale 12 ist das Kunststoffteil 22 entsprechend der Ausfuhrungsform gemas Fig.2 festgelegt.([0025]図3)
「図3の右側にある実施例において、サブシェル14の内部の内側のブロードサイドにプラスチック部品22が面として固定されている。外部のサブシェル12のブロードサイドの外側にはプラスチック部品22が図2の範囲の実施形態に適切なように固定されている。」
(1f)
図2及び図3右図より、フランジ接続16によって相互に結合された2つのサブシェル12,14で構成されたボックスプロファイル10は断面形状が中空であること、また、上記(1d)及び図2より、2つのサブシェル12,14の一方のサブシェル12のみと、その外部表面のみで繊維補強されたプラスチック部品22が固定されていることが看て取れる。


以上の記載事項及び図面の記載を総合すると、刊行物には以下の発明が開示されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「自動車ボディのサイドシルは、ボックスプロファイル10を含み、ボックスプロファイル10は、2つのサブシェル12,14をもち、2つのサブシェル12,14は、フランジ接続16によって相互に接続されており、ボックスプロファイル10は断面形状が中空であり、2つのサブシェル12,14の一方のサブシェル12のみと、その外部表面のみで繊維補強されたプラスチック部品22が固定されている自動車ボディのサイドシル」

第3 対比・判断
(1)対比
ア.本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「自動車ボディのサイドシル」は、技術常識に照らし、自動車ボディの構造のうち、ドア下部の構造部材であることが明らかであり、「ボックスプロファイル10」を包含するものであるから、本願発明の「自動車のボディシェル」であって、「前記自動車の前記ボディシェルに割り当てられている、少なくとも1つのサポート部を含むサポート構造を備えるボディシェル」に相当するといえる。
イ.引用発明の「サイドシル」の「ボックスセクション10」は、「フランジ接続16によって相互に接続されて」いる「2つのサブシェル12,14」をもっており、「2つのサブシェル12,14の一方のサブシェル12にのみ、その外部表面のみで繊維補強されたプラスチック部品22が固定されている」ところ、引用発明の「繊維補強されたプラスチック部品22」は「ボックスセクション10」の「一方のサブシェル12」に固定され、「サイドシル」を強化する部品であることがその機能、構造からみて明らかであるから、本願発明の「サポート部」に「少なくとも部分的に」取り付けられた「少なくとも1つの」「強化部品」に相当し、引用発明の「ボックスプロファイル10」を構成する「2つのサブシェル12,14」は「フランジ接続16によって相互に接続されて」おり、接続により「中空の断面形状を形成」することが明らかであるから、本願発明の「接合フランジによって中空の断面形状を形成しながら相互に接続され」る「一方のハーフシェル」及び「2つ目のハーフシェル」に相当するといえる。そして、引用発明の「繊維補強されたプラスチック部品22」は、「一方のサブシェル12」の外部表面に固定されるものであるから、繊維補強されたプラスチック部品22と一方のサブシェル12とは、その外側表面で接触していることも明らかである。
そうすると、引用発明の「ボックスプロファイル10は、2つのサブシェル12,14をもち、2つのサブシェル12,14は、フランジ接続16によって相互に接続されており、ボックスプロファイル10は断面形状が中空であり、2つのサブシェル12,14の一方のサブシェル12のみと、その外部表面のみで繊維補強されたプラスチック部品22が固定されている自動車ボディのサイドシル」と本願発明の「前記サポート部(10,24)には、前記自動車の構造バリエーションに応じて、少なくとも部分的に、少なくとも1つの強化部品(22)が取り付けられ、前記サポート部(10,24)は、一方のハーフシェル(14)と2つ目のハーフシェル(16)とから形成されており、これらのハーフシェルは、それぞれの接合フランジ(18、20)によって中空の断面形状(12)を形成しながら相互に接続され、前記サポート部(10,24)に、時間的には前記サポート構造の製造後に前記強化部品(22)が取り付けられ、前記強化部品(22)は、一方のハーフシェル(14)または2つ目のハーフシェル(16)のいずれか一方のみと、その外側表面のみで接触するように取り付けられていることを特徴とするボディシェル。」とは、「前記サポート部には、少なくとも部分的に、少なくとも1つの強化部品が取り付けられ、前記サポート部は、一方のハーフシェルと2つ目のハーフシェルとから形成されており、これらのハーフシェルは、それぞれの接合フランジによって中空の断面形状を形成しながら相互に接続され、前記強化部品は、一方のハーフシェルまたは2つ目のハーフシェルのいずれか一方のみと、その外側表面のみで接触するように取り付けられているボディシェル」の構成の限度で共通するといえる。
ウ.以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、「自動車のボディシェルであり、前記自動車の前記ボディシェルに割り当てられている、少なくとも1つのサポート部を含むサポート構造を備えるボディシェルであって、前記サポート部には、少なくとも部分的に、少なくとも1つの強化部品が取り付けられ、前記サポート部は、一方のハーフシェルと2つ目のハーフシェルとから形成されており、これらのハーフシェルは、それぞれの接合フランジによって中空の断面形状を形成しながら相互に接続され、前記強化部品は、一方のハーフシェルまたは2つ目のハーフシェルのいずれか一方のみと、その外側表面のみで接触するように取り付けられているボディシェル」である点で一致し、以下の点で一応相違するものといえる。
【相違点1】
本願発明では、「自動車の構造バリエーションに応じて、」強化部品が取り付けられているのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。
【相違点2】
本願発明では、「前記サポート部(10,24)に、時間的には前記サポート構造の製造後に前記強化部品(22)が取り付けられ」ているのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。

(2)相違点についての判断
ア.相違点1について
刊行物1のFig.1ないしFig.3及び上記「第1 1(1d)(1e)」によれば、ボックスセクション10に固定される繊維補強されたプラスチック部品22は、その形状や取り付ける数等について様々な態様があることが理解できる。すなわち、引用発明において、繊維補強されたプラスチック部品22の自動車ボディのサイドシルへの適用態様には、様々な態様があることが理解できる。
そして、部材を補強する際には、補強の対象となる部材(自動車のボディ)の求められる性能、構造等に応じて補強する必要があることは明らかであるから、上記のとおり、引用発明においては繊維補強されたプラスチック部品に様々な態様あることを合わせみれば、引用発明において、ボックスセクションに繊維補強されたプラスチック部品を適用するに当たり、自動車の構造バリエーションを考慮することは当然に想定されているとみるべきである。
そうしてみると、相違点1は実質的な相違点ということはできない。
仮に、相違点であるとしても、上記のとおり、部材を補強する際には、補強の対象となる部材(自動車のボディ)の求められる性能、構造等に応じて補強する必要があることは明らかであるから、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
イ.相違点2について
本願発明は、自動車のボディシェルという「物の発明」であるから、発明の構成要件の解釈において、物の属性に影響しない経時的要素(製造工程)について考慮すべきではないと解される。その前提に立ち、本願発明の相違点2に係る構成についてみるならば、強化部品をサポート構造の製造前に取り付けたサポート部と、強化部品をサポート構造の製造後に取り付けたサポート部との間に物として異なる点は見出せないから、相違点2については実質的な相違点ということはできない。
仮に、相違点であるとしても、引用発明では、繊維補強されたプラスチック部品22は、サブシェル12の外側表面のみに取り付けられるものであり、サブシェル12,14同士を接続する前後のいずれかの時期に取り付けることができることは明らかであるから、接続する後、すなわち、ボックスプロファイル10の製造後に繊維補強されたプラスチック部品22を取り付けるように構成することは当業者が容易に想到し得ることといえる。
なお、審判請求人は平成27年9月2日に提出した意見書において、「刊行物1において繊維強化プラスチック22は、シェル部分12の外側表面と接触するようには配置されず(図2)」と主張している。
繊維強化されたプラスチック部品22がサブシェル12の外側表面と接触するように配置されていることは、上記(1)イで述べたとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。
仮に、請求人が、刊行物のFig.2のように繊維強化されたプラスチック部品22とサブシェル12の間に空間が存在するものは、「プラスチック部品22がサブシェル12の外側表面と接触する」構成から除外されるとの理解に立ってそのような主張をしているとしても、同刊行物のFig.3には、サブシェル12,14と繊維強化されたプラスチック部品22との間に空間を有しない構成が開示されているから、このような構成をも参考にして、(繊維強化されたプラスチック部品22とサブシェル12の間に空間が存在しないように)プラスチック部品22がサブシェル12の外側表面と接触するように配置することは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
いずれにしても、請求人の主張は採用できない。
ウ.そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、相違点1及び2が実質的な相違点ではないとすれば、本願発明は、引用発明と同一であり、相違点であるとした場合でも、本願発明は、引用発明及び刊行物に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-10 
結審通知日 2015-11-17 
審決日 2015-12-01 
出願番号 特願2012-542377(P2012-542377)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B62D)
P 1 8・ 113- WZ (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三澤 哲也  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 和田 雄二
櫻田 正紀
発明の名称 自動車のボディシェルの製造方法及び自動車用ボディシェル  
代理人 赤澤 日出夫  

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