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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01G |
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管理番号 | 1313409 |
審判番号 | 不服2014-14573 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-25 |
確定日 | 2016-04-13 |
事件の表示 | 特願2012- 95351「積層セラミックキャパシタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 4日出願公開、特開2013- 46052〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成24年4月19日(パリ条約による優先権主張 平成23年8月26日 韓国(KR))に特許出願をしたものであって、平成25年9月13日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月20日付けで手続補正がなされたが、平成26年3月17日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年7月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成27年4月15日付けの当審による拒絶理由の通知に対し、同年8月10日付けで手続補正がなされた。 2.本願発明 本願の請求項1ないし12に係る発明のうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年8月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 セラミック素体と、 重なる領域を有し、前記重なる領域が前記セラミック素体の一面に露出される引出部をそれぞれ有する第1及び第2の内部電極と、 前記セラミック素体の一面に形成され、前記引出部とそれぞれ連結される第1及び第2の外部電極と、 前記セラミック素体の一面に形成される絶縁層と、 を含み、 前記絶縁層は、前記セラミック素体の一面から測定される前記第1及び第2の外部電極の高さより低く形成され、 前記第1及び第2の内部電極の引出部の重なる領域が露出される前記セラミック素体の一面は第1及び第2の外部電極と前記絶縁層の組み合わせによって全体的に覆われる、積層セラミックキャパシタ。」 3.引用例 (1)平成27年4月15日付け拒絶理由通知で引用した特開2009-26872号公報(以下、「引用例」という。)には、「積層コンデンサ」について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0016】 本体11は、図4に示すように、同一平面に非接触で並ぶ2個の第1内部導体層15と、同一平面に非接触で並ぶ第1内部導体層と同数の第2内部導体層16とを、誘電体層DLを介して交互に積層して一体化した構造を有している。各第1内部導体層15と各第2内部導体層16はほぼ同サイズの矩形状を成し、同一平面に非接触で並ぶ2個の第1内部導体層15と同一平面に非接触で並ぶ2個の第2内部導体層16は誘電体層DLを介して積層方向で向き合っている。つまり、本体11には、誘電体層DLを介して積層方向で並ぶ第1,第2内部電極層15,16それぞれによって2個の独立コンデンサ部(符号無し)が長さ方向に間隔をおいて構成されている。 【0017】 各第1内部導体層15はその幅方向一側縁(図4の右側縁)と幅方向他側縁(図4の左側縁)にそれぞれ1個の引出部15aを有し、各第2内部導体層16はその幅方向一側縁(図4の右側縁)と幅方向他側縁(図4の左側縁)にそれぞれ1個の引出部15aを有している。各第1内部導体層15の引出部15aと各第2内部導体層16の引出部16aはほぼ同サイズの矩形状を成し、同一平面に非接触で並ぶ2個の第1内部導体層15の引出部15aの位置と同一平面に非接触で並ぶ2個の第2内部導体層16の引出部16aの位置は長さ方向で異なっている。 【0018】 図3に示すように、一方の独立コンデンサ部(図3の左側に構成されるコンデンサ部)を構成する各第1内部電極層15の一側縁(図3の上側縁)の引出部15aは本体11の一側面(図3の上側面)の最も左に位置する第1外部電極12に接続され、他側縁(図3の下側縁)の引出部15aは本体11の他側面(図3の下側面)の左から2番目に位置する第1外部電極12に接続されている。また、一方の独立コンデンサ部(図3の左側に構成されるコンデンサ部)を構成する各第2内部電極層16の一側縁(図3の上側縁)の引出部16aは本体11の一側面(図3の上側面)の左から2番目に位置する第2外部電極13に接続され、他側縁(図3の下側縁)の引出部16aは本体11の他側面(図3の下側面)の最も左に位置する第2外部電極13に接続されている。」 イ.「【0023】 各絶縁被覆部14は絶縁性材料から成り、図2及び図3に示すように、各独立コンデンサ部を構成する第1,第2内部導体層15,16の引出部15a,16aの端縁が部分的に露出する本体11の両側面の第1,第2外部電極12,13の間に帯状に設けられていて、該端縁露出部分はそれぞれ絶縁被覆部14によって覆い隠されている。また、各絶縁被覆部14の厚さは第1,第2外部電極12,13の厚さよりも小さい。 【0024】 各絶縁被覆部14は本体11を構成する誘電体層DLと同じ材料とすることが好ましく、例えば誘電体層DLがチタン酸バリウム系誘電体材料から成る場合には各絶縁被覆部14もこれと同一組成のチタン酸バリウム系誘電体材料とすることが好ましい。各絶縁被覆部14の材料を本体11を構成する誘電体層DLと同じ材料とすれば、積層,圧着後の未焼成本体11の両側面に誘電体層DLと同じセラミックスラリーを用いて未焼成絶縁被覆部14を形成したものを同時焼成して絶縁被覆部14が一体化された本体11を得ることができる。」 ウ.「【0033】 [第3実施形態] 図7及び図8は本発明(積層コンデンサ)の第3実施形態を示すもので、図7は図2に対応する積層コンデンサの左側面図、図8は図7に示した積層コンデンサの図3に対応する横断面図である。 【0034】 この積層コンデンサ10-2が前述の積層コンデンサ10と異なるところは、各独立コンデンサ部を構成する第1,第2内部導体層15,16の引出部15a2,16a2の幅Wb2,Wc2を前述の積層コンデンサ10の引出部15a,16aの幅Wb,Wcよりも拡大し全て同じ値とした点と、各独立コンデンサ部を構成する第1,第2内部導体層15,16の引出部15a1,16a1の内側縁間隔b1,b2を全て等しい値で零よりも大きくし、且つ、両引出部15a1,16a1が積層方向で部分的に向き合うようにした点にある。他の構成は前述の積層コンデンサ10と同じであるためその説明を省略する。 【0035】 この積層コンデンサ10-2にあっては、各独立コンデンサ部を構成する第1,第2内部導体層15,16の引出部15a2,16a2の内側縁間隔b1,b2を零よりも大きくし、且つ、両引出部15a1,16a1が積層方向で部分的に向き合うようにすることによって、一方極性の引出部15a2から他方極性の引出部16a2への電流経路の長さをより一層短くして該電流経路で生じ得るインダクタンスをより低下させることができ、しかも、一方極性の引出部15a2と他方極性の引出部16a2をより一層近づけて該引出部15a2,16a2に逆向きに流れる電流により得られる磁界相殺作用をより効果的に行うことができ、これにより積層コンデンサ10-2のESLをより一層低減することができる。他の作用効果は前述の積層コンデンサ10と同じであるためその説明を省略する。」 上記アないしウの記載事項、及び図面から以下のことがいえる。 ・上記ア、図4及び図8によれば、本体11は、第1内部導体層15と第2内部導体層16とを誘電体層DLを介して交互に積層して一体化した構造を有している。ここで、上記イによれば、誘電体層DLはセラミックからなるものである。 ・上記ア、図3及び図8によれば、第1内部導体層15と第2内部導体層16は、一側縁に引出部15a、15bを有し、この引出部15a、15bが本体11の一側面で露出し、第1外部電極12、第2外部電極13に接続される。 ・上記イ、図3及び図8によれば、一側面に形成された第1、第2外部電極12、13の間(第1、第2内部導体層15、16の引出部15a、15bが第1、第2外部電極12、13で覆われていない部分)に絶縁被覆部14が形成され、絶縁被覆部14の厚さは第1、第2外部電極12、13の厚さよりも小さくなっている。 ・上記ウ、図8によれば、内部導体層15、16の引出部15a2、16a2は、積層方向で部分的に向き合うようにしたものである。 そうすると、引用例(図7、図8に係る第3実施形態)には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「第1内部導体層15と第2内部導体層16とをセラミックからなる誘電体層DLを介して交互に積層して一体化した本体11と、 積層方向で部分的に向き合い、前記本体11の一側面に露出される引出部15a、15bをそれぞれ有する第1及び第2内部導体層15、16と、 前記本体11一側面に形成され、前記引出部15a、15bとそれぞれ接続される第1及び第2外部電極12、13と、 前記本体11の一側面に形成される絶縁被覆部14と、 を含み、 前記絶縁被覆部14は、前記本体11の一側面に形成された前記第1及び第2外部電極12、13よりも厚さが小さく形成され、 前記第1及び第2内部導体層15、16の引出部15a、15bが第1、第2外部電極12、13と前記絶縁被覆部14の組み合わせによって覆われている、積層コンデンサ。」 (2)平成27年7月21日付け手続補正における補正事項に対して、新たに引用する特開2009-54973号公報(以下、「引用例2」という。)には、「積層コンデンサおよびコンデンサ実装基板」について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 エ.「【0024】 積層体1は、矩形状の複数の誘電体層2a、2bを、例えば、70層?600層積層することによって形成された略直方体状の誘電体ブロックである。 【0025】 誘電体層2a、2bは、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム等を主成分とする誘電体材料によって1層あたり1μm?3μmの厚みに形成されている。 【0026】 積層体1の内部には、誘電体層2bを挟んで互いに対向するように交互に第1の内部電極3および第2の内部電極4が複数配置されており、対向領域の容量部では静電容量が形成される。なお、誘電体層2bは静電容量を形成する有効層として機能し、内部電極3、4により挟まれない誘電体層2aは保護層として積層体1の主面側にそれぞれ配置されている。 【0027】 この内部電極3、4は、例えば、ニッケル、銅、ニッケル-銅、銀-パラジウム等の金属を主成分とする導体材料によって、例えば0.5μm?2μmの厚みに形成されている。また内部電極3、4は矩形状とされ、内部電極の3つの端面は、積層体1の側面から離れており、積層体1の一方側側面は、内部電極3、4の1つの端面5、6が露出している。尚、図1(b)では、一部のみ誘電体層2a、2bを一点鎖線で記載し、一部のみ内部電極3、4の露出端面を破線で記載した。 【0028】 また第1の内部電極3および第2の内部電極4の一つの端面5、6は、それぞれ積層体1の一方側の側面に露出して、それぞれ積層体1の側面で複数の第1の端子電極7および第2の端子電極8と電気的に接続され、第1の内部電極3には、第2の端子電極8と所定の間隔をあけるように(接続しないように)第1内部電極凹部11が形成され、第2の内部電極4には、第1の端子電極と所定の間隔をあけるように(接続しないように)第2内部電極凹部12が形成されており、第1の端子電極7と第2の端子電極8との間に位置する積層体1の一方側側面には電極絶縁層13が形成され、内部電極3、4の端面5、6が被覆されている。また、電極絶縁層13は、積層体1の一方側側面の両端部にも形成されている。」 上記エ、図1によれば、引用例2には、「第1の内部電極3および第2の内部電極4は積層体1の一方側側面で露出し、該一方側側面を端から順に、電極絶縁層13、第2の端子電極8、電極絶縁層13、第1の端子電極7、電極絶縁層13で覆う」技術事項が記載されている。 4.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「本体11」は、セラミックからなる誘電体層DLを積層したものである。よって、引用発明の「第1内部導体層15と第2内部導体層16とをセラミックからなる誘電体層DLを介して交互に積層して一体化した本体11」は、本願発明の「セラミック素体」を含むものである。 b.引用発明の「本体11の一側面」は、本願発明の「セラミック素体の一面」に相当する。また、引出部について、引用発明の「積層方向で部分的に向き合い」とは、積層方向の上から見て重なる部分を有することであるから、本願発明の「重なる領域を有する」ことに相当する。よって、引用発明の「積層方向で部分的に向き合い、前記本体11の一側面に露出される引出部15a、15bをそれぞれ有する第1及び第2内部導体層15、16」は、本願発明の「重なる領域を有し、前記重なる領域が前記セラミック素体の一面に露出される引出部をそれぞれ有する第1及び第2の内部電極」に相当する。 c.引用発明の「前記本体11一側面に形成され、前記引出部15a、15bとそれぞれ接続される第1及び第2外部電極12、13」は、本願発明の「前記セラミック素体の一面に形成され、前記引出部とそれぞれ連結される第1及び第2の外部電極」に相当する。 d.引用発明の「前記本体11の一側面に形成される絶縁被覆部14」は、本願発明の「前記セラミック素体の一面に形成される絶縁層」に相当する。 e.引用発明の「前記絶縁被覆部14は、前記本体11の一側面に形成された前記第1及び第2外部電極12、13よりも厚さが小さく形成される」は、本願発明の「前記絶縁層は、前記セラミック素体の一面から測定される前記第1及び第2の外部電極の高さより低く形成され」に相当する。 f.引用発明は、本体11の一側面に第1及び第2外部電極12、13、及び当該電極間に絶縁被覆部14を形成していることは記載されているが、本体11の「一側面全体」が第1及び第2外部電極12、13と絶縁被覆部14によって覆われている特定はされていない。 g.引用発明の「積層コンデンサ」は、本願発明の「積層セラミックキャパシタ」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「セラミック素体と、 重なる領域を有し、前記重なる領域が前記セラミック素体の一面に露出される引出部をそれぞれ有する第1及び第2の内部電極と、 前記セラミック素体の一面に形成され、前記引出部とそれぞれ連結される第1及び第2の外部電極と、 前記セラミック素体の一面に形成される絶縁層と、 を含み、 前記絶縁層は、前記セラミック素体の一面から測定される前記第1及び第2の外部電極の高さより低く形成され、 前記セラミック素体の一面には第1及び第2の外部電極と前記絶縁層が形成されている、積層セラミックキャパシタ。」 <相違点> 本願発明は、「前記第1及び第2の内部電極の引出部の重なる領域が露出される前記セラミック素体の一面は第1及び第2の外部電極と前記絶縁層の組み合わせによって全体的に覆われる」のに対して、引用発明は、セラミック素体の一面に第1及び第2の外部電極と絶縁層が形成されているが、これらで一面全体を覆うことまで特定されていない。 そこで、上記相違点について検討する。 引用発明は、本願発明と同様に、セラミック素体の一面から「露出する内部電極の引出部」を外部電極および絶縁層で覆っているものであって、この点において両者に相違は認められない。よって、引用発明は、セラミック素体の一面の「内部電極の引出部が露出しない部分をも覆っている」事項が特定されていない点で、本願発明と実質的に相違するものである。 しかしながら、例えば引用例2(上記「3.(2)」を参照。ここで、引用例2の「積層体1の一方側側面」、「第1の端子電極7」、「第2の端子電極8」、「電極絶縁層13」は、それぞれ本願発明の「セラミック素体の一面」、「第1の外部電極」、「第2の外部電極」、「絶縁層」に相当する。)には、セラミック素体の一面の両端(内部電極の引出部が露出していない部分)も絶縁層で覆っていることが記載されているように、内部電極の引出部が露出していない部分をも絶縁層で覆うようにすることは、当業者であれば適宜行い得る事項である。 よって、引用発明の内部電極の引出部の重なる領域が露出される一面に、引用例2の技術事項を適用して相違点の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本願発明は、引用発明および引用例2に記載された技術事項により当業者が容易になし得たものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明および引用例2に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-11-10 |
結審通知日 | 2015-11-17 |
審決日 | 2015-11-30 |
出願番号 | 特願2012-95351(P2012-95351) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小池 秀介 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
井上 信一 酒井 朋広 |
発明の名称 | 積層セラミックキャパシタ |
代理人 | 加藤 公延 |