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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1313414
審判番号 不服2014-16437  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-20 
確定日 2016-04-15 
事件の表示 特願2011-518960「骨関節炎を処置するための組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月21日国際公開、WO2010/009474、平成23年11月24日国内公表、特表2011-528668〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成21(2009)年7月20日(パリ条約による優先権主張 2008年7月18日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月21日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月20日付けで手続補正書が提出されたが、平成26年4月17日付けで拒絶査定がされたところ、平成26年年8月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成26年2月20日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明は、次のとおりである(以下、「本願発明」という。)。
「下記のものを含む組成物:
a)少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸、
b)少なくとも1種類のグリコサミノグリカン、
c)ガラクトサミン、グルコサミン、シアル酸およびN-アセチルグルコサミンからなる群から選択される、少なくとも1種類のアミノ糖、
d)少なくとも1種類の抗酸化剤、および
e)カルニチンまたはアセチルカルニチン。」(本願発明)


第3 引用例・引用発明

(1)引用例1
原査定の拒絶理由で引用文献1として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-53569号公報(以下、「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている(下線は当審合議体による。)。

(摘記1-1)
「【請求項1】 (a)L-カルニチンまたはアルカノイル-L-カルニチン(アルカノイルは2-8、好ましくは2-6の炭素原子を有する直鎖または分枝の基である)またはこれらの薬理学的に許容される塩、(b)グルコサミノグリカンおよび/またはグルコサミノグリカンの構成成分、(c)薬理学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項2】 (a):(b)の重量比が1:1から1:100の範囲にある、請求項1の組成物。
【請求項3】 グルコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸、ジャルロン酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸およびヘパラン硫酸よりなる群から選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項4】 グルコサミノグリカンの構成成分がグルコサミン、グルコサミン硫酸、N-アセチルグルコサミン、ガラクトサミンおよびN-アセチルガラクトサミンよりなる群から選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項5】 コンドロイチン硫酸がコンドロイチン-4-硫酸およびコンドロイチン-6-硫酸よりなる群から選ばれる、請求項3の組成物。
【請求項6】 L-カルニチン、コンドロイチン硫酸およびグルコサミンを含む、請求項1-5の組成物。
【請求項7】 L-カルニチン:コンドロイチン硫酸:グルコサミンの重量比が1:1:1から1:10:10の範囲にある、請求項6の組成物。
【請求項8】 アルカノイル-L-カルニチンがアセチル-L-カルニチン、プロピオニル-L-カルニチン、ブチリル-L-カルニチン、バレリル-L-カルニチンおよびイソバレリル-L-カルニチンよりなる群から選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項9】 L-カルニチンまたはアルカノイル-L-カルニチンの薬理学的に許容される塩が、塩化物、臭化物、ヨウ化物、アスパラギン酸塩、酸性アスパラギン酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、フマル酸塩、酸性フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルコースリン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酸性マレイン酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、酸性シュウ酸塩、硫酸塩、酸性硫酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびメタンスルホン酸よりなる群から選ばれる、請求項1-8の組成物。
【請求項10】 さらにビタミン、補酵素、無機質および抗酸化剤を含む、請求項1-9の組成物。」(特許請求の範囲の請求項1?10)

(摘記1-2)
「本発明は、関節障害の予防および治療の両方に適した組成物に関する。この組成物は、食物または栄養物の補助物または厳密な意味での薬剤としての形態をもち、その活性を発揮する。この形態および活性は、使用する特定の個人によって、また下記に明らかにされる理由によって、異なってくる。」(段落0001)

(摘記1-3)
「【発明が解決しようとする課題】したがって、症候が最初に現れた時に、あるいはもっと早く、平均的にこの症候が現れやすくなった年齢に患者が達した時に、毒性および副作用が実質的になく、安全に用いられる予防的/治療的薬剤に対して多大の要求がある。予防的および治療的処置の目的は、症候が現れるのを遅らせることと疾患の進行を抑制することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この2つの目的-予防的と厳密に治療的-は、本発明の組成物により達成される。下記するように、本発明は、基本的成分としてL-カルニチンまたはC2-C6の低級アルカノイル-L-カルニチンとグルコサミノグリカンおよび/またはグルコサミノグリカン構成成分とを含む新規組成物からなる。
【0007】本組成物は、予想外の、かつ驚くべき抗炎症性および軟骨保護の作用を特徴とする。この性質の結果として、本新規組成物は、関節組織の代謝的機能障害に主に関する炎症性または変性関節障害の予防的または治療的処置に有効に用いられる。障害は内因的あるいは外傷や薬剤による外因的のいずれの原因でも起こり得る。本新規組成物はヒトまたは動物の両方に有効に用いられる。」(段落0005?0007)

(摘記1-4)
「II型コラーゲン関節炎試験
トレンタン等の記載した方法 (Trenthan D. R., Townes A. S., Kang A. H.,J. Exp. Med., 146, 857, 1977) によりII型コラーゲン関節炎を誘発した。完全フロインドアジュバント(Difco Labs., Detroit, U.S.A.)に乳化した天然コラーゲンをマウスの尾基部に皮内注射して、1群のマウスを免疫した。3週間後、マウスに同量の乳化コラーゲンを腹腔内投与した。コラーゲン投与1日後から6週間末までL-カルニチン(50mg/kgおよび10mg/kg)、グルコサミン(100mg/kgおよび200mg/kg)およびコンドロイチン硫酸(50mg/kgおよび100mg/kg)を単独または併用して注射した。1群のマウス(対照)は処置しなかった。浮腫強度の測定は1から4までの点数によって行った。この試験結果によると、L-カルニチン、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸のいずれもが単独投与では関節炎の典型的徴候に対して阻害作用を有さなかったが、その併用で高い効果を示した。L-カルニチンをグルコサミンまたはコンドロイチン硫酸のいずれかと併用したときは、関節炎の約50%の減少が認められた。
【0031】L-カルニチンとグルコサミンおよびコンドロイチン硫酸の両方との併用では、関節炎徴候の減少はほぼ90-100%に達し、処置マウスの大部分で関節炎の徴候が見られなかった。」(段落0030?0031)

(摘記1-5)
「【0034】カラゲニン浮腫試験
ラットの右足裏に1%カラゲニン溶液(Sigma Chemical) 0.1mlを注射して、カラゲニン浮腫を誘発せしめた。足の容積をカラゲニン注1時間後および5時間以上後に水銀プレチスモグラフによって測定した。L-カルニチン、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸を50、100および200mg/kgの用量で単独および併用して、カラゲニン注の1時間前に投与した。この試験においても程度は低かったが、L-カルニチン、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸は単独でカラゲニン誘発浮腫を改善しなかったのに対し、併用では浮腫に50%近くの顕著な減少(表1参照)が特に観察の最初の数時間でもたらされた。
【0035】上記の結果は、各化合物の単独投与では実験的誘発関節炎および炎症形態に対して阻害作用がないことからして、驚くべきかつ予測できないことである。一方、阻害作用は化合物が併用されたときに明白である。最も大きい効果は、L-カルニチン、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸の同時投与により得られる。有意な結果は、L-カルニチンとグルコサミンの併用およびL-カルニチンとコンドロイチン硫酸の併用においても認められる。
【0036】L-カルニチン、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸の組み合せについての予測されなかった薬理学的作用からして、機械的ストレス関連の骨関節症および炎症状態関連あるいは加齢による骨関節症の処置にこの組み合せが効果的に用いられる。この組み合せによる処置は、その効力、良好な耐容性および低い毒性からして、望ましくない副作用および毒性反応の高い危険性のあるNSAIDよりも、特に長期間の処置において好ましいものである。」(段落0034?0036)

(摘記1-6)
「【表1】
表1
ラットにおけるカルニチン、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸の単独または併用の、カラゲニン誘発浮腫に対する効果 _
物質 用量 カラゲニン注後の種々の時間における
浮腫減少%
mg/kg 1 2 3 4

L-カルニチン 100 - - - -
L-カルニチン 200 - 10±0.2 5±0.3 -

グルコサミン 100 - 5±0.3 5±0.5 5±0.6
グルコサミン 200 5±0.2 10±0.9 10±1.1 5±0.5

コンドロイチン硫酸 100 10±0.3 10±0.8 5±0.4 5±0.1
コンドロイチン硫酸 200 10±1.9 15±1.1 20±1.8 10±1.2

L-カルニチン 100
+グルコサミン 100
+コンドロイチン硫酸100 25±1.9 30±2.1 30±2.7 25±2.4

L-カルニチン 200
+グルコサミン 200
+コンドロイチン硫酸200 20±2.1 35±2.9 46±3.5 40±3.1
」(段落0037)


上記の摘記1-1において、請求項10に記載された発明のうち特に請求項1及び6を引用する発明について、引用形式を使わずに書き下すと、次に示すとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

引用発明:
「(a)L-カルニチンまたはアルカノイル-L-カルニチン(アルカノイルは2-8、好ましくは2-6の炭素原子を有する直鎖または分枝の基である)またはこれらの薬理学的に許容される塩、(b)グルコサミノグリカンおよび/またはグルコサミノグリカンの構成成分、(c)薬理学的に許容される賦形剤を含む組成物であって、
L-カルニチン、コンドロイチン硫酸およびをグルコサミンを含み、
さらに、ビタミン、補酵素、無機質および抗酸化剤を含む組成物。」


(2)引用例2
原査定の拒絶理由で引用文献4として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2007/002837号(以下、「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている(なお、原文は英語であるため、当該引用例2に対応した日本国出願の公表公報である特表2009-500337号公報の記載を日本語翻訳として併せて示す。丸括弧内の摘記箇所は、引用例2の記載箇所、特表2009-500337号公報の記載箇所の順で示してある。また、下線は当審合議体による。)。

(摘記2-1)
「 1. A composition comprising one or more omega-3 fatty acids, one or more sulfur containing amino acids, and manganese in amounts sufficient for preventing or treating inflammatory disease in a patient.」
「【請求項1】
1種以上のω-3脂肪酸、1種以上の硫黄含有アミノ酸、およびマンガンを患者の炎症性疾患の予防または治療に十分な量で含む組成物。」(第22ページClaim1、第2ページ請求項1)

(摘記2-2)
「Field of the Invention
[0002] This invention relates generally to compositions and methods for combating inflammatory disease and particularly to the use of food compositions for preventing and treating inflammatory disease.
Description of the Prior Art
[0003] Polyunsaturated fatty acids (PUFAs) are compounds reported to be beneficial for treatment of inflammation-related disorders such as arthritis. Omega-3 fatty acids are one type of PUFA that contain more than one double bond. They are called omega-3 fatty acids because the first double bond counting from the methyl end of the fatty acid is located at the third carbon atom.」
「 発明の属する分野
本発明は一般に、炎症性疾患にうち勝つための組成物および方法、特に、炎症性疾患を予防または治療するための食物組成物の使用に関する。
【0002】
従来技術の説明
多不飽和脂肪酸(PUFA)は、関節炎のような炎症関連疾患の治療に有益であると報告されている化合物である。ω-3脂肪酸は、2つ以上の二重結合を含むPUFAの1つの種類である。脂肪酸のメチル末端から数えて最初の二重結合が第3炭素原子に位置しているので、それらはω-3脂肪酸と呼ばれる。」(段落0002?0003、段落0001?0002)

(摘記2-3)
「[0005] Omega-3 fatty acids are known to have a wide range of nutritional and health benefits such as reducing inflammation and treating inflammation-related disorders. Omega-3 fatty acids are thought to be important in arthritis, brain function, visual acuity, and normal growth and development. Omega-3 fatty acids have also been reported to act as anti-inflammatory compounds. They are believed to competitively inhibit the conversion of arachidonic acid to pro-inflammatory eicosanoids. Omega-3 fatty acids are also precursors to the synthesis of prostaglandins that regulate inflammation in mammals.」
「 ω-3脂肪酸は、炎症を緩和したり、炎症関連疾患を治療するような広範囲の栄養的および健康的有益性を有することが知られている。ω-3脂肪酸は関節炎、能機能、視力、並びに正常な成長および発育に重要であると考えられている。ω-3脂肪酸はまた、抗炎症性化合物として働くと報告されている。それらはアラキドン酸の前炎症性エイコサノイドへの変換を拮抗阻害すると考えられている。ω-3脂肪酸はまた、哺乳動物における炎症を調節するプロスタグランジンの合成の先駆体でもある。」(段落0005、段落0004)

(摘記2-4)
「[0006] Rheumatism and arthritis are general terms for acute and chronic conditions characterized by inflammation and pain. Rheumatism is a general category of conditions characterized by inflammation and pain in muscles and joints, including arthritis. Arthritis is characterized by inflammation of joints that causes swelling and pain. Types of arthritis include osteoarthritis, rheumatoid arthritis, ankylosing spondylitis (AS), and systemic lupus erythematosus (SLE). Rheumatic conditions include infectious arthritis, rheumatoid arthritis, arthritis due to rheumatic fever, arthritis due to trauma or degenerative joint disease, myositis, neurogenic arthropathy, bursitis, fibromyositis and hydroarthrosis. The cause of such diseases in not always folly understood but may be the result of other degenerative diseases, trauma, or auto-immune diseases such as SLE. Inflammation also occurs as a defensive response to host invasion by foreign agents and mechanical trauma that results in an immune response, e.g., microbial agents such as bacterial and viruses, toxins, and neoplasia.
[0007] What these diseases and conditions, both examples of inflammatory diseases, share in common is inflammation and the resulting pain. Prior methods for preventing and treating inflammatory diseases have generally focused on pain-killing and anti-inflammatory drugs. Typical methods have focused on oral medications such as steroidal cortisone derivatives and numerous nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs). Unfortunately, these drugs almost always exhibit undesirable side effects. Other efforts have focused on joint implants such as the knee or hip implants. These methods are lengthy and complicated surgical procedures that force the patient to undergo costly invasive surgery and a significant recovery period requiring a rigorous and costly regimen of physical therapy. There is, therefore, a need for new methods for preventing and treating inflammatory diseases that avoids the undesirable side effects and costly surgical procedures characteristic of previous methods for preventing and treating inflammatory diseases.

SUMMARY OF THE INVENTION
[0008] It is, therefore, an object of the present invention to provide compositions and methods for preventing and treating inflammatory disease.」
「リウマチおよび関節炎は、炎症および痛みを特徴とする急性および慢性症状に対する一般的な用語である。リウマチは、筋肉および関節における炎症および痛みを特徴とする症状の一般的な種類であり、関節炎を含む。関節炎は、腫れおよび痛みを引き起こす関節の炎症を特徴とする。関節炎の種類には、変形性関節炎、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎(AS)、および全身性エリトマトーデス(SLE)が含まれる。リウマチの状態には、感染性関節炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱による関節炎、外傷または変形性関節症による関節炎、神経性関節症、滑液包炎、線維筋炎、および水関節症(hydroarthrosisi)が含まれる。そのような病気の原因は必ずしも完全にわかっていないが、他の変性症、外傷、またはSLEのような自己免疫疾患の結果かもしれない。炎症は、免疫反応が生じる外から侵入してきた病原物質および機械的外傷、例えばバクテリアおよびウイルスのような微生物病原物質、毒素、および新形成による宿主侵略に対する防御反応としても生じる。
【0006】
いずれも炎症性疾患の例であるこれらの病気および状態に共通することは、炎症および結果として生じる痛みである。炎症性疾患を予防および治療する従来の方法は、一般に鎮痛および抗炎症薬に集中していた。一般的な方法はステロイド系コルチゾン誘導体および多数の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)のような経口薬剤に集中していた。都合の悪いことには、これらの薬剤はほとんど常に望ましくない副作用を示す。他の努力は膝または股関節インプラントのような関節インプラントに集中していた。これらの方法は、厳しくかつ費用のかかる身体的治療を必要とする高価な手術およびかなりの回復期間を患者に余儀なくさせる長くかつ複雑な外科的方法である。従って、従来の炎症性疾患の予防および治療法に特有な望ましくない副作用および費用のかかる手術を避ける新しい炎症性疾患の予防および治療法が望まれている。
発明の概要
従って、本発明の目的は、炎症性疾患を予防および治療する組成物および方法を提供することである。」(段落0006?0008、段落0005?0006)

(摘記2-5)
「[0022] In one aspect, the present invention provides a composition for preventing and treating inflammatory disease. The composition comprises one or more omega-3 fatty acids, one or more sulfur containing amino acids, and manganese in amounts sufficient for preventing or treating inflammatory disease. The invention is based upon the novel discovery that the inflammatory response can be altered by administering the composition to a patient and that altering inflammatory response with the composition can prevent or treat inflammatory disease. Without being bound by theory, it is believed that composition is effective in preventing and treating inflammatory disease because it reduces the amount of proinflammatory mediators in a patient.」
「1つの側面では、本発明は、炎症性疾患を予防および治療するための組成物を提供する。組成物は、炎症性疾患を予防および治療するのに十分な量の1種以上のω-3脂肪酸、1種以上の硫黄含有アミノ酸、およびマンガンを含む。本発明は、炎症反応が組成物を患者へ投与することによって変えられること、および組成物で炎症反応を変えることが炎症性疾患の予防または治療を可能にすることを新たに発見したことに基づく。理論に結び付けるものではないが、組成物は、患者における前駆炎症仲介物の量を減じるので、炎症性疾患の予防および治療に効果的であると考えられる。」(段落0022、段落0015)


第4 対比
前記「第3 引用例・引用発明」で示した引用発明について、摘記1-1の請求項3と4の記載を考慮しつつ当該引用発明に係る組成物の成分を整理すると、次に示すとおりの発明であるといえる。

「(a)L-カルニチン、(b)コンドロイチン硫酸およびグルコサミン、(c)薬理学的に許容される賦形剤を含む組成物であって、
さらに、ビタミン、補酵素、無機質および抗酸化剤を含む組成物。」

このことを踏まえて、本願発明と引用例1に記載された引用発明とを対比する。
引用発明における「L-カルニチン」はカルニチンの一種であるから、本願発明の成分「e)カルニチンまたはアセチルカルニチン」に相当する。
また、引用発明の「コンドロイチン硫酸」は、引用例1の摘記1-1(請求項3)及び本願明細書の段落0074においてグリコサミノグリカンの一種として記載されているので、本願発明の成分「b)少なくとも1種類のグリコサミノグリカン」に相当する。
また、引用発明の「グルコサミン」は、本願発明の成分「c)ガラクトサミン、グルコサミン、シアル酸およびN-アセチルグルコサミンからなる群から選択される、少なくとも1種類のアミノ糖」に相当する。
また、引用発明の「抗酸化剤」は、本願発明の成分「d)少なくとも1種類の抗酸化剤」に相当する。
そして、引用発明が薬理学的に許容される賦形剤、ビタミン、補酵素及び無機質を含む点については、本願発明に係る「組成物」もa)ないしe)の成分以外の成分を含むことを除外する規定となっていないため、相違点にはならない。
これらのことから、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

一致点:
「下記のものを含む組成物:
b)少なくとも1種類のグリコサミノグリカン、
c)ガラクトサミン、グルコサミン、シアル酸およびN-アセチルグルコサミンからなる群から選択される、少なくとも1種類のアミノ糖、
d)少なくとも1種類の抗酸化剤、および
e)カルニチンまたはアセチルカルニチン。」

相違点:
本願発明は、成分として「少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸」を含むのに対し、引用発明ではそのようなものを含むとの特定がない点


第5 当審の判断

引用例1は、摘記1-2及び1-3に基づくと、関節障害、特に関節組織の代謝的機能障害に主に関する炎症性または変性関節障害の予防および治療に適した組成物であって、毒性および副作用が実質的にない安全な組成物を提供することを課題とするものである。そして、実際に摘記1-4ないし1-6によれば、実験動物を用いてL-カルニチンとグルコサミン及びコンドロイチン硫酸の併用による炎症の抑制効果が確認されたことが示されている。

ここで、引用例2は、摘記2-2によれば、炎症性疾患にうち勝つための組成物、特に炎症性疾患を予防又は治療するための食物組成物の使用に関する文献であるところ、摘記2-4によれば、ここでいう炎症性疾患とは、例えばリウマチおよび関節炎であり、従来の炎症性疾患の予防および治療法に特有な望ましくない副作用および費用のかかる手術を避ける新しい炎症性疾患の予防および治療方法を提供することを課題とする文献であると理解できる。このような課題に基づき、引用例2の摘記2-1及び2-5には、1種類以上のω-3脂肪酸、1種類以上の硫黄含有アミノ酸、およびマンガンを含む組成物が記載されている。ここでいう「ω-3脂肪酸」とは、本願発明における「オメガ-3脂肪酸」と同じものであることは明らかである。そして特に、摘記2-3によれば、ω-3脂肪酸は炎症を緩和したり、炎症関連疾患を治療する効果があることから関節炎において重要であるという示唆もなされている。

引用例2におけるリウマチや関節炎はいずれも炎症性の関節障害の一つであることを考慮すると、引用例1と引用例2とは、いずれも、炎症性の関節障害を予防又は治療するための組成物であって、副作用のない組成物を提供するという点で、技術分野も課題も共通するものである。また両者とも、食物として提供されることを前提とした組成物である(摘記1-2、摘記2-2)。これらのことを勘案すると、引用発明に係る組成物において、炎症性の関節障害に対してより予防及び治療効果の高い組成物となることを期待して、引用例2に記載された組成物の成分、すなわち1種類以上のω-3脂肪酸、1種類以上の硫黄含有アミノ酸、およびマンガンを追加することは、当業者であれば容易に想到することである。
ところで、引用例2に記載されたω-3脂肪酸以外の成分である硫黄含有アミノ酸とマンガンについて検討する。本願発明に係る組成物は、本願明細書段落0077から0078の記載並びに本願請求項5、6及び7の記載に基づくと、食物無機質としてマンガン等及び必須アミノ酸として対象に応じてメチオニンやタウリン等を含むことが本来想定された組成物であると認められる。また本願発明の記載自体をみても、a)ないしe)の各成分を「含む」と記載されているため、他の成分を含むことを排除するものではないと解される。したがって、引用例2に記載された硫黄含有アミノ酸とマンガンについては、本願発明との間で新たな相違点となるものではない。

本願発明が奏する効果についても検討する。引用例1と2のいずれの組成物も、炎症性の関節障害に対して予防及び治療効果を有するものであるから、本願発明に係る組成物が有する関節炎に対する治療効果については当業者が予測できる範囲内である。また、本願発明に係る組成物が、関節炎遺伝子マーカーの発現を変動させるものである点についても、関節炎を治療できるという効果からみて、当業者に自明の事項であるから、格別に顕著なものとはいえない。

以上検討したところによれば、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。


第7 まとめ

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-19 
結審通知日 2015-11-20 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2011-518960(P2011-518960)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 前田 佳与子
佐久 敬
発明の名称 骨関節炎を処置するための組成物および方法  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 辻本 典子  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  

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