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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1313434
審判番号 不服2014-25918  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-18 
確定日 2016-04-13 
事件の表示 特願2013-517425「表面の色及び他の特性を測定する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日国際公開、WO2011/154617、平成25年 8月15日国内公表、特表2013-532290〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2011年(平成23年)7月8日(パリ条約による優先権主張2010年7月9日、フィンランド国)を国際出願日とする国際特許出願であって、平成26年3月25日付けで拒絶理由が通知され、この通知に対して同年8月1日に意見書が提出されるとともに同日に手続補正がなされたが、これに対し、平成26年8月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月18日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、それと同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年12月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成26年12月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲、すなわち平成26年8月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、補正後の特許請求の範囲の請求項1のものに補正する事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

(補正前)
「【請求項1】
表面の特性を測定する装置であって、
少なくとも2つの異なる波長及び少なくとも2つの異なる照射角度を用いて、測定される被測定面に照射光を向けるように配置された、照射光を生成する手段と、
前記被測定面の画像を生成するために、前記表面からの反射光又は散乱光を検出器に向ける手段と、を備える装置において、
該装置がさらに、少なくとも1つの参照面であって、前記照射光は前記被測定面及び該参照面の双方に向けられ、かつ前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に向けられるように配置できる、少なくとも1つの参照面を備えることを特徴とする装置。」

(補正後)
「【請求項1】
表面の特性を測定する装置であって、
少なくとも2つの異なる波長及び少なくとも2つの異なる照射角度を用いて、測定される被測定面に照射光を向けるように配置された、照射光を生成する手段と、
前記被測定面の画像を生成するために、前記表面からの反射光又は散乱光を検出器に向ける手段と、を備える装置において、
該装置がさらに、少なくとも1つの参照面であって、前記照射光は前記被測定面及び該参照面の双方に同時に向けられ、かつ前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に同時に向けられ、前記検出器の幾何学配置を前記被測定面及び前記参照面の双方に対して同じとしたままで前記被測定面及び前記参照面の双方の画像を同時に生成することができるように配置される、少なくとも1つの参照面を備えることを特徴とする装置。」

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「少なくとも1つの参照面」について、「前記照射光は前記被測定面及び該参照面の双方に同時に向けられ、かつ前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に同時に向けられ、前記検出器の幾何学配置を前記被測定面及び前記参照面の双方に対して同じとしたままで前記被測定面及び前記参照面の双方の画像を同時に生成することができるように配置される」と限定する補正事項を含むものである。
この補正事項は、補正前の請求項1に係る発明のいわゆる限定的減縮を目的としており、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

2 補正の適否

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、上記「1」の「(補正後)」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献とそれに記載された事項

ア 引用文献1
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された、特開2008-165806号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである)。

(ア)「【請求項1】
それぞれ異なる分光分布特性を有する複数の照明光源が配置された外部照明部と、
被写体を撮影するための撮像光学系と、上記被写体からの被写体信号を取得するための撮像素子部と、画像撮影操作を行うための撮影操作部と、上記外部照明部と連動するための接続接点部と、上記外部照明部からの光のスペクトル検出を行うスペクトル検出部と、を有し、上記複数の照明光源を上記撮像素子部の露光タイミングと連動し、かつ、上記複数の照明光源を選択的に点灯させることにより複数の被写体分光画像を得る画像撮影部と、
上記画像撮影部で撮影された上記被写体分光画像を記憶するための画像メモリ部を有し、上記画像メモリ部に記憶された被写体分光画像および上記スペクトル検出部により取得された分光スペクトルデータから所望の画像演算を行う画像処理部と、
を備え、
上記外部照明部は、上記画像撮影部に着脱可能に装着されるものであることを特徴とする画像処理システム。」

(イ)「【0001】
この発明は、被写体の分光スペクトル画像情報を取得し、取得画像から被写体の画像の高精度の色再現や検査、判定等を行う画像処理システムに関する。」

(ウ)「【0015】
[第1の実施形態]
図1から図16は本発明の第1の実施形態を示したものであり、図1は画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【0016】
この画像処理システムは、可視光域において互いに独立して異なる複数の波長帯域の照明光により被写体を照明して被写体分光画像を撮影可能な撮影装置1と、この撮影装置1と接続されていて該撮影装置1から出力される被写体分光画像を処理する処理装置2と、を有して構成されていて、該処理装置2は、必要に応じてネットワーク3に接続することができるように構成されている。
【0017】
上記撮影装置1は、本実施形態においては、6種類の波長帯域の照明光(6原色の照明光)を被写体に順次照射して、6枚の被写体分光画像を静止画として取り込む撮像と、6原色の照明光から1以上の照明光を各選択してRGBの3色の照明光としこれらを順次に照射することにより面順次式の動画として取り込む撮像と、を行うことができるようになっている。
【0018】
上記撮影装置1は、後述する照明光を被写体に投写するとともに被写体からの反射光を入射するための投射口5aを備えた筐体5と、この筐体5の投射口5a側に着脱可能に取り付けられており該投射口5aを介して被写体に投射する照明光に外光が混入することのないように遮光するための柔軟性を有する素材により略筒状に形成された当て付け部4と、上記筐体5内に組み込まれていて点灯されることにより被写体を照明するための照明光を発光する発光素子である第1LED6a?第6LED6fと、上記筐体5内に組み込まれていてこれら第1LED6a?第6LED6fにより照明された被写体像を結像するための撮像光学系7と、この撮像光学系7により結像された被写体像を撮像して画像信号を出力する撮像素子部に含まれる撮像素子たるCCD8と、このCCD8から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器9と、このA/D変換器9から出力され後述するバス10を介して伝送される被写体分光画像を一旦記憶するとともに後述するCPU18による作業領域としても用いられるメモリ11と、使用者が分光画像撮影動作の開始を指示入力したり動画像撮影動作の開始や終了を指示入力したりするための各種の操作スイッチや操作ボタンを含んでなる撮影操作部たる操作スイッチ14と、この操作スイッチ14からの指示入力を後述するCPU18に伝達するとともに該CPU18からの指令により上記第1LED6a?第6LED6fの発光制御に関する命令等を行ったりこの撮影装置1の撮像動作に関する制御を行ったりするカメラ制御I/F12と、このカメラ制御I/F12からの指令に基づき上記第1LED6a?第6LED6fの発光開始タイミングや発光終了タイミングなどの発光動作に係る制御を行うLEDドライバ13と、上記CCD8により撮像される動画像や上記メモリ11に記憶された被写体分光画像(静止画像)を後述するLCDモニタ16に表示するための制御を行うモニタI/F15と、このモニタI/F15から出力される画像を表示するためのLCDモニタ16と、上記メモリ11に記憶された被写体分光画像や後述するCPU18からの制御データ等を上記処理装置2に出力しあるいは該処理装置2からの通信データを入力するための外部I/F17と、上記A/D変換器9、メモリ11、カメラ制御I/F12、モニタI/F15、外部I/F17、後述するCPU18等を互いに接続するバス10と、上述した各回路を含むこの撮影装置1を統括的に制御する制御部たるCPU18と、を有して構成されている。」

(エ)「図1



(オ)「【0028】
また、図2はLEDの配置例や構成例を示す図である。
【0029】
図2(A)は、6種類の原色で構成される上記第1LED6a?第6LED6fを、リング状に順次3セット(各色3個ずつ)配置した例を示している。なお、図示の配置順は一例を示したのみであり、これに限らず、逆順やランダム配置などの任意の配列を広く適用することが可能である。」

(カ)「図2



(キ)「【0350】
[第14の実施形態]
次に、本発明の第14の実施形態である画像処理システムについて、図64のブロック構成を用いて説明する。
【0351】
本実施形態の画像処理システムは、画像撮影部としての撮影装置1Kと、上記撮影装置1Kで撮影された被写体の分光画像信号より高精度色再現画像データを求めるための画像処理部である処理装置2Kとを有してなる。
【0352】
上記撮影装置1Kは、図64に示すように前記第1乃至第4の実施形態の画像処理システムに適用された撮影装置1(図1,図17,図21,図37)と略同様の構成を有しているが、さらに、撮影装置1Kには、筐体5の投射口5aにおいて支持軸102により回動自在に支持され、キャリブレーション用基準色を配した色票101が配置されている。
【0353】
なお、上記撮影装置1Kの構成要素で上記撮影装置1と同一ものには同一符号を付して説明する。
【0354】
上記処理装置2Kは、前記第1の実施形態等の画像処理システムに適用された処理装置2と同一である。
【0355】
本実施形態の撮影装置1Kでは従来は面倒であった色標の保管管理が不要となり、また、色標の汚れ発生や外光による劣化を防止できるように、上述した色票101を筐体5内に内蔵し、使用しないときには、筐体5の内部に撮影光学系7の投射口5aから退避させて収納させる。この収納状態では、色票101は、LED群6Xの照射光路外に退避されており、被写体103への照射光を阻害することはない。そして、キャリブレーション時にのみ、図64に示すように撮影光学系7の投射口5aまで回動させる。その状態で色票101の画像データをCCD8を介して取り込み、色のキャリブレーションのための分光画像データが取得される。
【0356】
本第14の実施形態の撮影装置1Kによれば、色票101の保管管理が不要であり、また、手で扱われないために汚れが付きにくく、また、外光に曝されて色が劣化することがなく、常に正確な色のキャリブレーションが可能である。
【0357】
なお、上記実施形態の撮影装置1Kにおいては、色票101が筐体5に回動可能に支持されていたが、それに代えて筐体5の投射口5aに着脱されるレンズキャップ(図示せず)の内面に色票を貼付した構成を採用することも可能である。この場合、レンズキャップを装着した状態で上記キャリブレーションが行われる。」

上記(ア)ないし(キ)を含む引用文献1全体の記載を総合すると、引用文献1には、

「被写体の画像の高精度の色再現や検査、判定等を行う画像処理システムであり、
被写体からの反射光を入射するための投射口5aを備えた筐体5と、
上記筐体5内に組み込まれていて点灯されることにより被写体を照明するための照明光を発光する発光素子である第1LED6a?第6LED6fと、
上記筐体5内に組み込まれていてこれら第1LED6a?第6LED6fにより照明された被写体像を結像するための撮像光学系7と、
この撮像光学系7により結像された被写体像を撮像して画像信号を出力する撮像素子部に含まれる撮像素子たるCCD8と、を有し、
筐体5の投射口5aに着脱されるレンズキャップの内面に色票を貼付し、レンズキャップを装着した状態でキャリブレーションが行われ、
6種類の原色で構成される上記第1LED6a?第6LED6fは、リング状に順次3セット(各色3個ずつ)配置された、
画像処理システム。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

イ 引用文献2
本願の優先日前に頒布され、拒絶査定時に周知技術を示す文献として引用された特開平8-29259号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】被測定物に光を照射する光源と、光の照射された被測定物の反射光を採光するレンズ体と、レンズ体を通って来た反射光を画像信号に変換する撮像部と、変換された反射光の画像信号に基づき対象体の明度を測定する装置において、
前記反射光の通過経路上であってレンズ体に一体に配設された、マンセル値が既知の複数の標準色票と、
前記被測定物と共に該標準色票に光を照射する光源と、
前記被測定物の反射光および前記標準色票の反射光をそれぞれ分別して画像信号に変換可能な撮像部と、
撮像部変換画像信号から前記標準色票のマンセル値に基づき被測定物のマンセル値を算出する演算部と、
算出された被測定物のマンセル値を表示する表示部とを備えたことを特徴とする明度測定装置。」

(イ)「【0007】
【作用】請求項1の発明によれば、マンセル値が既知の複数の標準色票を反射光の通過経路上であってレンズ体に一体に配設しており、光源からの光を被測定物と共にこの標準色票に照射する。撮像部で、被測定物からの反射光と前記標準色票の反射光をそれぞれ分別して画像信号に変換する。この変換画像信号から、標準色票のマンセル値に基づき被測定物のマンセル値を算出する。表示部で、算出された被測定物のマンセル値を表示する。
【0008】したがって、表示されたマンセル値により被測定物の明度を測定することができる。また、光源からは標準色票と共に被測定物に光を同時に照射できるため、標準色票被測定物との照明条件、電圧条件や環境光等は異なることがなく、しかも、標準色票はレンズ体を反射光の通過経路上であってレンズ体に一体に配設されているため、被測定物の反射光と共に標準色票を同時に撮像することができる。よって、標準色票と被測定体の撮像条件が異なることがないため、被測定物のマンセル値により精度および再現性良く被測定物の明度を測定することができる。」

(3)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「画像処理システム」は、「被写体の画像の高精度の色再現や検査、判定等を行う」ものであるから、「表面の特性を測定」をするものと認められ、本願補正発明の「表面の特性を測定する装置」に相当する。

イ 引用発明の「被写体」は、画像の高精度の色再現や検査、判定等を行う対象となるものであるから、本願補正発明の「被測定面」に相当する。


(ア) 引用発明の「照明光」は、「被写体を照明する」ためのものであるから、本願補正発明の「照射光」に相当する。
(イ) 引用発明の「第1LED6a?第6LED6f」は、「被写体を照明するための照明光を発光する発光素子」であるから、本願補正発明の「照射光を生成する手段」といい得るものである。
(ウ) 引用発明の「第1LED6a?第6LED6f」は、「6種類の原色で構成される」ものであるから、「少なくとも2つの異なる波長」を「用い」るものである。
そして、引用発明の「第1LED6a?第6LED6f」は、「リング状に順次3セット(各色3個ずつ)配置された」ものであり、本願明細書の段落【0031】における、「好ましくは2つの表面照射角度があり、これは実際には複数のLED光源のような、実際にいくつかの別々の照射光源を使用することをしばしば意味する。照射光源は、被測定面の法線に対して対称的に付けるのが好適であり、これにより画像の解釈を簡単にする。複数の照射光源は被測定面の法線の周りに描かれる円内に位置させることができ、例えば、2-20個の照射光源を等しい間隔で配置することができる。」の記載に鑑みると、引用発明の「リング状に順次3セット(各色3個ずつ)配置された」「6種類の原色で構成される」「第1LED6a?第6LED6f」と、本願補正発明の「照射光を生成する手段」とは、「少なくとも2つの異なる照射角度を用いて、測定される被測定面に照射光を向けるように配置された」点においても一致するものといえる。
(エ) してみると、引用発明の「上記筐体5内に組み込まれていて点灯されることにより被写体を照明するための照明光を発光する発光素子」であって、「6種類の原色で構成される」「リング状に順次3セット(各色3個ずつ)配置された」「第1LED6a?第6LED6f」は、本願補正発明の「少なくとも2つの異なる波長及び少なくとも2つの異なる照射角度を用いて、測定される被測定面に照射光を向けるように配置された、照射光を生成する手段」に相当する。

エ CCDが光を検出するものであることは当業者にとって明らかであるから、引用発明の「撮像素子たるCCD8」は、本願補正発明の「検出器」に相当する。

オ 引用発明の「第1LED6a?第6LED6fにより照明された被写体像を結像するための撮像光学系7」は、「この撮像光学系7により結像された被写体像」が「CCD8」に「撮像」されるものであるから、本願補正発明の「前記被測定面の画像を生成するために、前記表面からの反射光又は散乱光を検出器に向ける手段」に相当する。

カ 引用発明の「色票」は、「キャリブレーションが行われ」るためのものであり、本願補正発明の「少なくとも1つの参照面」とは、それを参照して色の構成を行うという同一の目的に用いられるものであるから、引用発明の「色票」は、本願補正発明の「少なくとも1つの参照面」とその限りにおいて共通するものである。

キ 引用発明の「色票」は、「レンズキャップの内面」に設けられ、それによって「キャリブレーションが行われ」るのであるから、「被写体を照明するための照明光」は、「色票」にも向けられ、また、「色票」からの「反射光」は、「撮像素子たるCCD8」に向けられることは当業者にとって明らかであり、引用発明の「色票」と、本願補正発明の「少なくとも1つの参照面」は、「前記照射光は前記被測定面及び該参照面の双方に向けられ、かつ前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に向けられるように配置される」点で共通する。

ケ 以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「表面の特性を測定する装置であって、
少なくとも2つの異なる波長及び少なくとも2つの異なる照射角度を用いて、測定される被測定面に照射光を向けるように配置された、照射光を生成する手段と、
前記被測定面の画像を生成するために、前記表面からの反射光又は散乱光を検出器に向ける手段と、を備える装置において、
該装置がさらに、少なくとも1つの参照面であって、前記照射光は前記被測定面及び該参照面の双方に向けられ、かつ前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に向けられるように配置される、少なくとも1つの参照面を備える装置。」

<相違点>
「少なくとも1つの参照面」を含む画像の生成に関して、本願補正発明は、「前記照射光は前記被測定面及び該参照面の双方に同時に向けられ、かつ前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に同時に向けられ、前記検出器の幾何学配置を前記被測定面及び前記参照面の双方に対して同じとしたままで前記被測定面及び前記参照面の双方の画像を同時に生成することができる」ものであるのに対して、引用発明は、照射光を被測定面及び参照面の双方に同時には向けてはおらず、また、前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に同時には向けられていないことから、被測定面及び参照面の双方の画像を同時には生成していない点。

(4)当審の判断

ア 相違点についての検討
引用文献2には、上記「(2)」「イ」のとおり、「被測定物に光を照射する光源と、光の照射された被測定物の反射光を採光するレンズ体と、レンズ体を通って来た反射光を画像信号に変換する撮像部と、変換された反射光の画像信号に基づき対象体の明度を測定する装置であり、マンセル値が既知の複数の標準色票を反射光の通過経路上であってレンズ体に一体に配設し、光源からの光を被測定物と共にこの標準色票に照射する明度測定装置」の発明が記載されており、被測定物の反射光と共に標準色票を同時に撮像することができるようにすることによって、標準色票と被測定体の撮像条件が異なることがないため、被測定物のマンセル値により精度および再現性良く被測定物の明度を測定することができるようにした点についても記載されている。
そして、引用文献2に記載された発明における、「被測定物」、「光源」、「標準色標」、「光」、及び、「撮像部」は、それぞれ、本願補正発明の「被測定面」、「照射光を生成する手段」、「少なくとも1つの参照面」、「反射光又は散乱光」、及び、「検出器」に相当し、引用文献2に記載された発明における「光源からの光を被測定物と共にこの標準色票に照射」し、「被測定物の反射光と共に標準色票を同時に撮像すること」は、本願補正発明の「前記照射光は前記被測定面及び該参照面の双方に同時に向けられ、かつ前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に同時に向けられ」ることに相当する。
また、引用文献2に記載された発明は、「被測定物の反射光と共に標準色票を同時に撮像する」ものであるから、本願補正発明と同様に、「少なくとも1つの参照面」が、「前記検出器の幾何学配置を前記被測定面及び前記参照面の双方に対して同じとしたままで前記被測定面及び前記参照面の双方の画像を同時に生成することができるように配置される」ものである。
すると、引用文献2に記載された発明は、本願補正発明の相違点に係る構成である、「少なくとも1つの参照面」を含む画像の生成に関して、「前記照射光は前記被測定面及び該参照面の双方に同時に向けられ、かつ前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に同時に向けられ、前記検出器の幾何学配置を前記被測定面及び前記参照面の双方に対して同じとしたままで前記被測定面及び前記参照面の双方の画像を同時に生成することができるように配置される」構成を備えていると認められ、引用発明において、少なくとも1つの参照面について、引用文献2に記載された発明を適用し、本願補正発明の、上記相違点に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
本願補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1に記載された事項、及び、引用文献2に記載された事項から、当業者が予測し得る程度のものである。

(5)小括

よって、本願補正発明は、引用発明、及び、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成26年12月18日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし29に係る発明は、同年8月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」「[理由]」「1」の「(補正前)」に記載のとおりものである。

2 引用文献とそれに記載された事項

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、及び、その記載事項は、上記「第2」「[理由]」「2」「(2)」「ア」に記載したとおりである。

3 本願発明と引用発明の対比と当審の判断

上記「第2」「[理由]」「1」に記載したとおり、本願補正発明は、本願発明の「少なくとも1つの参照面」に、「前記照射光は前記被測定面及び該参照面の双方に同時に向けられ、かつ前記被測定面及び該参照面の双方からの反射光又は散乱光は前記検出器に同時に向けられ、前記検出器の幾何学配置を前記被測定面及び前記参照面の双方に対して同じとしたままで前記被測定面及び前記参照面の双方の画像を同時に生成することができるように配置される」との限定を行ったものであるから、本願発明は、本願補正発明から上記の限定事項を省いた発明といえる。
そして、上記「第2」「[理由]」「2」「(3)」「ケ」の「<相違点>」で記載したように、本願補正発明は、上記限定事項の点で引用発明と相違するものであるから、上記限定事項を省いた本願発明と引用発明とは、相違点がないことになる。
してみれば、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-13 
結審通知日 2015-11-17 
審決日 2015-11-30 
出願番号 特願2013-517425(P2013-517425)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 113- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋口 宗彦南 宏輔  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
▲高▼見 重雄
発明の名称 表面の色及び他の特性を測定する方法及び装置  
代理人 杉村 憲司  

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