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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E01D
管理番号 1313435
審判番号 不服2014-26622  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-26 
確定日 2016-04-14 
事件の表示 特願2010-214674「合成床版点検孔用窓材」拒絶査定不服審判事件〔平成24年4月5日出願公開、特開2012-67534〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年9月27日の出願であって、平成26年10月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月26日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。
そして、本件審判手続において、当審より平成27年7月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年9月14日に手続補正書及び意見書が提出され、さらに、当審より同年11月17日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成28年1月6日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成28年1月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「使用済みの高分子量ポリ乳酸を原料とした重量平均分子量が8,500?50,000の範囲にある乳酸オリゴマーを成形してなり、可視光の光線透過率が60%以上である合成床版点検孔用窓材。」

第3 平成27年11月17日付け拒絶理由
当審より平成27年11月17日付けで通知した拒絶理由の理由1(以下「先の拒絶理由」という。)の内容は、次のとおりである。

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1
・引用文献 1?8
・備考
(備考の記載内容は省略。)

引 用 文 献 等 一 覧
1.登録実用新案第3138450号公報
2.特開2007-191630号公報(特許請求の範囲、段落【0008】、【0114】、【0116】を参照。)
3.特開2003-147180号公報(段落【0012】、【0037】?【0046】、【0072】、【0082】、【0083】を参照)
4.特開平9-177312号公報(段落【0015】を参照)
5.特開2010-175723号公報(【請求項4】を参照。)
6.特開2010-185046号公報(【請求項1】を参照。)
7.特開2003-221461号公報(【請求項1】及び【請求項3】を参照。)
8.特開平5-252838号公報(段落【0010】を参照。)」

第4 平成28年1月6日付け意見書
請求人は、平成28年1月6日付け意見書において、概ね以下のとおり主張している。

「4.本願発明の特徴
(イ)使用済みの高分子量ポリ乳酸を原料とした重量平均分子量が8,500?50,000の範囲にある乳酸オリゴマーを成形してなる点。
(ロ)合成床版点検孔用窓材を、重量平均分子量が8,500?50,000の範囲にある乳酸オリゴマーを用いて成形するので、製造された合成床版点検孔用窓材の環境分解性を確保しながら、一定期間に亘って機械的強度と透光性の維持を図ることができます。その結果、合成床版点検孔用窓材は、コンクリートが硬化するまでの期間中は、コンクリート中の水分接触、コンクリート硬化時の放熱、及び太陽光に含まれる紫外線照射を受けても分解が進行せず、コンクリートの充填硬化状況を明確に確認しながらコンクリート打設を行うことができ、高品質のコンクリート打設体を得ることが可能になります。そして、コンクリート硬化が完了した以降では、雨水の接触、太陽光中の紫外線に加えて、外界からの振動や昼夜の寒暖差に伴う物理的応力が付加されることにより、分解が加速的に進行することになり、コンクリート硬化完了後に合成床版点検孔用窓材を撤去するための足場構築が不要になって、コンクリート打設コストを低減することが可能になります。
(ハ)使用済みの高分子量ポリ乳酸から作製した乳酸オリゴマーを成形するので、資源循環(廃棄物の有効利用)を図りながら、合成床版点検孔用窓材を安価に製造することが可能となります。
5.本願発明と引用文献との比較
(1)引用文献1の発明には、生分解性プラスティックを用いたコンクリートモニタリング孔型枠(本願発明の合成床版点検孔用窓材に相当)が記載されていますが、生分解性プラスティックとして(イ)に示すように、使用済みの高分子量ポリ乳酸から作製した乳酸オリゴマーを使用することに関する記載や示唆はありません。従って、引用文献1の発明は(ロ)、(ハ)に示す作用効果を奏しません。
(2)引用文献2の発明にはポリ乳酸を成形すること、重量平均分子量値が10万より小さい分子の割合が大きくなると、成形体の機械的物性の耐久性が小さくなるため好ましくないこと(段落【0011】の6?8行目)が記載されており、発明の構成が(イ)に示す本願発明の構成と異なります。従って、引用文献2の発明は(ロ)、(ハ)に示す作用効果を奏しません。
(3)引用文献3の発明には乳酸系ポリマーが重量平均分子量5万以上のものであること(請求項8)が記載され、発明の構成が(イ)に示す本願発明の構成と異なります。従って、引用文献3の発明は(ロ)、(ハ)に示す作用効果を奏しません。
(4)引用文献4の発明には透明な繊維強化樹脂製型枠が記載されていますが、マトリックスを形成する樹脂として、重量平均分子量が8500?23000の範囲にある乳酸オリゴマーを使用することに関しての記載や示唆はありません。従って、引用文献4の発明は(ロ)、(ハ)に示す作用効果を奏しません。
(5)引用文献5の発明には、トナー用の結着樹脂として、分子量(数平均分子量)が5000?50000の範囲に調整されたポリ乳酸廃棄物を用いることが、引用文献6の発明には、樹脂粘土並びに接着剤として、ポリ乳酸廃棄物を加水分解して得られる分子量(数平均分子量)が4000以下に調整されたポリ乳酸を用いることが、引用文献7の発明には、低分子量化する分解制御方法として、ポリ乳酸を求核性窒素原子を含む化合物の存在下で加熱加水分解することが、引用文献8の発明には、遮光性の雑草抑制膜として、植物繊維からなる材料で編んだシートに分子量が1万?100万のポリ乳酸を被覆させて形成することが、それぞれ記載されていますが、本願発明とは目的が相違する別個の発明であり、本願発明の構成、作用、及び効果の裏付けとなる技術思想は記載されておらず、何らの示唆もありません。」

第5 引用文献の記載
1 引用文献1
先の拒絶理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献1には、次の記載がある(下線は審決で付した。)。

(1)「【請求項1】
モニタリング孔型枠受け部aにモニタリング孔型枠挿入部を立設し、モニタリング孔型枠受け部aにモニタリング孔型枠受け部bを重着することを特徴とする、生分解性プラスティックを用いたグレーチング床版におけるコンクリートモニタリング孔型枠(キャップ)。」

(2)「【0001】
本考案は、モニタリング孔型枠受け部aにモニタリング孔型枠挿入部を立設し、モニタリング孔型枠受け部aにモニタリング孔型枠受け部bを重着した、生分解性プラスティックを用いたグレーチング床版におけるコンクリートモニタリング孔型枠(キャップ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モニタリング孔の孔塞ぎ型枠としては、木製型枠、ゴム製の栓、ガムテープが使用されていた。
【考案の開示】
【考案が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術で述べた木製型枠においては、型枠自体に厚みがあるため床版コンクリートの厚みが確保できず、コンクリート内に埋没し、撤去に困難を要するという欠点を有していた。また、ゴム製の栓においても木製型枠と同様に厚さを要するという欠点を有しており、ガムテープは、コンクリートの水分により剥離するという各々の欠点を有していた。コンクリートは所定強度に達するまでに、型枠中にて長時間養生する必要があり、木製型枠・ゴム製の栓においては、脱枠だけのために再度主体足場、中段足場を架設しなければならないという欠点をも有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本考案は、モニタリング孔の型枠にジャガイモ、トウモロコシを主成分とした生分解性プラスティックを用いており、このことにより厚みが最大で1mmという薄さが確保できるため、コンクリートの出来形に支障をきたすことはない。また、生分解性プラスティックはコンクリートの水分と放熱(硬化熱)により、無害・無残材の状態で綿状に自然分解し消滅するので、撤去時の足場は必要としないことにより問題点を解決している。
【考案の効果】
【0005】
上述のように、本考案の生分解性プラスティックを用いたグレーチング床版におけるコンクリートモニタリング孔型枠(キャップ)は、脱枠のための人手間や、脱枠に必要な足場の架設を要しないので、工期短縮やコスト削減効果が期待できる。また、分解までの時間をコントロールできるので、建設現場の様々な要望に臨機応変な対応が期待できる。」

(3)上記(1)、(2)によると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「生分解性プラスティックを用いたグレーチング床版におけるコンクリートモニタリング孔型枠。」

2 引用文献2
先の拒絶理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献2には、次の記載がある。

(1)「【請求項1】
ポリ乳酸および結晶化促進剤を含有し、示差走査熱量計で測定した190℃以上の結晶融解エンタルピーを△Hms(J/g)、190℃以下の結晶化エンタルピーを△Hmh(J/g)としたとき、下記式
S={△Hms/(△Hms+Hmh)}×100
で表されるステレオ化度(S)が80%以上であるポリ乳酸組成物(A)。」

(2)「【0002】
近年、地球環境保護の目的から、自然環境下で分解される生分解性ポリマーが注目され、世界中で研究されている。生分解性ポリマーとして、……ポリ乳酸などが知られている。」

(3)「【0115】
(成形体)
本発明の組成物からなる成形体は射出成形体、押し出し成形体、真空、圧空成形体およびブロー成形体などが挙げられ、……土木.建築用資材、……またはその他の成形体を従来公知の方法により得ることができる。またこれらの成形体は、……建築部材、土木部材、……などの各種用途に利用できる。」

(4)「【0116】
また……、コンクリート型枠などの土木関連部品、……などとして利用可能である。」

3 引用文献3
先の拒絶理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献3には、次の記載がある。

(1)「【請求項1】 ポリアセタール、エステル系可塑剤及び乳酸系ポリマーを含有することを特徴とする乳酸系ポリマー組成物。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乳酸系ポリマーを含有する乳酸系ポリマー組成物、該乳酸系ポリマー組成物を成形してなる乳酸系ポリマー成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】乳酸系ポリマーは、生分解性を有し、燃焼カロリーがポリエチレンやポリプロピレンなどの約1/3?1/2と低く、焼却炉を傷めることがなく、また、焼却時に塩化水素、NOx、SOx、とりわけダイオキシン等の有毒ガスを発生しない特徴がある。」

(3)「【0082】本発明の乳酸系ポリマー成形体は、優れた透明性を有しており、透明性の指標として、特に厚みが0.5mmの該成形体のへイズが30%以下であることが好ましい。」

(4)「【0083】
本発明の透明性、結晶性(耐熱性)及び分解性を有する乳酸系ポリマー成形体の用途としては、フィルム、シート、テープ、ラベル、ラミネート、繊維、編物、織物、不織布、紙、フェルト、板、棒、袋、チューブ、多孔質成形品、各種容器、各種部品、及びその他の成形品を容易に得ることができる。具体的には、本発明の成形体は、……断熱材、型枠、土留め、保水シート、土嚢などの土木・建築資材、……などの産業用資材である。」

4 引用文献4
先の拒絶理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献4には、次の記載がある。

(1)「【請求項1】 繊維強化樹脂で形成された平板状の堰板部材と補強リブが形成された補強板とを添着し、一体化してなる繊維強化樹脂製型枠。
……
【請求項5】 型枠が透明又は半透明である請求項1記載の繊維強化樹脂製型枠。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木、建築の分野で使用される繊維強化樹脂製型枠に関するものである。より詳しくはコンクリート打設用に適する型枠に関するものである。」

(3)「【0015】……ここで成形体が透明あるいは半透明であることは、コンクリート打設における空気の巻き込みによる欠陥であるジャンカを防止する上で好適である。これは繊維強化材としてガラス繊維、マトリックスとして無色あるいは淡色透明のものを使用し、ボイドの少ない成形をすることにより可能である。通常の合板などの不透明な型枠の場合にはバイブレータ等を使用してジャンカを防止しているが、最終的には脱枠するまで確認することができない。このため透明あるいは半透明型枠使用によりコンクリート打設状況や品質を確認しながら作業工程を進めることができることのメリットは大きい。」

5 引用文献5
先の拒絶理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献5には、次の記載がある。

(1)「【請求項1】
結着樹脂としてポリ乳酸廃棄物を含有し、前記ポリ乳酸廃棄物の分子量が、5,000?50,000の範囲に調整されていることを特徴とする電子写真用トナー。
……
【請求項4】
ポリ乳酸廃棄物を加水分解し、その分子量を5,000?50,000の範囲に調整する工程、及び
前記分子量を調整されたポリ乳酸廃棄物を電子写真用トナーの結着樹脂として用いる工程
を具備することを特徴とするポリ乳酸廃棄物のリサイクル方法。」

(2)「【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮から、廃棄時に環境への負荷の少ない生分解性樹脂、さらには、再生可能資源からつくられるバイオマス由来の樹脂を、トナー用樹脂として用いる方法が提案されている。これらの生分解性樹脂やバイオマス由来のプラスチックは、バイオプラスチックと呼ばれ、化石資源の消費を削減し、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑制するものと期待されている。
【0003】
バイオプラスチックのうち、現在最も有望な樹脂のひとつがポリ乳酸である。ポリ乳酸は、融点が170℃程度、ガラス転移点が60℃程度、分子量が10?15万程度の結晶性ポリエステルである。……
【0004】
ポリ乳酸は、廃棄されても分解性があるという長所はあるものの、廃棄せずにリサイクルすることに関しても研究がされ始めている。プラスチックのリサイクルとしては、回収した廃棄物を破砕して再度溶融・成形するマテリアルリサイクルが最も好ましいが、ポリ乳酸の場合、使用により劣化すること、再度溶融されることにより加水分解が促進されてしまうことなどのため、そのままリサイクルすることは困難である。そのため、ポリ乳酸をモノマーである乳酸やラクチドに分解し、再利用するケミカルリサイクルの研究が盛んに行われている。」

6 引用文献6
先の拒絶理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献6には、次の記載がある。

(1)「【請求項1】
ポリ乳酸廃棄物を加水分解処理することにより分子量を4,000以下に調整したポリ乳酸を主成分として含むことを特徴とする樹脂粘土。
……
【請求項3】
ポリ乳酸廃棄物を加水分解処理して分子量を4,000以下に調整したポリ乳酸を、樹脂粘土に用いることを特徴とするポリ乳酸廃棄物のリサイクル方法。」

(2)【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮から、廃棄時に環境への負荷の少ない生分解性樹脂、さらには、再生可能資源からつくられるバイオマス由来の樹脂を種々の用途に用いる方法が提案されている。これらの生分解性樹脂やバイオマス由来のプラスチックは、バイオプラスチックと呼ばれ、化石資源の消費を削減し、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑制するものと期待されている。
【0003】
バイオプラスチックのうち、現在最も有望な樹脂のひとつがポリ乳酸である。ポリ乳酸は、融点が170℃程度、ガラス転移点が60℃程度、分子量が10?15万程度の結晶性ポリエステルである。……
【0004】
ポリ乳酸は、廃棄されても分解性があるという長所はあるものの、廃棄せずにリサイクルすることに関しても研究がされ始めている。プラスチックのリサイクルとしては、回収した廃棄物を破砕して再度溶融・成形するマテリアルリサイクルが最も好ましいが、ポリ乳酸の場合、使用により劣化すること、再度溶融されることにより加水分解が促進されてしまうことなどのため、そのままリサイクルすることは困難である。そのため、ポリ乳酸をモノマーである乳酸やラクチドに分解し、再利用するケミカルリサイクルの研究が盛んに行われている……。
【0005】
しかし、ケミカルリサイクルは、分解に大量のエネルギーと大型の装置を必要とするため、コストの面で難点があるとともに、環境負荷の点でも問題がある。
【0006】
そのため、ケミカルリサイクル法に代わる他の方法が望まれている。
……
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされ、低コストで簡易な方法でポリ乳酸廃棄物をリサイクルすることにより樹脂粘土並びに接着剤を提供すること、及びポリ乳酸廃棄物をそのような用途にリサイクルする方法を提供することを目的とする。」

7 引用文献7
先の拒絶理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献7には、次の記載がある。

(1)「【請求項1】 脂肪族ポリエステル樹脂を、求核性窒素原子を含む化合物の1種又は2種以上の存在下で加熱加水分解することにより低分子量化することを特徴とする脂肪族ポリエステルの分解制御方法。
……
【請求項3】 前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脂肪族ポリエステルの分解制御方法。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脂肪族ポリエステル、とりわけ、環境や生物に優しい生分解性プラスチックであると言われるポリ乳酸を、簡易な手段で速やかに分解させるための分解制御方法、及び、この方法により優れた生分解性を付与した易生分解性脂肪族ポリエステルに関する。」

(3)「【0019】
【発明の作用・効果】(第1発明の作用・効果)第1発明の分解制御方法によれば、加熱加水分解によって脂肪族ポリエステル樹脂を効果的に低分子量化することができる。しかも、このような加熱加水分解を求核性窒素原子を含む化合物の1種又は2種以上の存在下で行うので、加熱加水分解により低分子量化された脂肪族ポリエステル樹脂の結晶性の増大を効果的に抑制することができる。その結果、脂肪族ポリエステル樹脂に対して、良好なモノマー化分解速度、とりわけ環境中でのモノマーへの優れた生分解速度を付与することができる。」

(4)「【0035】脂肪族ポリエステル樹脂が構成する製品又は部材の種類は、当然ながら全く限定されない。これらは、製品寿命の完了に到るまで強度的物性の維持を要求される樹脂製品又は樹脂部材と、そうでない樹脂製品又は樹脂部材とにカテゴリー分類することができる。前者としては、例えば包装紙、医療用の各種体内移植片、自動車用の各種構造部品等を構成するものを例示できる。後者としては、例えば育苗用の苗ポット容器、ゴルフティー等を例示できる。これらの製品又は部材は、そのままの形態で本願発明の処理に供しても良いが、好ましくはチップ状あるいは粉粒状として処理に供される。」

(5)「【0036】〔易生分解性脂肪族ポリエステル〕本願発明に係る低分子量化プロセスを受けた易生分解性脂肪族ポリエステル樹脂は、一面においては低分子量化しているため、他面においては結晶性が低いため、モノマー化(特に生分解によるモノマー化)を受け易いと言う特質がある。従って、廃棄処理材としては環境負荷が少なく、モノマー供給原料としてもコストパフォーマンスが良好である。」

8 引用文献8
先の拒絶理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献8には、次の記載がある。

(1)【請求項1】 植物繊維からなる材料で編んだシ-トに生分解性または光分解性プラスチックを被覆させてなる雑草抑制膜。」

(2)「【0010】生分解性プラスチックは、使用済みのプラスチックが土中や水中の微生物の作用で二酸化炭素と水に分解され自然環境に戻るものと一般に定義されており、例えば、ポリエステル樹脂などが知られているが、本発明では、ベースポリマーが加水分解性ポリマーであるものが好ましい。加水分解性ポリマーとしては、例えば、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸などのオキシ酸の重合体またはこれらの共重合体が挙げられるが、特に乳酸重合体(ポリ乳酸)が好ましい。
【0011】ポリ乳酸は、ポリD-乳酸、ポリL-乳酸、ポリD,L-乳酸のいずれであってもよいが、特にポリL-乳酸が好ましい。ポリL-乳酸は加水分解してL-乳酸となるため生体安全性が高いからである。ポリ乳酸の分子量は耐水性、生分解性、コストの点から選ばれ、1万?100万であるのが好ましい。これは、ポリ乳酸は分子量1000の場合、生理食塩水中で約2週間以内に分解し材料強度は低く実用的でないが、分子量が数万以上になると分解しにくく、10万以上では約1年以上変化なく存在し、材料強度も高くポリスチレンと同等以上になるからである。」

第6 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「生分解性プラスティック」と、本願発明の「重量平均分子量が8,500?50,000の範囲にある乳酸オリゴマー」は、「生分解性材料」である点で共通する。

(2)引用発明において、「生分解性プラスティックを用い」て、「グレーチング床版におけるコンクリートモニタリング孔型枠」を製造するためには、「生分解性プラスティック」を「成型」する工程が必要なことは、当業者にとって自明の事項であるから、引用発明は、「生分解性プラスティックを成形してなる」との構成を備えているといえる。

(3)引用発明の「グレーチング床版」は、本願発明の「合成床版」に相当し、引用発明の「グレーチング床版におけるコンクリートモニタリング孔型枠」と、本願発明の「合成床版点検孔用窓材」とは、「合成床版点検孔用型枠」である点で共通する。

(4)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「生分解性材料を成形してなる合成床版点検孔用型枠。」

エ 他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
生分解性材料が、本願発明では、使用済みの高分子量ポリ乳酸を原料とした重量平均分子量が8,500?50,000の範囲にある乳酸オリゴマーであるのに対し、引用発明では、生分解性プラスティックであるが、その原料、組成、重量平均分子量が不明である点。

<相違点2>
合成床版点検孔用型枠の可視光の光線透過率に関し、本願発明では、可視光の光線透過率が60%以上であって、点検孔用窓材として機能するのに対し、引用発明では、可視光の光線透過率が不明である点。

第7 判断
1 相違点について
相違点1及び2について併せて検討する。

(1)生分解性材料として、ポリ乳酸は周知の材料であり(上記第5 2(2)、5(2)、6(2)、7(2)及び8(2)を参照。)、ポリ乳酸が、透明性が高いという特性を有することは、当業者にとって自明の事項である(上記第5 3(3)を参照。さらに必要であれば、特開2007-231194号公報の段落【0002】を参照。)。

(2)引用文献5及び6には、ポリ乳酸廃棄物(使用済みの高分子量ポリ乳酸)を加水分解処理し、分子量を調整することにより、ポリ乳酸廃棄物をリサイクルすることが記載されている(上記第5 5(1)及び6(1)を参照。)。

(3)透明型枠の使用によりコンクリート打設状況や品質を確認しながら作業工程を進めることは、周知技術にすぎず(上記第5 4(3)を参照。)、また、引用文献2及び3には、ポリ乳酸組成物からなる成形体を型枠として用いることが記載されている(上記第5 2(4)及び3(4)を参照。)。

(4)ポリ乳酸は、分子量(重量平均分子量)が小さいほど分解性が高く、分子量が大きいほど機械的強度が高くなることは、周知の技術的事項である(上記第5 7(5)及び8(2)を参照。)。

(5)引用発明において、生分解性プラスチックとして如何なる組成のものを用いるかは、当業者が適宜なし得る設計的事項というべきところ、上記(1)ないし(3)のとおり、生分解性材料として、ポリ乳酸は周知の材料であって、ポリ乳酸廃棄物をリサイクルすること及びポリ乳酸を型枠材料として用いることも公知であることを踏まえると、引用発明において、生分解性プラスチックとして、ポリ乳酸廃棄物を原料とするポリ乳酸を用いることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明の乳酸オリゴマーの重量平均分子量に関し、本願明細書には、「ポリ乳酸の環境分解性は分子量に依存する。分子量が小さいポリ乳酸は、より早く崩壊あるいは分解する。ただし、一方で分子量が小さいポリ乳酸からの成形体はその機械的強度が低下しやすい。そのため、その重量平均分子量が、2,500?50,000の範囲にある乳酸オリゴマーがより好適である。」(段落【0025】)、「表5の乳酸オリゴマー(オリゴマー1とオリゴマー2)を用いて、……溶融射出成型を行った。その結果、透明性に優れた点検孔窓材2種が作製された。」(段落【0052】)と記載され、表5に、「オリゴマー2」の重量平均分子量が8,500であることが記載されているにとどまることに照らせば、本願発明において、乳酸オリゴマーの重量平均分子量を8,500?50,000の範囲としたことに、設計上の適宜の範囲を定めた以上の意義は認められないこと、及び、引用文献1には、生分解性プラスティックの分解までの時間をコントロールすることが記載されており(上記第5 1(2)段落【0005】を参照。)、上記(4)のとおり、ポリ乳酸は、分子量(重量平均分子量)が小さいほど分解性が高く、分子量が大きいほど機械的強度が高くなることは、周知の技術的事項であるから、引用発明において、生分解性プラスチックとして、ポリ乳酸廃棄物を原料とするポリ乳酸を用いる際に、グレーチング床版上に打設したコンクリートの養生に必要な期間を考慮して、その重量平均分子量を調整すること、すなわち上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(6)また、上記(1)のとおり、ポリ乳酸は透明性が高いことは、当業者にとって自明の事項であるところ、上記(3)のとおり、透明型枠の使用によりコンクリート打設状況や品質を確認しながら作業工程を進めることは、周知技術にすぎず、引用発明においてもコンクリート打設状況や品質を確認しながら作業工程を進めるという課題が内在すること、及び本願発明の可視光の光線透過率に関し、本願明細書には、「本実施の形態例の分解性透明プラスチックの透明性は、その成形体の厚さに依存するが、成形体を通して、コンクリートの充填状況が確認できる透明性であればよい。要求される透明性としては、可視光の光線透過率が60%以上、好ましくは70%であれば、何ら問題なく用いることができる。」(段落【0034】)と記載されるにとどまることに照らせば、本願発明において、可視光の光線透過率を60%以上としたことに、設計上の適宜の下限値を定めた以上の意義は認められないことを踏まえると、引用発明において、生分解性プラスチックとして、ポリ乳酸廃棄物を原料とするポリ乳酸を用いる際に、コンクリート打設状況や品質を確認しながら作業工程を進められる程度の可視光の光線透過率とすること、すなわち上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

2 本願発明の効果について
本願発明によってもたらされる効果を全体としてみても、引用発明、引用文献2、3、5及び6に記載された事項及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

3 請求人の主張について
請求人は、引用文献1には、使用済みの高分子量ポリ乳酸から作製した乳酸オリゴマーを使用することに関する記載や示唆はない旨、引用文献2及び3に記載されたものは、本願発明と重量平均分子量が異なる旨、引用文献5ないし8に記載されたものは、本願発明とは目的が相違する別個の発明であり、本願発明の構成、作用、及び効果の裏付けとなる技術思想は記載されていない旨主張し、よって、本願発明は、当業者が引用文献1ないし8に基づいて、容易に発明をすることができたものではない旨主張する(上記第4の平成28年1月6日付け意見書を参照。)。
しかし、上記1のとおりであって、請求人の主張は採用できない。

第8 むすび
以上の検討によれば、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、当業者が引用発明、引用文献2、3、5及び6に記載された事項及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-09 
結審通知日 2016-02-16 
審決日 2016-02-29 
出願番号 特願2010-214674(P2010-214674)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須永 聡  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 中田 誠
谷垣 圭二
発明の名称 合成床版点検孔用窓材  
代理人 中前 富士男  
代理人 中前 富士男  
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