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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1313446
審判番号 不服2015-15929  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-28 
確定日 2016-04-14 
事件の表示 特願2012-219679「内燃機関の排気通路構造」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開、特開2014- 70624〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成24年10月1日の出願であって、平成26年8月19日付けで拒絶理由が通知され、平成26年10月22日に意見書が提出されるとともに、明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成27年5月29日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年8月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成26年10月22日付け手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
内燃機関の3つ以上の気筒にそれぞれ連通する排気通路の構造であって、
前記排気通路のうち、気筒列方向の両外側の気筒にそれぞれ連通する2つの外側通路が、排気の流れの下流側に向かって気筒列方向の内側に近寄るように湾曲している一方、
前記排気通路のうち、気筒列方向の内側の気筒に連通する内側通路には、排気の流れの下流側に向かって、気筒中心線方向の一側および他側に交互に湾曲する3つ以上の湾曲部が互いに連続するように設けられている、ことを特徴とする内燃機関の排気通路構造。」

3 刊行物
ア 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-83756号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
本発明は,四つの気筒を備えた多気筒内燃機関において,内部に前記各気筒における排気ポート(排気通路)を集合した形態にして形成して成るシリンダヘッドの構造に関するものである。」(段落【0001】)

(イ) 「【0022】
そこで,請求項2に記載したように,前記第2集合排気ポートを,前記第1集合排気ポートの下側を立体交差するように構成することにより,両集合排気ポートのうち温度が高くなる傾向にある第2集合排気ポートを,シリンダヘッドの上面における動弁機構のうち排気弁用動弁機構から遠ざけることができるとともに,この第2集合排気ポートにおける曲がりが,当該第2集合排気ポートを前記第1集合排気ポートの上側を立体交差する場合によりも少なくなるから,前記排気弁用動弁機構に及ぶ熱害を低減できる。」(段落【0022】)

(ウ) 「【0052】
次に,図5及び図6は,第2の実施の形態を示す。
【0053】
この第2の実施の形態は,前記四サイクルの四気筒内燃機関1において,そのシリンダヘッド4における内部のうち,平面視において,前記クランク軸線2を挟んで前記各吸気ポート15と反対側の部分に,第1気筒A1における排気口7と第4気筒A4における排気口7とを集合する第1集合排気ポート16′(第1集合排気通路)を前記クランク軸線2の方向に延びるように形成するとともに,第2気筒A2における排気口7と第3気筒A3における排気口7とを集合するように略Y字状にした第2集合排気ポート17′(第2集合排気通路)を,前記第1集合排気ポート16′と立体交差して他方の側面18に向かって延びるように形成するにおいて,この第2集合排気ポート17′を,前記第1の実施の形態とは逆に,前記第1集合排気ポート16′の上側を立体交差するように構成したものであり,その他の構成は前記第1の実施の形態と同様である。
【0054】
しかも,この第2の実施の形態においては,前記シリンダヘッド4の側面18に,下向きに湾曲した第1エルボ排気管路22と,同じく下向きに湾曲した第2エルボ排気管路23とを,第1エルボ排気管路22が前記第1集合排気ポート16′における排気ガス出口19′に,第2エルボ排気管路23が前記第2集合排気ポート17′における排気ガス出口20′に各々に連通するようにフランジ接続する場合において,前記第1エルボ排気管路22における湾曲半径R1を小さくする一方,前記第2エルボ排気管路23を,その湾曲半径R2を大きくすることにより,前記第1エルボ排気管路22における湾曲の外側において湾曲するように構成し,この両エルボ排気管路22,23の出口端22a,23aに,排気ガスを図示しない排気ガス浄化装置又は排気ターボ過給機に導くための排気管路21をフランジ接続するか,排気ガス浄化装置又は排気ターボ過給機を直接にフランジ接続するという構成にしている。
【0055】
なお,図面は,前記第1エルボ排気管路22と第2エルボ排気管路23とを一体の構成にした場合を示しているが,この両エルボ排気管路を別々の管路にして,その出口端において一つに集合するという構成にしても良い。
【0056】
この第2の実施の形態によると,前記第2集合排気ポート17′において各気筒の排気口から第2エルボ排気管路23の出口端23aまでの通路長さは,この第2集合排気ポート17′を第1集合排気ポート16′の上側に立体交差した分だけ,当該第2集合排気ポート17′を第1集合排気ポート16′の下側に立体交差した場合よりも長くなることに加えて,前記第2エルボ排気管路23を,第1エルボ排気管路22における下向き湾曲の外側において下向きに湾曲した分だけ長くなって,前記第2集合排気ポート17′及び第2エルボ排気管路23における通路長さが,前記第1集合排気ポート16′において各気筒の排気口から第1エルボ排気管路22の出口端22aまでの通路長さに近づき,この間における通路長さの差を小さくなるから,前記第1集合排気ポート16′と前記第2集合排気ポート17′との間における排気ガスの排出の不均等を,前記第1の実施の形態の場合よりも大幅に改善できる。
【0057】
そして,この第2の実施の形態においては,前記第1エルボ排気管路22と第2エルボ排気管路23とを,下向きに湾曲することに代えて,下向きにL字状に屈曲した形状にしても良く,この場合においても,第2エルボ排気管路23を,第1エルボ排気管路における下向き屈曲の外側において下向きに屈曲することにより,同様に効果を達成することができる。
【0058】
また,この第2の実施の形態においては,前記第1集合排気ポート16′を,前記クランク軸線2の方向,つまり,各気筒の列方向から見て,図5に示すように,当該第1集合排気ポート16′における排気ガス出口19′が当該第1集合排気ポート16′の途中部分よりも低い部位に位置するように上向き凸状に湾曲することにより,前記シリンダヘッド4のうち前記両集合排気ポート16′,17′を形成する部分における高さ寸法H′を,前記第1集合排気ポート16′における排気ガス出口19′を低い部位に位置した分だけ低くすることができるように構成している。
【0059】
更にまた,この第2の実施の形態においても,前記両集合排気ポート16′,17′における排気ガス出口19′,20′を,第2気筒A2と第3気筒A3との中間位置に上下に二段に並べて設けていること,気筒の列方向に横長の形状に構成していること,及び,前記第1集合排気ポート16′のうち第1気筒A1と排気ガス出口19′との間における部分及び第4気筒A4と排気ガス出口19′との間における部分を,図1及び図4と同様に前記排気ガス出口19′に向かって外向きに傾斜するように構成していることは勿論である。
【0060】
なお,前記各実施の形態は,一本のクランク軸に対して四つの気筒を備えた直列の四気筒内燃機関1に適用した場合であったが,本発明は,これに限らず,二つのバンクの各々に四つの気筒を設けて成るV型の八気筒内燃機関において,両バンクに対しても,同様に適用できることはいうまでもない。」(段落【0052】ないし【0060】)

イ 刊行物発明
上記アの記載及び図面の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。

<刊行物発明>
「内燃機関の3つ以上の気筒にそれぞれ連通する排気通路の構造であって、
前記排気通路のうち、気筒列方向の両外側の気筒にそれぞれ連通する2つの外側通路が、排気の流れの下流側に向かって気筒列方向の内側に近寄るように湾曲している一方、
前記排気通路のうち、気筒列方向の内側の気筒に連通する内側通路には、排気の流れの下流側に向かって、第1の湾曲部、直線的に延びる部分、第2の湾曲部、第3の湾曲部が順に設けられている内燃機関の排気通路構造。」

4 対比・判断
本願発明(以下、「前者」ともいう。)と刊行物発明(以下、「後者」ともいう。)とを対比すると、後者における「前記排気通路のうち、気筒列方向の内側の気筒に連通する内側通路には、排気の流れの下流側に向かって、第1の湾曲部、直線的に延びる部分、第2の湾曲部、第3の湾曲部が順に設けられている」と前者における「前記排気通路のうち、気筒列方向の内側の気筒に連通する内側通路には、排気の流れの下流側に向かって、気筒中心線方向の一側および他側に交互に湾曲する3つ以上の湾曲部が互いに連続するように設けられている」は、「前記排気通路のうち、気筒列方向の内側の気筒に連通する内側通路には、排気の流れの下流側に向かって、3つ以上の湾曲部が設けられている」という点で一致する。
以上から、本願発明の用語に倣って整理すると、本願発明と刊行物発明とは、
「内燃機関の3つ以上の気筒にそれぞれ連通する排気通路の構造であって、
前記排気通路のうち、気筒列方向の両外側の気筒にそれぞれ連通する2つの外側通路が、排気の流れの下流側に向かって気筒列方向の内側に近寄るように湾曲している一方、
前記排気通路のうち、気筒列方向の内側の気筒に連通する内側通路には、排気の流れの下流側に向かって、3つ以上の湾曲部が設けられている内燃機関の排気通路構造。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明においては、「前記排気通路のうち、気筒列方向の内側の気筒に連通する内側通路には、排気の流れの下流側に向かって、気筒中心線方向の一側および他側に交互に湾曲する3つ以上の湾曲部が互いに連続するように設けられている」のに対し、
刊行物発明においては、「前記排気通路のうち、気筒列方向の内側の気筒に連通する内側通路には、排気の流れの下流側に向かって、第1の湾曲部、直線的に延びる部分、第2の湾曲部、第3の湾曲部が順に設けられている」点で相違する点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。
刊行物発明における内側通路の第1の湾曲部と第2の湾曲部は直線的に延びる部分を介して接続され、第2の湾曲部と第3の湾曲部は直線的に延びる部分を介することなく接続されていることからも了解されるように、複数の湾曲部を連続して接続するか、直線的に延びる部分を介して接続するかは、排気効率、他の構成要素への排気熱の影響、各湾曲部の所要の緩急・長さ、シリンダヘッドの幅寸法、冷却水ジャケット等のレイアウト等を考慮して適宜設計する事項である。そして、例えば、動弁機構12への排気熱の影響をさらに低減するという観点から、直線的に延びる部分を、第1の湾曲部と接続して延びる上方に凸の湾曲形状(あるいは第1の湾曲部の一部をなす上方に凸の湾曲形状)と、該上方に凸の湾曲形状の下流側端部と接続して延び、第2の湾曲部に接続する下方に凸の湾曲形状(あるいは第2の湾曲部の一部をなす下方に凸の湾曲形状)とから形成することは、熱害の低減という刊行物発明の課題ないし効果(上記3のア(イ)参照。)に適合する至極当然の合理的な設計であって、適宜なし得ることであり、そのような設計をした場合、第1の湾曲部、第2の湾曲部及び第3の湾曲部は、気筒中心線方向の一側および他側に交互に湾曲することとなる。


以上のとおり、刊行物発明に基づいて相違点に係る本願発明の特定事項に想到することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明は、全体としてみても、刊行物発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 結語
以上に述べたとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-08 
結審通知日 2016-02-09 
審決日 2016-02-29 
出願番号 特願2012-219679(P2012-219679)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 梶本 直樹
伊藤 元人
発明の名称 内燃機関の排気通路構造  
代理人 特許業務法人あーく特許事務所  

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