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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1313464
審判番号 不服2014-20139  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-06 
確定日 2016-04-12 
事件の表示 特願2011-532720号「導光体」拒絶査定不服審判事件〔平成22年4月29日国際公開、WO2010/046694、平成24年3月15日国内公表、特表2012-506608号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年10月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2008年10月21日 (GB)英国)を国際出願日とする出願であって、平成25年9月13日付けで拒絶の理由が通知され、期間を指定して意見を述べる機会を与えたが請求人から何ら応答はなく、平成26年5月30日付けで拒絶査定がされ、同査定の謄本は平成26年6月4日に請求人に送達された。
これに対して、平成26年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正書が提出された。

第2 平成26年10月6日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年10月6日の手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成26年10月6日の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
なお、下線部は補正箇所を示す。
「【請求項1】
導光板と1又はそれ以上の光源とを含む、導光装置であって、
前記導光板は導光材料の第1層を含み、該第1層の第1表面上に導光材料の第2層が取り付けられ、
導光材料の前記第1層と第2層の界面に1又はそれ以上の光散乱構造が設けられ、
前記1又はそれ以上の光源からの光は、導光材料の前記第1層及び導光材料の前記第2層の両者の中を全反射によって案内され、前記1又はそれ以上の光散乱構造は、前記案内される光の全反射を散乱し、該散乱された光は、前記案内される光の方向と直交するか、又は実質的に直交する方向に出射される
ことを特徴とする導光装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1及び請求項13の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
導光材料の第1層を含み、該第1層の第1表面上に導光材料の第2層が取り付けられ、導光材料の前記第1層と第2層の界面に1又はそれ以上の光散乱構造が設けられた、
ことを特徴とする導光板。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の導光板と、1又はそれ以上の光源と、を含む、導光装置。」

2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無
上記本件補正は、補正前の請求項1を引用する請求項13に係る発明を特定するために必要な事項である「導光材料の第1層」、「導光材料の第2層」及び「光散乱構造」について、「前記1又はそれ以上の光源からの光は、導光材料の前記第1層及び導光材料の前記第2層の両者の中を全反射によって案内され、前記1又はそれ以上の光散乱構造は、前記案内される光の全反射を散乱し、該散乱された光は、前記案内される光の方向と直交するか、又は実質的に直交する方向に出射される」という事項を限定することで、「光源からの光」との関係において「導光材料の第1層」、「導光材料の第2層」及び「光散乱構造」の構成を限定するものであり、かつ、当該補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記事項は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであるので、上記本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)刊行物に記載の事項及び発明
ア 刊行物に記載の事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特表2007-535790号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で加筆した。以下、同様である。
(1a)
「【0002】
本発明は、照明ソリューションにおいて光源から光を導光するための導光体に関する。導光体は超薄型の導光体層及び多層の適用分野を含み得る。更には、本発明は、導光体及び照明ソリューションを含む照明要素を備える。また、本発明は製造方法に関する。導光体及び照明要素は、他の適用分野の中でもとりわけ表示装置用照明(例えば、バックライト、フロントライト)、屋内照明、屋外照明に利用可能である。」
(1b)
「【0003】
超薄型照明要素が提供される。この照明要素は、少なくとも1つの光源を含む。導光体要素が、少なくとも一方の表面の少なくとも1つの部分に複数の個別的な微細光学的表面浮出し構造を有する1つの導光体層を含む。それぞれの表面浮出し構造は、高さが約10ミクロン以下で、それぞれの横寸法が約10ミクロン以下の基本的な構造的特徴を有する。それぞれの表面浮出し構造の数、配置、及びサイズ、並びに表面浮出し構造の構造的特徴の高さ及び横寸法が、導光体要素に入光される光を所望の程度に出光調節するように変更され得る。」
(1c)
「【0007】
本発明は、導光体要素を含む照明要素を提供した。この導光体要素は、少なくとも1つの導光体層を含む。1つ又は複数の導光体層は、多様な異なる材料から作製され得る。代表的には、任意の光学的に透明な材料が利用可能である。利用可能な材料の例としては、PMMA、PC、PET、及び他のポリマーが含まれる。これらの材料は、透明でUV硬化性又は熱硬化性であり得る。」
(1d)
「【0009】
これらの少なくとも1つの導光体層は、少なくとも1つの表面の少なくとも1つの部分に複数の個別の微細な光学的な浮出し構造グループを含む。表面浮出し構造グループは、各導光体層のそれぞれの側面の少なくとも一部に設けられ得る。それぞれの表面浮出しグループは、基本的な構造的特徴から構成される。これらの構造的特徴は、異なる断面波形のような様々な断面を有する(個別の、又は非連続的な)溝を含み得る。表面浮出し構造は、回折及び/又は屈折構造を含み得る。上記構造的特徴は、これらが導光体層から光を出光できるように任意の断面形状を有し得る。グループからグループへの出光は、キーパッド等による場合と同様であり得る。他方では、それぞれのグループの出光が異なり得る。1つのグループの出光を当該グループの異なる箇所で変更することも望ましい。」
(1e)
「【0010】
上記構造的特徴は、これらが導光体層から光を出光できるような任意の断面形状を有し得る。例えば、光の出光のための光学的表面浮出し構造は、代表的には微細格子構造である。格子断面は、とりわけバイナリ形状、ブレーズド形状、傾斜形状、正弦波形状、又は混成形状であり得る。上記導光体層の出光構造は、表面全体で均一な照明を形成するために、又は好適な形状を有する好適な領域内に個別の照明を形成するような設計が可能である。格子構造は、例えば、ブレーズド型格子を利用して0°角(コリメート光)で高い出光効率を実現するために最適化され得る。」
(1f)
「【0011】
上記表面浮出し構造は、導光体層の表面全体にわたって又は実質的に表面全体にわたって配置可能である。変形例として、表面浮出し構造は、導光体層の1つの領域全体に限定されてもよい。幾つかの実施形態では、上記表面浮出し構造が少なくとも1つの導光体層のある領域に限定される。これらの領域は、任意の導光体層に規則的に又は不規則に配置され得る。所望の出光程度が表面浮出し構造の配置に影響を及ぼし得る。1つ又は複数の光源に近いことも表面浮出し構造の配置に影響を及ぼし得る。例えば、少なくとも1つの光源の近傍にある導光体層の領域では、出光構造グループは導光体層の面積の約10%以下を含む。」
(1g)
「【0012】
それぞれの表面浮出し構造は基本的な構造的特徴を含む。これらの基本的な特徴の寸法は、所望の出光程度及び利用されている光の波長に依存し得る。代表的には、基本的な特徴は、高さが約10ミクロン以下であり、それぞれの横寸法が約10ミクロン以下である。より代表的には、基本的特徴は、高さが約10ミクロン未満であり、それぞれの横寸法が約10ミクロン未満である。
【0013】
図24a及び24bは、本発明に係る表面浮出し構造の基本的な構造的特徴の様々な実施形態の断面図を示す図である。これらの形状は、基本的な構造的要素が有し得る断面形状の幾つかの例を代表するにすぎない。導光体層はいずれも、表面浮出し構造の任意の領域に、これらのいずれか1つ又は複数の形状を含み得る。これらの特徴の理解を促すために、これらの特徴は幾つかの個別のグループで図示される。本明細書での説明から明らかなように、表面浮出し構造は任意の導光体層の任意の箇所に設けてもよい。」
(1h)
「【0014】
導光体要素は2つ以上の導光体層を含み得る。照明要素が2つ以上の導光体層を含む場合には、導光体層は同じ断面積を有してもよい。変形例として、導光体層は異なる断面積を有してもよい。導光体層の数は導光体要素によって異なり得る。単一の導光体層の厚さは約0.01mmから約0.4mmであり得る。導光体要素は光源の高さと同様の厚さを有し得る。」
(1i)
「【0015】
導光体要素全体は平面的であり得る。1つ又は複数の導光体要素の少なくとも一部分は柔軟及び/又は曲げ可能であり得る。その曲げは恒久的であってもよいし、又は導光体要素は使用時に曲げられてもよい。導光体は、湾曲又は曲折したどちらの面でも、光がそれを通じて依然として伝搬可能であり、且つそれから出光可能であるという意味で柔軟性がある。導光体要素が2つ以上の導光体層を含む場合には、1つ又は複数の導光体層が曲げ可能であり且つ/又は柔軟であり得る。導光体要素の少なくとも一部が湾曲しているとき、その湾曲の角度は代表的には全反射角を超えることはない。」
(1j)
「【0053】
図4aは、出光のための表面の少なくとも一方の側面に光学的表面浮出し構造3gを含む、本発明に係る湾曲した超薄型導光体要素2gの実施形態を例示する。本実施形態の超薄型導光体は、全反射理論を実現するために柔軟であり、好適な形状に湾曲され得るが、全反射角を超えることはない。このような超薄型導光体ソリューションは、上面LED1dを利用することができる。
【0054】
図4bは、出光のための表面の少なくとも一方の側面に光学的表面浮出し構造3hを有する、本発明に係るダブルの湾曲された超薄型導光体要素2hの実施形態を例示する。この超薄型導光体は、全反射理論を実現するために柔軟であり、好適な形状に湾曲され得るが、全反射角を超えることはない。このような超薄型導光体ソリューションは、上面LED1dを利用する少なくとも2つの入光表面を含むことができる。」
(1k)
「【0057】
図6aは、出光のための全表面の両層の一方の側面に光学的表面浮出し構造3kを有する2つの導光体層2’k及び2’’kに基づく多層導光体要素積層5aの実施形態を例示する。この導光体ソリューションは、代表的に約0.4から約0.8mmの実質的に均一な厚さを有し、同じ高さのLED1fを備える。」

イ 刊行物に記載された発明
(ア)上記ア(1j)に記載の「全反射理論」、導光体の一般的な機能、及び、刊行物の図6aを参照すると、「LED1f」からの光が、「導光体層2’k」及び「導光体層2’’k」の中を反射によって案内されていることが、明らかである。
(イ)上記ア(1a)?(1k)、刊行物の図6a及び上記(ア)から、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「多層導光体要素積層5aと、LED1fを備える、照明要素であって、
多層導光体要素積層5aは、一方の側面に光学的表面浮出し構造3kを有する2つの導光体層2’k及び2’’kに基づき、
LED1fからの光が、導光体層2’k及び導光体層2’’kの中を反射によって案内され、光学的表面浮出し構造は、導光体層から光を出光できるように任意の断面形状を有し、微細格子構造等で、格子断面は正弦波形状等である
照明要素。」

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「多層導光体要素積層5a」、「LED1f」及び「照明要素」は、それぞれ、本願補正発明の「導光板」、「光源」及び「導光装置」に相当する。
そうすると、引用発明の「多層導光体要素積層5aと、LED1fを備える、照明要素であって」は、本願補正発明の「導光板と1又はそれ以上の光源とを含む、導光装置であって」に相当する。
(イ)引用発明の「導光体層2’k」及び「導光体層2’’k」は、刊行物の図6aを参照すると、「導光体層2’’k」の表面に「導光体層2’k」が取り付けられていることが明らかであり、いずれの層も、導光する層であり、上記(2)ア(1c)の記載事項を参照すると、導光材料で構成されているといえるので、本願補正発明の「導光材料の第1層」及び「導光材料の第1層」に相当する。
引用発明の「光学的表面浮出し構造3k」は、「導光体層から光を出光できるように」「正弦波形状等」の形状をしているから、案内される光の反射を散乱しているといえるので、引用発明の「光学的表面浮出し構造3k」は、本願補正発明の「光散乱構造」に相当する。
引用発明の「光学的表面浮出し構造3k」は、「導光体層」の「一方の側面」に設けられるものであり、刊行物の図6a及び図7aを参照すると、「導光体層2’k」と「導光体層2’’k」とが接することで、各「導光体層」の「一方の側面」に設けられた「光学的表面浮出し構造3k」が互いに接しているのは明らかであり、それらが接している面は、「導光体層2’k」と「導光体層2’’k」との界面といえるから、引用発明の「光学的表面浮出し構造3k」は、その界面に位置しているといえる。
そうすると、引用発明の「多層導光体要素積層5aは、一方の側面に光学的表面浮出し構造3kを有する2つの導光体層2’k及び2’’kに基づき」と、本願補正発明の「前記導光板は導光材料の第1層を含み、該第1層の第1表面上に導光材料の第2層が取り付けられ、導光材料の前記第1層と第2層の界面に1又はそれ以上の光散乱構造が設けられ」とは、「前記導光板は導光材料の第1層を含み、該第1層の第1表面上に導光材料の第2層が取り付けられ、導光材料の前記第1層と第2層の界面に1又はそれ以上の光散乱構造が位置し」の限りにおいて共通するといえる。
(ウ)引用発明の「光学的表面浮出し構造3k」は、「導光体層から光を出光できるように」、「導光体層の中を反射によって案内され」る光を散乱していること及び本願補正発明と同様にバックライト等に用いられるものであること(上記(2)ア(1a)の記載事項を参照)から、この散乱された光は、LED1fからの光が案内される方向(「導光体層2’k」及び「導光体層2’’k」の長手方向ないし光が「光学的表面浮出し構造3k」に入射する方向)に対して、実質的に直交する方向に出射されるといえる。
そうすると、引用発明の「LED1fからの光が、導光体層2’k及び導光体層2’’kの中を反射によって案内され、光学的表面浮出し構造は、導光体層から光を出光できるように任意の断面形状を有し、微細格子構造等で、格子断面は正弦波形状等である」ことと、本願補正発明の「前記1又はそれ以上の光源からの光は、導光材料の前記第1層及び導光材料の前記第2層の両者の中を全反射によって案内され、前記1又はそれ以上の光散乱構造は、前記案内される光の全反射を散乱し、該散乱された光は、前記案内される光の方向と直交するか、又は実質的に直交する方向に出射される」こととは、「前記1又はそれ以上の光源からの光は、導光材料の前記第1層及び導光材料の前記第2層の両者の中を反射によって案内され、前記1又はそれ以上の光散乱構造は、前記案内される光の反射を散乱し、該散乱された光は、前記案内される光の方向と直交するか、又は実質的に直交する方向に出射される」ことの限りにおいて共通するといえる。

イ 以上より、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「導光板と1又はそれ以上の光源とを含む、導光装置であって、
前記導光板は導光材料の第1層を含み、該第1層の第1表面上に導光材料の第2層が取り付けられ、
導光材料の前記第1層と第2層の界面に1又はそれ以上の光散乱構造が位置し、
前記1又はそれ以上の光源からの光は、導光材料の前記第1層及び導光材料の前記第2層の両者の中を反射によって案内され、前記1又はそれ以上の光散乱構造は、前記案内される光の反射を散乱し、該散乱された光は、前記案内される光の方向と直交するか、又は実質的に直交する方向に出射される導光装置。」
<相違点1>
本願補正発明は、「導光板は導光材料の第1層を含み、該第1層の第1表面上に導光材料の第2層が取り付けられ、導光材料の前記第1層と第2層の界面に1又はそれ以上の光散乱構造が設けられ」ているのに対して、引用発明は、「前記導光板は導光材料の第1層を含み、該第1層の第1表面上に導光材料の第2層が取り付けられ、導光材料の前記第1層と第2層の界面に1又はそれ以上の光散乱構造が位置し」ている点。
<相違点2>
本願補正発明は、「前記1又はそれ以上の光源からの光は、導光材料の前記第1層及び導光材料の前記第2層の両者の中を全反射によって案内され、前記1又はそれ以上の光散乱構造は、前記案内される光の全反射を散乱し、該散乱された光は、前記案内される光の方向と直交するか、又は実質的に直交する方向に出射される」のに対して、引用発明は、「前記1又はそれ以上の光源からの光は、導光材料の前記第1層及び導光材料の前記第2層の両者の中を反射によって案内され、前記1又はそれ以上の光散乱構造は、前記案内される光の反射を散乱し、該散乱された光は、前記案内される光の方向と直交するか、又は実質的に直交する方向に出射される」点。

(4)判断
ア 以下、相違点について検討する。
<相違点1について>
(ア)引用発明の光学的表面浮出し構造が界面に位置していることは、光学的表面浮出し構造(本願補正発明の「光散乱構造」に相当)が界面に設けられていることといえるので、相違点1は、実質的には相違点とはいえず、一致点であるといえる。
(イ)また仮に、本願補正発明において、光散乱構造が界面に設けられていることが、光散乱構造が第1層と第2層とからは独立した別の部材であること等を意味しているとしても、光散乱構造部分を別の部材で構成することは、例示するまでもない周知技術であり、この周知技術に鑑みることで、引用発明において、光散乱構造部分を別の部材で構成して、引用発明の「導光材料の前記第1層と第2層の界面に1又はそれ以上の光散乱構造が位置し」ている構成を、「導光材料の前記第1層と第2層の界面に1又はそれ以上の光散乱構造が設けられ」ている構成とすることは、当業者であれば適宜になし得たことにすぎない。
<相違点2について>
(ア)上記(2)ア(1i)及び(1j)並びに刊行物の図4a及び図4bの記載事項から、刊行物には、光源からの光を導光材料の層の中を全反射させることで案内する技術事項(以下、「刊行物に記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
(イ)引用発明も上記(ア)の刊行物に記載の技術事項も、光源からの光を導光材料の層の中を反射させることにより案内するという同じ技術分野に属するので、上記の刊行物に記載の技術事項を、引用発明に適用して、引用発明において、光源からの光を、導光材料の層の中を全反射させることで、上記相違点2に係る本願補正発明の構成に到ることは、格別に困難なことではない。
(ウ)なお、上記(2)ア(1i)の「導光体要素の少なくとも一部が湾曲しているとき、その湾曲の角度は代表的には全反射角を超えることはない」という記載事項から、「導光体要素」が湾曲されていない直線状のものであれば、全反射しているともいえる。このことを踏まえると、引用発明は、刊行物の図6aに示すように、「導光体層2’k」及び「導光体層2’’k」は、いずれも湾曲されていない直線状のものであるから、全反射することが示唆されているものと認められ、この示唆から、引用発明において、光を案内する反射を、全反射とすることは、適宜になし得たことともいえる。

イ そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明、刊行物に記載の技術事項及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別に顕著なものということはできない。

ウ したがって、本願補正発明は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)、刊行物に記載の技術事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成26年10月6日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?25に係る発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1?25に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2 1.(2)に記載のとおりのものである。

(2)刊行物に記載の事項及び発明
ア 刊行物に記載の事項
刊行物の記載事項は、上記第2 3.(2)アに示したとおりである。

イ 刊行物に記載された発明
刊行物に記載された発明は、上記第2 3.(2)イに示した「引用発明」のとおりである。

(3)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明は、本願補正発明から、上記第2 2.で述べた「導光板と1又はそれ以上の光源とを含む、導光装置であって」「前記1又はそれ以上の光源からの光は、導光材料の前記第1層及び導光材料の前記第2層の両者の中を全反射によって案内され、前記1又はそれ以上の光散乱構造は、前記案内される光の全反射を散乱し、該散乱された光は、前記案内される光の方向と直交するか、又は実質的に直交する方向に出射される」という限定事項を、省いたものである。

イ そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2 3.(3)イの<相違点1>で相違し、その余の部分では一致しているといえる。

(4)判断
上記(3)イの相違点についての判断は、上記第2 3.(4)ア<相違点1について>で述べたとおりであり、当業者が適宜になし得たといえる。

(5)本願の請求項7に係る発明について
ア 請求項1を引用する部分については、上記(2)?(4)で述べたとおおりである。

イ 「1又はそれ以上の光散乱構造が透明インク中に分散されている」ことは、例えば、原査定の拒絶の理由で示した登録実用新案第3019466号公報(段落【0002】)、原査定の拒絶の理由で示した特開2002-287143号公報(段落【0038】)、実願平5-63947号(実開平7-29532号)のCD-ROM(段落【0005】及び図1)、特開平5-181134号公報(段落【0021】【0022】【0028】及び図1?4)、特開平9-269418号公報(段落【0044】及び図1?4)、特開平7-120623号公報(段落【0012】及び図5)に示すように周知技術であって、この周知技術を引用発明に適用して、本願の請求項7に係る発明に到ることは、格別に困難なことではない。

ウ なお、本願の請求項7における限定は、平成27年7月17日提出の上申書における補正案の内容と同じであり、補正の機会を与える法的根拠は見出せないが、当該補正案のように限定する補正をしてみても、上記イで述べたとおりである。

(6)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)及び請求項7に係る発明は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-10 
結審通知日 2015-11-11 
審決日 2015-12-01 
出願番号 特願2011-532720(P2011-532720)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 則夫柿崎 拓  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 櫻田 正紀
出口 昌哉
発明の名称 導光体  
代理人 辻居 幸一  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 近藤 直樹  
代理人 上杉 浩  

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