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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
管理番号 1313490
審判番号 不服2014-12225  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-26 
確定日 2016-04-06 
事件の表示 特願2008-537270「可変ダイバーシティ利得を有する多重アンテナ伝送」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月 3日国際公開、WO2007/049208、平成21年 4月 2日国内公表、特表2009-514310〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,2006年10月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年10月28日 欧州特許庁,2006年2月6日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって,平成26年2月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ,当審により平成27年4月16日付けで通知された拒絶理由に対して,同年10月20日付けで手続補正がなされたものである。


その請求項1に係る発明は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,平成27年10月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下,「本願発明」という。)。

「【請求項1】
複数の空間無線チャネルを使用して情報を送信する送信器であって,前記情報の異なる部分を運ぶ2つ以上のデータストリームを得るように構成されるデマルチプレクサと,前記デマルチプレクサから出力されるデータストリームの複製を得るように構成されるダイバーシティスプリッタとを有し,前記デマルチプレクサ及び前記ダイバーシティスプリッタが,2つのそれぞれのデータストリームを送信するための2つのそれぞれの空間無線チャネルの使用から,同じデータストリームの2つのそれぞれの複製を送信するための前記2つのそれぞれの空間無線チャネルの使用への切り替えが行われるように制御される,送信器。」

なお,当審により通知された拒絶理由に対し,審判請求人は平成27年10月20日付け意見書において,請求項1-11,14-16は本願図面の図17に記載の実施の形態を請求したものであると主張しているから,本願発明は,図17の態様の送信器に関する発明であると認める。



2 引用発明
当審による拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2005/0226343号明細書(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「[0002] MIMO system may include a diversity MIMO system or multiplexing MIMO system. In the diversity MIMO system incoming bits may be coded over multiple transmitting antennas to gain sensitivity by exploiting multi path propagation channel property. In the multiplexing MIMO system the multiple transmitting antennas may be used to convey multiple modulated streams of data. In this MIMO system spatial decoding methods may be used to decode the modulated data streams.」(1ページ)
([当審仮訳]:
[0002] MIMOシステムは,ダイバーシティMIMOシステム又は多重MIMOシステムを含んでもよい。ダイバーシティMIMOシステムにおいて,入力ビットは,マルチパス伝送チャネル特性を利用することにより感度を得るために,複数の送信アンテナ上に符号化されてもよい。多重MIMOシステムにおいて,複数のアンテナは複数の変調されたデータのストリームを運ぶために利用されてもよい。このMIMOシステムにおいて,空間復号化方法が前記変調されたデータストリームを復号するために利用されてもよい。)

(2)「[0017] Turning to FIG.2, a block diagram of a transceiver 200 according to exemplary embodiments of the present invention is shown. Although the scope of the present invention is not limited in this respect, transceiver 200 may include MIMO system 210 and antennas 220 and 230. Although the scope of the present invention is not limited in this respect, exemplary MIMO system 210 may include a transmitter system 240 and receivers (RX) 250, 260. In some embodiments of the invention, at least on of the receivers 250, 260 may include carrier channel state information (CSI) analyzer 255, if desired.
[0018] Although the scope of the present invention is not limited in this respect, transmitter system 240 may include an encoder 241, a selector 242, mappers 243, 244, a mode selector 270 and Inverse Fast Furrier Transformer transmitters (IFFT TX) 246, 248. In addition, mode selector 270 may include a delay (D) 272 and a switch (SW) 274, if desired.
[0019] Although the scope of the present invention is not limited in this respect, a data stream that may include two or more bits B, may be inputted to encoder 241. Although the scope of the present invention is not limited in this respect, encoder 241 may be a convolution code encoder, a Turbo encoder, a Low-Density Parity Check (LDPC) encoder, or the like. In embodiments of the invention encoder 241 may encode the data stream. The encoded data stream may be inputted to selector 242. In some embodiments of the invention selector 242 may provide at least two data streams B^(1)_(n) and B^(2)_(n) wherein the superscript number (e.g. 1, 2) may be the number of the data stream and the subscript number (e.g. n) may be the bit number of the data stream.
[0020] Although the scope of the present invention is not limited in this respect, mappers 243 and 244 may received the data streams B^(1)_(n) and B^(2)_(n), respectively, and may provide two or more OFDM sub-carriers, symbols S^(1) and S^(2), if desired. For example, in some embodiments of the invention mappers 243 and 244 may map OFDM sub-carriers symbols from binary domain to a complex domain. For example, symbol (e.g. encoded in rate 1/2) “00” may be mapped to 0° (e.g. 1+j*0), symbol “01” may be mapped to 90° (e.g. +j), symbol “10” may be mapped to 180° (e.g. -1+j*0) and symbol “11” may be mapped to 270° (e.g. 1-j).
[0021] Although the scope of the present invention is not limited in this respect, the OFDM sub-carriers symbols (e.g. S^(1) and S^(2)) may be inputted to coding mode selector 270. In some embodiments of the invention, coding mode selector 270 may adaptively select a coding mode of the OFDM sub-carrier symbols according to a received CSI which relates to the OFDM sub-carrier. In those embodiments, coding mode selector 270 may adaptively code the OFDM sub-carrier either in diversity mode or in the multiplexing mode, if desired.
[0022] Although the scope of the present invention is not limited in this respect, in some embodiments of the invention, CSI may be received, for example, from AP 110, or from at least one of stations 150 and/or 120. RX 250 may receive the CSI and CSI analyzer 255 may analyze the received CSI. In addition, CSI analyzer 255 may alternate switch (SW) 274 to provide symbols with delay (e.g. diversity mode) or symbols from mapper 244 (e.g. multiplexing mode) to IFFT TX 248, if desired. In some embodiments of the invention, the analyzed information that may be, for example, eighen-channel value, a signal to noise ratio (SNR) or the like. In other embodiments of the invention, CSI analyzer 255 may analyze the transmitted OFDM sub-carrier symbol for example, based on channel estimation and/or SNR of the estimated channel, if desired.」(2ページ)
([当審仮訳]:
[0017] 図2に目を向けると,本発明の典型的な実施例による送受信機200のブロック図が示されている。本発明の範囲はこの事項に制限されないが,送受信機200はMIMOシステム210とアンテナ220及び230を含んでもよい。本発明の範囲はこの事項に制限されないが,典型的なMIMOシステム210は送信器システム240及び受信器(RX)250,260を含んでもよい。本発明のいくつかの実施例において,必要なら,受信器250,260の少なくとも1つはキャリアチャネル状態情報(CSI)アナライザ255を含んでもよい。
[0018] 本発明の範囲はこの事項に制限されないが,送信器システム240はエンコーダ241,セレクタ242,マッパ243,244,モードセレクタ270及び逆高速フーリエ変換送信器(IFFT TX)246,248を含んでもよい。加えて,モードセレクタ270は,必要なら,ディレイ(D)272及びスイッチ(SW)274を含んでもよい。
[0019] 本発明の範囲はこの事項に制限されないが,2つ又はそれ以上の複数のビットBを含み得る1つのデータストリームが,エンコーダ241に入力されてもよい。本発明の範囲はこの事項に制限されないが,エンコーダ241は畳み込み符号化器,ターボ符号化器,低密度パリティ検査(LDPC)符号化器,又は類似のものであってよい。本発明の実施例において,エンコーダ241は前記データストリームをエンコードしてもよい。エンコードされた前記データストリームはセレクタ242に入力されてもよい。本発明のいくつかの実施例において,セレクタ242は少なくとも2つのデータストリームB^(1)_(n)及びB^(2)_(n)を供給してもよく,ここで上付き文字(例えば1,2)はデータストリームの番号であってもよく,下付き文字(例えばn)はデータストリームのビットナンバーであってもよい。
[0020] 本発明の範囲はこの事項に制限されないが,マッパ243及び244は,前記データストリームB^(1)_(n)及びB^(2)_(n)をそれぞれ受信してもよく,また必要なら,2つ又はそれ以上のOFDMサブキャリア,シンボルS^(1)及びS^(2)を供給してもよい。例えば,本発明のいくつかの実施例において,マッパ243及び244は,バイナリドメインから複素ドメインへ,OFDMサブキャリアシンボルをマッピングしてもよい。例えば,シンボル(例えば1/2のレートでエンコードされている)“00”は0° (例えば1+j*0)にマッピングされ,シンボル“01”は90° (例えば+j)にマッピングされ,シンボル“10”は180° (例えば-1+j*0)にマッピングされ,シンボル“11”は270° (例えば1-j)にマッピングされてもよい。
[0021] 本発明の範囲はこの事項に制限されないが,前記OFDMサブキャリアシンボル(例えばS^(1)及びS^(2))は符号化モードセレクタ270に入力されてもよい。本発明のいくつかの実施例において,符号化モードセレクタ270は,OFDMサブキャリアに関連する受信したCSIに基づいて,適応的にOFDMサブキャリアシンボルの符号化モードを選択してもよい。これらの実施例において,符号化モードセレクタ270は,必要なら,ダイバーシティモード又は多重モードにおいて,OFDMサブキャリアを適応的に符号化してもよい。
[0022] 本発明の範囲はこの事項に制限されないが,本発明のいくつかの実施例において,CSIが,例えばAP110から,又は少なくとも1つの端末150及び/又は120から受信されてもよい。RX250はCSIを受信してもよく,CSIアナライザ255は受信した前記CSIを分析してもよい。加えて,前記CSIアナライザ255は,必要なら,遅延を含むシンボル(例えばタイバーシティモード)又はマッパ244からのシンボル(例えば多重モード)をIFFT TX248に供給するために,スイッチ(SW)274を切り替えてもよい。本発明のいくつかの実施例において,分析された情報は,例えばチャネル固有値,信号対雑音比(SNR)又は類似のものであってよい。本発明の別の実施例において,CSIアナライザ255は,必要なら,送信されたOFDMサブキャリアシンボルを,例えばチャネル推定及び/又は推定されたチャネルのSNRに基づいて分析してもよい。)

(3)


(4)「[0030] Although the scope of the present invention is not limited in this respect, CSI analyzer 255 may analyze the CSI and may command mode selector 270 to select the desired coding method, for example, diversity method, multiplexing method or the like. In some embodiments, CSI analyzer 255 may provide indication to switch 274 to select the multiplexing mode, if k,mux OFDM sub-carrier symbols may support p,min multiplexing order. In those embodiments, the sub-carrier symbols that support the p,min multiplexing order may be transmitted in the multiplexing mode and the other sub-carriers symbols may be transmitted in diversity mode. In embodiments of the invention, a single bit may be used to switch between the modes. For example, “1” may indicate to switch transmitter system 240 to multiplexing mode and “0” may indicate to switch transmitter system 240 to diversity mode, although the scope of the invention is not limited in this respect.」(3ページ)
([当審仮訳]:
[0030] 本発明の範囲はこの事項に制限されないが,CSIアナライザ255はCSIを分析し,モードセレクタ270に所望の符号化方法,例えばダイバーシティ方法,多重方法又は類似のもの,を選択するために命令してもよい。いくつかの実施例において,もし,k,muxのOFDMサブキャリアシンボルがp,minの多重化オーダをサポートするなら,CSIアナライザはスイッチ274に多重モードを選択するための表示を供給してもよい。これらの実施例において,p,minの多重化オーダをサポートするサブキャリアシンボルは多重モードで送信されてもよく,他のサブキャリアシンボルはダイバーシティモードで送信されてもよい。本発明の実施例において,単一のビットがモード間の切替えのために使用されてもよい。本発明の範囲はこの事項に制限されないが,例えば,“1”は送信器システム240を多重モードに切替えることを表示し,“0”は送信器システム240をダイバーシティモードに切替えることを表示してもよい。)


上記引用例の記載及び図面この分野における技術常識を考慮すると,

ア 上記(2)の[0017],[0019]の記載及び(3)のFIG.2によれば,引用例には,「複数のアンテナを使用して,複数のビットBを含む1つのデータストリームを送信する送信器システム」が記載されていると認められる。


イ 上記(2)の[0019]の記載及び(3)のFIG.2によれば,セレクタには,エンコーダによりエンコードされた前記複数のビットBを含む1つのデータストリームが入力され,2つのデータストリームB^(1)_(n)及びB^(2)_(n)を得るよう構成されている。

また,上記(2)の[0020]-[0023]及び(3)のFIG.2によれば,ダイバーシティモードでは,アンテナ220とアンテナ230の双方からデータストリームB^(1)_(n)が送信され,多重モードでは,アンテナ220からデータストリームB^(1)_(n)が,アンテナ230からデータストリームB^(2)_(n)が,それぞれ送信される。そして,上記(1)に記載されているように,引用例において,「ダイバーシティ」なる用語は,MIMOシステムにおいて,マルチパス伝送チャネル特性を利用することにより感度を得るために,入力ビットを複数の送信アンテナ上に符号化することを意味している一方で,「多重」なる用語は,MIMOシステムにおいて,複数の変調されたデータのストリームを運ぶために複数のアンテナを利用することを意味しており,ここで,「複数の変調されたデータのストリーム」とは,互いに異なるデータのストリームであると解するのが自然である。
加えて,MIMOシステムにおける「ダイバーシティ」すなわち「空間ダイバーシティ」は,複数のアンテナから同一のデータを送信することにより通信の品質や信頼性の向上を図る技術であり,MIMOシステムにおける「多重」すなわち「空間多重」は,複数のアンテナから異なるデータを同時に送信することにより転送レートの向上を図る技術であることは出願時における技術常識である。
してみれば,多重モードにて送信されるデータストリームB^(1)_(n)とデータストリームB^(2)_(n)とは,互いに異なるもの,すなわち互いに異なるビットを含むデータストリームであると解するのが合理的である。

更に言えば,仮に,審判請求人が平成27年10月20日付け意見書にて主張するように,多重モードにて送信されるデータストリームB^(1)_(n)とデータストリームB^(2)_(n)とが同一のビットを含むデータストリームであると解する場合,同一のビットを含むデータストリームが遅延を加えることなく2つのアンテナからそれぞれ送信される,すなわち「ダイバーシティ送信」が行われることとなるが,このようなモードを「多重モード」と称し,別のモード(同一のビットを含むデータストリームの複製を2つ得て,そのうちの一方に遅延を加えて2つのアンテナからそれぞれ送信するモード)を「ダイバーシティモード」と称することは不自然である。
このことからも,データストリームB^(1)_(n)とデータストリームB^(2)_(n)とは,互いに異なるビットを含むデータストリームであると解するのが合理的であって,かつ矛盾のない解釈である。

そうすると,セレクタへの入力である前記複数のビットBを含む1つのデータストリームから得られる2つのデータストリームB^(1)_(n)及びB^(2)_(n)は,互いに異なるビットを含むデータストリームであることから,前記複数のビットBを含む1つのデータストリームの異なる部分を運ぶものであるといえる。

したがって,引用例には,「前記複数のビットBを含む1つのデータストリームの異なる部分を運ぶ2つのデータストリームを得るように構成されるセレクタ」が記載されていると認められる。


ウ (3)のFIG.2によれば,セレクタから出力されるデータストリームB^(1)_(n)は,マッパによりマッピングされた後,IFFT TX246とディレイ272という別個のハードウェアに別々に入力される。してみれば,データストリームB^(1)_(n)を別個のハードウェアに別々の入力するため,データストリームB^(1)_(n)の複製を得るための構成を備えていることは明らかである。
したがって,引用例には,「前記セレクタから出力されるデータストリームの複製を得るための構成」が記載されていると認められる。


エ 上記(2)の[0019]及び(4)の記載によれば,送信器システムは,CSIアナライザからの命令すなわち制御により,多重モードとダイバーシティモードとの間,すなわち,データストリームB^(1)_(n)とデータストリームB^(2)_(n)とを2つのアンテナを使用してそれぞれ送信するモードと,データストリームB^(1)_(n)の複製を2つ得て,そのうちの一方に遅延を加えて前記2つのアンテナを使用してそれぞれ送信するモードとの間の切替えを行っている。
したがって,引用例には,「前記送信器システムが,2つのそれぞれのデータストリームを送信するための2つのそれぞれのアンテナの使用から,同じデータストリームの2つの複製を送信するための前記2つのそれぞれのアンテナの使用への切り替えが行われるように制御される」ことが記載されていると認められる。


したがって,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「 複数のアンテナを使用して,複数のビットBを含む1つのデータストリームを送信する送信器システムであって,
前記複数のビットBを含む1つのデータストリームの異なる部分を運ぶ2つのデータストリームを得るように構成されるセレクタと,
前記セレクタから出力されるデータストリームの複製を得るための構成とを有し,
前記送信器システムが,2つのそれぞれのデータストリームを送信するための2つのそれぞれのアンテナの使用から,同じデータストリームの2つの複製を送信するための前記2つのそれぞれのアンテナの使用への切り替えが行われるように制御される,
送信器システム。」



3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると,

(1)空間無線チャネルが,アンテナごとに定義されるものであることは,出願時における技術常識であるから,引用発明の「複数のアンテナを使用して,・・・送信する」は,「複数の空間無線チャネルを使用して,・・・送信する」といえる。また,引用発明の「複数のビットBを含む1つのデータストリーム」は,明らかに「情報」に含まれ,引用発明の「送信器システム」を「送信器」と称することは任意である。
したがって,引用発明の「複数のアンテナを使用して,複数のビットBを含む1つのデータストリームを送信する送信器システム」は,本願発明の「複数の空間無線チャネルを使用して情報を送信する送信器」に対応する。

(2)引用発明の「セレクタ」は,「前記複数のビットBを含む1つのデータストリームの異なる部分を運ぶ2つのデータストリームを得るように構成される」ものであるから,「前記情報の異なる部分を運ぶ2つのデータストリームを得るように構成される」点で,本願発明の「デマルチプレクサ」と共通する。そして,当該「セレクタ」を「デマルチプレクサ」と称することは任意である。
したがって,引用発明の「前記複数のビットBを含む1つのデータストリームの異なる部分を運ぶ2つのデータストリームを得るように構成されるセレクタ」は,本願発明の「前記情報の異なる部分を運ぶ2つ以上のデータストリームを得るように構成されるデマルチプレクサ」に対応する。

(3)本願発明と引用発明とは,「ダイバーシティスプリッタ」によるか否かは別として,「前記デマルチプレクサから出力されるデータストリームの複製を得るための構成」を有する点で共通する。

(4)本願発明の「前記デマルチプレクサ」及び「前記ダイバーシティスプリッタ」は,いずれも「送信器」を構成するものであるから,本願発明の「前記デマルチプレクサ及び前記ダイバーシティスプリッタが,・・・制御される」と,引用発明の「前記送信器システムが,・・・制御される」とは,制御の対象が,送信器を構成する「前記デマルチプレクサ」及び「前記ダイバーシティスプリッタ」であるか否かは別として,「前記送信器が,・・・制御される」点で共通する。
さらに,本願発明の「同じデータストリームの2つのそれぞれの複製」とは,本願明細書の【0074】及び図17の,「データストリームのコピーを作成し,そのうち一方が第1のアンテナに送られ,他方が第2のアンテナに送られる」旨の記載を参酌すると,「同じデータストリームの2つの複製」の意味と解されるから,引用発明の「同じデータストリームの2つの複製」は,本願発明の「同じデータストリームの2つのそれぞれの複製」に対応する。
したがって,本願発明の「前記デマルチプレクサ及び前記ダイバーシティスプリッタが,2つのそれぞれのデータストリームを送信するための2つのそれぞれの空間無線チャネルの使用から,同じデータストリームの2つのそれぞれの複製を送信するための前記2つのそれぞれの空間無線チャネルの使用への切り替えが行われるように制御される」と,引用発明の「前記送信器システムが,2つのそれぞれのデータストリームを送信するための2つのそれぞれのアンテナの使用から,同じデータストリームの2つの複製を送信するための前記2つのそれぞれのアンテナの使用への切り替えが行われるように制御される」とは,制御の対象が,送信器を構成する「前記デマルチプレクサ」及び「前記ダイバーシティスプリッタ」であるか否かは別として,「前記送信器が,2つのそれぞれのデータストリームを送信するための2つのそれぞれの空間無線チャネルの使用から,同じデータストリームの2つのそれぞれの複製を送信するための前記2つのそれぞれの空間無線チャネルの使用への切り替えが行われるように制御される」点で共通する。


したがって,本願発明と引用発明とは,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「 複数の空間無線チャネルを使用して情報を送信する送信器であって,前記情報の異なる部分を運ぶ2つ以上のデータストリームを得るように構成されるデマルチプレクサと,前記デマルチプレクサから出力されるデータストリームの複製を得るための構成とを有し,前記送信器が,2つのそれぞれのデータストリームを送信するための2つのそれぞれの空間無線チャネルの使用から,同じデータストリームの2つのそれぞれの複製を送信するための前記2つのそれぞれの空間無線チャネルの使用への切り替えが行われるように制御される,送信器。」

(相違点1)
一致点の「前記デマルチプレクサから出力されるデータストリームの複製を得るための構成」に関し,本願発明は「ダイバーシティスプリッタ」であるのに対し,引用発明は「ダイバーシティスプリッタ」であることが明らかでない点。

(相違点2)
一致点の「前記送信器が,・・・制御される」ことに関し,本願発明は,制御の対象が,送信器を構成する「前記デマルチプレクサ」及び「前記ダイバーシティスプリッタ」であるのに対し,引用発明は,「前記デマルチプレクサ」及び「前記ダイバーシティスプリッタ」であることが明らかでない点。



4 検討
上記各相違点についてまとめて検討する。

引用例の記載(上記「2 引用発明」の(2))によれば,仮に,ダイバーシティモードで動作している間に,2つのデータストリームB^(1)_(n)及びB^(2)_(n)を供給するように,すなわち1つのデータストリームB_(n)を2つのデータストリームB^(1)_(n)とB^(2)_(n)とに分割するようにセレクタを動作させるとすると,データストリームB^(1)_(n)のみが2つのアンテナを介して送信され,データストリームB^(2)_(n)は受信側において受信されないため,元のデータストリームB_(n)の一部しか受信できない不都合な状況となるから,そのような状況を回避するために,CSIアナライザが符号化モードセレクタ270をダイバーシティモードで動作するよう命令する際に,セレクタに対しても,データストリームB^(2)_(n)を出力しないよう(換言すれば,マッパ243にのみデータストリームを出力するよう)制御することは,当業者が当然に採用すべき構成にすぎない。
また,逆に多重化モードで動作している間は,マッパ243から出力された後に得られるデータストリームB^(1)_(n)のOFDMサブキャリアシンボルS1の2つの複製のうち,ディレイ272に入力される複製はスイッチ274で選択されないためアンテナから送信されないのであるから,そのような無駄な複製の生成を避けるために,「前記デマルチプレクサから出力されるデータストリームの複製を得るための構成」として,CSIアナライザの制御に応じてデータストリームの複製の生成の有無を選択可能な装置を設けることに,格別の困難はなく,当該装置を「ダイバーシティスプリッタ」と称することは任意である。

したがって,上記相違点は,格別困難なことではなく,当業者が容易になし得ることである。


そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び技術常識に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。


なお,審判請求人は平成27年10月20日付け意見書において,
「 しかしながら,同文献([当審注]:引用例)のB^(1)_(n)およびB^(2)_(n)における下付き文字(subscript)がデータストリーム中のビット番号を示し,上付き文字(superscript)がストリームの番号を示すのであるから(同文献段落0019),セレクタ242の出力はデータストリーム中の同じビットを異なるストリームとしたものに過ぎません。これは,同文献第2図において,ストリーム中のn番目のビットである入力ビットB_(n)に対して,セレクタ242が,同じくn番目のビットであるが異なるストリーム番号(1および2)を持つB^(1)_(n)およびB^(2)_(n)を出力していることからも明らかです。」と主張するが,上記「2 引用発明」のイの項で述べたとおり,データストリームB^(1)_(n)とデータストリームB^(2)_(n)とは,互いに異なるビットを含むデータストリームであると解するのが合理的かつ矛盾のない解釈であって,データストリームB^(1)_(n)とデータストリームB^(2)_(n)とが同一のビットを含むデータストリームであると解することは不自然であるから,上記主張は採用しない。



5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。


よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-11 
結審通知日 2015-11-12 
審決日 2015-11-25 
出願番号 特願2008-537270(P2008-537270)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 龍一藤江 大望高野 洋  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 林 毅
▲高▼橋 真之
発明の名称 可変ダイバーシティ利得を有する多重アンテナ伝送  
代理人 津軽 進  
代理人 矢ヶ部 喜行  
代理人 笛田 秀仙  
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