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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1313508
審判番号 不服2015-7641  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-23 
確定日 2016-04-06 
事件の表示 特願2013-215105「掴線器を用いて電線を掴持する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日出願公開、特開2014- 7956〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

本願は、2009年6月30日を国際出願日とする特願2011-520694号(以下「原出願」という。)の一部を平成25年10月15日の新たな特許出願としたものであって、平成26年7月23日付けで拒絶理由の通知がなされ、同年9月12日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ、平成27年2月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。



2 本願発明

本願の請求項1に係る発明は、平成26年9月12日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「本体に設けられ正面視略直線状の固定側掴線部と、該固定側掴線部に対向配置され該固定側掴線部に対して進退移動可能な可動側掴線部を備え、前記固定側掴線部と前記可動側掴線部の間に線状体を掴持可能な掴線器であって、
前記可動側掴線部を進退移動させる第1の作動部と、該第1の作動部と連接棒によって連結された第2の作動部の夫々一端が前記本体に回動自在に取着されており、
前記第1の作動部の他端は前記連接棒の一端に、前記第2の作動部の他端は前記連接棒の中腹に夫々回動自在に取着されており、
前記連接棒の他端は支点を介して引張部が回動自在(審決注)に取着されてなる掴線器を用いて電線を掴持する方法であって、
前記方法は、
前記連接棒の他端を前記固定側掴線部及び前記可動側掴線部と略平行に引っ張る工程を含み、
これにより、前記連接棒及び前記第2の作動部及び前記第1の作動部がリンクして動作し、前記可動側掴線部を前記固定側掴線部に対して前進させる
ことを特徴とする掴線器を用いて電線を掴持する方法。」
(審決注:「稼働自在」との記載は,「回動自在」の誤記と認められるので、上記のとおり認定した。)



3 引用文献

(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、実願昭58-90882号(実開昭59-195926号公報)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、第3、4図とともに、以下の事項が記載されている。「(なお、下線は、当審において付与したものである。以下、同じ。)

A 「まず構成を説明すると、第3図に示すように、掴(審決注:当庁のシステムは旧字体のフォントに対応していないため、新字体を用いることとする。以下、同じ。)線部の上位体にあたる受圧部1aを設けた本体1の縦面下部の一端部にはジョイントピン10の軸挿支持により後記する屈折レバー2よりも幾分短尺の可動腕部4が、長手方向に対する揺動自在に配置されている。また上記本体1の縦面下部の他端側にはほぼくの字形に形成された屈折レバー2が、後記するねじりバネ6を首下に軸嵌したピン7の軸挿支持により前記の可動腕部4と同様に長手方向に対する揺動自在に配置されている。上記屈折レバー2の上端部には掴線部の下位体にあたる押え金3が、ボルト11の螺挿によりこのレバー2と一体上下動が可能のように配置されている。この態様による屈折レバー2の下端孔部位置には基端に一次側張力E用の孔部5aを設けたロッド5が、その先端におけるピン8の挿通をもって上記レバー2にテコ方式による張力の伝達が可能のように連結されている。そして上記ロッド5の中途部には前記による可動腕部4の先端部がピン9の挿通をもって連結されている。なお屈折レバー2の支軸となるピン7の首下にはねじりバネ6の環状部が軸嵌されていて、このバネ6の一端は本体1に、また他端は屈折レバー2にそれぞれ弾発的に係合し、その支弾力により上記の押え金3は常時掴線する方向の上昇態様を維持するように構成されている。
上記構成により、この考案の掴線器は、ロッド5に対する支点の位置が本体1の一端側に揺動自在に配置されている可能腕部4と連結したピン9の挿通により一定化されているため、この支点ピン9から屈折レバー2のピン8までの長さAと上記支点ピン9からロッド5の孔部5aまでの長さBの比が、被覆電線Dの太さに関係なく一定化する。すなわちロッド5に図示しない張線器側からの一次張力Eが付加されると、その張力Eにより可動腕部4と屈折レバー2は各その基端部のピン10,7を支軸にして上記張力E側に牽引される。そして受圧部1aと押え金3とが被覆電線Dを掴線した時点からはピン9が固定的な支点の役割を果たすため、上記の被覆電線D(当審注:第3図からみて、「屈折レバー2」の誤りであると認められる。)はテコの方式により押え金3を上昇させることになる。従って受圧部1aと押え金3との掴線部においては、第3図のように被覆電線Dが太径であっても、また第4図のように細径であっても、その線径値に関係なくほぼ同じ比の力量をもって被覆電線Dを掴線することができるため、一次側の張力Eに対する掴線力の比率は殆ど変化しない。これにより仮に被覆電線Dが細径でも、受圧部1aと押え金3とによる掴線力の比が一定化することから、上記の掴線時において電線Dの被覆部を損傷するのを確実に防止できる。」(5ページ15行?8ページ5行)

B 第3図(a)には、受圧部1aと押え金3との間で被覆電線Dを掴線する被覆電線掴線器の正面図において、掴線部である受圧部1aと押え金3の直線状の部分が被覆電線Dを掴線し、ロッド5の屈折レバー2が連結される一端とは反対の他端に張力Eが作用する構成が記載されている。

ここで、上記引用文献1の記載事項について検討する。
C 掴線器の構成について
上記Aには、掴線器の構成について、「掴線部の上位体にあたる受圧部1aを設けた本体1」、「本体1の縦面下部の一端部にはジョイントピン10の軸挿支持により・・・中略・・・可動腕部4が、長手方向に対する揺動自在に配置され」ていること、「本体1の縦面下部の他端側にはほぼくの字形に形成された屈折レバー2が、・・・中略・・・ピン7の軸挿支持により・・・中略・・・揺動自在に配置され」ていること、「屈折レバー2の上端部には掴線部の下位体にあたる押え金3が、ボルト11の螺挿によりこのレバー2と一体上下動が可能のように配置され」ていること、「屈折レバー2の下端孔部位置には基端に張力E用の孔部5aを設けたロッド5が、その先端におけるピン8の挿通をもって上記レバー2に・・・中略・・・連結され」ていること、「ロッド5の中途部には前記による可動腕部4の先端部がピン9の挿通をもって連結され」ていることが記載されている。
よって、引用文献1には、
「掴線部の上位体にあたる受圧部1aが本体1に設けられ、
前記本体1の縦面下部の一端部には、ジョイントピン10の軸挿支持により可動腕部4が揺動自在に配置され、
前記本体1の縦面下部の他端側には、ほぼくの字形に形成された屈折レバー2が、ピン7の軸挿支持により揺動自在に配置され、
前記屈折レバー2の上端部には掴線部の下位体にあたる押え金3が、ボルト11の螺挿により前記屈折レバー2と一体上下動が可能のように配置され、
前記屈折レバー2の下端孔部位置には基端に張力E用の孔部5aを設けたロッド5が、その先端におけるピン8の挿通をもって前記屈折レバー2に連結され、前記ロッド5の中途部には前記可動腕部4の先端部がピン9の挿通をもって連結された掴線器」
が記載されている。

D 掴線器による被覆電線の掴線動作について
上記Aには、被覆電線の掴線動作として、
「ロッド5に図示しない張線器側からの一次張力Eが付加されると、その張力Eにより可動腕部4と屈折レバー2は各その基端部のピン10,7を支軸にして上記張力E側に牽引される。そして受圧部1aと押え金3とが被覆電線Dを掴線」
することが記載されている。

よって、A乃至D及び関連図面の記載から、引用文献1には、下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「掴線部の上位体にあたる受圧部1aが本体1に設けられ、
前記本体1の縦面下部の一端部には、ジョイントピン10の軸挿支持により可動腕部4が揺動自在に配置され、
前記本体1の縦面下部の他端側には、ほぼくの字形に形成された屈折レバー2が、ピン7の軸挿支持により揺動自在に配置され、
前記屈折レバー2の上端部には掴線部の下位体にあたる押え金3が、ボルト11の螺挿により前記屈折レバー2と一体上下動が可能のように配置され、
前記屈折レバー2の下端孔部位置には基端に張力E用の孔部5aを設けたロッド5が、その先端におけるピン8の挿通をもって前記屈折レバー2に連結され、前記ロッド5の中途部には前記可動腕部4の先端部がピン9の挿通をもって連結された掴線器を用いて被覆電線Dを掴線する方法であって、前記ロッド5に張線器側からの前記張力Eが付加されると、前記張力Eにより前記可動腕部4と前記屈折レバー2は各その基端部のピン10,7を支軸にして上記張力E側に牽引され、前記受圧部1aと前記押え金3とが被覆電線Dを掴線する方法。」


(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2002-27624号公報(以下「引用文献2」という。)には、図1とともに、以下の事項が記載されている。

E「【0009】被覆架線(被覆電線)の切分け作業は、先ず電柱間等に張架線された被覆架線9の2箇所において、その被覆部10を一対の掴線器12a、12bで掴持することから開始される。両掴線器12a、12bはチェーン15a、15bを介して棒状の伸縮器13に連結されている。ターンバックル方式の伸縮器13は、その軸心まわりの回転を与えることによって縮み、両掴線器12a、12bを引き寄せ、両者間の距離を縮めることにより、被覆架線9を弛ませる。被覆架線9の掴線器12a、12bの両外方部分9a、9bは、大きな引張力が作用した状態で、前記掴線器12a、12b、伸縮器13によって力学的に連結されている。また掴線器12a、12bには、被覆架線と伸縮器13とからの張力が作用しているが、この張力によって掴線器12a、12bの掴持力が強まるように構成されている。
【0010】次いで緊張状態に連結された両掴線器12a、12bの内側に位置する弛み部分の中央において、被覆架線9は切断される。その後図1に示すように、伸縮器13の両端近傍部に付設されて、被覆架線を保持する一対のホルダー16a、16bの一方16bを、伸縮器13の軸心まわりに180°回転させることにより、被覆架線9の両切断端17a、17bを開離させる。」

F 図1には、掴線器12aの張力が作用させる部位に孔が形成され、該孔にチェーン15aの一端が連結され、該チェーン15aの他端には棒状の伸縮器13の一端が連結され、該伸縮器13の他端にはチェーン15bの一端が連結され、該チェーン15bの他端は掴線器12bの張力が作用させる部位に形成された孔に連結され、該伸縮器13には被覆架線9a及び9bを保持するホルダー16a及び16bが設けられた構成が記載されている。


(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2004-194381号公報(以下「引用文献3」という。)には、図1とともに、以下の事項が記載されている。

G「【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る被覆架線1の切分け工事における接地方法を具現化して被覆架線1を接地した状態を示す正面図である。被覆架線1の切分け作業は、先ず、電柱間などに張架線された被覆架線1の2箇所において、それらの被覆部2を一対の掴線器3A,3Bで掴持することから開始される。両掴線器3A,3Bは、環ロープ4A,4Bを介して棒状の伸縮器7に連結されている。ターンバックル方式の伸縮器7は、操作環8を回転操作して軸心回りの回転を付与することによって伸縮し、縮んだときに両掴線器3A,3Bを互いに引き寄せて両者間の距離を縮小することにより、両掴線器3A,3Bの間で被覆架線1を弛ませる。
【0013】
被覆架線1における掴線器3A,3Bに対する外方部分1a,1bは、大きな引張力が作用した状態で、上記掴線器3A,3Bおよび伸縮器7を介して力学的に連結されている。また、掴線器3A,3Bとしては、周知のものが用いられており、この掴線器3A,3Bは、被覆架線1と伸縮器7からの張力が作用することにより、その張力によって掴線器3A,3Bの掴持力が強まるように構成されている。」

H 図1には、掴線器3Aの張力が作用させる部位に取り付けられた何らかの器具を介して環ロープ4Aの一端が連結され、該環ロープ4Aの他端には棒状の伸縮器7が連結され、該伸縮器7の他端には環ロープ4Bの一端が連結され、該環ロープ4Bの他端は掴線器3Bの張力が作用させる部位に取り付けられた何らかの器具に連結された構成が記載されている。



4 対比

(1)本願発明と引用発明との対応関係について
(1-1)掴線器により掴持される対象について
「掴線器を用いて被覆電線Dを掴線する方法」である引用発明では、掴線器により「被覆電線D」を掴持するものであるが、該「被覆電線D」は形状としては「線状体」であるともいえることから、引用発明の「被覆電線D」は、本願発明の「電線」及び「線状体」に相当する。

(1-2)電線を直接掴持する掴線部の構成について
本願発明の「固定側掴線部」は、「本体に設けられ正面視略直線状」であり、「可動側掴線部の間に線状体を掴持可能」とするものであり、また、本願発明の「可動側掴線部」は、「固定側掴線部に対向配置され該固定側掴線部に対して進退移動可能」であり、「固定側掴線部と前記可動側掴線部の間に線状体を掴持可能」とするものである。
これに対して、引用発明の「受圧部1a」は「本体1に設けられ」ており、引用発明の「押え金3」は「屈折レバー2と一体上下動が可能のように配置」されたものであり、「前記受圧部1aと前記押え金3」は「被覆電線Dを掴線する」ものであり、上記3(1)Bより引用文献1の第3図(a)には、受圧部1aと押え金3との間で被覆電線Dを掴線する被覆電線掴線器の正面図において、掴線部である受圧部1aと押え金3の直線状の部分が被覆電線Dを掴線する構成が記載されていることから、「押え金3」は「受圧部1a」に対向して配置され、屈折レバー2と一体上下動することで「受圧部1a」に対して進退移動可能な構成であると認められる。
よって、引用発明の「受圧部1a」は、本願発明の「本体に設けられ正面視略直線状の固定側掴線部」に相当し、引用発明の「押え金3」は、本願発明の「該固定側掴線部に対向配置され該固定側掴線部に対して進退移動可能な可動側掴線部」に相当する。
また、上記(1-1)の事項を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記固定側掴線部と前記可動側掴線部の間に線状体を掴持可能な掴線器」である点で共通している。

(1-3)掴線部を可動させるための構成について
ア 本願発明の「第1の作動部」は、「可動側掴線部を進退移動させる」ものであり、「一端が前記本体に回動自在に取着」されたものである。
これに対して、引用発明の「屈折レバー2」は、「上端部」に「掴線部の下位体にあたる押え金3が、ボルト11の螺挿により前記屈折レバー2と一体上下動が可能のように配置」され、「本体1の縦面下部の他端側には、ほぼくの字形に形成された屈折レバー2が、ピン7の軸挿支持により揺動自在に配置され」たものであるから、「屈折レバー2」は、ピン7を軸に本体1に対して揺動することで、上端部にボルト11で連結された押え金3を上下に進退移動させているものと認められる。

イ 本願発明の「第2の作動部」は、「一端が前記本体に回動自在に取着」されたものである。また、本願発明の「連接棒」については、「前記第1の作動部の他端は前記連接棒の一端に、前記第2の作動部の他端は前記連接棒の中腹に夫々回動自在に取着」されることで、「第1の作動部」と「第2の作動部」を連結させるものである。
これに対して、引用発明の「可動腕部4」については、「本体1の縦面下部の一端部には、ジョイントピン10の軸挿支持により可動腕部4が揺動自在に配置され」されたものであり、また、引用発明の「ロッド5」については、「前記屈折レバー2の下端孔部位置には基端に張力E用の孔部5aを設けたロッド5が、その先端におけるピン8の挿通をもって前記屈折レバー2に連結され、前記ロッド5の中途部には前記可動腕部4の先端部がピン9の挿通をもって連結」されたものであるから、「可動腕部4」はジョイントピン10を軸に本体1に揺動するように回動自在に取着され、「ロッド5」は、先端がピン8により屈折レバー2の下端に連結され、中途部がピン9により可動腕部4の先端部に連結されることで、屈折レバー2と可動腕部4を連結させるものと認められる。

ウ 上記ア及びイの事項から、引用発明の「屈折レバー2」、「可動腕部4」、「ロッド5」は、それぞれ本願発明の「第1の作動部」、「第2の作動部」、「連接棒」に対応し、引用発明の「掴線器」は、「前記可動側掴線部を進退移動させる第1の作動部と、該第1の作動部と連接棒によって連結された第2の作動部の夫々一端が前記本体に回動自在に取着されており、前記第1の作動部の他端は前記連接棒の一端に、前記第2の作動部の他端は前記連接棒の中腹に夫々回動自在に取着」された構成を有しているものと認められる。

(1-4)掴線器を用いて電線を掴持する方法について
引用発明では、「ロッド5」には、「基端に張力E用の孔部5aを設け」、「ロッド5に張線器側からの前記張力Eが付加されると、前記一次張力Eにより前記可動腕部4と前記屈折レバー2は各その基端部のピン10,7を支軸にして上記張力E側に牽引され、前記受圧部1aと前記押え金3とが被覆電線Dを掴線する」ものである。
また、上記3(1)Bより引用文献1の第3図(a)には、ロッド5の屈折レバー2が連結される一端とは反対の他端が張力Eにより引っ張られる構成が記載されていることから、引用発明では、ロッド5の他端が張力Eにより引っ張られることで、可動腕部4と屈折レバー2が張力E側に牽引され、この牽引に伴い屈折レバー2がピン7を軸にして揺動することで押え金3を受圧部1a側へ押し上げて、被覆電線Dを掴線するものと認められる。
よって、本願発明と引用発明は、「前記連接棒の他端を引っ張る工程を含み、これにより、前記連接棒及び前記第2の作動部及び前記第1の作動部がリンクして動作し、前記可動側掴線部を前記固定側掴線部に対して前進させる」点で共通している。


(2)本願発明と引用発明の一致点について
上記の対応関係から、本願発明と引用発明は、
「本体に設けられ正面視略直線状の固定側掴線部と、該固定側掴線部に対向配置され該固定側掴線部に対して進退移動可能な可動側掴線部を備え、前記固定側掴線部と前記可動側掴線部の間に線状体を掴持可能な掴線器であって、
前記可動側掴線部を進退移動させる第1の作動部と、該第1の作動部と連接棒によって連結された第2の作動部の夫々一端が前記本体に回動自在に取着されており、
前記第1の作動部の他端は前記連接棒の一端に、前記第2の作動部の他端は前記連接棒の中腹に夫々回動自在に取着されており、
掴線器を用いて電線を掴持する方法であって、
前記方法は、
前記連接棒の他端を引っ張る工程を含み、
これにより、前記連接棒及び前記第2の作動部及び前記第1の作動部がリンクして動作し、前記可動側掴線部を前記固定側掴線部に対して前進させる
ことを特徴とする掴線器を用いて電線を掴持する方法。」
の点で一致している。


(3)本願発明と引用発明の相違点について
本願発明と引用発明とは、下記の点で相違する。
(相違点1)本願発明は、「前記連接棒の他端は支点を介して引張部が回動自在に取着されてなる」のに対し、引用発明の掴線器は引張部を備えていない点。

(相違点2)本願発明は、「前記連接棒の他端を前記固定側掴線部及び前記可動側掴線部と略平行に引っ張る」ものであるのに対し、引用発明は、「張力Eが付加される」方向が掴線部である受圧部1a及び押え金3の直線状の部分の方向と略平行であるか定かではない点。



5 当審の判断

(1)相違点1について
架線工事では、架線(電線)を引っ張るために架線(電線)を掴線器で掴持後、掴線器を引っ張る作業が行われている。そして、掴線器を引っ張る構成として、上記3(2)に記載した引用文献2には、掴線器の張力を作用させる部位にチェーンを連結させる構成が記載され、また、上記3(3)に記載した引用文献3には、掴線器の張力が作用させる部位に何らかの器具を取り付ける構成が記載されていることから、架線(電線)を掴持する掴線器において、掴線器の張力が作用させる部位にチェーン等の何らかの器具を取り付けることは周知技術である。
そして、引用発明には、「ロッド5」の他端に張力E用の「孔部5a」が設けられ、該孔部5aに掴線器を引っ張るための何らかの器具が連結されることは明らかであるから、引用発明の「孔部5a」にチェーン等の何らかの器具を取り付けて掴線器の引張部とすること、すなわち、相違点1の構成とすることは、当業者が普通に行い得るものである。


(2)相違点2について
引用文献1の第3図(a)及び第4図(a)には、張力Eの方向と掴線部において掴持された被覆電線とが約8°の角度(なお、平成27年6月8日付け手続補正書の【請求の理由】には、「約7.5度」と記載されている。)をなしているにすぎずないことから、引用発明においても、ロッド5の孔部5aに付加される張力Eの方向は、掴線部である受圧部1a及び押え金3の直線状の部分の方向と略平行であるとも認められること、また、COS8°の値は約0.99であるため、掴線部に与えられた張力Eの99%は被覆電線と完全に平行な方向に作用することを踏まえると、上記相違点2は実質的な相違点であるとはいえない。

次に、仮に相違点2が実質的な相違点であるとした場合、相違点2の容易相当性について、最初に、掴線器において掴線部に略平行な張力を付加させることが周知技術であるか、次に、引用発明において掴線部に略平行な張力Eを付加させた場合に掴持力を有するか、最後に、引用発明の掴線部に略平行な張力Eを付加させることが容易であるか、を検討する。

(2-1)掴線器において掴線部に略平行な張力を付加させることが周知技術であるかについて
引用文献2及び3には、共に被覆架線(被覆電線)の切分け作業における同様の掴線器の利用手順が記載されているところ、上記3(2)の引用文献2の段落【0009】には、「先ず電柱間等に張架線された被覆架線9の2箇所において、その被覆部10を一対の掴線器12a、12bで掴持することから開始」し、次に、「両掴線器12a、12bはチェーン15a、15bを介して棒状の伸縮器13に連結され」た状態において、「ターンバックル方式の伸縮器13は、その軸心まわりの回転を与えることによって縮み、両掴線器12a、12bを引き寄せ、両者間の距離を縮める」ことが記載されている。
ここで、切断される前の被覆電線9の2箇所を2つの掴線器で掴持し、該2つの掴線器間をチェーン15a、棒状の伸縮器13、及びチェーン15bにより連結して、伸縮器13が両掴線器を引き寄せる段階では、「チェーン15a・棒状の伸縮器13・チェーン15b」は「被覆電線9」に対して略平行な状態であり、その際の両掴線器の掴線部は被覆電線9を掴持しているので、掴線部の直線部分は被覆電線9の延長方向を向いていることは明らかである。
よって、掴線器を被覆電線の切分け作業に用いた場合、掴線器の張力が作用する部位に掴線部と略平行な張力を付加させることは、引用文献2及び3に記載されているように周知技術である。

(2-2)引用発明において掴線部に略平行な張力Eを付加させた場合に掴持力を有するかについて
引用発明は、ほぼくの字形に形成された屈折レバー2がピン7を軸として揺動する構成であり、屈折レバー2が引用文献1の第3図(a)の紙面において反時計回りに回転した場合、屈折レバー2の上端部にボルト11で螺挿された押え金3は、受圧部1a側である上方へ移動することになる。
そのため、引用発明の構成では、押え金3から被覆電線Dを掴持するための力を得るためには、屈折レバー2が反時計回りに回転する力をロッド5に付加しなければならない。
そこで、引用発明において、ロッド5の孔部5aに、掴線部である受圧部1a及び押え金3の直線状の部分の方向と略平行な方向に張力Eを付加させた場合について検討する。
引用発明のロッド5の孔部5aに張力Eを付加させると、ロッド5の孔部5aは、受圧部1a及び押え金3の直線状の部分の方向と略平行であって、第3図(a)の紙面において右方向に牽引されて移動し、この移動に伴い、ロッド5とピン8で連結した屈折レバー2及びピン9で連結した可動腕部4も、該ピン8及び9において右方向へ牽引される力を受けるが、屈折レバー2及び可動腕部4は、ピン7及びジョイントピン10により本体1に支持されているため、反時計回りに回転することになる。すなわち、ロッド5の孔部5aに、受圧部1a及び押え金3の直線状の部分の方向と略平行の張力Eが付加された場合、屈折レバー2を反時計回りに回転させる力が生じることになる。
この屈折レバー2を反時計回りに回転させる力により、押え金3は、被覆電線Dを掴線するまで上昇する。そして、押え金3が被覆電線Dを掴線した後であっても、張力Eが作用しているかぎり、屈折レバー2を反時計回りに回転する力は消失しないので、押え金3を上昇させる力、すなわち掴持力は維持されることになる。
よって、引用発明の掴線器において、掴線部である受圧部1a及び押え金3の直線状の部分の方向と略平行な方向に張力Eを付加させた場合であっても、引用発明の掴線器は掴持力を有するものと認められる。

(2-3)引用発明に掴線部に略平行な張力Eを付加させることが容易であるかについて
上記(2-1)で検討したように、掴線器を被覆電線の切分け作業に用いた場合、掴線器の張力が作用する部位に掴線部と略平行な張力を付加させることは周知技術である。また、上記(2-2)で検討したように、引用発明の掴線器において、掴線部である受圧部1a及び押え金3の直線状の部分の方向と略平行な方向に張力Eを付加させた場合であっても、引用発明の掴線器は掴持力を有するものと認められる。そして、掴線器を被覆電線の切分け作業に利用することは一般に行われていることを踏まえると、引用文献1に接した当業者であれば、引用発明において、「張力Eが付加される」方向を掴線部である受圧部1a及び押え金3の直線状の部分の方向と略平行とすることで、相違点2の方法とすることは、容易に想到し得たものである。


(3)本願発明の作用効果について
審判請求人は、平成27年6月8日付け手続補正書の【請求の理由】の「(2)本願発明と引用文献記載の発明との対比」において、
「しかし、引用文献1記載の発明は、上の参考図に示すとおり、電線に対して「固定側掴線部及び可動側掴線部の長さ方向(電線の張設方向(L1))に角度βを成して張力Eを加えると、参考図に示したとおり、電線の張設方向(L1)に対して垂直方向成分の力E・sinβが生じるのであります。そして、この電線の張設方向(L1)に対して垂直方向成分の力E・sinβによって支点(9)を中心として時計方向のモーメントが生じるのであります。
審査官殿が、βの角度(約7.5度)は無視できる(零度に略等しい)とのお考えではないかと思料します。そういたしますと、電線の張設方向(L1)に対して垂直方向成分の力E・sinβは略零ということになり、支点(9)を中心として時計方向のモーメントは生じないのであり、実用新案登録請求の範囲の記載「屈折レバーには張線器側の張力を受けて支点保持のもとでの牽引とテコの方式による張力伝達の操作を行う被覆電線用掴線器」の記載が成り立たないことになります。」
と主張している。
しかしながら、上記5(2)に記載したように、本願発明が特定された請求項1では、前記連接棒の他端を前記固定側掴線部及び前記可動側掴線部と「略平行」に引っ張ると記載されているため、引用発明と実質的な差異が認められないこと、また、引用発明の掴線器において、掴線部である受圧部1a及び押え金3の直線状の部分の方向と平行な方向に張力Eを付加させた場合であっても、引用発明の掴線器は電線を掴持する掴持力を有するものであると認められることから、上記審判請求人の主張を採用することはできない。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明、及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。



6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-09 
結審通知日 2016-02-10 
審決日 2016-02-23 
出願番号 特願2013-215105(P2013-215105)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 長谷川 素直
飯田 清司
発明の名称 掴線器を用いて電線を掴持する方法  
代理人 清原 義博  
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