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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1313542
審判番号 不服2015-7793  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-27 
確定日 2016-04-07 
事件の表示 特願2013-501140「投写型映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月30日国際公開、WO2012/115228〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年2月24日(優先権主張2011年2月25日、国際出願)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月8日付けで拒絶理由が通知され、同年9月12日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、平成27年1月29日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、同年4月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成27年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年4月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成27年4月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項12は、本件補正前の(平成26年9月12日付けの手続補正により補正された)特許請求の範囲の請求項12である、

「複数の照明光学系で形成した光学像を投写レンズから投写する投写型映像表示装置において、
前記複数の照明光学系は、それぞれ、放電ランプにより照明光を発生する光源と、発生した照明光をR(赤色),G(緑色),B(青色)の3色光に分離する色分離部と、該各色光を照射して光学像を形成する3枚の液晶パネルと、該各色光の光学像を合成する色合成部を備え、
前記各光源の光軸と前記投写レンズの光軸はいずれも同一面内に配置されるとともに、前記各光源の光軸は互いに平行であって、前記投写レンズの光軸と略直交するように配置され、前記複数の光源のうち2つの光源は、前記投写レンズを挟んで出射方向が互いに向き合って配置されていることを特徴とする投写型映像表示装置。」
から、次のように補正された。

「複数の照明光学系で形成した光学像を投写レンズから投写する投写型映像表示装置において、
前記複数の照明光学系は、それぞれ、放電ランプにより照明光を発生する光源と、発生した照明光をR(赤色),G(緑色),B(青色)の3色光に分離する色分離部と、該各色光を照射して光学像を形成する3枚の液晶パネルと、該各色光の光学像を合成する色合成部を備え、
前記各光源の光軸と前記投写レンズの光軸はいずれも同一面内に配置されるとともに、前記各光源の光軸は互いに平行であって、前記投写レンズの光軸と略直交するように配置され、前記複数の光源のうち2つの光源は、前記投写レンズを挟んで出射方向が互いに向き合って配置されており、
前記複数の照明光学系のうち2つの照明光学系の液晶パネルは、形成される光学像の対応する画素が互いに所定量ずれるように配置するとともに、
前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能であることを特徴とする投写型映像表示装置。」
(下線は、請求人が付したものであり、補正箇所である。)

2 補正の目的
本件補正後の請求項12は、本件補正前の請求項12に、「2つの照明光学系の液晶パネル」の配置、「2つの照明光学系」の「光源」、「液晶パネル」の動作方法を限定する記載が追加されたものであるから、本件補正の請求項12についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 新規事項
(1)請求人の主張について
この特許請求の範囲の補正について、請求人は、審判請求書の【請求の理由】において、
「(3.2)補正の根拠
請求項1における、「前記複数の照明光学系のうち2つの照明光学系の液晶パネルは、形成される光学像の対応する画素が互いに所定量ずれるように配置するとともに」との補正は、明細書段落0032-0034、図4A、図4Bの記載に基づきます。また、「前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能である」との補正は、明細書段落0032、0033、0035の記載に基づきます。他の請求項についても同様であります。なお、これらの補正は、照明光学系における液晶パネルの構成と光源の動作を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮にあたるものと思料します。 」
と主張している。
そこで、本件補正後の請求項12の
「前記複数の照明光学系のうち2つの照明光学系の液晶パネルは、形成される光学像の対応する画素が互いに所定量ずれるように配置するとともに、
前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能である」
が、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、単に「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かを、以下に検討する。

(2)当初明細書等の記載
請求人が補正の根拠とする、段落[0032]?[0035]、図4A、図4Bには、以下の事項が記載されている。

「[0032] 本実施例の投写型映像表示装置を用いることで、次のような表示機能が可能になる。
(1)高解像度化:2組の液晶パネル150,250の対応する画素を所定量ずらして配置し、交互に表示させることで表示映像の解像度を向上させることができる。
[0033]図4Aは、2組の液晶パネルをずらして配置した例を模式的に示す図である。照明光学系1のR光液晶パネル150Rと照明光学系2のR光液晶パネル250Rとして、例えばXGAパネル(1024×768)を2組用意し、縦方向、横方向ともに1/2画素だけずらして配置する。G光液晶パネル150G,250GとB光液晶パネル150B,250Bについても同様である。そして、パネル150とパネル250をフィールドごとに交互に表示する。具体的には、パネル150が表示されるときはパネル250を黒表示させ、パネル250が表示されるときはパネル150を黒表示させる。これより、擬似的に4倍の解像度に相当するQXGA(2048×1536)の表示が可能になる。この時、フィールド周波数は通常の60Hzでは画面のフリッカが見える場合があるので90Hz以上が良く、出来れば120Hz駆動以上の高い周波数でフィールド切り替えを行うと画面のフリッカが識別できなくなる。
[0034]図4Bは、2組の液晶パネルをずらして配置した他の例を模式的に示す図である。この例では、液晶パネル150R(G,B)と液晶パネル250R(G,B)を、縦方向にのみ1/2画素ずらして配置している。この構成によっても、縦方向の解像度を2倍に向上することができる。
[0035] (2)光源の長寿命化:2つの照明光学系1,2の使用を切り替えることで、シングルモード(一方のみ使用)、ツインモード(両方を同時に使用)の動作モードを選択できる。シングルモードでは、2つの光源の使用を一定期間で交替させる(各光源の発光を一定期間休止させる)ことで、1つの光源を連続して発光させる場合よりも光源の動作寿命を伸ばす効果がある。ツインモードでは、1つの光源から発生する光量が1/2で済むので、比較的安価な低輝度の光源を組み合わせて使用することができ、トータルとして投写型映像表示装置のコストダウンに寄与する。」

「[図4A]

[図4B]



(3)検討
ア まず、本件補正後の請求項12の「前記複数の照明光学系のうち2つの照明光学系の液晶パネルは、形成される光学像の対応する画素が互いに所定量ずれるように配置する」、「前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能である」という記載自体は、本願の当初明細書等の段落[0032]、[0033]に、「2組の液晶パネル150,250の対応する画素を所定量ずらして配置し、交互に表示させること」、「照明光学系1のR光液晶パネル150Rと照明光学系2のR光液晶パネル250Rとして、例えばXGAパネル(1024×768)を2組用意し、縦方向、横方向ともに1/2画素だけずらして配置する。G光液晶パネル150G,250GとB光液晶パネル150B,250Bについても同様である。そして、パネル150とパネル250をフィールドごとに交互に表示する。」と記載されたものであることは明らかである。

イ 次に、本件補正後の請求項12の「前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能である」(特に、下線部)が、当初明細書等に記載した事項であるか否かを検討する。
「前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、」という記載と同じ記載は、本願の当初明細書等の段落[0032]?[0035]の他、当初明細書等の他の箇所にもないところ、「前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり」は、本願の当初明細書等の段落[0035]の「(2)光源の長寿命化:2つの照明光学系1,2の使用を切り替えることで、シングルモード(一方のみ使用)、ツインモード(両方を同時に使用)の動作モードを選択できる。シングルモードでは、2つの光源の使用を一定期間で交替させる(各光源の発光を一定期間休止させる)ことで、1つの光源を連続して発光させる場合よりも光源の動作寿命を伸ばす効果がある。ツインモードでは、1つの光源から発生する光量が1/2で済むので、比較的安価な低輝度の光源を組み合わせて使用することができ、トータルとして投写型映像表示装置のコストダウンに寄与する。」と記載される、「シングルモード」と「ツインモード」の切り替えに対応するものであると解するのが相当である。
また、「前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、・・・」との記載は、2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えて、2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、・・・という事項を示すと解される。
また、本願の当初明細書等の段落[0035]の「ツインモードでは、1つの光源から発生する光量が1/2で済む」との記載から、「ツインモード」での1つの光源の光量は、「シングルモード」での1つの光源の光量の1/2に調整されると解される。
すると、本件補正後の請求項12の「前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能である」という記載は、本願の当初明細書等の段落[0032]?[0035]の記載を参酌すれば、「シングルモード」と「ツインモード」を切り替えることが可能であって、かつ、1つの光源の光量が「シングルモード」での1つの光源の光量の1/2に調整される「ツインモード」に切り替えたとき、2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能であることを含むことになる。

ウ これに対して、本願の当初明細書等の段落[0032]?[0035]の記載について、まず、最初に、段落[0032]に「本実施例の投写型映像表示装置を用いることで、次のような表示機能が可能になる。」と記載され、「(1)高解像度化」、「(2)光源の長寿命化」の2つの機能が独立して記載されていることが明らかであり、該2つの機能を併せ持つことの明記はない。
次に、仮に、本願の当初明細書等の段落[0032]?[0035]の記載から、2つの機能を併せ持たせることが可能であるとすれば、上記「イ」で検討したように、「シングルモード」と「ツインモード」を切り替えることが可能であって、かつ、1つの光源の光量が「シングルモード」での1つの光源の光量の1/2に調整される「ツインモード」に切り替えたとき、2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることによって実現することが想定されるが、この構成では、1つの光源の光量が、「シングルモード」での1つの光源の光量の1/2であって、かつ、2つの液晶パネルの光学像が交互に表示されるのであるから、スクリーンに投影される画像の明るさは、「シングルモード」で投影される画像の明るさの1/2となることは明らかである。
しかし、一般に、プロジェクタで投影された画像は、室内の照明を落とさないとよく見えないぐらい暗いものであって、プロジェクタではできるだけ明るい画像を投影するというのが当業者には周知の課題であるから、「(1)高解像度化」において、2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させる際に、あえて、1つの光源の光量を、「シングルモード」での1つの光源の光量の1/2として、投影画像を暗くする理由は全くない。
すると、本願の当初明細書等の段落[0032]?[0035]の記載において、2つの機能を併せ持たせ、「シングルモード」と「ツインモード」を切り替えることが可能であって、かつ、1つの光源の光量が「シングルモード」での1つの光源の光量の1/2に調整される「ツインモード」に切り替えたとき、2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させる構成とすることが示唆されていると、当業者が理解するとは考えがたい。
また、逆に、「(1)高解像度化」において、2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させる際に、投影画像が暗くならないように、「ツインモード」においても、1つの光源の光量が「シングルモード」での1つの光源の光量と同じになるようにすると、本願の当初明細書等の段落[0035]で「ツインモードでは、1つの光源から発生する光量が1/2で済むので、比較的安価な低輝度の光源を組み合わせて使用することができ、トータルとして投写型映像表示装置のコストダウンに寄与する。」と記載される効果を奏し得なくなるから、「ツインモード」においても、1つの光源の光量が「シングルモード」での1つの光源の光量と同じになるようにすることは、本願の当初明細書等の段落[0035]に記載した事項とは反することとなる。

エ してみると、本願の当初明細書等の段落[0032]?[0035]の記載から、「シングルモード」と「ツインモード」を切り替えることが可能であって、かつ、1つの光源の光量が「シングルモード」での1つの光源の光量の1/2に調整される「ツインモード」に切り替えたとき、2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能であることが記載、あるいは,示唆されているとは認められない。
よって、「シングルモード」と「ツインモード」を切り替えることが可能であって、かつ、1つの光源の光量が「シングルモード」での1つの光源の光量の1/2に調整される「ツインモード」に切り替えたとき、2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能であることを含む、本件補正後の請求項12の「前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能である」が、本願の当初明細書等の段落[0032]?[0035]に記載されているとも、示唆されているとも認められない。また、本願の当初明細書等の他の箇所にも、記載ないし示唆されているとは認められない。

(4)結論
上述のとおり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項12に、「前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能である」を追加する補正を含む本件補正は、本願の当初明細書等に記載された範囲内でしたものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

(5)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4 独立特許要件
上記のとおりであるが、仮に、請求項12についての本件補正が、本願の当初明細書等に記載された範囲内でしたものであるとすると、上記「2」で記載したとおり、請求項12についての本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められるから、本件補正による特許請求の範囲の補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。
そこで、上記本件補正後の請求項12に係る発明(上記「1」の本件補正後の請求項12の記載参照。以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。

(1)引用刊行物
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2010-204333号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

(ア)「【0020】
〔第一の実施の形態〕
以下、本発明に係る第一の実施の形態のプロジェクターについて、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る第一の実施の形態のプロジェクターの光学装置の概略構成を示す図である。
【0021】
[プロジェクターの構成]
図1において、プロジェクター1は、第一光学装置2と、第二光学装置3と、第一偏光変換装置4と、第二偏光変換装置5と、合成光学装置6と、投射光学装置7と、を備えて、これらの光学素子は、1つの図示しない筐体内に収納されている。また、筐体内部において、第一光学装置2は、合成光学装置6を挟んで投射光学装置7に対向する位置、すなわち、光学像の投射方向に正対する位置に設けられている。一方、第二光学装置3は、合成光学装置6に対向するとともに、投射方向に対して直交する位置に設けられている。そして、第一偏光変換装置4は、第一光学装置2および合成光学装置6の間に配置され、第二偏光変換装置5は、第二光学装置3および合成光学装置6の間に配置される。
そして、このプロジェクター1は、例えば画像信号源などから入力される画像信号に応じて、第一光学装置2および第二光学装置3のそれぞれで光学像を形成し、合成光学装置6にて各光学装置2、3で形成された光学像を合成し、投射光学装置7により合成された光学像を投射するものである。このようなプロジェクター1では、第一光学装置2および第二光学装置3から出力される光学像を例えば斜め方向に半画素分ずらして高解像度画像を表示させることや、第一光学装置2および第二光学装置3から出力される光学像の各画素を一致させて高輝度画像を表示させることが可能となる。
【0022】
第一光学装置2は、照明光学装置21、色分離光学装置22、リレー光学装置23、光変調装置24、および本発明の第一色合成光学装置を構成する色合成光学装置25を備えている。そして、この第一光学装置2は、照明光学装置21から射出された光を、光変調装置24によって画像情報に応じて変調して光学像を形成する装置である。
【0023】
照明光学装置21は、光源装置211、第一レンズアレイ212、第二レンズアレイ213、偏光変換素子214、および重畳レンズ215を備えている。
光源装置211は、光源ランプおよびリフレクターを備え、光源ランプから射出された放射光をリフレクターによって一定方向に揃えて射出する。
【0024】
第一レンズアレイ212および第二レンズアレイ213は、それぞれ対応する小レンズ
がマトリクス状に配列された構成を有し、第一レンズアレイ212は、光源装置211から入射した光を複数の部分光束に分割して、第二レンズアレイ213近傍に結像させる。
第二レンズアレイ213は、光路後段に位置する重畳レンズ215とともに、後述する第一光学装置2を構成する液晶パネルの画像形成領域に第一レンズアレイ212で分割された複数の部分光束を重畳させる。
偏光変換素子214は、第二レンズアレイ213から射出された光束を、略1種類の直線偏光光束、すなわちS偏光光束に変換する光学素子である。
この偏光変換素子214は、一方の対角が45deg、他方の対角が略135degとされた断面平行四辺形状の複数のプリズムを、斜面同士を接合して形成された板状体であり、接合される界面には、偏光分離膜と全反射ミラーが交互に蒸着形成されている。また、偏光変換素子214の光束射出面には、所定のピッチで複数の1/2波長位相差板が設けられている。
【0025】
色分離光学装置22は、入射したS偏光光束を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の三色光に分離する機能を有し、ダイクロイックミラー221,222、及び反射ミラー223,224,225を備える。
ダイクロイックミラー221,222は、光源装置211から射出された光束の光路中心軸に対して略45deg傾斜して配置され、例えばBK7、石英ガラス等の透明基板上に誘電体多層膜を形成した光学素子であり、特定の波長域の光束を反射し、それ以外の光束を透過して、複数の色光に分離する機能を有する。光路前段に配置されるダイクロイックミラー221は、赤色光(R)を透過反射し、それ以外の緑色光(G)、青色光(B)を反射する。一方、光路後段に配置されるダイクロイックミラー222は、緑色光(G)を反射し、青色光(B)を透過する。
この色分離光学装置22で分離された青色光(B)の光路中には、リレー光学装置23が設けられ、リレー光学装置23は、光路中に配置される2つの集光レンズ231、232により構成され、青色光(B)を青色光側の液晶パネル24Bまで導く機能を有する。
【0026】
光変調装置24は、3つの第一光変調素子である液晶パネル24R,24G,24Bと、各液晶パネル24R,24G,24Bの光路前段に配置される3つの入射側偏光板241R,241G,241Bと、入射側偏光板241R,241Bの光路前段に配置される1/2波長位相差板243R,243Bと、各液晶パネル24R,24G,24Bの光路後段に配置される3つの射出側偏光板242R,242G,242Bと、を備える。
3つの入射側偏光板241R,241G,241Bは、BK7、石英ガラス等の透明基板上に偏光膜を形成して構成され、光路途中のダイクロイックミラー221,222等で位相が偏光された光束を吸収する。この時、入射側偏光板241R,241Bの光路前段には、1/2波長位相差板243R,243Bが設けられるため、赤色光(R)および青色光(B)の偏光方向が回転され、S偏光からP偏光に変換される。そして、入射側偏光板241R,241Bは、偏光方向がP偏光の光束のみを透過させ、その他の偏光方向の光束を吸収する。一方、入射側偏光板241Gは、偏光方向がS偏光の光束のみを透過させ、その他の偏光方向の光束を吸収する。
【0027】
液晶パネル24R,24G,24Bは、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶が密閉封入された構成を有し、入力される画像情報に応じて液晶の配向状態が制御されることで、入射側偏光板241R,241G,241Bから射出された偏光光の偏光方向を変調する。
3つの射出側偏光板242R,242G,242Bは、液晶パネル24R,24G,24Bを介して射出された光束のうち、所定偏光方向の光束のみを透過させる。ここで、射出側偏光板242R,242Bは、液晶パネル24R,24Bから射出される赤色光(R)、青色光(B)のうち、偏光方向がS偏光である光束のみを透過し、その他の光束を吸収する。一方、射出側偏光板242Gは、液晶パネル24Gから射出される緑色光(G)
のうち、偏光方向がP偏光である光束のみを透過し、その他の光束を吸収する。
【0028】
色合成光学装置25は、各射出側偏光板242R,242G,242Bから射出された変調光束を合成してカラー画像を形成する機能を有し、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状を有し、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されたクロスダイクロイックプリズムとして構成される。2つの誘電体多層膜は、一方が赤色光(R)を反射し、緑色光(G)を透過する性質を有し、他方が青色光(B)を反射し、緑色光(G)を透過する性質を有し、これら誘電体多層膜によって赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)が合成されてカラー画像が形成される。
【0029】
ここで、図2に、本実施形態の色合成光学装置25を構成するクロスダイクロイックプリズムに赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)としてそれぞれS偏光光束を入射させた場合の各波長に対する透過率を示す図を示す。また、図3に、このクロスダイクロイックプリズムにS偏光光束である赤色光(R)および青色光(B)、P偏光光束である緑色光(G)を入射させた場合の各波長に対する透過率を示す図を示す。
図2に示すように、緑色光としてS偏光光束を入射させた場合、透過効率が悪く、色合成光学装置25における光量損失が大きくなる。特に、500nm近傍および600nm近傍の波長域の透過率が悪くなるため、色再現性も悪化するおそれがあり、これを補うための色補正を実施する必要があるなど、構成および処理が複雑化する。一方、図3に示すように、緑色光としてP偏光光束を入射させた場合、緑色光の透過効率も向上し、光量損失が小さくなる。また、全波長域の光に対して略同一透過率を有するため、色再現性の悪化などの不都合がない。
本実施の形態では、射出側偏光板242R,242Bから入射する赤色光(R)および青色光(B)は、S偏光光束であり、射出側偏光板242Gから入射する緑色光(G)は、P偏光光束である。したがって、上述のように、赤色光(R)および青色光(B)は、誘電体多層膜における反射効率が向上し、緑色光(G)は、誘電体多層膜における透過効率が向上する。したがって、図3に示すように、各色光の光量損失が生じず、良好に光学像を形成して射出することが可能となる。
【0030】
第二光学装置3は、基本的には第一光学装置2と同様に、照明光学装置31、色分離光学装置32、リレー光学装置33、光変調装置34、及び第二色合成光学装置を構成する色合成光学装置35を備え、各装置31,32,33,34,35の構成、機能、及び作用も第一光学装置2と同様である。なお、光変調装置34に、本発明の第二光変調素子である3つの液晶パネルが組み込まれるが、上記第一光変調素子である液晶パネル24R,24G,24Bと同一構成のものを用いるため、ここでの説明を省略する。
【0031】
第一偏光変換装置4は、第一光学装置2から射出される光学像(射出光)の偏光方向を、合成光学装置6を透過しやすいP偏光方向に揃える。この第一偏光変換装置4は、図1に示すように、光路前段に配置される波長選択性偏光回転素子41と、光路後段に配置される偏光変換素子としての1/2波長位相差板42と、を備えている。そして、第一偏光変換装置4は、これらの光学素子を例えば5mm程度のBK7、石英ガラス等の透明基板43により挟み込むことで、波長選択性偏光回転素子41および1/2波長位相差板42が面内均一に保持されている。
【0032】
波長選択性偏光回転素子41は、第一光学装置2から入射する光学像のうち、緑色光(G)の偏光方向を90deg回転させる光学素子である。この波長選択性偏光回転素子41としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセテート、ポリメチルメタクリレートなどの高分子材料により形成される延伸高分子フィルムにより形成される光学素子であり、複数の延伸高分子フィルムを積層することで形成される。
ここで、図4に、波長選択性偏光回転素子41の特性を表す図を示す。図4において、C特性(クロス特性)とは、入射光に対して偏光方向を回転させる特性であり、P特性(パラレル特性)とは、入射光の偏光方向を回転させずそのまま透過させる特性である。図4に示すように、第一偏光変換装置4の波長選択性偏光回転素子41は、第一光学装置2から射出される光学像のうち、波長域が500近傍から600近傍の緑色光(G)を選択し、その偏光方向を90deg回転させることで、P偏光光束からS偏光光束に変換する。これにより、緑色光(G)は、赤色光(R)および青色光(B)と同様に偏光方向がS偏光となり、光学像を形成する各色光の偏光方向がS偏光に揃えられる。
【0033】
1/2波長位相差板42は、光学像の偏光方向をさらに回転させ、S偏光からP偏光に変換する。このようなP偏光の直線偏光を有する光学像は、後述の合成光学装置6の透過率が大きく、合成光学装置6を透過して投射光学装置7に導光される。
【0034】
第二偏光変換装置5は、第二光学装置3から射出される光学像(射出光)の偏光方向を、合成光学装置6に反射されやすいS偏光方向に揃える。この第二偏光変換装置5は、第一偏光変換装置4と同様に、波長選択性偏光回転素子41を備え、この波長選択性偏光回転素子41を例えば5mm程度のBK7、石英ガラス等の透明基板43により挟み込んで構成される。第二偏光変換装置5では、光学像をS偏光に揃えればよいため、1/2波長位相差板42などの偏光変換素子は設けられず、波長選択性偏光回転素子41によりS偏光光束に揃えられた光学像は、そのまま合成光学装置6に向かって射出される。
【0035】
合成光学装置6は、第一光学装置2及び第二光学装置3で形成された光学像を合成するものであり、2つの三角形状のプリズムを貼り合わせた平面視略正方形状を有し、プリズム同士を貼り合わせた界面に誘電体多層膜が形成される偏光ビームスプリッターである。この誘電体多層膜は、偏光方向がP偏光である光束を透過し、偏光方向がS偏光である光束を反射する偏光分離膜とされ、第一光学装置2で形成された光学像を透過し、第二光学装置3で形成された光学像を反射することにより、各光学像を合成する。
投射光学装置7は、図1では図示を略したが、鏡筒内に複数のレンズが光軸を合わせて配列された組レンズから構成され、合成光学装置6で合成された光学像をスクリーン上に投射する。
【0036】
[第一の実施の形態のプロジェクターの作用効果]
上述のような第一の実施の形態のプロジェクター1では、合成光学装置6を挟んで、投射光学装置7に正対する位置に第一光学装置2が配置され、この第一光学装置2および合成光学装置6の間に第一偏光変換装置4が配置される。そして、この第一偏光変換装置4は、第一光学装置2から射出される光学像の偏光方向をP偏光に揃える。また、合成光学装置6の側面に対向し、投射方向に対して直交する位置に第二光学装置3が配置され、この第二光学装置3および合成光学装置6の間に第二偏光変換装置5が配置される。そして、この第二偏光変換装置5は、第二光学装置3から射出される光学像の偏光方向をS偏光に揃える。
このため、合成光学装置6では、第一光学装置2から入射する、透過率が大きいP偏光光束の光学像を投射方向に透過させて射出することができ、第二光学装置3から入射する、反射率が大きいS偏光光束の光学像を投射方向に反射させて射出することができる。すなわち、第一光学装置2から射出される光学像が合成光学装置6で反射される光量、第二光学装置3から射出される光学像が合成光学装置6を透過する光量をそれぞれ減少し、各光学像を合成して効率よく投射方向に射出することができる。したがって、合成光学装置6における光量損失を減少させることができ、少ない光量で高輝度画像や高解像度画像を表示させることができる。
【0037】
また、合成光学装置6は、偏光方向がP偏光である光束に対する透過率、偏光方向がS
偏光である光束に対する反射率がそれぞれ高い偏光ビームスプリッターであり、投射光学装置7に正対する第一光学装置2から合成光学装置6に向かってP偏光の光束の光学像が射出され、投射方向に対して直交する方向から第二光学装置3からの合成光学装置6に向かってS偏光の光束の光学像が射出される。したがって、合成光学装置6は、光量損失なく、これらの光学像を良好に投射光学装置7に射出させることができる。
【0038】
また、各光学装置2,3の色合成光学装置25は、クロスダイクロイックプリズムであり、緑色光(G)を透過させ、赤色光(R)および青色光(B)を反射させることで、光学像を形成する。この時、色合成光学装置25には、偏光方向がP偏光である緑色光(G)が入射し、偏光方向がS偏光である赤色光(R)および青色光(B)が入射する。したがって、色合成光学装置25において、各色光の光量損失がなく、画像情報に応じた光学像を忠実に形成することができる。
【0039】
上記のようなクロスダイクロイックプリズムから射出される光学像では、緑色光(G)のみがP偏光となり、赤色光(R)および青色光(B)がS偏光となる。ここで、第一偏光変換装置4は、波長選択性偏光回転素子41により、緑色光(G)の偏光方向のみを回転させてS偏光にすることができる。これにより、第一光学装置2から射出される各色光の偏光方向がS偏光に揃えられ、さらに1/2波長位相差板42により、偏光方向がP偏光に変換される。したがって、第一光学装置2からの光学像として、合成光学装置6に、P偏光光束を入射させることができる。一方、第二偏光変換装置5は、波長選択性偏光回転素子41により、緑色光(G)の偏光のみを回転させてS偏光光束にすることができ、これにより、全色光の偏光方向がS偏光に揃えられる。したがって、第二光学装置3からの光学像として、合成光学装置6に、S偏光光束を入射させることができる。すなわち、各光学装置2,3の色合成光学装置の光量損失、および合成光学装置6の光量損失の双方を低下させることができ、省エネルギー化をより促進させることができる。」

(イ)「【図1】



(ウ)上記記載事項(イ)の図1及び当業者の技術常識から、「光源装置211」の「光源ランプ」が放電ランプであることは、当業者には明らかである。

(エ)上記記載事項(イ)の図1及び当業者の技術常識から、「照明光学装置21」の「光源装置211」の光軸、「照明光学装置31」の「光源装置」の光軸、「投射光学装置7」の光軸は、いずれも、同一面内に配置されるとともに、「照明光学装置21」の「光源装置211」の光軸と「照明光学装置31」の「光源装置」の光軸は直交するように配置され、「照明光学装置31」の「光源装置」の光軸は「投射光学装置7」の光軸と直交するように配置され、「照明光学装置21」の「光源装置211」の光軸は「投射光学装置7」の光軸と平行であることは、当業者には明らかである。

(オ)上記記載事項(ア)の「第二光学装置3は、基本的には第一光学装置2と同様に、照明光学装置31、色分離光学装置32、リレー光学装置33、光変調装置34、及び第二色合成光学装置を構成する色合成光学装置35を備え、各装置31,32,33,34,35の構成、機能、及び作用も第一光学装置2と同様である。」という記載から、「照明光学装置31」は、光源装置を備えており、「照明光学装置31」の光源装置は、放電ランプである光源ランプおよびリフレクターを備えており、「色分離光学装置32」は、入射したS偏光光束を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の三色光に分離する機能を有することは、当業者には明らかである。

すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「第一光学装置2と、第二光学装置3と、合成光学装置6と、投射光学装置7と、を備えたプロジェクター1において、
第一光学装置2は、照明光学装置21、色分離光学装置22、光変調装置24、および第一色合成光学装置を構成する色合成光学装置25を備えており、
照明光学装置21は、光源装置211を備えており、
照明光学装置21の光源装置211は、放電ランプである光源ランプおよびリフレクターを備え、
色分離光学装置22は、入射したS偏光光束を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の三色光に分離する機能を有し、
光変調装置24は、3つの第一光変調素子である液晶パネル24R,24G,24Bを備え、
第二光学装置3は、照明光学装置31、色分離光学装置32、光変調装置34、および第二色合成光学装置を構成する色合成光学装置35を備えており、
照明光学装置31は、光源装置を備えており、
照明光学装置31の光源装置は、放電ランプである光源ランプおよびリフレクターを備え、
色分離光学装置32は、入射したS偏光光束を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の三色光に分離する機能を有し、
光変調装置34に、第二光変調素子である3つの液晶パネルが組み込まれ、
照明光学装置21の光源装置211の光軸、照明光学装置31の光源装置の光軸、投射光学装置7の光軸は、いずれも、同一面内に配置されるとともに、照明光学装置21の光源装置211の光軸と照明光学装置31の光源装置の光軸は直交するように配置され、照明光学装置31の光源装置の光軸は投射光学装置7の光軸と直交するように配置され、照明光学装置21の光源装置211の光軸は投射光学装置7の光軸と平行であって、
第一光学装置2および第二光学装置3から出力される光学像を斜め方向に半画素分ずらして高解像度画像を表示させることが可能となるプロジェクター1。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2009-128689号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトバルブにより変調された照明光束を空間あるいはスクリーン上に投射して表示画像を得る投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルなどの矩形の投射画面をスクリーン上に投射して、表示画像を得る投射型表示装置として、液晶プロジェクタが知られている。このような投射型表示装置(以下、投射装置と略称することがある。)における光源装置は、単一の光源だけでなく複数の光源を組み合わせたものが各種知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図9に示すように、2つの光源からの光をひとつの光束として射出する光源装置であって、2つの光軸10a,10bを直交させて配置した放物面の2つの主鏡(放物面鏡)2a,2bと、それぞれの主鏡2a,2bの焦点に各々配置された2つのランプ(光源)1a,1bと、主鏡2a,2bの開口の半分を塞ぐ平面の2つの副鏡(平面鏡)3d,3eと、端部が主鏡2a,2bの光軸10a,10bの交点に接し、両光軸10a,10bに対して45゜傾けて配置した平面鏡20で構成された光源装置が開示されている。主鏡2a,2bの開口のうち副鏡3d,3eが覆っている部分で反射された主鏡2a,2bからの光は、副鏡3d,3eによってほぼ垂直に反射され、主鏡2a,2bの同一部位で再反射されて、焦点を通って主鏡2a,2bの反対側の部位に入射し、ここに直接入射するランプからの光と共に、断面が半円形の平行光束として射出される。副鏡3d,3eは主鏡2a,2bから射出された光束の一方を反射し他方を直進させることにより、両光束を繋ぎ合わせて断面が円形となるひとつの光束となっている。
【0004】
特許文献2には、複数個の光源と、複数個の光源からの光を合成する光合成部と、光合成部からの光の偏光方向を揃える偏光変換素子と、偏光変換素子からの光の照度を均一化し、且つ第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとで形成されるレンズアレイ群と、レンズアレイ群からの光をR光、G光及びB光の各色の光に分離する色分離部と、色分離部で分離された3原色の各々の色に対応して配置された複数個の映像表示素子と、複数個の映像表示素子からの光を合成する色合成部と、色合成部からの光を投射する投射レンズとで構成された投射装置が開示されている。照明光の光合成部は、図10に示すように、入射した光のうち、約半分の光を透過し、残りの半分の光を反射する光分離部であるハーフミラー3aと、全反射ミラー3bとからなる。詳細に述べるならば、光合成部は、断面が直角三角形のブロック状の透光性部材と、断面が平行四辺形のブロック状の透光性部材とを貼り合わせたプリズムアレイ構成となっている。そして、それらの接合界面にハーフミラー膜としての作用面3aが形成され、また平行四辺形の透光性部材の外部斜面に全反射膜としての作用面3bが形成されている。このようにして、光源1aと光源1bの光束を合成して、インテグレータ光学系に入射している。
・・(中略)・・
【0007】
ところで、一般に、高圧水銀ランプなどのアーク放電型のランプは、特に、プロジェクタなどへ適用されているランプは、アーク近傍の温度が数百度から1000度を越えるといわれており、ランプメーカは、安定した点灯を実現するために、リフレクタ-(反射鏡)を取りつけたときの形態でランプ構造の最適化設計を行っている。例えば、特許文献5の段落[0016]中の従来技術の問題点にも記載されている内容によると「放電ランプは、陽極と陰極との間におけるアーク放電により、内部に封入されている水銀、あるいは、不活性ガスの原子や分子が励起されて発光されるものである。したがって、光源を構成する放電ランプが水平方向に対し傾けられて配置されると、両電極の水平方向からの傾きにより、アーク放電パターンに影響を与えてしまい、結果、両電極にストレスとなるダメージが与えられ、放電ランプの寿命を短くしてしまう問題を有している。而して、一般に、放電ランプを使用する光源の水平方向からの傾斜角度θ2は、20度以下に抑えて使用されることが求められている。」とあり、放電ランプのアーク軸が水平からずれることの不具合を示すことが記されている。放電ランプ以外の光源においても、上述の作用効果は大なり小なり見受けられる。また、一般に光源装置においては、光源から発する光束の光軸と放電ランプのアーク軸とは、製作上の容易さ、発光光の有効利用などの観点から同軸又は平行軸としていると考えてよい。なお、放電ランプのアーク軸とは、放電ランプにおける陽極と陰極とを結ぶ軸線である。
【特許文献1】特開2000-305169号公報
【特許文献2】特開2007-163619号公報
【特許文献3】特許第3594543号公報
【特許文献4】特許第3705138号公報
【特許文献5】特開2003-114479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近の液晶プロジェクタは、投射光量を増加して、より大画面で、より明るい表示画面を達成するため、個々の放電ランプの光量を増加させることが要求されている。一般に、放電ランプの光を有効利用するために、放電ランプは光源の一方を放物面鏡や回転楕円鏡で覆い、他方に開口を設けて平行光や集光を射出する構造になっている。そして、放電ランプの光軸は、放電ランプが照射する平行光や集光の光軸と平行になるように構成されている。そこで、光源の光量を増加させるためには、放電ランプに大量の電力が投入され、発行量を増加される。しかし、放電ランプに大量の電力が投入されると、放電ランプの温度が上がりやすく、放電ランプの寿命や性能維持の面からアーク軸を水平に保つことがより重要になる。
【0009】
投射装置の投射光量を増加する方法として、上記の特許文献1?4に示したように、放電ランプの数を増やすことも考えられている。この場合も、光源全体の安定性や寿命の点から全ての放電ランプにおけるアーク軸を水平に保つことが求められる。すなわち、それぞれの光源からの照射光の光軸を水平とすることである。
【0010】
しかし、特許文献1,2に記載されているような照明装置では、2つの照射光の光軸が垂直になっており、照射光の光軸と同じ方向を向く光源ランプのアーク軸も垂直に交わっているけれども、これらの光軸が水平になっているという考え方は記載されていない。さらに、これらの光源を使用した液晶プロジェクタにおいては、偶然2つの光源からの光束の光軸が水平であったとしても、液晶プロジェクタそのものを水平に回転して使用する場合は問題ないが、この液晶プロジェクタで斜め上に画像を投影するために液晶プロジェクタを垂直方向に傾けると、少なくとも一方の光源からの光束の光軸は水平から傾いてしまい、当然アーク軸も傾いてしまう。
【0011】
また、特許文献3,4に記載されている液晶プロジェクタは、上述のように、表示画像の水平方向と光源からの光束の光軸が水平方向との配置関係が特定されておらず、この光源装置の光源からの光束の光軸は、表示画像の水平方向と垂直になっている可能性もある。すなわち、光源からの光束の光軸、言い換えれば、放電ランプのアーク軸を水平に保つという考え方はなく、そのような考慮も払われていない。
【0012】
このように、従来の投射装置においては、放電ランプのアーク軸を水平に保つべきという問題点に対する考慮がなく、投射装置でほぼ正面の垂直な壁に表示画像を投射するときにおいても、斜め上方の壁や、極端な場合には天井や床面に表示画像を投射する場合にも放電ランプのアーク軸を水平に保って、放電ランプの寿命や性能維持を図ることは考えられていなかったし、そのような構成を特定する説明や図面の記載はなかった。
【0013】
特に、複数の光源を使用した投写装置においては、投写装置を水平に設置したときに複数の光源のアーク軸がたとえ水平に配置されていたとしても、投射方向を上下に移動してもすべての光源のアーク軸が水平に保たれているものはなかった。この為、投写装置の使用中の投射姿勢により、一部又は全部の光源のアーク軸が水平から大きくずれることがあり、特に複数光源においては、光源の寿命低下や安定性不良という問題が解消されていなかった。
【0014】
本発明の目的は、上記課題を踏まえ、通常のどのような使用体勢においても、複数の光源を持ち、その全ての光源のアーク軸を水平に保つことのでき、光源の寿命や安定性を向上させた投写型表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明者等は、以下の発明を完成した。
本発明は、光源から発する光を反射鏡で略平行光にして又は集光して得られた光源光束を形成する複数の光源装置と、前記複数の光源装置からの光源光束を纏めて照明光束とする照明光学系と、前記照明光束に照明されるライトバルブと、前記ライトバルブにより変調された光束を空間あるいはスクリーン上に投射して表示画像を結像させる結像光学系とを備えた投射型表示装置において、前記空間あるいはスクリーン上に投射された画像における水平方向と、前記複数の光源装置における光源光束の光軸とが平行であることを特徴とする投射型表示装置である。
【0016】
好ましい本発明は、前記光源装置の光源がアーク放電型ランプであり、該アーク放電型ランプのアーク軸を光源光束の光軸と平行に配置したことを特徴とする前記投射型表示装置である。」

(イ)「【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、通常のどのような使用体勢においても、複数の光源を持ち、その全ての光源のアーク軸を水平に保つことのでき、複数光源における光源の寿命低下や安定性不良という問題が解消される投写型表示装置を提供することができる。」

(ウ)「【図9】

【図10】



すると、引用文献2には、以下の技術事項(以下「引用文献2の技術事項」という。)が記載されている。

「液晶プロジェクタなどへ適用されている高圧水銀ランプなどのアーク放電型のランプは、水平方向に対し傾けられて配置されると、両電極の水平方向からの傾きにより、アーク放電パターンに影響を与えてしまい、結果、両電極にストレスとなるダメージが与えられ、放電ランプの寿命を短くしてしまう問題を有しており、放電ランプのアーク軸が水平からずれることの不具合があり、放電ランプにおけるアーク軸、すなわち、光源からの照射光の光軸を水平に保つことが求められているところ、アーク放電型ランプのアーク軸を光源光束の光軸と平行に配置した光源装置を複数備えた液晶プロジェクタであって、2つの光源の照射光の光軸が垂直になっており、照射光の光軸と同じ方向を向く光源ランプのアーク軸も垂直に交わっている液晶プロジェクタでは、該液晶プロジェクタで斜め上に画像を投影するために該液晶プロジェクタを垂直方向に傾けると、少なくとも一方の光源からの光束の光軸は水平から傾いてしまい、当然アーク軸も傾いてしまう。
そこで、空間あるいはスクリーン上に投射された画像における水平方向と、前記複数の光源装置における光源光束の光軸とが平行であるように配置することにより、通常のどのような使用体勢においても、複数の全ての光源のアーク軸を水平に保つことができ、複数光源における光源の寿命低下や安定性不良という問題が解消される。」

(2)本願補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「第一光学装置2」及び「第二光学装置3」が、本願補正発明の「照明光学系」に、引用発明の「投射光学装置7」が、本願補正発明の「投写レンズ」に、引用発明の「放電ランプである光源ランプおよびリフレクターを備え」る「照明光学装置21の光源装置211」及び「放電ランプである光源ランプおよびリフレクターを備え」る「照明光学装置31の光源装置」が、本願補正発明の「放電ランプにより照明光を発生する光源」に、引用発明の「入射したS偏光光束を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の三色光に分離する機能を有」する「色分離光学装置22」及び「入射したS偏光光束を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の三色光に分離する機能を有」する「色分離光学装置32」が、本願補正発明の「発生した照明光をR(赤色),G(緑色),B(青色)の3色光に分離する色分離部」に、引用発明の「3つの第一光変調素子である液晶パネル24R,24G,24B」及び「第二光変調素子である3つの液晶パネル」が、本願補正発明の「該各色光を照射して光学像を形成する3枚の液晶パネル」に、引用発明の「第一色合成光学装置を構成する色合成光学装置25」及び「第二色合成光学装置を構成する色合成光学装置35」が、本願補正発明の「該各色光の光学像を合成する色合成部」に、引用発明の「プロジェクタ1」が、本願補正発明の「投写型映像表示装置」に、それぞれ、相当する。

イ 上記「ア」から、引用発明の
「第一光学装置2と、第二光学装置3と、合成光学装置6と、投射光学装置7と、を備えたプロジェクター1において、
第一光学装置2は、照明光学装置21、色分離光学装置22、光変調装置24、および第一色合成光学装置を構成する色合成光学装置25を備えており、
照明光学装置21は、光源装置211を備えており、
照明光学装置21の光源装置211は、放電ランプである光源ランプおよびリフレクターを備え、
色分離光学装置22は、入射したS偏光光束を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の三色光に分離する機能を有し、
光変調装置24は、3つの第一光変調素子である液晶パネル24R,24G,24Bを備え、
第二光学装置3は、照明光学装置31、色分離光学装置32、光変調装置34、および第二色合成光学装置を構成する色合成光学装置35を備えており、
照明光学装置31は、光源装置を備えており、
照明光学装置31の光源装置は、放電ランプである光源ランプおよびリフレクターを備え、
色分離光学装置32は、入射したS偏光光束を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の三色光に分離する機能を有し、
光変調装置34に、第二光変調素子である3つの液晶パネルが組み込まれ」る構成は、
本願補正発明の
「複数の照明光学系で形成した光学像を投写レンズから投写する投写型映像表示装置において、
前記複数の照明光学系は、それぞれ、放電ランプにより照明光を発生する光源と、発生した照明光をR(赤色),G(緑色),B(青色)の3色光に分離する色分離部と、該各色光を照射して光学像を形成する3枚の液晶パネルと、該各色光の光学像を合成する色合成部を備え」る構成に相当する。

ウ 引用発明の「照明光学装置21の光源装置211の光軸、照明光学装置31の光源装置の光軸、投射光学装置7の光軸は、いずれも、同一面内に配置される」ことは、本願補正発明の「前記各光源の光軸と前記投写レンズの光軸はいずれも同一面内に配置される」ことに相当する。

エ 引用発明の「第一光学装置2および第二光学装置3から出力される光学像を斜め方向に半画素分ずら」すことは、本願補正発明の「前記複数の照明光学系のうち2つの照明光学系の液晶パネルは、形成される光学像の対応する画素が互いに所定量ずれるように配置する」ことに相当する。

(3)一致点
してみると、両者は、
「複数の照明光学系で形成した光学像を投写レンズから投写する投写型映像表示装置において、
前記複数の照明光学系は、それぞれ、放電ランプにより照明光を発生する光源と、発生した照明光をR(赤色),G(緑色),B(青色)の3色光に分離する色分離部と、該各色光を照射して光学像を形成する3枚の液晶パネルと、該各色光の光学像を合成する色合成部を備え、
前記各光源の光軸と前記投写レンズの光軸はいずれも同一面内に配置され、
前記複数の照明光学系のうち2つの照明光学系の液晶パネルは、形成される光学像の対応する画素が互いに所定量ずれるように配置される投写型映像表示装置。」
で一致し、次の各点で相違する。

(4)相違点
ア 各光源の光軸について、本願補正発明では、「前記各光源の光軸は互いに平行であって、前記投写レンズの光軸と略直交するように配置され、前記複数の光源のうち2つの光源は、前記投写レンズを挟んで出射方向が互いに向き合って配置されて」いるのに対して、引用発明では、「照明光学装置21の光源装置211の光軸と照明光学装置31の光源装置の光軸は直交するように配置され、照明光学装置31の光源装置の光軸は投射光学装置7の光軸と直交するように配置され、照明光学装置21の光源装置211の光軸は投射光学装置7の光軸と平行であ」る点。(相違点ア)

イ 本願補正発明では、「前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能である」のに対して、引用発明では、そのような構成を有するか否かが不明である点。(相違点イ)

(5)判断
ア 相違点アについて
引用発明では、「照明光学装置21の光源装置211の光軸と照明光学装置31の光源装置の光軸は直交するように配置され」ているから、引用文献2の技術事項中の「アーク放電型ランプのアーク軸を光源光束の光軸と平行に配置した光源装置を複数備えた液晶プロジェクタであって、2つの光源の照射光の光軸が垂直になっており、照射光の光軸と同じ方向を向く光源ランプのアーク軸も垂直に交わっている液晶プロジェクタでは、該液晶プロジェクタで斜め上に画像を投影するために該液晶プロジェクタを垂直方向に傾けると、少なくとも一方の光源からの光束の光軸は水平から傾いてしまい、当然アーク軸も傾いてしまう。」という課題を有することは明らかである。そして、これに対して、引用文献2の技術事項中の「空間あるいはスクリーン上に投射された画像における水平方向と、前記複数の光源装置における光源光束の光軸とが平行であるように配置することにより、通常のどのような使用体勢においても、複数の全ての光源のアーク軸を水平に保つことができ」るという課題解決手段を参照して、引用発明の「照明光学装置21の光源装置211の光軸」と「照明光学装置31の光源装置の光軸」を、空間あるいはスクリーン上に投射された画像における水平方向と平行になるように構成することは当業者が容易に想到し得ることである。その際、引用文献1の図1(上記「(1)」「ア」「(イ)」の記載事項参照)と当業者の技術常識から、引用発明の「照明光学装置31の光源装置」の光軸が、空間あるいはスクリーン上に投射された画像における水平方向と平行であることが通常であるから、引用発明の「照明光学装置21」の「光源装置211」の光軸を空間あるいはスクリーン上に投射された画像における水平方向と平行となるように配置する、すなわち、「照明光学装置31の光源装置」の光軸と平行となるように配置すること、また、そのように配置する際、「照明光学装置21」の「光源装置211」の照射方向は、「照明光学装置31の光源装置」の照射方向と同じ方向、対向する方向の二択であって、その一方を適宜選択し得ることも自明であるから、引用発明の「照明光学装置21」の「光源装置211」の光軸を「照明光学装置31の光源装置」の光軸と平行となるように、また、「照明光学装置21」の「光源装置211」の照射方向は、「照明光学装置31の光源装置」の照射方向と対向する方向となるように配置して、上記相違点アに係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点イについて
複数の光源を有する液晶プロジェクタにおいて、全ての光源を点灯させるモードと半分の光源を点灯させるモードとに切換可能とすることは、特開2009-31715号公報(特に、段落【0033】参照。「第1の光源11」と「第2の光源12」を両方点灯させることを基本とし、省エネ等により一方のみを点灯することが記載されている。)、特開2006-39329号公報(特に、段落【0041】参照。「交互点灯モード」のオン/オフが設定できることが記載されている。)に示されるように、当業者には周知であるから、引用発明の「第1光学装置2」、「第2光学装置3」の両方を使用するモードと、そのうちの一方のみを使用するモードに切換可能とすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、2組(2つ)の液晶パネルの画像を、それぞれの対応する画素を所定量ずれるように配置し、該2組(2つ)の液晶パネルの両方を使用して、高解像度の投影画像を得る液晶プロジェクタにおいて、2つの液晶パネルの画像を交互に表示させることは、特開平6-18838号公報(特に、段落【0016】?【0022】、【0036】?【0040】、図1、2,7参照。NTSC信号の第1フィールドを「液晶パネル39」、第2フィールドを「液晶パネル40」で、インターレース走査により表示させると、「液晶パネル39」、「液晶パネル40」が交互に表示されることは明らかである。)、特開平8-137439号公報(特に、段落【0032】?【0034】、図1参照。「第1の液晶パネル13」に第1フィールドの映像が書き込まれ、「第2の液晶パネル14」に第2フィールドの映像が書き込まれ、1フィールド毎に交互に印加されてインターレース走査によるフルフレーム表示を可能とすることが記載されている。)に示されるように、当業者には周知であるから、引用発明において、「光変調装置24」の「3つの第一光変調素子である液晶パネル24R,24G,24B」に第1フィールドの映像を、「光変調装置34」の「第二光変調素子である3つの液晶パネル」に第2フィールドの映像を書き込み、1フィールド毎に交互に表示する、すなわち、「光変調装置24」と「光変調装置34」を交互に表示するように構成することは、当業者が容易になし得ることである。
してみると、引用発明において、上記周知技術を参酌して、「第1光学装置2」、「第2光学装置3」の両方を使用するモードと、そのうちの一方のみを使用するモードに切換可能とし、該2組(2つ)の液晶パネルの両方を使用するモードにおいて、「光変調装置24」の「3つの第一光変調素子である液晶パネル24R,24G,24B」に第1フィールドの映像を、「光変調装置34」の「第二光変調素子である3つの液晶パネル」に第2フィールドの映像を書き込み、「光変調装置24」と「光変調装置34」を交互に表示するように構成して、上記相違点イに係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(6)効果について
本願補正発明が奏し得る効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(7)結論
本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(8)むすび
以上のとおり、仮に、請求項12についての本件補正が、本願の当初明細書等に記載された範囲内でしたものであるとしても、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年4月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項12に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年9月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項12に記載された事項(上記「第2」「[理由]」「1」の本件補正前の請求項12の記載参照。)により特定されるとおりのものである。

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献1及び2の記載内容、引用発明及び引用文献2の技術事項は、上記「第2」「[理由]」「4」「(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」「[理由]」「4」で検討した本願補正発明から、
「前記複数の照明光学系のうち2つの照明光学系の液晶パネルは、形成される光学像の対応する画素が互いに所定量ずれるように配置するとともに、
前記2つの照明光学系の光源の発光動作を切り替えることが可能であり、かつ、前記2つの照明光学系の光源の両方を発光させる場合は、前記2つの照明光学系の液晶パネルの光学像を交互に表示させることが可能である」
という事項を削除したものである。
そうすると、前記「第2」「[理由]」「4」「(2)」?「(4)」と同様の対比により、本願発明は引用発明と前記「第2」「[理由]」「4」「(4)」に記載した相違点アでのみ相違するから、前記「第2」「[理由]」「4」「(5)」?「(7)」と同様の検討により、本願発明は引用発明及び引用文献2の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
してみると、本願発明は、引用発明及び引用文献2の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-02 
結審通知日 2016-02-09 
審決日 2016-02-22 
出願番号 特願2013-501140(P2013-501140)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
P 1 8・ 575- Z (G03B)
P 1 8・ 561- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 伊藤 昌哉
井口 猶二
発明の名称 投写型映像表示装置  
代理人 青稜特許業務法人  

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