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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1313543
審判番号 不服2015-9594  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-25 
確定日 2016-04-07 
事件の表示 特願2014- 65「情報提供装置、基地局装置、および機器管理サーバ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月17日出願公開、特開2014- 68395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件出願は、平成20年10月2日に出願した特願2008-257178号の一部を平成25年5月10日に新たな特許出願とした特願2013-100294号の一部を平成26年1月6日に新たな特許出願としたものであって、平成27年2月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年5月25日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年5月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本願発明と補正後の発明

平成27年5月25日付けの手続補正は、補正前の平成26年10月14日付けの特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「各地域に存在する情報出力装置とネットワークを介して通信する通信部と、
通信端末と無線通信する無線通信部と、
地域情報を保持するデータベースと、
前記データベースおよび前記情報出力装置が保持する地域情報を収集する地域情報収集部と、
前記地域情報収集部によって収集された地域情報を、前記無線通信部と通信する通信端末に提供する情報提供部と
投稿された地域情報を前記無線通信部を介して受付ける地域情報受付部とを備え、
前記データベースが前記投稿された地域情報を保持する基地局装置。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された

「各地域に存在する情報出力装置とネットワークを介して通信する通信部と、
通信端末と無線通信する無線通信部と、を備えた基地局装置において、
地域情報を保持するデータベースと、
前記データベースおよび前記情報出力装置が保持する地域情報を収集する地域情報収集部と、
前記地域情報収集部によって収集された地域情報を、前記無線通信部と通信する通信端末に提供する情報提供部と
本基地局装置と無線通信している通信端末から投稿された地域情報を前記無線通信部を介して受付ける地域情報受付部とを備え、
前記データベースが前記投稿された地域情報を保持する基地局装置。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。


2.新規事項の有無、補正の目的要件について

上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、「投稿された地域情報を前記無線通信部を介して受付ける地域情報受付部」の「投稿された地域情報」を、「本基地局装置と無線通信している通信端末から投稿された地域情報」とし、「投稿」が「本基地局装置と無線通信している通信端末から」された点を限定するとともに、「を備えた基地局装置において、」の表現を付加することにより特許請求の範囲を減縮するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。
また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。


3.独立特許要件について

上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明

上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。

(2)引用発明

原査定の拒絶理由に引用された特開2002-64855号公報(以下、「引用例」という。)には、「基地局、情報配信方法および記録媒体」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
A.実施形態
A-1.実施形態の構成
図1は、本発明の実施形態による移動通信システムの構成を示すブロック図である。図において、移動通信システムは、公衆網(図示せず)に接続された移動交換局(MSC)1と、移動交換局1に回線により接続された無線基地局2と、無線基地局2のサービスエリア内に位置する移動局3a,3bからなる。なお、図示の例では、無線基地局2は、1つしか示されていないが、通常、複数設けられる。また、移動局3a,3bは、任意の位置へ移動するものであり、サービスエリア内に必ず存在するものではなく、また、2台に限らず、多数存在する場合もある。
【0020】無線基地局2は、アンテナ10、TRX(送受信機)11,12、CPU13、回線インターフェース部14および記憶部15を有している。アンテナ10は、TRX11,12からの無線信号を空中に送信するとともに、移動局3a,3bからの無線信号を受信する。TRX11は、移動局3a,3bへ送信する呼制御信号や、通信信号などのベースバンド信号を無線信号に変換し、それぞれ、所定の周波数で送信する。また、TRX12は、移動局3a,3bからの無線信号を受信してベースバンド信号に変換する。」(3頁右欄40行?4頁左欄15行)

イ.「【0023】ローカル情報管理部18は、当該無線基地局2が自身のサービスエリア内に存在する移動局3a,3bに対してコンテンツ(文字、静止画、動画など)を提供する。コンテンツは、無線基地局2のサービスエリア内における企業や店舗などの広告、各種情報などからなり、移動交換局1などを通じてアップロードされ、記憶部15のローカル情報記憶部15bに記憶されるようになっている。ローカル情報記憶部15bは、自身のサービスエリア内に存在する企業や店舗などのコンテンツを記憶する。なお、コンテンツは、既存のブラウザソフトウェアにより閲覧可能なHTMLやXMLなどのマークアップ言語により記述されている。なお、移動局3a,3bと基地局2の接続は、移動局3a,3bからの特番発信により接続した後、移動局3a,3bがブラウザを立ち上げてコンテンツを閲覧するようにしても良いし、基地局2のローカル情報記憶部15bにURLを割り当て、センタに接続した後、基地局2のURLを指定してコンテンツを閲覧するようにしても良い。
【0024】回線インターフェース部14は、CPU13が、移動交換局1と回線とを介して呼制御信号および通信信号等のやり取りを行うためのインターフェースである。移動交換局1は、呼制御、移動管理、無線管理等を主に行う交換局であって、移動局に関する位置登録情報や加入者情報の管理も行っている。また、移動局3a,3bは、携帯電話、PHS端末、または携帯情報端末などからなり、上述したコンテンツを閲覧するためのブラウザソフトウェアを動作させることが可能な端末である。」(4頁左欄36行?同頁右欄13行)

ウ.「【0030】B-2.ローカル情報のアップロード
次に、サービスエリア内における企業や店舗などからの広告、各種情報などのコンテンツのアップロードについて説明する。ここで、図3は、コンテンツのアップロード動作を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS30で、当該通信事業者と企業や店舗などの顧客とがコンテンツ提供に関する情報サービス契約を締結する。上記企業や店舗などでは、パーソナルコンピュータなどの端末により、マークアップ言語などによりコンテンツを作成し、インターネットなどを介して移動交換局1にアップロードする(現在、行われているプロバイダのサーバへのホームページのアップロードのように)。
【0031】移動交換局1においては、ステップS32で、上記企業や店舗などの端末からコンテンツがアップロードされてきたか否かを判断する。そして、上記企業や店舗などの端末からコンテンツがアップロードされてくると、ステップS34で、上記企業や店舗などが存在するサービスエリアを管轄する無線基地局(図1の場合、無線基地局2)に転送する。そして、無線基地局2では、ステップS36で、転送されてきたコンテンツを、ローカル情報管理部18によりローカル情報記憶部15bに登録する。
【0032】なお、上記アップロードの方法は、移動交換局1を介して基地局2にアップロードするようにしたが、直接基地局2に接続してアップロードするようにしても良い。」(5頁左欄9?35行)


上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a.上記引用例の「無線基地局」は、「回線インターフェース部」と「送受信機」(摘記事項アの段落【0020】)と、「ローカル情報記憶部」と「ローカル情報管理部」と(摘記事項イの段落【0023】)を備えている。

b.前記「無線基地局」は、前記「回線インターフェース部」を通して、「移動交換局」と「回線により接続され」ている(摘記事項アの段落【0019】)ので、前記「回線インターフェス部」は、「移動交換局と回線により接続され信号のやり取りを行う回線インターフェース部」といえる。(摘記事項イの段落【0024】)

c.前記「送受信機」(TRX11,12)は、移動局へ送信する信号信号を無線信号に変換し、所定の周波数で送信する(TRX11)。また、移動局からの無線信号を受信してベースバンド信号に変換する(TR12)ものなので「移動局と無線信号の送受信をする送受信機」といえる。(摘記事項アの段落【0020】)

d.前記「ローカル情報記憶部」は、移動局が閲覧する「コンテンツ」を「記憶する」ものである(摘記事項イの段落【0023】)ので、「コンテンツを記憶するローカル情報記憶部」といえる。

e.前記「ローカル情報管理部」は、「前記移動交換局から転送されるコンテンツを、ローカル情報記憶部に登録する」ものである。(摘記事項ウの段落【0031】)

f.さらにまた、前記「ローカル情報管理部」は、「前記移動交換局から転送されるコンテンツを、前記送受信機と無線信号の送受信をする移動局に提供する」ものである。(摘記事項イの段落【0023】)

以上を総合すれば、結局、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認める。

「移動交換局と回線により接続され信号のやり取りを行う回線インターフェース部と、

移動局と無線信号の送受信をする送受信機と、を備えた無線基地局において、
コンテンツを記憶するローカル情報記憶部と、

前記移動交換局から転送されるコンテンツをローカル情報記憶部に登録し、

該登録されたコンテンツを、前記送受信機と無線信号の送受信をする移動局に提供するローカル情報管理部とを備えた、

無線基地局。」

(3)対比・判断

補正後の発明と引用発明とを対比すると、

a.引用発明の「回線インターフェース部」、「移動局」、「送受信機」は、それぞれ補正後の発明の「通信部」、「通信端末」、「無線通信部」に相当し、引用発明の「無線基地局」、「ローカル記憶部」は、後述する相違点を除いて、それぞれ補正後の発明の「基地局装置」、「データベース」に相当する。

b.引用発明の「移動交換局」は、一般的に各地域に存在するものであることは技術常識である。
また、前記「移動交換局」は、無線基地局のサービスエリアにおける企業や店舗などの広告・各種情報からなるコンテンツ、即ち地域情報がアップロードされてきたか否かを判断し、アップロードされていれば、該コンテンツを無線基地局に転送するものである(摘記事項イの【0023】、摘記事項ウの【0031】)から、地域情報を保持しているといえ、補正後の発明「情報出力装置」に相当する。
そうすると、引用発明の「移動交換局と回線により接続され信号のやり取りを行う回線インターフェース部と、移動局と無線信号の送受信をする送受信機と、を備えた無線基地局」は、「各地域に存在する情報出力装置とネットワークを介して通信する通信部と、通信端末と無線通信する無線通信部と、を備えた基地局装置」といえる。

c.上記b.で検討したように、引用発明の「コンテンツ」は、「地域情報」といえるから、引用発明の「コンテンツを記憶するローカル情報記憶部」は、補正後の発明の「地域情報を保持するデータベース」に含まれる。

d.引用発明の「ローカル情報管理部」は、「前記移動交換局から転送されるコンテンツをローカル情報記憶部に登録する」ことと、「(ローカル情報記憶部に登録された)コンテンツを、前記送受信機と無線信号の送受信をする移動局に提供する」こととを行うものであるので、補正後の発明の、「前記情報出力装置が保持する地域情報を収集する地域情報収集部」および、「前記地域情報収集部によって収集された地域情報を、前記無線通信部と通信する通信端末に提供する情報提供部」に相当するものである。
そうすると、引用発明の「前記移動交換局から転送されるコンテンツをローカル情報記憶部に登録するローカル情報管理部と、前記ローカル情報管理部によってローカル情報記憶部に登録されたコンテンツを、前記送受信機と無線信号の送受信をする移動局に提供するローカル情報管理部」は、「前記情報出力装置が保持する地域情報を収集する地域情報収集部と、前記地域情報収集部によって収集された地域情報を、前記無線通信部と通信する通信端末に提供する情報提供部」といえる。

以上をまとめると、両者は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「各地域に存在する情報出力装置とネットワークを介して通信する通信部と、
通信端末と無線通信する無線通信部と、を備えた基地局装置において、
地域情報を保持するデータベースと、
前記情報出力装置が保持する地域情報を収集する地域情報収集部と、
前記地域情報収集部によって収集された地域情報を、前記無線通信部と通信する通信端末に提供する情報提供部とを備えた、
基地局装置。」

(相違点1)
補正後の発明が「本基地局装置と無線通信している通信端末から投稿された地域情報を前記無線通信部を介して受付ける地域情報受付部」を備えているのに対して、引用発明は、移動局から投稿された地域情報を受付ける構成は備えていない点。

(相違点2)
「地域情報収集部」が収集する地域情報が、補正後の発明では「前記データベースおよび前記情報出力装置が保持する地域情報」であるのに対して、引用発明では「前記移動交換局から転送されるコンテンツ」のみである点。

(相違点3)
「データベース」が「保持する」「地域情報」が、補正後の発明では「前記投稿された地域情報」であるのに対して、引用発明では、「投稿された」ものでない点。

以下に、上記相違点について検討する。

まず、(相違点1)および(相違点3)についてまとめて検討する。

情報配信を行う基地局装置において、基地局装置と無線通信している通信端末から投稿された地域情報を無線通信部を介して基地局装置で受付けてデータベースに保存する点は、本願出願前の周知技術(例えば、特開平11-27393号公報(【0021】、【0022】、【0028】?【0033】、【0035】図2,図5)、特開2007-300168号公報(【0018】、【0048】?【0050】、図1)。)である。

引用発明の無線基地局も、コンテンツを移動局に提供するものであって、情報配信を行う基地局装置であるところ、上記周知技術を引用発明に単に付加することにより、引用発明に「本基地局装置と無線通信している通信端末から投稿された地域情報を前記無線通信部を介して受付ける地域情報受付部」を備えさせ(相違点1)、「ローカル情報記憶部」に登録される「コンテンツ」として、補正後の発明のように「前記投稿された地域情報」を選択すること(相違点3)は、当業者が容易に想到し得ることである。

次に、上記(相違点2)について検討する。
まず、上記(相違点3)についての検討で記したように、「ローカル情報記憶部」に登録される「コンテンツ」として「前記記憶された地域情報」を選択することは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、引用例に「なお、上記アップロードの方法は、移動交換局1を介して基地局2にアップロードするようにしたが、直接基地局2に接続してアップロードするようにしても良い。」(摘記事項ウ.【0032】)とあるように、引用発明の無線基地局に直接アップロードされた地域情報を提供することも示唆されているところ、引用発明において収集する地域情報として、補正後の発明のように「前記データベースおよび前記情報出力装置が保持する地域情報」とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、補正後の発明が奏する効果も引用発明及び周知技術から容易に予測できる範囲内のものである。


4.結語

以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合していない。

したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について

1.本願発明

平成27年5月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。


2.引用発明

引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で「引用発明」として認定したとおりである。


3.対比・判断

そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、

本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび


以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-28 
結審通知日 2016-02-02 
審決日 2016-02-22 
出願番号 特願2014-65(P2014-65)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 倍司保田 亨介  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 萩原 義則
山中 実
発明の名称 情報提供装置、基地局装置、および機器管理サーバ  

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