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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1313549
審判番号 不服2015-14030  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-24 
確定日 2016-04-26 
事件の表示 特願2013-552691「ワイヤレスバックチャネルのためのユーザ入力デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 9日国際公開、WO2012/106649、平成26年 5月15日国内公表、特表2014-511522、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年2月3日(優先権主張 2011年2月4日 米国、2011年12月22日 米国、2012年2月2日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月13日付けで拒絶理由が通知され、同年10月14日付けで手続補正がされ、平成27年3月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がされたものである。

第2 平成27年7月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に変更する補正事項(以下、「補正事項1」という。)を含むものである。
そして、補正前の請求項1及び補正後の請求項1の各記載は、それぞれ、以下のとおりである。
なお、〈補正後の特許請求の範囲〉における下線は補正箇所を表している。

〈補正前の特許請求の範囲〉
「【請求項1】
ソースデバイスが、シンクデバイスにレンダリングするための表示データを前記シンクデバイスに送信することと、
前記ソースデバイスが、前記ソースデバイスに関連するタッチセンシティブスクリーンの第1の表示ロケーションでのユーザ入力の指示を受信することであって、前記ユーザ入力が前記シンクデバイスでレンダリングした前記表示データの少なくとも一部の修正を指定し、前記表示データの前記一部が前記シンクデバイスの第2の表示ロケーションにレンダリングされることと、
前記ソースデバイスが、前記指示を受信することに応答して前記シンクデバイスの前記第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部を修正するために第2のコンフィギュレーションデータを送信することであって、前記第2のコンフィギュレーションデータは、少なくとも部分的に前記第1の表示ロケーションを前記第2の表示ロケーションにマッピングすることに基づくことと、
ユーザ入力の第2の指示を、前記ソースデバイスの前記タッチセンシティブスクリーンが受信することと、
前記第2の指示を受信することに応答して、前記ソースデバイスが、第1のタイムスタンプに関連する前記第2の指示に少なくとも部分的に基づいて第1のイベントを生成することと、
前記ソースデバイスが、第2のタイムスタンプに関連する第2のイベントを前記シンクデバイスから受信することと、
前記ソースデバイスが、前記第2のタイムスタンプが前記第1のタイムスタンプより早い時刻を表すかどうかを判断することと、
前記第2のタイムスタンプが前記第1のタイムスタンプより早い時刻を表すとき、前記ソースデバイスが、前記第1のイベントに少なくとも部分的に基づいて前記表示データを修正する前に、前記第2のイベントに少なくとも部分的に基づいて前記表示データを修正することと
を備える方法。」

〈補正後の特許請求の範囲〉
「【請求項1】
ソースデバイスが、シンクデバイスにレンダリングするための表示データを前記シンクデバイスに送信することと、
前記ソースデバイスが、前記ソースデバイスに関連するタッチセンシティブスクリーンの第1の表示ロケーションでのユーザ入力の指示を受信することであって、前記ユーザ入力が前記シンクデバイスでレンダリングした前記表示データの少なくとも一部の修正を指定し、前記表示データの前記一部が前記シンクデバイスの第2の表示ロケーションにレンダリングされることと、
前記ソースデバイスが、前記指示を受信することに応答して前記シンクデバイスの前記第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部を修正するために第2のコンフィギュレーションデータを送信することであって、前記第2のコンフィギュレーションデータは、少なくとも部分的に前記第1の表示ロケーションを前記第2の表示ロケーションにマッピングすることに基づくことと、
ユーザ入力の第2の指示を、前記ソースデバイスの前記タッチセンシティブスクリーンが受信することと、
前記第2の指示を受信することに応答して、前記ソースデバイスが、第1のタイムスタンプに関連する前記第2の指示に少なくとも部分的に基づいて第1のイベントを生成することと、
前記ソースデバイスが、第2のタイムスタンプに関連する第2のイベントを前記シンクデバイスから受信することと、
前記ソースデバイスが、前記第2のタイムスタンプが前記第1のタイムスタンプより早い時刻を表すかどうかを判断することと、
前記第2のタイムスタンプが前記第1のタイムスタンプより早い時刻を表すとき、前記ソースデバイスが、前記第1のイベントに少なくとも部分的に基づいて前記表示データを修正する前に、前記第2のイベントに少なくとも部分的に基づいて前記表示データを修正することと
を備え、
前記ソースデバイスは、前記ユーザ入力に対応するグラフィカルポインティングオブジェクトを表示せず、前記第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部が、前記ユーザ入力に対応する前記グラフィカルポインティングオブジェクトを備える、方法。」

2.補正の適否
本件補正の内の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「ソースデバイス」について、「ユーザ入力に対応するグラフィカルポインティングオブジェクトを表示せず」との限定を付加すると共に、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部」について、「ユーザ入力に対応する前記グラフィカルポインティングオブジェクトを備える」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)引用例の記載事項と引用例記載の発明
原査定で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2008-293361号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の記載がある。
a)「【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る画面表示システムの全体構成を示すブロック図である。20は、ホスト端末装置である。ホスト端末装置20は、リモート端末装置9と通信回線を介して接続され、画面上にリモート端末装置9から操作可能であり、リモート端末装置9のユーザから直接見ることが可能な共有エリアを設けている。1は、ディスプレイ等の表示手段であり、リモート端末装置9から操作可能な共有エリアを表示する。2は、各種制御を行う制御手段である。3は、共有画面を有するホスト端末装置20の操作権となる排他情報やズーム情報等を記憶する記憶手段であり、フラッシュメモリやRAM等の不揮発性メモリやHDD等の外部記憶装置からなる。
【0014】
4は、操作権の制御を行う操作権管理手段である。5はホスト端末装置20へ座標情報を入力するマウス、タブレット、等の入力手段である。入力手段5は、座標入力可能なものであればデジタイザ、タッチパネル等、特に指定はしない。6は、ホスト端末装置20の共有エリアの一部が共有エリア全体へ拡大表示されている場合に、ホスト端末装置20のポインティングカーソルがホスト端末画面の拡大表示領域外へ出ないように制御するカーソル制御手段(ホスト端末カーソル制御手段)である。7は、ホスト端末装置20の共有エリアの一部を共有エリア全体へ拡大表示するための拡大手段である。8は、通信手段であり、ホスト端末装置20と他のリモート端末装置9との通信を制御する為のネットワークインタフェース部である。
【0015】
9は、ホスト端末装置20の通信手段8と通信を行い、ホスト端末装置20の共有エリアを操作する為の座標入力手段を有する座標入力デバイスや、PDA等からなるリモート端末装置である。ここで、PDAは、Personal Digital Assistantsの略である。10は、ホスト端末装置20とリモート端末装置9とを有線又は無線で通信を行う為のLAN等のネットワークである。11は、表示手段であり、ホスト端末装置20の共有エリアへの入力の為の座標指定を行う為のリモート端末装置9のディスプレイである。12は、リモート端末装置9の各種制御を行う為の制御手段である。13は、記憶手段であり、フラッシュメモリやRAM等の不揮発性メモリやHDD等の外部記憶装置である。14は、カーソル制御手段(リモート端末カーソル制御手段)であり、ホスト端末装置20への座標指定を行う為のリモート端末装置9の座標入力エリアからカーソルを出す又は出さない等のカーソル制御を行う。15は、通信手段であり、ホスト端末装置20と通信を行う為の制御を行うネットワークインタフェース部である。16は、リモート端末装置9へ座標入力する為の入力手段であり、ペン、マウス、タブレット等である。
【0016】
図3は、本実施形態に係る画面表示システムの全体構成を示すブロック図である。
図3では、ホスト端末装置20には座標入力装置としてマウス、共有エリアを表示するための共有ディスプレイが接続されており、共有ディスプレイ上からデジタイザで直接入力座標指定も可能である。ホスト端末装置20には座標入力デバイスとしてノートPC及びタブレットがLANで接続されている。
【0017】
図7は、本実施形態に係るホスト端末装置の表示手段である画面表示を示す図である。
図7において、701は、ホスト端末装置20の共有ディスプレイである。702は、共有エリアであり、ホスト端末装置20と接続されたリモート端末装置9からホスト端末装置20のポインティングカーソル(カーソル)を移動させることが可能なエリアである。共有エリア702はホスト端末装置20のディスプレイ701の表示可能領域と同じ大きさであっても、ホスト端末装置20のディスプレイ701の一部の領域であってもよい。
【0018】
703は、ホスト端末装置20のカーソルである。通常のPCにおいて、カーソルは1つであり、ディスプレイ701内のどの範囲にも移動できる。領域704は、ホスト端末装置20上で、拡大表示領域を指定する場合の矩形指定例であり、ホスト端末装置20又はリモート端末装置9において、カーソルのドラッグによる範囲指定やリモコンなどの入力装置から領域指定を行う。
【0019】
図8は、本実施形態に係るホスト端末装置と接続されているリモート端末装置の画面表示の一例を示した図である。
図8において、801は、ホスト端末装置20と接続されているリモート端末装置9の表示手段であるディスプレイである。802は、リモート端末装置9からホスト端末装置20の共有エリア702に対して、カーソルを操作する為の座標指定を行う為の領域である。なお、領域802は、領域702の画面イメージを表示しても構わない。803は、リモート端末装置9のカーソルであり、通常、共有エリア702内にてカーソル703とカーソル803の動きは連動する。領域802は共有エリア702上の座標を絶対的に指定可能であり、領域702の左上座標と領域802の左上座標、領域702の右下座標と領域802の右下座標が対応する形となっている。絶対的に座標指定が可能な為、自然な操作感を実現する為にも領域702と領域802の縦横比は同じであることが望ましい。」(【0013】?【0019】の記載。)

b)「【0025】
図5は、ホスト端末装置の拡大表示中におけるホスト端末装置のカーソル制御の処理手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS501でマウスやデジタイザ等の入力手段5や、リモート端末装置9から、ホスト端末装置20のカーソルの移動指示があるか否かを判定し、指示がある場合はステップS502へ進む。
次に、ステップS501において、ホスト端末装置20が拡大表示中であるかどうかを判定する。拡大表示中である場合は、ステップS503へ進む。
次に、ステップS503において、カーソル移動指示位置が拡大領域外への移動であると判定した場合には、ステップS504にてホスト端末装置20のカーソルの拡大指定領域外への移動を無効化する。ここでは無効化としているが、任意の所定位置へ強制移動させてもよい。
【0026】
また、ステップS503にてカーソル座標指示位置が拡大表示領域外への移動であると判定した場合には、カーソル座標指示位置が拡大領域に含まれるようにホスト端末の拡大領域を移動させるようにしてもよい。ただし、この場合に拡大領域の端が元の共有エリアの端まで移動した場合はステップS504へ進み、ホスト端末カーソルの移動制御の処理を行う。
ステップS503でカーソル座標指示位置が拡大指定領域内の場合、又はステップS502において拡大表示中でないと判定された場合は、ステップS505へ進む。
次に、ステップS505において、通常のカーソル移動の表示をし、ステップS501へ戻る。
【0027】
図6は、ホスト端末装置の拡大表示中におけるリモート端末装置のカーソル制御の処理手順を示すフローチャートである。
まず、リモート端末装置9の入力手段16からリモート端末装置9上の座標指定エリアを利用し、ホスト端末装置20のカーソル操作を行う場合において、ステップS601でリモート端末装置9からカーソル移動指示があったか否かを判定する。あった場合は、ステップS602へ進む。
【0028】
ステップS602で、ホスト端末装置20の共有エリアが拡大表示中か否かの判定を行う。ステップS602にて拡大表示中であると判定された場合は、ステップS603へ進む。
ステップS603において、カーソル移動指示位置が、ホスト端末装置20の拡大領域と対応したリモート端末装置9上の領域外への移動指示であるか判定を行う。ここでの判定はリモート端末装置9で行っているが、ホスト端末装置20へカーソル座標を送信し、ホスト端末装置20内で拡大領域であるかどうかの判定を行ってもよい。
【0029】
リモート端末装置9内でステップS603の判定処理を行う場合、図1のカーソル制御手段14が行う。ホスト端末装置20内で判定を行う場合は、図1の通信手段15よりリモート端末装置9からホスト端末装置20へ座標情報を送信し、ホスト端末装置20で受信された座標情報を、カーソル制御手段6が判定を行う。
ステップS603において、拡大領域外への移動であると判定されるとステップS604へ進む。
【0030】
ステップS604において、リモート端末装置9のカーソルの拡大指定領域外への移動を無効化する。ここでは無効化としているが、任意の所定位置への強制移動でもよい。また、ステップS603にてカーソル座標指示位置が拡大表示領域外であると判定された場合に、カーソル座標指示位置が拡大領域に含まれるようにホスト端末装置20の拡大領域を移動させてもよい。ただし、その場合に拡大領域の端が元の共有エリアの端まで移動した場合はステップS604へ進み、リモート端末カーソルの移動制御の処理を行う。
次に、ステップS605ではカーソル制御後のカーソル位置を表示し、ステップS601へ戻る。
【0031】
このように、第1の実施形態によれば、一台又は複数のリモート端末装置からホスト端末装置の共有エリアのカーソル操作ができる。ホスト端末装置の共有エリアの一部が共有エリア全体へ拡大表示されている場合において、ホスト端末装置及びリモート端末装置のカーソルの移動範囲を拡大領域外へ出ないよう制御することによりホスト端末装置上の誤操作を防ぐことができる。」(【0025】?【0031】の記載。)

してみると、引用例1には以下の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。
「ホスト端末装置20は、リモート端末装置9と通信回線を介して接続され、画面上にリモート端末装置9から操作可能であり、リモート端末装置9のユーザから直接見ることが可能な共有エリアを設けており、
ホスト端末装置20は、
ディスプレイ等の表示手段1、各種制御を行う制御手段2、共有画面を有するホスト端末装置20の操作権となる排他情報やズーム情報等を記憶する記憶手段3、操作権の制御を行う操作権管理手段4、ホスト端末装置20へ座標情報を入力するタッチパネル等の入力手段5、カーソル制御手段(ホスト端末カーソル制御手段)6、ホスト端末装置20の共有エリアの一部を共有エリア全体へ拡大表示するための拡大手段7、ホスト端末装置20と他のリモート端末装置9との通信を制御する為のネットワークインタフェース部8を有し、
ホスト端末装置20の通信手段8と通信を行い、ホスト端末装置20の共有エリアを操作する為の座標入力手段を有するリモート端末装置9は、
ホスト端末装置20の共有エリアへの入力の為の座標指定を行う為のリモート端末装置9のディスプレイ11、リモート端末装置9の各種制御を行う為の制御手段12、記憶手段13、ホスト端末装置20への座標指定を行う為のリモート端末装置9の座標入力エリアからカーソルを出す又は出さない等のカーソル制御を行うカーソル制御手段(リモート端末カーソル制御手段)14、ホスト端末装置20と通信を行う為の制御を行うネットワークインタフェース部15、リモート端末装置9へ座標入力する為のタブレット等の入力手段16を有し、
ホスト端末装置20の共有ディスプレイの、共有エリア702では、ホスト端末装置20と接続されたリモート端末装置9からホスト端末装置20のポインティングカーソル(カーソル)703を移動させることが可能であり、
ホスト端末装置20と接続されているリモート端末装置9の表示手段であるディスプレイの、リモート端末装置9からホスト端末装置20の共有エリア702に対して、カーソルを操作する為の座標指定を行う為の領域802では、領域702の画面イメージを表示しても構わず、共有エリア702上の座標を絶対的に指定可能であり、リモート端末装置9のカーソル803が表示され、通常、共有エリア702内にて、ホスト端末装置20のカーソル703とリモート端末装置9のカーソル803の動きは連動するものであり、
ホスト端末装置のカーソル制御の処理手順は、
入力手段5や、リモート端末装置9から、ホスト端末装置20のカーソルの移動指示があるか否かを判定し、指示がある場合は通常のカーソル移動の表示をし、
リモート端末装置のカーソル制御の処理手順は、
リモート端末装置9の入力手段16からリモート端末装置9上の座標指定エリアを利用し、ホスト端末装置20のカーソル操作を行う場合において、リモート端末装置9からカーソル移動指示があったか否かを判定し、あった場合は、カーソル制御後のカーソル位置を表示する
画面表示方法。」

(2)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比する。

ア.引用例1記載の発明の「ホスト端末装置20は、リモート端末装置9と通信回線を介して接続され、画面上にリモート端末装置9から操作可能であり、リモート端末装置9のユーザから直接見ることが可能な共有エリアを設け」るものであり、また、「リモート端末装置9の表示手段であるディスプレイの、リモート端末装置9からホスト端末装置20の共有エリア702に対して、カーソルを操作する為の座標指定を行う為の領域802では、領域702の画面イメージを表示しても構わ」ないものであるから、引用例1記載の発明の「ホスト端末装置20」は本願補正発明の「ソースデバイス」に、引用例1記載の発明の「リモート端末装置9」は本願補正発明の「シンクデバイス」に、それぞれ相当し、引用例1記載の発明の「領域802では、領域702の画面イメージを表示」することは、本願補正発明の「ソースデバイスが、シンクデバイスにレンダリングするための表示データを前記シンクデバイスに送信すること」に相当する。

イ.引用例1記載の発明の「ホスト端末装置20」が有する「タッチパネル等の入力手段5」は、本願補正発明の「ソースデバイスに関連するタッチセンシティブスクリーン」に相当する。
そして、引用例1記載の発明の「入力手段5」から「ホスト端末装置20のカーソルの移動指示」があることは、「ホスト端末装置20の共有ディスプレイ」の「共有エリア702」で「ポインティングカーソル703を移動させる」指示が「入力手段5」から入力されることを意味するから、引用例1記載の発明の「共有エリア702」は本願補正発明の「第1の表示ロケーション」に相当し、引用例1記載の発明の「ホスト端末装置20」に上記指示が入力されることは、本願補正発明の「前記ソースデバイスが、前記ソースデバイスに関連するタッチセンシティブスクリーンの第1の表示ロケーションでのユーザ入力の指示を受信すること」に相当する。
また、引用例1記載の発明は「ホスト端末装置20のカーソル703とリモート端末装置9のカーソル803の動きは連動するもの」であるから、「ホスト端末装置20」に上記指示が入力された場合に、当該入力が「ホスト端末装置20」の「共有エリア702」内の「カーソル703」の移動を指定し表示することに連動して、「リモート端末装置9」の表示手段の「領域802」の「カーソル803」の移動も指定し表示するものといえるのは明らかである。
そして、引用例1記載の発明の「カーソル803」は、本願補正発明の「シンクデバイスでレンダリングした前記表示データの少なくとも一部」に、引用例1記載の発明の「領域802」は、本願補正発明の「第2の表示ロケーション」に、それぞれ相当し、引用例1記載の発明が「ホスト端末装置20」に上記指示が入力された場合に、当該入力が「リモート端末装置9」の表示手段の「領域802」の「カーソル803」移動を指定し表示することは、本願補正発明の「前記ユーザ入力が前記シンクデバイスでレンダリングした前記表示データの少なくとも一部の修正を指定し、前記表示データの前記一部が前記シンクデバイスの第2の表示ロケーションにレンダリングされること」に相当する。
したがって、引用例1記載の発明は、本願補正発明の「前記ソースデバイスが、前記ソースデバイスに関連するタッチセンシティブスクリーンの第1の表示ロケーションでのユーザ入力の指示を受信することであって、前記ユーザ入力が前記シンクデバイスでレンダリングした前記表示データの少なくとも一部の修正を指定し、前記表示データの前記一部が前記シンクデバイスの第2の表示ロケーションにレンダリングされること」に相当する構成を有するといえる。

ウ.上記イ.で述べたように、引用例1記載の発明は「入力手段5」から「ホスト端末装置20のカーソルの移動指示」が入力され、「ホスト端末装置20のカーソル703とリモート端末装置9のカーソル803の動きは連動するもの」であるから、引用例1記載の発明は、「ホスト端末装置20」の「入力手段5」からカーソル移動指示が入力されることに応答して、「リモート端末装置9」の「領域802」に表示された「カーソル803」を移動させ表示する構成を有するといえる。
そして、「カーソル803」を移動させ表示することは、「表示データの一部を修正する」ともいい得ることであるから、引用例1記載の発明の上記構成は、本願補正発明の「前記ソースデバイスが、前記指示を受信することに応答して前記シンクデバイスの前記第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部を修正する」ことに相当する。
そして、引用例1記載の発明において、「ホスト端末装置20」の「入力手段5」からカーソル移動指示が入力されることに応答して、「リモート端末装置9」の「領域802」に表示された「カーソル803」を移動させ表示するために、「ホスト端末装置20」から「リモート端末装置9」に「カーソル803」を移動させ表示するためのデータが送信されることは、当業者には自明のことであり、引用例1記載の発明は、本願補正発明の「前記シンクデバイスの前記第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部を修正するために第2のコンフィギュレーションデータを送信する」構成を有するといえる。
また、引用例1記載の発明は、「領域802では、」「共有エリア702上の座標を絶対的に指定可能であり」、「ホスト端末装置20のカーソル703とリモート端末装置9のカーソル803の動きは連動するもの」であるから、「共有エリア702」と「領域802」とは対応して(マッピングされて)おり、当該対応に基づいて「カーソル803」は移動させられ表示されるといえ、上記「カーソル803」を移動させ表示するためのデータは、「共有エリア702」と「領域802」との対応(マッピング)に基づいたものといえ、本願補正発明の「第2のコンフィギュレーションデータは、少なくとも部分的に前記第1の表示ロケーションを前記第2の表示ロケーションにマッピングすることに基づく」ものといえる。
したがって、引用例1記載の発明は、本願補正発明の「前記ソースデバイスが、前記指示を受信することに応答して前記シンクデバイスの前記第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部を修正するために第2のコンフィギュレーションデータを送信することであって、前記第2のコンフィギュレーションデータは、少なくとも部分的に前記第1の表示ロケーションを前記第2の表示ロケーションにマッピングすることに基づくこと」に相当する構成を有するといえる。

エ.上記イ.で述べたように、引用例1記載の発明は、本願補正発明の「前記ソースデバイスが、前記ソースデバイスに関連するタッチセンシティブスクリーンの第1の表示ロケーションでのユーザ入力の指示を受信すること」に相当する構成を有し、当該「ユーザ入力の指示」は「ユーザ入力の第2の指示」ともいい得るものであるから、引用例1記載の発明は、本願補正発明の「ユーザ入力の第2の指示を、前記ソースデバイスの前記タッチセンシティブスクリーンが受信すること」といい得る構成を有する。

オ.引用例1記載の発明は、「リモート端末装置9」の「領域802」に「カーソル803」が表示されるものであるから、引用例1記載の発明は、本願補正発明の「前記第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部が、前記ユーザ入力に対応する前記グラフィカルポインティングオブジェクトを備える」といい得る構成を有する。

したがって、両者は以下の一致点と相違点を有する。

〈一致点〉
「ソースデバイスが、シンクデバイスにレンダリングするための表示データを前記シンクデバイスに送信することと、
前記ソースデバイスが、前記ソースデバイスに関連するタッチセンシティブスクリーンの第1の表示ロケーションでのユーザ入力の指示を受信することであって、前記ユーザ入力が前記シンクデバイスでレンダリングした前記表示データの少なくとも一部の修正を指定し、前記表示データの前記一部が前記シンクデバイスの第2の表示ロケーションにレンダリングされることと、
前記ソースデバイスが、前記指示を受信することに応答して前記シンクデバイスの前記第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部を修正するために第2のコンフィギュレーションデータを送信することであって、前記第2のコンフィギュレーションデータは、少なくとも部分的に前記第1の表示ロケーションを前記第2の表示ロケーションにマッピングすることに基づくことと、
ユーザ入力の第2の指示を、前記ソースデバイスの前記タッチセンシティブスクリーンが受信することと
を備え、
前記第2の表示ロケーションにレンダリングした前記表示データの前記一部が、前記ユーザ入力に対応する前記グラフィカルポインティングオブジェクトを備える、方法。」

〈相違点1〉
本願補正発明は、「前記第2の指示を受信することに応答して、前記ソースデバイスが、第1のタイムスタンプに関連する前記第2の指示に少なくとも部分的に基づいて第1のイベントを生成することと、」「前記ソースデバイスが、第2のタイムスタンプに関連する第2のイベントを前記シンクデバイスから受信することと、」「前記ソースデバイスが、前記第2のタイムスタンプが前記第1のタイムスタンプより早い時刻を表すかどうかを判断することと、」「前記第2のタイムスタンプが前記第1のタイムスタンプより早い時刻を表すとき、前記ソースデバイスが、前記第1のイベントに少なくとも部分的に基づいて前記表示データを修正する前に、前記第2のイベントに少なくとも部分的に基づいて前記表示データを修正することと」を備えものであるのに対し、引用例1記載の発明は、「タイムスタンプ」により「イベント」を管理するとはされていない点。

〈相違点2〉
本願補正発明は、「前記ソースデバイスは、前記ユーザ入力に対応するグラフィカルポインティングオブジェクトを表示」しないものであるのに対して、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。

(3)判断
〈相違点2についての判断〉
引用例1自体には、引用例1記載の発明において、「ホスト端末装置20」(ソースデバイス)の「共有エリア702」に表示される「カーソル703」(ユーザ入力に対応するグラフィカルポインティングオブジェクト)に関して、表示しないものとすることを示唆する記載はない。
また、原査定で引用された、特開2005-148450号公報(以下、「引用例2」という。)、原査定で引用された、米国特許第6515992号明細書(以下、「引用例3」という。)、原査定で引用された、特開平6-110424号公報(以下、「引用例4」という。)、原査定で引用された、特開平9-325923号公報(以下、「引用例5」という。)、原査定で引用された、特開平7-240806号公報(以下、「引用例6」という。)のいずれにも、「ソースデバイスは、前記ユーザ入力に対応するグラフィカルポインティングオブジェクトを表示しないもの」とすることは、記載されておらず、また、そのようにすることを示唆する記載も見当たらない。
したがって、引用例1?6によっては、上記相違点2の克服が容易であったとはいえない。
また他に、引用例1記載の発明において、本願補正発明の相違点2に係る構成を採用することが、当業者が容易に想到し得たことというべき理由は見当たらない。

よって、相違点1について検討するまでもなく、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び引用例2?6記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
他に、本願補正発明を、特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由も発見しない。

よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に違反するところはない。

3.むすび
以上のとおり本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明について
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?20に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
 
審決日 2016-04-11 
出願番号 特願2013-552691(P2013-552691)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩崎 志保高瀬 勤  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 ワイヤレスバックチャネルのためのユーザ入力デバイス  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 奥村 元宏  

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