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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1313649
審判番号 不服2015-2000  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-02 
確定日 2016-04-21 
事件の表示 特願2010-159820号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年2月2日出願公開、特開2012-19938号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成22年7月14日の特許出願であって、平成26年2月6日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月8日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月31日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月5日)、それに対し、平成27年2月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年2月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年2月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成26年4月8日に提出された手続補正書における
「遊技盤を有し、遊技者によって遊技される遊技機であって、
第1表示画面を有し、駆動手段からの駆動力を受けて前記遊技盤の表面に沿って移動する第1画像表示器と、
前記第1表示画面の位置が、前記遊技盤の表面に位置する所定のオブジェクトとの位置関係において所定の位置であるか否かを判定する位置判定手段と、
前記位置判定手段によって前記所定の位置であると判定された場合に、前記遊技機の遊技に関連する画像であるサブ画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備え、
前記所定のオブジェクトは、当該所定のオブジェクト自身が前記第1表示画面に前記サブ画像が表示される契機となるオブジェクトであることを示唆する特定のオブジェクトである、遊技機。」

から、審判請求時に提出された手続補正書における
「遊技盤を有し、遊技者によって遊技される遊技機であって、
第1表示画面を有し、駆動手段からの駆動力を受けて前記遊技盤の表面に沿って移動する第1画像表示器と、
前記第1表示画面の位置が、前記遊技盤の表面に位置する所定のオブジェクトとの位置関係において所定の位置であるか否かを判定する位置判定手段と、
前記位置判定手段によって前記所定の位置であると判定された場合に、前記遊技機の遊技に関連する画像であるサブ画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備え、
前記所定のオブジェクトは、当該所定のオブジェクト自身が前記第1表示画面に前記サブ画像が表示される契機となるオブジェクトであることを遊技者に示唆する特定のオブジェクトである、遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である所定のオブジェクトに関して、「当該所定のオブジェクト自身が前記第1表示画面に前記サブ画像が表示される契機となるオブジェクトであることを示唆する特定のオブジェクトである」とあったものを「当該所定のオブジェクト自身が前記第1表示画面に前記サブ画像が表示される契機となるオブジェクトであることを遊技者に示唆する特定のオブジェクトである」と限定したものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-312515号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
上記主表示装置および副表示装置とで上記判定結果を報知せしめるように
所定の遊技領域に遊技球が入球すると、特別遊技に移行するか否かの判定を行い、該判定結果に基づいて画像表示装置の画像を変動表示して上記判定結果を遊技者に報知せしめる弾球遊技機において、
上記画像表示装置を、遊技盤に固定された主表示装置と、該主表示装置の近接位置に設けられ、かつ駆動手段により上記主表示装置の周辺および主表示装置の表示部前方を移動可能に設置された副表示装置とで構成し、
上記主表示装置の表示画像を制御せしめる主表示制御手段と、上記副表示装置の表示画像を制御せしめる副表示制御手段と、上記駆動手段による副表示装置の移動を制御する移動制御手段とを備え、
なした弾球遊技機。
【請求項2】
上記駆動手段は、上記主表示装置の上縁に沿って横方向に設けられた第1の駆動装置と、上記第1の駆動装置と連結されて縦方向に設けられた第2の駆動装置とを備え、上記第1の駆動装置により上記副表示装置を上記主表示装置の上縁に沿って左右方向に移動可能とし、上記第2の駆動装置により上記副表示装置を上記主表示装置の上方位置と上記主表示装置の表示部前方位置との間を上下方向に移動可能となす請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項3】
上記副表示装置には、有機エレクトロミネッセンス(EL)表示器を用いた請求項1または2に記載の弾球遊技機。
【請求項4】
遊技者により、上記副表示装置の移動制御あるいは副表示装置の画像表示制御を実行可能な操作スイッチを備えた請求項1ないし3のいずれかに記載の弾球遊技機。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は弾球遊技機、特に所定の遊技領域に遊技球が入球すると、特別遊技に移行するか否かの判定を行い、該判定結果に基づいて画像表示装置の画像を変動表示して上記判定結果を遊技者に報知せしめる弾球遊技機に関する。」

ウ 「【0005】
また従来、下記特許文献に記載されたように、遊技盤の中央に設置された表示装置とは別体の表示装置をガラス枠の周縁部に沿って設置し、上記遊技盤の表示装置と、上記ガラス枠の表示装置とで同時に上記リーチ予告や大当り予告を表示演出するようにしたものが提案されている。ガラス枠の表示装置は、薄形の有機EL表示器が用いられ、前後2枚のガラス板からなる2重構造のガラス枠の両ガラス板間に上記表示器が設置され、表示器で遊技盤の遊技領域を囲むように設けれている。これによれば、リーチ予告や大当り予告の演出時に、ガラス枠の表示装置にキャラクタを表示せしめ、これをガラス枠の周縁部に沿って移動させるといった派手な表示演出ができるが、一般に、遊技者の関心は上記遊技盤の表示装置に集中するので、遊技盤の表示装置から離れているガラス枠の表示装置が目に入ると遊技者を疲れさせ、遊技に集中できなくなるという問題があり、あまり実用的とはいえない。
【特許文献1】特開2002-224349号公報 (第3-6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、多彩な表示演出が可能で、遊技者を遊技に集中させて飽きさせることのない興趣の豊かな弾球遊技機を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定の遊技領域に遊技球が入球すると、特別遊技に移行するか否かの判定を行い、該判定結果に基づいて画像表示装置の画像を変動表示して上記判定結果を遊技者に報知せしめる弾球遊技機において、上記画像表示装置を、遊技盤に固定された主表示装置と、該主表示装置の近接位置に設けられ、かつ駆動手段により上記主表示装置の周辺および主表示装置の表示部前方を移動可能に設置された副表示装置とで構成し、上記主表示装置の表示画像を制御せしめる主表示制御手段と、上記副表示装置の表示画像を制御せしめる副表示制御手段と、上記駆動手段による副表示装置の移動を制御する移動制御手段とを備え、上記主表示装置および副表示装置とで上記判定結果を報知せしめるようになす(請求項1)。リーチ予告、リーチアクションおよび大当り予告時に、主表示装置とともに副表示装置を表示させ、かつ副表示装置を主表示装置の周辺および主表示装置の表示部前方に移動させ、両表示装置の表示を組み合わせた多彩な表示演出ができる。主表示装置および副表示装置とで報知する判定結果とは、当たりかハズレかの最終結果だけでなく、最終結果に至る変動(変動パターン)も含まれる。また、主表示装置と副表示装置とを近接位置に設けたので、遊技者を疲れさせず遊技に集中させることができる。」

エ 「【0017】
上皿121の左側の膨出部の上面には、後述の副表示装置の移動制御または副表示装置の画像表示制御を操作可能とする操作スイッチたる押しボタンスイッチ135が設けられている。
・・・
【0020】
図2は本弾球遊技機の遊技盤21を示す。本弾球遊技機は、遊技盤21上に打ち出された遊技球が所定の遊技領域たる入賞口31に入球すると、乱数からなる抽出値が抽出され、該抽出値に基づいて特別遊技に移行するか否かの大当り判定を行い、その判定結果に基づいて特別画像表示装置64の画像や図柄を変動表示して上記判定結果を報知し、大当りとなると通常の遊技とは異なる特別遊技を実行するものである(大当りに対して、特別遊技に移行しない場合をハズレという)。
【0021】
図2に示すように、遊技盤21の盤面上には、盤面上を略円形に縁取るように盤面に対して垂直に帯状のレール22,23が設けてある。レール22,23は図中左側の一部が二重になっており、発射ハンドル141の操作で遊技球が外側レール23に沿って発射され、レール22,23で囲まれた盤面の略円形領域内に入る。この略円形領域の中央には特別画像表示装置64が設けられ、その周囲に種々の入賞口31,35、大入賞口32、多数の遊技釘、風車等が設けられている。」

オ 「【0025】
特別画像表示装置64は、図2ないし図4に示すように、液晶(LC)表示器からなる主表示装置641と、有機エレクトロミネッセンス(以下、有機ELという)表示器からなる副表示装置651とを備えている。副表示装置651は非表示時に表示部652が透明となるものを使用しており、表示部652は副表示装置651の下端部に設けてある。特別画像表示装置64は、遊技盤21の中央に設けた画像表示枠24の開口部241内に、主表示装置641の表示部642が臨むように位置合わせして遊技盤21の背面側に設置されている。
【0026】
画像表示枠24の開口部241はその縦寸法が、主表示装置641のそれよりも上方へ大きく形成してあり、主表示装置641の上方位置に副表示装置651を表示可能なスペースが設けてある。
【0027】
副表示装7651は第1の駆動装置51および第2の駆動装置52により左右方向および上下方向に移動可能に設置されている。第1の駆動装置51は、主表示装置641の上部に設置された前方および上方へ向けて開口する略箱型のケース体510の内部に、ケース体510の左右の両側壁間に横方向に架けわたしたネジ軸511と、これに螺合したナット部材512とを備えている。ネジ軸511はその一端に設けたプーリー513が第1の電動モーター514のモーター軸と連結されて、第1の電動モーター514の駆動により軸中心に回転可能としてある。ナット部材512は、ケース体510の前側に設けられた縦板状のブラケット520と連結してこれを支持する。またブラケット520はその下端がケース体510の底壁前縁に設けられたガイドレール515に沿って横方向に摺動可能に設けられている。」

カ 「【0041】
サブ統合基板66は、主制御装置61からの指令を受けてこの指令を特別画像表示装置64に中継するとともに、1チップマイコンとランプ出力用のICチップからなるランプ制御装置を有し、これにより特別図柄保留記憶LED730や普通図柄表示装置731、普通図柄保留記憶LED732の他、装飾用等の各種のランプ類733のランプ制御を行う。
【0042】
またサブ統合基板66は多数の音声データを記憶したマスクROM内蔵の1チップマイコンと、これにより制御される音源ICおよびアンプ等からなる音声制御装置を備えており、これにより主制御装置61および特別画像表示装置64からの指令を受けて、録音した音源をフレーズに組み立てスピーカ735を駆動する音声制御を行う。
【0043】
更にサブ統合基板66には、副表示装置651の位置を検出する位置検出スイッチ752の信号入力部と、上記押しボタンスイッチ135の信号入力部、第1および第2の電動モーター514,523をそれぞれ制御せしめる駆動出力部を備えている。
【0044】
特別画像表示装置64は画像制御基板64aを有し、画像制御基板64aには、サブ統合基板66を経由した主制御装置61の指令に基づいて主表示装置641の画像を制御する主表示制御装置640と、副表示装置651の画像を制御する副表示制御装置650を備えている。各表示制御装置640,650は1チップマイコン等を中心に構成され、各表示装置641,651の背景画像や、主表示装置641に表示される3つの特別図柄D1,D2,D3(図7参照。)を制御する。」

キ 「【0048】
次に、図7ないし図14に基づいて本発明の主表示装置641と副表示装置651とを用いたリーチ予告、リーチアクションや大当り予告等の表示演出のいくつかの事例を説明する。通常、副表示装置651は上記待機位置にあり、遊技者から見えないようにしておく。遊技盤21に発射された遊技球が入賞口31に入球して上記大当り判定が実行され、主表示装置641の特別図柄D1,D2,D3が変動を開始したときに、図7(A)に示すように、例えば副表示装置651を主表示装置641の上方かつ中央位置に移動させ、副表示装置651に敵側のキャラクタC1を表示させてリーチ予告やリーチの種類の予告の表示演出を行う。その後、図7(B)に示すように、主表示装置641の特別図柄D1,D3が同一図柄で停止表示されてリーチとなると、副表示装置651のキャラクタC1と関連するリーチアクションを行う。図7(C)(D)(E)に示すように、主表示装置641において敵側のキャラクタC1と味方のキャラクタC2とを戦わせるリーチアクションに移行し、上記大当り判定の結果がハズレであれば、該判定結果に基づいて敵側のキャラクタC1の勝ちとして主表示装置641にハズレ結果を表示する。また上記大当り判定の結果が大当りのときには上記リーチアクションにおいて、味方のキャラクタの勝ちとして、これを大当り予告の表示演出となし、特別図柄D1,D2,D3を揃えた状態で停止表示する。
【0049】
上述の表示演出の事例において、副表示装置651にキャラクタC1が表示されたときに必ずリーチになるようににしてもよいが、これに限らず、リーチにならないときがあってもよい。また、副表示装置651に表示されたキャラクタC1とは関連のないリーチアクションを行うようにしてもよい。尚、副表示装置651に表示されたキャラクタC1とは関連のないリーチアクションを行う場合は大当り判定とにすることが望ましい。このように、虚偽のリーチ予告や法則の異なるリーチアクションを演出することで遊技の趣向性が向上する。
【0050】
また、他の大当たり予告の表示演出として、図8(A)(B)に示すように、一度、リーチアクションにおいて、敵側のキャラクタC3が味方のキャラクタC4に勝利して特別図柄D1,D2,D3がハズレ状態で停止表示された後、図8(C)(D)(E)(F)に示すように、副表示装置651に新たな味方のキャラクタC5を表示させ、副表示装置651を主表示装置641の上方を上縁に沿って横方向に移動させ、更に副表示装置651を下方へ移動させて主表示装置641の前方位置として、あたかも味方のキャラクタC5が応援に駆けつけたような演出を行う。その後、図8(G)(H)に示すように、味方のキャラクタC5が敵側のキャラクタC3を成敗して特別図柄D1,D2,D3を揃えて停止表示して大当りとする。このように、副表示装置651が移動し、主制御装置641の画面前方位置でも表示できるようにしたので、主制御装置641以外(副表示装置651)のところからキャラクタ等が、主制御装置641の画面上に移動してくるといった演出が自然にでき、趣向性を向上させることができる。
・・・
【0053】
副表示装置651にはキャラクタ等に限らず、特別図柄D1,D2,D3を擬似的に表示してもよい。例えば図11(A)(B)に示すように、リーチとなった時に、副表示装置651を主表示装置641の前方位置に移動させ、副表示装置651に特別図柄D2に代わる疑似図柄D4を変動表示させる。そして主表示装置641に表示されたキャラクタC8が副表示装置651の疑似図柄D4を停止表示させるようにし(図11(C)(D))、表示された疑似図柄D4がハズレであれば、副表示装置651を主表示装置641の前方位置から退出させ、主表示装置641にハズレ図柄を表示させる。尚、副表示装置651の疑似図柄D4を停止させるタイミグを遊技者による上記押しボタンスイッチ135の操作で行うようにしてもよい。
【0054】
また、図12(A)(B)(C)に示すように、キャラクタC8により停止表示された副表示装置651の疑似図柄D4がハズレであっても、副表示装置651が主表示装置641の前方位置から退出したあとに、実際の特別図柄D2が現れ大当りとするようにしてもよい。このように副表示装置651を主表示装置641の表示領域の一部を隠蔽する隠蔽手段として利用することで、意外性があり面白みのある遊技演出ができる。
【0055】
副表示装置651に特別図柄を擬似的に表示する他の事例として、例えば図13に示すように、副表示装置651を初めから主表示装置641の前方位置に移動させかつ非表示状態(透明)としておき、副表示装置651を通して主表示装置641の特別図柄D1,D2,D3の変動を見せるようにしておく。その後、特別図柄D1,D3,D2を順に停止表示させ、特別図柄D1のみが揃わないハズレの組合わせを表示する。次に副表示装置651に主表示装置641の特別図柄D2,D3と同一で大当りとなる疑似図柄D4を表示させる(図では背景をハニカム状に表す)。そして副表示装置651は疑似図柄D4の表示状態と非表示状態とを交互に切り換える。遊技者は一旦、主表示装置641にリーチにもならないハズレが表示されてがっかりするが、その後、副表示装置651により大当り表示とハズレ表示とが交互に繰り返し表示され、大当りを期待する。このように全くのハズレだと思っていたのもが、大当りのチャンスがまだ残っていると知り、通常のリーチとなるときよりも意外性があって、スリル感や大当りとなった時の満足感を向上できる。
【0056】
更に他の事例として図14に示すように、副表示装置651に特別図柄D2に代わる疑似図柄D4を表示させ、リーチ状態からハズレ表示となった場合に、主表示装置641に表示されたキャラクタC9が疑似図柄D4を変更しようと攻撃をかける表示演出を行う。疑似図柄D4が攻撃を受けているとき第2の駆動装置により副表示装置651を小刻みに上下動させて攻撃を受けてように演出することが望ましい。その後、大当りを表示する。また大当りに限らずハズレとしてもよい。これによれば副表示装置651の表示がキャラクタC9の攻撃により変化するのみならず、副表示装置651が動くのでリアル感があり、趣向性が向上する。」

ク 「【0059】
副表示装置651を主表示装置641の上部および表示部の前方位置を上下左右方向に移動可能に設けたので、例えば副表示装置651にキャラクタを表示させた状態で副表示装置651を移動させることで画像表示だけでは演出できないリアルな演出ができる。また副表示装置651に非表示時に表示部が透明な有機EL表示器を用いたので、表示状態で副表示装置651を主表示装置641の表示部の前方位置へ移動させて主表示装置641の表示の一部を隠したり、この位置で副表示装置651を非表示状態として主表示装置641の表示の一部を再び遊技者に見せる斬新な表示演出が可能となる。」

ケ 「【0062】
また本実施形態では、主制御装置61からの指令を中継してこれを特別画像表示装置64へ送るサブ統合基板66で、位置検出スイッチ752からの副表示装置651の位置検出信号や押しボタン135の入力信号を受信し、サブ統合基板66により第1および第2の電動モーター514,523を制御して副表示装置651を移動させるようにしたので、副表示装置651の移動制御と、主表示装置641の表示内容および副表示装置651の表示内容とをずれなく制御させることができ、主表示装置641および副表示装置651の関連性のある表示演出がスムーズにできる。画像表示基板640の制御負担も軽減できる。
【0063】
尚、位置検出スイッチ752は、副表示装置651が上記待機位置にあるか否かを検出するもので、副表示装置651を移動させるときに、副表示装置651が待機位置にあるか否かを確認し、待機位置にあることが確認されてから副表示装置651を移動させるようにする。もし、何らかの問題が発生して、副表示装置651が待機位置にないときは、一旦、副表示装置651を待機位置に戻してから主制御装置61の指令に従って副表示装置651を移動させる。これにより確実な副表示装置651の移動制御ができる。
【0064】
図15は、本発明を適用した弾球遊技機の他の電気的な接続構造を示すブロック図で、基本構造は先の実施形態の構造とほぼ同じで、相違点を中心に説明し、図において同一部材を同一符号で表し、それらの説明を省略する。本接続構造は、特別画像表示装置64の画像制御基板64aに、副表示装置651の位置を検出する位置検出スイッチ752の信号入力部と、上記押しボタンスイッチ135の信号入力部、第1および第2の電動モーター514,523の駆動出力部を設け、画像制御基板64aにより、主表示装置641および副表示装置651の表示制御と、副表示装置651の移動制御とを実行させるようにしたものである。これによれば、関連性の高い両表示装置641,651の表示演出と副表示装置651の移動とをずれなくスムーズに制御させることができる。」

コ 「【符号の説明】
【0069】
21 遊技盤
51 第1の駆動装置(駆動手段)
52 第2の駆動装置(駆動手段)
64 特別画像表示装置(画像表示装置)
64a 画像制御基板、主画像制御基板(移動制御手段)
64b 副画像制御基板(移動制御手段)
640 主表示制御装置(主表示制御手段)
641 主表示装置
650 副表示制御装置(副表示制御手段)
651 副表示装置
66 サブ統合基板(移動制御手段)
135 押しボタンスイッチ(操作スイッチ)」

サ 上記エには、【0020】に、遊技盤21を有する弾球遊技機が記載されている。
そして、上記アの【請求項4】、上記エの【0017】によれば、弾球遊技機は、遊技者により、操作される操作スイッチたる押しボタンスイッチ135を備えている。
以上から、刊行物には、遊技盤21を有し、遊技者により操作される押しボタンスイッチ135を備えた弾球遊技機について記載されているといえる。

シ 上記アの【請求項1】、【請求項2】、上記イの【0017】によれば、押しボタンスイッチ135の操作により、副表示装置は第1の駆動装置により主表示装置の上縁に沿って左右方向に移動可能であり、第2の駆動装置により主表示装置の上方位置と主表示装置の表示部前方位置との間を上下方向に移動可能である。
そして、上記オの【0025】から、副表示装置は表示部652を備えるものである。
したがって、刊行物には、副表示装置は、表示部652を備え、ボタンスイッチ135の操作により、駆動装置によって主表示装置に沿って、左右、上下に移動可能であることが記載されているといえる。

ス 上記ケには、「位置検出スイッチ752からの副表示装置651の位置検出信号や押しボタン135の入力信号を受信し、サブ統合基板66により第1および第2の電動モーター514,523を制御して副表示装置651を移動させる」ことが記載されている。
そして、上記キの【0055】には、「図13に示すように、・・・特別図柄D1,D3,D2を順に停止表示させ、特別図柄D1のみが揃わないハズレの組合わせを表示する。次に副表示装置651に主表示装置641の特別図柄D2,D3と同一で大当りとなる疑似図柄D4を表示させる(図では背景をハニカム状に表す)。そして副表示装置651は疑似図柄D4の表示状態と非表示状態とを交互に切り換える。」と記載されている。そして、【図13】には、特別図柄D1の停止位置に副表示装置651の疑似図柄D4を表示させることが図示されている。
一方、上記ケの【0056】には、「図14に示すように、副表示装置651に特別図柄D2に代わる疑似図柄D4を表示させ、リーチ状態からハズレ表示となった場合に、主表示装置641に表示されたキャラクタC9が疑似図柄D4を変更しようと攻撃をかける表示演出を行う。」と記載されている。
したがって、図13において、主表示装置641の特別図柄D1の位置に副表示装置651の疑似図柄D4を表示させ、図14において、主表示装置641の特別図柄D2の位置に副表示装置651の疑似図柄D4を表示させている。そして、これらの所定の特別図柄(図13の特別図柄D1、図14の特別図柄D2)は、最終的に変化する可能性があるから、変動表示する特別図柄D1、D2、D3のうち最後に停止する特別図柄といえる。
以上より、刊行物には、副表示装置651は、位置検出スイッチ752や押しボタンスイッチ135の信号により、主表示装置641の変動表示する特別図柄D1,D3,D2の所定の特別図柄の位置(図13における特別図柄D1や図14における特別図柄D2の位置)に移動し、所定の特別図柄の停止位置において疑似図柄D4を表示させる手段を備えることが示されているものと認められる。

セ 上記ア?コの記載事項、及び、上記サ?スの認定事項を総合すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「刊行物発明」という。)。
「遊技盤21を有し、遊技者により、副表示装置の移動制御あるいは副表示装置の画像表示制御を実行可能な押しボタンスイッチ135を備えた弾球遊技機であって、
遊技盤21に固定された主表示装置と、
副表示装置と、
駆動装置による副表示装置の移動を制御する移動制御手段と
を備え、
副表示装置は、表示部652を備え、押しボタンスイッチ135の操作により、駆動装置によって主表示装置に沿って、左右、上下に移動可能であり、
副表示装置651は、位置検出スイッチ752や押しボタンスイッチ135の信号により、主表示装置641の変動表示する特別図柄D1,D3,D2の所定の特別図柄の位置(図13における特別図柄D1や図14における特別図柄D2の位置)に移動し、所定の特別図柄の停止位置において疑似図柄D4を表示させる手段を備える
弾球遊技機。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物発明とを対比する。
ア 刊行物発明における「表示部652を備え、遊技盤21を有し、遊技者により、副表示装置の移動制御あるいは副表示装置の画像表示制御を実行可能な押しボタンスイッチ135を備えた弾球遊技機」は、遊技盤21を備えるものであって、遊技者によるボタンスイッチ135の操作を伴う遊技機であるから、本願補正発明における「遊技盤を有し、遊技者によって遊技される遊技機」に相当する。

イ 刊行物発明における「表示部652を備え、押しボタンスイッチ135の操作により、駆動装置によって主表示装置に沿って、左右、上下に移動可能であ」る「副表示装置」について検討する。
ここで、「表示部652」が表示画面から構成されるものであり、また、主表示装置の表示画面は遊技盤21の表面に設けられたものである。
したがって、刊行物発明における「副表示装置」は、本願補正発明における「第1表示画面を有し、駆動手段からの駆動力を受けて遊技盤の表面に沿って移動する第1画像表示器」に相当する。

ウ 刊行物発明における「特別図柄D1,D3,D2の所定の特別図柄(図13における特別図柄D1や図14における特別図柄D2)」は、副表示装置651が移動する際に移動目標となる対象物であることから、本願補正発明における「所定のオブジェクト」に相当する。
そして、刊行物発明における副表示装置651が主表示装置641の変動表示する特別図柄D1,D3,D2の所定の特別図柄の位置に移動するためには、移動位置を判定する必要があることは明らかである。
また、刊行物発明における「疑似図柄D4」は、変動表示「遊技」に関連する画像であるから、刊行物発明における「疑似図柄D4を表示させる」ことは、本願補正発明における「遊技機の遊技に関連する画像であるサブ画像」を表示することに相当する。
したがって、刊行物発明における「副表示装置651は、位置検出スイッチ752や押しボタンスイッチ135の信号により、主表示装置641の変動表示する特別図柄D1,D3,D2の所定の特別図柄の位置(図13における特別図柄D1や図14における特別図柄D2の位置)に移動し、所定の特別図柄の停止位置において疑似図柄D4を表示させる手段を備え」ることは、本願補正発明における「第1表示画面の位置が、遊技盤の表面に位置する所定のオブジェクトとの位置関係において所定の位置であるか否かを判定する位置判定手段と、位置判定手段によって所定の位置であると判定された場合に、遊技機の遊技に関連する画像であるサブ画像を第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備え」ることに相当する。

エ 刊行物発明における「特別図柄D1,D3,D2の所定の特別図柄(図13における特別図柄D1や図14における特別図柄D2)」は、上記ウにおいて検討したように本願補正発明における「所定のオブジェクト」に相当するものであり、副表示装置651が移動する際の目標地点とみなせるものである。
そして、刊行物発明において、副表示装置651が「特別図柄D1,D3,D2の所定の特別図柄(図13における特別図柄D1や図14における特別図柄D2)」の位置に移動すると、「副表示装置651に疑似図柄D4を変動表示させ」るものであるから、副表示装置651が「特別図柄D1,D3,D2の所定の特別図柄(図13における特別図柄D1や図14における特別図柄D2)」の位置に移動することは、本願補正発明における「当該所定のオブジェクト自身が第1表示画面に前記サブ画像が表示される契機となる」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における「特別図柄D1,D3,D2の所定の特別図柄(図13における特別図柄D1や図14における特別図柄D2)」と、本願補正発明における「所定のオブジェクト」とは、「所定のオブジェクトは、当該所定のオブジェクト自身が第1表示画面にサブ画像が表示される契機となるオブジェクトである」「特定のオブジェクトである」点で共通する。

オ 上記ア?エより、本願補正発明と刊行物発明とは、
「遊技盤を有し、遊技者によって遊技される遊技機であって、
第1表示画面を有し、駆動手段からの駆動力を受けて前記遊技盤の表面に沿って移動する第1画像表示器と、
前記第1表示画面の位置が、前記遊技盤の表面に位置する所定のオブジェクトとの位置関係において所定の位置であるか否かを判定する位置判定手段と、
前記位置判定手段によって前記所定の位置であると判定された場合に、前記遊技機の遊技に関連する画像であるサブ画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備え、
前記所定のオブジェクトは、当該所定のオブジェクト自身が前記第1表示画面に前記サブ画像が表示される契機となるオブジェクトである、特定のオブジェクトである、遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
所定のオブジェクトに関して、
本願補正発明は、所定のオブジェクト自身が第1表示画面にサブ画像が表示される契機となるオブジェクトであることを遊技者に示唆する特定のオブジェクトであるのに対して、
刊行物発明は、所定のオブジェクト自身が第1表示画面にサブ画像が表示される契機となるオブジェクトであることを遊技者に示唆するか否か不明である点で一応相違する。

(3)当審の判断
ア 上記相違点について
上記相違点について検討する。
刊行物の【0050】、【図8】に示された実施例において、リーチアクションにおいて、敵側のキャラクタC3が主表示装置641に表示される(【図8】(A))と、仮停止(【図8】(B))後、副表示装置651が主表示装置641の左上方に現れ、副表示装置651に味方のキャラクタC5が表示される(【図8】(C))ことが示されている。そして、この遊技台での遊技に慣れた遊技者は、リーチアクションにおいて、敵側のキャラクタC3が主表示装置641に現れることが、副表示装置651が、その位置が敵側のキャラクタC3との位置関係において所定の位置(主表示装置641の左上方の位置)となるように移動すると共に、移動後に、副表示装置651に味方のキャラクタC5が表示されることの契機となることを示すものと認識可能である。

また、刊行物の【0056】?【0063】、【図14】に示された実施例において、中図柄のリーチアクションにおいて、副表示装置651が変動中の中図柄に重なるように移動後、副表示装置651に疑似図柄D4を表示させることが示されている。そして、この遊技台での遊技に慣れた遊技者は、リーチアクションにおいて、中図柄が変動中のリーチアクションが発生することが、その位置が変動中の中図柄との位置関係において所定の位置(変動中の中図柄に重なる位置)となるように副表示装置651が移動し、移動後に、副表示装置651に疑似図柄D4が表示されることの契機となることを示唆するものと認識可能である。

このように、刊行物には、所定のオブジェクト(図8におけるリーチアクションにおける敵側のキャラクタC3、図14における特別図柄D2)に関して、所定のオブジェクト自身が第1表示画面(副表示装置651)にサブ画像(図8における味方のキャラクタC5、図14における疑似図柄D4)が表示される契機となる特定のオブジェクトであることを遊技者に示唆する技術事項が示されているので、刊行物発明における所定のオブジェクトに上記刊行物記載の技術事項を適用して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成にすることは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明及び刊行物記載の技術事項から予測し得る効果の範囲内のものであって、格別のものではない。

イ 請求人の主張について
請求人は、平成27年2月2日付けの審判請求書において、「引用文献1には、主制御装置641に表示された所定の画像(例えば特別図柄D2)と副表示装置651との位置関係に応じて副表示装置651に画像を表示させる内容について開示されています。しかしながら、この所定の画像は、遊技に関連する画像が副表示装置651に表示される契機となることを遊技者に示唆する画像ではありません。このことから明らかなように、引用文献1には、上記した本発明の特徴および本発明の効果が開示も示唆もされておりません。」(第3頁第20?25行)と主張する。
しかしながら、刊行物における「所定のオブジェクト(図8における味方のキャラクタC5や、図14における疑似図柄D4)」は、上記アにおいて検討したように、所定のオブジェクト自身が第1表示画面にサブ画像が表示される契機となるオブジェクトであることを遊技者に示唆する特定のオブジェクトとみなせることから、請求人の上記主張は採用できない。

ウ 小括
上記ア?イにおいて検討したように、本願補正発明は、当業者が刊行物発明及び刊行物記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本願補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年4月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「遊技盤を有し、遊技者によって遊技される遊技機であって、
第1表示画面を有し、駆動手段からの駆動力を受けて前記遊技盤の表面に沿って移動する第1画像表示器と、
前記第1表示画面の位置が、前記遊技盤の表面に位置する所定のオブジェクトとの位置関係において所定の位置であるか否かを判定する位置判定手段と、
前記位置判定手段によって前記所定の位置であると判定された場合に、前記遊技機の遊技に関連する画像であるサブ画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備え、
前記所定のオブジェクトは、当該所定のオブジェクト自身が前記第1表示画面に前記サブ画像が表示される契機となるオブジェクトであることを示唆する特定のオブジェクトである、遊技機。」

2 刊行物
刊行物及びその記載事項、刊行物発明は、前記「第2[理由] 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 1補正の内容」において検討した本願補正発明から、所定のオブジェクトに関する「当該所定のオブジェクト自身が前記第1表示画面に前記サブ画像が表示される契機となるオブジェクトであることを遊技者に示唆する特定のオブジェクトである」の限定事項である「遊技者に」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項(構成要件)をすべて含み、さらに、他の発明特定事項(構成要件)を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由] 2(3)当審の判断」に記載したとおり、刊行物発明及び刊行物記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物発明及び刊行物記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-17 
結審通知日 2016-02-23 
審決日 2016-03-07 
出願番号 特願2010-159820(P2010-159820)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 関 博文
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  

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